特許第6081314号(P6081314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081314
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】芝生バリカン
(51)【国際特許分類】
   A01G 3/06 20060101AFI20170206BHJP
   A01D 34/10 20060101ALI20170206BHJP
   A01D 34/26 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   A01G3/06
   A01D34/10 A
   A01D34/26 A
   A01D34/26 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-168076(P2013-168076)
(22)【出願日】2013年8月13日
(65)【公開番号】特開2015-35972(P2015-35972A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 周祐
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−259513(JP,A)
【文献】 特開2002−335761(JP,A)
【文献】 特開2012−130351(JP,A)
【文献】 特開2004−41140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 3/06
A01G 3/04
A01D 34/10
A01D 34/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの内部に設けた原動機と、
前記ハウジングの下部にて前方に突出して設けられ、前記原動機の作動によってクランク機構を介して相対的に左右方向に往復動する上下一対の刈込刃と、
前記ハウジング底部に設けて前記刈込刃の地面に対する高さ位置を調整する高さ調整機構とを備えた芝生バリカンであって、
前記高さ調整機構は、地面に沿って摺動させるスライダを前記ハウジングの底部に備え、前記スライダを前記ハウジング底部の後端部に設けた支持部に前後方向と直交する水平軸線回りに回動可能に支持し、前記スライダの前部に設けた係合部を前記ハウジングの前部にて上下方向に配置した複数の係合凹部の何れか一つに選択的に係合させることにより、前記スライダの前部のハウジングに対する上下位置を変更して前記刈込刃の地面に対する高さ位置を変更可能としたものであり、前記支持部を前後方向に移動可能とするとともに、前記支持部には前記係合部が前記係合凹部に係合する方向に前記スライダを付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする芝生バリカン。
【請求項2】
請求項1に記載の芝生バリカンにおいて、
前記スライダには前記ハウジングの側部に刈り取った芝を受けるレシーバ部を設けたことを特徴とする芝生バリカン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝を刈り取る芝生バリカンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には芝を刈り取る芝生バリカンが開示されている。特許文献1及び2の芝生バリカンはハウジングの内部に設けた電動モータと、ハウジングの下部にて前方に突出して設けられ、電動モータの作動によってクランク機構を介して左右方向に往復動する上下一対の刈込刃とを備えている。
【0003】
特許文献1の芝生バリカンは芝の刈込み高さを調整可能とするためのスライダをハウジングの底部に備えている。ハウジングの下側後部には後側に進むにつれて上方に傾斜するスライダの取付穴部が形成されており、スライダは取付穴部に摺動自在に嵌合して前側に向かうにつれて下方に傾斜する取付脚部と、取付脚部の下端に一体的に形成されてハウジングの下側に配置される偏平板部とを備えている。芝の刈込み高さを高くするときには、スライダの取付脚部をハウジングの取付穴部にて浅い位置で嵌合固定させると、スライダの扁平板部はハウジングの底面から離間し、刈込刃は地面から高い位置に配置される。これに対し、芝の刈込み高さを低くするときには、スライダの取付脚部をハウジングの取付穴部に深い位置で嵌合させると、スライダの扁平板部はハウジングの底面に近接し、刈込刃は地面から低い位置となる。
【0004】
また、特許文献2の芝生バリカンは刈り取った芝を受け止めるとともに、芝の刈込み高さを調整可能とするための可撓性を有した樹脂部材よりなるレシーバを備えている。芝生バリカンのレシーバはハウジングの下側にて前部がハウジングの横幅より長く延びるT字形をした底板と、底板のハウジングの外側に延出した部分にて側部と後部から起立する背板とにより刈り取った芝を受けるレシーバ部を形成したものである。
【0005】
レシーバは背板の後方にて底板後部の両側部からハウジングの両側面に沿って起立して前後方向に延びる取付板部を備えている。取付板部の内面には前後方向の中間部に上下方向に3つの第1凹部が形成され、ハウジングの両側面には第1凹部の何れか1つに選択的に係合させる第1突部が形成されている。また、ハウジングの後部には上下方向に並ぶ3つの第2凹部が形成され、レシーバの後部には第2凹部の何れか1つに選択的に係合させる第2突部が形成されている。この芝生バリカンでは、ハウジングの第1突部をレシーバの3つの第1凹部に係合させる高さ位置と、レシーバの第2突部をハウジングの3つの第2凹部に係合させる高さ位置とを変えることにより、レシーバのハウジングに対する上下位置を変え、刈込刃の地面に対する高さを変更可能としている。このレシーバをハウジングに対して取り付けるときには、レシーバの取付板の第1凹部にハウジングの第1突部を係合させた状態でレシーバを前後方向に撓ませ、レシーバの第2突部をハウジングの第2凹部に係合させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4965702号公報
【特許文献2】特開2009−005653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1の芝生バリカンにおいては、スライダの取付脚部をハウジングの取付穴部に挿入して嵌合固定させた位置により、スライダの扁平板部は刈込刃に対する前端位置が変わるようになっていた。すなわち、スライダの取付脚部をハウジングの取付穴部の浅い位置に嵌合させて刈込刃の高さを高くしたときには、スライダの扁平板部が刈込刃の前後方向の中間位置まで延出することになるが、スライダの取付脚部をハウジングの取付穴部の深い位置まで嵌合させて刈込刃の高さを低くしたときには、スライダの扁平板部が刈込刃の前後方向の後部に後退することになる。
【0008】
刈込刃の高さを高くしたときには、スライダの偏平板部が刈込刃の前後方向の中間位置まで延出しているために、芝生バリカンの前側に力が加わっても、芝生バリカンが前側に傾きにくくなり、刈込刃が地面に当たって破損するおそれがない。これに対し、刈込刃の高さを低くしたときには、スライダの扁平板部が刈込刃の後部まで後退しているために、芝生バリカンの前側に力が加わると、芝生バリカンが前側に傾きやすくなり、刈込刃が地面に当たって破損するおそれがあった。
【0009】
また、特許文献2のバリカンにおいては、レシーバのハウジングに対する上下位置を変えて、刈込刃の地面に対する高さを変更するときには、ハウジングの中間部の第1突部をレシーバの3つの第1凹部の何れか1つに選択的に係合させ、また、レシーバの第2突部をハウジングの後部の3つの第2凹部の何れか1つに選択的に係合させ、前後方向の2カ所で突部を複数の凹部に選択的に係合させるようにしている。そのため、レシーバを前後方向に撓ませるのに大きな力を加えなければならなく、高さ調整の作業が面倒であった。また、樹脂部材よりなるレシーバは屋外環境によって劣化して可撓性が低下することがあり、レシーバを前後方向に撓ませると、レシーバが十分に撓まずに割れて破損する問題があった。本発明は、刈込刃の高さを調整する高さ調整機構を備えた芝生バリカンにおいて、刈込刃が地面に当たって破損するのを防ぐとともに、高さ調整作業を簡単に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、ハウジングの内部に設けた原動機と、ハウジングの下部にて前方に突出して設けられ、原動機の作動によってクランク機構を介して相対的に左右方向に往復動する上下一対の刈込刃と、ハウジング底部に設けて刈込刃の地面に対する高さ位置を調整する高さ調整機構とを備えた芝生バリカンであって、高さ調整機構は、地面に沿って摺動させるスライダをハウジングの底部に備え、スライダをハウジング底部の後端部に設けた支持部に前後方向と直交する水平軸線回りに回動可能に支持し、スライダの前部に設けた係合部をハウジングの前部にて上下方向に配置した複数の係合凹部の何れか一つに選択的に係合させることにより、スライダの前部のハウジングに対する上下位置を変更して刈込刃の地面に対する高さ位置を変更可能としたものであり、支持部を前後方向に移動可能とするとともに、支持部には係合部が係合凹部に係合する方向にスライダを付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする芝生バリカンを提供するものである。
【0011】
上記のように構成した芝生バリカンにおいては、高さ調整機構は、地面に沿って摺動させるスライダをハウジング底部の後端部に設けた支持部に前後方向と直交する水平軸線回りに回動可能に支持し、スライダの前部に設けた係合部をハウジングの前部にて上下方向に配置した複数の係合凹部の何れか一つに選択的に係合させることにより、スライダの前部のハウジングに対する上下位置を変更して刈込刃の地面に対する高さ位置を変更可能としたものである。このため、刈込刃の地面に対する高さ位置を上下方向に調整しても、スライダの前端位置が刈込刃の高さに関わらず刈込刃の前後方向に対して変わらないようになる。これにより、芝生バリカンが前側に傾きにくくなり、刈込刃が地面に当たって破損するおそれがない。また、ハウジングの支持部を前後方向に移動可能とするとともに、支持部には係合部が係合凹部に係合する方向にスライダを付勢する付勢手段を設けたので、刈込刃の高さ位置を変更するときには、付勢手段の付勢力に抗してスライダの係合部がハウジングの係合凹部から離脱する方向にスライダを移動させ、スライダの係合部を適宜な上下位置の係合凹部に係合可能な位置とすることで、スライダの係合部が再び付勢手段により係合凹部に係合することになり、スライダの上下位置の変更が簡単にできるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の芝生バリカンの一実施形態の斜視図である。
図2図1の側面図である。
図3図2の前後方向に沿った断面図である。
図4】刈込刃の地面に対する高さ変更をするときの芝生バリカンの下部を示す一部破断断面図であり、(a)は係合部が中段の係合凹部に係合しているとき、(b)は係合部を係合凹部から離脱させたとき、(c)は係合部を下段の係合凹部に係合させたときの図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の芝生バリカンの一実施形態を添付図面を参照して説明する。図1図3に示したように、芝生バリカン10は、後部に作業者が把持するグリップ12が一体的に設けられたハウジング11を備えている。芝生バリカン10は、ハウジング11の内部に直立して設けた電動モータ(原動機)21と、ハウジング11の下部にて前方に突出して設けられ、ハウジング11の下部に設けたクランク機構を介して上下一対の刈込刃31,32と、ハウジング11の底部に刈込刃31,32の地面に対する高さを調整する高さ調整機構50とを備えている。
【0014】
ハウジング11底部の後端部には後述する高さ調整機構50のスライダ51を支持する支持ブロック(支持部)13が設けられている。支持ブロック13はハウジング11底部の後端部に設けた前後方向に延びる取付穴11a内にて前後方向に移動可能に取り付けられている。取付穴11a内にはコイルスプリング(付勢手段)14が介装されており、支持ブロック13は取付穴11a内でコイルスプリング14により後方に付勢されている。ハウジング11の両側部の下側前部にはスライダ51の前部の係合部53を上下方向に調整可能に係合させる上下方向に並ぶ3つの係合凹部15(15a〜15c)が形成されている。これら係合凹部15(15a〜15c)はスライダ51の係合部53を前側から係合させるように前側に開口している。
【0015】
図3に示したように、電動モータ21の出力軸21aにはピニオンギヤ22が設けられており、ピニオンギヤ22にはハウジング11内に設けた支持軸23に回転可能に支持された第1中間ギヤ24が噛み合っている。また、第1中間ギヤ24の下部にはこれより小径の第2中間ギヤ25が一体的に設けられており、第2中間ギヤ25は第1中間ギヤ24とともに支持軸23に回転可能に支持されている。この第2中間ギヤ25にはハウジング11内の下部に設けた支持軸26に回転可能に支持された駆動ギヤ27が噛み合っている。駆動ギヤ27の下面にはクランク機構を構成するクランクカム28が2本のピンにより固定されており、クランクカム28には駆動ギヤ27から動力が伝達されるようになっている。クランクカム28は支持軸26に対して偏心して配置した上下一対の円板28a,28bよりなる。このクランクカム28の両円板28a,28bの中心は支持軸26を挟んで対向する位置、すなわち180°の位相差となっている。
【0016】
図1図3に示したように、ハウジング11の下部には上下一対の刈込刃31,32が前方に突出して設けられており、刈込刃31,32はハウジング11の下部にて左右方向に移動可能に支持されている。刈込刃31,32はハウジング11の下部に取り付けた後部から前方に延びた前部がハウジング11の幅より左右方向に長い幅広な形状となっており、刈込刃31,32の前部には櫛歯状の刃部31a,32aが形成されている。また、刈込刃31,32の後部には前後方向に長い角丸長方形状をした係合孔31b,32bが形成されている。刈込刃31,32の各係合孔31b,32bにはクランクカム28の各円板28a,28bが長手方向にスライド移動可能に係合している。
【0017】
電動モータ21の駆動により駆動ギヤ27を回転させると、クランクカム28の各円板28a,28bは支持軸26を中心に公転する。各円板28a,28bが各刈込刃31,32の係合孔31b,32bを長手方向にスライド移動することにより、各刈込刃31,32は左右方向に往復動する。このとき、クランクカム28の各円板28a,28bは支持軸26に対して180°の位相差に配置されていることにより、刈込刃31,32は互いに左右方向の逆向きに往復動する。
【0018】
図1及び図2に示したように、ハウジング11の前部には刈込刃31,32の上側を覆うガード板40が設けられており、ガード板40の後部から後方に延出する支持腕部41,41がハウジング11の側部に着脱可能に係合している。ガード板40はアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の透明な硬質の樹脂部材よりなる。ガード板40は刈込刃31,32の幅より少し長い長さをし、刈込刃31,32の前端より少し前方に突出している。
【0019】
芝生バリカン10は刈込刃31,32の地面に対する高さ位置を調整する高さ調整機構50を備え、高さ調整機構50は芝の刈込み高さを調整することを目的としたものである。高さ調整機構50はハウジング11の底部に地面に沿って摺動させるスライダ51を備え、スライダ51の前部のハウジング11に対する上下位置を変更することにより、刈込刃31,32の地面に対する高さ位置を変更可能とするものである。スライダ51の後端には左右方向に延びる回動軸部51aが設けられており、スライダ51の回動軸部51aはハウジング11底部の後端部に設けた支持ブロック13の後端の凹部13aに回動自在に係合している。上述したように、支持ブロック13は取付穴11a内にてコイルスプリング14により後方に付勢された状態で前後方向に移動可能に取り付けられており、スライダ51は支持ブロック13によってハウジング11に対して前後に摺動自在に支持された状態で、前後方向と直交する方向に回動可能に取り付けられている。
【0020】
スライダ51は地面に沿って摺動する底壁51bと、底壁51bの側部からハウジング11の左右の側面に沿って起立する側壁51cとを備えている。底壁51bはハウジング11の底面を覆い、底壁51bの前端位置は刈込刃31,32の櫛歯状の刃部31a,32aの基端位置まで延出している。底壁51bの中間部から前部は側壁51cを越えるようにハウジング11の側方にて外側に延び、底壁51bの前部の側端縁と後端縁には周壁51dが起立して形成され、底壁51bと側壁51c及び周壁51dによって刈込刃31,32により刈り取った芝を受けるレシーバ部52が形成されている。
【0021】
図4に示したように、スライダ51の両側壁51cには内面前端部にハウジング11の側面に突出する係合部53が形成されている。係合部53はハウジング11の両側面の前部に形成された上下方向に並ぶ3つの係合凹部15(15a〜15c)の1つに前側から係合可能となっている。係合部53を上段の係合凹部15aに係合させたときには、スライダ51の底壁51bはハウジング11の底面に最も近接し、刈込刃31,32の先端部は地面から15mmの高さとなって最も低い位置となる。また、係合部53を中段の係合凹部15bに係合させたときには、スライダ51の底壁51bはハウジング11の底面から少し離間し、刈込刃31,32の先端部は地面から20mmの高さとなる。係合部53を下段の係合凹部15cに係合させたときには、スライダ51の底壁51bはハウジング11の底面から最も離間し、刈込刃31,32の先端部は地面から25mmの高さとなって最も高い位置となる。
【0022】
上記のように構成した芝生バリカン10の作動について説明する。芝生バリカン10においては、電動モータ21を作動させると、出力軸21aのピニオンギヤ22に係合した第1中間ギヤ24が回転し、この第1中間ギヤ24とともに回転する第2中間ギヤ25に係合した駆動ギヤ27が回転する。駆動ギヤ27の回転が2つのピンにより固定したクランクカム28に動力伝達され、クランクカム28の各円板28a,28bが支持軸26に対して偏心して回転する。クランクカム28の各円板28a,28bは180°の位相差をもって支持軸26に対して偏心して回転しながら刈込刃31,32の各係合孔31b,32bをスライド移動することで、刈込刃31,32は互いに逆向きに左右方向に往復動する。
【0023】
作業者がハウジング11のグリップ12を把持し、ハウジング11の底部に設けたスライダ51を芝が生えた地面に沿って摺動させると、左右方向に相対的に往復動する刈込刃31,32の刃部31a,32bにより芝が刈り取られる。また、刈込刃31,32の上側に刈込刃31,32より前方に少し突出したガード板40が設けられているので、際刈りと呼ばれる構造物の近傍の芝を刈るときに、刈込刃31,32は刃部31a,32bが構造物に接触することによる破損を防ぐことができる。
【0024】
上記のように構成した芝生バリカン10においては、高さ調整機構50は地面に沿って摺動させるスライダ51をハウジング11の底部に備え、スライダ51をハウジング11底部の後端部に設けた支持ブロック13に前後方向と直交する水平軸線回りに回動可能に支持した。スライダ51は側壁51cの前部に設けた係合部53をハウジング11の側壁前部にて上下方向に配置した複数の係合凹部15(15a〜15c)の何れか1つに選択的に係合させることにより、スライダ51の前部のハウジング11に対する上下位置を変更して、刈込刃31,32(特に先端部の刃部31a,32a)の地面に対する高さ位置を変更可能とした。このように、スライダ51の前部を上下に回動させることにより刈込刃31,32の地面に対する高さ位置を上下方向に調整するものであるので、スライダ51の底壁51bの前端位置は刈込刃31,32の高さに関わらず刈込刃31,32の刃部31a,32aの基端位置まで常に覆うようになる。これにより、芝生バリカン10の前側に力が加わっても、刈込刃31,32の高さに関わらず、芝生バリカン10が前側に傾きにくくなり、刈込刃31,32が地面に当たって破損するおそれがない。
【0025】
また、ハウジング11の支持ブロック13にはスライダ51の係合部53がハウジング11の係合凹部15(15a〜15c)に係合する方向(この実施形態では後方)にスライダ51を付勢するコイルスプリング14を設けた。スライダ51はコイルスプリング14により後方に付勢されており、図4(a)に示したように、係合部53がその一例として中段の係合凹部15bに係合している。この状態から、図4(b)に示したように、スライダ51をコイルスプリング14による付勢力に抗して前側に移動させると、係合部53は係合凹部15bから離脱し、スライダ51の前側を上下に移動させることにより、係合部53が係合凹部15a〜15cの1つに選択的に係合可能な位置となる。図4(c)に示したように、係合部53が下段の係合凹部15cに係合可能な上下位置となるようにスライダ51の前側を下側に移動させ、スライダ51をコイルスプリング14の付勢力に抗して前側に移動させた状態を解除すると、スライダ51はコイルスプリング14による付勢力により後方に移動し、係合部53は下段の係合凹部15cに係合する。
【0026】
このように、刈込刃31,32の地面に対する高さ位置を変更するときには、コイルスプリング14の付勢力に抗してスライダ51の係合部53がハウジング11の係合凹部15(15a〜15c)から離脱する方向(この実施形態では前方)にスライダ51を移動させ、スライダ51の係合部53を適宜な上下位置の係合凹部15(15a〜15c)に係合可能な位置とし、スライダ51をコイルスプリング14の付勢力に抗して前側に移動させた状態を解除すると、スライダ51の係合部53が再びコイルスプリング14の付勢力により係合凹部15(15a〜15c)に係合するようになる。これにより、スライダ51を大きな力で撓ませる必要がなく、スライダ51の高さ調整が簡単にできるようになった。また、スライダ51を高さ調整のために撓ませる必要がないので、スライダ51が破損しにくくなった。
【0027】
上記のように構成した芝生バリカン10においては、スライダ51を支持ブロック13を介してコイルスプリング14により後方に付勢させ、スライダ51の係合部53をハウジング11の係合凹部15(15a〜15c)に前側から係合させているが、本発明はこれに限られるものでなく、スライダ51をコイルスプリング14により前方に付勢させ、スライダ51の係合部53をハウジング11の係合凹部15(15a〜15c)を後側から係合させたものであっても同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
上記のように構成した芝生バリカン10においては、ハウジング11の側壁下部の前部に3つの係合凹部15a〜15cを形成し、刈込刃31,32の高さ位置を上下方向に3段階に位置調整可能としたが、本発明はこれに限られるものでなく、係合凹部を上下方向に2つまたは4つ以上形成し、刈込刃31,32の高さ位置を上下方向に2段階または4段階以上に位置調整可能としてもよい。
【0029】
上記のように構成した芝生バリカン10においては、付勢手段としてコイルスプリング14を用いたが、本発明はこれに限られるものでなく、他に板バネ、ゴム等の弾性部材を用いてスライダ51を後方または前方に付勢させたものであってもよい。
【0030】
上記のように構成した芝生バリカン10においては、原動機には電動モータ21を用いたが、本発明はこれに限られるものでなく、小型のエンジンを用いたものであっても同様の作用効果を得ることができる。
【0031】
また、上述の各実施形態では、クランク機構により刈込刃31,32の両方が互いに逆向きに往復動する例を示したが、一方の刈込刃を往復動することなく固定し、他方の刈込刃をクランク機構により左右方向に往復動させることにより、相対的に刈込刃が往復動する片刃駆動の芝生バリカンであってもよい。
【符号の説明】
【0032】
10…芝生バリカン、11…ハウジング、13…支持部(支持ブロック)、14…付勢手段(コイルスプリング)、15(15a〜15c)…係合凹部、21…原動機(電動モータ)、31,32…刈込刃、50…高さ調整機構、51…スライダ、53…係合部。
図1
図2
図3
図4