(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記空気室内部に開口する端部と前記空気室外部に開口する端部とを有し、前記排気路形成部材に外嵌されて、前記離間距離の変動に伴って前記排気路形成部材の周面上を上下方向に摺動する筒状部材を更に備えている、請求項2に記載の空気ばね。
前記排気路形成部材が、前記上面板より上方へ突出している先端部と、前記空気室内で前記下面板と当接している基端部とを有し、前記上面板に上下方向に貫設されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の空気ばね。
前記排気路形成部材の基端部が前記下面板と当接するように、前記排気路形成部材を前記下面板へ向けて付勢する付勢部材を更に備えている、請求項5又は6に記載の空気ばね。
前記排気路形成部材が、前記下面板より下方へ突出している先端部と、前記空気室内で前記上面板と当接している基端部とを有し、前記下面板に上下方向に貫設されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の空気ばね。
前記排気路形成部材の基端部が前記上面板と当接するように、前記排気路形成部材を前記上面板へ向けて付勢する付勢部材を更に備えている、請求項8又は9に記載の空気ばね。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空気ばねの異常上昇止めがメカニカルストッパである場合、台車と車体にそれぞれ設けられる規制部材は、空気ばねからの力に耐えうる剛性を備えるために、鋼製であって、空気ばねの周囲を囲う大形(一例として、一辺が100mm以上)なものとなる。従来、車両の軽量化が望まれており、異常上昇止めの重量を削減できれば、車両の軽量化に寄与することができる。また、空気ばねの周辺の空間は台車と車体に跨る配管や配線のために利用されるが、空気ばねの周囲にメカニカルストッパがあるとこれを避けて配管及び配線せねばならず、配管及び配線の自由度が損なわれる。
【0008】
また、空気ばねの異常上昇止めが、特許文献1に記載された緊急排気弁の場合、空気ばねの緊急排気弁の開閉部と車体とがリンクにより連結されているので、車両のメンテナンスに際して車体又は開閉部とリンクとの脱着及び調整作業が必要となる。
【0009】
また、空気ばねの異常上昇止めが、特許文献2に記載されたメカニカルバルブの場合、車体のローリングや左右揺動によってダイヤフラムが捩れると、ダイヤフラムと操作アームとの接触状態が変動する。このため、メカニカルバルブが開放されるときの空気ばねのバネ高さにばらつきが生じる。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、異常上昇止めを備えた空気ばね又はこの空気ばねを備えた鉄道車両において、メンテナンスの簡易化と軽量化を実現できるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る空気ばねは、上面板と、前記上面板と対向配置された下面板と、前記上面板の周縁部と前記下面板の周縁部とを気密的に連結して内部に空気室を形成する弾性膜と、前記下面板と接続された弾性支持部材と、排気路が形成された排気路形成部材とを、備えているものである。上記排気路は、前記上面板と前記下面板との上下方向の離間距離が所定の許容範囲内のときに前記空気室外部に開口し且つ前記離間距離が前記所定の許容範囲の上限を超えたときに前記空気室内部に開口する排気路入口と、大気に開放された排気路出口とを有している。
【0012】
また、本発明に係る鉄道車両は、台枠を有する車体と、台車枠を有する台車と、前記台車枠と前記台枠との間に設けられた前記空気ばねとを備えているものである。
【0013】
上記構成の空気ばねにおいて、上面板と下面板の上下方向の離間距離は、空気ばねの高さのうちの変動要素である。そこで、空気ばねの高さを、上面板と下面板の上下方向の離間距離に基づいて調整している。本発明に係る空気ばねでは、上面板と下面板の上下方向の離間距離が所定の許容範囲の上限値を超えると(即ち、空気ばねの高さがバネ高さ許容範囲の上限値を超えると)、排気路入口が空気室内部に開口した状態となり、排気路が空気室と接続される。排気路と空気室とが接続されると、空気室内の空気が排気路を通じて外部へ排出される。このような空気室の強制的な排気により、上面板と下面板の上下方向の離間距離が所定の許容範囲内となると(即ち、空気ばねのバネ高さが所定のバネ高さ許容範囲内となると)、排気路入口が空気室外部に開口した状態となり、排気路と空気室との接続が解除されて空気室の排気が終了する。このようにして、空気ばねの高さがバネ高さ許容範囲を超えて異常上昇することを防止できる。
【0014】
また、本発明に係る空気ばねでは、空気ばねの異常上昇止めとして機能する排気路形成部材に、従来のメカニカルストッパのように空気ばねの力が作用しない。よって、排気路形成部材を、従来のメカニカルストッパと比較して軽量且つ小形なものとすることができる。したがって、この空気ばねを備えた本発明に係る鉄道車両は、従来のメカニカルストッパと従来の空気ばねとを備えた鉄道車両と比較して、軽量化することができる。
【0015】
また、本発明に係る空気ばねは、上面板と下面板との上下方向の離間距離に基づいて空気ばねの高さを調整している。このため、空気ばねの異常上昇止めとして機能する排気路形成部材は、車体とリンク等で連結されていない。よって、本発明に係る空気ばねは、車体とリンクで連結された異常上昇止めを備えた従来の空気ばねと比較して、車両への組み付けやメンテナンス等を簡易化することができる。さらに、本発明に係る空気ばねは、排気弁を含む異常上昇止めを備えた空気ばねと比較して、排気弁やその開閉アクチュエータやセンサ等を備えていないので構成が単純となり、軽量化且つ小形化することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、空気ばねの上面板と下面板との上下方向の離間距離が許容範囲を超えると、排気路と空気室とが接続されて、空気室から排気路を通じて空気が排出される。これにより、空気ばねのバネ高さの異常上昇を防止することができる。この空気ばねは、車体とリンクで連結された異常上昇止めを備えた従来の空気ばねと比較して、メンテナンスを簡易化することができる。また、この空気ばねを備えた鉄道車両は、従来のメカニカルストッパと従来の空気ばねとを備えた鉄道車両と比較して、軽量化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は台車と車体の間に設けられた本発明の第1実施形態に係る空気ばねを示す正面図、
図2は第1実施形態に係る空気ばねの高さがバネ高さ許容範囲内のときの空気ばねを示す断面図、
図3は第1実施形態に係る空気ばねの高さがバネ高さ許容範囲の上下を超えたときの空気ばねを示す断面図、
図4は第1実施形態に係る異常上昇止め機構の拡大図である。
【0019】
図1に示されるように、本発明の第1実施形態に係る鉄道車両は、台車1と、空気ばね3を含む車体支持構造と、当該車体支持構造を介して台車1に支持された車体2とで構成されている。台車1には、台車1の基礎となる台車枠11が備えられている。車体2には、車両構体の基礎となる台枠12が備えられている。空気ばね3は、台車枠11と台枠12との間において、車両の左右及び前後にバランスよく振り分け配置されている。この空気ばね3によって、車体2は台車1に対して車幅方向に傾動可能に支持されている。
【0020】
各空気ばね3には、車体2に設けられたリザーバ71から、空気供給配管72を通じて圧縮空気が供給される。リザーバ71には、エアコンプレッサ70で生成された圧縮空気が貯められている。空気供給配管72には、自動高さ調整弁6が各空気ばね3につき設けられている。自動高さ調整弁6には、供給弁と排出弁(いずれも図示せず)が設けられている。供給弁が開放されることにより、空気ばね3へ圧縮空気が供給され、空気ばね3の高さが伸長する。排出弁が開放されることにより、空気ばね3から大気へ空気が排出され、空気ばね3の高さが縮小する。
【0021】
自動高さ調整弁6の筐体は、台枠12に取り付けられている。自動高さ調整弁6の弁操作機構60は、自動高さ調整弁6から突出した作動軸62、操作リンク63、連結リンク64、水平リンク66などで構成されている。操作リンク63の基端は作動軸62と連結されており、操作リンク63の先端は連結リンク64の上端と連結されている。連結リンク64の下端は、台車枠11と揺動可能に連結されている。自動高さ調整弁6の筐体と連結リンク64とは、水平リンク66で連結されている。
【0022】
上記構成の自動高さ調整弁6とその弁操作機構60において、操作リンク63が水平位置のときは、空気ばね3へ給排気が行われない。そして、台枠12の高さが変動して操作リンク63の先端が水平位置より下方へ回転すると、自動高さ調整弁6が空気ばね3へ圧縮空気を供給する状態に切り替わる。また、台枠12の高さが変動して操作リンク63の先端が水平位置より上方へ回転すると、自動高さ調整弁6は、空気ばね3内の空気を排出する状態に切り換わる。このようにして、自動高さ調整弁6では、車体2の車高を一定に保持するように、空気ばね3への給排気が調整される。
【0023】
次に、空気ばね3の構造について詳細に説明する。
図2に示されるように、空気ばね3は、上面板21、下面板22、上面板21の周端部と下面板22の周端部とを気密的に連結して内部に空気室24を形成する弾性膜23、及び、下面板22と接続された弾性支持体25(弾性支持部材)などで構成されている。弾性支持体25は、交互に積層された円形又は円環形のゴムと金属板とで構成されている。
【0024】
空気ばね3の上面板21には、中央部において上方へ突出する円錐状のボス28が形成されている。ボス28の中央部には、ボス28を上下方向に貫く給排気口26が設けられている。台枠12の空気ばね3と上下方向に対向する位置に、空気ばね受け15が設けられている。空気ばね受け15には、空気ばね3のボス28と相補的に対応する円錐形状の嵌入部15aが形成されている。嵌入部15aには、空気供給配管72と接続された空気供給口15bが開口している。
【0025】
台車枠11と台枠12とを連結する際には、まず、台車枠11に空気ばね3が載置され、次に、空気ばね3に台枠12が載置される。空気ばね3に台枠12が載置されるときに、空気ばね3のボス28が台枠12の嵌入部15aに案内されながら嵌め入れられる。ボス28と嵌入部15aが嵌合することにより、空気ばね3の給排気口26と、空気ばね受け15の空気供給口15bとが接続される。これにより、空気ばね3の空気室24と空気供給配管72とが接続され、空気室24へリザーバ71から圧縮空気が供給可能となる。
【0026】
上記構成の空気ばね3において、エアコンプレッサ70の故障、車体2のローリング、自動高さ調整弁6又はその弁操作機構60の故障などが生じると、空気ばね3が過給気状態となり、空気ばね3の高さが異常に上昇するおそれがある。そこで、空気ばね3の高さを所定の許容範囲(以下、「バネ高さ許容範囲」という)内に保持するために、空気ばね3に異常上昇止め機構8が備えられている。なお、バネ高さ許容範囲は、空気ばね3ごとに又は鉄道車両ごとに予め定められている。
【0027】
ここで、異常上昇止め機構8について詳細に説明する。
図4に示されるように、異常上昇止め機構8は、排気路95が形成された排気路形成体9(排気路形成部材)と、排気路形成体9を支持する筒状体82(筒状部材)と、排気路形成体9を付勢するバネ81(付勢部材)とで構成されている。
【0028】
筒状体82は、空気ばね3の上面板21に設けられ、上面板21を上下に貫いている。筒状体82は、上面板21に伴って、下面板22と相対的に上下方向へ移動する。筒状体82の上端は空気室24外部(大気)に開口しており、筒状体82の下端は空気室24内部に開口している。筒状体82の内周面には環状の溝であるシール部材保持部82aが形成されている。
【0029】
排気路形成体9は、全体として円柱状を成しており、周面に排気路入口951が開口し、一方の端面に排気路出口952が開口している。排気路形成体9は、上下方向に延びる円柱状の主部材91と、主部材91の下端に設けられた基端部材92と、主部材91の上端に設けられた先端部材93とで構成されている。排気路形成体9の主部材91に筒状体82が外嵌されており、筒状体82は上面板21の移動に伴って排気路形成体9の周面上を上下方向に摺動する。筒状体82の内周面と排気路形成体9の外周面との間は、筒状体82のシール部材保持部82aに配置されたO−リングなどのシール部材83で封止されている。このシール部材83により、空気室24内部と空気室24外部(大気)とが隔離されている。
【0030】
基端部材92は、主部材91よりも大径の円盤形状を成している。基端部材92の上面は主部材91の下面と接合されている。基端部材92の下面は、滑らかな球面状に形成されており、空気ばね3の下面板22と当接している。基端部材92の下面には、下面板22との間の摩擦を軽減させるための表面処理が施されていてもよい。
【0031】
空気ばね3に捩れや横ずれが生じると、下面板22と相対的に上面板21が回転したり横方向へ移動したりして水平方向に変位する。このように上面板21と下面板22が水平方向に相対変位したときに、球面状の基端部材92の下面が下面板22の上面上を摺動したり転がったりすることにより、筒状体82の軸方向と排気路形成体9の軸方向との平行が保たれる。そして、排気路形成体9に軸方向以外から負荷が作用しないので、排気路形成体9の周面上を筒状体82が摺動するときにカジリが生じず、異常上昇止め機構8の動作が安定し、また、排気路形成体9の損傷が防止される。
【0032】
基端部材92の上面であって主部材91よりも外周側は、バネ座92aとしての機能を有している。このバネ座92aと上面板21との間に、バネ81が配置されている。バネ81は、空気ばね3の高さがバネ高さ許容範囲内のときに圧縮された状態にあり、空気ばね3の高さがバネ高さ許容範囲の上限またはそれ以上で自由長となる。このバネ81により、基端部材92の下面が下面板22と当接するように、排気路形成体9が下面板22へ向けて付勢されている。
【0033】
先端部材93は、主部材91の外径及び筒状体82の内径よりも大径の円盤形を成す頭部93aと、頭部93aの下面から突出形成されたネジ部93bとを、一体的に有している。ネジ部93bの外周には、雄ねじが切られている。この先端部材93のネジ部93bと対応する径の螺子穴91aが、主部材91の上端面に形成されている。そして、先端部材93のネジ部93bが、柱部材の螺子穴91aに螺入されることによって、先端部材93と主部材91とが結合されている。
【0034】
先端部材93の頭部93aは、空気ばね3の上面板21から上方へ突出している排気路形成体9の先端を形成している。このように空気ばね3から上方へ突出する排気路形成体9と干渉しないように、台枠12の排気路形成体9と対応する位置には開口部16が設けられている。先端部材93の頭部93aは、上面板21の上面と当接可能であって、排気路形成体9が筒状体82から抜け落ちないようにするためのストッパとしての機能を有している。
【0035】
排気路形成体9に形成された排気路95は、排気路形成体9の上部において排気路形成体9を半径方向に貫く第1通路95aと、排気路形成体9の軸方向に延びる第2通路95bとにより、T字状を成している。
【0036】
第1通路95aの一端は、排気路形成体9の主部材91の周面に開口して、排気路入口951を形成している。第1通路95aの他端は、主部材91に形成された螺子穴91aに開口している。第2通路95bは、主部材91に形成された螺子穴91aと先端部材93を上下に貫く孔93cとの協働により形成されている。第2通路95bの上端は、先端部材93の上面、即ち、排気路形成体9の上端面に開口して、排気路出口952を形成している。
【0037】
排気路形成体9における排気路入口951の位置は、上面板21と下面板22との上下方向の離間距離D(以下、単に「離間距離D」という)が所定の許容範囲内のときに空気室24外部(大気中)に排気路入口951が開口し、離間距離Dが所定の許容範囲の上限値を超えると空気室24内部に排気路入口951が開口するように、決定されている。空気ばね3において、離間距離Dは、空気ばね3の高さのうちの変動要素である。そこで、本実施形態に係る異常上昇止め機構8では、離間距離Dに基づいて空気ばね3の高さが調整されている。離間距離Dの許容範囲は空気ばね3のバネ高さ許容範囲に基づいて定められており、バネ高さ許容範囲と離間距離Dの許容範囲とは対応関係を有する。なお、
図2に示されるように、本実施形態では、上面板21の上面と下面板22の上面との上下方向の距離を離間距離Dとしている。但し、離間距離Dは適宜設定することが可能である。
【0038】
本実施の形態に係る排気路形成体9においては、離間距離Dが許容範囲内のときに筒状体82のシール部材保持部82aよりも排気路入口951が上方に位置し、且つ、離間距離Dが許容範囲の上限を超えると筒状体82のシール部材保持部82aよりも排気路入口951が下方に位置するように、排気路入口951の位置が決められている。
【0039】
ここで、上記構成の異常上昇止め機構8の動作を説明する。空気ばね3の高さは、空気ばね3にかかる負荷の変動により、また、車高を一定に保持するための自動高さ調整弁6の動作により、変化する。排気路形成体9の基端部材92はバネ81の付勢により下面板22と当接した状態に保持されているので、空気ばね3の高さの変化に応じて離間距離Dが変化すると、上面板21に固定された筒状体82が排気路形成体9の周面上を上下方向に摺動する。
【0040】
図2に示されるように、離間距離Dが許容範囲内のとき(即ち、空気ばね3の高さがバネ高さ許容範囲内のとき)は、排気路形成体9の排気路入口951は空気室24外部に位置する。本実施形態では、排気路形成体9の排気路入口951は、筒状体82のシール部材保持部82aより上方に位置する。排気路入口951が空気室24外部にあるときは、排気路95と空気室24とは非接続状態であって、空気室24の空気は排気路95を通じて排気されない。
【0041】
そして、
図3に示されるように、空気ばね3が過給気状態となって、離間距離Dが許容範囲の上限を超えると(即ち、空気ばね3の高さがバネ高さ許容範囲の上限を超えると)、排気路形成体9の排気路入口951は空気室24内部に位置する。本実施形態においては、排気路形成体9の排気路入口951は、筒状体82のシール部材保持部82aより下方に位置する。排気路入口951が空気室24内部にあるときは、排気路95と空気室24とが接続されており、空気室24の空気は排気路95を通じて外部へ排気される。このようにして空気室24内の過剰空気分が外部へ排出されることにより離間距離Dが許容範囲内に回復すると、排気路入口951は再び空気室24外部に位置し、排気路95と空気ばね3とが非接続となる。
【0042】
以上説明した異常上昇止め機構8によれば、空気ばね3の捩れや横ずれの有無にかかわらず、離間距離Dが許容範囲の上限を超えると(即ち、空気ばね3の高さがバネ高さ許容範囲の上限を超えると)、空気ばね3から自動的に空気が排出される。そして、空気ばね3から過剰分の空気が排出されて、離間距離Dが許容範囲内に回復すると(即ち、空気ばね3の高さがバネ高さ許容範囲内となると)、空気ばね3からの排気は自動的に停止する。このようにして、異常上昇止め機構8の機械的な動作により、空気ばね3の高さがバネ高さ許容範囲を超えて異常上昇することを防止できる。
【0043】
本実施形態に係る異常上昇止め機構8は、機械的に動作するので、空気ばね3の高さを検出するセンサ、空気ばね3と大気との間を開閉する電磁弁及びそれを動作させる電気系統などが不要である。このように、異常上昇止め機構8は、電気的に動作する従来の異常上昇止めと比較して、構造を簡略化すること、車両への組み付け作業を簡略化すること、及び製造コストを削減することができる。
【0044】
また、本実施形態に係る異常上昇止め機構8の排気路形成体9には、従来のメカニカルストッパのように空気ばね3の力が作用しない。よって、排気路形成体9を、従来のメカニカルストッパと比較して、軽量化且つ小形化することができる。したがって、本実施形態に係る空気ばね3を備えた鉄道車両は、従来のメカニカルストッパと従来の空気ばねとを備えた鉄道車両と比較して、軽量化と製造コストの削減をすることができる。さらに、異常上昇止め機構8は、その大部分が空気ばね3内部に位置し、空気ばね3の周囲の空間に干渉しないので、空気ばね3の周囲の空間を配線や配管のための空間として利用することが可能となり、配線や配管のレイアウトや敷設作業を容易とすることができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る異常上昇止め機構8では、離間距離Dの変動に応じて、排気路入口951が空気室24の内部と外部のいずれに開口するかが決まる。したがって、排気路形成体9と車体2とがリンク等で連結されない。よって、本実施形態に係る空気ばね3は、車体とリンクで連結された異常上昇止めを備えた従来の空気ばねと比較して、車両への組み付けやメンテナンス等を簡易化することができる。さらに、本実施形態に係る空気ばね3は、排気弁を含む異常上昇止めを備えた空気ばねと比較して、排気弁やその開閉アクチュエータやセンサ等を備えていないので構成が単純となり、軽量化且つ小形化することができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態を説明する。
図5は第2実施形態に係る空気ばねの高さがバネ高さ許容範囲内のときの空気ばねを示す断面図、
図6は第2実施形態に係る空気ばねの高さがバネ高さ許容範囲の上下を超えたときの空気ばねを示す断面図、
図7は第2実施形態に係る異常上昇止め機構の拡大図である。
図5及び
図7に示されるように、本発明の第2実施形態に係る鉄道車両は、上記第1実施形態に係る鉄道車両と比較して、空気ばね3に設けられた異常上昇止め機構8の構成が異なり、余の構成は同じである。よって、異常上昇止め機構8についてのみ詳細に説明し、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0047】
本実施形態に係る異常上昇止め機構8は、空気ばね3の空気室24内部と空気室24外部(大気)とを接続する排気路95が形成された排気路形成体9と、排気路形成体9を支持する筒状体82と、排気路形成体9を付勢するバネ81とで構成されている。
【0048】
筒状体82は、空気ばね3の下面板22の周縁部であって弾性支持体25と上下方向に重複しない位置に設けられ、下面板22を上下方向に貫いている。筒状体82の上端は空気室24内に開口しており、筒状体82の下端は大気に開口している。筒状体82の内周面には環状の溝であるシール部材保持部82aが形成されている。
【0049】
排気路形成体9は上下方向に延びる円柱状の主部材91と、主部材91の上端に設けられた基端部材92と、主部材91の下端に設けられた先端部材93とで構成されている。排気路形成体9は空気ばね3の下面板22を上下方向に貫いており、主部材91に筒状体82が上下方向に摺動可能に外嵌されている。筒状体82の内周面と排気路形成体9の外周面との間は、筒状体82のシール部材保持部82aに配置されたO−リングなどのシール部材83で封止されている。このシール部材83により筒状体82の内周面と排気路形成体9の外周面とが封止され、空気室24側の空間と大気側の空間とが隔離されている。
【0050】
基端部材92は、主部材91よりも大径の円盤形状を成している。基端部材92の下面は主部材91の上面と接合されている。基端部材92の上面は、滑らかな球面状に形成されており、空気ばね3の上面板21と当接している。基端部材92の下面には、上面板21との間の摩擦を軽減させるための表面処理が施されていてもよい。
【0051】
基端部材92の下面であって主部材91よりも外周側は、バネ座92aとしての機能を有している。このバネ座92aと下面板22との間に、バネ81が配置されている。バネ81は、空気ばね3のバネ高さがバネ高さ許容範囲内のときに圧縮された状態にあり、空気ばね3の高さがバネ高さ許容範囲の上限またはそれ以上で自由長となる。このバネ81により、基端部材92の上面が上面板21と当接するように、排気路形成体9が付勢されている。
【0052】
先端部材93は、主部材91の外径及び筒状体82の内径よりも大径の円盤形を成す頭部93aと、頭部93aの上面から突出形成されたネジ部93bとを、一体的に有している。ネジ部93bの外周には、雄ねじが切られている。先端部材93のネジ部93bと対応する径の螺子穴91aが、主部材91の下端面に形成されている。そして、先端部材93のネジ部93bが、主部材91の螺子穴91aに螺入されることによって、先端部材93と主部材91とが結合されている。
【0053】
先端部材93の頭部93aは、空気ばね3の下面板22から下方へ突出して、排気路形成体9の先端を形成している。先端部材93の頭部93aは、下面板22の下面と当接可能であって、排気路形成体9が筒状体82から抜け出さないようにするためのストッパとしての機能を有している。
【0054】
排気路形成体9に形成された排気路95は、排気路形成体9を半径方向に貫く第1通路95aと、排気路形成体9の軸方向に延びる第2通路95bとにより、T字状に形成されている。第1通路95aの一端は、排気路形成体9の主部材91の周面に開口して、排気路入口951を形成している。第1通路95aの他端は、主部材91に形成された螺子穴91aに開口している。第2通路95bは、主部材91に形成された螺子穴91aと先端部材93を上下方向に貫く孔93cとの協働により形成されている。第2通路95bの下端は、先端部材93の下面、即ち、排気路形成体9の下端面に開口して、排気路出口952を形成している。
【0055】
排気路形成体9における排気路入口951の位置は、上面板21と下面板22との上下方向の離間距離D(以下、単に「離間距離D」という)が所定の許容範囲内のときに空気室24外部(大気中)に開口し、離間距離Dが所定の許容範囲の上限値を超えると空気室24内部に開口するように、決定されている。本実施形態では、空気ばね3のバネ高さ許容範囲に基づいて離間距離Dの許容範囲が定められており、バネ高さ許容範囲と離間距離Dの許容範囲とは対応している。なお、
図5に示されるように、本実施形態では、上面板21の下面と下面板22の下面との上下方向の距離を離間距離Dとしている。但し、離間距離Dは適宜設定することが可能である。
【0056】
本実施の形態に係る排気路形成体9においては、離間距離Dが許容範囲内のときに筒状体82のシール部材保持部82aよりも排気路入口951が下方に位置し、且つ、離間距離Dが許容範囲の上限を超えると筒状体82のシール部材保持部82aよりも排気路入口951が上方に位置するように、排気路入口951の位置が決められている。
【0057】
次に、上記構成の異常上昇止め機構8の動作を説明する。排気路形成体9の基端部材92はバネ81の付勢により上面板21と当接した状態に保持されているので、空気ばね3の高さの変化に応じて離間距離Dが変化すると、排気路形成体9の周面上を下面板22に固定された筒状体82が上下方向に摺動する。
図5に示されるように、離間距離Dが許容範囲内のときには、排気路形成体9の排気路入口951は空気室23外部に位置する。即ち、排気路形成体9の排気路入口951は、筒状体82のシール部材保持部82aより下方に位置する。排気路入口951が空気室23外部にあるときは、排気路95と空気室24とは非接続状態であって、空気室24の空気は排気路95を通じて排気されない。
【0058】
そして、
図6に示されるように、空気ばね3が過給気状態となって離間距離Dが許容範囲の上限を超えると、排気路形成体9の排気路入口951は空気室24内部に位置する。即ち、排気路形成体9の排気路入口951は、筒状体82のシール部材保持部82aより上方に位置する。排気路入口951が空気室24内部にあるときは、排気路95と空気室24とが接続されており、空気室24の空気は排気路95を通じて外部へ排気される。このようにして空気室24内の過剰空気分が外部へ排出されることにより離間距離Dが許容範囲内に回復すると、排気路入口951は再び空気室24外部に位置し、排気路95と空気ばね3とが非接続となる。
【0059】
以上に本発明の好適な実施の形態(第1及び第2の実施形態)を説明したが、上記の構成は以下のように変更することができる。
【0060】
例えば、第1及び第2の実施形態において、異常上昇止め機構8は、排気路形成体9、筒状体82及びバネ81から成るユニットを1つ備えているが、このユニットが複数備えられていてもよい。
【0061】
また、例えば、第1及び第2の実施形態において、曲線区間における車体傾斜を軽減したり、乗客の増減などによる負荷の変動に対して車高を一定に保持したりするために、鉄道車両は自動高さ調整弁6を備えているが、自動高さ調整弁6を備えない鉄道車両にも異常上昇止め機構8を備えることができる。
【0062】
また、例えば、第1及び第2の実施形態において、台車1はボルスタレス台車であるが、台車1がボルスタを備えた台車であってもよい。この場合、車体とボルスタとの間に空気ばねが配置される。