(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081129
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】レーザ切断機
(51)【国際特許分類】
B23K 26/10 20060101AFI20170206BHJP
B23K 26/38 20140101ALI20170206BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20170206BHJP
【FI】
B23K26/10
B23K26/38 Z
B23K26/70
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-226274(P2012-226274)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-76477(P2014-76477A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】三菱重工工作機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(72)【発明者】
【氏名】金岡 耕平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 眞生
(72)【発明者】
【氏名】仙入 克也
【審査官】
篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−248593(JP,A)
【文献】
特開平10−328875(JP,A)
【文献】
特開昭59−092193(JP,A)
【文献】
特開2012−110945(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/114010(WO,A1)
【文献】
特開平08−290284(JP,A)
【文献】
特開2002−273594(JP,A)
【文献】
特開平09−001375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/10
B23K 26/38
B23K 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台上に、該基台とは間隔を隔てて設けられ、加工対象物を支持する支持面を有した支持台と、
前記支持台に対して相対移動可能とされ、前記支持台の前記支持面に向けてレーザ光を照射するレーザヘッドと、を備え、
前記支持台は、前記支持面と、該支持面に対向する対向面とを貫通する複数の貫通孔を有し、
前記貫通孔は、板状部材が組み合わされて形成された筒状空間であり、隣り合う二つの前記貫通孔は、前記板状部材を挟んで配置されることを特徴とするレーザ切断機。
【請求項2】
前記支持台の前記対向面に対向して設けられた反射部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のレーザ切断機。
【請求項3】
前記反射部材は、前記レーザヘッドからの前記レーザ光の光軸方向に対して傾斜した傾斜面を有することを特徴とする請求項2に記載のレーザ切断機。
【請求項4】
前記反射部材は、前記光軸方向に対して傾斜した傾斜板が、互いに間隔を隔てて複数枚並べて設けられていることを特徴とする請求項3に記載のレーザ切断機。
【請求項5】
前記反射部材は、断面三角形状の突条が、複数並べて設けられていることを特徴とする請求項3に記載のレーザ切断機。
【請求項6】
前記反射部材は、
前記支持台の前記対向面に沿って互いに間隔を隔てた複数列に、それぞれ前記対向面から吊り下げられた磁性および可撓性を有する材料からなる紐状部材と、
互いに隣接する前記紐状部材の列の間に配置され、両側の列の前記紐状部材の先端部を磁力により吸着する磁石部材と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載のレーザ切断機。
【請求項7】
前記反射部材は、前記支持台の前記対向面に沿って互いに間隔を隔てて対向した爪部材を有し、
前記爪部材の先端部どうしが互いに接近・離間可能とされていることを特徴とする請求項2に記載のレーザ切断機。
【請求項8】
基台上に、該基台とは間隔を隔てて設けられ、加工対象物を支持する支持面を有した支持台と、
前記支持台に対して相対移動可能とされ、前記支持台の前記支持面に向けてレーザ光を照射するレーザヘッドと、
を備え、
前記支持台は、前記支持面と、該支持面に対向する対向面とを貫通する複数の貫通孔を有し、
前記支持台の前記対向面に対向して設けられた反射部材を更に備え、
前記反射部材は、前記レーザヘッドからの前記レーザ光の光軸方向に対して傾斜した傾斜面を有し、
前記反射部材は、前記光軸方向に対して傾斜した傾斜板が、互いに間隔を隔てて複数枚並べて設けられていることを特徴とするレーザ切断機。
【請求項9】
基台上に、該基台とは間隔を隔てて設けられ、加工対象物を支持する支持面を有した支持台と、
前記支持台に対して相対移動可能とされ、前記支持台の前記支持面に向けてレーザ光を照射するレーザヘッドと、
を備え、
前記支持台は、前記支持面と、該支持面に対向する対向面とを貫通する複数の貫通孔を有し、
前記支持台の前記対向面に対向して設けられた反射部材を更に備え、
前記反射部材は、
前記支持台の前記対向面に沿って互いに間隔を隔てた複数列に、それぞれ前記対向面から吊り下げられた磁性および可撓性を有する材料からなる紐状部材と、
互いに隣接する前記紐状部材の列の間に配置され、両側の列の前記紐状部材の先端部を磁力により吸着する磁石部材と、
を備えることを特徴とするレーザ切断機。
【請求項10】
基台上に、該基台とは間隔を隔てて設けられ、加工対象物を支持する支持面を有した支持台と、
前記支持台に対して相対移動可能とされ、前記支持台の前記支持面に向けてレーザ光を照射するレーザヘッドと、
を備え、
前記支持台は、前記支持面と、該支持面に対向する対向面とを貫通する複数の貫通孔を有し、
前記支持台の前記対向面に対向して設けられた反射部材を更に備え、
前記反射部材は、前記支持台の前記対向面に沿って互いに間隔を隔てて対向した爪部材を有し、
前記爪部材の先端部どうしが互いに接近・離間可能とされていることを特徴とするレーザ切断機。
【請求項11】
前記支持台の前記対向面に対向して設けられ、前記レーザ光のエネルギを吸収するエネルギ吸収材をさらに備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のレーザ切断機。
【請求項12】
前記レーザヘッドの周囲を覆い、前記支持台の前記貫通孔を通して前記支持面側に突き抜けるレーザ光を遮蔽するシールド部材がさらに備えられていることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のレーザ切断機。
【請求項13】
前記支持台は、前記支持面側の一部が前記対向面側の残部と分割可能とされ、前記支持面側の一部のみ交換可能とされていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のレーザ切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ切断機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ切断機は、加工対象物を支持台上にセットし、加工対象物に対向させたノズルからレーザ光を照射しながら加工対象物とノズルとを相対移動させることで、加工対象物を切断する。
【0003】
このようなレーザ切断機においては、加工対象物に照射したレーザ光は、加工対象物を、ノズルが設けられている側とは反対側まで貫通する。すると、加工対象物を支持する支持台等にレーザ光が照射され、反射や散乱が生じることになる。そこで、レーザ光が周囲に散乱するのを防ぐため、レーザ切断機全体を、カバーやウォーターカーテンによって覆っていた(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−46686号公報
【特許文献2】特公平3−33438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レーザ切断機全体をカバーやウォーターカーテンで覆ったのでは、設備コスト上昇の一因となる。また、レーザ切断機が大きな空間を占めることになり、作業空間の有効利用を妨げる可能性もある。さらに、メンテナンス等を行う際には、カバーを取り外したりしなければならず、これに手間がかかるという問題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、設備コストを抑えるとともに、省スペース化を図り、メンテナンス性を向上させることのできるレーザ切断機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のレーザ切断機は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のレーザ切断機は、基台上に、該基台とは間隔を隔てて設けられ、加工対象物を支持する支持面を有した支持台と、前記支持台に対して相対移動可能とされ、前記支持台の前記支持面に向けてレーザ光を照射するレーザヘッドと、を備え、前記支持台は、前記支持面と該支持面に対向する対向面とを貫通する複数の貫通孔を有していることを特徴とする。
このようなレーザ切断機においては、支持台の支持面で加工対象物を支持し、レーザヘッドから加工対象物に向けてレーザヘッドを照射しつつ、レーザヘッドを支持台に対して相対移動させることで、加工対象物を所望の形状で切断する。加工対象物を切断することによって、加工対象物を貫通したレーザ光は、支持台の貫通孔を通り、支持台とは間隔を隔てた基台等で反射する。その反射光が貫通孔に斜めに入ると、貫通孔内で多重反射し、レーザ光のエネルギ密度が減衰される。
【0008】
ここで、本発明のレーザ切断機は、前記支持台の前記対向面に対向して設けられた反射部材をさらに備えるのが好ましい。
この前記反射部材は、前記レーザヘッドからの前記レーザ光の光軸方向に対して傾斜した傾斜面を有するものとすることができる。傾斜面でレーザ光を反射することにより、その反射光を、貫通孔に対して斜めに入射させることができる。すると、反射光は、貫通孔内で多重反射し、レーザ光のエネルギ密度を効率良く減衰することができる。
傾斜面を有する前記反射部材は、前記光軸方向に対して傾斜した傾斜板が、互いに間隔を隔てて複数枚並べて設けられているものとすることができる。
傾斜面を有する前記反射部材は、断面三角形状の突条が、複数並べて設けられたものとすることもできる。
【0009】
また、前記反射部材は、前記支持台の前記対向面に沿って互いに間隔を隔てた複数列に、それぞれ前記対向面から吊り下げられた磁性および可撓性を有する材料からなる紐状部材と、互いに隣接する前記紐状部材の列の間に配置され、両側の列の前記紐状部材の先端部を磁力により吸着する磁石部材と、を備えるものとすることもできる。
磁石部材により、両側の列の紐状部材の先端部を吸着することにより、先端部に行くにしたがい窄まる空間が形成される。支持台の貫通孔を透過したレーザ光は、この空間内で乱反射、多重反射することで、レーザ光のエネルギ密度が減衰される。
このような磁性と可撓性を有した紐状部材としては、例えば、鎖がある。さらに、紐状部材に鎖を用いた場合、鎖の表面でレーザ光を様々な方向に乱反射させ、レーザ光のエネルギ密度の減衰に有効に寄与できる。
また、このように支持台の下方に、先端部に行くにしたがい窄まる空間を形成することで、加工対象物の切断時に生じる溶融金属を捕捉することもできる。そして、磁石部材による紐状部材の先端部の吸着を解放すると、紐状部材は自重により鉛直に吊り下がり、先端部に行くにしたがい窄まった空間が下方に開放される。これにより、捕捉した溶融金属を下方に排出できる。
ここで、磁石部材は、例えば紐状部材の先端部に向けて下方から上方に進退させることにより、紐状部材の先端部どうしを吸着したり、その吸着を解放することができる。また、磁石部材として電磁石を用いることによって、先端部どうしの吸着・解放を切り換えることも可能である。
【0010】
前記反射部材は、前記支持台の前記対向面に沿って互いに間隔を隔てて対向した爪部材を有し、前記爪部材の先端部どうしが互いに接近・離間可能とされている構成とすることもできる。このように互いに対向した爪部材の先端部どうしを接近させることにより、上記の紐状部材の場合と同様に、先端部に行くにしたがい窄まる空間を形成することができる。
そして、この、先端部に行くにしたがい窄まった空間で溶融金属を捕捉し、その重量によって爪部材が撓んで、互いに対向した爪部材の先端部どうしを解放させることもできる。これにより、補足した溶融金属を下方に排出できる。
この爪部材は、図示しないアクチュエータによって開閉するようにしても良いが、その場合、構造が複雑になってしまう。
【0011】
また、本発明のレーザ切断機は、前記支持台の前記対向面に対向して設けられ、前記レーザ光のエネルギを吸収するエネルギ吸収材をさらに備えることもできる。
【0012】
また、本発明のレーザ切断機は、前記レーザヘッドの周囲を覆い、前記支持台の前記貫通孔を通して前記支持面側に突き抜けるレーザ光を遮蔽するシールド部材がさらに備えられているものとすることができる。
【0013】
さらに、前記支持台は、前記支持面側の一部が前記対向面側の残部と分割可能とされ、前記支持面側の一部のみ交換可能とされているようにしても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レーザ光の反射光が貫通孔内で多重反射することで、レーザ光のエネルギ密度が減衰される。これにより、レーザ光が周囲に与える影響を大幅に削減することができる。その結果、レーザ切断機全体を覆うカバーを小型化または省略して、設備コストを抑えるとともに、省スペース化を図り、メンテナンス性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態におけるレーザ切断機の構成を示す図である。
【
図2】本発明のレーザ切断機において、レーザ光の外部への射出高さから、各部の寸法を設定するための概念図である。
【
図3】本発明の第2実施形態におけるレーザ切断機の構成を示す図である。
【
図4】本発明の第3実施形態におけるレーザ切断機の構成を示す図である。
【
図5】本発明の第4実施形態におけるレーザ切断機の構成を示す図である。
【
図6】本発明の第5実施形態におけるレーザ切断機の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るレーザ切断機の複数の実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、
図1を用いて説明する。
図1に示すように、レーザ切断機10は、基台11の上方に配置されたレーザヘッド14と、レーザヘッド14の下方に配置され、その上面(支持面)20aに加工対象物Wを支持する支持台20と、支持台20の下方に配置された散乱板(反射部材)30と、を備えている。
【0017】
レーザヘッド14は、図示しないレーザ光源から出力されるレーザ光を、ノズル15から照射する。ノズル15は、レーザ光のエネルギ密度を高めるために、加工対象物W上でレーザ光を集光させるようになっている。レーザヘッド14は、図示しない駆動機構により、支持台20の上面20aに平行な面内で互いに直交する二方向に移動可能とされている。
【0018】
支持台20は、上面20aに直交する方向から見たときの形状が矩形とされ、所定の高さを有した直方体状をなしている。
この支持台20は、四方の外周部が、外側板21A,21B,21C,21Dによって、上下方向に貫通した角筒状とされている。これら外側板21A,21B,21C,21Dの内方は、互いに対向する外側板21A,21C間に一定ピッチで配置された仕切板22,22と、互いに対向する外側板21B,21D間に一定ピッチで配置された仕切板23,23とが、平面視格子状に設けられている。これにより、支持台20において、外側板21A,21B,21C,21Dに囲まれた内部空間には、上面20aと下面20bとを貫通する複数の角筒状空間(貫通孔)25がマトリックス状に配置されている。
このような支持台20は、基台11の上方に、基台11とは上下に間隔を隔てた状態で、図示しないブラケットにより支持されている。
【0019】
また、支持台20の上面20aにおいて、仕切板22,23の上端部は、鋸歯状に凹凸を形成することもできる。これによって、上面20aに加工対象物Wがくっついてしまうのを防ぐようになっている。
【0020】
散乱板30は、基台11上に設けられた平板状のベースプレート31と、ベースプレート31上に一体に設けられた複数枚の反射板32と、を備えている。
【0021】
それぞれの反射板32は、ベースプレート31の一辺31aと平行に延びる長方形状をなしている。これらの反射板32は、レーザヘッド14から照射されるレーザの光軸方向に対して所定角度傾斜した傾斜面32aを形成し、ベースプレート31の一辺31aに直交する他辺31bに沿って、一定間隔ごとに配置されている。
【0022】
この散乱板30と、前記の支持台20とは、上下に間隔を隔てて配置されている。そして、散乱板30の周囲は、支持台20の外側板21A,21B,21C,21Dに連続するカバー35によって覆われている。
【0023】
このようなレーザ切断機10においては、支持台20の上面20aに加工対象物Wをセットし、予め入力された加工プログラムに基づいて、支持台20の上面20aに沿ってレーザヘッド14を所定の軌跡で移動させつつ、ノズル15からレーザ光を照射することにより、支持台20上の加工対象物Wを所定形状に切断する。
レーザ光を照射して加工対象物Wを切断すると、加工対象物Wの切断部Sを透過したレーザ光の透過光Bが、支持台20の角筒状空間25を通って、下方の散乱板30に到達する。このとき、レーザ光はノズル15によって加工対象物W上で集光しているため、加工対象物Wよりも下方では拡散し、散乱板30においては、より広い領域に照射される。
【0024】
散乱板30において、透過光Bは、傾斜した反射板32により反射される。その反射光Rの一部(以下、これを反射光R1と称することがある。)は、斜め上方に向かい、その上方に位置する支持台20の下面(対向面)20bから角筒状空間25に入射する。角筒状空間25内で、反射光R1は反射を繰り返し、支持台20の上面20aから上方に出射する。また、反射光Rの残部(以下、これを反射光R2と称することがある。)は、隣接する反射板32に当たり、ベースプレート31側に向けて反射を繰り返す。
このとき、角筒状空間25内を通る反射光R1は、角筒状空間25内での多重反射により、そのエネルギ密度が減衰される。また、隣接する反射板32との間で反射を繰り返す反射光R2も、同様に多重反射によりそのエネルギ密度が減衰される。
【0025】
ここで、レーザ切断機10の周囲における作業者の安全を確保するため、散乱板30での反射光R2が支持台20の角筒状空間25で反射せずにそのまま上方に突き抜けても、作業者に当たらないようにするのが好ましい。
例えば、
図2に示すように、支持台20の厚さをH1、角筒状空間25の幅をWとしたとき、反射光R2が角筒状空間25で反射せずにそのまま上方に突きぬける最小傾斜角度θは、
θ=tan−1(H1/W)
となる。
そして、支持台20の上面20aの基台11上面からの高さをH2、作業者が支持台20に最も近接できる距離をXとした場合、支持台20から距離Xだけ離れた位置における反射光R2の到達高さH3は、
H3=X×tanθ+H2
となる。
そこで、高さH3が、支持台20から距離Xだけ離れた位置に作業者が立っても反射光R2が絶対に直接作業者に当たらない寸法、例えばH3=2500mm以上となるように、各部の寸法を設定するのが好ましい。
【0026】
上述したように、角筒状空間25を複数有した支持台20と、支持台20の下方に設けた散乱板30とにより、それぞれ反射光R2のエネルギ密度を低減できるので、レーザ切断機10の周囲に散乱するレーザ光のエネルギ密度を低減することができる。その結果、レーザ切断機10の周囲に設けるカバーや、作業者が装着すべき安全保護具等を、簡略化、あるいは削減することが可能となる。これにより、レーザ切断機10の設備コスト、メンテナンスの手間等を低減することが可能となり、空間の有効利用化も図ることができる。
【0027】
なお、上記第1実施形態において、支持台20を、上面20a側と、下面20b側とで複数に分割可能とすることもできる。このような構成とすれば、レーザ光によって支持台20の上面20a側が損傷したときに、これを低コストで交換することができる。また、仕切板22と仕切板23とは、一体物ではなく、互いに噛み合わせて組み立てられるようにしてもよい。これにより、仕切板22と仕切板23を個別に交換することができる。
【0028】
以下、本発明のレーザ切断機の他の複数の実施形態について説明する。ここで、以下に説明する各実施形態において、上記第1実施形態と共通する構成については、図中に同符号を付してその説明を省略する。以下に示す第2〜第4実施形態は、上記第1実施形態で示した散乱板30に代えて採用することのできる構成を示す。
【0029】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態では、散乱板30として、傾斜した反射板32を複数枚備える構成としたが、本実施形態では、これに代えて、
図3に示すように、下方から上方に行くにしたがい、その幅が漸次小さくなる断面三角形状の突条33を、複数並べて形成したものを、散乱板(反射部材)30’とすることもできる。
【0030】
このような散乱板30’においては、突条33の傾斜面33aで透過光Bを反射することで、上記第1実施形態に示した散乱板30と同様の作用効果を実現することができる。
ところで、突条33の頂部33cで反射した反射光R3は、そのまま、上方の支持台20の角筒状空間25を抜けて上方のレーザヘッド14に当たり、そのエネルギ密度が減衰される。
【0031】
〔第3実施形態〕
図4に示すように、本実施形態においては、上記第1実施形態で示した散乱板30に代えて、以下に示す散乱部材(反射部材)50を備える。
図4(a)に示すように、散乱部材50は、支持台20において、外側板21B,21D、各仕切板23の下端部に沿って多数本が列Lをなして吊り下げられた鎖(紐状部材)51と、互いに隣接する23,23から吊り下げされた鎖51,51の列L,Lの間に配置された磁石部材52と、を備えている。
磁石部材52は、図示しないシリンダ機構54によって、上下方向に進退可能とされている。
図4(b)に示すように、磁石部材52が上昇したときには、その両側に列L,Lを構成する鎖51,51の下端部51a,51aを磁力により吸着する。これにより、両側の列L,Lの鎖51,51の下端部51a,51aが閉じて袋状をなし、下方に行くにしたがい窄まる空間S1が形成される。
【0032】
このような散乱部材50においては、上方の支持台20の角筒状空間25を抜けた透過光Bは、両側に列をなして下端部51a,51aが袋状に閉じた鎖51,51によって散乱される。これによって、レーザ光のエネルギ密度を減衰することができる。これによっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、加工対象物Wの切断時にレーザ光の照射によって生じる溶融金属Mが、袋状に閉じた鎖51,51の列L,Lによって捕捉される。
図4(c)に示すように、捕捉した溶融金属Mは、レーザ切断完了後に、磁石部材52を下降させて、両側の列L,Lの鎖51,51の下端部51a,51aどうしを離すことによって、下方に排出される。
【0033】
〔第4実施形態〕
図5に示すように、本実施形態においては、上記第1実施形態で示した散乱板30に代えて、以下に示す散乱部材(反射部材)60を備える。
図5(a)に示すように、散乱部材60は、支持台20において、外側板21B,21D、各仕切板23の下端部から吊り下げられた爪部材61を備えている。この爪部材61はその下端部61aがJ字状に湾曲している。そして、互いに隣接する爪部材61,61は、下端部61a,61aどうしが突き当たって閉じ、下方に行くにしたがい窄まる空間S2を形成している。
爪部材61は、例えば、形状記憶合金からなる薄板状とされている。
【0034】
このような散乱部材60においては、上方の支持台20の角筒状空間25を抜けた透過光Bは、両側に列をなして下端部61a,61aが閉じた爪部材61,61によって散乱される。これによって、レーザ光のエネルギ密度を減衰することができる。これによっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、加工対象物Wの切断時にレーザ光の照射によって生じる溶融金属Mが、下端部61a,61aが閉じた爪部材61,61によって捕捉される。
図5(b)に示すように、捕捉した溶融金属Mがある程度溜まると、その自重によって爪部材61,61の下端部61a,61aが弾性変形して開き、溶融金属Mが下方に排出される。
【0035】
〔第5実施形態〕
図6に示すように、本実施形態においては、上記第1実施形態で示した散乱板30に代えて、以下に示すエネルギ吸収部材70を備える。
エネルギ吸収部材70は、支持台20の下面20bと間隔を隔てて対向するように設けられたトレー71と、トレー71の内部に注入された水等のエネルギ吸収材75とを備える。
【0036】
このようなエネルギ吸収部材70においては、上方の支持台20の角筒状空間25を抜けた透過光Bは、内部に注入された水等のエネルギ吸収材75に照射され、これによって、そのエネルギ密度が減衰される。
これによっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
また、本実施形態においては、レーザヘッド14に、ノズル15の周囲を覆うように、シールドボックス(シールド部材)80を備えることもできる。
このようなシールドボックス80により、ノズル15から照射されて加工対象物Wで反射した反射光や、支持台20の角筒状空間25を通って上方に抜けた反射光を捕捉することができる。
【0038】
これにより、レーザ切断機10の周囲に散乱するレーザ光のエネルギ密度を低減することができる。その結果、レーザ切断機10の周囲に設けるカバーや、作業者が装着すべき安全保護具等を、簡略化、あるいは削減することが可能となる。これにより、レーザ切断機10の設備コスト、メンテナンスの手間等を低減することが可能となり、空間の有効利用化も図ることができる。
【0039】
上記第5実施形態においては、トレー71に、水に代えて粒状の石を多数充填することも可能である。このような石によって、レーザ光が様々な方向に乱反射し、これによっても、レーザ光のエネルギ密度を低減することができる。
【0040】
なお、上記各実施形態で示した構成は、本発明の主旨の範囲内であれば、適宜の構成の変更、取捨選択しても良い。
例えば、上記第1実施形態で示した構成において、散乱板30を廃し、受け台20のみでレーザ光のエネルギ減衰効果を得る構成とすることもできる。
また、上記第5実施形態で示したシールドボックス80を、上記第1〜第4実施形態で示した構成に組み合わせても良い。
さらに、上記各実施形態では、レーザヘッド14を支持台20に対して移動させることによって、所定軌跡での切断を行うようにしたが、支持台20の大きさ等によっては、レーザヘッド14側を固定し、支持台20側をレーザヘッド14に対して移動させる構成等することもできる。
加えて、角筒状空間25は、角筒状に限らず、円筒状、三角柱状等、他の形状に適宜変更することができる。さらに、この空間を、下方に行くにしたがい漸次窄まる形状としても良い。
【符号の説明】
【0041】
10 レーザ切断機
11 基台
14 レーザヘッド
15 ノズル
20 支持台
20a 上面(支持面)
20b 下面(対向面)
21A,21B,21C,21D 外側板
22,23 仕切板
25 角筒状空間(貫通孔)
30,30’ 散乱板(反射部材)
31 ベースプレート
32 反射板
33 突条
33a 頂部
35 カバー
50 散乱部材(反射部材)
51 鎖(紐状部材)
51a 下端部
52 磁石
60 散乱部材(反射部材)
61 爪部材
61a 下端部
70 エネルギ吸収部材
71 トレー
75 エネルギ吸収材
80 シールドボックス(シールド部材)
B 透過光
R,R1,R2,R3 反射光
W 加工対象物
X 距離
θ 最小傾斜角度