【実施例1】
【0013】
以下、
図1乃至4を用いて、本発明の第1の実施例について説明する。
図1は、本実施例における永久磁石型電動機について、固定子と回転子と周方向1/4部分を斜視的に示す図である。
図2は
図1の回転子の組み立て方法を説明する図である。
図3Aは、
図1、2の回転子を回転軸に垂直な横断面で示す部分断面図である。
図3Bは
図3Aの回転子を回転軸に沿う縦断面で示す部分断面図である。
図4は
図1の永久磁石型電動機に対してスリットを設けた図を示し、
図1と同じく固定子と回転子と周方向1/4部分を斜視的に示す図である。
【0014】
図1に示すように本実施例の永久磁石型電動機では、固定子9の内周側に回転子1を備えている。回転子1は固定子9に対してギャップGを介して、図示しない軸受けによって回転自在に保持される。固定子9は固定子鉄心10とティース11に巻回された固定子巻線12とで構成される。固定子巻線12は三相の巻線U、V、Wを順に周方向に配置する。U相、V相及びW相の各相はコイルが接続されている。ここでは3個のコイル12u1、12v1、12w1を図示しているが、同様にしてU、V、W各相のコイルがあと3組、すなわち、12u2、12v2、12w2、12u3、12v3、12w3、12u4、12v4、12w4が各ティース11に分かれて巻き付けられており、集中巻きの永久磁石型電動機を構成している。このために、固定子9には、ティース11及びスロットが12箇所設けられている。回転子1は永久磁石収容孔4を備えた回転子鉄心2と、8極(極対数p=4)を構成するよう配置された永久磁石3とで構成される。永久磁石3に記載された矢印の向きは、磁石の磁化方向を示す。
【0015】
遠心力による永久磁石3の飛散防止のため、永久磁石3の径方向外周側端部には回転子鉄心2に対して周方向に凸となるリブ8aが設けられている。リブ8aは永久磁石の磁束の短絡パスとなり漏れ磁束を増加させるので、漏れ磁束を抑制するように
図1のように周方向に適当な幅のギャップを設けている。回転子1の中心部には、シャフト(回転軸、出力軸)6が貫通する貫通孔6aが形成され、貫通孔6aにシャフト6が挿通されている。
【0016】
図2A、
図2Bに示すように本実施例の永久磁石型電動機の回転子1は、S極側に磁化されるS極コア2Sと、N極側に磁化されるN極コア2Nとが互いに軸方向に組み合わされて構成され、S極コア2Sには周方向外側に凸となるS側凸部2b、2d、2f、2hが形成される(
図1には2bのみ図示している)とともに、N極コアは周方向外側に凸となるN側凸部2a、2c、2e、2gが形成され(
図1には2aのみ図示している)、S極コアとN極コアとが組み合わされることによりそれぞれのS側凸部2b、2d、2f、2hとN側凸部2a、2c、2e、2gとが互い違いに配置される。
【0017】
そして、互い違いに配置されたS側凸部とN側凸部との間には凸部用永久磁石3a、3b、3c・・・が配置され、この永久磁石は、S側凸部側がS極、N側凸部側がN極となるように配置される。また、S極コア2SとN極コア2Nとの間には、さらに別のコア用永久磁石3Zが配置され、このコア用永久磁石は、N極コア側がN極、S極コア側がS極となるように配置する。なお、
図2Aは回転子1の分割コアのうち、S極コア2Sに凸部用永久磁石(3a、3b、3c・・・)が取り付けられるとともにN極コア2Nにコア用永久磁石3Zが取り付けられた状態を示しており、
図2Bは凸部用永久磁石(3a、3b、3c・・・)は取り付けられておらず、コア用永久磁石3ZをN極コア2NとS極コア2Sとで挟もうとする状態を示す。また、
図1では凸部用永久磁石3a、3b、3cのそれぞれは一体で示しているが、これらは
図2に示すようなS極とN極の磁極配置となる。この点はコア用永久磁石3Zも同様である。
図1では凸部用永久磁石3a、3b、3cのそれぞれは一体で示しているが、これらは
図2に示すようにS極となる永久磁石とN極となる永久磁石とで構成されるものである。この点はコア用永久磁石3Zも同様である。
【0018】
N側凸部2aは
図1の状態では中空に浮いているかのように見えるがそうではなく、N側凸部2aに設けられた軸方向に貫通するカシメ用リベット5aによって、N極コア2Nと機械的に連結・固定されている。また、回転子1の軸方向端部に設けた端板14(図示していない)に対しても、カシメ用リベット5aを介して機械的に連結・固定されている。このため、N側凸部2aが遠心力によって飛散することは無い。一方、S側凸部2bは、コア内周連結部101Sによって周方向に渡り他のS側凸部と機械的に連結されており、プロペラ状に構成されている。S側凸部2bにおいても、軸方向に貫通するカシメ用リベット5bが設けられており、中空に浮いた状態のS側凸部2b(
図1ではブラインドのため明示せず)は、リベット5bによってS極コア2Sと機械的に連結・固定されている。また、回転子1の軸方向端部に設けた端板14(図示していない)に対しても、カシメ用リベット5bを介して機械的に連結・固定されている。なお、
図1ではリベット挿入の工数を最小化するために1極につきリベット5を1カ所だけ設ける構成としているが、連結強度を向上する目的で、1極につき複数個所設けてもよい。また、リベット5を配置する個所に関しては、永久磁石の磁束パスの妨げとならないよう極の中央に設けても良いが、リベット5を磁性体で構成する場合には、リベット5自体も磁路として活用可能なため、必ずしも極の中央に配置する必要はない。
【0019】
以上のような構成は、
図3に示すように軸方向3つの断面A、B、Cに分けて説明するとわかりやすい。ここでは、本実施例の構成によって永久磁石の漏れ磁束を抑制し、トルク向上、効率向上を図れる原理についても併せて説明する。なお、
図3に示すz軸方向は
図1のz軸方向と対応している。
【0020】
まず、N側凸部2a、2c、2e、2gは、断面A、Bではそれぞれ中空に浮いた状態となっているのに対し、断面Cではコア内周連結部101Nによって連結されたプロペラ状のN極コア2Nとして構成されている。軸方向に貫通するカシメ用リベット5によって、断面A、BのN側凸部2a、2c、2e、2gはそれぞれ、断面CのN側凸部2a、2c、2e、2gと機械的に連結・固定される。このため、断面A、BのN側凸部が遠心力によって飛散することは無い。N側凸部を透過する磁石磁束に関しては、断面A、Bではコア内周空孔105a、105bがフラックスバリアとなるため、コア内周側への漏れ磁束を抑制することができ、凸部用永久磁石3(周方向に磁化された磁石)が発生する磁束のほとんどを有効磁束として固定子側へ透過させることができる。一方で、断面Cでは、コア内周連結部101Nが存在するため、N側凸部2a、2c、2e、2gは、コア内周側で磁気的に短絡されているかのように見えるが、N側凸部は当然ながら同極同士であるため、コア内周側に短絡パスを形成することはなく、断面Cにおいても凸部用永久磁石3により発生する磁束のほとんどを有効磁束として固定子側へ透過させることができる。
【0021】
S側凸部2b、2d、2f、2hに関しても同様で、断面B、Cではそれぞれ中空に浮いた状態となっているのに対し、断面Aではコア内周連結部101Sによって連結されたプロペラ状のS極コア2Sとして構成されている。軸方向に貫通するカシメ用リベット5によって、断面B、CのS側凸部2b、2d、2f、2hはそれぞれ、断面AのS側凸部2b、2d、2f、2hと機械的に連結・固定される。このため、断面B、CのS側凸部が遠心力によって飛散することは無い。S側凸部を透過する磁石磁束に関しては、断面B、Cではコア内周空孔105a、105bがフラックスバリアとなるため、コア内周側への漏れ磁束を抑制することができ、凸部用永久磁石3により発生する磁束のほとんどを有効磁束として固定子側へ透過させることができる。一方で、断面Aでは、コア内周連結部101Sが存在するが、S側凸部2b、2d、2f、2hは当然ながら同極同士であるため、コア内周側に短絡パスを形成することはなく、断面Aにおいても凸部用永久磁石3により発生する磁束のほとんどを有効磁束として固定子側へ透過させることができる。
【0022】
なお、コア内周空孔105aによって十分なフラックスバリアを構成できるのであれば、コア内周空孔105bは必ずしも設ける必要はなく、連結強度・機械強度向上のために105bの部分を鉄としてリベット孔を設けても良い。
【0023】
続いて、断面Bに配置されたコア用永久磁石3Zの構成と、磁石磁束の透過経路について説明する。コア用永久磁石3Zは
図2、3に示すようにリング状に構成しており、負のz軸方向がN極となるように磁化されている。コア用永久磁石3Zは一体のリング磁石で構成してもよいし、周方向に分割された複数の扇状の磁石で構成してもよいし、複数の方形状の磁石で構成してもよい。
図2に示す樹脂106は、S極コア2SとN極コア2Nとの嵌合の位置決めのためや、回転時における両コアの空転防止のために設ける。樹脂106の形状は必ずしも図示の形状に限定されるものではなく、上記の目的が達成されるのであれば、他の形状でも良い。また、軸方向に複数枚に分割してもよい。コア用永久磁石3Zから発生する磁束は、断面Cにおいてコア内周連結部101Nを通り、放射状に拡散してN側凸部2a、2c、2e、2gをギャップGに向けて通り、有効磁束として固定子側に透過する。コア内周連結部101NとS側凸部2b、2d、2f、2hとの間には、コア内周空孔105a、105bが存在し、これがフラックスバリアとして働くため、当該経路を通るような漏れ磁束は抑制できる。このような観点では、コア内周空孔105aは径方向幅を大きくとった方が良く、またコア内周空孔105bは設けた方が良い。また、コア用永久磁石3Zの径方向幅が大きいほど、当該磁石が発生する磁束量は増加するので、スポーク形磁石3を内径側に配置する必要がなくなる。これによって、先述したスポーク形磁石の着磁が困難という課題を解決できる。
【0024】
コア用永久磁石3Zから固定子側に透過した磁束は、固定子鉄心10を軸方向に通り、ギャップGを通過してS側凸部2b、2d、2f、2hを通り、コア内周連結部101Sを通り、コア用永久磁石3Zに戻る、という閉ループを形成する。ここで、固定子鉄心10を積層鋼板で構成する場合には以下の注意が必要である。一般に積層鋼板の透磁率は低いので磁気抵抗が大きくなり、コア用永久磁石3Zの有効磁束が減少する。このため、積層鋼板を使用する場合は、軸方向磁束が透過しやすくなるよう鉄心断面に磁性体の挿入孔を設け、磁性材を挿入する構成とするか、または固定子保持用のハウジングを磁性体で構成すると良い。それ以外の方法としては、固定子鉄心10を積層鋼板ではなく圧粉磁心で構成する方法でも良い。
【0025】
一方で、回転子鉄心2は積層鋼板で構成し、また、シャフト6は非磁性材で構成した方が良い。このような構成とすることで、コア用永久磁石3Zのz軸方向の漏れ磁束を抑制できる。
【0026】
なお、
図3Bでは断面A、B、Cの軸方向長さをほぼ同一としているが、必ずしもそのようにする必要はなく、コア用永久磁石3Zが発生する磁束量を増加したい場合は、当該磁石の磁化方向厚みを増加してパーミアンス係数を増加する、すなわち断面Bの軸方向長さを断面AまたはBよりも増加するような構成としても良いし、反対に断面Bの軸方向長さを断面AまたはBよりも小さくする構成として、コア用永久磁石3Zの磁石量を低減することで材料コスト低減を図っても良い。ただし、減磁耐力確保の観点では、凸部用永久磁石3とコア用永久磁石3Zの磁気抵抗に極端な差異があると、どちらか一方に減磁磁界が集中してしまうので、それぞれ永久磁石の磁化方向厚みと保
磁力とを適当な値に選定し、磁気抵抗の差異が小さくなるようにすることが望ましい。
【0027】
以上のような構成によれば、スポーク形磁石を用いた場合において、回転子内周側の漏れ磁束を低減できると同時に、回転子の機械強度確保が可能となり、かつ、コア用永久磁石3Zを配置することで磁束量が増加するので、トルク向上・効率向上を図ることができる。また、スポーク形磁石3を回転子外周側に配置するため、当該磁石の着磁が容易となり、製作性が格段に向上するとともに、永久磁石の着磁性に起因する性能バラツキを大幅に低減できる。
【0028】
ところで、
図1の構成は回転子鉄心に永久磁石を埋め込んだIPM構造であり、リラクタンストルクを活用できる場合には好適な構成と言える。しかしながら、用途や出力、およびモ−タ体格によっては、
図1のようなIPM構造としても、すなわち突極比を大きくしてもリラクタンストルクを活用しにくいものがある。これは、リラクタンストルクの大きさが突極比の大小のみに依存するのではなく、磁石トルクとの相対関係にも依存することによる。このような場合に
図1の構成を採用すると、突極比が大きいゆえにインダクタンスが大きくなり、鉄損増加を招いたり、高速化が困難となったりする。
【0029】
そこで、
図3に示すような非磁性体で構成されるスリット7a、7bをS側凸部とN側凸部の軸方向に貫通するように配置することでq軸インダクタンスを低減し、固定子鉄心の磁気飽和を緩和する。これによって、より高速回転まで駆動することが可能になると同時に、さらなるトルク向上および効率向上を図ることが可能となる。
【0030】
スリット7a、7bは磁石磁束の透過を妨げないと同時に、q軸磁束の透過を妨げるように配置すればよく、直線状に設けても良いし、円弧状にしても良い。また、一続きで構成しても良いし、リブ等で分割して構成しても良い。また、
図4では一極あたり4本を配置しているが、製作可能な範囲で有れば何本であっても良い。また、各スリット7a、7bの幅は均一でも良いし、不均一でも良い。
【0031】
スリット7a、7bは、上述したように、磁石磁束の透過を妨げず、q軸磁束の透過を妨げる。このため、スリット7a、7bは、これらが設けられていない状態で回転子鉄心2のを透過する磁石磁束とq軸磁束とに対して、q軸磁束を横切るように設けられ、磁石磁束をできるだけ横切らず磁石磁束に沿うように設けられる。この条件に適うようにスリット7a、7bを設けると、スリット7a、7bはq軸磁束を横切る方向(磁石磁束に沿う方向)に長く(寸法が大きく)、磁石磁束を横切る方向(q軸磁束に沿う方向)に短い(寸法が小さい、或いは幅が薄い)形状になる。
【0032】
なお、スリット7bを設けない場合もスリット7aによる効果は得られるため、スリット7bは必ずしも設ける必要はない。しかし、スリット7bを設けることにより、q軸インダクタンスの低減効果がより一層高まり、固定子鉄心の磁気飽和をより一層緩和することができる。これによって、さらなる高速回転駆動が可能になると同時に、さらなるトルク向上および効率向上を図ることが可能となる。
【実施例2】
【0033】
以下、
図5を用いて、本発明の第2の実施例について説明する。
図5は、本発明の第2の実施例における永久磁石型電動機について、固定子と回転子と周方向1/4部分を斜視的に示す図である。
【0034】
本実施例の構成が
図1と異なる点は、永久磁石3の径方向外周側端部に設けられたリブ8aと回転子鉄心2の内周部に設けられたリブ8bとによって、N側凸部2a、2c、2e、2g(2c、2e、2gは図示していない)、S側凸部2b、2d、2f、2h(2d、2f、2hは図示していない)とが機械的に連結された状態で構成されている点である。つまり、
図1ではN側凸部2aとS側凸部2bは別のコアで構成していたが、
図5では一体ものとなっている。
【0035】
このような構成とすることで、回転子鉄心2を一体で取り扱うことが可能となるため、組立作業が格段に容易となり、製造コストの大幅な低減につながる。また、N側凸部、S側凸部が中空に浮いた構成では無くなるため、リベット5および端板14(図示していない)によって、当該部分を連結・固定するとしても、リベット5にかかる遠心力荷重を軽減できる。すなわち、リベット5の機械強度を落としても良くなるので、より細いリベットを使用したり、リベットの本数を減らしたりすることで、材料コストの低減を図ることができる。
【0036】
なお、リブ8a、リブ8bのいずれかをN側凸部、S側凸部と一体で構成し、もう片方は
図1のリブ8aのように周方向に適当な幅のギャップを設けた構成としても良いし、任意の磁石一枚に着目した時に、リブ8a、リブ8bのどちらかがN側凸部とS側凸部とを機械的に連結する構成でも良い。このような構成とすることで、回転子鉄心2の一体化やリベットの遠心力荷重低減、ならびに漏れ磁束の低減といった複数の効果を同時に得ることができる。
【0037】
ところで、
図5に示すようにリブ8a、8bを設ける場合は、先述した効果が得られる半面、当該部分が永久磁石の磁束の短絡パスとなり漏れ磁束を増加させるので、トルクの低下や効率の低下を招いてしまう課題がある。この課題を解決するためには、永久磁石3に希土類磁石などの保
磁力の高い磁石を使用すると良い。以下に理由を説明する。
【0038】
図5において、リブ8a、8bは漏れ磁束を小さくする目的で幅狭となるよう構成する。このため、漏れ磁束は発生するものの当該部分は磁気飽和が起こりやくなる。磁気飽和が起こるとギャップと同程度の磁気抵抗となるため、漏れ磁束はある一定の水準に落ち着き、残りの磁束はギャップを通り固定子側に透過する有効磁束となる。例えば永久磁石3としてフェライト磁石のような保
磁力の低い磁石を使用する場合、リブ8a、8bの磁気飽和を引き起こすためには、比較的大きな割合の漏れ磁束が必要となり、相対的に有効磁束が減少することになる。これに対し、例えば永久磁石3としてネオジム磁石のような保
磁力の高い磁石を使用する場合は、リブ8a、8bの磁気飽和が起こりやすく、磁石の発生磁束量全体に占める漏れ磁束の割合を小さくすることができる。
【0039】
したがって、
図5の構成において、永久磁石3に希土類磁石などの保
磁力の高い磁石を使用することで、永久磁石3の漏れ磁束をより一層低減できるのでトルク向上・効率向上を図ることができると同時に、回転子の機械強度確保が可能となり、また、組立作業の容易化による製造コストの大幅な低減や、リベットの遠心力荷重低減ならびにリベットの材料コスト低減を図ることができる。
【実施例3】
【0040】
以下、
図6を用いて、本発明の第3の実施例について説明する。
図6Aは、本発明の第3の実施例における永久磁石型電動機について、回転子を回転軸に垂直な横断面で示す部分断面図である。
図6Bは、本発明の第3の実施例における永久磁石型電動機について、回転子を回転軸に沿う縦断面で示す部分断面図である。
図6Aの構成は
図3Aの構成と同一であるため説明は割愛する。
【0041】
図6Bの構成が
図3Bと異なる点は、軸方向3つの断面A、B、Cで構成されるモジュール1組を軸方向に複数組連ねて構成している点である。ここでは、3組のモジュール構成を示している。モジュール1は
図3Bと同一の構成であり、正のz軸方向から負のz軸方向に向かって、断面A、B、Cの順で構成されている。これに対し、モジュール2は正のz軸方向から負のz軸方向に向かって、断面C、B、Aの順で構成されており、また、永久磁石3Z2は正のz軸方向がN極となるように磁化されている。このような構成によって、永久磁石3Z1の発生磁束と永久磁石3Z2の発生磁束とは互いに対向するので、回転子1の内部で短絡パスを作ることなく、ギャップを通り固定子側に透過する有効磁束となる。モジュール3についても同様にして、正のz軸方向から負のz軸方向に向かって、断面A、B、Cの順で構成するとともに、永久磁石3Z3は負のz軸方向がN極となるように磁化する。このような構成によって、永久磁石3Z3の発生磁束は回転子1の内部で短絡パスを作ることなく、ギャップを通り固定子側に透過する有効磁束となる。このように複数モジュールの構成とすることで、永久磁石3Zの個数を増加することができるので、回転子外径の寸法制約や着磁性の制約でスポーク形磁石を径方向に伸長できない場合においても、磁束量の増加を図ることができる。また、モジュール2は、モジュール1をz軸方向に180°反転させた構成であり、モジュール3はモジュール1と同一構成であるので、複数モジュールを組合せると言っても、モジュールごとに製作工程を変える必要はなく、モジュール1のみを製作すればよい。したがって、作業性を損なうことなく、また製造コストの上昇を招くことなく、磁束量の増加ならびにトルク向上・効率向上を図ることができる。
【0042】
なお、
図6Bでは断面A、B、Cの軸方向長さをほぼ同一としているが、必ずしもそのようにする必要はなく、永久磁石3Zが発生する磁束量を増加したい場合は、当該磁石の磁化方向厚みを増加してパーミアンス係数を増加する、すなわち断面Bの軸方向長さを断面AまたはBよりも増加するような構成としても良いし、反対に断面Bの軸方向長さを断面AまたはBよりも小さくする構成として、永久磁石3Zの磁石量を低減することで材料コスト低減を図っても良い。また、各モジュールの軸方向長さを小さくして、モジュールの組数を増加しても良い。モジュール1の断面Cとモジュール2の断面Cは同一の構成であるので、片方を削除するか、または片方の軸方向長さを小さくする構成としても良い。モジュール2の断面Aとモジュール3の断面Aについても同様である。
【0043】
さらに、本実施例は、実施例2に示した構成にも適用可能である。特に、スポーク形永久磁石3を希土類磁石などの保
磁力の高い磁石で構成する場合は、永久磁石3Zにフェライト磁石などの保
磁力の低い磁石を使用し、複数モジュールで構成すると良い。このような構成によって、磁束量の増加ならびにトルク向上・効率向上を図ることができると同時に、希土類材料の使用量を削減でき材料コストならびに調達リスクを低減できる。ただし、減磁耐力確保の観点では、例えば、ネオジム磁石とフェライト磁石とでは保
磁力に3倍の差があるので、それを考慮した上で、永久磁石3と永久磁石3Zの磁化方向厚みと保
磁力とを適当な値に選定し、永久磁石3と永久磁石3Zの磁気抵抗の差異が小さくなるようにすることが望ましい。
【実施例5】
【0048】
以下、
図8を用いて本発明の第5の実施例について説明する。
図8は、本実施例による圧縮機の断面構造図である。
【0049】
図8において、圧縮機構部は、固定スクロ−ル部材13の端板14に直立する渦巻状ラップ15と、旋回スクロ−ル部材16の端板17に直立する渦巻状ラップ18とを噛み合わせて形成されている。そして、旋回スクロ−ル部材16をクランクシャフト6によって旋回運動させることで圧縮動作を行う。固定スクロ−ル部材13及び旋回スクロ−ル部材16によって形成される圧縮室19(19a、19b、……)のうち、最も外径側に位置している圧縮室19は、旋回運動に伴って両スクロ−ル部材13、16の中心に向かって移動し、容積が次第に縮小する。
【0050】
両圧縮室19a、19bが両スクロ−ル部材13、16の中心近傍に達すると、両圧縮室19内の圧縮ガスは圧縮室19と連通した吐出口20から吐出される。吐出された圧縮ガスは、固定スクロ−ル部材13及びフレ−ム21に設けられたガス通路(図示せず)を通ってフレ−ム21下部の圧力容器22内に至り、圧力容器22の側壁に設けられた吐出パイプ23から圧縮機外に排出される。圧力容器22内に、固定子9と回転子1とで構成される永久磁石モ−タ103が内封されており、回転子1が回転することで、圧縮動作を行う。永久磁石モ−タ103の下部には、油溜め部25が設けられている。油溜め部25内の油は回転運動により生ずる圧力差によって、クランクシャフト6内に設けられた油孔26を通って、旋回スクロ−ル部材16とクランクシャフト6との摺動部、滑り軸受け27等の潤滑に供される。圧力容器22の側壁には固定子コイル12を圧力容器22の外側に引き出すための端子箱30が設けられ、例えば、三相永久磁石モ−タの場合は、U、V、W各巻線の端子が計3個、納められている。永久磁石モ−タ103に、前述の実施例1、実施例2、実施例3又は実施例4記載の永久磁石型電動機を適用することで、トルク向上および効率向上を図ることが可能となる。
【0051】
ところで、現在の家庭用・業務用空調機では、圧縮容器22内にR410A冷媒が封入されているものが多く、永久磁石モ−タ103の周囲温度は80℃以上となることが多い。今後、地球温暖化係数がより小さいR32冷媒の採用が進むことが考えられ、圧縮機により冷媒を圧縮して循環させることで冷凍サイクルを構成する場合に、この冷凍サイクル中にR32冷媒を70重量%以上、封入することで地球温暖化係数を下げることが可能となる。
【0052】
しかしR32冷媒を70重量%以上、封入した場合には、R410A冷媒に対して循環周囲温度が上昇するため、磁石の残留磁束密度(Br)低下がより顕著となる。このような場合に、前述の実施例1、実施例2、実施例3又は実施例4記載の永久磁石型電動機を適用することで、Br低下によるトルク低下、効率低下を補うことができる。特に永久磁石3や永久磁石3Zをフェライト磁石で構成する場合には、ネオジウム磁石で問題となる高温減磁が原理的に発生しないので、R32冷媒採用に伴う周囲温度上昇に対して有効な対策となる。尚、本実施例の圧縮機に前述の実施例1、実施例2、実施例3又は実施例4記載の永久磁石型電動機を適用するにあたり、冷媒の種類が制限されるものではない。
【0053】
なお、圧縮機構成は
図8記載のスクロ−ル圧縮機でも良いし、ロ−タリ圧縮機でも良いし、その他の圧縮機構を有する構成でも良い。また、本発明によれば、以上に説明したように小形で高出力のモータが実現できる。すると高速運転が可能になるなど、運転範囲を広げることが可能となり、さらには、HeやR32などの冷媒においては、R22、R407C、R410Aなどの冷媒に比べ、隙間からの漏れが大きく、特に低速運転時には循環量に対する漏れの比率が顕著に大きくなるため、効率低下が大きい。低循環量(低速運転)時の効率向上のため、圧縮機構部を小型化し、同じ循環量を得るために回転数を上げることで、漏れ損失を低減させることが有効な手段となりうるが、最大循環量を確保するために最大回転数も上げる必要がある。本発明に係る永久磁石型電動機を備えた圧縮機によれば、最大トルクを大きくすることが可能となるため、最大回転数を上げることが可能となり、HeやR32などの冷媒における効率向上に有効な手段となる。