(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081822
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】金属色調光輝を呈する合成樹脂製成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20170206BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20170206BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20170206BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20170206BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
B32B27/00 104
B32B27/20 Z
B32B15/08 H
B05D7/02
B05D5/06 101A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-42740(P2013-42740)
(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公開番号】特開2014-168916(P2014-168916A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000235783
【氏名又は名称】尾池工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097607
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 覚
(72)【発明者】
【氏名】草野 貴
(72)【発明者】
【氏名】藤江 正裕
【審査官】
加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−084483(JP,A)
【文献】
特開2000−176365(JP,A)
【文献】
特開平11−290770(JP,A)
【文献】
実公昭62−177556(JP,Y1)
【文献】
特開平10−286519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B05D 5/06
B05D 7/02
B32B 15/08
B32B 27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ABS樹脂を含む所定の合成樹脂製成形体を基礎に形成される基盤層と、当該基盤層の表面上に形成されるものであって所定の金属色を呈するメッキ層と、当該メッキ層表面上に形成されるものであって、透明な合成樹脂成分からなる塗料を基礎に、その内部に微細なアルミニウム金属片を基に形成されるとともに、その平面形態が所定の平面面積を有する平滑な面からなる平板状微細金属片を無数に有するベースコート層と、当該ベースコート層の表面側に設けられるものであって透明な合成樹脂成分からなる塗料を基礎とするクリアコート層と、からなることを特徴とする金属色調光輝を呈する合成樹脂製成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車を初めとした車両に用いられる内外装品であって、表面側に金属色からなるきキラキラ感を呈する合成樹脂成形品、すなわち、金属色調の光輝を呈する合成樹脂製成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属色を呈する合成樹脂製成形体としては、例えば特開2000−159039号公報記載のものの如く、所定の合成樹脂製成形体の表面側に金属色を呈する部材、例えばクロム装飾条片を取付けること等によって形成させるようにしたものが挙げられる。または、特開2004−251868号公報記載のものの如く、所定の金属材の蒸着されたフィルムを合成樹脂製成形体の表面側に付着させることによって形成させるようにしたもの等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−159039号(特許第3366299号)公報
【特許文献2】特開2004−251868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のものにおいては、金属色を呈するフィルムの形成、更にはこのようなフィルムの合成樹脂製成形体表面への貼付作業等が必要となり、所定の金属色を呈する合成樹脂製成形体の形成には多くの時間あるいは工数(手間)を要すると言う問題点がある。このような問題点を解決するために、所定の合成樹脂製成形体を基礎に、この表面側に、金属色を呈するメッキ層を設けるとともに、その表面側に所定の金属製の微細板状片を含む透明体からなるベースコート層等を、順次単純な塗布手段にて形成させるようにした金属色調のキラキラ感を呈する合成樹脂製成形体を得ようとするのが、本発明の目的(課題)である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明においては次のような手段を講ずることとした。すなわち、請求項1記載の発明である第一の発明においては、金属色調の光輝を呈する合成樹脂製成形体に関して、ABS樹脂を含む所定の合成樹脂製成形体を基礎に形成される基盤層と、当該基盤層
の表面上に形成されるものであって
所定の金属色を呈するメッキ層と、当該メッキ層表面上に形成されるものであって、透明な合成樹脂成分からなる塗料を基礎に、その内部に微細なアルミニウム金属片を基に形成
されるとともに、その平面形態が所定の平面面積を有する平滑な面からなる平板状微細金属片を無数に有するベースコート層と、当該ベースコート層の表面側に設けられるものであって透明な合成樹脂成分からなる塗料を基礎とするクリアコート層と、からなるようにした構成を採ることとした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明である第一の発明のものにおいては、本合成樹脂製成形体の表面からは、他の独立した光源からの光の照射に対して、金属色調のキラキラ感からなる光輝が発せられることとなる。そして、このような光輝は、夜間等の暗い場所において光が照射された場合に、より強く形成されることとなり、自動車等の車両の一部に使用された場合、視認性に優れた標識としての機能が発揮されることとなる。その結果、安全性がより高められることとなる。
【0011】
また、本発明のものにおいては、金属メッキ色を基礎に、その上側(表面側)に金属色調のキラキラ感からなる光輝が発せられることとなり、光り輝いたキラキラ感がより強調されることとなる。そして、このような光輝は、夜間等の暗い場所において光が照射された場合に、より強く形成されることとなり、自動車等の車両の一部に使用された場合、視認性に優れた標識としての機能が発揮されることとなる。その結果、安全性がより高められることとなる。
【0012】
また、本発明のものにおいては、キラキラ感からなる光輝がより強く発せられることとなる。具体的には、キラキラ感を呈する金属片が、微細なものではあるが、その表面形態が平板状の平面形態を有するようになっており、微視的に見て平面部がより多く形成されるようになっている。従って、粒状の微細金属物体が存在するもの等に較べて、入射光に対して平面反射される割合が局部的に多くなり、光反射によって形成されるキラキラ感からなる光輝は、より増大化されることとなる。その結果、視認性の向上が、より図られることとなる。
【0013】
また、本発明のものにおいては、金属色調のキラキラ感からなる光輝を呈する合成樹脂製成形体を、ABS樹脂を初めとした所定の合成樹脂製成形体を基礎にして、その表面側に微細な金属製
平板状片を有する透明な合成樹脂製溶材(合成樹脂製塗料)等の塗布にて形成させることができるようになる。すなわち、金属色調のキラキラ感からなる光輝を呈する合成樹脂製成形体が、簡単な手段(方法)にて効率良く形成されることとなる。
【0014】
また、本発明のものにおいては、金属色調のキラキラ感からなる光輝を呈する合成樹脂製成形体を、表面に金属メッキ層を有する合成樹脂製成形体を基礎にして、その表面側に微細な金属製
平板状片を有する透明な合成樹脂製溶材(合成樹脂製塗料)等の塗布にて形成させることができるようになる。すなわち、金属色調のキラキラ感からなる光輝を呈する合成樹脂製成形体が、簡単な手段(方法)にて効率良く形成されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明にかかる金属色調光輝を呈する合成樹脂製成形体の全体構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の主要部を成す金属製微細板状片の具体的構成を示す断面図である。
【
図3】本発明にかかる金属色調光輝を呈する合成樹脂製成形体の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態について、
図1ないし
図3を基に説明する。本実施の形態にかかるものは、
図1に示す如く、ABS樹脂を含む所定の合成樹脂製成形体を基礎に形成される基盤層5と、当該基盤層5の表面上に形成されるものであって所定の金属色を呈するメッキ層55と、当該メッキ層55表面上に形成されるものであって、透明な合成樹脂成分からなる塗料を基礎に、その内部に微細なアルミニウム金属片を基に形成される金属製微細板状片1を無数に有するベースコート層51と、当該ベースコート層51の表面側に設けられるものであって透明な合成樹脂成分からなる塗料を基礎とするクリアコート層52と、からなることを基本とするものである。このような構成からなるものにおいて、上記ベースコート層51内に設けられる金属製微細板状片1は、例えば
図2に示す如く、所定の平面面積を有する平板状微細片11を基礎に形成されるようになっているものである。なお、上記金属製微細板状片1としては、本実施の形態においては、25〜500μmの大きさ(サイズ)のものが採用されるようになっている。そして、このような金属製微細板状片1が上記ベースコート層51内に、その容量において0.1〜5%程度含まれるようになっている。
【0017】
なお、この金属製微細板状片1は、アルミニウム金属製箔を基に形成されるものであって、その具体的形状は、
図2に示す如く、その表面が所定の平面面積を有する平滑な面111からなるようになっているものである。従って、その表面111に光(光線)が入射したとき(
図1の入射光(イ)参照)に、この表面111を反射面とする反射光(
図1の(ロ)参照)は、ある程度の幅をもった平行光線として反射するようになる。すなわち、一つの金属製微細板状片1について見れば、その表面111からの反射光(ロ)は、常に平行な光束となり、従来の粒状体による反射光のような乱反射状態を呈するようなことがない。その結果、一つの金属製微細板状片1からの反射光は強い状態となり、この一つの金属製微細板状片1からの反射光(ロ)にて認知される光輝(キラキラ感)は見る者にとって強く認識されることとなる。
【0018】
なお、上記ベースコート層51は、一般的な合成樹脂製塗料3を基礎に形成されるものであって、本塗料3の中に、上記金属製微細板状片1の他に所定の着色顔料2が含まれるようになっているものである。この着色顔料2の種類を適宜選ぶことによって、最終製品におけるメタリック調を基調とした色合いを適宜調整することができるようになる。なお、このような構成からなる本ベースコート層51の厚さとしては約15μm以上の厚味が必要とされる。そして、このようなベースコート層51の、その上面側(表面側)には透明な性状を有するクリアコート層52が設けられるようになっている。このクリアコート層52は、主に透明な合成樹脂製塗料にて形成されるようになっているものであり、その厚さとしては約15μm以上の厚味が必要とされる。なお、このような構成からなるものにおいて、本実施の形態においては、上記メッキ層55を省略するようにしたものも考えられる。
【0019】
このような構成を採ることにより、本実施の形態のものにおいては、本合成樹脂製成形体からは、光(光束)の入射に対して強い反射光(光束)が発せられることとなる。特に、本実施の形態のものにおいては、本合成樹脂製成形体を形成するベースコート層51内には、金属製微細板状片1が無数に存在している。そして、この金属製微細板状片1の、その表面は平滑な、かつ、微視的に見て、ある程度の平面面積を有するようになっているものである。従って、この金属製微細板状片1の表面に入射した光束は、平行な光束となって特定方向に反射することとなる。その結果、上記反射光(
図1の(ロ)参照)は輝いた状態となり、全体的に金属色調のキラキラ感に優れた見栄えを呈することとなる。これによって、本製品が自動車等の車両の一部に使用された場合、夜間に光が照射されたような場合において、視認性に優れた標識としての機能が発揮されることとなる。その結果、安全性の向上等が図られることとなる。
【0020】
次に、上記構成からなる本実施の形態のものに関する、その製造方法について説明する。このものは、
図3に示す如く、ABS樹脂を含む所定の合成樹脂製成形体からなる基盤層5の、その表面側に所定の金属色を呈するメッキ層55を設けるメッキ工程(B)と、当該メッキ層55の表面側に透明な合成樹脂成分からなる塗料3を基礎に、その内部に金属製微細板状片1を無数に有する溶材を塗布することによって得られるベースコート層51を形成させるベースコート層形成工程(C)と、当該ベースコート層51の表面側に設けられるものであって透明な合成樹脂成分からなる塗料を塗布することによって得られるクリアコート層52を形成させるクリアコート層形成工程(D)と、からなることを基本とするものである。
【0021】
このような基本工程からなるものにおいて、上記メッキ工程(B)の前には、表面をメッキが付き易い状態にするための前処理工程(A)が施されるようになっている。また、上記メッキ工程(B)としては、主に一般的な電気メッキ工程が採られることとなる。なお、本メッキ処理(メッキ工程)に換わって、AL金属等の金属蒸着手段等が採られる場合もある。また、このような工程からなるものにおいて、メッキ工程(B)を省略することも考えられる。このようなメッキ工程(B)を省略することによって、その前処理工程(A)も不要となり、本合成樹脂製成形体の製造工程が簡略化され、より製造コストの低減化が図られることとなる。
【0022】
次に、このようなメッキ処理の施された表面側に、本実施の形態においてはベースコート層51を形成することとなるものであって内部に金属性微細板状片1を無数に有する合成樹脂製溶材からなる塗料を塗布する(ベースコート層形成工程(C))。なお、上記工程(C)における塗布手段としては、一般的なスプレイガンを用いたスプレイ塗装あるいは刷毛塗り等の手段が採られることとなる。そして、このような状態のものを乾燥室等へと送り、そこで乾燥処理を施す。なお、このような塗布工程(C)、(D)における塗装ブース内の条件としては、15℃〜25℃の温度、更にはブース内湿度が78%以下に設定されるようになっている。
【0023】
次に、上記工程(C)にてベースコート層51の形成され、その後乾燥処理の施された状態のものの、そのベースコート層51の表面側(上側)に、透明な合成樹脂製成形体を形成させるクリアコート層形成工程(D)を施す。このクリアコート層形成工程(D)は透明な合成樹脂製塗料の塗布によって形成される。なお、この塗布作業も、上記ベースコート層形成工程(C)のところで述べたと同様、一般的なスプレイ塗布手段あるいは刷毛塗り手段等が採られることとなる。なお、このクリアコート層51は、必ずしも必要とされるものではなく、場合によってはクリアコート層52形成のための工程(クリアコート層形成工程(D))を省略することも可能である。これによって、本合成樹脂製成形体の製造工程を簡略化し、製造コストの低減化を図ることができるようになる。そして、このようにして形成された合成樹脂製成形体を所定の乾燥炉等へと送り、ここで乾燥処理を施す。このような乾燥処理の施される乾燥炉内は、60℃〜90℃の温度状態に保たれるようになっている。このような工程を採ることにより、本実施の形態のものにおいては、金属色調のキラキラ感からなる光輝を呈する合成樹脂製成形体を、表面に金属メッキ層を有する合成樹脂製成形体を基礎にして、その表面側に微細な金属製微細板状片1を有する透明な合成樹脂製溶材(合成樹脂製塗料)の塗布手段にて形成させることができるようになる。すなわち、金属色調のキラキラ感からなる光輝を呈する合成樹脂製成形体を、簡単な手段(方法)にて効率良く形成させることができることとなる。
【符号の説明】
【0024】
1 金属製微細板状片
11 平板状微細片
111 表面
2 着色顔料
3 塗料
5 基盤層
51 ベースコート層
52 クリアコート層
55 メッキ層