(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081474
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】バンカーショット練習具
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20170206BHJP
【FI】
A63B69/36 511D
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-541829(P2014-541829)
(86)(22)【出願日】2012年10月15日
(86)【国際出願番号】JP2012076606
(87)【国際公開番号】WO2014061078
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】515212080
【氏名又は名称】株式会社ゴールド・ウイング
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】奥本 園史
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2003/0190972(US,A1)
【文献】
実開昭58−39272(JP,U)
【文献】
特開2012−165768(JP,A)
【文献】
実開平6−3373(JP,U)
【文献】
実開平6−64681(JP,U)
【文献】
実開昭61−8077(JP,U)
【文献】
実開昭59−108672(JP,U)
【文献】
実開平2−88683(JP,U)
【文献】
特表2002−517297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンカーの上に載せ置く板面体と、
前記板面体上に設けられたゴルフボールを載せ置くボール設置部と、
前記板面体上において前記ボール設置部から所定距離の位置に形成され、バンカーショットにおいてクラブヘッドを振り下ろす際のインパクト位置を指し示す目印となるインパクトポジションガイドと、
前記バンカーショットにおいてクラブヘッドを振り下ろす際のインパクト角度を指し示す目印となるインパクトアングルガイドと、
前記バンカーショットにおいてクラブヘッドを振り下ろす際のスイングの方向を指し示す目印となるスイングガイドとを備えたバンカーショット練習具。
【請求項2】
前記インパクトアングルガイドが、前記板面体上に印刷された線または図形である請求項1に記載のバンカーショット練習具。
【請求項3】
前記インパクトアングルガイドが、前記板面体の輪郭における断ち切り縁である請求項1に記載のバンカーショット練習具。
【請求項4】
前記板面体において空気抜き用または砂抜き用の孔部または切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバンカーショット練習具。
【請求項5】
前記板面体において前記インパクトポジションガイドから前記ボール設置部へ至る切り欠き開口部を設けた請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバンカーショット練習具。
【請求項6】
前記板面体において、少なくとも、アプローチ方向、前記ゴルフボールの軌跡、構える方向を含むバンカーショットに必要な諸情報を印刷したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のバンカーショット練習具。
【請求項7】
前記板面体が略円板状であることを特徴とした請求項1乃至6のいずれか1項に記載のバンカーショット練習具。
【請求項8】
前記板面体が非円形であり、その形状が前記インパクトポジションガイドから前記ボール設置部を結ぶ線の延長方向が把握しやすい形状であることを特徴とした請求項1乃至6のいずれか1項に記載のバンカーショット練習具。
【請求項9】
前記板面体が可撓性あるプラスチックシート素材で形成されたものである請求項1乃至8のいずれか1項に記載のバンカーショット練習具。
【請求項10】
前記板面体が透明素材で形成され、前記バンカー上に載せ置いた場合に、前記バンカーが透けて見えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のバンカーショット練習具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンカーに打ち込んだボールをバンカーから打ち出すバンカーショットについて効果的な練習ができるバンカーショット練習具に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフのプレイにおいて、バンカーに打ち込んでしまうとバンカーからの打ち出しには高度な技量が求められ、バンカーショットの巧拙によってスコアの良否が大きく影響を受けてしまう。バンカーショットが重要であることから、バンカーショットの精度を向上させるためのバンカーショット練習具が以下に示すように様々提案されている。
【0003】
図13は、従来技術における特開平07−328169号公報に記載のバンカーショット練習具の構成例を示す図である。特開平07−328169号公報に記載のバンカーショット練習具は、バンカーとその先に傾斜した側溝状の斜面体を設け、さらに斜面体の上端にボールのスピードを停止させる捕球体を取り付けておき、バンカーに置いたゴルフボールをバンカーに打ち込んだゴルフボールと見立てて、バンカーショットの練習が可能であり、かつ、打ち出したゴルフボールと砂ともに装置外に飛ぶことなく、バンカーに戻るように配置したことを特徴とするものである(特許文献1)。
【0004】
図14は、従来技術における特開2012−165768号公報に記載のバンカーショット練習具の構成を示す図である。特開2012−165768号公報に記載のバンカーショット練習具は、ゴルフボールに取り付けるものであり、羽根状のスイングガイド片12をゴルフボールに取り付け、羽根状のスイングガイド片12の取り付け方向や取り付け角度によりゴルフクラブのヘッドの入射角度及び軌道方向を視覚的に認識させてゴルフボールのインパクトを容易にイメージできる機能を有するものである(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平07−328169号公報
【特許文献2】特開2012−165768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のバンカーショット練習具によれば、自宅の庭や会社の屋上などに設置することにより手軽に練習することができるものとなっている。
しかし、単にバンカーを簡易に再現したものであり、その再現されたバンカーにおいてゴルフボールを据え置いてひたすら打ち込んで練習するものであった。そのため、利用者は、一体どのようにバンカーショットを打つべきなのかというコツの伝授を受けられるものではなく、ともすれば我流のクセを身に着けてしまうだけになり、かえって練習にはならないケースも多いと考えられる。
【0007】
特許文献2に記載のバンカーショット練習具によれば、ゴルフボールに対して羽根状のスイングガイド片12を取り付けることにより、その取り付け方向や取り付け角度によりゴルフクラブのヘッドの入射角度及び軌道方向を視覚的に認識させてゴルフボールのインパクトを容易にイメージできるメリットが得られる。しかし、このバンカーショット練習具には問題がある。羽根状のスイングガイド片12が直接ゴルフボールに取り付けられ、そのまま斜め上方向に向けて維持されているため、利用者がイメージできるのはそのスイングガイド片12のとおりの入射角度及び軌道方向に沿ってゴルフボール間際に対して打ち込んでしまい勝ちとなってしまう。
このように従来技術におけるバンカーショット練習具では、利用者が必ずしもバンカーショットのコツを容易につかめるものとはなっていなかった。
【0008】
また、特許文献2に記載のバンカーショット練習具はゴルフボールに対して羽根状のスイングガイド片12を貼り付けて取り付けるため、その角度の調整が利用者の手作業となってしまい難しく、その角度は人によってマチマチにならざるを得ず、正しいゴルフクラブのヘッドの入射角度及び軌道方向を示すことがかえって難しくなっていた。
【0009】
また、特許文献2に記載のバンカーショット練習具はゴルフボールに対して羽根状のスイングガイド片12を貼り付けて取り付けるため、練習時に失敗してゴルフボールやスイングガイド片12を直接クラブヘッドにより叩いてしまうと、スイングガイド片12の接着が取れ、スイングガイド片12が外れてしまう不具合が起こることも多かった。
このように、特許文献1のバンカーショット練習具も、特許文献2のバンカーショット練習具も利用するには難点があった。
【0010】
本発明者である奥本園史は、長年ゴルフの指導に対して取り組み、ゴルフ指導者として練習生を指導する中で、バンカーショットに悩む練習生が非常に多いことに注目してきた。短期間で効率的に練習生にバンカーショットのコツを体得させるかについて研究してきた。その中で、バンカーショットが苦手なプレーヤーは、バンカーショットをする際に、クラブが砂にふれず、ボールに直接当てなければいけないと誤解している方が多いことに気付かされた。
実際には、バンカーショットをする際にゴルフボールに直接当てるのではなく、ボールから定められた理想の位置、例えば3〜4cm程離れた手前の位置にクラブを振りおろし、ゴルフボールとその手前の砂ごと飛ばすように指導する必要がある。本来ゴルファーの多くは、いわゆるダフったりトップしたりする事をミスショットと考えてしまう傾向が強い。しかし、バンカーショットに限っては一見ミスショットと思えるような「ゴルフボールとその手前の砂ごと飛ばすダフったショット」をすることがコツであることが理解できないとバンカーに入ったボールの脱出は不可能に近いと思われる。また、その他にも、バンカーショットでは、インパクトの際のヘッドを入れ、降りてくる入射角度とそのフェイスの開き加減とスイングの大きさ、力加減に応じてボールの打ち上がる高さと距離、スピン量などが決まるということをバンカーショットの練習を通じて学習しなければならない。
【0011】
そこで練習生に対して、バンカーショットをする際にボールにクラブを直接当てるものではなく、ボールから少し離れたヒッティングポイント例えば3〜4cm程離れた手前の位置にクラブを振りおろし、また、クラブが降りてくる入射角度フェイスの開き加減とスイングの大きさ、力加減によりボールとその手前の砂ごと弾き飛ばすように指導し、バンカーショットのコツを誰でもが体得しやすいような練習具を想起するに至った。
【0012】
本発明は、上記した従来型のバンカーショット練習具に起因する様々な問題点に鑑みてなされたものであり、バンカーショットのコツを体得しやすいようなバンカーショット練習具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のバンカーショット練習具は、バンカーの上に載せ置く板面体と、前記板面体上に設けられたゴルフボールを載せ置くボール設置部と、前記板面体上において前記ボール設置部から所定距離の位置に形成され、バンカーショットにおいてクラブヘッドを振り下ろす際のインパクト位置を指し示す目印となるインパクトポジションガイドと、前記バンカーショットにおいてクラブヘッドを振り下ろす際のインパクト角度を指し示す目印となるインパクトアングルガイドを備えたものである。
なお、インパクトアングルガイドは、前記板面体上に印刷された線または図形または、板面体における断ち切り縁にて指し示す構成であっても良い。
【0014】
上記構成により、本発明のバンカーショット練習具を用いれば、インパクトポジションガイドを目がけてクラブヘッドを振り下ろすだけで、バンカーショットにおいてクラブヘッドを振り下ろすべき位置、つまり、ゴルフボールから所定距離手前の位置に的確に導くことができ、練習生がバンカーショットのコツを容易に体得できるようになる。
【0015】
また、インパクトアングルガイドは練習生から見て立体的に立ち上がって見えるものではなく平面的に見えるため、一見、クラブを振り下ろす際のアングルのガイドとしての機能が不十分ではないかと考えるかもしれないが、練習生がクラブを構えている位置から見れば本発明のバンカーショット練習具の板面体は斜め前方に見えるため、実は、練習生にはヘッドを振り下ろすべき角度が明確に分かりやすいものとなっている。つまり、そのインパクトアングルガイドの見た目の線に沿うようにクラブヘッドを振り下ろせば、それはクラブヘッドを振り下ろす際のヘッドの入射角度となっている。
なお、ヘッドの振り下ろし加減に関しては、強弱の指示を示す情報(強く、やや強く、やや弱く、弱くなどの指示や、1〜5などの強さの指標となる数字など)を板面体上に示しておけば良い。
同様に、板面体において、少なくとも、アプローチ方向、前記ゴルフボールの軌跡、構える方向などバンカーショットに必要な諸情報を印刷しておくことも可能である。
【0016】
次に、板面体について述べる。
基本形は、略円板状で良い。略円形であれば扱いに簡単であり、形がコンパクトであり収納にも便利だからである。
また、板面体が円形であれば、角や切れ込みがなく均等な形状をしているためゴルフクラブがどこにあたっても衝撃が分散されやすく板面体の破断や損傷が生じるおそれが少ないという利点がある。
なお、板面体はかならずしも略円板状でなくとも良い。例えば、板面体が非円形であり、その形状が前記インパクトポジションガイドから前記ボール設置部を結ぶ線の延長方向が把握しやすい形状とすることもできる。このような形状であれば、バンカーショットの練習時にゴルフボールを飛ばすべき方向を容易に把握することができる。例えば、グリーンの方向に向けておき、バンカーショットの練習を行えばよい。
板面体の素材は特に限定されない。一例としては、板面体を可撓性あるプラスチックシート素材で形成したり、厚紙素材で形成したりすることができる。
なお、板面体を透明素材により形成することも好ましい。バンカー上に載せ置いた場合に、バンカーが透けて見えるのでバンカーを意識することもでき、バンカーショットの練習時においても実戦に近い感覚を得ることができるからである。
【0017】
次に、板面体において、空気抜き用または砂抜き用の孔部または切り欠き部を設ける構成も可能である。このように板面体に孔部または切り欠き部を設けておくことにより、この孔部または切り欠き部が一種の空気抜きや砂抜きとなり、ゴルフクラブのインパクトにより打ち出される本発明のバンカーショット練習具の飛距離を抑えることができる。ゴルフボールは球形で一種の流線形をしているが、本発明のバンカーショット練習具は平面状であるためにゴルフクラブの打撃力により飛び出す砂の勢いを受けやすく、ゴルフボール同様に飛んでしまう。そこで、一種の空気抜きや砂抜きとなる孔部または切り欠き部を設けておくことにより、バンカーショット練習具が過度に飛んでゆかないように工夫するのである。
【0018】
次に、板面体において、インパクトポジションガイドからボール設置部へ至る切り欠き開口部を設ける構成も可能である。
切り欠き開口部を設けることにより、クラブヘッドの振り下ろす位置からゴルフボールまでに構造物が少なくなり、実際のバンカーショットに近い状況でバンカーをインパクトする練習を行うことができるという効果がある。つまり、クラブヘッドの打ち込み位置からゴルフボールまでの間には構造物がなくなり、目視した感覚が、あたかもバンカーの中にゴルフボールが存在するという実際のバンカーショットに近い感覚と近くなるという効果が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のバンカーショット練習具によれば、インパクトポジションガイドを目がけて振り下ろすだけで、バンカーショットとして振り下ろすべきゴルフボールから所定距離手前の位置に的確に導くことができ、練習生がバンカーショットのコツを容易に体得できるようになる。また、バンカーショットとして振り下ろすべき角度に関しては、インパクトアングルガイドの線の方向を追うようにしてそのままインパクトアングルガイドに沿って振り下ろせば的確な角度によりインパクトするバンカーショットの練習をすることができる。また、ヘッドの振り下ろす強さに関しては板面体上に示されたインパクトの強弱の示す指示情報を手掛かりとすれば的確な強さによりインパクトするバンカーショットの練習をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1にかかるバンカーショット練習具100の構成例を示す図である。
【
図2】実施例1にかかるバンカーショット練習具100の使用例を示す図である。
【
図3】実施例1にかかるバンカーショット練習具100およびゴルフボール200を練習生が実際に見た様子を示している。
【
図4】実施例2にかかるバンカーショット練習具100aの構成例を示す図である。
【
図5】実施例2にかかるバンカーショット練習具100aおよびゴルフボール200を練習生が実際に見た様子を示している。
【
図6】実施例3にかかるバンカーショット練習具100bの構成例を示す図である。
【
図7】実施例4にかかるバンカーショット練習具100cの構成例を示す図である。
【
図8】実施例5にかかるバンカーショット練習具100dの構成例を示す図である。
【
図9】実施例5にかかる別の形状のバンカーショット練習具100eの構成例を示す図である。
【
図10】実施例5にかかるさらに別の形状のバンカーショット練習具100fの構成例を示す図である。
【
図11】バンカーショットの飛距離や高さを変えたパターンのバンカーショット練習具100(Atype,Btype)を示す図である。
【
図12】バンカーショットの飛距離や高さを変えたパターンのバンカーショット練習具100(Ctype)を示す図である。
【
図13】従来技術における特開平07−328169号公報に記載のバンカーショット練習具の構成例を示す図である。
【
図14】従来技術における特開2012−165768号公報に記載のバンカーショット練習具の構成を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明のバンカーショット練習具の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0022】
本実施例1に示す本発明のバンカーショット練習具100の構成例を説明する。
図1は、本実施例1にかかるバンカーショット練習具100を示す図である。
バンカーショット練習具100は、ボール設置部110、インパクトポジションガイド120、インパクトアングルガイド130、板面体150を備えた構成となっている。この構成例ではさらに板面体150上にはバンカーショットの練習に必要な様々な諸情報を含む印刷160が施されている。
図2は本実施例1にかかるバンカーショット練習具100の使用例を示しており、ゴルフボール200も併せて示した図となっている。
【0023】
まず、本発明のバンカーショット練習具100の各構成について説明する。
板面体150は、バンカーの上に載せ置く板面体である。板面体150は、本発明のバンカーショット練習具100全体を支える構造物となるものであり、バンカーショットの練習の邪魔にならないように平板状のものが好ましい。
この構成例では略円板上であるが、後述する実施例2や実施例3などに示すように、略円板以外の形状も可能である。
【0024】
板面体150の素材について述べる。板面体150は、バンカーショットの練習においてクラブヘッドが衝突してしまうこともあるため、割れにくく破れにくい構造的強度を備えたものであることが好ましい。例えば、プラスチックシート素材で形成したものとする。プラスチックシート素材の中には硬質で割れやすい素材もあるが、ここではビニール素材、ポリプロピレン(PP)素材、ポリエチレン(PE)素材、ポリエチレンテレフタレート(PET)素材のように、柔らかくかつ引っ張り強度が強くて破れにくいものが好ましい。
なお、板面体150を可撓性ある素材で形成することも好ましい。バンカーは窪地状であるため、平面部分もあれば曲面部分もある。ゴルフボールを打ち込んだ場所がバンカーの曲面部分である場合も十分想定できるため、バンカーショットの練習もバンカーの曲面部分を想定して行う必要がある。その際、板面体150がバンカーの曲面部分に沿うように曲がることが好ましい。そこで、板面体150を可撓性ある素材で形成しておけば、本発明のバンカーショット練習具100を載せ置いたバンカーの表面の曲面に沿うように板面体150が変形することができる。
【0025】
また、板面体150を透明素材で形成することも好ましい。実際のバンカーショットはバンカーの砂地に直接打ち込まれているゴルフボールをゴルフクラブのインパクトショットのみで打ち出すために、下地となっている砂地の感覚が得られた方が実際のバンカーショットに近い感覚が得られる可能性がある。そこで、板面体150を透明素材で形成しておけば、練習生が本発明のバンカーショット練習具100を用いてバンカーショットの練習をする際、板面体150を通して下地の砂地が見えるため、実際のバンカーショットに近い感覚が得られる可能性がある。
【0026】
ボール設置部110は、板面体150上に設けられたゴルフボールを載せ置く部分であり、この構成例では、板面体150の中央に開けられた開口であり、円形の枠となっている。その大きさは、ゴルフボールの直径よりも若干大きくゴルフボールがその枠内に収まるものとなっている。
図2は、本発明のバンカーショット練習具100を使用する様子を示す図である。
図2(a)に示すように、本発明のバンカーショット練習具100の使用時には、ゴルフボール200をボール設置部110の上に載せ置いて設置する。
なお、ボール設置部110はゴルフボール200の直径よりも若干大きく、バンカーにおけるライの状態を調整することができる。
図2(b)はゴルフボール200がバンカーの表面にのった通常のライの状態を再現したものである。
図2(c)はゴルフボール200がバンカーの砂の中に少し埋まったライの状態を再現したものである。
図2(d)はゴルフボール200がバンカーの砂の中に深く埋まったいわゆる"目玉状態"になったライの状態を再現したものである。
図2(b)から(d)に示すように、練習生は自らゴルフボール200の砂への押し込み具合を調整することにより、練習したいゴルフボールのライの状態を再現することができる。
【0027】
インパクトポジションガイド120は、板面体150の一部に設けられたゴルフボールから所定距離手前のバンカー上の位置に配置されており、バンカーショットにおいてクラブヘッドを振り下ろす位置を指し示すものであり、クラブヘッドを振り下ろす位置の目印となるものである。この構成例では板面体150のエッジに設けられた目印となっており、板面体150の径D2とボール設置部110の径D1との差分が概ねインパクトポジションガイド120が確保すべき距離Lとなる。このインパクトポジションガイドの距離Lが、理想的なバンカーショットにおいてゴルフボール200から離すべき距離となっている。バンカーショットのコツの1つはゴルフボール200を目掛けて振り下ろすのではなく、距離Lの手前にクラブヘッドを振り下ろすことであるが、このインパクトポジションガイド120を用いることにより、ゴルフボール200から距離L離れた位置を容易に把握することができる。
【0028】
インパクトアングルガイド130は、インパクトポジションガイド120におけるクラブヘッドの振り下ろす角度を指し示すものであり、例えば、板面体150に印刷された線または図形である。
図1の構成例では円形の円板上に描かれた斜線として示されている。この斜線の示す角度がクラブヘッドを振り下ろす角度を示すものとなっている。インパクトアングルガイド130の用い方、効果などについては後述する。
【0029】
スイングガイド140は、サンドウェッジなどのゴルフクラブのヘッドのスイングの軌跡をガイドするものである。このスイングガイド140により、練習生は容易に、このスイングガイド140が示す方向に沿ってサンドウェッジのヘッドをインパクトポジション120に向けてアプローチすれば良いことが把握でき、かつ、インパクトポジション120においてインパクトした後、このスイングガイド140が示す方向に沿ってサンドウェッジのヘッドをフォロースルーすれば良いことが把握できる。
【0030】
このように、インパクトポジションガイド120、インパクトアングルガイド130、スイングガイド140の3つの情報を併せることにより、練習生にとってバンカーショットの練習に必要な基本情報を容易に把握することができるようになる。
【0031】
なお、
図1に示した構成例では、板面体150上には、さらに、バンカーショットの練習に必要な様々な諸情報を含む印刷160(160の符番は図示せず)が施されている。この例では、アプローチ方向161、構え162、目線163、前記ゴルフボールの軌跡164などの情報が印刷されている。これら諸情報をまとめて印刷160と総称している。これら印刷はバンカーショットの種類に応じて変化をつけても良い。
【0032】
アプローチ方向161は、ゴルフボールが飛んでゆく方向を示している。グリーンがこの方向になるように本発明のバンカーショット練習具100をバンカー上に載せ置くと良い。この例では矢印マークとなっている。
【0033】
構え162は、体を向ける方向、足の角度、体重の掛け方などを示すものである。この例ではフットプリントとなっている。なお、この例では、左のフットプリントには数字の"6"が描かれ、右のフットプリントには数字の"4"が描かれているが、これは左右の足にかける体重の割合を簡単に示したものであり、左足にやや体重を掛けて構えれば良いことを意味している。(これは左足体重の場合、クラブヘッドが鋭角に入りやすいからである。)
目線163は、顔を向ける方向を示している。この例では構えに従って顔をゴルフボールに正対させるように構えれば良いことを意味している。
【0034】
ゴルフボールの軌跡164は、印刷160情報の指定する構え等により、クラブフェイスをインパクトアングルガイド130が示す角度にて、インパクトポジションガイド120が示す位置に振り下ろすことにより、バンカーから飛び出すゴルフボール200がどのような高さと距離で飛ぶかを簡単に示すものである。この例ではゴルフボールの軌跡164に示すような放物線を描いてグリーン上に到達することを示している。
【0035】
以上の基本構成を持つ本発明のバンカーショット練習具100の使用方法について説明する。
図3は、本発明のバンカーショット練習具100を用いたバンカーショットの矯正効果を簡単に示すものであり、練習生の目線にて、実際に本発明のバンカーショット練習具100およびゴルフボール200を見た様子を示している。
練習生がバンカーショットの練習を行う際、バンカー上にゴルフボール200および本発明のバンカーショット練習具100を載せ置き、適切な立ち位置において構えると、
図3に示すように、ゴルフボール200および本発明のバンカーショット練習具100を斜め前方に見ることとなる。
図3に示したように、練習生は容易にバンカーショットにおいて気をつけるべきポイントに関する情報を把握することができる。
【0036】
まず、スイングガイド140によって、サンドウェッジのヘッドのスイング軌跡を感覚的に容易に把握することができる。スイングガイド140が示す方向に沿って、インパクトポジションに向けてサンドウェッジを振り下ろせば良いことが感覚的に容易に把握でき、また、インパクトした後に、スイングガイド140が示す方向に沿って、サンドウェッジをフォロースルーして行けば良いことが感覚的に容易に把握できる。ここで、ゴルフボールを飛ばしたいグリーンの方向であるアプローチ方向161ではなく、やや斜め方向にサンドウェッジをスイングすべきであることが把握できる。
【0037】
また、インパクトポジションガイド120によって、サンドウェッジのヘッドを振り下ろしてインパクトすべきポジションが感覚的に容易に把握できる。ここで、ゴルフボール200真下のポジションではなく、少し離れたポジションにサンドウェッジを振り下ろすべきであることが把握できる。
次に、インパクトアングルガイド130によって、インパクトする瞬間のサンドウェッジのヘッドの角度を感覚的に容易に把握できる。ここで、アプローチ方向161に直角にインパクトするのではなく、サンドウェッジフェイスにやや角度を付けてインパクトすべきであることが把握できる。
【0038】
このように、インパクトポジションガイド120、インパクトアングルガイド130、スイングガイド140の3つの情報を併せることにより、練習生にとってバンカーショットの練習に必要な基本情報を容易に把握することができるようになる。
【0039】
また、この構成例では、板面体150上の印刷160によって、さらにバンカーショットにおいて知っておくべきことが把握できる。
まず、アプローチ方向161により、グリーンがどの方向にあるのかが感覚的に容易に把握できる。
次に、構え162により、体を向ける方向、足の角度、体重の掛け方などが感覚的に容易に把握できる。
次に、目線163により、顔の向きやなどが感覚的に容易に把握できる。
次に、ゴルフボールの軌跡164により、これらの諸条件が満たされたバンカーショットを行うことにより、ゴルフボールがどのような高さに打ちあがり、どのような距離を飛ぶのかというゴルフボールが描く放物線の軌跡が感覚的に容易に把握できる。
【0040】
なお、クラブヘッドを振り下ろしインパクトの強さに関しては、その強弱の目安となる情報を印刷160として練習生に提示することも可能である。例えば、インパクトの強弱は"強く""やや強く""やや軽く""軽く"と指示することも可能である。この"力の加減"は個人差があるので練習で学ぶものとする。
【0041】
以上に示した本発明のバンカーショット練習具100を用いれば、練習生がバンカーショットのコツを容易に体得できるようになる。
【実施例2】
【0042】
実施例2にかかるバンカーショット練習具100aとして、インパクトアングルガイド130aとして、板面体150aにおける断ち切り縁にて指し示す構成例のものを示す。
図4は、実施例2にかかるバンカーショット練習具100aを示す図である。ここでは、実施例1にかかる
図1に示したバンカーショット練習具100の各構成と同様のものについては説明を省略し、実施例1とは異なる点を中心に説明する。
図4に示すように、バンカーショット練習具100aは、ボール設置部110a、インパクトポジションガイド120a、インパクトアングルガイド130a、スイングガイド140a、板面体150aを備えた構成となっている。
【0043】
この構成例では、インパクトアングルガイド130aは、板面体150aにおける断ち切り縁となっている。実施例1に示したインパクトアングルガイド130は板面体150の盤面上に印刷された斜線であったが、この構成例では
図4に示すように、輪郭の断ち切り線となっており、練習生にはさらに視認しやすいものとなっている。
【0044】
本実施例2にかかるバンカーショット練習具100aの使用方法も実施例1の
図3に示したものと同様である。
図5は、実施例2にかかる本発明のバンカーショット練習具100aを用いたバンカーショットの矯正効果を簡単に示すものであり、練習生の目線にて、実際に本発明のバンカーショット練習具100aおよびゴルフボール200を見た様子を示している。
練習生がバンカーショットの練習を行う際、バンカー上にゴルフボール200および本発明のバンカーショット練習具100aを載せ置き、適切な立ち位置において構えると、
図5に示すように、ゴルフボール200および本発明のバンカーショット練習具100aを斜め前方に見ることとなる。
図5に示したように、練習生は容易にバンカーショットにおいて気をつけるべきポイントに関する情報を把握することができる。
【0045】
図5に示したスイングガイド140aは、
図3のスイングガイド140と同じであり、サンドウェッジのヘッドのスイング軌跡を感覚的に容易に把握することができる。また、
図5に示したインパクトポジションガイド120aは、
図3のインパクトポジションガイド120と同じであり、サンドウェッジのヘッドを振り下ろしてインパクトすべきポジションが感覚的に容易に把握できる。ここで、
図5に示したインパクトアングルガイド130aは輪郭の断ち切り縁となっており、印刷された斜線である
図3のインパクトアングルガイド130とは異なるが、練習生にとっては、輪郭の断ち切り縁でも同様であって、インパクトする瞬間のサンドウェッジのヘッドの角度を感覚的に容易に把握できる。
【0046】
このように、実施例2にかかるバンカーショット練習具100aによれば、インパクトポジションガイド120a、インパクトアングルガイド130a、スイングガイド140aの3つの情報、さらには印刷160の諸情報を併せることにより、練習生にとってバンカーショットの練習に必要な基本情報を容易に把握することができるようになる。
【実施例3】
【0047】
実施例3にかかるバンカーショット練習具100bとして、板面体150bに対して、空気抜き用または砂抜き用の孔部151bを設けた構成例を示す。
図6は、本実施例3にかかるバンカーショット練習具100bを示す図である。ここでは、実施例1にかかる
図1に示したバンカーショット練習具100の各構成と同様のものについては説明を省略し、実施例1とは異なる点を中心に説明する。
【0048】
図6に示すように、バンカーショット練習具100bは、ボール設置部110b、インパクトポジションガイド120b、インパクトアングルガイド130b、スイングガイド140b、板面体150bを備えた構成となっている。
この構成例では、
図6に示すように、板面体150bには、空気抜き用または砂抜き用の孔部151bが設けられている。空気抜き用または砂抜き用の孔部151bの数や形状は特に限定されないが、この構成例では、空気抜き用または砂抜き用の孔部151bは、円形の孔として4つ設けられている。
【0049】
板面体150bに孔部151bを設けておくことにより、この孔部151bが一種の空気抜きや砂抜きの通路となり得る。バンカーショットはゴルフクラブのインパクトポイントがゴルフボール200より手前をインパクトして、砂ごとゴルフボール200を打ち出す要領で打つため、実際にはクラブフェイスがゴルフボール200を直接にインパクトすることはなく、ゴルフボールに接地している砂から得る圧力によりゴルフボール200が飛んで行く。ここで、ゴルフボール200は球形で一種の流線形をしているが、本発明のバンカーショット練習具100bは平面状であるためにゴルフクラブの打撃力により飛び出す砂の勢いを受けやすく、ゴルフボール同様に打ち出し方向に向けて飛び出してしまう。そこで、一種の空気抜きや砂抜きとなる孔部151bを設けておくことにより、バンカーショット練習具100bの板面体150bの下方からの砂や空気を適度に抜けるため、バンカーショットのインパクトにより打ち出されるバンカーショット練習具100bが過度に飛んで行かないという効果が得られる。
【実施例4】
【0050】
実施例4にかかるバンカーショット練習具として、板面体に対して、インパクトポジションガイドからボール設置部へ至る切り欠き開口部を設けた構成例を示す。
図7は、本実施例4にかかるバンカーショット練習具100cを示す図である。ここでは、実施例1にかかる
図1に示したバンカーショット練習具100の各構成と同様のものについては説明を省略し、実施例1とは異なる点を中心に説明する。
【0051】
バンカーショット練習具100cは、
図7に示すように、ボール設置部110c、インパクトポジションガイド120c、インパクトアングルガイド130c、スイングガイド140c、板面体150cを備えた構成となっている。
この構成例では、
図7に示すように、板面体150cには、インパクトポジションガイド120cからボール設置部110cへ至る切り欠き開口部152cが設けられている。
また、この構成例では、インパクトポジションガイド120cは、切り欠き開口部152cのエッジの最外周の2点に設けられており、それらを結んだ領域一体がインパクトすべき箇所と把握できるものとなっている。
また、この構成例では、インパクトアングルガイド130cは、板面体150cの盤面上に印刷された斜線となっており、練習生にはクラブヘッドを振り下ろす角度を明確に認識することができるものとなっている。
【0052】
この板面体150cに切り欠き開口部152cを設けることにより、バンカーショット練習具100cによるバンカーショットのガイドがあるものの、クラブヘッドを振り下ろした位置からゴルフボール200までの間には構造物がなく、目視した感覚が、あたかもバンカーの中にゴルフボール200が存在するという実際のバンカーショットに近い感覚と近くなるという効果が得られる。
【0053】
バンカーショットはゴルフクラブのインパクトポイントがゴルフボール200より手前をインパクトして、砂ごとゴルフボール200を打ち出す要領で打つため、実際にはクラブフェイスがゴルフボール200を直接にインパクトすることはなく、ゴルフボールに接地している砂から得る圧力によりゴルフボール200が飛んで行く。ここで、切り欠き開口部152cを設けることにより、サンドウェッジのヘッドとの間の構造物がなく、実際のバンカーショットに近い感覚を得ながらバンカーショットの練習をすることができる。
【実施例5】
【0054】
実施例5にかかるバンカーショット練習具として、板面体の外形が円形以外の様々な他のパターンの構成例を示す。
ここでは、実施例1にかかる
図1に示したバンカーショット練習具100の各構成と同様のものについては説明を省略し、実施例1とは異なる点を中心に説明する。
【0055】
図8は、本実施例5にかかるバンカーショット練習具100dを示す図である。
図9は、本実施例5にかかる別の形状のバンカーショット練習具100eを示す図である。
図10は、本実施例5にかかる、さらに別の形状のバンカーショット練習具100fを示す図である。
【0056】
バンカーショット練習具100d,100e,100fは、それぞれ実施例1と同様、ボール設置部110d,110e,110f、インパクトポジションガイド120d,120e,120f、インパクトアングルガイド130d,130e,130f、スイングガイド140d,140e,140f、板面体150d,150e,150fを備えた構成となっているが、
図8に示すように、この構成例では、板面体150d,150e,150fの外形がそれぞれ非円形となっている。
【0057】
例えば、バンカーショット練習具100dであれば、全体が概略で矢形となっており、矢形の頂点方向がゴルフボールを打ち出す方向であることが明確に分かりやすい。また、バンカーショット練習具100eであれば、全体が概略で矢印形となっており、矢印形の頂点方向がゴルフボールを打ち出す方向であることが明確に分かりやすい。また、バンカーショット練習具100fであれば、全体が概略でいわゆる鍵穴形となっており、鍵穴形の直線部分がゴルフボールを打ち出す方向であるアプローチ方向161fを指し示していることが感覚的に容易に把握できるものとなっている。
【実施例6】
【0058】
実施例6として、バンカーショットの飛距離や高さを変えた3つのパターンの実施例1にかかるバンカーショット練習具100(Atype,Btype,Ctype)を示す。
図11(a)は、Aタイプ(飛距離が比較的大きく、飛行高さが比較的低いタイプ)のバンカーショット練習具100を示しており、
図11(b)は、Bタイプ(飛距離が比較的中ぐらい、飛行高さが比較的中ぐらい)のバンカーショット練習具100を示している。また、
図12は、Cタイプ(飛距離が比較的小さく、飛行高さが比較的高い)のバンカーショット練習具100を示している。
このように、タイプの異なる数種類のバンカーショット練習具100を揃えれば、様々なタイプのバンカーショットが練習できることが理解されよう。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。従って本発明の技術的範囲は添付された特許請求の範囲の記載によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0060】
100 バンカーショット練習具
110 ボール設置部
120 インパクトポジションガイド
130 インパクトアングルガイド
140 スイングガイド
150 板面体
151 孔部、切り欠き部
152 切り欠き開口部
160 印刷
161 アプローチ方向
162 構え
163 目線
164 ゴルフボールの軌跡