特許第6081103号(P6081103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6081103撹拌装置及び小サイズの平板部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081103
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】撹拌装置及び小サイズの平板部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 15/02 20060101AFI20170206BHJP
   B01F 7/18 20060101ALI20170206BHJP
   B65G 33/20 20060101ALI20170206BHJP
   C09J 201/00 20060101ALN20170206BHJP
   B32B 38/18 20060101ALN20170206BHJP
【FI】
   B01F15/02 C
   B01F7/18 B
   B65G33/20
   !C09J201/00
   !B32B38/18 C
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-180227(P2012-180227)
(22)【出願日】2012年8月15日
(65)【公開番号】特開2014-36925(P2014-36925A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】江田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】栗村 啓之
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−084873(JP,A)
【文献】 特開昭60−217231(JP,A)
【文献】 特公昭35−003359(JP,B1)
【文献】 実公昭11−014064(JP,Y1)
【文献】 実公昭51−014934(JP,Y1)
【文献】 再公表特許第2012/067232(JP,A1)
【文献】 特開2011−152536(JP,A)
【文献】 米国特許第03723020(US,A)
【文献】 特開2010−053233(JP,A)
【文献】 特開2011−026561(JP,A)
【文献】 特開平08−309172(JP,A)
【文献】 特開平09−047647(JP,A)
【文献】 特開2005−074402(JP,A)
【文献】 特開2003−164744(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/067205(WO,A1)
【文献】 特開2009−256125(JP,A)
【文献】 米国特許第06024480(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 15/02
B01F 7/18
B32B 38/18
B65G 33/20
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペーサーが混入した接着剤を撹拌するための撹拌装置であって、
前記スペーサーが混入した前記接着剤を収容するべき収容槽と、
軸部及び当該軸部に連結した撹拌翼を備える撹拌手段であって、前記撹拌翼が、前記収容槽内に配置可能であり、かつ前記軸部を回動軸として前記収容槽内で回動可能である、撹拌手段と、を備え、
前記撹拌翼の回動に応じて前記収容槽内で前記スペーサーが分散した前記接着剤を搬送する搬送構造が前記軸部に対して一体的に設けられ、前記搬送構造が、前記撹拌翼の回動を生じさせる前記軸部の回動に応じて回動し、前記スペーサーが分散した前記接着剤の前記収容槽内から前記収容槽外への搬送を生じさせ、
前記搬送構造は、前記軸部の回動軸に沿って螺旋状に延びる螺旋ガイドと、前記螺旋ガイドが内部に設けられた筒部を含む、撹拌装置。
【請求項2】
前記搬送構造が前記軸部の前記回動軸に沿って延びる棒部を更に含み、
前記螺旋ガイドが前記棒部の外周面上に設けられる、請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記筒部に設けられる前記接着剤の導入口が、前記収容槽の底面に対向する位置に設けられる、請求項1又は2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記撹拌翼が、前記軸部から前記収容槽の内周面側へ延びる少なくとも1つの横棒部と前記横棒部から前記収容槽の深さ方向に延びる少なくとも1つの縦棒部とを含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撹拌装置及び小サイズの平板部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンに代表される小型電子機器の普及が著しく、これに活用されるマザーガラスを高効率に生産することに強い要望がある。なお、マザーガラスは、大判の板ガラスを顧客仕様に合わせて切断したものである。
【0003】
特許文献1には、同文献の図1乃至図3に示すように固着剤2を介して素材ガラス1を積層して素材ガラスブロックAを形成し、次に、同文献の図4に示すように円板カッター11により分割して小面積の分割ガラスブロックBを形成し、次に、小型ガラスブロックBの外周を加工してガラスブロックCを形成し、次に、ガラスブロックCの端面加工し、次に、ガラスブロックCを個別に分離することが開示されている。固着剤2aは、同文献の段落0010に記載のように、光硬化性の液状固着剤であり、UV照射により硬化し、温水で80〜90度に昇温することで軟化する。
【0004】
なお、特許文献2乃至5には撹拌装置に関する技術が開示されている。特許文献2には、同文献の図1乃至4の参照から分かるように、自動分析装置1において検体容器4の内部の液状の検体へサンプリングノズル2に撹拌部材としての螺旋翼2cを設け、検体内の物質の均一性を向上させることが開示されている。
【0005】
特許文献3には、同文献の図1の参照から分かるように、吸引ノズル2の撹拌翼9が設けられ、サンプリング時、吸引ノズル2が昇降するときサンプル容器7内の液体サンプル8に対流を生じさせて液体サンプル8を有効に撹拌することが開示されている。
【0006】
特許文献4には、同文献の図1乃至図6から分かるように、収容槽1内にタービン形攪拌機3を配置して図示の矢印のように液体を流動させることが開示されている。
【0007】
特許文献5には、同文献の図1及び図2から分かるように、ハウジング14により支持された吸引管30は、撹拌管12の下端からその上端まで延びる流路を有する。撹拌管12の下部には、ドラム等のコンテナの内部に収容された液体の中に浸される螺旋状のスクリュが設けられる。装置10の動作時、図1に示す接続具35が適当な吸引ポンプに接続されることが説明されている。吸引管30、通路32、パイプエルボ34、連結具35で液体の流れが閉じられると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−256125号公報
【特許文献2】特開2002−162402号公報
【特許文献3】特開2004−101271号公報
【特許文献4】特開平5−170801号公報
【特許文献5】特開平7−246324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
板ガラスの仮固定に用いられる接着剤にスペーサーを分散させることにより接着剤の使用量の低減を図り、若しくは積層状態の板ガラスの積層間隔を好適に制御することが期待される。しかし、所定量の接着剤に含まれるスペーサー個数にバラツキがあると、十分に接着剤の使用量を低減することができないおそれがある。また、所定量の接着剤に含まれるスペーサー個数にバラツキがあると、スペーサー入りの接着剤層を介して積層される板ガラスの積層間隔を好適に制御できず、特に、積層状態の板ガラスを一括して外形加工又は端面加工する際には個々の板ガラス間で加工誤差が生じ、ガラス製品の形状の信頼性が低下してしまうおそれがある。
【0010】
本願発明者は、より均一にスペーサーが分散した接着剤を提供するという新たな課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る撹拌装置は、スペーサーが混入した接着剤を撹拌するための撹拌装置であって、前記スペーサーが混入した前記接着剤を収容するべき収容槽と、軸部及び当該軸部に連結した撹拌翼を備える撹拌手段であって、前記撹拌翼が、前記収容槽内に配置可能であり、かつ前記軸部を回動軸として前記収容槽内で回動可能である、撹拌手段と、を備え、前記撹拌翼の回動に応じて前記収容槽内で前記スペーサーが分散した前記接着剤を搬送する搬送構造が前記軸部に対して一体的に設けられ、前記搬送構造が、前記撹拌翼の回動を生じさせる前記軸部の回動に応じて回動し、前記スペーサーが分散した前記接着剤の前記収容槽内から前記収容槽外への搬送を生じさせる。本装置によれば、より均一にスペーサーが分散した接着剤を好適に提供可能である。
【0012】
前記搬送構造は、前記軸部の回動軸に沿って螺旋状に延びる螺旋ガイドを含む、と良い。
【0013】
前記搬送構造は、前記螺旋ガイドが内部に設けられた筒部を更に含む、と良い。
【0014】
前記搬送構造が前記軸部の前記回動軸に沿って延びる棒部を更に含み、前記螺旋ガイドが前記棒部の外周面上に設けられる、と良い。
【0015】
前記筒部に設けられる前記接着剤の導入口が、前記収容槽の底面に対向する位置に設けられる、と良い。
【0016】
前記撹拌翼が、前記軸部から前記収容槽の内周面側へ延びる少なくとも1つの横棒部と前記横棒部から前記収容槽の深さ方向に延びる少なくとも1つの縦棒部とを含む、と良い。
【0017】
本発明に係る小サイズの平板部材の製造方法は、上述のいずれかに記載の撹拌装置で撹拌したスペーサー含有接着剤を介して平板部材同士を貼り合わせる工程と、前記貼り合わせ工程により得られた前記平板部材の積層体を切断する工程と、前記切断工程により得られた小サイズの積層体の前記接着剤を除去して前記小サイズの積層体を構成する小サイズの平板部材を個々に分離する工程と、を含む。
【0018】
前記小サイズの前記積層体の外形を加工する工程、又は前記小サイズの前記積層体を構成する個々の前記平板部材の端部を面取りする工程、又は前記小サイズの前記積層体をエッチング液に浸す工程を更に備える、と良い。
【0019】
前記平板部材が透明基板であり、前記接着剤が前記透明基板を介した入射光に応じて硬化可能である、と良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、より均一にスペーサーが混入した接着剤を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る大サイズの板ガラス積層体の概略的な斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る大サイズの板ガラス積層体の上面図であり、縦及び横に仮想的に引かれた分割線を示す。
図3】本発明の第1実施形態に係る大サイズの板ガラス積層体の分割により小サイズの板ガラス積層体が得られることを示す模式図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る小サイズの板ガラス積層体の昇温処理により小サイズの板ガラス積層体が個々の小サイズの板ガラスに分離することを示す模式図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る小サイズの板ガラス積層体の外形処理を示す概略工程図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る小サイズの板ガラス積層体の端面処理を示す概略工程図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る撹拌装置の概略構成図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る撹拌装置の概略構成図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る撹拌装置の軸部の構成を示す模式図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る撹拌装置の軸部の構成を示す模式図である。
図11】参考例に係る撹拌装置の概略構成図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る撹拌装置の概略構成図である。
図13】本発明の第3実施形態に係る撹拌装置の概略構成図である。
図14】本発明の第4実施形態に係る撹拌装置の軸部周りの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。各実施形態は、個々に独立したものではなく、過剰説明をするまでもなく、当業者をすれば、適宜、組み合わせることが可能であり、この組み合わせによる相乗効果も把握可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。
【0023】
<第1実施形態>
図1乃至図11を参照して第1実施形態について説明する。図1は、大サイズの板ガラス積層体の概略的な斜視図である。図2は、大サイズの板ガラス積層体の上面図であり、縦及び横に仮想的に引かれた分割線を示す。図3は、大サイズの板ガラス積層体の分割により小サイズの板ガラス積層体が得られることを示す模式図である。図4は、小サイズの板ガラス積層体の昇温処理により小サイズの板ガラス積層体が個々の小サイズの板ガラスに分離することを示す模式図である。図5は、小サイズの板ガラス積層体の外形処理を示す概略工程図である。図6は、小サイズの板ガラス積層体の端面処理を示す概略工程図である。図7及び図8は、撹拌装置の概略構成図である。図9及び図10は、撹拌装置の軸部の構成を示す模式図である。図11は、参考例に係る撹拌装置の概略構成図である。
【0024】
まず図1乃至図6を参照して大サイズの板ガラス200(以下、単に板ガラス200と呼ぶ場合がある)から最終的に小サイズの板ガラス201(以下、単に板ガラス201と呼ぶ場合がある)が効率的に製造される点について説明する。なお、図1等に示すXYZ座標について、X軸とY軸に平行な所定の平面に板ガラスが存在し、Z軸が板ガラスの積層方向/板ガラスの厚み方向に一致する。
【0025】
なお、板ガラス200は、平板部材の一例であり、サファイア基板、石英基板、プラスチック基板、フッ化マグネシウム基板等であっても構わない。板ガラス200は、強化板ガラス、素材板ガラス、透明導電膜付きガラス基板、電極や回路が形成されたガラス基板等であっても良い。板ガラス200の大きさに特に制限はないが、典型的には10000〜250000mm2程度の面積を有し、0.1〜2mm程度の厚みを有する。積層される板ガラス200は同サイズであるのが好ましい。板ガラス200の表面に所定の印刷パターンやめっきパターンが印刷されていても構わない。印刷パターンの例としては携帯電話の表示画面のデザイン、めっきパターンの例としてはAlやAlNd等の金属配線パターン、クロムめっきパターンが施されているロータリーエンコーダーが挙げられる。
【0026】
図1に示すように大サイズの板ガラス200が、光硬化性接着剤(接着剤)10にスペーサー20が混入したスペーサー混入接着剤から成る接着剤層100を介して1枚ずつ貼り合わされ、選択的にローラー等によりZ軸方向に圧縮され、その後、紫外線(エネルギー線)照射により光硬化性接着剤10が硬化し、これにより、大サイズの板ガラス積層体250(以下、単に板ガラス積層体250と呼ぶ場合がある)が形成される。板ガラス積層体250は、1層目L1〜5層目L5を構成する5枚の大サイズの板ガラス200の積層体であり、上述の接着剤層100を介して各板ガラス200が積層されている。なお、図1では、スペーサー20が単層を為すように板ガラス200間に配置されているが、あくまで例示的なものであり、スペーサー20が板ガラス200間で複層を為すように配置若しくは無秩序に分散していても良い。光硬化性接着剤10の硬化を促進する光の波長は任意であり、紫外線に限られるべきものではない。
【0027】
板ガラス積層体250のZ軸方向の厚みが薄すぎると機械的強度が弱くなってしまうため、個々の板ガラス200の厚みにも依存するが、好ましくは5枚以上、より好ましくは10〜30枚程度の板ガラス200を積層することが望ましい。なお、光硬化性接着剤10、スペーサー20の具体的な材料については任意である。光硬化性接着剤10の比重は、1.06〜1.115である。スペーサー20の比重は、1.0〜1.1である。
【0028】
紫外線照射は、板ガラス200を1枚積層する度に実施してもよく、光硬化性接着剤10へ光が到達する限りにおいて、複数枚を積層した後にまとめて実施してもよい。このとき照射紫外線強度が強すぎると板ガラス積層体250の剥離性や外観が経時劣化しやすくなる一方で、照射紫外線強度が弱すぎると光硬化性接着剤10の硬化が不十分となることから、板ガラス200を貼り合わせる毎に光硬化性接着剤10を硬化する際には、紫外線の照射量を1000〜10000mJ/cm2とすることが好ましく、1200〜6000mJ/cm2とすることがより好ましく、1500〜3000mJ/cm2とすることが更により好ましい。照射時間は10〜200秒が好ましく、20〜100秒がより好ましい。
【0029】
図2に示すように、板ガラス積層体250の上面251には、図2を正面視して縦(Y軸方向)に走る分割線DL11と横(X軸方向)に走る分割線DL21が格子状に設定され、各分割線DL11、DL21に沿って板ガラス積層体250が分割されて図3に模式的に示す小サイズの板ガラス積層体260(以下、単に板ガラス積層体260と呼ぶ場合がある)が形成される。なお、大サイズの板ガラス積層体250を分割する具体的な手法は任意であるが、高い生産効率を維持するためにはダイシングブレードと呼ばれる回転刃を活用して板ガラス積層体250をその積層方向(Z軸方向)に切断することが望ましい。固定砥粒式又は遊離砥粒式ワイヤソー、レーザービーム、エッチング(例:フッ酸や硫酸等を用いた化学エッチングや電解エッチング)、ウオータージェット、及び赤熱帯(ニクロム線)等を単独又は組み合わせで活用しても構わない。分割線DL21間の間隔W10と分割線DL11間の間隔W20は顧客仕様により適当に設定される。
【0030】
図4に示すように、分割により得られた小サイズの板ガラス積層体260は、80℃から90℃程度の温水が蓄えられた溶融処理槽300内に投入される。上述の紫外線照射により硬化した光硬化性接着剤10の層は、80℃〜90℃程度の温水内で昇温され、板ガラス201との界面からフィルム状に剥離し、これにより、光硬化性接着剤10が効率的に除去され、小サイズの板ガラス積層体260を構成する板ガラス201が個々に分離し、多数の小サイズの板ガラス201が効率的に得られる。なお、図4においては、図示の都合上、溶融処理槽300が小さく図示されている。
【0031】
図4に示す光硬化性接着剤10の溶融処理前、図5に模式的に示すように板ガラス積層体260の外形を加工することが望ましい場合があり、これにより、個々に分離する前に板ガラス201の外形を一括して加工することができる。この場合、冒頭で説明したように板ガラス201間の積層間隔にバラツキがあると、個々の板ガラス201の外形の加工精度が劣化してしまうおそれがある。なお、板ガラス積層体260の外形加工の具体的な方法は任意であり、例えば、回転刃によるダイシング、回転砥石による研削、超音波振動ドリルによる孔開け、回転ブラシによる加工等を採用すると良い。
【0032】
図4に示す光硬化性接着剤10の溶融処理前、図6に模式的に示すように板ガラス積層体260を構成する板ガラス201の端部201kの面取りを施すことが望ましく、これにより、個々に分離する前に板ガラス201の端部201kの面取りを一括して行うことができる。また、図5を参照して説明した板ガラス積層体260の外形加工後に板ガラス201の端部201kの面取りを施すことにより、外径加工後の板ガラス201のチッピング、ヒビ、又は、欠け等を除くことも期待できる。板ガラス201の端部201kの端部を加工する際、冒頭で説明したように板ガラス201間の積層間隔にバラツキがあるとき、個々の板ガラス201の端部201kの面取り精度が劣化してしまうおそれがある。板ガラス201の端部201kの面取りの具体的な方法は任意であるが、図6(a)に示すように切削治具310を用いることが望ましく、これにより、図6(b)から分かるように積層状態の板ガラス201の端部201kを一括して面取りすることができる。
【0033】
図6に示すように、切削治具310は、不図示のスピンドル等に固定され、回動軸AX3周りに回動可能である。切削治具310は、回動軸AX3に沿って連続的に設けられた切削山部310kを有し、切削山部310kが回動軸AX3周りの周方向に連続している。切削山部310kは、1組の切削傾斜面310m、310nを有し、各切削傾斜面310m、310nは、回動軸AX3周りの周方向に連続した平坦面である。切削山部310kの頂部310rも回動軸AX3周りの周方向に線状に連続する。切削治具310は、その頂部310rが積層状態の板ガラス201の間に突入する態様にて板ガラス積層体260に対して位置付けられ、その状態で回動軸AX3周りに回動され、これにより、板ガラス201の端部201kの面取りが施される。
【0034】
板ガラス積層体260に対して切削治具310をX軸方向へ移動させることにより、板ガラス201の端部201kに施す面取りの程度を調整することができる。板ガラス積層体260に対して切削治具310をY軸方向へ移動させることにより、板ガラス201の端部201kに沿って連続的に面取りすることができる。切削治具310をXY平面内において移動させることに代えて、板ガラス積層体260をXY平面内において移動させても良い。
【0035】
以下、図7乃至図10を参照してスペーサー20がより均一に分散された光硬化性接着剤10を供給可能な撹拌装置の構成について詳細に説明する。なお、スペーサー20のより均一な分散により、光硬化性接着剤10の使用量の低減を十分に図ることが期待できる。また、スペーサー20のより均一な分散により、上述の板ガラス201間の積層間隔のバラツキの低減を図ることができ、この点は、板ガラス201の外形加工又は端部加工に際して特に有利である。なお、スペーサー20が混入した光硬化性接着剤10の用途は、板状部材等の仮固定に限定されるべきものではなく、半永久的な接着にも適用できる。
【0036】
図7に示すように撹拌システム500は、収容槽150、軸部161、及び撹拌翼162を具備する撹拌装置400を有し、軸部161及び撹拌翼162より撹拌手段/撹拌機構が構成される。撹拌システム500は、撹拌装置400の軸部161を駆動するための駆動装置173を有する。駆動装置173から伝達される回転力に応じて軸部161が回動し、これと同時に軸部161の下端に連結した撹拌翼162が回動し、これにより、収容槽150内において光硬化性接着剤10とスペーサー20が撹拌混合される。後述の説明から明らかなように、軸部161は、撹拌翼162の回動軸として機能するほか、スペーサー20が分散した光硬化性接着剤10を収容槽150内から収容槽150外へ自律的/自動的に搬送する搬送手段としても機能する。撹拌システム500は、収容槽150から軸部161を介して供給されるスペーサー20が分散した光硬化性接着剤10を吐出する吐出装置175を更に有し、吐出装置175の働きにより図1を参照して説明したように板ガラス200の面上に所定量のスペーサー混入接着剤が塗布される。
【0037】
なお、駆動装置173の駆動軸173mが結合部173nを介して撹拌装置400の軸部161に結合する。吐出装置175と軸部161間は開閉弁177が設けられた流路179を介して流体移動可能に接続される。流路179の内径は、流れる流体の流量や粘度に応じて適宜設定される。撹拌時の液粘度を安定化させるため、収容槽150に温度調整機構(不図示)を持たせてもよい。温度調整機構は特に限定されないが、ヒーターや通水ジャケットおよびチラーユニット等槽全体を一定温度に保てるものであれば何でもよい。
【0038】
収容槽150は、例えば、金属製の有底の円筒体であり、所定量の光硬化性接着剤10を収容可能である。収容槽150の内部には、上述の撹拌手段/撹拌機構である撹拌翼162が連結した軸部161が配置される。撹拌翼162は、収容槽150内の光硬化性接着剤10に浸され、その液面よりも深く配置される。撹拌翼162としては、液中に気泡を巻き込まずに槽内を均一化させることができれば特に限定されるものではない。大容量である程度の粘性を有する光硬化性接着剤10の特性を考慮して適当な撹拌翼162が選択される。
【0039】
例示的には、比較的大容量の収容槽150内の光硬化性接着剤10を全体的に均一に撹拌できるアンカー翼が撹拌翼として選択される。端的には、撹拌翼162は、軸部161に対して対称の横棒部162m、162nと縦棒部162p、162qから構成される。横棒部162m、162nは、軸部161から離間する側へ収容槽150の内周面側へ直線的に延び、換言すれば、円筒の収容槽150との関係において半径方向外側へ直線的に延びる。横棒部162m、162nの長さは、収容槽150の内径を考慮して収容槽150の内周面に干渉しない程度に設定される。縦棒部162p、162qは、横棒部162m、162nの各外側端部から軸部161に沿って収容槽150の深さ方向、端的には収容槽150の底から離間する上側へ直線的に延びる。縦棒部162p、162qの長さは収容槽150の深さ範囲内に設定することが望ましい。
【0040】
撹拌翼162の単位時間当たりの回転数は任意であるが、液中に気泡が生じなく、スペーサーの均一な拡散が達成できる適当な速度が選択される。撹拌翼162は、ヘリカルリボン翼、ピッチドパドル翼、リボン翼、ピッチド(フラット)タービン翼、フルゾーン翼等であっても良い。
【0041】
図3に示す板ガラス積層体260において接着剤層100に気泡が混入すると、板ガラス積層体260をエッチング液等に液浸したときに気泡内へ意図せずにエッチング液が侵入し、板ガラス201の表面若しくは表面上の任意の層を侵すおそれがあり、マザーガラスの外観検査不良等を招来してしまうおそれがある。
【0042】
軸部161は、自身の回動に応じて図8に模式的に示すように導入口161kから排出口161rまでスペーサー20が分散した光硬化性接着剤10を自律的/自動的に搬送可能に構成されている。このように軸部161を自律的/自動的な搬送経路として活用することによりスペーサー20が所望の程度に均一に分散した光硬化性接着剤10を好適に取り出すことができる。撹拌翼162の適当な使用により光硬化性接着剤10中に気泡が生じないようにすることで収容槽150内から取り出される光硬化性接着剤10に気泡が混入することも抑制できる。
【0043】
図9及び図10に軸部161の例示的な構成を示す。図9及び図10に示すように、軸部161は、回動軸AX5に沿って螺旋状に延びる螺旋ガイド163を有し、螺旋ガイド163は、回動軸AX5に沿って螺旋状に延びる一組の螺旋ガイド面を有し、一組のガイド面により規定される螺旋ガイド163の肉厚は適当な厚みに設定されている。螺旋ガイド163の間には回動軸AX5沿いに螺旋状に延在する螺旋流路166が設けられる。スペーサー20が分散した光硬化性接着剤10は、螺旋ガイド163の回動に応じて螺旋ガイド163の螺旋ガイド面上を流れ、つまり螺旋流路166内を流れる。
【0044】
螺旋ガイド163の周囲には螺旋ガイド163に対して一体の筒部164が設けられ、これにより、螺旋流路166が外側から閉じられ、スペーサー20が分散した光硬化性接着剤10の効率的な搬送が可能になる。筒部164は、回動軸AX5に沿って直線的に延びる筒体であり、内周面164aと外周面164bを有し、内周面164aと外周面164b間の間隔により規定される所定の厚みを有する。筒部164は、螺旋ガイド163と一緒に回動する。
【0045】
螺旋ガイド163は有軸構成であることが望ましく、本例では、図9に示すように、回動軸AX5に沿って直線的に延びる棒部165の外周面上に螺旋ガイド163が一体的に設けられ、棒部165と螺旋ガイド163が一緒に回動する。棒部165、螺旋ガイド163、及び筒部164が一緒に回動軸AX5周りに回動し、この回動に応じてスペーサー20が分散した光硬化性接着剤10が螺旋流路166内を流れる。
【0046】
螺旋流路166は、螺旋ガイド163により規定され、筒部164により閉じられた流路であり、図8に示した導入口161kと排出口161r間を流体移動可能に連絡する。なお、図10に示すように螺旋ガイド163の外周端部163kが筒部164の内周面164aに連結していることが望ましいが、螺旋ガイド163の回動により筒部164内には流体の流れが生じるため、必ずしもそのように構成する必要はない。
【0047】
図7に戻って撹拌システム500の操作方法/撹拌装置400の動作態様等について説明する。まず、収容槽150内へ所定量の光硬化性接着剤10と所定量のスペーサー20を投入する。その後、駆動装置173を作動させて駆動軸173mを回動させ、結合部173nを介して駆動軸173mに連結した撹拌装置400の軸部161を回動させる。軸部161の回動に応じて軸部161の下端に連結した撹拌翼162が収容槽150内において回動し、この動作を所定時間継続することにより、収容槽150内において光硬化性接着剤10にスペーサー20が均一に分散される。
【0048】
所定時間経過後、開閉弁177を開くと、軸部161が回転軸のみとしてではなく搬送路としても機能し始める。端的には、軸部161(つまり、螺旋ガイド163、筒部164、及び棒部165)の回動に応じてスペーサー20が分散した光硬化性接着剤10が収容槽150から螺旋流路166へ流入し、螺旋流路166を介して軸部161/筒部164の導入口161kから排出口161r側へ搬送される。スペーサー20が分散した光硬化性接着剤10は、軸部161の排出口161rに到達した後、流路179を介して吐出装置175へ供給される。吐出装置175は、適当な時点において作動開始され、収容槽150から供給されるスペーサー20が分散した光硬化性接着剤10を図1に示した板ガラス200上に吐出する。
【0049】
なお、撹拌翼162の回動速度を調整することによりスペーサー20が分散した光硬化性接着剤10の吐出量を調整することもできる。収容槽150内の液面の低下に応じて撹拌翼162の回動速度を低下させても良い。なお、スペーサー20が分散した光硬化性接着剤10の一部又は全部を収容槽150に帰還させることにより吐出量を制御しても構わない。
【0050】
上述の説明から明らかなように、本実施形態においては、撹拌翼162の回動に応じて収容槽150内でスペーサー20が分散した光硬化性接着剤10を搬送する搬送構造(ここでは少なくとも螺旋ガイド163)が軸部161に対して一体的に設けられ、搬送構造(ここでは少なくとも螺旋ガイド163)が、撹拌翼162の回動を生じさせる軸部161の回動に応じて回動し、スペーサー20が分散した接着剤10の収容槽150内から収容槽150外への搬送を生じさせる。軸部161の回動に一致して螺旋ガイド163が回動し、螺旋ガイド163により規定される螺旋流路166内をスペーサー20が分散した光硬化性接着剤10が流れ、これにより、スペーサー20が所望の程度に均一に分散した光硬化性接着剤10を好適に収容槽150内から採取することができる。
【0051】
収容槽150内に搬送用のチューブやパイプを別途追加すると、撹拌翼162による収容槽150内での均一な撹拌に悪影響を与えるおそれがある。本実施形態によれば、収容槽150に配置される軸部を有効に活用して光硬化性接着剤10の搬送路を確保することができ、そのような問題が生じることを有効に回避できる。
【0052】
スペーサー20の均一な分散により光硬化性接着剤10の使用量の低減を図ることが期待できる。更に、スペーサー20の均一な分散により、スペーサー20が分散した光硬化性接着剤10を介して積層する板ガラスの積層間隔を好適に制御することが期待でき、この点は、特に、積層状態の板ガラスを一括して外形加工又は端面加工する場合には特に有利である。また、軸部161の回動速度を調整して光硬化性接着剤10内に気泡が混入することを防止すれば、収容槽150から外部へ供給される光硬化性接着剤10にも気泡が混入しないことが期待でき、光硬化性接着剤10を介して板ガラスが積層された板ガラス積層体をエッチング液に浸す場合には特に有利である。
【0053】
軸部161に対して一体的に設けられる搬送構造の具体的な構成は任意であるが、好ましくは、搬送構造は、少なくとも軸部161の回動軸AX5に沿って螺旋状に延びる螺旋ガイド163を含む。この点は、後述の第4実施形態の開示を考慮すれば妥当に理解できる。より好ましくは、本実施形態のように、搬送構造は、螺旋ガイド163が内部に設けられた筒部164を更に含む。
【0054】
図11を参照して参考例の場合について説明する。図11に示すように収容槽150の底近傍の側壁に排出管155を接続し、収容槽150内のスペーサー20入りの光硬化性接着剤10を排出しても良い。しかしながら、この場合、点線で示す範囲DSにおいて撹拌が十分に行えない範囲が生じてしまい、光硬化性接着剤10内でのスペーサー20の均一な撹拌が劣化してしまうおそれがある。上述の本実施形態においては、スペーサー20入り光硬化性接着剤10を取り出すために空間を収容槽150に設けるのではなく軸部161に設けるため撹拌が十分に行えなくなることを回避することができる。なお、図11に示す軸部161’は、中空ではなく中実の棒状部分である。
【0055】
−接着剤とスペーサーの材料例−
以下、上述の光硬化性接着剤とスペーサーに関してそれらの好適な材料について説明する。
【0056】
光硬化性接着剤としては、公知の任意のものが使用でき特に制限はないが、例えばWO2008/018252に記載のような(A)多官能(メタ)アクリレート、(B)単官能(メタ)アクリレート、及び(C)光重合開始剤を含有する接着性組成物が好適である。
【0057】
(A)多官能(メタ)アクリレートとしては、オリゴマー/ポリマー末端又は側鎖に2個以上(メタ)アクロイル化された多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーや、2個以上の(メタ)アクロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーとしては、1,2−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本曹達社製「TE−2000」、「TEA−1000」)、その水素添加物(例えば、日本曹達社製「TEAI−1000」)、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、大阪有機化学社製「BAC−45」)、ポリイソプレン末端(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成化学社製「UV−2000B」、「UV−3000B」、「UV−7000B」、根上工業社製「KHP−11」、「KHP−17」)、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成化学社製「UV−3700B」、「UV−6100B」)、又はビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
ここで、ウレタン(メタ)アクリレートとは、ポリオール化合物(以後、Xで表す)と有機ポリイソシアネート化合物(以後、Yで表す)とヒドロキシ(メタ)アクリレート(以後、Zで表す)とを反応させることにより得られる、ウレタン(メタ)アクリレートをいう。
【0059】
ポリオール化合物(X)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ブチルエチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、ポリカプロラクトン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコールや、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック又はランダム共重合の少なくとも1種の構造を有するポリエーテルポリオール、該多価アルコール又はポリエーテルポリオールと無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、アジピン酸、イソフタル酸等の多塩基酸との縮合物であるポリエステルポリオール、カプロラクトン変性ポリテトラメチレンポリオール等のカプロラクトン変性ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール、水素化ポリイソプレンポリオール等のポリジエン系ポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール等のシリコーンポリオール等が挙げられる。これらの中では、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールがより好ましく、ポリエステルポリオールが最も好ましい。
【0060】
有機ポリイソシアネート化合物(Y)としては、格別に限定される必要はないが、例えば芳香族系、脂肪族系、環式脂肪族系、脂環式系等のポリイソシアネートが使用でき、中でもトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート(H−MDI)、ポリフェニルメタンポリイソシアネート(クルードMDI)、変性ジフェニルメタンジイソシアネート(変性MDI)、水添化キシリレンジイソシアネート(H−XDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMXDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m−TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)等のポリイソシアネート或いはこれらポリイソシアネートの三量体化合物、これらポリイソシアネートとポリオールの反応生成物等が好適に用いられる。これらの中では、水添化キシリレンジイソシアネート(H−XDI)及び/又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)が好ましい。
【0061】
ヒドロキシ(メタ)アクリレート(Z)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、4−ブチルヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上が好ましい。
【0062】
これらの中では、効果が大きい点で、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート及び/又はポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリートがより好ましい。
【0063】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーの重量平均分子量は、7000〜60000が好ましく、13000〜40000がより好ましい。重量平均分子量は、下記の条件にて、溶剤としてテトラヒドロフランを用い、GPCシステム(東ソー社製 SC−8010)を使用し、市販の標準ポリスチレンで検量線を作成して求めることができる。
流速:1.0ml/min
設定温度:40℃
カラム構成:東ソー社製「TSK guardcolumn MP(×L)」6.0mmID×4.0cm1本、および東ソー社製「TSK−GEL MULTIPOREHXL−M」7.8mmID×30.0cm(理論段数16,000段)2本、計3本(全体として理論段数32,000段)
サンプル注入量:100μl(試料液濃度1mg/ml)
送液圧力:39kg/cm2
検出器:RI検出器
【0064】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、又は2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。これらの中では、効果が大きい点で、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート及び/又はジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートが好ましく、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0065】
3官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0066】
4官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0067】
(A)多官能(メタ)アクリレートは、疎水性のものが好ましい。疎水性の多官能(メタ)アクリレートとは、水酸基を有さない(メタ)アクリレートをいう。水溶性の場合には、切削加工時に組成物の硬化体が膨潤することにより位置ずれを起こし、加工精度が劣る懼れがあるため好ましくない。親水性であっても、その組成物の硬化体が水により大きく膨潤又は一部溶解することがなければ、使用してもよい。
【0068】
多官能(メタ)アクリレートの中では、効果が大きい点で、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマー及び/又は2官能(メタ)アクリレートモノマーを含有することが好ましく、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーと2官能(メタ)アクリレートモノマーを併用することがより好ましい。
【0069】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーと2官能(メタ)アクリレートモノマーを併用する場合の含有割合は、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマーと2官能(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部中、質量比で、多官能(メタ)アクリレートオリゴマー/ポリマー:2官能(メタ)アクリレートモノマー=10〜90:90〜10が好ましく、25〜75:75〜25がより好ましく、30〜70:70〜30が最も好ましい。
【0070】
(B)単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド2モル変性)(メタ)アクリレート、フェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド8モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(プロピレンオキサイド2.5モル変性)(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、n−(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミド、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、マレイン酸、フマル酸も使用できる。(B)単官能(メタ)アクリレートは、(A)同様に疎水性のものがより好ましい。疎水性の単官能(メタ)アクリレートとは、水酸基を有さない(メタ)アクリレートをいう。水溶性の場合には、切削加工時に組成物の硬化体が膨潤することにより位置ずれを起こし、加工精度が劣る懼れがあるため好ましくない。親水性であっても、その組成物の硬化体が水によって膨潤又は一部溶解することがなければ、使用してもよい。
【0071】
単官能(メタ)アクリレートの中では、効果が大きい点で、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種以上が好ましい。フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレートと、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び/又は2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートとを併用することがより好ましい。
【0072】
フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレートと、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び/又は2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートとを併用する場合の含有割合は、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートの合計100質量部中、質量比で、フェノールエチレンオキサイド2モル変性(メタ)アクリレート:2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート及び/又は2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート=5〜80:95〜20が好ましく、15〜60:85〜40がより好ましく、20〜45:80〜55が最も好ましい。
【0073】
(A)多官能(メタ)アクリレートの使用量は、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、5〜95質量部が好ましく、15〜60質量部がより好ましく、20〜50質量部が好ましい。5質量部以上であれば、組成物の硬化体を温水に浸漬した時に被着物より当該硬化体が剥離する性質(以下、単に「剥離性」という)が充分に助長されるし、組成物の硬化体がフィルム状に剥離できる。95質量部以下であれば、初期の接着性が低下する懼れもない。
【0074】
(C)光重合開始剤は、可視光線や紫外線の活性光線により増感させて樹脂組成物の光硬化を促進するために配合するものであり、公知の各種光重合開始剤が使用可能である。具体的にはベンゾフェノン又はその誘導体;ベンジル又はその誘導体;アントラキノン又はその誘導体;ベンゾイン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン誘導体;ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;2−ジメチルアミノエチルベンゾエート;p−ジメチルアミノエチルベンゾエート;ジフェニルジスルフィド;チオキサントン又はその誘導体;カンファーキノン;7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−ブロモエチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−メチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸クロライド等のカンファーキノン誘導体;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン誘導体;ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシポスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及び/又はオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル等が挙げられる。光重合開始剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、効果が大きい点で、ベンジルジメチルケタール、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルからなる群のうちの1種又は2種以上が好ましい。
【0075】
(C)光重合開始剤の含有量は、(A)及び(B)の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。0.1質量部以上であれば、硬化促進の効果が確実に得られるし、20質量部以下で充分な硬化速度を得ることができる。(C)成分を1質量部以上添加することは、光照射量に依存することなく硬化可能となり、さらに組成物の硬化体の架橋度が高くなり、切削加工時に位置ずれ等を起こさなくなる点や剥離性が向上する点で、さらに好ましい。
【0076】
光硬化性接着剤は、接着剤の成分(A)、(B)及び(C)に溶解しないスペーサー(D)を含有するのが好ましい。これにより、硬化後の組成物が一定の厚みを保持できるため、後述のように加工精度が向上する。
【0077】
スペーサー(D)の材質としては、一般的に使用される有機粒子、又は無機粒子いずれでもかまわない。具体的には、有機粒子としては、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子等が挙げられる。無機粒子としてはガラス、シリカ、アルミナ、チタン等のセラミック粒子が挙げられる。
【0078】
スペーサーは、加工精度の向上、つまり接着剤層100の膜厚制御の観点から球状であることが好ましい。スペーサーのレーザー法による平均粒径は50〜200μmの範囲にあることが好ましい。スペーサーの平均粒径が50μm以上であると、切削用工具において強度に劣る切削部先端を使用しても切削用工具の寿命を低下することがなく、さらに、切削加工効率が向上し、200μm以下であると接着剤の使用量が少なくなりコスト安になるため生産性に優れる。より好ましい平均粒径(D50:メジアン径)は70〜150μmであり、更に好ましくは80〜120μmである。粒径分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される。
【0079】
スペーサー(D)の使用量は、接着性、加工精度、剥離性の観点から、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.05〜10質量部がより好ましく、0.1〜6質量部が最も好ましい。
【0080】
光硬化性接着剤には、貯蔵安定性向上のため重合禁止剤(E)を添加することができる。重合禁止剤としては、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ジターシャリーブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジターシャリーブチル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、クエン酸、フェノチアジン、ターシャリーブチルカテコール、2−ブチル−4−ヒドロキシアニソール及び2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール等が挙げられる。
【0081】
重合禁止剤(E)の使用量は、(A)及び(B)の合計量100質量部に対して、0.001〜3質量部が好ましく、0.01〜2質量部がより好ましい。0.001質量部以上であれば、貯蔵安定性が確保されるし、3質量部以下であれば、良好な接着性が得られ、未硬化になることもない。
【0082】
<実施例1>
1.光硬化性接着剤(I)の作製
以下の(A)〜(E)の成分を第1実施形態で説明した撹拌装置400を用いて撹拌して光硬化性接着剤(I)を作製した。
(A)多官能(メタ)アクリレートとして、日本合成社製「UV−3000B」(ウレタンアクリレート以下「UV−3000B」と略す、重量平均分子量18000、ポリオール化合物はポリエステルポリオール、有機ポリイソシアネート化合物はイソホロンジイソシアネート、ヒドロキシ(メタ)アクリレートは2−ヒドロキシエチルアクリレート)20質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD R−684」、以下「R−684」と略す)15質量部、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−140」、以下「M−140」と略す)50質量部、フェノールエチレンオキサイド2モル変性アクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−101A」)15質量部、
(C)光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(BASF社製「IRGACURE651」、以下「BDK」と略す)10質量部、
(D)スペーサーとして平均粒径100μmの球状架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」)1質量部、
(E)重合禁止剤として2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(住友化学社製「スミライザーMDP−S」、以下「MDP」と略す)0.1質量部
【0083】
2.板ガラス積層体の作製
透光性硬質基板として板ガラス(横530mm×縦420mm×厚み0.7mm)を12枚用意し、吐出装置から吐出される上述の光硬化性接着剤を介して貼り合わせ、光硬化性接着剤を光照射により硬化して板ガラスの積層体を作製した。具体的には、1枚目の板ガラス上に上記光硬化性接着剤を40g塗布した後、1枚目の板ガラスの上に2枚目の板ガラスを貼り合わせて2枚目の板ガラスの表面側からUV照射し、上記光硬化性接着剤を硬化させた。UV照射量は3000mJ/cm2(365nmの受光器による積算照度計による測定)とし、UV照射時間は40秒とした。この手順を繰り返すことで、12枚の板ガラスからなる厚み8mm(この厚みは12枚の板ガラスを合計した積層体の厚みである)の板ガラス積層体を作製した。
【0084】
3.板ガラス積層体の切断加工
次に、板ガラスの積層体を受け台に固定した後、円板カッターによって所定の切断線に沿って厚み方向に切断し、分割された板ガラスの積層体を作製した。このとき、各板ガラスは、横100mm×縦50mm×厚み0.7mm(この厚みは板ガラス1枚の厚みである)に分割された。
【0085】
4.板ガラス積層体の外形加工
次に、受け台に分割された板ガラス積層体を固定し、受け台上の板ガラス積層体に回転砥石を用いて研削することで外形を加工した。このとき、板ガラスの縁部にはチッピング、ヒビ、及び/又は、欠けが発生したものが少しあった。
【0086】
5.板ガラス積層体の端面加工
次に、切削用工具(切削治具)を岳将社製40KHz超音波スピンドルユニット URT40−F41に取り付けた。次に、超音波スピンドルに取り付けた切削用工具を、その複数の切削山部が板ガラス積層体の各接着剤層に対応するような位置に設置し、板ガラス積層体の側面から切削山部をその稜線が各接着剤層へ接触するように進め、板ガラス積層体の断面において、隣り合う板ガラスの互いに対向する面の縁部を面取りした。このとき、超音波スピンドルは40KHzで回転数2500rpmであった。切削は、板ガラス積層体の側面の45°に傾斜するV字溝が深さ0.2mmとなるまで行った。
【0087】
<第2実施形態>
図12を参照して第2実施形態について説明する。図12は、撹拌装置の概略構成図である。本実施形態においては、図12に示すように、収容槽150を蓋151により閉じると共に、その内圧を調整可能として光硬化性接着剤10を圧送可能とする。このような場合であっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、第2実施形態と比較して第1実施形態の収容槽150は上方が開放しており、光硬化性接着剤10、スペーサー20の補充が容易であるというメリットがある。
【0088】
図12に示すように、収容槽150には加圧手段270と減圧手段271が接続される。加圧手段270を作動させて収容槽150内の圧力を高めることにより光硬化性接着剤10に対して収容槽150内から収容槽150外へ押出す力を作用することができ、光硬化性接着剤10の圧送を図ることができる。加圧手段270により収容槽150内へ供給されるガスは窒素やヘリウム等のUV硬化反応を阻害しない種の不活性ガスであることが望ましい。
【0089】
<第3実施形態>
図13を参照して第3実施形態について説明する。図13は、撹拌装置の概略構成図である。本実施形態においては、図13に示すように軸部161に設けられる導入口161kが第1実施形態とは異なる位置にある。このような場合であっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。図13に示す以外の位置に導入口161kを設けても構わない。なお、第3実施形態と比較して第1実施形態の導入口161kが収容槽150の底面150cに対向配置されており、これにより収容槽150内にある光硬化性接着剤10を有効に取り出すことができるメリットがあり、また、収容槽150内へ光硬化性接着剤10及びスペーサー20を補充する補充間隔を長く確保することができる。
【0090】
<第4実施形態>
図14を参照して第4実施形態について説明する。図14は、撹拌装置の軸部周りの構成を示す模式図である。本実施形態においては、図14に模式的に示すように、軸部161が、棒部165の外周面に螺旋ガイド163が一体的に設けられて成り、上述の実施形態で示した筒部164に相当する軸部164’が、軸部161から分離されて設けられ、筒部164’が収容槽150の蓋151又は収容槽150の上端等に任意の態様にて回動不能に固定されている。このような場合であっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。図14に示すように、螺旋ガイド163の外周端部163kと筒部164’の内周面との間に間隔W167があっても構わず、この間隔W167により筒部164内での軸部161の自由な回動が確保できる。図14において螺旋ガイド163を無軸として棒部165を除いても構わない。
【0091】
上述の教示を踏まえると、当業者をすれば、各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。スペーサーは光硬化性接着剤内で浮くのか若しくは沈むのかは非本質的な事項であり、いずれの場合も本願発明の範囲内にある。搬送構造の具体的な構成は任意であり、軸部の回動に応じて対象の液体を自律的/自動的に搬送する限りにおいて任意である。
【符号の説明】
【0092】
500 :撹拌システム
400 :撹拌装置

10 :光硬化性接着剤
20 :スペーサー
100 :接着剤層

150 :収容槽
150c :底面

161 :軸部
161k :導入口
161r :排出口

162 :撹拌翼
162m :横棒部
162p :縦棒部

163 :螺旋ガイド
164 :筒部
165 :棒部
166 :螺旋流路

173 :駆動装置
175 :吐出装置
177 :開閉弁
179 :流路

200 :板ガラス
201 :板ガラス
250 :板ガラス積層体
260 :板ガラス積層体

300 :処理槽
310 :切削治具
図1
図2
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