【実施例1】
【0023】
[第1の実施形態の説明:
図1〜
図3、
図10]
図1〜
図3および
図10を用いて、本発明の第1の実施形態であるマトリックス光学装置50の構造および構成を説明する。
図1は構造および構成を示す平面図であり、
図2は
図1の部分的な構成を示す平面図であり、
図3は効果を示す平面図であり、
図10は液晶光学装置の基本的構造を示す等価回路図である。本実施の形態ではマトリックス光学装置として、アクティブマトリックス型の液晶光学装置を例示するが、液晶光学装置以外にも、EL(Electro−Luminescence)表示装置、プラズマ発光体表示装置などを用いても実現可能である。
【0024】
(液晶光学装置の一般的説明)
初めに
図10を用いて、アクティブマトリクス型の液晶光学装置の基本的構造を説明する。
図10において、液晶光学装置の表示パネル部201は、下基板100上に、液晶の配向特性を利用し映像やデータ類の表示を行う画素GSが2次元配列(例えばn行×m列に配列)されている。
【0025】
これらn×m個の画素GSを駆動するために、ゲート駆動回路300と画素GSに書き込む画素データを制御するデータ駆動回路400とが備えられている。さらに外部回路(図示せず)からの制御信号sbを、ゲート駆動回路300とデータ駆動回路400とに供給するため接続端子群PDが備えられている。
【0026】
さらに画素GSに書き込む画素データを制御するため、行方向と列方向に互いに直交するように配設された複数のゲート線gと複数のデータ線dとが備えられている。
【0027】
また各画素GSは、ゲート線gからのゲート信号によってデータ線dからの表示データをスイッチングするトランジスタTFTと、画素GSに共通に設けられた共通電極(図示せず)と画素電極との間に蓄蔵された液晶分子の等価容量Ceと、この等価容量Ceに並列に構成され、等価容量Ceに印加された信号電圧を保持するための記憶容量Cmとを備えている。
【0028】
このような構成を有する表示パネル部201において、外部回路(図示せず)から供給される1行分の画素に対応した表示データがデータ駆動回路400に順次記憶される。一方、外部回路(図示せず)から供給される制御信号sbはゲート駆動回路300を通じてゲート線gを順次駆動し、各行の画素GSのトランジスタTFTをオン状態にして表示データを取り込み可能な選択状態に設定する。
【0029】
そしてこの各行の画素GS群の選択タイミングに同期して、各データ線dにより、表示データを各々の画素GSに一斉に供給し、液晶分子がこの画素データ電圧に応じて配向状態を変化させて所定の階調表示動作が行われることによって、画像情報が表示パネル部201に表示される。
【0030】
このとき、制御信号sbを供給する配線の長さが、接続端子群PDから引き出される位置によって異なるため、位相差ないし時間差があり、画素に印可されるタイミングがずれると表示品質の低下を生じる。本発明はこの問題を解決するものである。
【0031】
(本発明のマトリックス光学装置の構造説明)
図1、
図2を用いて本発明のマトリックス型光学装置の第1の実施形態の構成を説明する。
図1は本発明のマトリックス型光学装置である液晶光学装置の構成を示す平面図である。また
図2は
図1の部分的な構成を示す平面図である。
【0032】
図1において、液晶光学装置50は、ドットマトリックス液晶表示素子により構成された光学部200と、下基板100と、下基板100上に構成されたゲート駆動回路300と、データ駆動回路400と、配線群HBとから構成される。配線群HB3は、太線で図示したが、複数のデータ用配線を簡略して示すものである。
【0033】
光学部200は、下基板100の上にガラス基板を配し、基板100とガラス基板との間に液晶を注入することによって、マトリックス状の画素を構成している。下基板100は、本実施例ではシリコンを用いており、光学装置として一般にLCOSと称されている。
【0034】
図1に示す様に実施例においては、行および列は各々1050区画からなり、画素数1050×1050ピクセル(Pixels)のとして構成されている。
【0035】
接続端子群PDは外部より画素データ及びコントロール信号を供給するための接続端子群である。本実施例においては、外部機器(図示せず)からの画素データ及びコントロール信号が、210本のデータ用配線d1〜d210(以降データ用配線dnと略記する)と、データコントロール線dcと、ゲート線gcに入力される。
【0036】
それぞれのデータ用配線dnは、引回部hmを経て接続端子群PDの中央部PDCの近傍に設けられたターミナル部Tに集結され、さらにターミナル部Tから配線群HBとしてまとめられて、データ駆動回路400に入力される。
【0037】
図1に示す様に、ターミナル部Tとは引回部hmを経て引き回された全ての配線を、接続端子群PDの中央位置近傍でまとめたものである。また引回部hmにおいては、接続端子群PDの全ての配線は、接続端子群PDの端部から順に接続端子群PDの略中央部PDCに引き回され、かつ引回部hmにおける全ての配線は、接続端子群PDの中央部PDCに対して、左右対称に形成されている。
【0038】
またデータコントロール線dcは後述するデータ駆動回路400の制御回路SGに入力され、さらにゲート線gcはゲート駆動回路300に入力され、光学部200への画素データの書き込みタイミングを制御する。
【0039】
データ駆動回路400は、データ用配線dnを、光学部200に定められたタイミングで供給するための、5個のトランスミッションゲート(Transmission Gate)TG1〜TG5と、トランスミッションゲートの各々にデータ用配線dnの210個のデータ信号を一括して書き込むタイミングをコントロールする5個の制御回路SGを備えている。
【0040】
ゲート駆動回路300は、データ駆動回路400から供給される210(データ用配線の本数)×5(トランスミッションゲートの数)=1050点の画素データを、光学部200の1050行への書き込みを制御するためのゲート駆動回路であって、ゲート線gcによって1050点の画素データを光学部200の定められた行に一括して書き込む。
【0041】
本実施形態におけるマトリックス光学装置50では、接続端子群PDから引き出された引回部hmの210本のデータ用配線は全て接続端子群PDの中央位置近傍のターミナル部Tに集結されるので、各データ用配線の長さの差は、
図1に“L”と示すデータ用配線領域Pd1の長さを上回らない。
【0042】
図2を用いてさらに詳述する。
図2は、
図1に示した接続端子群PDと、引回部hmと、ターミナル部Tと、配線群HBとを部分的に拡大した平面図である。
【0043】
図2に示す様に、接続端子群PDは中央部PDCの両側にデータ用配線領域Pd1とデータ用配線領域Pd2とを備え、データ用配線領域Pd1とデータ用配線領域Pd2とから、各々データ用配線d1〜d105およびデータ用配線d106〜d210とが導出され、中央部PDC近傍に設けられたターミナル部Tに集結され、さらに210本のデータ用配線dnはターミナル部Tから配線群HBにまとめられデータ駆動回路400に入力される。また引回部hmは、接続端子群PDの中央部PDCに対称に形成されている。
【0044】
図2に示す様にデータ用配線d1〜d105の配線長さの差は、最大Pd1の寸法であ
り、すなわちLを上回らない。同様にデータ用配線d106〜d210の配線長さの差は、最大Pd2の寸法であり、同様にLを上回らない。超精細表示装置の様に、データ用配線領域Pd1もしくはデータ用配線領域Pd2の全範囲にデータ用配線dnが集結する場合においても、各データ用配線dn間の配線長さの差はLを上回らない。
【0045】
さらに、
図3(a)および
図3(b)を用いて本発明のマトリックス光学装置である液晶光学装置50の効果を説明する。
図3(a)は本発明のマトリックス光学装置である液晶光学装置50におけるデータ用配線dnを、ターミナル部Tを用い配線群HBに集中配置して引き回した状態を模式的に示す平面図であり、
図3(b)は、ターミナル部Tを設けず、接続端子群PDから片側にすべてのデータ用配線を中継点Cを経由して引き回した状態を模式的に示す平面図である。
【0046】
本発明の構成を示す
図3(a)と
図3(b)とを比較すると、接続端子群PDからデータ駆動回路400までの、各データ用配線dnの配線の長さの差は、
図3(b)では約2Lである。
【0047】
一方、
図3(a)に示す本発明の液晶光学装置50においては、接続端子群PDからデータ駆動回路400までの、各データ用配線dnの配線の長さの差は、約Lであり、
図3(b)の構成より50%改善している。すなわち本発明による効果は、各データ用配線dnの長さの差が大幅に減少するので、各画素に書き込む画素データの位相差ないし時間差が減少し表示画質が向上する。
【実施例2】
【0048】
本発明のマトリックス光学装置の第2の実施形態は、高精細の光学装置等において多数のデータ用配線に対応するため、外部より画素データを供給する接続端子群を、第1端子群と第2端子群とに分割するものである。
【0049】
さらに、第1端子群の中央位置近傍に第1端子群からのデータ用配線をまとめる第1ターミナル部を設け、第2端子群の中央位置近傍に第2端子群からのデータ用配線をまとめる第2ターミナル部設け、さらに第1ターミナル部と第2ターミナル部を経由した配線群とをまとめる第3ターミナル部を新たに設ける。
【0050】
この第3ターミナル部を経由して、全てのデータ用配線を集中して引き回しデータ駆動回路に接続するように構成することによって、各データ用配線間すなわち各画素データ間の位相差ないし時間差を減少させ画質の改善を計るものである。
【0051】
さらに第3ターミナル部は、第1ターミナル部と第2ターミナル部との、中間位置近傍に設けられていることが特徴である。
【0052】
図4を用いてさらに詳述する。
図4は本発明のマトリックス光学装置である液晶光学装置60の第2の実施形態の構成を示す平面図である。
図4に示す様に、高精細の光学装置等において多量のデータ用配線d1からd420を備える場合は、接続端子群PDを接続端子群PD1d1〜d210および接続端子群PD2d211〜d420の様に2個に分割し、下基板100の各々隣り合う2辺に配設する。
【0053】
さらに接続端子群PD1および接続端子群PD2からのデータ用配線d1〜d210およびデータ用配線d211〜d420の各々を、各々の接続端子群の略中央部に一括して集中配置する。配線群HB1の集中配置部を第1ターミナル部T1、配線群HB2の集中配置部を第2ターミナル部T2とする。
【0054】
さらに、接続端子群PD1および接続端子群PD2の略中央部に第3のターミナル部T3を設け、配線群HB1および配線群HB2をターミナル部T3によって配線群HB3としてさらに集中配置し、ゲート駆動回路に至るまで一括して引き回す。ここで、配線群HB1、配線群HB2及び配線群HB3は、太線で図示したが、
図1で図示した配線群HBと同じく、複数のデータ用配線を簡略して示すものである。本実施例では、配線群HB1及び配線群HB2は、それぞれ210本のデータ用配線で、配線群HB3は、420本のデータ用配線で構成される。
【0055】
このように第1ターミナル部T1および第2ターミナル部T2の略中央部にターミナルT3を配置し、配線群HB1および配線群HB2の配線距離を等しくして配線群HB3としてデータ駆動回路400に入力し、画素データ間の位相差ないし時間差を減少し画質を向上させる。
【0056】
(製造方法の説明)
次に
図5、
図6により本発明における第2の実施形態のマトリックス光学装置60の構成及びその集合工法による製造方法について説明する。
【0057】
図5は完成したマトリックス表示装置である液晶光学装置60の単個の構成を示す平面図である。また
図6は大判のシリコン基板と大判のガラス基板を用いた集合工法による製造過程を示す平面図である。
【0058】
図5において、液晶光学装置60は、光学部200と、パッド部(接続端子群)700と、各半導体回路及び各配線(図示せず)を設けたシリコン基板である下基板100上の光学部の周囲にシール部500を形成し、このシール部500内に液晶を注入した後、下基板100と同じサイズのガラス基板600を重ね合わせ、シール部500をUV照射等によって硬化させることにより、下基板100とガラス基板600とを接着して液晶光学装置60が構成されている。
【0059】
また、液晶光学装置60は下基板100とガラス基板600とを対角線方向に少しずらせて接着することにより、下基板100の直交する2辺を露出させて、この露出部分に2個のパッド部(接続端子群)を設けるようにしている。
【0060】
次に、
図6(a)、
図6(b)により、液晶光学装置の集合工法による製造方法について説明する。
図6(a)は液晶光学装置60を集合工法にて製造方法する状態を示す大判シリコン基板101の平面図と、大判ガラス基板601の平面図である。
【0061】
図6(a)は、
図5に示す液晶光学装置60における各要素を設けた下基板100を複数個形成した大判シリコン基板101と、この大判シリコン基板と同じサイズの大判ガラス基板601を用意し、この大判シリコン基板と大判ガラス基板とを、
図5に示すシリコン基板100とガラス基板600とのずれ量と同じ量だけ対角線方向にずらせて接着した状態である。
【0062】
そして、大判シリコン基板101と大判ガラス基板601との接着体を切断ラインA(実線で示す)に沿って大判シリコン基板101を切断し、また切断ラインB(点線で示す)に沿って大判ガラス基板601を切断することにより、
図6(b)に示す液晶光学装置60が量産される。
【0063】
上記の如く、本発明における液晶光学装置60の集合工法においては、同じサイズの大判シリコン基板101と大判ガラス基板601とを用いて、大判シリコン基板101と大判ガラス基板601との両者に無駄な切断部分を生じることが無いので、液晶光学装置6
0を効率良く量産することができる。
【0064】
しかも液晶光学装置60の2辺にパッド部(接続端子群)を設けるための露出部分を形成することができる。すなわち本発明はこのように効率良く製造された液晶光学装置60において、直交する2辺に設けられた2個のパッド部700からの配線を工夫したものである。
【0065】
以上述べた様に本発明の液晶光学装置60においては、複数のデータ用配線の各々半分が第1ターミナル部T1及び第2ターミナル部T2で各々一括して配線群としてまとめられ、さらに2個の配線群は新たに設けられた第3ターミナル部T3によって1個の配線群として集中配置し引き回されるので、各画素データ信号間の位相差ないし時間差が減少し液晶光学装置の表示品質が向上する。
【0066】
なお第1〜第3ターミナル部T1〜T3の位置に出力用のバッファー回路を設け、信号の強化を計ることも、表示品質をさらに向上する上で有力な手法である。
【0067】
以上述べた用に本発明のマトリックス光学装置によれば、簡便な手法でコストの増大を招くこともなく、データ信号間すなわち各画素データ間の位相差ないし時間差を減少させ、液晶光学装置の画質を向上させる事が可能となり、液晶光学装置や反射型もしくは透過型プロジェクタの表示デバイスとして極めて有用である