(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081510
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】衝撃波弁形成用カテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20170206BHJP
【FI】
A61B17/22 510
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-36444(P2015-36444)
(22)【出願日】2015年2月26日
(62)【分割の表示】特願2011-534914(P2011-534914)の分割
【原出願日】2009年11月5日
(65)【公開番号】特開2015-128635(P2015-128635A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2015年3月4日
(31)【優先権主張番号】61/111,600
(32)【優先日】2008年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515000292
【氏名又は名称】ショックウェーブ メディカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ホーキンス、 ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】アダムス、 ジョン、 エム
【審査官】
井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−528963(JP,A)
【文献】
特表2011−524203(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0312768(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0059965(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0044596(US,A1)
【文献】
米国特許第05295958(US,A)
【文献】
特開昭62−275446(JP,A)
【文献】
実開昭62−099210(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁尖を有する弁を処置するための血管内カテーテルのシステムであって、各弁尖は、壁に接続されており、各弁尖は、凹部領域を有し、前記血管内カテーテルのシステムは、
細長いキャリアと、
前記細長いキャリアにより支承されるバルーンであって、前記バルーンは、前記バルーンを膨張させる流体を受け入れるように構成されており、前記バルーンは、膨張させられると、弁尖の凹部領域内に、かつ、前記弁尖と前記壁との間に適合するように成形された部分を有するように構成されている、バルーンと、
前記バルーンの中に配置された少なくとも一対の電極を含む少なくとも1つのアーク発生器であって、前記少なくとも1つのアーク発生器は、前記バルーンの中に機械的な衝撃波をもたらす電気アークを発生させるように前記電極の間に複数の高圧パルスを生成し、前記バルーンは、前記衝撃波が前記アーク発生器によって生成されるときに無傷のままであるように構成されている、少なくとも1つのアーク発生器と
を含む、システム。
【請求項2】
前記電極のそれぞれは、電圧パルス発生器に接続されるように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記細長いキャリアは、内腔を含み、
前記バルーンは、前記内腔と流体連通する、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大動脈弁狭窄症又は石灰化大動脈弁のための治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2008年11月5日に出願された米国仮出願第61/111,600号に基づく優先権を主張する。この仮出願は、参照することによりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0003】
大動脈石灰化は、大動脈硬化症とも呼ばれており、心臓の大動脈弁におけるカルシウム沈着の蓄積である。前記大動脈石灰化は心雑音を生じさせ、該心雑音は前記心臓から容易に聴診される。前記大動脈石灰化は、通常、前記大動脈弁の機能に重大な影響を及ぼさない。
【0004】
しかし、場合によっては、前記カルシウム沈着は、厚くなり、前記大動脈弁の開口部の狭窄を生じさせる。これは、前記大動脈弁を経る血流の量を減少させ、胸痛や心臓発作を招く。医師はこのような狭窄を大動脈弁狭窄症と呼ぶ。
【0005】
前記大動脈石灰化は典型的には高齢者に影響を及ぼす。しかし、前記大動脈石灰化が若年層に生じたとき、前記大動脈石灰化は、出生時に見られる(先天性の)大動脈弁の異常又は腎不全のような他の病気と関連する。前記心臓の超音波(心エコー図)が前記大動脈石灰化の重症度を決定し、前記心雑音の他の考えられる原因を調べる。
【0006】
現在、前記大動脈石灰化の特定の治療法がない。一般的な治療法は、心臓病の進行を監視することを含む。コレステロール値が、前記大動脈石灰化の進行を防ぐためにコレステロール値を下げる医薬の必要性を判断するために調べられる。前記大動脈弁が大幅に狭くなった場合、大動脈弁置換術が必要となることがある。
【0007】
大動脈弁口面積は、心臓カテーテル法とほぼ同じ方法で導入されるバルーンカテーテル(バルーン弁形成術)を用いて開けられ又は拡張される。前記バルーン弁形成術により前記大動脈弁口面積は典型的には僅かに増す。このため、重症な前記大動脈弁狭窄症の患者はこの治療により一時的な改善を経験する。残念ながら、前記大動脈弁の多くは6か月間ないし18か月間狭くなっている。このため、前記バルーン弁形成術は、前記大動脈弁置換術の候補者でない患者の症状を一時的に緩和する短期的な手段として有用である。人工股関節置換手術のような緊急の非心臓手術を要する患者は手術前に大動脈弁形成術により利益を受ける。弁形成術は、心機能及び非心臓手術を乗り切る可能性を改善する。前記大動脈弁形成術は、心室筋の機能が低下した高齢患者の前記大動脈弁置換術への橋渡しとしても有用である。前記バルーン弁形成術は、心室筋の機能を一時的に改善させ、手術の生存率を改善させる。心室機能の改善を伴う前記弁形成術に対応する人々は、前記大動脈弁置換術から多くの利益を受けることを期待されている。危険性の高い高齢患者の前記大動脈弁形成術は、手術候補者の前記大動脈弁置換術と同様の死亡率(5%)及び重篤な合併症率(5%)を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、大動脈弁狭窄症又は石灰化大動脈弁のための他の治療システムを提供する。本発明は、現在行われている大動脈弁置換術と比べてより耐えられる大動脈弁狭窄症又は石灰化大動脈弁の治療を提供する。本発明は、現在の弁形成術と比べてより効果的な治療を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る弁形成システムは、弁尖に隣接して配置される、流体により膨張可能なバルーンと、該バルーンの中の衝撃波発生装置であって弁に作用するために前記流体を経て伝わる衝撃波を発生させる衝撃波発生装置とを含む。前記バルーンは前記弁尖の相対する両側又は弁輪の中に配置される。
【0010】
前記弁形成システムは細長い管を含む。前記バルーンは前記管の遠位端にある。
【0011】
前記バルーンは、第1室と、第2室とを有する。前記第1室及び前記第2室は長手方向に離間される。
【0012】
前記管は内腔を有する。前記第1室及び前記第2室のそれぞれは前記内腔と連通している。
【0013】
前記衝撃波発生装置は、前記第1室の中の第1の衝撃波源と、前記第2室の中の第2の衝撃波源とを備える。前記第1の衝撃波源及び前記第2の衝撃波源はそれぞれ第1の電気アーク発生器及び第2の電気アーク発生器を有する。前記第1の電気アーク発生器及び前記第2の電気アーク発生器のそれぞれは、電圧パルス発生器に接続される少なくとも1つの電極を有するものとすることができる。前記第1の電気アーク発生器及び前記第2の電気アーク発生器のそれぞれは、電圧パルス発生器に接続される電極対を有するものとすることができる。前記電極対は、同軸状に配置された一対の電極である。
【0014】
前記弁形成システムは、前記第1の電気アーク発生器と、前記第2の電気アーク発生器とを備える高電圧カテーテルを含む。前記第1の電気アーク発生器及び前記第2の電気アーク発生器は、前記第1の電気アーク発生器及び前記第2の電気アーク発生器がそれぞれ前記第1室及び前記第2室に受け入れられるために長手方向に離間されている。
【0015】
前記バルーンは前記弁輪の中に配置される。このため、前記バルーンは、前記弁輪に受け入れられる、直径が小さい部分を有する。
【0016】
前記バルーンは、柔軟な材料で形成されたものとすることができる。
【0017】
これに代え、前記バルーンは、非柔軟な材料で形成されたものとすることができる。
【0018】
本発明に係るカテーテルシステムは、細長いキャリアと、該キャリアにより支承されるバルーンとを含む。前記バルーンは、該バルーンを膨張させる流体を受け入れる。前記カテーテルシステムは、前記バルーンの中の同軸状に配置された少なくとも一対の電極を備える少なくとも1つのアーク発生器であって前記バルーンの中に機械的な衝撃波を生じさせる少なくとも1つのアーク発生器を含む。
【0019】
前記カテーテルシステムは、中心導体と、該中心導体から絶縁された外側の導電性シールドとを備えるケーブルを含む。前記電極の一方の少なくとも一部は前記中心導体により形成され、前記電極の他方の少なくとも一部は前記導電性シールドにより形成されている。
【0020】
本発明に係る、弁尖と弁輪とを有する弁を治療するための弁形成方法は、前記弁尖に隣接してバルーンを配置すること、該バルーンを流体で膨張させること、前記弁尖と前記弁輪とに作用するために前記流体を経て伝わる衝撃波を前記バルーンの中に発生させることを含む。
【0021】
前記バルーンの配置は、前記バルーンを前記弁尖の相対する両側に配置することにより行うものとすることができる。これに代え、前記バルーンの配置は、前記バルーンを前記弁輪の中に配置することにより行うものとすることができる。
【0022】
本発明の新規な特徴が特許請求の範囲に記載されている。本発明の様々な実施例が、本発明の代表的な特徴及び利点とともに、添付の図面に関する以下の説明を参照することにより理解される。いくつかの図面において類似の符号は同一の要素を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】カルシウム及び繊維性組織により狭くなった大動脈弁の開口部及び厚くなった弁尖を示す、心臓の左心室、大動脈及び大動脈弁の断面図。
【
図2】本発明の実施例に係る治療用バルーンが弁尖の両側に配置されている状態の心臓の大動脈弁の断面図。
【
図3】高圧電源に取り付けられた、本発明の実施例に係るデュアル衝撃波バルーンの概略図。
【
図4】本発明の他の実施例に係る弁形成用衝撃波バルーンを示す、心臓の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、狭窄しかつ石灰化した大動脈弁16を有する心臓10の左心室12、大動脈14及び大動脈弁16の断面図である。
図1に示すように、狭窄しかつ石灰化した大動脈弁16の開口部17の大きさが制限され、弁尖18がカルシウム沈着及び繊維性組織により厚くなっている。厚くなった弁尖18及び小さい開口部17は、心臓からの血流を制限し、心臓10の過労と心拍出量の低下とを生じさせる。前記したように、現在の治療法には、弁の置換又はバルーンで弁輪を広げることがある。
【0025】
図2は、治療用のバルーン22が弁尖18の両側に配置されている状態の大動脈弁16の断面図である。バルーン22は、柔軟な材料又は非柔軟な材料で形成されている。バルーン22は、
図2に示すように、細長い管23の端部にある。バルーン22は、管23の膨張用内腔25を共有する、長手方向に離間された2つの部屋24、26を有する。これに代え、部屋24、26は同一の膨張用流体通路を共有しなくてもよい。部屋24、26は、部屋24が弁尖18の一方の側に位置しかつ部屋26が弁尖18の他方の側に位置するように長手方向に離間されている。部屋24、26は、例えば、生理食塩水と造影剤との混合物で膨張させられている。各部屋24、26は、後記するように、決められた時刻に衝撃波を送るために電気アークを発生させる電極を収容する。前記衝撃波は、カルシウム沈着を破壊する効果を最大化するために弁尖18の両側に同時に作用するように同期させられる。このような衝撃波は、例えば、2008年6月13日付けの出願第61/061,170号の明細書に記載されている方法で発せられかつ心臓10のR波にも同期させられたものとすることができる。この出願は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0026】
図3は、本発明に係る弁形成システム11の概略図である。弁形成システム11はデュアル衝撃波バルーン22を含む。バルーン22は、高圧電源30に接続された高電圧カテーテル32を受け入れている。前記概略図は、大動脈弁16の弁尖18の上方及び下方にある部屋24、26の位置を示す。前記したように、前記衝撃波は、弁尖18のカルシウム沈着をより効果的に破壊するために弁尖18の相対する両側に作用する。前記弁輪はこの配置で治療される。高電圧カテーテル32は、バルーン22の部屋24及び26に配置された、同軸状に配置された電極である電極対34及び36を備える。具体的には、電極対
36は、第1のケーブルの遠位端にあり、中心導体33と、外側の導電性シールド35とを有する。電極対34は、第2のケーブルの遠位端にあり、中心導体37と、外側の導電性シールド39とを有する。電源30からの高電圧パルスが、バルーン22の部屋24及び26の中の流体の中に衝撃波を発生させるために、前記した出願第61/061,170号の明細書に記載されている方法で電極対34及び36に加えられる。前記衝撃波は、大動脈弁16を開くために弁尖18及び前記弁輪のカルシウム沈着及び繊維性組織を破壊するように弁尖18及び前記弁輪に作用する。
【0027】
図4は、細長い管43の遠位端にある他の弁形成用衝撃波バルーン42を示す。バルーン42は大動脈弁16の前記弁輪の中に配置されている。バルーン42は、前記弁輪の中に受け入れられる、直径が小さい部分を有する。バルーン42は、電極対46まで伸びる高電圧カテーテル44を備える。電極対46は、前記した実施例のように、同軸状に配置された一対の電極であり、中心導体が一方の電極の少なくとも一部を形成し、外側の導電性シールドが他方の電極の少なくとも一部を形成している。カテーテル44及び電極対46は、前記したように、衝撃波を発生させる。このような配置は弁尖18からカルシウムを除去する。この配置は、弁尖18からカルシウムを除去するのみならず、前記弁輪を柔軟にし、その直径を長くする。したがって、バルーン42は、前記弁輪の直径を変更するために該弁輪に拡張のための圧力を直接的に加えるという利点をもたらす。
【0028】
本発明の特定の実施例を示し、説明したが、修正がなされてもよく、本発明は、その真の精神及び範囲に含まれる全ての変更及び修正に及ぶ。
【符号の説明】
【0029】
11 弁形成システム
16 大動脈弁
18 弁尖
22、42 バルーン
23、43 管
24、26 部屋
25 内腔
30 高圧電源
32、44 高電圧カテーテル
33、37 中心導体
34、36、46 電極対
35、39 導電性シールド