特許第6081713号(P6081713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6081713塩粒を煎餅に付着させる接着剤、塩粒つき煎餅製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081713
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】塩粒を煎餅に付着させる接着剤、塩粒つき煎餅製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/48 20060101AFI20170206BHJP
   A23G 3/50 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   A23G3/00 104
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-97136(P2012-97136)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-223447(P2013-223447A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】595105401
【氏名又は名称】株式会社マスヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100103506
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 弘晋
(72)【発明者】
【氏名】稲場 信
【審査官】 市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭54−006625(JP,B1)
【文献】 特開2005−341923(JP,A)
【文献】 特開平08−163960(JP,A)
【文献】 特開昭58−028231(JP,A)
【文献】 特開平03−047040(JP,A)
【文献】 特開平03−098538(JP,A)
【文献】 特開平04−200350(JP,A)
【文献】 特開平03−172146(JP,A)
【文献】 特開平03−035760(JP,A)
【文献】 特開昭60−118151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00−9/30
CAplus/FROSTI/FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩粒を煎餅表面に付着させるための接着剤であって、
デキストロース当量(DE:Dextrose Equivalent)が18である還元澱粉分解物と水からなり、
前記接着剤全体を100重量%とするとき、前記還元澱粉分解物を68.6重量%〜79.1重量%の範囲で含有することを特徴とする塩粒を煎餅に付着させるための接着剤。
【請求項2】
前記塩粒は、粒径が0.25mm〜1.7mmであることを特徴とする請求項1に記載の塩粒を煎餅に付着させるための接着剤。
【請求項3】
前記煎餅表面は、C型粘度計による測定値が40cPであるなたね油が塗布された面であることを特徴とする請求項1または2に記載の塩粒を煎餅に付着させるための接着剤。
【請求項4】
前記接着剤全体を100重量%とするとき、前記還元澱粉分解物を68.6重量%で含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の塩粒を煎餅に付着させるための接着剤。
【請求項5】
デキストロース当量(DE:Dextrose Equivalent)が18である還元澱粉分解物と水からなる接着剤であって、前記接着剤全体を100重量%とするとき、前記還元澱粉分解物を68.6重量%〜79.1重量%の範囲で含有する接着剤を調製し、
塩粒の貼り付け対象である煎餅表面に前記接着剤を塗布し、
前記接着剤を介して前記煎餅表面に前記塩粒を付着させる、
ことを特徴とする塩粒つき煎餅製造方法。
【請求項6】
前記塩粒は、粒径が0.25mm〜1.7mmであることを特徴とする請求項5に記載の塩粒つき煎餅製造方法。
【請求項7】
C型粘度計による測定値が40cPであるなたね油を煎餅に塗布し、
前記なたね油が塗布された前記煎餅表面に前記接着剤を塗布することを特徴とする請求項5または6に記載の塩粒つき煎餅製造方法。
【請求項8】
前記接着剤は、前記接着剤全体を100重量%とするとき、前記還元澱粉分解物を68.6重量%で含有することを特徴とする請求項5から7のいずれか一つに記載の塩粒つき煎餅製造方法。
【請求項9】
煎餅を前記接着剤に浸漬することにより、前記煎餅表面に前記接着剤を塗布することを特徴とする請求項5から8のいずれか一つに記載の塩粒つき煎餅製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煎餅表面に比較的粒径の大きい塩粒を付着させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるサラダ煎餅のように、表面に粒径の小さい粉状の塩が振り掛けられた煎餅が提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
粒径が小さい塩粒の場合であれば、煎餅表面に塗布される油自体の弱い固着力によっても塩粒を煎餅表面に付着させることができるが、ザラメ煎餅のように粒径が大きい塩粒を煎餅表面に貼り付けようとする場合、塩粒自体が外力を受け易くなる等の要因から、煎餅表面が大粒の塩粒を固着できるだけの十分な粘着力を有している必要がある。また、ザラメの場合、ザラメ自体のべたつきによって付着する性質を有するが、塩粒の場合、べたついて煎餅表面に付着することはない。
【0004】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、貼り付け対象となる煎餅の本来の風味を損なうことなく、粒径の大きい塩粒でも、煎餅表面に十分な強度で貼り付けることのできる接着技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、塩粒を煎餅表面に付着させるための接着剤であって、還元澱粉分解物と水とを混合して得られる接着剤全体を100重量%とするとき、デキストロース当量(DE:Dextrose Equivalent)が18である還元澱粉分解物を90重量%〜50重量%の範囲で含有する接着剤に関する。
【0006】
また、本発明の一態様は、塩粒を煎餅表面に付着させるための接着剤であって、還元澱粉分解物と水とを混合して得られる接着剤全体を100重量%とするとき、デキストロース当量(DE:Dextrose Equivalent)が18である還元澱粉分解物を87重量%〜68.6重量%の範囲で含有する接着剤に関する。
【0007】
また、本発明の一態様は、塩粒を煎餅表面に付着させるための接着剤であって、還元澱粉分解物と水とを混合して得られる接着剤全体を100重量%とするとき、デキストロース当量(DE:Dextrose Equivalent)が18である還元澱粉分解物を68.6重量%含有する接着剤に関する。
【発明の効果】
【0008】
以上に詳述したように、本発明によれば、貼り付け対象となる煎餅の本来の風味を損なうことなく、粒径の大きい塩粒でも、煎餅表面に十分な強度で貼り付けることのできる接着技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態による煎餅製造方法を実現するための煎餅製造システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態による煎餅製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図3】接着剤付け工程の一例を示す概念図である。
図4】煎餅製造方法によって製造される塩粒つき煎餅の概略構成を示す概略断面図である。
図5】実施例に係る煎餅製造方法にて用いられる接着剤の最適成分比を求めるために行った検証実験の結果である
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態による接着剤を用いた煎餅製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態による煎餅製造方法を実現するための煎餅製造システムの概略構成を示す図である。
【0012】
煎餅製造システムは、例えば、洗米機1、圧偏機2、蒸練機3、水冷機4、練り機5、型抜き機6、第1乾燥機7、寝かせ機8、第2乾燥機9、焼成機10、油付け機11、接着剤付け機12、塩粒付け機13、乾燥機14、などを備えている。
【0013】
以下、本発明の実施の形態による煎餅製造方法の処理の流れについて説明する。図2は、本発明の実施の形態による煎餅製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、煎餅として、いわゆるサラダ煎餅の製造方法を示している。
【0014】
「洗米工程」において、洗米機1を用いて、原料であるうるち米を洗う(S101)。
【0015】
次に、「圧偏工程」において、圧偏機2を用いて、洗米されたうるち米を押しつぶして粉状にする(S102)。
【0016】
続いて、「蒸練工程」において、蒸練機3を用いて、粉状となったうるち米を蒸して糊化(アルファ化)させ、練る(S103)。
【0017】
「水冷工程」において、水冷機4を用いて、練られてもち状となった原料を水に通し、水冷する(S104)。この水冷工程により、原料にある程度の硬度をもたせ、後の成型作業のために成型性を高める。
【0018】
「練り工程」において、練り機5を用いて、水冷された原料を十分に練る(S105)。この練り工程により、水冷工程によって主に表面が冷却されることで表面付近が硬くなった原料を再度よく練り、原料中の硬さのバラツキを均一化する。
【0019】
「型抜き工程」において、練り工程によって練られて均一な硬度を有する原料を、型抜き機6を用いて、所望の煎餅形状(例えば円形やおむすび形状など)に型抜きする(S106)。以下、型抜きにより成型されたものを「成型物」と称する。
【0020】
「第1乾燥工程」において、第1乾燥機7を用いて、型抜きした成型物を熱風乾燥し、成型物に含まれる水分を減らす(S107)。
【0021】
次に、「寝かせ工程」において、寝かせ機8を用いて、第1乾燥工程で水分を減らした成型物内の水分を均一化させる(S108)。第1乾燥工程で乾燥されるのは、主に成型物の表面付近であるため、成型物全体としての焼きムラの発生や、第2乾燥工程における水分の分布のバラツキの拡大を防ぐために、一旦寝かせて水分を成型物全体に均一に行きわたらせる。
【0022】
「第2乾燥工程」において、第2乾燥機9を用いて、寝かせた成型物をさらに乾燥させる(S109)。これにより、成型物は、次の焼成工程を経ることでサクサクとしたサラダ煎餅としての食感を実現できるような、理想的な水分含有率となる。
【0023】
「焼成工程」において、焼成機10を用いて、第2乾燥工程を経た成型物を焼く(S110)。
【0024】
「油付け工程」において、油付け機11を用いて、食用なたね油(キャノーラ油)を塗布する(S111)。この油付け工程が完了した段階で、例えば亀田製菓株式会社の「ソフトサラダ(登録商標)」と同様な食感と味を有する基材としての煎餅が出来上がる。なお、ここで使用するなたね油の40(℃)での粘度を測定したところ、40[Cp]であった。本実施の形態による煎餅製造方法では、この基材としての煎餅の表面に、本実施の形態による接着剤を塗布し、この接着剤により基材としての煎餅の表面に塩粒を貼着させる。この油付け工程も、たとえば、後述の図3に示すような構成により実現することが可能である。
【0025】
「接着剤付け工程」において、接着剤付け機12を用いて、油付けを施された成型物の表面に本発明による接着剤を均一に塗布する(S112)。図3は、接着剤付け工程の一例を示す概念図である。
【0026】
図3に示すように、本実施の形態における接着剤付け機12は、ざる12aと接着剤槽12bを備えている。ざる12aは、不図示の駆動機構により上下動可能となっており、当該上下動によって接着剤槽の中に沈み込むことが可能となっている。
【0027】
接着剤付け機12の動作としては、(1)浸漬前、(2)浸漬中、(3)引き上げ、の3工程がある。(1)浸漬前は、ざる12a内に油付け工程まで完了している煎餅が収容される。
【0028】
(2)浸漬中では、ざる12a内に収容された煎餅が、接着剤槽12b内に満たされている接着剤に徐々に沈みこんでゆき、最終的には対象とする煎餅すべてが接着剤中に浸漬される。
【0029】
そして、(3)引き上げ工程において、接着剤中に十分に浸漬された煎餅を接着槽12b内の接着剤から引き上げる。この段階で、引き上げられた各煎餅の表面には、均一に接着剤が塗布された状態となる。
【0030】
そして、「塩粒付け工程」において、塩粒付け機13を用いて、接着剤が表面に塗布された煎餅表面に、塩粒を付着させる(S113)。具体的に、ここで接着剤を介して煎餅表面に貼り付ける塩粒は、粒径0.25mm〜1.7mmを使用している。この塩粒の平均粒径は0.5[mm]である。なお、本発明において煎餅表面への貼り付け対象となる塩粒の粒径および平均粒径の測定は、塩事業センター海水総合研究所にて、8種類のメッシュ(1700μmを超える、1000μmを超え1700μm以下、710μmを超え1000μm以下、500μmを超え710μm以下、355μmを超え500μm以下、250μmを超え355μm以下、150μmを超え250μm以下、150μm以下)の通過率を判定する「ふるい分け法」により行った。
【0031】
「最終乾燥工程」において、乾燥機14を用いて、塩粒が付着した煎餅を熱風乾燥させる(S114)。なお、ここでは、作業のスループットを考慮して乾燥工程において熱風乾燥を採用した構成を例示したが、これに限られるものではなく、例えば自然乾燥とすることもできる。
【0032】
図4は、上述した煎餅製造方法によって製造される塩粒つき煎餅の概略構成を示す概略断面図である。
【0033】
図4に示すように、上述した煎餅製造方法を経て製造される塩粒つき煎餅は、成型物を焼成したのちに油付けをしてできる「煎餅基材」の表面上の油膜上に塗布された接着剤により、大粒の塩粒を煎餅表面に固着することができる。
【0034】
(検証実験)
以下、本発明の実施例に係る煎餅製造方法にて用いられる接着剤の最適成分比を求めるために行った検証実験について説明する。
【0035】
図5は、実施例に係る煎餅製造方法にて用いられる接着剤の最適成分比を求めるために行った検証実験の結果である。
【0036】
(検証実験)
前提条件として、本発明に係る煎餅製造方法にて、塩粒を煎餅表面に付着させる接着剤として採用するためには、接着剤は、以下の(1)〜(4)のすべての条件を満たす必要がある。

(1) 標準的ザラメ煎餅と同等以上の固着強度である。
貼着対象である塩粒を、煎餅表面にザラメを貼り付けて製造される標準的ザラメ煎餅と同等以上の固着強度で貼り付ける必要がある。本比較試験のために、三幸製菓製のザラメせんべい「ざら自慢(登録商標)」における煎餅表面へのザラメの固着強度を測定したところ、0.25[kgf]であった。

(2) 煎餅表面への塗りの作業性を良くするため、粘度が200[Cp]以下である。
煎餅表面に接着剤を塗る際に、煎餅表面に均一に塗れるような適度な粘度である必要がある。特に、本実施例のように、接着剤自体の自重によって浸漬後の煎餅表面に接着剤を均一に広げ、かつ不要な接着剤を滴り落とす構成(図3を参照)では、200[Cp]以下である必要がある。

(3) 煎餅表面に染込み過ぎないように、粘度が30[Cp]以上である。
煎餅表面に接着剤を塗った際に、接着剤が過剰に水っぽい(粘度が低すぎる)と煎餅表面に染込んでしまい、煎餅の食感がいわゆる「ぬれ煎餅」のようになってしまう。煎餅表面に染込みすぎて煎餅本来の軽やかなサクサクとした食感を損なうようなことがあってはならない。上述の(2)および(3)の粘度条件は、本実施例のようにざるを用いて煎餅を浸漬させて塗布する方式では、標準的に要求される粘度範囲である。また、サラダ煎餅のように特に水が染み込みやすい表面を有する煎餅の場合、本条件は特に重要となる。

(4) 接着剤を塗る際の接着剤の温度が40℃〜50℃の範囲内である。
接着剤を塗る際の接着剤の温度を、接着剤塗り作業時の煎餅表面の温度(一般に40℃〜50℃の範囲内)に近づけることにより、熱衝撃等による煎餅表面における亀裂や歪み等の不具合の発生を抑制することができる。
【0037】
なお、ここでは、還元澱粉分解物として、松谷化学工業株式会社製の還元澱粉分解物「HL−PDx」を使用した。本比較実験では、DE(Dextrose Equivalent、デキストロース当量)が、煎餅製造にて標準的に利用される「18」である還元澱粉分解物を採用した。なお、他に接着剤としての利用可能性がありそうなものに、蜜や水飴等もあるが、これらは煎餅の味に影響を与えてしまうため適さないと判断した。また、上記条件(4)に従い、還元澱粉分解物と水を混合して得られる接着剤を煎餅表面に塗布する際には、接着剤の温度が40℃〜50℃の範囲内になるようにした。
【0038】
以下、上記条件を前提として行なった比較実験の結果について説明する。
【0039】
図5に示すように、成分比率(1)〜(11)までの11通りの実験条件での実験を行なった。各条件は、具体的には以下の通りである。

成分比率(1) 還元澱粉分解物:水 = 100[g]: 0[g]
成分比率(2) 還元澱粉分解物:水 = 95[g]: 5[g]
成分比率(3) 還元澱粉分解物:水 = 90[g]: 10[g]
成分比率(4) 還元澱粉分解物:水 = 87[g]: 13[g]
成分比率(5) 還元澱粉分解物:水 =84.3[g]:15.7[g]
成分比率(6) 還元澱粉分解物:水 =79.1[g]:20.9[g]
成分比率(7) 還元澱粉分解物:水 =73.9[g]:26.1[g]
成分比率(8) 還元澱粉分解物:水 =68.6[g]:29.4[g]
成分比率(9) 還元澱粉分解物:水 = 50[g]: 50[g]
成分比率(10) 還元澱粉分解物:水 = 45[g]: 55[g]
成分比率(11) 還元澱粉分解物:水 =29.4[g]:68.6[g]
【0040】
これら成分比率(1)〜(11)の各接着剤について、

A.接着剤自体の粘度[Cp]の測定
B.各接着剤で煎餅表面に貼り付けた塩粒の煎餅表面への固着強度[kgf]の測定
C.接着剤を煎餅表面に塗った状態での一般的なサラダ煎餅の食感との比較(官能試験)

を行なった。
【0041】
なお、接着剤自体の粘度測定には、TOKYO KEIKI製のC型粘度計を使用した。また、塩粒の煎餅表面への固着強度の測定には、株式会社イマダ製のPss3k push−pull scaleを使用した。また、官能試験は、本願の出願人である株式会社マスヤの社員5名が、油付け工程までが完了した煎餅表面に各条件の接着剤を塗ったものを試食して評価した。なお、ザラメもしくは塩粒の煎餅表面への固着強度の測定は、具体的には、煎餅表面に付いた塩粒にPss3k push−pull scaleを垂直に当て塩粒が煎餅から取れた時の強度を測定した。
【0042】
上記試験の結果、成分比率(1)および(2)は、接着剤自体の粘度が200[Cp]を超えてしまい、実用できる上記条件(2)を満たさなかった(図5に示す「作業性が悪い」を参照)。
【0043】
また、成分比率(10)および(11)は、接着剤自体の粘度が30[Cp]を下回ってしまい、実用できる上記条件(3)を満たさなかった(図5に示す「煎餅に染込み過ぎる」を参照)。
【0044】
上記結果から、粘度の観点では、成分比率(3)〜(9)の各接着剤の成分比率(すなわち、還元澱粉分解物の全体に対する重量パーセントが90重量%〜50重量%である範囲)は、実用レベルを満たし、好ましい範囲であることがわかった。
【0045】
また、固着強度の観点では、成分比率(10)の接着剤の成分比率(すなわち、還元澱粉分解物の全体に対する重量パーセントが45重量%)よりも還元澱粉分解物の割合が多ければザラメ煎餅相当もしくはそれ以上の固着強度を実現できることがわかった。
【0046】
そこで、粘度の観点では実用レベルを満たすと思われる成分比率(3)〜(9)の各接着剤について、標準的なサラダ煎餅の食感との類似度の比較を官能試験により行なった。なお、本官能試験では、丸印は「一般的なサラダ煎餅の食感と同等」、バツ印は「一般的なサラダ煎餅の食感に近い」とした。また、ここでの食感の比較の基準とするサラダ煎餅は、亀田製菓株式会社の「ソフトサラダ(登録商標)」と同じもしくはこれと同等な食感を有するものを採用した。
【0047】
上記官能試験の結果、成分比率(3)および(9)は、「一般的なサラダ煎餅の食感に近い」と判定され、成分比率(4)および(5)および(6)および(7)および(8)は、「一般的なサラダ煎餅の食感と同等」と判定された。
【0048】
これにより、粘度の観点で実用レベルであると判定された成分比率(3)〜(9)の内、一般的なサラダ煎餅に近い食感を実現する、より好ましい範囲は、成分比率(4)および(5)および(6)および(7)および(8)の各接着剤の成分比率(すなわち、還元澱粉分解物の全体に対する重量パーセントが87重量%〜68.6重量%である範囲)であることが分かった。
【0049】
さらに、粘度の観点で実用レベルであると判定された成分比率(3)〜(9)の内、一般的なサラダ煎餅にきわめて近い食感を実現する、もっとも好ましい条件は、成分比率(8)の接着剤の成分比率(すなわち、還元澱粉分解物の全体に対する重量パーセントが68.6重量%)であることが分かった。
【0050】
なお、上述の実施の形態では、煎餅表面に貼りつける対象物が塩粒である場合を例示したが、これに限られるものではない。例えば、ピーナッツやアーモンド等のナッツ類、これらナッツ類の少なくともいずれかを砕いた粒、ザラメ、ゴマ、野菜を砕いた粒、香辛料の粒、魚介類を砕いた粒など、粒状の物を貼りつけ対象とすることができることは言うまでもない。もちろん、この他のものであっても、上記実施形態で示したような塩粒と同様な粒径であり、塩粒と同じような表面性状である粒を、貼りつけ可能である。
【0051】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0052】
1 洗米機、2 圧偏機、3 蒸練機、4 水冷機、5 練り機、6 型抜き機、7 第1乾燥機、8 寝かせ機、9 第2乾燥機、10 焼成機、11 油付け機、12 接着剤付け機、13 塩粒付け機、14 乾燥機。
図1
図2
図3
図4
図5