(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記滞空時間が0.030秒以上である液体の飛翔距離は、上記圧力雰囲気を区画する冷却槽内において、液体が液体供給部から供給されて該冷却槽の内壁に接触するまでの飛翔距離を含む請求項1に記載の液体の冷却方法。
上記滞空時間が0.030秒以上である液体の飛翔距離は、上記圧力雰囲気を区画する冷却槽内において、液体が液体供給部から供給されて該冷却槽内を飛翔する他の液体に接触するまでの飛翔距離を含む請求項1又は2に記載の液体の冷却方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0022】
(液体の冷却方法)
本実施形態に係る液体の冷却方法は、揮発成分及び界面活性剤を含有する液体を、その揮発成分の飽和蒸気圧以下の圧力雰囲気の冷却場に供給し、揮発成分の少なくとも一部を気化させて液体を冷却するものである。そして、液体の飛翔距離を下記式(I)で表される液体の初速度で除した値で定義する滞空時間を0.030秒以上とする。
【0023】
液体の初速度=液体の供給時の体積流量/液体の供給面積 (I)
一般に、揮発成分及び界面活性剤を含有する液体を、その揮発成分の飽和蒸気圧以下の圧力雰囲気の冷却場に供給し、揮発成分の少なくとも一部を気化させて液体を冷却する場合、液体が発泡性や粘性を有すると、気泡が泡噛みした状態で留まってシェービングクリーム状やメレンゲ状となり、冷却後に密度の小さい液体が得られることとなる。そこで、揮発成分の飽和蒸気圧以下の圧力雰囲気の冷却場においては、泡噛みした気体の温度は沸点であるため、例えば、排出ポンプなどによって微小にでも加圧できれば、気泡が凝縮して液体を真密度に近づけることができる。ところが、液体の密度が小さいと、冷却場の容積を大きくとる必要があり、また、キャビテーション防止のためにその高さを十分にとる必要もある。さらに、液体の密度が小さいと流動性が低くなるため、用いる排出ポンプのサイズを大きくする必要がある等の経済的負担も大きくなる。
【0024】
しかしながら、本実施形態に係る液体の冷却方法によれば、上記のような液体の冷却の際、液体の滞空時間を0.030秒以上とすることにより、上記のような不具合を生じることなく、また、消泡剤の使用の有無に関係なく、液体中に泡噛みした気泡を脱泡することができる。従って、冷却後の液体への不純物の混入を防止することもできる。液体の滞空時間は、冷却場の大きさによって決定されるが、長ければ長いほどよい。具体的には、液体の滞空時間を0.030秒以上とするが、0.035秒以上とすることが好ましく、0.40秒以上とすることが更に好ましい。
【0025】
本実施形態に係る液体の冷却方法によれば、理想的には、揮発成分の飽和蒸気圧以下の圧力雰囲気の冷却場に供給される液体のすべてが滞空時間を0.030秒以上とすることであるが、供給された液体の一部の滞空時間が0.030秒未満となっても、滞空時間が0.030秒以上の液体が供給された液体全体の30体積%以上であれば、液体中に泡噛みした気泡の脱泡効果の発現は充分に認識できる。冷却場の設計においては充分な配慮が必要だが、具体的な例として、冷却場の有効利用、生産性等の観点から、供給ノズルを複数個設置することや冷却場としてベッセル等を用いるような場合に側面から液体を供給することも可能であり、このような場合、近接するノズルから供給された液体同士の衝突や、塔頂部への衝突が起こることにより、供給された液体の一部の滞空時間が0.030秒未満となる場合が生じる。従って、冷却に際し、液体中に泡噛みした気泡を脱泡する観点から、滞空時間を0.030秒以上とする液体は供給された液体全体の30体積%以上であることが好ましく、50体積%以上であることがより好ましく、70体積%以上であることが更に好ましく、80体積%以上であることがより更に好ましく、100体積%であることが特に好ましい。
【0026】
本実施形態に係る液体の冷却方法は、連続式、回分式、或いは半回分式のいずれの方式で実施してもよい。
【0027】
連続式の場合には、液体を供給する冷却装置の下部に排出ポンプを設置し、冷却装置から連続的に冷却後の液体を排出する等の形式で冷却を実施することができるが、密度の大きな液体を得ることができるため、排出ポンプに対するNPSHav(有効吸込ヘッド)が大きくなり、キャビテーションを防止することができる。また、装置内に貯留される液体の液面の維持高さを低くすることができることから、装置高さを低くすることによるコストの削減を図ることができる。従って、本実施形態に係る液体の冷却方法は、特に連続式に好適なものである。
【0028】
回分式の場合には、密度の大きな液体を得ることができるため、1回当たりの処理量を大きくすることができ、また、装置容積を小さくすることができるといった経済的メリットを得ることができる。さらに、一般的に最も使用頻度の高い熱交換器を用いた冷却方法と比較すると、圧力損失を低減でき、その効果は液体の粘性が大きいほど顕著であり、また、圧力損失低減のために流路を大きくする等の措置をとる必要が無いため、装置容積を小さくできることから省スペース化を図ることができる。
【0029】
なお、本実施形態に係る液体の冷却方法は、単に冷却のみを目的とする場合だけでなく、揮発成分を気化させることから、それに加えて濃縮や不純物除去を目的とする場合においても有効である。
【0030】
[液体]
液体としては、特に限定されないが、例えば、粘性液体、発泡性液体が挙げられる。また液体には固体粒子を含む流体(スラリー)、高粘度で固体粒子を含んだり含まなかったりする流体(ペースト)も含まれる。更に液体中に空気等の気泡を含んだ流体(泡噛み流体)も含まれる。
【0031】
かかる液体は、少なくとも揮発成分と粘性や発泡性を発現させる界面活性剤が含まれたもので構成される。
【0032】
揮発成分としては、例えば、水、有機溶剤等が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;ノルマルヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルムなどの塩化脂肪族炭化水素類等が挙げられる。揮発成分は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種が混合されて構成されていてもよい。
【0033】
界面活性剤は、単一種が含まれていてもよく、また、複数種が含まれていてもよい。かかる物質の含有量は例えば0.1〜90質量%である。上記脱泡効果は高粘度の流体や、高粘度で液体中に空気等の気泡を含んだ流体(泡噛み流体)において特に顕著である。この観点から、界面活性剤の含有量は10〜99質量%が好ましく、30〜95質量%がより好ましく、50〜90質量%が更に特に好ましく、55〜85質量%が特に好ましい
界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、両親媒性ポリマーが挙げられる。
【0034】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などの硫酸エステル型のもの;アルキルベンゼンスルホン酸塩などのスルホン酸型のもの;カルボン酸型のもの;リン酸エステル型のもの等が挙げられる。これらのアニオンイオン界面活性剤は、水との混合物を構成した場合、一定の界面活性剤濃度までは濃度上昇するにつれて粘度が上昇して流動性が低下乃至無くなるが、その一定の界面活性剤濃度からさらに濃度上昇させると、ペースト状となって再び流動性を示すことが一般に知られている。
【0035】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル型のもの;グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル型のもの;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのエステル・エーテル型のもの;アルキルアルカノールアミドなどのアルカノールアミド型のもの等が挙げられる。
【0036】
カチオン界面活性剤としては、例えば、4級アンモニウム塩型のもの、アルキルアミン塩型のもの等が挙げられる。
【0037】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン等のカルボキシベタイン型のもの、アルキルアミンオキサイドなどのアミンオキサイド型のもの等が挙げられる。
【0038】
両親媒性ポリマーとは、疎水性基及び親水性基の両方を有するポリマーのことであり、例えば、反応性界面活性剤と親水性モノマーとの共重合、或いは、イオン性親水性モノマーと疎水性モノマーとの共重合によって合成することができる。なお、反応性界面活性剤とは、分子内に重合性の不飽和二重結合或いはイオン性の親水基及び疎水基を有する界面活性剤である。
【0039】
液体には、その他に用途に応じたそれぞれの構成成分等が含まれていてもよい。
【0040】
液体の粘度は例えば0.01〜1000Pa・sである。液体の粘度は同軸二重円筒型粘度計により測定される値である。
【0041】
液体としては、具体的には、界面活性剤水溶液、洗浄性組成物からなるスラリー、糊料水溶液、糖類、チョコレートや加工豆乳などの食品を含む液体が挙げられる。
【0042】
冷却前の液体は、泡噛みしていてもよい。泡噛みした液体を揮発成分の飽和蒸気圧以下の圧力雰囲気の冷却場に供給した場合、気泡内の気体が膨張すると共に蒸発した揮発成分に押し出されて脱気される。そのため、泡噛みした液体を用いることによって、冷却前より密度が大きく、且つ流動性の優れる液体を得ることができる。
【0043】
[圧力及び温度]
液体を供給する冷却場の圧力は、その冷却場の温度における揮発成分の飽和蒸気圧以下に設定する。このとき、通常、冷却場を、その温度における揮発成分の飽和蒸気圧の圧力雰囲気に構成することが望ましいが、揮発成分が沸点上昇により所望する温度まで冷却されない場合には、飽和蒸気圧未満の圧力雰囲気に構成することが好ましい。なお、25℃における水の飽和蒸気圧は3.17kPaである。
【0044】
液体を供給する冷却場の温度は、液体の構成にもよるが、例えば−20〜200℃に設定する。
【0045】
[液体の供給操作]
冷却場に供給する液体の温度は、液体の構成にもよるが、例えば0〜220℃に設定する。液体には必ずしも予め加熱等を施す必要はなく、従って、本実施形態に係る液体の冷却方法は、熱安定性に乏しい物質にも良好に適用され得る。
【0046】
液体の冷却場への供給は、その手段が特に限定されるものではないが、噴霧ノズル等の微粒化手段を用いて行うことが好ましい。
【0047】
微粒化手段を用いた液体の冷却場への供給の場合、液体を供給する向きは、特に限定されるものではないが、上から下向きであることが好ましい。また、液体の液滴径は1〜10000μmとすることが好ましい。高粘性のために液体を滴状に噴霧することが困難な場合は、膜状或いは棒状に供給しても構わない。その場合の液膜厚みは1〜10000μmとすることが好ましい。
【0048】
液体の冷却場への供給は、1箇所から行ってもよく、また、複数箇所から行ってもよい。特に、液体が高粘性で圧力損失が大きくなる場合は、複数箇所から行うことが好ましい。
【0049】
[冷却装置]
図1は本実施形態に係る液体の冷却方法に使用可能な冷却装置100の一例を示す。
【0050】
この冷却装置100は、上側ベッセル(冷却槽)111及び下側ベッセル112が上下に設けられ、そして、上側ベッセル111の下部と下側ベッセル112の上部とが上下方向に延びる連結配管113で連結された構成を有する。
【0051】
上側ベッセル111の上部には、液体供給管121が接続されて貫通状態で設けられている。液体供給管121は上側ベッセル111の他の位置に設けられていてもよいが、供給した液体の滞空時間を長くして脱泡を促進させる観点から、このように上側ベッセル111の上部に設けられていることが好ましい。液体供給管121は複数本設けられていてもよい(
図1では上下に2本)。上側ベッセル111の上部の天板部には、気体排出管123が接続されている。上側ベッセル111の容量は例えば1〜10000Lである。
【0052】
液体供給管121の先端には噴霧ノズル(液体供給部)131が取り付けられている。上側ベッセル111に液体を供給する方法は、特に限定されるものではないが、気液界面積を大きくして冷却効率を高める観点から、前述の通り、このような噴霧ノズル131等の微粒化手段を使用することが好ましい。微粒化手段としては、噴霧ノズル131が、微粒化のために動力を必要とせず、省エネルギーで、かつ、メンテナンスが容易であるという観点から好ましい。市販の噴霧ノズル131の具体例としては、例えば、商品名:スパイラルジェットスプレーノズル[スプレーイングシステムスジャパン社製]、商品名:フルジェットスプレーノズル[スプレーイングシステムスジャパン社製]、商品名:空円錐ノズルAAPシリーズ[いけうち社製]、商品名:充円錐ノズルAJPシリーズ[いけうち社製]等が挙げられる。また、それ以外の微粒化手段としては、例えば、噴射弁のように圧力エネルギーにより微粒化するもの、2流体ノズルのように気体エネルギーにより微粒化するもの、回転噴孔や回転円盤のように遠心力により微粒化するもの、ノズル振動や超音波などの振動エネルギーにより微粒化するもの等が挙げられる。噴霧ノズル131は、フルコーンタイプのものであってもよく、また、ホロコーンタイプのものであってもよい。液体の供給面積は例えば0.1〜50000mm
2である。
【0053】
下側ベッセル112の下部(底部)には、排出ポンプ141が介設された液体排出管126が接続されている。下側ベッセル112の容量は例えば1〜10000Lである。
【0054】
ここで、液体の冷却を連続式で実施する場合には、排出ポンプ141のNPSHre(必要有効吸込ヘッド)よりもNPSHavを大きくしてキャビテーションを防止し、そして、排出流量を制御して冷却した液体の液面を液体排出管126内乃至下側ベッセル112内に維持できるように、下側ベッセル112と排出ポンプ141との間の液体排出管126の部分が十分な長さを有することが好ましい。このとき液体の液面検出器として用いることができるものとしては、例えば、差圧式レベル計、超音波レベル計、レーダーレベル計等が挙げられる。また、液体の冷却を回分式又は半回分式で実施する場合には、必ずしも液体排出管126が下側ベッセル112の下部(底部)に接続されていなくてもよい。
【0055】
連結配管113は、例えば、長さが50〜10000mm、及び内径が10〜1000mmである。
【0056】
なお、この冷却装置100には、装置内の液体を保温するための温水ジャケットや電気トレース等の保温手段が設けられていてもよい。
【0057】
この冷却装置100を用いた本実施形態に係る液体の冷却方法では、液体供給管121を介して噴霧ノズル131から液体が上側ベッセル111に供給される。そして、上側ベッセル111内に供給された液体は、気体排出管123介して気体が排出されて揮発成分の飽和蒸気圧以下の圧力雰囲気の冷却場とされた上側ベッセル111内において、揮発成分の飽和蒸気圧となる温度、つまり、その圧力での沸点まで冷却される。また、本実施形態に係る液体の冷却方法では、揮発成分の飽和蒸気圧以下の圧力雰囲気の冷却場とされた上側ベッセル111内に供給される液体の飛翔距離を下記式(I)で表される液体の初速度で除した値で定義する滞空時間を0.030秒以上とする。
【0058】
液体の初速度=液体の供給時の体積流量/液体の供給面積 (I)
ここで、滞空時間が0.030秒以上である液体の飛翔距離は、上記圧力雰囲気の冷却場を区画する上側ベッセル111内において、液体が噴霧ノズル131から供給されて上側ベッセル111の内壁に接触するまでの飛翔距離(I)を含んでいてもよい。
【0059】
この飛翔距離(I)は、
図2(a)に示すように、例えば噴霧口が下向きになるように設けられた噴霧ノズル131から液体をホローコーン状に斜め下方に噴霧する場合、液体を噴霧する噴霧ノズル131の噴霧口から液体が接触する上側ベッセル111の内壁までの直線距離L(I)である。
【0060】
また、滞空時間が0.030秒以上である液体の飛翔距離は、上記圧力雰囲気を区画する上側ベッセル111内において、液体が噴霧ノズル131から供給されて上側ベッセル111内に貯留された冷却後の液体に接触するまでの飛翔距離(II)を含んでいてもよい。
【0061】
この飛翔距離(II)は、
図2(b)に示すように、例えば噴霧口が下向きになるように設けられた噴霧ノズル131から液体をホローコーン状に斜め下方に噴霧する場合、液体を噴霧する噴霧ノズル131の噴霧口から上側ベッセル111内に貯留された冷却後の液体の液面までの直線距離L(II)である。
【0062】
さらに、滞空時間が0.030秒以上である液体の飛翔距離は、上記圧力雰囲気を区画する上側ベッセル111内において、液体が噴霧ノズル131から供給されて上側ベッセル111内を飛翔する他の液体に接触するまでの飛翔距離(III)を含んでいてもよい。
【0063】
この飛翔距離(III)は、
図2(c)に示すように、例えば、各々、噴霧口が下向きになるように設けられた複数の噴霧ノズル131のそれぞれから液体をホローコーン状に斜め下方に噴霧する場合、液体を噴霧する噴霧ノズル131の噴霧口から上側ベッセル111内における液体の衝突点までの直線距離L(III)である。
【0064】
上側ベッセル111内に供給される液体の飛翔距離は、液体の全て、従って、100体積%が均一であってもよく、また、長短の分布を有していてもよいが、本実施形態に係る液体の冷却方法では、上側ベッセル111内に供給される液体の少なくとも30体積%以上において、その滞空時間を0.030秒以上とする。
【0065】
なお、本実施形態に係る液体の冷却方法に使用可能な冷却装置としては、
図1に示す構成のものに限定されず、少なくともベッセル(冷却槽)、並びに、各々、それに接続された液体供給部、及び気体排出部を備えた構成であればよい。
【0066】
(アニオン界面活性剤水溶液の製造方法)
本実施形態に係るアニオン界面活性剤の製造方法は、アニオン界面活性剤の酸前駆体とアルカリとを中和反応させることにより得られたアニオン界面活性剤水溶液を、揮発成分を水、及び界面活性剤をアニオン界面活性剤として、本実施形態に係る液体の冷却方法により冷却するものである。
【0067】
以下、本実施形態に係るアニオン界面活性剤の製造方法について、アニオン界面活性剤水溶液を循環させて連続式でアニオン界面活性剤を製造する方法を説明する。なお、本実施形態に係るアニオン界面活性剤の製造方法は、これに限定されるものではなく、回分式や半回分式の方法であってもよい。
【0068】
図3は、本実施形態に係るアニオン界面活性剤の製造に使用可能な中和装置200の一例を示す。
【0069】
この中和装置200は、循環路210とそれに介設された循環ポンプ220とを備えている。この循環路210にはアニオン界面活性剤水溶液が満たされ、循環ポンプ220は、そのアニオン界面活性剤水溶液を送液して循環路210を循環させる。
【0070】
循環路210における循環ポンプ220の下流側には原料混合器230が介設されている。この原料混合器230には、原料であるアニオン界面活性剤の酸前駆体を供給する酸供給管231及びアルカリを供給するアルカリ供給管232が接続されている。原料混合器230は、連続式のものであれば特に限定されるものではなく、駆動式のものでもよく、また、スタティック式のものでもよい。これらのうち、圧力損失が小さく、混合を充分に行うためには、駆動式のものの方が好ましい。この原料混合器230は、酸供給管231からのアニオン界面活性剤の酸前駆体及びアルカリ供給管232からのアルカリを、循環路210を循環するアニオン界面活性剤水溶液と共に混合して中和反応させ、それを再び循環路210に連続供給する。従って、これらの原料混合器230、酸供給管231、及びアルカリ供給管232が材料供給部を構成する。
【0071】
循環路210における原料混合器230の下流側で且つ循環ポンプ220の上流側には除熱冷却器240が介設されている。除熱冷却器240から循環ポンプ220までのエレベーションはNPSHavが循環ポンプ220のNPSHre以上になるように設計される。除熱冷却器240は、循環路210が槽上部及び槽下部にそれぞれ接続された冷却槽241を有し、冷却槽241内の上方部には噴霧ノズル242が設けられており、その噴霧ノズル242は槽上部に接続された循環路210から延びた管の先端に取り付けられている。また、冷却槽241の槽上部(天板)には図示しない真空ポンプから延びる気体排出管243が接続されている。この除熱冷却器240は、気体排出管243から排気して水の飽和蒸気圧以下の圧力雰囲気とした冷却槽241内に、噴霧ノズル242からアニオン界面活性剤水溶液を噴霧し、アニオン界面活性剤水溶液に含まれる水の少なくとも一部を気化させることにより、アニオン界面活性剤水溶液を冷却する。従って、この除熱冷却器240が冷却部を構成する。
【0072】
循環路210における除熱冷却器240及び循環ポンプ220の下流側で且つ材料混合器の上流側には製品回収管250が接続されている。製品回収管250は、循環路210を循環するアニオン界面活性剤水溶液から一部分を製品として連続回収する。従って、この製品回収管250が回収部を構成する。
【0073】
この中和装置200を用いた本実施形態に係るアニオン界面活性剤の製造方法では、循環路210には循環ポンプ220の送液によってアニオン界面活性剤水溶液が循環する。
【0074】
ここで、循環路210を循環させるアニオン界面活性剤水溶液の流量は例えば0.01〜100ton/hr(体積流量0.000003〜0.03m
3/s)である。循環路210でのアニオン界面活性剤水溶液の温度は、特に限定されるものではないが、粘度を下げて流動性を高める観点から、0℃以上であることが好ましく、20℃以上であることが好ましい。一方、分解を抑制する観点からは150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることが好ましい。
【0075】
原料混合器230では、酸供給管231からアニオン界面活性剤の酸前駆体及びアルカリ供給管232からアルカリがそれぞれ連続供給され、それらは原料混合器230において循環路210を循環するアニオン界面活性剤水溶液と共に混合されて再び循環路210に連続供給される。
【0076】
ここで、アニオン界面活性剤の酸前駆体としては、例えば、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルなどの硫酸エステル;アルキルベンゼンスルホン酸などのスルホン酸;カルボン酸;リン酸エステル等が挙げられる。酸前駆体は、単一種だけで構成してもよく、また、複数種で構成してもよい。複数種で構成する場合には、複数種の酸前駆体を予め混合して原料混合器230に供給してもよく、また、複数種の酸前駆体をそれぞれ原料混合器230に供給してそこで混合してもよい。
【0077】
アルカリとしては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムなどのアルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物;アンモニア;モノ、ジ、トリアルカノールアミン;1級、2級、3級アルキルアミン等が挙げられる。アルカリは、単一種だけで構成してもよく、また、複数種で構成してもよい。複数種で構成する場合には、複数種のアルカリを予め混合して原料混合器230に供給してもよく、また、複数種のアルカリをそれぞれ原料混合器230に供給してそこで混合してもよい。アルカリは水溶液として供給してもよく、その場合の濃度は、アニオン界面活性剤が流動性を示せば特に限定されるものではないが、例えば0.1〜90質量%である。
【0078】
酸前駆体とアルカリとの混合比は、酸の中和を完結させる観点から、酸前駆体に対してアルカリが1モル等量以上となるようにすることが好ましい。
【0079】
原料混合器230には、酸前駆体及びアルカリ以外の成分が供給され、それが循環路210を循環するアニオン界面活性剤水溶液に供給されてもよい。かかる成分としては、例えば、濃度調整用の水、pH緩衝剤、粘度調整剤等が挙げられる。pH緩衝剤の具体例としては、例えば、炭酸ナトリウム、リン酸、クエン酸等が挙げられる。粘度調整剤の具体例としては、エタノール、PEG、PPGなどの有機溶剤や炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩等が挙げられる。
【0080】
除熱冷却器240では、冷却槽241内が気体排出管243から排気されて水の飽和蒸気圧以下の圧力雰囲気とされ、そこに噴霧ノズル242からアニオン界面活性剤水溶液が噴霧されると、アニオン界面活性剤水溶液に含まれる水の少なくとも一部が気化することにより、アニオン界面活性剤水溶液が冷却される。
【0081】
ここで、冷却条件は、上記した本実施形態に係る液体の冷却方法の条件が適用され、液体の50体積%以上において、その滞空時間が0.030秒以上とされる。冷却槽241への供給前の液体の温度は例えば0〜220℃及び常圧下での密度は例えば0.1〜2.0kg/Lである。冷却後の液体の温度は例えば−20〜200℃及び真空下での密度は例えば0.3〜2.0kg/Lである。
【0082】
製品回収管250では、循環路210を循環するアニオン界面活性剤水溶液が分岐して一部分が製品として連続回収される。
【0083】
ここで、循環倍率は、特に限定されるものではないが、循環ポンプ220の負荷を小さくし、装置内滞留量を減らして品種切替時のロスを削減する観点から、30倍以下とすることが好ましく、25倍以下とすることがより好ましい。一方、中和後の中和熱による温度上昇を抑制し、分解を抑制する観点からは、1倍以上とすることが好ましく、2倍以上とすることがより好ましい。なお、循環倍率は、製品回収管250の接続部において、アニオン界面活性剤水溶液のうち循環路210を循環する流量を製品回収管250から回収される流量で除した値として定義される。回収されるアニオン界面活性剤水溶液におけるアニオン界面活性剤の濃度は例えば0.1〜90質量%及びアニオン界面活性剤水溶液の常圧下での密度は例えば0.3〜2.0kg/Lである。
【0084】
以上に説明した本実施形態に係るアニオン界面活性剤の製造方法によれば、アニオン界面活性剤水溶液の冷却を真空除熱で行うので、熱交換器を用いて冷却する場合と比較して、装置コストを低く抑えることができると共に、装置滞留量が少なくなるため品種切換時のロスを低減することができる。また、アニオン界面活性剤水溶液の冷却の際に併せて脱泡も行われるので、別途脱泡工程を設ける必要がない。
【実施例】
【0085】
(液体の冷却)
以下の実施例1〜6及び比較例1〜3を実施した。それぞれの内容は表1及び2にも示す。
【0086】
<実施例1>
図1に示す構成の冷却装置(上側ベッセルの内径475mm、上側ベッセルの容量270L、下側ベッセルの容量420L、及び連結配管の内径160mm)において、2本の液体供給管のそれぞれの先端に噴霧ノズルC[スプレーイングシステムスジャパン社製、商品名:スパイラルジェットB3/8HHSJ−SS12030]を取り付けた。そして、各液体供給管から噴霧ノズルCを介して温度75.7℃のアルキル硫酸ナトリウム水溶液[花王社製、商品名:エマール 2FDH、ペースト状、濃度65質量%、密度1.08kg/L](以下、「AS」という)を上側ベッセル内に2.7ton/hr(ノズル1本あたりの液体の体積流量:0.00035m
3/s)の流量で供給した。また、上側ベッセルの気体排出管から排気し、上側ベッセル、連結配管、及び下側ベッセルを20.0kPaの圧力雰囲気に保持した。運転時間は5.4分とした。
【0087】
その結果、下側ベッセルに貯留したASの真空下における密度は0.81kg/L、及び温度は59.7℃であった。また、真空ブレイク後、常圧下における密度は1.08kg/Lであった。
【0088】
ここで、噴霧ノズルの噴霧角度は120°及び上側ベッセルの内径475mmであることから、ASの100体積%について、飛翔距離は0.274mと算出された。そして、ASの噴出速度(初速度)は5.0m/sと算出され、飛翔距離をこの噴出速度で除した滞空時間は0.055秒と算出された。ASの噴出速度は、ASの体積流量をASの供給面積で除して算出した。噴霧ノズルCは、
図4に示すように、先端部分が下方に向かって縮径しつつ螺旋状に延びるように形成され、その隙間から液体を噴霧するように構成されているが、ASの噴霧がホローコーン状になされたことから、ASの供給面積として、基端側の一周分の隙間の開口面積を採用した。なお、噴霧ノズルCの開口面積の基端側の始点での外径Dは5.5mm、終点での外径dは4.7mm、及び幅δは4.4mmであり、その面積を0.000070m
2と算出した。
【0089】
なお、真空下における液体の密度は、排出ポンプを介して液体排出管から排出される液体の質量を測定し、また、真空ブレイク後の下側ベッセルの壁面に付着した液体の付着レベルから体積を算出し、そして、質量を体積で除することにより求めた。
【0090】
<実施例2>
図1に示す構成の冷却装置(上側ベッセルの内径800mm、上側ベッセルの容量360L、下側ベッセルの容量420L、及び連結配管の内径160mm)において、2本の液体供給管のうち上側の方の先端に噴霧ノズルA[スプレーイングシステムスジャパン社製、商品名:スパイラルジェットB3/8HHSJ−SS6030]を取り付けた。そして、液体供給管から噴霧ノズルAを介して温度77.8℃のASを上側ベッセル内に1.0ton/hr(ノズル1本あたりの液体の体積流量:0.00026m
3/s)の流量で供給した。また、上側ベッセルの気体排出管から排気し、上側ベッセル、連結配管、及び下側ベッセルを20.0kPaの圧力雰囲気に保持した。運転時間は12.4分とした。
【0091】
その結果、下側ベッセルに貯留したASの真空下における密度は0.88kg/L、及び温度は62.2℃であった。
【0092】
ここで、噴霧ノズルの噴霧角度は60°及び上側ベッセルの内径800mmであることから、ASの100体積%について、飛翔距離は0.800mと算出された。そして、ASの噴出速度(初速度)は3.9m/sと算出され、飛翔距離をこの噴出速度で除した滞空時間は0.205秒と算出された。ASの噴出速度及びASの供給面積は、実施例1と同様にして求めた。なお、噴霧ノズルAの開口面積の基端側の始点での外径Dは5.1mm、終点での外径dは4.3mm、及び幅δは4.5mmであり、その面積を0.000066m
2と算出した。
【0093】
<実施例3>
図1に示す構成の冷却装置(上側ベッセルの内径800mm、上側ベッセルの容量360L、下側ベッセルの容量420L、及び連結配管の内径160mm)において、2本の液体供給管のうち上側の方の先端に噴霧ノズルB[スプレーイングシステムスジャパン社製、商品名:スパイラルジェットB3/4HHSJ−SS60210]を取り付けた。そして、液体供給管から噴霧ノズルBを介して温度80.2℃のASを上側ベッセル内に5.3ton/hr(ノズル1本あたりの液体の体積流量:0.00135m
3/s)の流量で供給した。また、上側ベッセルの気体排出管から排気し、上側ベッセル、連結配管、及び下側ベッセルを20.0kPaの圧力雰囲気に保持した。運転時間は3.8分とした。
【0094】
その結果、下側ベッセルに貯留したASの真空下における密度は0.84kg/L、及び温度は62.8℃であった。
【0095】
ここで、飛翔距離は、実施例2と同様、ASの100体積%について0.800mと算出された。そして、ASの噴出速度(初速度)は5.7m/sと算出され、飛翔距離をこの噴出速度で除した滞空時間は0.140秒と算出された。ASの噴出速度及びASの供給面積は、実施例1と同様にして求めた。なお、噴霧ノズルBの開口面積の基端側の始点での外径Dは14mm、終点での外径dは9mm、及び幅δは6.6mmであり、その面積を0.000238m
2と算出した。
【0096】
<実施例4>
図5(a)及び(b)は実施例4で用いた冷却装置の上側ベッセルを示す。なお、符号が示す名称は上記実施形態に準じる。
【0097】
この上側ベッセル111は、上部が内径475mmの円筒状に形成されていると共に下部が下方に行くに従って縮径した円錐状に形成されている。上側ベッセル111の容量は120Lである。
【0098】
上側ベッセル111の天板には3つの噴霧ノズルA131が取り付けられている。それらの3つの噴霧ノズルA131は、直径475mmの天板の中心を重心とする一辺151mmの正三角形の3つの頂点位置にノズル中心が位置付けられるように配置され、それぞれ噴霧口が下方を向くように設けられている。従って、天板中心を基準として、3つの噴霧ノズルA131は、周方向に120°の角度を有するように間隔をおいて設けられた構成となっている。なお、相互に隣接する噴霧ノズルA131の外側間の距離は174mm、及び各噴霧ノズルA131のノズル中心から上側ベッセル111の内壁までの最短距離は151mmである。また、各噴霧ノズルA131は図示しない液体供給管に接続されている。
【0099】
このような上側ベッセル111を備えた冷却装置(下側ベッセルの容量420L、及び連結配管の内径160mm)において、液体供給管から噴霧ノズルA131を介して温度75.3℃のASを上側ベッセル111内に2.9ton/hr(ノズル1本あたりの液体の体積流量:0.00025m
3/s)の流量で供給した。また、上側ベッセル111の気体排出管から排気し、上側ベッセル111、連結配管、及び下側ベッセルを20.0kPaの圧力雰囲気に保持した。運転時間は6.5分とした。
【0100】
その結果、下側ベッセルに貯留したASの真空下における密度は0.75kg/L、及び温度は59.8℃であった。
【0101】
ここで、噴霧ノズルA131の噴霧角度は60°及びノズル間距離151mmであることから、飛翔距離は、噴霧ノズルA131から噴霧されたAS同士が接触するときの最小値が0.151mで、また、噴霧ノズルA131から噴霧されたASが上側ベッセル111の内壁に接触するときが0.301mmであり、従って、ASの100体積%について、飛翔距離は0.151m以上と算出された。そして、ASの噴出速度(初速度)は3.8m/sと算出され、飛翔距離をこの噴出速度で除した滞空時間は0.040秒と算出された。ASの噴出速度及びASの供給面積は、実施例2と同様にして求めた。
【0102】
<比較例1>
図1に示す構成の冷却装置(上側ベッセルの内径475mm、上側ベッセルの容量270L、下側ベッセルの容量420L、及び連結配管の内径160mm)において、2本の液体供給管のうち上側の方の先端に噴霧ノズルC[スプレーイングシステムスジャパン社製、商品名:スパイラルジェットB3/8HHSJ−SS12030]を取り付けた。そして、液体供給管から噴霧ノズルCを介して温度72.8℃のASを上側ベッセル内に3.0ton/hr(ノズル1本あたりの液体の体積流量:0.00077m
3/s)の流量で供給した。また、上側ベッセルの気体排出管から排気し、上側ベッセル、連結配管、及び下側ベッセルを20.0kPaの圧力雰囲気に保持した。運転時間は15.7分とした。
【0103】
その結果、下側ベッセルに貯留したASの真空下における密度は0.17kg/L、及び温度は60.7℃であった。
【0104】
ここで、飛翔距離は、実施例1と同様、ASの100体積%について0.274mと算出された。そして、ASの噴出速度(初速度)は11.0m/sと算出され、飛翔距離をこの噴出速度で除した滞空時間は0.025秒と算出された。ASの噴出速度及びASの供給面積も実施例1と同様にして求めた。
【0105】
<実施例5>
図1に示す構成の冷却装置(上側ベッセルの内径475mm、上側ベッセルの容量270L、下側ベッセルの容量420L、及び連結配管の内径160mm)において、2本の液体供給管のそれぞれの先端に噴霧ノズルD[スプレーイングシステムスジャパン社製、商品名:スパイラルジェットB1/2HHSJ−SS60120]を取り付けた。そして、液体供給管から噴霧ノズルDを介して温度77.2℃のASが泡噛みした密度0.61kg/Lの流体(以下、「泡噛みAS」という。)を上側ベッセル内に3.7ton/hr(ノズル1本あたりの液体の体積流量:0.00083m
3/s)の流量で供給した。また、上側ベッセルの気体排出管から排気し、上側ベッセル、連結配管、及び下側ベッセルを20.0kPaの圧力雰囲気に保持した。運転時間は4.4分とした。
【0106】
その結果、下側ベッセルに貯留したASの真空下における密度は0.75kg/L、及び温度は60.1℃であった。
【0107】
ここで、噴霧ノズルの噴霧角度は60°及び上側ベッセルの内径475mmであることから、泡噛みASの100体積%について、飛翔距離は0.475mと算出された。そして、泡噛みASの噴出速度(初速度)は4.6m/sと算出され、飛翔距離をこの噴出速度で除した滞空時間は0.103秒と算出された。泡噛みASの噴出速度及び泡噛みASの供給面積は実施例1と同様にして求めた。なお、噴霧ノズルDの開口面積の基端側の始点での外径Dは9.2mm、終点での外径dは7.6mm、及び幅δは6.9mmであり、その面積を0.000182m
2と算出した。
【0108】
<実施例6>
実施例5で用いたのと同じ冷却装置を構成した。そして、液体供給管から噴霧ノズルDを介して温度67.5℃の泡噛みASを上側ベッセル内に4.2ton/hr(ノズル1本あたりの液体の体積流量:0.00094m
3/s)の流量で供給した。また、上側ベッセル、連結配管、及び下側ベッセルを20.0kPaの圧力雰囲気に保持した。運転時間は3.7分とした。
【0109】
その結果、下側ベッセルに貯留したASの真空下における密度は0.40kg/L、及び温度は61.6℃であった。
【0110】
ここで、飛翔距離は、実施例5と同様、泡噛みASの100体積%について0.475mと算出された。そして、泡噛みASの噴出速度(初速度)は5.2m/sと算出され、飛翔距離をこの噴出速度で除した滞空時間は0.091秒と算出された。泡噛みASの噴出速度及び泡噛みASの供給面積も実施例5と同様にして求めた。
【0111】
<比較例2>
比較例1で用いたのと同じ冷却装置を構成した。そして、液体供給管から噴霧ノズルCを介して温度74.0℃の泡噛みASを上側ベッセル内に3.0ton/hr(ノズル1本あたりの液体の体積流量:0.00137m
3/s)の流量で供給した。また、上側ベッセル、連結配管、及び下側ベッセルを20.0kPaの圧力雰囲気に保持した。運転時間は5.1分とした。
【0112】
その結果、下側ベッセルに貯留したASの真空下における密度は0.17kg/L、及び温度は60.5℃であった。
【0113】
ここで、飛翔距離は、比較例1と同様、泡噛みASの100体積%について0.274mと算出された。そして、泡噛みASの噴出速度(初速度)は19.6m/sと算出され、飛翔距離をこの噴出速度で除した滞空時間は0.014秒と算出された。泡噛みASの噴出速度及び泡噛みASの供給面積も比較例1と同様にして求めた。
【0114】
<比較例3>
図1に示す構成の冷却装置(上側ベッセルの内径475mm、上側ベッセルの容量120L、下側ベッセルの容量420L、及び連結配管の内径160mm)において、2本の液体供給管のうち上側の方の先端に噴霧ノズルの代わりに分散盤を取り付けた。そして、液体供給管から分散盤を介して温度75.2℃の泡噛みASを上側ベッセル内に1.0ton/hr(ノズル1本あたりの液体の体積流量:0.00046m
3/s)の流量で供給した。また、上側ベッセル、連結配管、及び下側ベッセルを20.0kPaの圧力雰囲気に保持した。運転時間は5.0分とした。
【0115】
その結果、下側ベッセルに貯留したASの真空下における密度は0.16kg/L、及び温度は57.3℃であった。
【0116】
ここで、飛翔距離は泡噛みASの100体積%について0.130mであった。そして、泡噛みASの噴出速度(初速度)は19.1m/sと算出され、飛翔距離をこの噴出速度で除した滞空時間は0.007秒と算出された。泡噛みASの噴出速度は、泡噛みASの体積流量を泡噛みASの供給面積、つまり、分散盤の噴出口の面積で除して算出した。なお、その面積は0.000024m
2であった。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
(アニオン界面活性剤の製造)
図3に示す構成の中和装置を用いてアルキル硫酸ナトリウム(アニオン界面活性剤)の製造を行った。冷却槽内には噴霧ノズルE[スプレーイングシステムスジャパン社製、商品名:スパイラルジェットB1/2HHSJ−316L60120]を取り付けた。
【0120】
原料供給部に、アルキル硫酸エステル(アニオン界面活性剤の酸前駆体)、27.0質量%水酸化ナトリウム水溶液(アルカリ)、及び20.0質量%炭酸ナトリウム水溶液(緩衝剤)を、製品回収管から回収するアルキル硫酸ナトリウム水溶液1質量部に対して、それぞれ0.63質量部、0.34質量部、及び0.10質量部の割合となるように供給した。冷却槽内は、気体排出管からの排気により冷却槽内を20.0kPaの圧力雰囲気に保持した。冷却槽へのASの供給流量は噴霧ノズル1本あたり3.0ton/hr(体積流量:0.00078m
3/s)とした。循環倍率は4.2倍とした。
【0121】
ここで、アルキル硫酸ナトリウム水溶液の100体積%について飛翔距離が0.470m以上と算出された。そして、アルキル硫酸ナトリウム水溶液の噴出速度(初速度)は4.3m/sと算出され、飛翔距離をこの噴出速度で除した滞空時間は0.109秒以上と算出された。
【0122】
なお、噴霧ノズルEの開口面積の基端側の始点での外径Dは9.2mm、終点での外径dは7.6mm、及び幅δは6.9mmであり、その面積を0.000182m
2と算出した。
【0123】
このアルキル硫酸ナトリウムの製造において、冷却槽の上流側でのアルキル硫酸ナトリウム水溶液の温度は74.2℃及び密度は1.07kg/L(常圧下)であった。冷却槽の下流側でのアルキル硫酸ナトリウム水溶液の温度は62.8℃及び密度は0.80kg/L(真空下)であった。製品回収管から回収されたアルキル硫酸ナトリウム水溶液のアルキル硫酸ナトリウム濃度は65.0質量%及び密度は1.07kg/L(常圧下)であった。