特許第6081211号(P6081211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6081211リンク装置およびそれを用いた車両用空調装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081211
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】リンク装置およびそれを用いた車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/16 20060101AFI20170206BHJP
   F16H 21/40 20060101ALI20170206BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   F16H25/16 B
   F16H21/40
   B60H1/00 103P
   B60H1/00 102J
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-22351(P2013-22351)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-152849(P2014-152849A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】313000645
【氏名又は名称】三菱重工オートモーティブサーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】近川 法之
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−316925(JP,A)
【文献】 特開2011−241897(JP,A)
【文献】 特開2004−218819(JP,A)
【文献】 特開2011−251556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/16
B60H 1/00
F16H 21/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弧状の外周縁部に沿って第1カム溝および第2カム溝が設けられ、中心部が軸周りに回転自在に支持されているリンクプレートと、
前記第1カム溝および第2カム溝に摺動可能に嵌入される第1ピンおよび第2ピンを有する第1レバーおよび第2レバーと、を備え、
前記リンクプレートの回転により前記第1ピンおよび第2ピンを介して前記第1レバーおよび第2レバーを回転変位させ、それぞれダンパを回動するリンク装置において、
前記第1カム溝および第2カム溝は、前記リンクプレートの表面および裏面に該カム溝の一端部同士が互いにオーバーラップされて設けられ、前記第1ピンおよび第2ピンがそれぞれ前記リンクプレートの表面側および裏面側から嵌入可能とされているとともに、
前記第1カム溝および第2カム溝のオーバーラップ部は、それぞれのカム溝の底部の一部を残して貫通され、その底部の縁部により前記第2ピンおよび第1ピンを対応する前記第2カム溝および第1カム溝に対してガイドする構成とされていることを特徴とするリンク装置。
【請求項2】
前記リンクプレートの前記第1カム溝および第2カム溝が設けられる前記外周縁部の厚さは、一方の溝の底部を含む深さ方向寸法と同等厚さとされていることを特徴とする請求項1に記載のリンク装置。
【請求項3】
前記リンクプレートには、マニュアル操作用のワイヤーを接続するレバー部が前記中心部を挟んで前記第1カム溝および第2カム溝と反対側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のリンク装置。
【請求項4】
ユニットケースの外側面に前記リンクプレートが回転自在に支持されて設置された請求項1ないし3のいずれかに記載のリンク装置と、
前記ユニットケース内に設けられている第1空気流路に配設され、該第1空気流路を開閉する回動自在の第1ダンパと、
前記ユニットケース内に設けられている第2空気流路に配設され、該第2空気流路を開閉する回動自在の第2ダンパと、を備え、
前記第1レバーを介して前記第1ダンパが回動自在とされるとともに、前記第2レバーを介して前記第2ダンパが回動自在とされていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
前記第1ダンパが前記第1空気流路に配設されているデフ/フェイスダンパとされ、前記第2ダンパが前記第2空気流路に配設されているフットダンパとされていることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記リンクプレートに設けられるレバー部に、マニュアル操作レバーに接続されているワイヤーの一端が接続され、前記第1ダンパおよび第2ダンパがマニュアル操作レバーの操作によって開閉可能とされていることを特徴とする請求項4または5に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のダンパを適宜のタイミングで回動するためのリンク装置およびそれを用いた車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置において、ユニットケース内の空気流路に回動自在に設けられている複数のダンパを所定のタイミングで開閉するため、弧状の外周縁部に沿って複数のカム溝が設けられ、中心部が軸周りに回転自在に支持されているリンクプレートと、複数のカム溝にそれぞれ摺動可能に嵌入されるピンを有する複数のレバーとを備え、リンクプレートを回転することにより、各ピンを介して各々のレバーを回転変位させ、各ダンパを回動するようにしたリンク装置が用いられている。
【0003】
このようなリンク装置では、車両への搭載性と、操作性の面から、リンクプレートの小型化と操作力の低減という互いに相反する課題を両立する必要がある。つまり、リンクプレートを小型化するためには、その半径方向寸法および周方向寸法をそれぞれ小さくしなければならないが、半径方向寸法を小さくすると、カム溝と該溝に嵌入するピンとの間の圧力角が大きくなり、操作力が大きくなってしまうという問題が生じることになる。
【0004】
そこで、特許文献1に示されるように、複数のカム溝をリンクプレートの外周縁部に沿って、共通のアイドル溝を介して1つの溝により円周方向に連続的に形成し、リンクプレートの外形を半径方向および周方向の両方向に対して効果的に小型化したものが提供されている。また、特許文献2には、1つの共通のカム溝から独立する複数のカム溝をそれぞれ分岐して設け、各々のピンが他の独立カム溝に侵入せず、各々対応した独立カム溝に導かれるように、ピンの長さおよびカム溝の深さを変化させるとともに、共通のカム溝に沿って所定範囲にガイドリブ(突起)を設けたものが提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4434072号公報
【特許文献2】特開2011−241897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたものでは、2つのカム溝を半径方向において最大限外側位置に配置することができるため、カム溝と該溝に嵌入するピンとの間の圧力角を所要角度以下とし、操作力の増大を抑制することができる。しかし、2つのカム溝を共通のアイドル溝を介して周方向に連続した溝としているだけであるため、リンクプレートの半径方向寸法を抑えることができるものの、周方向への寸法を抑制することができず、小型化する上では限界があり、車両への搭載性や他の構成機器のレイアウトに制約を与える等の課題を有している。
【0007】
また、特許文献2には、一部のカム溝を共通溝としたものが記載されているが、各々のピンが他の独立カム溝に侵入せず、各々対応した独立カム溝に導入されるように、ピンの長さおよびカム溝の深さを変化させるとともに、共通溝に沿ってガイドリブ(突起)を設けなければならないため、構造が複雑化するとともに、リンクプレートの厚さ方向寸法を厚くしなければならず、リンク装置の小型コンパクト化や軽量化、低コスト化等の面において改善すべき課題を有している。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、リンク装置の小型化と操作力の低減とを両立し、かつ車両への搭載性や構成機器のレイアウトに制約を与えず、その自由度を高めるとともに、操作性の向上、軽量化、低コスト化を達成できるリンク装置およびそれを用いた車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明のリンク装置およびそれを用いた車両用空調装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるリンク装置は、弧状の外周縁部に沿って第1カム溝および第2カム溝が設けられ、中心部が軸周りに回転自在に支持されているリンクプレートと、前記第1カム溝および第2カム溝に摺動可能に嵌入される第1ピンおよび第2ピンを有する第1レバーおよび第2レバーとを備え、前記リンクプレートの回転により前記第1ピンおよび第2ピンを介して前記第1レバーおよび第2レバーを回転変位させ、それぞれダンパを回動するリンク装置において、前記第1カム溝および第2カム溝は、前記リンクプレートの表面および裏面に該カム溝の一端部同士が互いにオーバーラップされて設けられ、前記第1ピンおよび第2ピンがそれぞれ前記リンクプレートの表面側および裏面側から嵌入可能とされているとともに、前記第1カム溝および第2カム溝のオーバーラップ部は、それぞれのカム溝の底部の一部を残して貫通され、その底部の縁部により前記第2ピンおよび第1ピンを対応する前記第2カム溝および第1カム溝に対してガイドする構成とされていることを特徴とする。
【0010】
弧状の外周縁部に沿って第1カム溝および第2カム溝が設けられた回転自在のリンクプレートを備え、そのカム溝に嵌入される第1ピンおよび第2ピンを有する第1レバーおよび第2レバーを介して、それぞれダンパを回動するリンク装置にあっては、リンクプレートの小型化と操作力の低減という互いに相反する課題が存在する。つまり、リンクプレートを小型化するためには、その半径方向寸法および周方向寸法をそれぞれ小さくする必要があるが、半径方向寸法を小さくすると、カム溝と該溝に嵌入するピンとの間の圧力角が大きくなって操作力が大きくなることが知られており、そうした中でリンクプレートの小型化と操作力の低減との両立が求められている。
本発明によれば、リンクプレートの弧状の外周縁部に沿って設けられる第1カム溝および第2カム溝を、リンクプレートの表面および裏面に該カム溝の一端部同士を互いにオーバーラップさせて設け、第1ピンおよび第2ピンをそれぞれリンクプレートの表面側および裏面側から嵌入可能とするとともに、第1カム溝および第2カム溝のオーバーラップ部をそれぞれのカム溝の底部の一部を残して貫通し、その底部の縁部により相手方の第2ピンおよび第1ピンを対応する第2カム溝および第1カム溝にガイド可能な構成としているため、2つの第1カム溝および第2カム溝をそれぞれリンクプレートの表裏の最外周位置に配置することにより、各カム溝の半径方向位置を最大化し、各々の溝と該溝に嵌入するピンとの間の圧力角を可及的に小さくして操作力を低減することができる。また、2つの溝の一端部同士を互いにオーバーラップさせることにより、オーバーラップ分だけ周方向寸法を小さくすることができる。さらに、リンクプレートの表裏に設けられる第1および第2カム溝の一端部同士を互いにオーバーラップさせているが、それぞれのカム溝の底部の一部を残して貫通し、その底部の縁部により相手方の第2ピンおよび第1ピンを各カム溝にガイドするようにしているため、各ピンがカム溝のオーバーラップ部で相手方のカム溝に入り込むのを防止することにより、カム溝の一部をオーバーラップさせているにも拘らず、各ピンを各々のカム溝に沿って確実にガイドすることができる。従って、リンク装置の小型コンパクト化、それに伴う低コスト化、軽量化、搭載性の向上並びにレイアウト上の自由度の向上を期待することができるとともに、リンク装置の操作力を低減し、操作性を改善することができる。
【0011】
さらに、本発明のリンク装置は、上記のリンク装置において、前記リンクプレートの前記第1カム溝および第2カム溝が設けられる前記外周縁部の厚さは、一方の溝の底部を含む深さ方向寸法と同等厚さとされていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、リンクプレートの第1カム溝および第2カム溝が設けられる外周縁部の厚さが、一方の溝の底部を含む深さ方向寸法と同等厚さとされているため、表裏に第1カム溝および第2カム溝を設けているリンクプレートの外周縁部の厚さを、一面に2つのカム溝を設けているリンクプレートと同一の厚さとすることができる。従って、表裏にカム溝を設けたリンクプレートを半径方向および周方向の寸法だけでなく、厚さをも最小限化し、リンクプレートおよびリンク装置の低コスト化、軽量化を図ることができる。
【0013】
さらに、本発明のリンク装置は、上述のいずれかのリンク装置において、前記リンクプレートには、マニュアル操作用のワイヤーを接続するレバー部が前記中心部を挟んで前記第1カム溝および第2カム溝と反対側に設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、リンクプレートに、マニュアル操作用のワイヤーを接続するレバー部が中心部を挟んで第1カム溝および第2カム溝と反対側に設けられているため、リンクプレートのレバー部にマニュアル操作用のワイヤーを接続することにより、リンクプレートを半径方向および周方向の双方向に小型化することができるとともに、その操作力を低減できるマニュアル操作用に最適なリンク装置を提供することができる。従って、マニュアル操作用のリンク装置に適用し、その操作性、操作フィーリングを良好に改善することができる。
【0015】
さらに、本発明にかかる車両用空調装置は、ユニットケースの外側面に前記リンクプレートが回転自在に支持されて設置された請求項1ないし3のいずれかに記載のリンク装置と、前記ユニットケース内に設けられている第1空気流路に配設され、該第1空気流路を開閉する回動自在の第1ダンパと、前記ユニットケース内に設けられている第2空気流路に配設され、該第2空気流路を開閉する回動自在の第2ダンパとを備え、前記第1レバーを介して前記第1ダンパが回動自在とされるとともに、前記第2レバーを介して前記第2ダンパが回動自在とされていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、ユニットケース内の第1空気流路および第2空気流路に配設されている第1ダンパおよび第2ダンパが、その外側面に設置された上述のいずれかのリンク装置を介して回動自在とされているため、リンク装置のリンクプレートを回転し、その第1カム溝および第2カム溝に嵌入されている第1ピンおよび第2ピンを介して第1レバーおよび第2レバーを回転変位させることにより、ユニットケース内の第1空気流路および第2空気流路に配設されている第1ダンパおよび第2ダンパを適宜のタイミングで開閉し、車室内への温調風の吹出しモードを切替えることができる。従って、リンク装置の操作力を低減し、その操作性を改善することができるとともに、ユニットケースの外側面に設置されるリンク装置を小型コンパクト化することにより、ユニットケースの外側面に配設される各種ユニット構成部品のレイアウト上の自由度の向上および車両への搭載性の向上を図ることができる。
【0017】
さらに、本発明の車両用空調装置は、上記の車両用空調装置において、前記第1ダンパが前記第1空気流路に配設されているデフ/フェイスダンパとされ、前記第2ダンパが前記第2空気流路に配設されているフットダンパとされていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、第1ダンパが第1空気流路に配設されているデフ/フェイスダンパとされ、第2ダンパが第2空気流路に配設されているフットダンパとされているため、リンク装置のリンクプレートを回転し、第1カム溝および第2カム溝の形状で決定される適宜のタイミングで第1ダンパおよび第2ダンパであるデフ/フェイスダンパおよびフットダンパを開閉することにより、温調風の吹出しモードをデフモード、フェイスモード、フットモード、デフ/フットモード、バイレベルモード等に適宜切替え、車室内を温調することができる。従って、吹出しモードを切替えるデフ/フェイスダンパおよびフットダンパの操作性を改善し、その操作力を低減することができるとともに、該ダンパを操作するリンク装置を小型コンパクト化し、その低コスト化、軽量化、搭載性の向上並びにレイアウト上の自由度の向上等を図ることができる。
【0019】
さらに、本発明の車両用空調装置は、上述のいずれかの車両用空調装置において、前記リンクプレートに設けられる前記レバー部に、マニュアル操作レバーに接続されているワイヤーの一端が接続され、前記第1ダンパおよび第2ダンパがマニュアル操作レバーの操作によって開閉可能とされていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、リンクプレートに設けられるレバー部に、マニュアル操作レバーに接続されているワイヤーの一端が接続され、第1ダンパおよび第2ダンパがマニュアル操作レバーの操作によって開閉可能とされているため、マニュアル操作レバーを操作することにより、ワイヤーを介してレバー部およびリンクプレートを回転し、第1ダンパおよび第2ダンパを開閉することができる。従って、マニュアル操作により吹出しモードを切替えるタイプの車両用空調装置において、その操作力を低減し、操作性、操作フィーリングを良好に改善することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のリンク装置およびそれを用いた車両用空調装置によると、リンク装置の小型コンパクト化、それに伴う低コスト化、軽量化、搭載性の向上並びにレイアウトの自由度向上等を期待することができるとともに、リンク装置の操作力を低減し、操作性、操作フィーリングを改善することができる。また、ユニットケースの外側面に設置されるリンク装置をコンパクト化することにより、ユニットケースの外側面に配設される各種ユニット構成部品のレイアウト上の自由度の向上および車両への搭載性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るリンク装置を組み込んだ車両用空調装置の要部の外観斜視図である。
図2図1に示す車両用空調装置の左上方からの外観斜視図である。
図3図1に示すリンク装置のリンクプレートの平面図である。
図4図3中のA−A断面相当図である。
図5図3中のB−B断面相当図である。
図6図3中のC−C断面相当図である。
図7図3中のD−D断面相当図である。
図8図3中のE−E断面相当図である。
図9図3中のF−F断面相当図である。
図10図3中のG−G断面相当図である。
図11図3に示すリンクプレートの複数のカム溝に各レバーのピンが摺動可能に嵌入されている状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図11を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係るリンク装置を組み込んだ車両用空調装置の要部の外観斜視図、図2には、その左上方からの外観斜視図、図3には、リンク装置のリンクプレートの平面図が示されている。
車両用空調装置を構成する空調ユニット(HVACユニット;Heating Ventilation and Air Conditioning Unit)1は、空気流路を形成するユニットケース2を備えている。
【0024】
このHVACユニット1のユニットケース2内には、空気流路に沿って上流側から順次エバポレータ、ヒータコア、エアミックスダンパが配設されており、ブロアユニットから取り入れられた外気または車室内空気(内気とも云う)を冷却または加熱し、設定温度に温調した後、その空気を空気流路の下流側に設けられている通常3つの吹出し口、すなわちデフ吹出し口3、フェイス吹出し口4およびフット吹出し口5のいずれかから、選択的に3つの吹出し口3ないし5に接続されているダクトを介して車室内へと吹出す構成とされている。
【0025】
ユニットケース2内の空気流路、すなわちデフ吹出し口3、フェイス吹出し口4に通ずる第1空気流路およびフット吹出し口5の通ずる第2空気流路を開閉するため、複数(2ないし3)の吹出しモードダンパが回動自在に配設されており、この複数(2ないし3)の吹出しモードダンパによって、3つの吹出し口3ないし5が選択的に開閉可能とされている。ここでは、吹出しモードダンパとして、デフ/フェイスダンパ(第1ダンパ)およびフットダンパ(第2ダンパ)の2つの吹出しモードダンパが設けられている場合の例について、以下に説明する。
【0026】
このデフ/フェイスダンパ(第1ダンパ)およびフットダンパ(第2ダンパ)は、以下の通り開閉されるようになっている。
(1)デフモード時は、フットダンパでフット吹出し口5を閉、デフ/フェイスダンパでフェイス吹出し口4を閉として、デフ吹出し口3から温調風を吹出す。
(2)フェイスモード時は、フットダンパでフット吹出し口5を閉、デフ/フェイスダンパでデフ吹出し口3を閉として、フェイス吹出し口4から温調風を吹出す。
(3)フットモード時は、フットダンパでフット吹出し口5を開とするとともに、デフ吹出し口3およびフェイス吹出し口4側への空調風を遮断することにより、フット吹出し口5から温調風を吹出す。
【0027】
(4)デフ/フットモード時は、デフ/フェイスダンパでフェイス吹出し口4を閉とするとともに、フットダンパを中間開度とすることにより、デフ吹出し口3およびフット吹出し口5の双方から温調風を吹出す。
(5)バイレベルモード時は、デフ/フェイスダンパでデフ吹出し口3を閉とするとともに、フットダンパを中間開度とすることにより、フェイス吹出し口4およびフット吹出し口5の双方から温調風を吹出す。
等の5つの吹出しモードが2つのダンパの切替えで選択可能とされている。
【0028】
このような構成のHVACユニット1は、従来から公知である。なお、上記の実施形態では、デフ/フェイスダンパでデフ吹出し口3およびフェイス吹出し口4を開閉し、フットダンパでフット吹出し口5を開閉するものとしたが、デフ/フットダンパでデフ吹出し口3およびフット吹出し口5を開閉し、フェイスダンパでフェイス吹出し口4を開閉する仕様としてもよく、あるいは各々の吹出し口3ないし5に、個別に3つのダンパを設けた構成としてもよいこともちろんである。
【0029】
上記2つのデフ/フェイスダンパおよびフットダンパは、ユニットケース2の外側面に回転自在に設置されるリンク装置6を介して回動されるように構成されている。このリンク装置6は、ユニットケース2に設けられている軸部周りに回転自在に嵌合支持される嵌合ボス部7が中心部に設けられたリンクプレート8を備えている。本実施形態では、リンクプレート8が、図示省略されているマニュアル操作レバーにより、該操作レバーに接続されているワイヤーを介して回転操作されるマニュアル仕様の構成とされている場合の例について説明する。
【0030】
リンクプレート8は、図3に示されるように、扇形形状でその中心部に嵌合ボス部7が設けられ、放射方向および周方向に複数の補強リブが設けられた、例えばPBT、POM等の樹脂材製の一体成形品であり、その弧状の外周縁部に沿って裏面および表面の両面に第1カム溝9および第2カム溝10が設けられた構成とされている。また、リンクプレート8には、嵌合ボス部7を挟んで第1カム溝9および第2カム溝10と反対側に突出されたレバー部11が設けられており、このレバー部11にマニュアル操作レバーに接続されたワイヤーの他端を接続することにより、マニュアル操作レバーの操作でリンクプレート8が回転される構成とされている。
【0031】
上記第1カム溝9および第2カム溝10は、リンクプレート8の回転により、所定のタイミングで上記2つのデフ/フェイスダンパおよびフットダンパを開閉できるように溝形状が設定されているものである。この第1カム溝9および第2カム溝10には、デフ/フェイスダンパおよびフットダンパの回転軸の軸端に固定されたレバー12,13と連結されている第1レバー14、第2レバー15の一端部に設けられている第1ピン16、第2ピン17が、リンクプレート8の裏面側および表面側からそれぞれ嵌入されている(図11参照)。
【0032】
また、第1カム溝9および第2カム溝10は、図3ないし図10に示されるように、第1ピン16および第2ピン17を嵌入する一面側のみが開放されている有底の溝とされており、リンクプレート8の裏面側に設けられている第1カム溝9と、表面側に設けられている第2カム溝10との一端部同士が、図3に示されているB−B断面位置からF−F断面位置までの範囲OLで互いにオーバーラップ(以下、この部分をオーバーラップ部OLと称する。)された構成とされている。
【0033】
更に、第1カム溝9および第2カム溝10が設けられているリンクプレート8の弧状の外周縁部の厚さ方向寸法Tが、いずれか一方の溝の底部を含む深さ方向寸法Tと同じ厚さとされている。そして、第1カム溝9と第2カム溝10のオーバーラップ部OLは、それぞれのカム溝9,10の底部9A,10Aの一部を残して共通部分COが貫通され、その底部9A,10Aの縁部9B,10Bにより相手方の第2ピン17および第1ピン16を対応する第2カム溝10および第1カム溝9にガイド可能な構成とされている。
【0034】
以上に説明の構成により、本実施形態によると、以下の作用効果を奏する。
上記HVACユニット1において、図示省略のマニュアル操作レバーを操作することにより、ワイヤーおよびレバー部11を介してリンク装置6のリンクプレート8が嵌合ボス部7を中心に回転される。リンクプレート8が回転されると、第1カム溝9および第2カム溝10に嵌入されている第1ピン16および第2ピン17が、各々のカム溝9,10の形状に応じて所定の位置で半径方向に移動され、第1レバー14および第2レバー15がその支持軸周りに回転変位される。
【0035】
これによって、第1ダンパであるデフ/フェイスダンパおよび第2ダンパであるフットダンパの回転軸に固定されているレバー12,13が回動され、デフ/フェイスダンパおよびフットダンパが各々所定のタイミングで回動されることにより、エバポレータ、ヒータコアおよびエアミックスダンパを介して設定温度に調整された温調風を、マニュアル操作レバーで選択された上記5つの吹出しモードに対応するデフ吹出し口3、フェイス吹出し口4およびフット吹出し口5のいずれかから選択的に車室内に吹出し、車室内を温調することができる。
【0036】
上記第1ダンパであるデフ/フェイスダンパおよび第2ダンパであるフットダンパをそれぞれ回動するリンク装置6にあっては、リンクプレート8の小型化と操作力の低減という互いに相反する課題を有し、リンクプレート8を小型化するには、その半径方向寸法および周方向寸法をそれぞれ小さくする必要があるが、半径方向寸法を小さくすると、各カム溝9,10と該溝9,10に嵌入する第1ピン16、第2ピン17との間の圧力角が大きくなって操作力が大きくなる中、リンクプレート8の小型化と操作力の低減との両立が求められている。
【0037】
本実施形態では、リンクプレート8の弧状の外周縁部に沿って設けられる第1カム溝9および第2カム溝10を、リンクプレート8の表裏両面に該カム溝9,10の一端部同士を所定の範囲OLで互いにオーバーラップさせて設け、第1ピン16および第2ピン17を各々リンクプレート8の表面側および裏面側から嵌入可能とするとともに、第1カム溝9および第2カム溝10のオーバーラップ部OLを各カム溝9,10の底部9A,10Aの一部を残して共通部分COを貫通し、その底部9A,10Aの縁部9B,10Bにより相手方の第2ピン17および第1ピン16を対応する第2カム溝10および第1カム溝9にガイド可能な構成としている。
【0038】
このため、2つの第1カム溝9および第2カム溝10を各々リンクプレート8の表裏の最外周位置に配置することにより、各カム溝9,10の半径方向位置を最大化し、各々の溝9,10と該溝9,10に嵌入する各ピン16,17との間の圧力角を可及的に小さくして操作力を低減することができる。また、2つの溝9,10の一端部同士を互いに所定の範囲OLでオーバーラップさせることにより、オーバーラップ部OLの分だけ周方向寸法を小さくすることができる。
【0039】
更に、リンクプレート8の表裏に設けられる第1および第2カム溝9,10の一端部同士を互いにオーバーラップさせているが、それぞれのカム溝9,10の底部9A,10Aの一部を残して共通部分COを貫通し、その底部9A,10Aの縁部9B,10Bにより相手方の第2ピン17および第1ピン16を各カム溝10,9にガイドするようにしているため、各ピン16,17がカム溝9,10のオーバーラップ部OLにおいて相手方のカム溝10,9に入り込むのを防止することにより、カム溝9,10の一部をオーバーラップさせているにも拘らず、各ピン16,17を各々のカム溝9,10に沿って確実にガイドすることができる。
【0040】
従って、リンク装置6の小型コンパクト化、それに伴う低コスト化、軽量化、搭載性の向上並びにレイアウト上の自由度の向上を期待することができるとともに、リンク装置6の操作力を低減し、操作性を改善することができる。特に、本実施形態では、マニュアル操作用のワイヤーを接続するレバー部11を中心部の嵌合ボス部7を挟んで第1カム溝9および第2カム溝10と反対側に設け、リンクプレート8のレバー部11にマニュアル操作用のワイヤーを接続した構成としているため、リンクプレート8を半径方向および周方向の双方向に小型化することができるとともに、その操作力を低減できるマニュアル操作用に最適なリンク装置6を提供することができ、従って、マニュアル操作用のリンク装置6に適用し、その操作性、操作フィーリングを良好に改善することができる。
【0041】
また、上記リンクプレート8の第1カム溝9および第2カム溝10が設けられる外周縁部の厚さTが、一方の溝9,10の底部9A,10Aを含む深さ方向寸法と同等厚さTとされているため、表裏に第1カム溝9および第2カム溝10を設けているリンクプレート8の外周縁部の厚さTを、一面に2つのカム溝を設けているリンクプレートと同一の厚さとすることができる。従って、表裏にカム溝9,10を設けたリンクプレート9を半径方向および周方向の寸法だけでなく、厚さTをも最小限化し、リンクプレート9およびリンク装置6の低コスト化、軽量化を図ることができる。
【0042】
さらに、本実施形態の車両用空調装置によれば、ユニットケース2内の第1空気流路および第2空気流路に配設されている第1ダンパ(デフ/フェイスダンパ)および第2ダンパ(フットダンパ)が、その外側面に設置された上述のリンク装置6を介して回動自在とされており、リンク装置6のリンクプレート8を回転し、その第1カム溝9および第2カム溝10に嵌入されている第1ピン16および第2ピン17を介して第1レバー14および第2レバー15を回転変位させることによって、ユニットケース2内の第1空気流路および第2空気流路に配設されている第1ダンパ(デフ/フェイスダンパ)および第2ダンパを(フットダンパ)適宜のタイミングで開閉し、車室内への温調風の吹出しモードを切替えることができる。
【0043】
このため、リンク装置6の操作力を低減し、その操作性を良好に改善することができるとともに、ユニットケース2の外側面に設置されるリンク装置6を小型コンパクト化することにより、ユニットケース2の外側面に配設される各種ユニット構成部品のレイアウト上の自由度の向上および車両への搭載性の向上を図ることができる。
【0044】
また、第1空気流路に配設されている第1ダンパであるデフ/フェイスダンパおよび第2空気流路に配設されている第2ダンパであるフットダンパを、リンク装置6のリンクプレート8を回転し、第1カム溝9および第2カム溝10の形状で決定される適宜のタイミングで開閉することにより、温調風の吹出しモードをデフモード、フェイスモード、フットモード、デフ/フットモード、バイレベルモード等に適宜切替え、車室内を温調することができるため、吹出しモードを切替えるデフ/フェイスダンパおよびフットダンパの操作性を改善し、その操作力を低減することができるとともに、該ダンパを操作するリンク装置6を小型コンパクト化し、その低コスト化、軽量化、搭載性の向上並びにレイアウト上の自由度の向上等を図ることができる。
【0045】
さらに、リンクプレート8に設けられるレバー部11に、マニュアル操作レバーに接続されているワイヤーの一端が接続され、第1ダンパのデフ/フェイスダンパおよび第2ダンパのフットダンパがマニュアル操作レバーを介して開閉可能とされており、マニュアル操作レバーを操作によって、ワイヤーを介してレバー部11およびリンクプレート8を回転し、デフ/フェイスダンパおよびフットダンパを開閉することができるため、マニュアル操作により吹出しモードを切替えるタイプの車両用空調装置において、その操作力を低減し、操作性、操作フィーリングを良好に改善することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、リンクプレート8をマニュアル操作で回転するマニュアル仕様の車両用空調装置に適用した例について説明したが、これに限定されるものではなく、リンクプレート8がアクチュエータを介して回転されるオート仕様のものにも同様に適用できることは云うまでもない。
【0047】
また、上記実施形態では、リンクプレート8の第1カム溝9および第2カム溝10に嵌入する第1および第2ピン16,17を有する第1および第2レバー14,15がデフ/フェイスダンパおよびフットダンパの回転軸に固定されたレバー12,13に連結されているリンク装置6およびHVACユニット1に適用した例について説明したが、中間の第1および第2レバー14,15の一方または両方を省略し、レバー12,13に設けたピンを直接カム溝9,10に嵌入する構成としたものにも同様に適用することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 空調ユニット(HVACユニット)
2 ユニットケース
3 デフ吹出し口
4 フェイス吹出し口
5 フット吹出し口
6 リンク装置
7 嵌合ボス部(中心部)
8 リンクプレート
9 第1カム溝
9A 底部
9B 底部の縁部
10 第2カム溝
10A 底部
10B 底部の縁部
11 レバー部
12,13 レバー
14 第1レバー
15 第2レバー
16 第1ピン
17 第2ピン
OL オーバーラップ部
CO 共通部分
T リンクプレートの外周縁部の厚さ
図1
図2
図3
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