(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081251
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20170206BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
H02J7/00 SZHV
H02J7/00 P
H02J7/00 302A
H01M10/48 P
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-58916(P2013-58916)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-187730(P2014-187730A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 淳
(72)【発明者】
【氏名】古川 公彦
【審査官】
永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−046921(JP,A)
【文献】
特開2001−037068(JP,A)
【文献】
特開平08−163704(JP,A)
【文献】
特開2013−099087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K6/20−6/547
B60L1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
B60W10/00−10/02
10/06−10/10
10/18
10/26−20/50
H01M10/42−10/48
H02H3/08−3/253
H02J7/00−7/12
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電圧系の負荷に電圧を供給する第1電源装置と、
前記第1電圧系より高電圧の第2電圧系の負荷に電圧を供給する第2電源装置と、
前記第2電源装置と前記第2電圧系の負荷とを電気的に切り離すためのスイッチと、
前記第2電源装置を管理する管理装置と、を備え、
前記第1電源装置、前記第2電源装置および前記管理装置のグラウンド線が共通しており、
前記グラウンド線は、第1のシャーシアースおよび第2のシャーシアースのそれぞれで接地され、かつ、前記グランウンド線が、前記第1電圧系側の回路において前記第1のシャーシアースに接続されると共に、前記第2電圧系側の回路において前記第2のシャーシアースに接続されており、
前記管理装置は、自己の装置内のグラウンド線に設定値を超える電流が流れたことを検知すると、前記スイッチをオフすることを特徴とする電源システム。
【請求項2】
前記第2電源装置は二次電池を含み、
前記管理装置は、
前記二次電池の電圧を検出する電圧検出回路と、
自己の装置内のグラウンド線に挿入された電流制限素子と、
前記電流制限素子の両端電圧を検出する差動アンプと、
前記差動アンプの出力を受け、前記電流制限素子の両端電圧が設定電圧を超えたとき
前記スイッチをオフするよう制御する制御回路と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記電流制限素子は、前記グラウンド線において前記制御回路のグラウンド端子および前記電圧検出回路のグラウンド端子より、前記二次電池側に挿入されることを特徴とする請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記電流制限素子は、サーミスタまたはヒューズであることを特徴とする請求項2または3に記載の電源システム。
【請求項5】
本電源システムは車両に搭載され、
前記第2電圧系の負荷には走行用モータが含まれ、
前記第2電圧系は60V以下、12V以上の電圧系であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるべき電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO
2排出量が少なく低燃費なハイブリッドカー(HEV;Hybrid Electric Vehicle)の普及が拡大している。HEVには大別すると、ストロングタイプ、マイルドタイプ(マイクロタイプを含む)がある。ストロングタイプは比較的大型の二次電池とモータを搭載し、エンジンが停止した状態でも二次電池に蓄電されたエネルギーで走行できるタイプである。マイルドタイプは比較的小型の二次電池とモータを搭載し、原則的にエンジンが停止した状態では走行できず、二次電池に蓄電されたエネルギーで主にパワーアシストするタイプである。
【0003】
ストロングタイプでは100V以上の駆動用二次電池が搭載される。駆動用二次電池を監視制御する管理装置の動作電圧は一般的に5V以下であり、補機用二次電池の出力電圧は通常12Vである。従って駆動用二次電池と、管理装置および補機用二次電池との間ではグラウンドが共通されず絶縁される。
【0004】
一方、マイルドタイプでは48V/36Vの駆動用二次電池が搭載される。この場合、安全規格上の危険電圧とされる60V以下であるため、駆動用二次電池と、管理装置および補機用二次電池との間でグラウンドを共通にすることも考えられる。グラウンドを共通化すれば、絶縁する場合よりコストを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−4822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら駆動用二次電池と負荷の間のグラウンド線が断線すると、駆動用二次電池から管理装置および補機用二次電池に共通のグラウンド線を介して大電流が流れこむ。この対策としてグラウンド線を高スペックにすることが考えられるが、コストが増大する。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、電圧が異なる複数の電源装置を備える電源システムを、安全性を確保しつつ低コストで設計する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の電源システムは、第1電圧系の負荷に電圧を供給する第1電源装置と、第1電圧系より高電圧の第2電圧系の負荷に電圧を供給する第2電源装置と、第2電源装置と第2電圧系の負荷とを電気的に切り離すためのスイッチと、第2電源装置を管理する管理装置と、を備える。第1電源装置、第2電源装置および管理装置のグラウンド線が共通しており、管理装置は、自己の装置内のグラウンド線に設定値を超える電流が流れたことを検知すると、スイッチをオフする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電圧が異なる複数の電源装置を備える電源システムを、安全性を確保しつつ低コストで設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】12V系、48V系の電圧を供給する車載用電源システムの回路構成例を示す図である。
【
図2】
図1の車載用電源システムにおいて、48Vの組電池と48V系負荷間の配線が断線した状態を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る車載用電源システムの回路構成例を示す図である。
【
図4】変形例に係る車載用電源システムの回路構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、12V系、48V系の電圧を供給する車載用電源システム100の回路構成例を示す図である。車載用電源システム100は、第1電源装置、第2電源装置、電池管理装置10を備える。第1電源装置は二次電池E1を備え、12V系負荷200に電圧を供給する。通常、この二次電池E1には鉛電池が用いられる。12V系負荷200は車両内の各種補機である。
【0012】
第2電源装置は二次電池E2〜E5を備え、48V系負荷300に電圧を供給する。各二次電池E2〜E5は、12Vのリチウムイオン電池またはニッケル水素電池であり、12Vの二次電池E2〜E5が4個直列接続されて、48Vの組電池を構成している。48V系負荷300は、マイルドハイブリッド車に搭載される走行アシスト用モータ及び/又は補機の一部が該当する。
【0013】
近年、電動パワーステアリング、電動VDC(Vehicle Dynamics Control)、電動ターボチャージャー、エアコン等、ハイパワーの補機が増えてきている。このようなハイパワーの補機を12V系電源で駆動すると大きな電流を流す必要があり、配線コストの増大、ケーブルロスの増加を招く。そこでハイパワーの補機を48V系電源で駆動することが検討されている。
【0014】
UL(Underwriters Laboratories)規格、IEC(International Electrotechnical Commission)規格などの安全規格は、直流60Vを超える電圧を危険電圧と規定し、厳格な絶縁処理を要求する。逆にいえば60V以下の電圧であれば絶縁処理を簡素化でき、ガルバニック絶縁が不要となる。また絶縁距離も短くできる。
【0015】
ストロングハイブリッド車や電気自動車では200V以上の二次電池が搭載されるため、厳格な絶縁処理が必要となる。
図1の回路では厳格な絶縁処理が不要な60V以下の48Vの二次電池を追加することにより、低コストで補機の電源系を増強している。
【0016】
48Vの組電池と、48V系負荷300との間にスイッチRYが挿入される。スイッチRYにはリレーコンタクタを用いることができる。スイッチRYがオフすることにより、48Vの組電池と48V系負荷300とを電気的に切り離すことができる。
【0017】
DC−DCコンバータ20は48V系配線と12V系配線に接続され、直流48Vを直流12Vに降圧する。DC−DCコンバータ20が動作することにより、48Vの組電池からも12V系負荷200へ電源供給することができる。
【0018】
電池管理装置10は、48Vの組電池を管理する。なお
図1では12Vの二次電池E1の電池管理装置は省略して描いているが、48Vの組電池の電池管理装置10と同一基板に実装されてもよいし、別の基板に実装されてもよい。
【0019】
電池管理装置10は、電圧検出回路11、制御回路12、降圧回路13、抵抗R1〜R5、容量C1〜容量C4を含む。電圧検出回路11は、48Vの組電池を構成する各二次電池E2〜E5の電圧を検出する。各二次電池E2〜E5のノードと電圧検出回路11の間は電圧線で接続される。各電圧線にはそれぞれ抵抗R1〜R5が挿入される。また各電圧線間には、容量C1〜容量C4が接続される。
【0020】
電圧検出回路11は、専用のカスタムICであるASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成される。そのASICの電源電圧として、組電池から48Vが供給される。電圧検出回路11は異常電圧を検出すると、制御回路12に通知する。
【0021】
制御回路12はマイクロコンピュータで構成され、電池管理装置10全体を制御する。マイクロコンピュータの電源電圧は、12Vの二次電池E1から供給される。より具体的には降圧回路13により、12Vが3〜5Vに降圧されて供給される。降圧回路13には例えば、3端子レギュレータを用いることができる。制御回路12は電圧検出回路11から異常電圧検出の通知を受けると、スイッチRYをオフして48Vの組電池と48V系負荷300とを遮断する。
【0022】
48Vの組電池と48V系負荷300間は、数10A以上の大電流が流れる。従って48V系の配線は、バスバーや線径が太いワイヤーハーネスで構成している。また
図1の回路では、低コストな回路とすべく、48Vの組電池、12Vの二次電池E1、電池管理装置10のグラウンド線を共通にしている。また電池管理装置10のグラウンド線を、通常のプリント配線で構成している。加えて、
図1の回路では、グランド線は、二か所で接地されている。具体的には、48V側の回路と、12V側の回路の二か所で、グランド線がシャーシアースCE1、CE2に接続されている。
図1の回路では、低コストな回路とすべく、48Vの組電池、12Vの二次電池E1、電池管理装置10のグラウンド線を共通にしているため、比較的グランド線が長くなりやすい。長いグランド線では、相対的に配線抵抗の影響が大きくなり、一か所の接地では、グランド線の電位レベルが共通とならないおそれがある。すなわち、グランド線の両端で電位差が生じ、グランド線がグランドとして機能しなくなるおそれがある。特に、低コストな回路とする場合、コストの増大を招くため、グランド線の太さを必要以上に太くすることができない。そのため、配線抵抗の影響を受けやすく、このような接地の問題が顕著となる。また、長いグランド線や細いグランド線は、グランド線がアンテナのように機能してノイズを拾う問題もある。そのため、
図1の構成では、グランド線は、シャーシアースCE1、CE2と最短距離で接続されるように、二か所で接地されている。この構成によると、グランド線の長さが長くなっても、グランド線の電位レベルを同じにすることができ、また、ノイズの影響も抑制することができる。以上の構成により、48Vの組電池、12Vの二次電池E1、電池管理装置10のグラウンド線を共通にすることができる。
【0023】
図2は、
図1の車載用電源システム100において、48Vの組電池と48V系負荷300間の配線が断線した状態を示す図である。この状態で48Vの組電池を動作させると、48Vの組電池と12Vの二次電池E1のグラウンド線がシャーシアースCE1、CE2に接続されているため、48Vの組電池と48V系負荷300間の配線が断線しても、シャーシアースCE1、CE2を介して電流が流れる。つまり、電池管理装置10のグラウンド線を介して大電流が流れる可能性がある。電池管理装置10のグラウンド線の許容電流を超える大電流が流れると、電池管理装置10の故障につながる。また車載用電源システム100は通常、手作業で組み立てられるため、断線以外でも作業者の接続ミスにより
図2の状態が発生することもある。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態に係る車載用電源システム100の回路構成例を示す図である。
図3の回路は
図1の回路と比較し、電池管理装置10に、グラウンド線の大電流対策が追加された回路である。具体的には、電池管理装置10のグラウンド線に設定値を超える電流が流れたことが検知されると、スイッチRYをオフする機能が追加されている。
【0025】
本実施の形態に係る電池管理装置10は、
図1の電池管理装置10に対して、電流制限素子、差動アンプAPが追加されている。電流制限素子は、電池管理装置10内のグラウンド線に挿入される。本実施の形態では電流制限素子にPTC(Positive Temperature Coefficien)サーミスタT1を用いる。PTCサーミスタT1は温度が上昇すると抵抗値が増大する。従って大電流が流れると、その自己発熱により抵抗値が増大し電流を制限する。
【0026】
PTCサーミスタT1の両端は、差動アンプAPの反転入力端子および非反転入力端子にそれぞれ接続される。差動アンプAPは、PTCサーミスタT1の両端電圧を差動増幅し、制御回路に出力する。差動アンプAPにはオペアンプを使用できる。電池管理装置10内のグラウンド線に電流が流れるとPTCサーミスタT1の両端に電位差が発生する。
【0027】
制御回路12は、差動アンプAPの出力電圧を受け、PTCサーミスタT1の両端電圧が設定電圧を超えたとき、電池管理装置10内のグラウンド線に大電流が流れたと判定する。制御回路12は大電流が流れたと判定するとスイッチRYをオフするよう制御する。
【0028】
なおPTCサーミスタT1は、電池管理装置10内のグラウンド線において制御回路12のグラウンド端子および電圧検出回路11のグラウンド端子より、48V系の組電池のグラウンド端子側に挿入されることが望ましい。これにより、制御回路12のグラウンド端子と電圧検出回路11のグラウンド端子間に電位差が発生することを抑制できる。
【0029】
仮に、制御回路12のグラウンド端子と電圧検出回路11のグラウンド端子間にPTCサーミスタT1を挿入した場合、PTCサーミスタT1に電流が流れると両グラウンド端子間に電位差が発生する。この場合、制御回路12と電圧検出回路11間の通信信号の基準電位がずれてしまい正常な通信が困難になる。なお本実施の形態は、この対策を施した上、制御回路12のグラウンド端子と電圧検出回路11のグラウンド端子間にPTCサーミスタT1を挿入する構成を排除するものではない。
【0030】
図4は、変形例に係る車載用電源システム100の回路構成例を示す図である。変形例に係る電池管理装置10は、
図3の電池管理装置10のPTCサーミスタT1をヒューズF1に置換した構成である。ヒューズは大電流が流れ、溶断すると再使用が不可能であるが、低コストな電流制限素子である。
【0031】
以上説明したように本実施の形態によれば、電流制限素子を設けることにより、電圧検出回路11のグラウンド線に過電流が流れることを抑制できる。従って電池管理装置10の配線材を、大電流を許容する線径とする必要がなく、コスト増大を抑制できる。また電流制限素子に印加される電圧変動を監視することにより、48Vの組電池のグラウンド線の断線を検出できる。また、その断線検出時にスイッチRYをオフするため、48Vの組電池の異常状態での使用を防止できる。従って電圧が異なる複数の電源装置(本実施の形態では48V系電源装置と12V系電源装置)を備える電源システムを、安全性を確保しつつ低コストで設計できる。
【0032】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。こられ実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0033】
上述の実施の形態では48Vの組電池の12Vの二次電池E1を組み合わせた電源システムを想定した。この点、これらの電圧の組み合わせに限るものではない。12V以上60V以下の電圧(例えば、36V)の組電池と、12Vの二次電池を組み合わせた電源システムであってもよい。また電源装置は二次電池に限らず、電気二重層コンデンサなどのキャパシタであってもよい。また電源システムは車載用途に限定されず、電圧の異なる複数の電源装置を組み合わせたシステム全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
100 車載用電源システム、 200 12V系負荷、 300 48V系負荷、 10 電池管理装置、 11 電圧検出回路、 12 制御回路、 13 降圧回路、 RY スイッチ、 E1,E2,E3,E4,E5 二次電池、 CE1,CE2 シャーシアース、 R1,R2,R3,R4,R5 抵抗、 C1,C2,C3,C4 容量、 20 DC−DCコンバータ、 T1 PTCサーミスタ、 F1 ヒューズ、 AP 差動アンプ。