特許第6080969号(P6080969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6080969対象物の姿勢を決定するための方法と装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6080969
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】対象物の姿勢を決定するための方法と装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/26 20060101AFI20170206BHJP
   G01S 17/66 20060101ALI20170206BHJP
   G01S 17/87 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   G01B11/26 H
   G01S17/66
   G01S17/87
【請求項の数】14
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-540105(P2015-540105)
(86)(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公表番号】特表2015-537205(P2015-537205A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】EP2013072602
(87)【国際公開番号】WO2014067942
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2015年5月25日
(31)【優先権主張番号】12190873.5
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513076464
【氏名又は名称】ライカ ジオシステムズ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Leica Geosystems AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クリステン
(72)【発明者】
【氏名】コンラート ヴィルディ
(72)【発明者】
【氏名】アルベアト マーケンドアフ
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/110635(WO,A1)
【文献】 特開2004−170412(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/10817(WO,A1)
【文献】 特開2008−116373(JP,A)
【文献】 特開2010−92436(JP,A)
【文献】 特開2006−30127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G01B 21/00−21/32
G01C 1/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザトラッカ(10,11)のための、且つ、該レーザトラッカ(10,11)を用いる、光点(61,62,63)を形成する複数の基準目印(52,52a)が所定の空間関係で設けられている測定補助対象物(50)の空間的な姿勢を決定するための方法であって、
前記レーザトラッカ(10,11)は、
・垂直軸(41)を規定する台座(40)と、
・前記垂直軸(41)を中心として前記台座(40)に対して相対的にモータ駆動式に旋回可能である支持部(30)と、
・傾斜軸を中心として前記支持部(30)に対して相対的にモータ駆動式に回動可能であり、且つ、前記光点(61,62,63)の画像(60)を検出する画像検出ユニットを有している旋回ユニット(15,20)と、
・レーザビーム(17,21)を放出するビーム源と、
・前記レーザビーム(17,21)を用いて、前記測定補助対象物(50)までの距離を測定する距離測定ユニットと、
・前記台座(40)に対して相対的な前記レーザビーム(17,21)の放出方向を決定する角度測定機能と、を備えており、
前記方法において、
画像(60)を、前記測定補助対象物(50)の方向において、該測定補助対象物(50)の少なくとも一つの位置及び/又は配向に依存してそれぞれ検出可能な光点(61,62,63)と共に検出し、
・前記測定補助対象物(50)の前記空間的な姿勢を、前記画像(60)内で検出された前記光点(61,62,63)に関する前記画像(60)内の画像位置(71,72)から、画像評価を用いて導出する、測定補助対象物(50)の空間的な姿勢を決定するための方法において、
・前記画像評価のための、前記画像(60)内の個々の光点(61,62,63)の外観に関する局所的な考慮判定基準が規定されているか、又は、前記画像評価のための、前記画像(60)内の複数の光点(61,62,63)間の位置関係に関する大域的な考慮判定基準が規定されており、
・前記画像(60)内で検出された前記光点(61,62,63)のうちの少なくとも一つの光点について、前記局所的な考慮判定基準又は前記大域的な考慮判定基準が満たされているか否かを検査し、前記局所的な考慮判定基準又は前記大域的な考慮判定基準が満たされているか否かの前記検査によって、前記画像(60)内で検出された前記光点(61,62,63)のうちの少なくとも一つの光点が部分的に覆い隠されているかを求め、
・前記考慮判定基準が満たされていない場合には、前記画像(60)内で検出された前記光点(61,62,63)のうちの前記少なくとも一つの光点を、前記空間的な姿勢の導出に関して低く重み付けし、特に除外することを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記局所的な考慮判定基準は、前記画像(60)内の前記光点(61,62,63)のうちの少なくとも一つの光点の見え方に関する画像属性、特に画像基準としての目標形状及び/又は空間的な目標面積及び/又は目標明度分布(65)及び/又は目標総輝度及び/又は目標コントラストを規定する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記大域的な考慮判定基準は、前記画像内で検出された複数の光点(61,62,63)に関する前記画像(60)内の前記画像位置(71)の相対的及び空間的な目標位置を規定し、特に前記測定補助対象物(50)のその都度の姿勢を考慮して規定する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記局所的な考慮判定基準又は前記大域的な考慮判定基準を、検出された前記画像(60)から、特に前記画像(60)内の前記光点(61,62,63)の各グラフィック像から、とりわけ、前記光点(61,62,63)の各グラフィック像の比較から導出する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記光点(61,62,63)を有している少なくとも一つの別の画像(60)を時間的にずらして検出し、特に複数の画像を連続的に検出し、複数の画像(60)において検出された前記光点(61,62,63)のうちの少なくとも一つの光点に関する前記局所的な考慮判定基準又は前記大域的な考慮判定基準が満たされているか否かの検査を、前記複数の画像の比較によって行い、特に、前記複数の画像(60)における個々の光点(61,62,63)の外観の比較によって行うか、又は、前記複数の画像における個々の光点(61,62,63)に関する各画像位置(71,72)の比較によって行う、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
・前記局所的な考慮判定基準が満たされているか否かの前記検査のために、前記画像(60)内で検出された前記光点(61,62,63)のうちの少なくとも一つの光点に関するグラフィック情報を前記画像(60)から導出し、特に、前記画像(60)内の前記光点(61,62,63)に関して検出された実際形状及び/又は空間的な実際面積及び/又は実際明度分布(65,65a)及び/又は実際輝度及び/又は実際コントラストを導出するか、若しくは、
・前記大域的な考慮判定基準が満たされているか否かの前記検査のために、前記画像(60)内で検出された、該画像(60)内の前記光点(61,62,63)のうちの少なくとも一つの光点に関する、画像処理を用いて決定された画像位置(71,72)を使用し、特に、前記画像位置(71,72)を、明度分布(65,65a)に基づいた前記画像(60)内の焦点計算によって決定する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記局所的な考慮判定基準又は前記大域的な考慮判定基準が満たされているか否かの前記検査において、前記測定補助対象物(50)及び/又は測定空間の立体的な構造を考慮し、特に前記測定補助対象物(50)の位置を考慮し、とりわけ視界障害物(53,55)の位置及び寸法を考慮する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記局所的な考慮判定基準又は前記大域的な考慮判定基準が満たされているか否かの前記検査のために、考慮判定基準と画像情報の一致度を表す比較品質値を、該考慮判定基準と該画像情報との比較によって求め、該比較品質値に関して信頼区間を規定し、
前記画像情報を、少なくとも第1の光点(61,62,63)に関して、検出された前記画像から導出し、
特に、検出された前記光点(61,62,63)のうちの少なくとも一つの光点に関する前記局所的な考慮判定基準又は前記大域的な考慮判定基準が満たされているか否かの前記検査において求められた最新の比較品質値が前記信頼区間内にある場合には、前記空間的な姿勢の導出に関して前記光点(61,62,63)を考慮し、求められた前記比較品質値が前記信頼区間外にある場合には、前記空間的な姿勢の導出に関して前記光点(61,62,63)を低く重み付けする、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記画像内で検出された各光点(61,62,63)に関する前記局所的な考慮判定基準又は前記大域的な考慮判定基準が満たされているか否かの前記検査において、個々の残差を求め、各残差が調整可能な期待範囲内にあるか否かを検査し、一つ又は複数の残差が前記期待範囲外にある場合には、対応する一つ又は複数の光点(61,62,63)を、前記比較品質値を求める際に低く重み付けし、特に前記空間的な姿勢の導出に関して除外する、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
光点(61,62,63)を形成する複数の基準目印(52,52a)が所定の空間関係で設けられている測定補助対象物(50)の位置及び/又は配向を決定するための、特に前記測定補助対象物(50)を継続的に追跡するためのレーザトラッカ(10,11)であって、
前記レーザトラッカ(10,11)は、
・垂直軸(41)を規定する台座(40)と、
・前記垂直軸(41)を中心として前記台座(40)に対して相対的にモータ駆動式に旋回可能である支持部(30)と、
・傾斜軸を中心として前記支持部(30)に対して相対的にモータ駆動式に回動可能であり、且つ、前記光点(61,62,63)の画像(60)を検出する画像検出ユニットを有している旋回ユニット(15,20)と、
・レーザビーム(17,21)を放出するビーム源と、
・前記レーザビーム(17,21)を用いて、前記測定補助対象物(50)までの距離を測定する距離測定ユニットと、
・前記台座(40)に対して相対的な前記レーザビーム(17,21)の放出方向を決定する角度測定機能と、
・前記測定補助対象物(50)の空間的な姿勢を決定する機能を備えている制御及び処理ユニットと、を備えており、
前記空間的な姿勢を決定する機能の実行時に、前記測定補助対象物(50)の前記空間的な姿勢が、前記画像(60)内で検出された光点(61,62,63)に関する前記画像(60)内の画像位置(71,72)から、画像評価を用いて導出され、
前記制御及び処理ユニットによる制御下で、前記画像(60)が、前記測定補助対象物(50)の方向において、前記測定補助対象物(50)の少なくとも一つの位置及び/又は配向に依存してそれぞれ検出可能な光点(61,62,63)と共に検出される、レーザトラッカ(10,11)において、
・前記画像評価のための、前記画像(60)内の個々の光点(61,62,63)の外観に関する局所的な考慮判定基準が規定されているか、又は、前記画像評価のための、前記画像(60)内の複数の光点(61,62,63)間の位置関係に関する大域的な考慮判定基準が規定されており、
・前記制御及び処理ユニットは検査機能を有しており、該検査機能の実行時に、前記画像(60)内で検出された前記光点(61,62,63)のうちの少なくとも一つの光点について、前記局所的な考慮判定基準又は前記大域的な考慮判定基準が満たされているか否かが検査され、前記局所的な考慮判定基準又は前記大域的な考慮判定基準が満たされているか否かの前記検査によって、前記画像(60)内で検出された前記光点(61,62,63)のうちの少なくとも一つの光点が部分的に覆い隠されているかが求められ、
・前記考慮判定基準が満たされていない場合には、前記機能の実行時に、前記画像(60)内で検出された前記光点(61,62,63)のうちの前記少なくとも一つの光点が、前記空間的な姿勢の導出に関して低く重み付けされ、特に除外されることを特徴とする、
レーザトラッカ(10,11)。
【請求項11】
前記制御及び処理ユニットは、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている、
請求項10に記載のレーザトラッカ(10,11)。
【請求項12】
前記測定補助対象物(50)は、前記基準目印(52,52a)のうちの一つに対して所定の空間関係で位置決めされている付加的な補助マーキング(56,58)が配置されているように構成されており、
前記検査機能の実行時に、検出された前記画像(60)内の前記補助マーキング(56,58)の像が、前記局所的な考慮判定基準又は前記大域的な考慮判定基準が満たされているか否かに関して検査され、
特に、前記補助マーキング(56,58)は発光ダイオードとして構成されている、
請求項10又は11に記載のレーザトラッカ(10,11)。
【請求項13】
前記測定補助対象物(50)の前記基準目印(52,52a)は、前記光点(61,62,63)を形成する自己発光手段として、特に発光ダイオードとして構成されている、
請求項10乃至12のいずれか一項に記載のレーザトラッカ(10,11)。
【請求項14】
特に請求項10乃至13のいずれか一項に記載のレーザトラッカ(10,11)の制御及び処理ユニットにおいてコンピュータプログラム製品が実行される場合に、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法の、
・前記測定補助対象物(50)の前記空間的な姿勢の決定、及び、
・前記考慮判定基準が満たされているか否かの検査、
を実行し、前記測定補助対象物(50)の方向における画像検出を制御する、機械読み出し可能な担体に記憶されているコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載されている、レーザトラッカのための、且つ、レーザトラッカを用いる、対象物の姿勢を決定するための方法、請求項11に記載されている、相応の機能を備えているレーザトラッカ、並びに、請求項15に記載されている、コンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ターゲット点の継続的な追跡及びそのターゲット点の座標位置を決定するために構成されている種々の測定装置を、特に工業用の測定との関連において、一般的にレーザトラッカという概念の下に一括りにすることができる。このレーザトラッカにおいては、測定装置の光学的な測定ビーム、特にレーザビームを用いて照準が合わせられる再帰反射性のユニット(例えば立方体プリズム)によってターゲット点を表すことができる。レーザビームは平行に再び測定装置に向かって反射され、反射されたビームは装置の検出ユニットによって検出される。その際に、レーザビームの放出方向又は受信方向が、例えば、システムの偏向ミラー又は照準合わせユニットに対応付けられている角度測定用センサによって求められる。更にはレーザビームの検出と共に、測定装置からターゲット点までの距離が、例えば伝播時間測定又は位相差測定によって、若しくは、フィゾーの原理を用いて求められる。
【0003】
また現在のトラッカシステムにおいては、受信したレーザビームの、いわゆるサーボ制御点からのずれが求められており、これは益々標準的に行われるようになっている。そのようなずれを測定できることによって、レトロリフレクタの中心と、そのレトロリフレクタにおけるレーザビームの入射点との位置の差を決定することができ、またその差に応じて、センサにおけるずれが低減されるように、特にずれが「ゼロ」となるように、従ってビームがレトロリフレクタの中心に向かって配向されるようにレーザビームの配向を修正又は更新することができる。レーザビームの配向を更新することによって、ターゲット点を継続的に追跡(トラッキング)することができ、またトラッカシステムに相対的なターゲット点の距離及び位置を継続的に検出することができる。更新は、レーザビームを偏向させるために設けられている、モータ駆動式に移動可能な偏向ミラーの配向を変化させることによって、及び/又は、レーザビームを誘導するレーザ光学系を有している照準合わせユニットを旋回させることによって実現することができる。
【0004】
上述のようなターゲットの追跡に先立って、レーザビームをリフレクタにロックオンすることが必要になる。このためにレーザトラッカには、光位置センサを備えており、且つ比較的大きい視野を有している検出ユニットを付加的に配置することができる。更に、冒頭で述べたような測定装置には、ターゲット若しくはリフレクタを、特に距離測定手段の波長とは異なる所定の波長で照明する、付加的な照明手段が組み込まれている。この関係において、例えば外部光の影響を低減するか、又は完全に阻止するために、光位置センサをその所定の波長付近の範囲に対してのみ感度を有するように構成することができる。照明手段を用いることによってターゲットを照明することができ、またカメラを用いることによって、リフレクタが照明されているターゲットの画像を検出することができる。特定の反射(特定の波長の反射)をセンサに結像させることによって、画像内の反射位置を分解によって求め、それと共に、カメラの検出方向に相対的な角度と、ターゲット若しくはリフレクタの方向と、を決定することができる。その種のターゲットサーチユニットを備えているレーザトラッカの一つの実施の形態は例えばWO 2010/148525 A1から公知である。そのようにして導出された方向情報に依存して、レーザビームと、そのレーザビームを用いてロックオンされるべきリフレクタとの間の距離が短くなるように、測定レーザビームの配向を変更することができる。
【0005】
距離を測定するために、従来技術によるレーザトラッカは、例えば干渉計として構成することができる、少なくとも一つの距離測定器を有している。その種の距離測定器は相対的な距離変化しか測定できないので、今日のレーザトラッカには干渉計の他にいわゆる絶対距離計も組み込まれている。例えば、距離を求めるために、その種の複数の測定手段を組み合わせることは、Leica Geosystems AGの製品AT901から既知である。更に、距離を求めるための干渉計及び絶対距離計をHeNeレーザと組み合わせることは、例えばWO 2007/079600 A1から公知である。
【0006】
従来技術によるレーザトラッカには更に、二次元の感光アレイ、例えばCCDカメラ又はCIDカメラを備えているか、又はCMOSアレイを基礎とするカメラを備えている光学的な画像検出ユニットを設けることができるか、若しくは、ピクセルアレイセンサ及び画像処理ユニットを設けることができる。その場合、レーザトラッカ及びカメラの位置が相互に相対的に変化することがないように、それらを上下に重ねて取り付けることができる。カメラは例えばレーザトラッカと共に、その実質的に垂直方向の軸を中心として回動可能であるが、しかしながら、レーザトラッカに依存せずに上下方向に旋回可能であり、従って特にレーザビームの光学系からは分離されて配置されている。更には、例えば各用途に応じて、カメラを一つの軸についてのみ旋回可能であるように構成することもできる。択一的な実施の形態においては、カメラをレーザ光学系と統合された構造様式で、共通の一つのケーシング内に組み込むことができる。
【0007】
相互の相対的な配置が既知である複数のマーキングを備えている、いわゆる測定補助器具乃至測定補助対象物の画像を画像検出ユニット及び画像処理ユニットを用いて検出及び評価することによって、空間内での測定補助器具の姿勢並びに測定補助器具に配置されている対象物(例えばプローブ)の姿勢を推定することができる。更には、求められたターゲット点の空間的な位置と共に、レーザトラッカに対して絶対的及び/又は相対的である、空間内の対象物の位置及び姿勢を正確に決定することができる(6DoF検出:6自由度の検出)。
【0008】
その種の測定補助器具は、接触点を用いてターゲット対象物の一点に位置決めされる、いわゆる接触式ツールによって実現することができる。接触式ツールは複数のマーキング、例えば発光ダイオード(LED)と、一つのリフレクタと、を有している。リフレクタは接触式ツール上のターゲット点を表し、またレーザトラッカのレーザビームを用いることによって、そのターゲット点に照準を合わせることができる。その際、接触式ツールの接触点に対するマーキング及びリフレクタの相対的な位置は正確に既知である。測定補助対象物は当業者には公知のように、非接触式の表面測定用の、例えば距離測定のために実施されている手持式のスキャナであっても良い。その場合、スキャナに配置されているリフレクタ及び発光ダイオードに対して相対的な、距離測定に使用されるスキャナ測定ビームの方向及び位置は正確に既知である。その種のスキャナは例えばEP 0 553 266に記載されている。
【0009】
レーザトラッカを用いた測定補助対象物の空間的な姿勢を高い信頼性で決定するために(6DoF測定)、発光ダイオードが検出されており且つ良好に(つまり完全に)結像されている画像、また有利には対象物における発光ダイオードの既知の配置構成が使用される。画像評価を用いることによって、その画像評価から空間内の測定補助対象物の姿勢を導出することができる。
【0010】
その種の6DoF測定では、カメラの内部的な配向の既知の幾何学及び知識を用いて、空間的なリセクションが計算され、そこから測定補助対象物の姿勢が決定される。しかしながら、幾つかのLEDがカメラに対して少なくとも部分的に可視でない場合には、空間的なリセクションの結果が不正確になる(つまり、測定におけるランダムな不確かさが増加する)。
【0011】
複数あるLEDのうちの一つ又は複数が部分的に覆い隠されている場合には特に好ましくない事態が発生し、検出された画像内の計算された画像座標の精度は、各LEDの光点に関してシステマチックに低下する。その結果、個々の画像座標の精度の低下と共に、リセクションの結果、従って測定補助対象物の空間的な姿勢の決定の質もシステマチックに低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明の課題は、上述の測定誤差を低減又は回避するための改良された方法及び改良された装置を提供することである。
【0013】
本発明の特別な課題は、画像内で検出された対象物に関する光点を評価することによって、その対象物の姿勢をより高い信頼性で決定し、特に、光点が少なくとも部分的に覆い隠されている場合に生じる測定誤差を低減又は回避する、改良されたレーザトラッカを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの課題は、独立請求の特徴部分に記載されている構成を実現することによって解決される。本発明を代替的なやり方又は有利なやり方で更に発展させる種々の特徴的構成は従属請求項に記載されている。
【0015】
本発明は、レーザトラッカのための、且つ、レーザトラッカを用いる、光点を形成する複数の基準目印が所定の空間関係で設けられている測定補助対象物の空間的な姿勢を決定するための方法に関する。レーザトラッカは、垂直軸を規定する台座と、垂直軸を中心として台座に対して相対的にモータ駆動式に旋回可能である支持部と、傾斜軸を中心として支持部に対して相対的にモータ駆動式に回動可能であり、且つ、光点の画像を検出する画像検出ユニットを備えている旋回ユニットと、レーザビームを放出するビーム源と、を有している。更に、レーザビームを用いて、測定補助対象物までの距離を測定する距離測定ユニットと、台座に対して相対的なレーザビームの放出方向を決定する角度測定機能と、が設けられている。
【0016】
本発明による方法の枠内では、測定補助対象物の方向における画像が、測定補助対象物の少なくとも一つの位置及び/又は配向に依存してそれぞれ検出可能な光点と共に検出され、測定補助対象物の空間的な姿勢が、画像内で検出された光点に関する画像内の画像位置から画像評価を用いて導出される。
【0017】
本発明によれば、画像評価のための、画像内の個々の光点の外観に関する局所的な考慮判定基準が規定されているか、又は、画像評価のための、画像内の複数の光点間の位置関係に関する大域的な考慮判定基準が規定されている。更に、画像内で検出された複数の光点のうちの少なくとも一つの光点について局所的な考慮判定基準又は大域的な考慮判定基準が満たされているかが(特に、検出された画像から得られる、検出された複数の光点のうちの少なくとも一つの光点に関する画像情報が局所的な考慮判定基準又は大域的な考慮判定基準と比較されることによって)検査される。(局所的又は大域的な)考慮判定基準が満たされていない場合、画像内で検出された複数の光点のうちの、その少なくとも一つの光点は空間的な姿勢の導出に関して低く重み付けされ、特に考慮されない。
【0018】
つまり、一つ又は複数の光点に関して画像内に存在する特性は、一つ又は複数の光点に関する目標特性と一致しているか否かが検査され、その検査に基づき、姿勢を決定するためにその光点は考慮されるか、又は低く重み付けされるか、特に考慮されないかが決定される。
【0019】
基準目印を特に、所定の波長領域の光を放出する、とりわけ赤外線光を放出する発光ダイオード(LED)として構成することができる。
【0020】
本発明による方法の一つの特定の実施の形態によれば、局所的な考慮判定基準は、画像内の複数の光点のうちの少なくとも一つの光点の見え方に関する少なくとも一つの画像属性を規定し、特に画像基準としての目標コントラスト及び/又は目標形状及び/又は空間的な目標面積及び/又は目標明度分布及び/又は目標総輝度を規定する。
【0021】
この関係において、本発明による一つの典型的な実施の形態によれば、局所的な考慮判定基準が満たされているかの検査が、画像内の(個々の)LED像(基準目印の像)の個別の考察に基づき実施される。このために、測定補助対象物における複数のLEDの相対的及び空間的な配置構成についての知識は必要ない。
【0022】
部分的に遮蔽されているLEDを識別するために、基準又は規準(=考慮判定基準)に対する像の偏差が使用される。基準又は規準として、設けられている基準目印に関する、光学計算から得られた理想的な像又は経験値を使用することができる。
【0023】
この実施の形態による方法は、画像内の結像されたLEDの総数には依存せず、従って個々のLEDに対して適用することができる。更に、カメラの姿勢に関する知識は必要とされない。
【0024】
特に、この関係において、測定補助対象物(例えば測定プローブ)とカメラとの間で生じうる距離に関して、またカメラに相対的な測定補助対象物の考えられる姿勢に関して、理想的な像を格納することができ、それらの像は特に、実際の観察から求められた「経験値」を表すことができる。
【0025】
特に、画像内のLEDの像は、画像属性によって特徴付けられており、例えばピクセル数、最大明度(最も明るいピクセル)、総輝度(全てのグレー値の和)、形状及び/又は輪郭(例えばLEDのアクティブな面の形状又は、受動的なターゲットマークの輪郭及び光学的計算を基礎とする)、像内の明度分布(モノクロ又はスペクトル)及び/又はシャープネスによって特徴付けられている。それらの属性のうちの一つ又は複数の属性が基準値又は規準値から偏差している場合、その偏差を識別することができ、またその偏差は各LEDが部分的に覆い隠されていることに関する指標であると考えられる。
【0026】
特に、画像内のLEDの光点についての明度分布の評価に関して、LEDのその像に関する画像座標を繰り返し計算することができ、その際に、個々のパラメータが変更され、それによって生じる画像座標のグループにおける偏差が、期待される明度分布からの偏差に関する判定基準として使用される。
【0027】
これに関して変更可能なパラメータとして、例えば明度値(閾値)、ダークフレーム減算(オフセット)、焦点の算出方法(例えば、バイナリ、線形又は平方の焦点)、照明時間、及び/又は、相互に分けられている個々のピクセルカラーに応じた焦点の計算が挙げられる。
【0028】
本発明によれば、大域的な考慮判定基準又は局所的な考慮判定基準の定義又は規定に関して、この考慮判定基準を(レーザトラッカのデータファイル内に設けられる代わりに、又は、レーザトラッカのデータファイル内に設けられることに加えて)、特に検出された画像から導出することができ、特に画像内の光点の各グラフィック像から、とりわけ光点の各グラフィック像の比較から導出することができる。
【0029】
この関係において、基準目印が画像検出時に部分的に覆い隠された状態で存在していたかを検査するための、本発明による一つの別の実施の形態は、画像内で検出された全ての基準目印(=画像内の光点)の像の比較に関する。この別の実施の形態では、検出された画像内の個々の基準目印の像が、その像を記録した際に同様に生じた、画像内の検出された基準目印の像と比較される。このことは特に、基準目印に関する基準値を考慮することができない場合(例えば、製造公差、移動の不正確性、周囲雰囲気による障害等に起因する変動幅に起因する)、又は、基準目印に関する基準値が格納されていない場合に行われる。その際に、結像された基準目印の数が多くなり、且つ、それらの結像された基準目印のうち、部分的に覆い隠されている基準目印の数が少なくなるほど、この方式を使用する際の信頼性は一層高くなる。また、これに関する前提条件は、検出される基準目印が実質的に同種に構成されていること、又は(再帰反射性のシートのような受動的な基準目印に対して)同種の反射特性を有していること、若しくは、(発光ダイオードのような能動的な基準目印に関して)同種の光エミッションを有していることである。
【0030】
特に、この方法は、前述の方法と同一の原理を基礎としている。同一の画像属性及び計算方法を使用することができる。主な相異点は、画像内のLEDの像に関して絶対的な基準値又は規準値は存在しておらず、その代わりに、同一の記録時に生じたLEDの全ての像が相互に比較されることである。
【0031】
計算コストを低減するために、画像内のLEDの複数の光点を先ず、選択された一つ又は複数の画像属性に従い、例えば、ピクセル数に応じて分類し、例えばそれにより作成されたリストにおける第1の光点及び/又は第2の光点のみを、考えられる部分的な遮蔽について検査することができる。
【0032】
更に、本発明の別の実施の形態によれば、大域的な考慮判定基準が、画像内で検出された複数の光点に関する、画像内の画像位置の相対的及び空間的な目標位置を規定することができ、特に、測定補助対象物のその都度の姿勢を考慮して規定することができる。
【0033】
大域的な考慮判定基準又は局所的な考慮判定基準が満たされているかの検査に関する本発明の別の態様は、複数の光点を有している少なくとも一つの別の画像を時間的にずらして検出すること、特に(複数の)別の画像を連続的に検出することに関する。その場合、画像内で検出された少なくとも一つの光点に関する局所的な考慮判定基準又は大域的な考慮判定基準が満たされているかの検査は、複数の画像を比較することによって、特に、複数の画像における個々の光点の外観を比較することによって、又は、複数の画像における個々の光点に関する各画像位置を比較することによって行われる。従ってそれによって、光点の状態を監視又は追跡することができ、そこから、例えば光点が覆い隠されていることを識別することができる。
【0034】
換言すれば、このことは、時間的に連続する一連の画像(つまりシーン)が検出され(その際、複数の画像が実質的に、画像内で結像された同じ基準目印を光点として有している)、例えば、検出された画像内の共通の光点が比較され、その時間的な展開が検出されることを意味している。この考察から、画像における光点の変化を推定することができ、それに基づいて、例えば、光点が(部分的に)覆い隠されていることを識別することができる。これは、相応の光点の外観(例えば形状又は明度)の変化によって識別することができるか、又は、光点に関する画像位置の変化によって識別することができる。
【0035】
従ってこの関係においては、個々の画像又は画像シーケンス(この画像シーケンスの枠内では例えば関連する光点が変化せずに検出されている)を、考慮判定基準を定義するために使用することができ、また後続の画像(又は画像の光点)を、その定義された考慮判定基準に基づき評価することができる。
【0036】
更に、局所的な考慮判定基準が満たされているかを検査するための、本発明の一つの別の特別な実施の形態によれば、画像内で検出された複数の光点のうちの少なくとも一つの光点に関するグラフィック情報を画像から導出することができ、特に、画像内の光点に関して検出された実際形状及び/又は空間的な実際面積及び/又は実際明度分布及び/又は実際輝度及び/又は実際コントラストを導出することができる。択一的又は付加的に、やはり本発明によれば、大域的な考慮判定基準が満たされているかを検査するために、画像内で検出された、その画像内の複数の光点のうちの少なくとも一つの光点に関する、画像処理を用いて決定された画像位置を使用することができ、特に、画像位置は明度分布に基づき画像内の焦点を計算することによって決定される。
【0037】
特に、本発明による方法の枠内では、局所的な考慮判定基準又は大域的な考慮判定基準が満たされているかを検査する際に、測定補助対象物及び/又は測定空間の立体的な構造が考慮され、また特に、測定補助対象物の位置が考慮され、特に、視界障害物の位置及び寸法が考慮される。
【0038】
従って一つの特別な実施の形態によれば、画像内の結像された複数のLEDの本発明による検査、即ち、それらのLEDによって形成された、画像内の光点の検査において、部分的に遮蔽されたLEDを識別する際に、例えば測定補助対象物又は測定空間の既知の立体的な構造を考慮することができる。
【0039】
これに関して、LEDの相対的及び空間的な配置構成の他に、少なくとも一つのLEDの部分的な遮蔽を生じさせる可能性がある測定体積内の構造体の形状及び空間的な位置も既知であるので、それによって、LEDが場合によってはもはや完全に画像センサに結像されなくなるのは何時かを計算することができ、またそのようなLEDはリセクションの計算から予防的に除外される。
【0040】
頻繁に部分的な遮蔽を生じさせるその種の構造体として、例えば、測定補助対象物自体のケーシング、並びに、装置、ツール、建造物及び/又は安全装置(及び/又は人間)の一部が挙げられる。また6DoF測定(測定補助対象物の位置及び姿勢)は、カメラまでの構造体の最新の相対的及び空間的な位置を常に提供する。
【0041】
既知の構造体の近傍に、即ち、予め規定されている距離内にLEDがある場合、そのLEDがまだ遮蔽されていない場合であっても、そのLEDの像を予防的に、リセクションの計算から除外することができる。更には、例えばオートメーションにおいて測定シーケンスが何度も繰り返される場合には、LEDが部分的に遮蔽される可能性がある空間領域をテストランにおいて求め、相応の測定に際し考慮することができる。
【0042】
本発明によれば、特に、局所的な考慮判定基準又は大域的な考慮判定基準が満たされているかの検査の結果から、又はその検査によって、画像内で検出された複数の光点のうちの少なくとも一つの光点が少なくとも部分的に覆い隠されているかが求められ、光点が少なくとも部分的に覆い隠されている場合、その光点は空間的な姿勢の導出に関して低く重み付けされる。
【0043】
更に、局所的な考慮判定基準又は大域的な考慮判定基準が満たされているかの検査に関する一つの別の特別な実施の形態によれば、考慮判定基準と画像情報の一致度を表す比較品質値を、考慮判定基準と画像情報との比較によって求め、その比較品質値に関して信頼区間を規定することができる。画像情報は、少なくとも第1の光点に関して、検出された画像から導出される。
【0044】
検出された複数の光点のうちの少なくとも一つの光点に関する局所的な考慮判定基準又は大域的な考慮判定基準が満たされているかの検査の枠内で求められた最新の比較品質値が信頼区間内にある場合には、特に、空間的な姿勢を導出するためにその光点が考慮され、また、求められた品質比較値が信頼区間外にある場合には、空間的な姿勢を導出する際にその光点は低く重み付けされる。
【0045】
更に本発明によれば、特に、画像内で検出された各光点について、局所的な考慮判定基準又は大域的な考慮判定基準が満たされているかを検査する際に、又はその検査の枠内で、個々の残差が求められ(即ち、各残差は特に局所的な考慮判定基準又は大域的な考慮判定基準が満たされているかの検査によって求められる)、また、各残差が調整可能な期待範囲内にあるか否かが検査され、一つ又は複数の残差が期待範囲外にある場合には、対応する一つ又は複数の光点が比較品質値を求める際に低く重み付けされ、特に、空間的な姿勢を導出する際に除外される。
【0046】
本方法を実施するための、この方法の一つの特別な本発明による実施の形態によれば、付加的な補助マーキングを測定補助対象物における測定基準目印に対して相対的に配置することができる。本来の測定にとって必ずしも必要なものではないこの付加的な補助マーキング(測定基準目印と同様に、LEDとして構成することができるか、又は再帰反射性に構成することができる)を、本来の測定目印の周囲に適切に配置することによって、例えば測定LEDを場合によってはもはや完全に画像内に結像することができないか否かを検出することができる。
【0047】
測定基準目印は、補助マーキングと共に、一つの複合体又はグループ(クラスタ)を形成する。そのグループがもはや完全に画像センサに結像されない場合、即ち、複数の付加的な補助マーキングのうちの一つ又は複数が欠ける場合、中央の測定基準目印がもはや完全に結像されていない虞がある。この場合、そのような測定基準目印をその都度予防的に、リセクションの更なる計算から除外することができる。
【0048】
付加的な補助マーキングは実質的に、場合によっては起こり得る、中央の測定基準目印の部分的な遮蔽を検出するためにしか使用されず、他の計算には考慮されないので、それらの付加的な補助マーキングは測定結果の品質に何の影響も及ぼさない。従ってこの付加的なマーキングに課される要求は(明度、大きさ、照明の均一性等に関して)測定基準目印に比べて相応に低くなっており、それによって、本方法をLEDベースの測定システムにも適用することができる。
【0049】
付加的な補助マーキングに関する適切な形状は、本来の測定基準目印を包囲するようなリング形状であり、これは例えば再帰反射性のシート又は相互に並んで設けられている複数のLEDから構成される。別の代替的な適切な実施の形態では、複数の別個のマーキングが配置され、それらのマーキングがやはり別個に画像センサに結像される。その場合、検出に関しては、例えば全ての付加的な補助マーキングは測定基準目印の周囲の所定の範囲内で画像センサに現れるか否かだけが考慮されればよい。
【0050】
択一的又は付加的な本発明の実施の形態として、画像内でその都度検出されたLED又は光点を考慮せずに、関連する品質特性数(例えば、画像座標に関する標準偏差)が顕著に改善され、またそれによって、例えば予め規定された期待範囲内にあるか否かが識別されることによって、リセクションの更なる計算(測定補助対象物の姿勢の決定)が実施される。この品質特性数を用いることによって、あるLEDに関する光点が測定結果に重大な影響(エラーを惹起する影響)を及ぼすか否かを識別することができる。その種の実施の形態は、特に、大域的な考慮判定基準の検査に対応付けることができ、その場合には、判定基準として例えば相対的な標準偏差、又は品質特性数の相対的な差、又は個々の(又は複数の)標準偏差の相対的な差が規定されている。
【0051】
その際に、例えば、検出された複数の光点を一つずつ順次計算から除外することができ、また計算を行う度に品質特性数を求めることができる。この品質特性数は、計算が行われる度に、測定補助対象物における光点の既知の分布との「最適適合(Best-Fit)」が行われ、標準偏差がその都度決定されることによって求められるか、又は測定補助対象物の姿勢が姿勢角度を用いて決定され、例えば角度が計算される度に標準偏差がその都度決定されることによって求められる。その結果、標準偏差を比較することによって、画像内で正確に結像されていない光点を識別することができる。特に、最も小さい全標準偏差又は最も改善されている標準偏差を用いた計算時に除外された光点を不適切なものとして識別することができる。特に、まだ適合している各点に関して(「最適適合」方式の枠内で)光点を「省く」度に標準偏差が決定される場合には、例えば、最も小さい全標準偏差又は最も改善されている標準偏差を用いた計算時に除外された光点を「不適切」な光点として識別することができる。
【0052】
LEDの個数、利用可能な計算時間、計算能力及び/又は測定結果のリアルタイム出力に対する要求に応じて、LEDの光点を、部分的な遮蔽の確率に関して分類する又は等級別にすることができ、また例えば最小の総輝度から出発して分類する又は等級別にすることができる。
【0053】
更に本発明は、光点を形成する複数の基準目印が所定の空間関係で設けられている測定補助対象物の位置決定及び/又は配向決定のための、特に測定補助対象物を継続的に追跡するためのレーザトラッカに関する。レーザトラッカは、垂直軸を規定する台座と、垂直軸を中心として台座に対して相対的にモータ駆動式に旋回可能である支持部と、傾斜軸を中心として支持部に対して相対的にモータ駆動式に回動可能であり、且つ、光点の画像を検出する画像検出ユニットを備えている旋回ユニットと、レーザビームを放出するためのビーム源と、を有している。更に、レーザビームを用いて、測定補助対象物までの距離を測定する距離測定ユニットと、台座に対して相対的なレーザビームの放出方向を決定する角度測定機能と、測定補助対象物の空間的な姿勢を決定するための機能を備えている制御及び処理ユニットと、が設けられている。上述の機能が実行されると、測定補助対象物の空間的な姿勢が、画像内で検出された光点に関する画像内の画像位置から、画像評価を用いて導出され、その際に、制御及び処理ユニットの制御下で、測定補助対象物の方向における画像が、測定補助対象物の少なくとも一つの位置及び/又は配向に依存してそれぞれ検出可能な光点と共に検出されている。
【0054】
本発明によれば、画像評価のための、画像内の個々の光点の外観に関する局所的な考慮判定基準が規定されているか、又は、画像評価のための、画像内の複数の光点間の位置関係に関する大域的な考慮判定基準が規定されている。更に、制御及び処理ユニットは検査機能を有しており、この検査機能が実行されると、画像内で検出された複数の光点のうちの少なくとも一つの光点について考慮判定基準が満たされているかが検査される(特に、検出された画像から得られる、検出された複数の光点のうちの少なくとも一つに関する画像情報が考慮判定基準と比較されることによって検査される)。考慮判定基準が満たされていない場合には、機能の実行時に、画像内で検出された複数の光点のうちの少なくとも一つの光点が、空間的な姿勢の導出の際に低く重み付けされ、特に除外される。
【0055】
本発明によれば、レーザトラッカの制御及び処理ユニットを、特に、上述の本発明による方法を実施するために構成することができる。
【0056】
本発明によれば、測定補助対象物の構成に関して、付加的な補助マーキングを測定補助対象物に配置することができ、それらの付加的な補助マーキングは基準目印のうちの一つに対して所定の空間関係で位置決めされている。検査機能が実行されると、検出された画像内の補助マーキングの像が、局所的な考慮判定基準又は大域的な考慮判定基準が満たされているかに関して検査される。
【0057】
測定補助対象物の基準目印は、特に、光点を形成する自己発光手段として構成されており、特に発光ダイオードとして構成されている。
【0058】
本発明の別の態様は、本発明による方法に従い、測定補助対象物の方向における画像検出を制御し、測定補助対象物の空間的な姿勢を決定し、また考慮判定基準が満たされているかを検査するためのコンピュータプログラム製品に関し、特に、コンピュータプログラム製品が本発明によるレーザトラッカの制御及び処理ユニットにおいて実行される場合には、コンピュータプログラム製品は機械読み出し可能な担体に記憶されている。
【0059】
以下では、添付の図面に具体的に図示した複数の実施例に基づき、本発明による方法及び本発明による装置を例示的に詳細に説明し、また本発明の更なる利点についても検討する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明によるレーザトラッカの二つの実施の形態を示す。
図2a】測定補助対象物を示す。
図2b】測定補助対象物におけるLEDによって形成されている複数の光点が検出されている画像を示す。
図3a】測定補助対象物を示す。
図3b】測定補助対象物におけるLEDによって形成されている複数の光点が検出されている画像を示す。
図3c】光点に関する画像位置が求められている画像を示す。
図4a】測定補助対象物及び視界障害物を示す。
図4b】測定補助対象物によって形成されている光点並びに視界障害物によって部分的に覆い隠されている光点が検出されている画像を示す。
図5a】カメラに相対的に側方に配向されている測定補助対象物を示す。
図5b】側方に配向されている測定補助対象物に対応する、検出された画像を示す。
図6a】覆い隠されていない、四角形のLEDの像の明度分布に関する等高線プロットを示す。
図6b】部分的に覆い隠されている、四角形のLEDの像の明度分布に関する等高線プロットを示す。
図7】LEDの潜在的な部分的遮蔽を検出するための補助マーキングを備えている測定ターゲットマーク又は測定LEDに関する本発明による第1の実施の形態を示す。
図8】測定LEDの潜在的な部分的遮蔽を検出するための補助マーキング又は補助LEDに関する本発明による第2の実施の形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1には、本発明によるレーザトラッカ10,11に関する二つの実施の形態と、その位置及び姿勢(6DoF=並進3自由度及び回転3自由度の6自由度)が決定されるべき測定補助対象物50と、が示されている。測定補助対象物50は必要に応じて各測定レーザビーム17,21によって追跡されるべきである。ここでは測定補助対象物50が接触式の測定装置として構成されている。第1のレーザトラッカ10は台座40及び支持部30を有しており、この支持部30は、台座40によって規定される旋回軸41を中心に、その台座40に相対的に旋回可能又は回動可能に配置されている。更に照準合わせユニット20(旋回ユニット)が設けられており、この照準合わせユニット20は、傾斜軸(傾き軸乃至トランシット軸)を中心に支持部30に相対的に回動可能であるように、支持部30に配置されている。それらの二つの軸を中心に、照準合わせユニット20の配向を調整できることによって、この照準合わせユニット20から放出されるレーザビーム21の配向も正確に調整することができ、従ってターゲットに照準を合わせることができる。この配向をモータ駆動式に自動的に行うことができる。旋回軸41及び傾斜軸は相互に実質的に直交して配置されている。つまり、正確な軸直交性からの僅かな偏差を事前に特定し、例えばその僅かな偏差によって生じる測定誤差を補正するために、偏差をシステムに格納することができる。
【0062】
図示されている配置構成において、測定レーザビーム21は測定補助対象物50におけるリフレクタ51(リトロリフレクタ)に向けられており、このリフレクタ51において再びレーザトラッカ10へと再帰反射される。この測定レーザビーム21を用いて、対象物50又はリフレクタ51までの距離を、特に伝播時間測定、位相測定原理又はフィゾーの原理を用いて求めることができる。レーザトラッカ10は、(干渉計及び絶対距離計を備えている)距離測定ユニットと、レーザビーム21を所期のように配向及び案内することができる照準合わせユニット20の姿勢、従ってレーザビーム21の伝播方向を特定することができる角度測定器と、を有している。
【0063】
更にレーザトラッカ10は、特に旋回ユニット20は、画像検出ユニットを有している。この画像検出ユニットは、センサ又は検出された画像におけるセンサ露光の位置決定のためにCMOSを有することができるか、又は、特にCCDカメラ又はピクセルセンサアレイカメラとして構成されている。その種のセンサによって、捕捉された露光の検出器における位置有感式検出乃至光位置センシングが実現される。更に測定補助対象物50は、測定すべきターゲット対象物と接触させることができる接触点53を備えている接触式センサを有している。接触式ツール50がターゲット対象物と接触している間に、空間内の接触点53の位置、従ってターゲット対象物上の一つの点の座標を正確に決定することができる。この決定は、リフレクタ51に対する接触点53の所定の相対的な位置決め、及び、例えば発光ダイオード(LED)52として構成することができる、測定補助対象物50に配置されている基準目印52に対する接触点53の所定の相対的な位置決めを介して行われる。択一的に、基準目印52が例えば所定の波長のビームで照明された際に、入射したビームを反射させ(例えば再帰反射性に構成されている目印52)、特に所定の光特性を示すか、又は、基準目印52が所定のパターン又は色コーディングを有するように、基準目印52を形成することもできる。従って、画像検出ユニットのセンサを用いて検出される画像における、基準目印52によって形成された光点の位置又は分布から、接触式ツール50の姿勢を決定することができる。
【0064】
つまり、姿勢を決定するための基礎として、測定補助対象物50の検出された画像、又はその測定補助対象物50によって形成される光点の検出された画像が使用される。既知の最適な画像縮尺が達成されるようにLED52の特に焦点合わせされた検出を行うために、レーザトラッカ10はバリオズームレンズ、即ち、画像検出センサに対して相対的に、相互に独立して位置決め可能である二つのアセンブリ(例えばレンズ)を有している。
【0065】
姿勢を決定するために、レーザトラッカ10は、レーザトラッカ10の制御及び処理ユニットによって実行することができる姿勢決定機能を有している。姿勢決定機能の実行の枠内で、測定補助器具50の基準目印52の画像が検出され、その画像内で検出された光点についての画像位置に基づき、画像処理によって、測定補助対象物50の姿勢又は配向が導出される。その際に、レーザビーム21を用いて照準が合わせられている測定補助対象物50の方向において画像を検出できるようにカメラは配向されている。更に、画像検出の際には、測定補助対象物50の配向に依存して、及び/又は、視界障害物に依存して、カメラが「とらえることができる」光点だけをその都度検出することができる。例えば、一つ又は複数の発光ダイオード52が部分的に覆い隠される可能性があり、それに伴い、画像においては、一つ又は複数の発光ダイオード52の、所定の規準(考慮判定基準)に従う完全な結像が行われない可能性がある。
【0066】
どのような条件下で、結像された光点52が姿勢の決定のために考慮されるか、若しくは考慮されないか、又は、低い重要性で考慮されるかを表している考慮判定基準が満たされているかに関して、画像内で検出された光点を本発明により検査するために、一つ又は複数の光点52の検出によって取得される画像情報(例えば画像内の光点の明度分布又は画像内の結像された光点の、その画像内での相対的な位置)が判定基準と比較される。判定基準が満たされていない場合、その都度検査された光点又は対応する(一つ又は複数の)LED52は、測定補助対象物50の空間的な姿勢を決定するために使用されないか、又は、使用されてもその重要性は低い。
【0067】
その種の検査によって、適切に表されていない光点52を姿勢決定の際に確実に除外することができ、それによって、測定を実施する際に、測定補助対象物50についてのより正確でよりロバストな6DoF検出を行うことができる。
【0068】
例えば、画像内の個々の光点の明度分布を、その種の点についての基準明度分布と比較し、予め規定されている度合の一致が存在する場合には、検査された光点を姿勢決定の際に除外しないようにすることができる。
【0069】
更には、例えば、測定補助対象物50における基準目印52(例えばLED又は再帰反射性のフィルム)の既知の相対的な位置を比較に使用することができる。基準目印52のこの既知の相対的な位置に基づき、その基準目印52によって形成されて検出された、画像内の光点の各位置を、前述の既知の位置によって規定される画像内の目標位置と比較し、それらが一致しているかを調べ、また考慮判定基準が満たされているかについて検査することができる(つまり、画像内で検出された光点の位置は、その画像において、測定補助対象物50におけるLEDの既知の配置構成によって定められている目標位置と例えば所定の許容範囲内で一致しているか、が検査される)。考慮判定基準が満たされていない場合、その考慮判定基準を満たしていないことが確認された一つ又は複数の光点は、姿勢決定の際に低い重要性で考慮されるか、又は、特にそのような一つ又は複数の光点は考慮されない。
【0070】
考慮判定基準と画像情報の上述の比較によって、画像検出時に一つ又は複数の基準目印52が部分的に覆い隠されていること、またそれによって惹起された、光点のエラーのある結像を推定することができる。この関係において、光点の明度分布が例えば目標明度分布と一致しない場合、これは各光点を形成するLED52が部分的に覆い隠されていることを直接的に示している。位置の比較に関して、特に、各点が検出時に部分的に覆い隠されており、それによって、例えばその点についての焦点の計算から、偏差した画像位置が算出される場合には、判定基準(例えば画像内の結像された光点についての目標位置)との一致は存在しない。
【0071】
本発明による検査を、例えば画像の検出時に自動的に実施することができるか、又は必要に応じて(つまり例えば手動でのユーザ入力時に)実施することができる。更に、画像内で検出された個々の点をその画像において選択して検査することができる。
【0072】
第2のレーザトラッカ11は、旋回ユニット(バリオカメラ)15とは別個の、第2のレーザビーム17を放出するビームガイドユニット16を有している。この第2のレーザビーム17もやはりリフレクタ51に向けられている。レーザビーム17も、旋回ユニット15も、それぞれ二つの軸を中心としてモータ駆動式に旋回可能であり、またそれによって、バリオカメラ15を使用して、レーザビーム17を用いて照準が合わせられている測定補助対象物50のターゲット51及びLED52を検出できるように配向させることができる。従って、この第2のレーザトラッカ11においてもリフレクタ51までの正確な距離及び対象物50の姿勢を、LED52の空間的な位置に基づき決定することができる。
【0073】
レーザビーム17,21をそれぞれリフレクタ51に向けるために、各レーザトラッカ10,11には、所定の波長のビームでもって、特に赤外線波長領域にあるビームでもってリフレクタ51を照明するための照明手段が設けられており、また、光位置センサを備えている、付加的な少なくとも一つのターゲットサーチカメラ、いわゆるATR(automatic target recognition)カメラも各レーザトラッカ10,11に配置されている。リフレクタ51において反射され、レーザトラッカ10,11へと戻った各照明ビームをカメラによって検出し、光位置センサを用いてリフレクタ51の位置を各検出器において結像することができる。従って、第1のレーザトラッカ10及び第2のレーザトラッカ11のいずれによっても、リフレクタの結像された位置を特定することができ、またそれらの検出されたサーチ画像位置に依存して、ターゲット(リフレクタ)51を画像内で発見することができる。更には、測定ビーム17,21を用いてターゲットに照準が自動的に合わせられるように、又はレーザビーム17,21がターゲット51に自動的に(反復的に)接近するように、照準合わせユニット20(旋回ユニット)又はビームガイドユニット16を配向させることができる。択一的に、各レーザトラッカ10,11に、それぞれが一つの光位置センサを備えているカメラを少なくとも二つずつ設けることもでき、この場合、各レーザトラッカ10,11について、リフレクタ51に関して検出されたそれぞれ二つのサーチ画像位置から、例えばリフレクタ51の大凡の位置をそれぞれ決定することができる。
【0074】
各レーザトラッカ10,11の距離測定ユニットは、各レーザトラッカ10,11とターゲット51との間の相対距離又は絶対距離、またその距離の変化を求めることによって、ターゲット51までの距離情報を供給する。絶対距離が特に伝播時間測定、位相測定原理によって、又はフィゾーの原理を用いて求められる場合には、距離の変化を求めるために、各距離測定ユニットに対応付けられている干渉計を用いて測定が行われる。測定ビーム17,21は、ターゲット51に入射し、そのターゲット51において反射されて再び戻ってくるようにレーザトラッカ10,11から送出される。続いて、反射された測定ビーム又はその反射された測定ビームの一部がやはりレーザトラッカ10,11において検出され、測定パスに沿って干渉計検出器へと案内される。干渉計検出器においては、受信した測定ビーム17,21と基準ビームとが重畳される。この重畳によって二つのビームの干渉が生じ、この干渉を検出器において検出し、分解することができる。例えば最大値(建設的な干渉)及び最小値(破壊的な干渉)の検出によって、距離の変化を求めることができる。特にその場合には、検出された輝度最大値及び/又は輝度最小値が継続的にカウントされる。
【0075】
距離測定を用いた位置決定と、その際に生じている測定レーザビーム17の配向とによって、照準が合わせられている測定補助対象物50の回転3自由度を決定することができる。レーザトラッカ11は更に、測定補助対象物50の姿勢(回転3自由度)を求めるための機能を有しており、この機能が実行されると、それぞれ可視の基準目印52を備えている測定補助対象物50の画像が検出され、測定補助対象物50の空間的な姿勢が、画像内で検出された、基準目印52の光点に関する画像位置から導出される。光点に関する画像位置は、例えば各光点についてのコントラスト又は明度分布を基礎とした焦点の計算から決定される。
【0076】
光点についての画像位置の決定は特に、画像内で検出された、各光点の外観に依存する。画像検出時に光点が完全且つ適切に可視である場合、一般的には、そのような光点は画像内で検出され、またその際に生じている画像属性は、画像内で検出されたその画像内の光点に対応付けることができるものであって、相応の目標属性によって表される属性と一致しているか、又は、それらの目標属性に関する許容範囲内にある。従って、基準目印52は画像内で期待通りの光点として結像される。
【0077】
しかしながら、画像検出時に基準目印(LED)52が部分的に覆い隠されているか、又は、(光点を形成する)LED52の放出方向がカメラに対して好適でない角度(例えば90°を超える角度)にある配向で測定補助対象物50が設けられている場合、検出されたその光点52は画像内で期待通りの画像属性を有していない。つまり例えば、そのようにして検出された明度分布は、正面から完全に検出された相応の光点に関する分布と(許容範囲の枠内で)一致しない。光点についてそのような質の低い画像特性を用いた場合、焦点の計算又は対応する画像位置の決定から、画像内には目標値から偏差した位置が生じる。
【0078】
少なくとも一つの点に関するその種のエラーのある画像位置に基づいて、上述の機能によって姿勢を決定する場合、測定補助対象物50に関する姿勢の決定に同様にエラーが含まれることになる。
【0079】
姿勢を決定する際のその種のエラーを低減又は回避するために、レーザトラッカ11は更に本発明による検査機能を有しており、(レーザトラッカ11の制御及び処理ユニットによって)この検査機能が実行されると、画像内で検出された少なくとも一つの光点が、考慮判定基準は満たされているか否かについて検査される。この考慮判定基準が満たされていない場合には、測定補助対象物50の姿勢を導出するために、検査された少なくとも一つの光点を考慮する際の、その光点の重みは低い。従って、適切に結像されていない基準目印52又は、各目印52によって形成される光点をフィルタリングすることができ、またその結果、特に姿勢を決定する際のエラーを低減することができる。
【0080】
この関係において、考慮判定基準は、例えば、画像基準としての光点52に関する目標コントラスト及び/又は目標形状及び/又は空間的な目標面積及び/又は目標明度分布及び/又は(光度に関する)目標総輝度を規定することができるか、又は、画像内で検出された複数の光点に関する、画像内の画像位置の相対的及び空間的な目標位置を規定することができる。
【0081】
図2a及び図2bには、測定補助対象物50と(図2a)、測定補助対象物50におけるLED52によって形成される複数の光点61が検出されている画像60と(図2b)が示されている。画像60を検出するカメラユニットは、特に、実質的にLED52の放射波長又は反射性の基準目印に対する照明波長のみを検出するための波長選択性フィルタを有することができる。これによって、例えば、散乱ビームの影響を回避することができ、また光点の結像の品質を改善することができる。
【0082】
ここに図示されているような、画像検出カメラに相対的な測定補助対象物50の正面方向への配向に従い、光点61は画像60において最適に結像されており、またその種のLED52に関する各目標結像に対応している。従って、検出されたそれらの光点61を本発明に従い検査した場合、結像されている全ての光点61は考慮判定基準を満たしているものとみなされるので、それらの光点61のいずれも考慮すべきでない光点として識別されることはない。画像60内で検出されたそれらの光点61に基づき、各光点61について一つの画像位置を画像処理によって決定することができる。それらの画像位置と、測定補助対象物50におけるLED52の既知の相対的な配置構成(またそれによって既知となる、画像60内の光点61の相対的な目標位置)とから、測定補助対象物50の空間的な姿勢を導出することができる。
【0083】
図3aには、所定の位置に配置されている複数の基準目印52,52aを備えている測定補助対象物50が示されているが、幾つかの基準目印52aが障害物55(ここでは例えばユーザの手)によって部分的に覆い隠されている。
【0084】
図3bには、基準目印52,52aに対応する光点61,62が検出されている画像60が示されている。光点61はそれぞれ、完全に可視である基準目印52の像を表している。これに対して光点62はそれぞれ、画像60における部分的に覆い隠されている基準目印52aの像を表している。
【0085】
それらの光点61,62に基づいて、定補助対象物50の空間的な姿勢を決定する場合、光点62が期待通りには結像されておらず、従って完全には結像されていないことから、姿勢の決定にある程度のエラーが含まれる可能性がある。これは、光点62に関する画像位置を決定する際に、画像位置を決定するための焦点の計算において、完全には結像されていない基準目印52に関する明度分布が使用されたことに起因する。
【0086】
その種のエラーの発生を低減するために、又はその種のエラーを回避するために、本発明による方法の枠内では、光点61,62が、(特に姿勢の決定に関して考慮するために)考慮判定基準が満たされているかについて検査される。このために、検出された画像によって、またその画像内で検出された光点61,62によって生じる情報、例えば光点に関する明度分布又は光点61,62の相対的な空間関係が、考慮判定基準、例えば光点に関する目標明度分布(局所的な考慮判定基準)と、若しくは、光点61,62又は基準目印52,52aの所定の相対的な目標空間関係(大域的な考慮判定基準)と比較される。特に、予め規定されている許容範囲内で情報が考慮判定基準と一致している場合には、検査された各光点が姿勢を決定するために考慮されるか、又は、考慮判定基準と一致しない場合には、光点は低く重み付けされる。
【0087】
図3cに示されている実施の形態によれば、LED52の既知の相対的及び空間的な配置構成に基づき、画像センサ(又は画像60内)においてLED52の像がどこに現れなければならないかが計算される。光点62に関して予測された画像座標から偏差75を、対応するLED52の部分的な遮蔽に関する指標とすることができる。LED52が部分的に覆い隠されていることに基づき、光点62に関する画像座標72が変わっているので、それによって、外側の空間的な姿勢に関する精度がシステマチックに低下する。
【0088】
本発明による検査の枠内では、公知のアウトライアーテストを、最初のリセクションの計算後の画像座標71,72の残差に適用することができる。全てのLEDの像61,62を使用した最初の計算の結果を用いて、全ての画像座標71,72に対して残差が計算される。続いて、一つ又は複数の最大残差がランダムな分布(例えば正規分布又はt分布)内にあるか否かが検査される。信頼区間を例えば、経験に応じて、又は所望の感度に応じて規定することができる。その後は、場合によっては識別されるアウトライアーを含まずにリセクションが繰り返される。つまり、各光点62は測定補助対象物50の空間的な姿勢を決定するためには考慮されない。
【0089】
図4aには、図3aと同様に、所定の位置に配置されている複数の基準目印52,52aを備えている測定補助対象物50が示されているが、ここでは幾つかの基準目印52aが構造的な障害物55a(例えばロボットアームの一部)によって部分的に覆い隠されており、また一つの別の基準目印は完全に覆い隠されている。図4bには、(各基準目印52,52aに関する)光点61,62が検出されている相応の画像60が示されている。光点61はそれぞれ、完全に可視である基準目印52の像を表している。これに対して光点62はそれぞれ、画像60における部分的に覆い隠されている基準目印52aの像を表している。測定補助対象物50の完全に覆い隠されている目印は画像60において検出されていない。画像60において検出された光点61,62の本発明による検査を、考慮判定基準が満たされているかに関しての上述の検査と同様に実施することができる。
【0090】
図5aには、既知の空間関係で配置されており、且つ複数のLED52を備えている測定補助器具50が示されている。ここではLED52が、測定補助器具50を検出するカメラに相対的に側方に向けられている。図5bには、測定補助器具50の側方への配向に応じて、LED52に関する光点63が検出されている画像60が示されている。その種の配向においては、LED52に関する光点63が歪んで画像センサに結像されるので、その結果、個々の光点63は、各LED52の期待通りの完全な結像には対応していない。更に、LED52aは構造体53によって部分的に覆い隠されており、それによって、対応する光点63aが歪んでおり、その上、完全には結像されていない。
【0091】
しかしながら、本発明による検査の枠内では、画像60から、その画像60内で検出された光点63の空間関係を導出し、画像60内のその空間関係が、測定補助器具50におけるLED52の既知の空間的な配置構成と実際に一致しているかを確認することができ、それによって、考慮判定基準が満たされているかを確認することができる。このために特に、測定補助機器50の各姿勢についての相応の本発明による機能を備えているレーザトラッカのデータファイルには、検出された画像60における各光点63の見え方に関する各目標値が格納されている。
【0092】
更に、データファイル又は制御及び処理ユニットには、特に測定補助器具50の姿勢によっては単一又は複数のLED52の可視性を妨害する可能性がある、測定補助機器50の構造物53、及び/又は、測定空間の構造体を記憶することができ、それらの構造体を、考慮判定基準が満たされているかを検査する際に考慮することができる。
【0093】
図6a及び図6bには、四角形のLEDの像の明度分布に関する等高線プロット65,65aがそれぞれ示されている。図6aには、障害物によってLEDが部分的に覆い隠されることなく検出されたLEDの等高線プロット65が示されている。この種の明度分布65を、一方では、基準又は満たされるべき考慮判定基準としてシステム(レーザトラッカの制御及び処理ユニット)に格納し、画像内のLEDの像に対する比較画像として使用することができる。他方では、そのような明度分布に関して設定されている考慮判定基準が満たされているかを検査する際に、相応に結像されたLEDに関して、大きい一致度、従って測定補助器具の姿勢の決定に関する光点の考慮基準を規定することができる。
【0094】
図6bには、(図6aに関して)同一の四角形のLEDの像の明度分布に関する高等線プロット65aが示されており、ここではLEDが左側から部分的に覆い隠されている。LEDが部分的に覆い隠されていることに起因して、この明度分布65aはその空間的な面積及び形状が、図6aによるLEDの覆い隠されていない像に関する分布とは異なっている。本発明による検査機能が実行されると(この分布を形成した、部分的に覆い隠されている光点が検査される)、この光点65aに関しては、その種のLEDについての目標明度分布を表す考慮判定基準が満たされていないことが確認され、従ってこの光点は姿勢の決定において考慮されないか、又は考慮する際のその光点の重みは低い。
【0095】
図7には、LED52の潜在的な部分的遮蔽を検出するための、測定補助対象物における補助マーキング56を備えている、測定ターゲットマーク又はLED52の本発明による第1の実施の形態が示されている。補助マーキング56はここではLED52の周囲にリング状に形成されている。この補助マーキング56を再帰反射性のシート又はLEDとして実現することができる、及び/又は、LED52の代わりに、受動的な再帰反射性のシートを設けることができる。測定ターゲットマーク又はLED52の位置は、測定補助対象物の姿勢を決定するための空間的なリセクションの計算に使用される。リング状の補助マーキング56が画像センサにおいて閉じられずに結像される場合、このことは、測定ターゲットマーク(又はLED)52が部分的に覆い隠されていることを示唆している。
【0096】
補助マーキング56を用いる場合の、検出された画像におけるコントラストを高めるために、補助マーキング56の周囲並びに補助マーキング56とLED52との間に暗いマスキングが設けられている。
【0097】
図8には、測定LED52の潜在的な部分的遮蔽を検出するための、測定補助対象物における補助マーキング又は補助LED58を備えている、測定LED52の本発明による第2の実施の形態が示されている。図示されている実施の形態によれば、三つの補助LED58が測定LED52の周囲に位置決めされている。補助LED58のうちの一つ又は二つが画像センサに結像されない場合、このことはやはり、測定LED52が部分的に覆い隠されていることの典型的な示唆である。補助LEDは、部分的な遮蔽を一様にどの方向からも確実に検出できるように位置決めされている。カメラ光学系及び画像センサの結像品質に応じて、補助LED58のこの位置決めに関して、測定LED52までの個別の「安全距離」を予め想定することができる。
【0098】
図7によるリング状の補助マーキング56及び/又は図8による補助LED58が遮蔽されているか否かの検査に関して、一つの特別な実施の形態によれば、補助マーキング56及び/又は補助LED58に関連する画像情報を考慮判定基準と比較するために、本発明による検査方法又は検査機能を実行することができる。このために、考慮判定基準は特に、補助マーキング56及び/又は補助LED58の形状及び/又は配置構成に合わせて個別に調整されている。
【0099】
図示した図面は考えられる幾つかの実施例だけを概略的に示していると解するべきである。また本発明によれば、種々のアプローチをやはり相互に組み合わせることができ、また、対象物を結像するための方法又は対象物の姿勢を決定するための方法と組み合わせることができ、更には、冒頭で述べたような従来技術から公知の測定機器と、特にレーザトラッカと組み合わせることができる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8