特許第6081831号(P6081831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6081831ハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体、ならびにハニカム構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081831
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体、ならびにハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20170206BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20170206BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20170206BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20170206BHJP
   B01J 23/22 20060101ALI20170206BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20170206BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   B01J35/04 301C
   B01J35/04 301K
   B01J37/04ZAB
   B01J37/08
   B01J29/76 A
   B01J23/22 A
   B01D53/94 222
   C04B38/06 D
【請求項の数】7
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-49662(P2013-49662)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2013-223857(P2013-223857A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-61673(P2012-61673)
(32)【優先日】2012年3月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正悟
(72)【発明者】
【氏名】宮入 由紀夫
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−194359(JP,A)
【文献】 特開2011−194346(JP,A)
【文献】 特開2012−050978(JP,A)
【文献】 特開2011−194342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C04B 38/00−38/10
B01D 53/86,94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる複数のセルを区画形成し、複数の細孔が形成された多孔質の隔壁を備え、
前記隔壁の気孔率が45〜70%であり、
前記隔壁の厚さ方向に平行な断面において最大幅が10μm超である前記細孔を大細孔とし、前記隔壁を前記厚さ方向に沿って中心領域と該中心領域の両側にある表層領域とに3等分する場合に、前記厚さ方向に平行な前記隔壁の前記表層領域の断面においては、前記表層領域の前記断面に現れている前記大細孔の断面の総面積が前記表層領域の前記断面に現れている全ての前記細孔の断面の総面積の60〜100%であり、かつ、前記厚さ方向に平行な前記隔壁の前記中心領域の断面においては、前記中心領域の前記断面に現れている前記大細孔の断面の総面積が前記中心領域の前記断面に現れている全ての前記細孔の断面の総面積の0〜40%であるハニカム構造体。
【請求項2】
前記厚さ方向に直交する前記隔壁の断面において、前記細孔の全個数の20〜100%に相当する前記細孔の輪郭の形状が略円形および略楕円形のいずれかである請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
パーミアビリティが1×10−12〜10×10−12(m)である請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
セル密度が7.75〜46.5個/cmであり、
前記隔壁は、気孔率が50〜70%でありかつ平均細孔径が10〜50μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の前記隔壁の前記細孔の表面に担持された触媒と、を備えるハニカム触媒体。
【請求項6】
前記触媒は金属置換ゼオライトおよびバナジウムのうちのいずれかを少なくとも含むとともに触媒担持量が100〜300g/Lであり、
前記隔壁は、前記触媒を担持させる前の気孔率(A)に対して前記触媒を担持させた状態での気孔率(B)が0.1〜0.6倍である請求項5に記載のハニカム触媒体。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム構造体を得るためのハニカム構造体の製造方法であって、
セラミックス原料と伸縮性を有する造孔材とを含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る坏土調製工程と、
前記坏土を押出成形して、複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を得る成形工程と、
前記ハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を得る焼成工程と、を備え
前記造孔材が、該造孔材の表面に複数の突起部を有するものであるハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用の触媒を担持させるハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体、ならびにハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンなどの内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)などの有害物質が含まれている。こうした有害物質を低減し、排ガスを浄化する際には、触媒反応が広く用いられている。この触媒反応では、排ガスを触媒に接触させるという簡便な手段により、一酸化炭素(CO)などの有害な物質から他の無害な物質を生成することが実現できる。よって、自動車などでは、エンジンからの排気系の途中に触媒を設置することにより、排ガスの浄化を行うことが一般的になっている。
【0003】
自動車などの排気系に触媒を設置する際には、ハニカム構造体に触媒を担持させたハニカム触媒体が用いられている。ハニカム触媒体では、触媒を担持させた隔壁によって蜂の巣構造(ハニカム構造)が形作られており、隔壁に囲まれた各セルが排ガスの流路として機能する。こうしたハニカム触媒体では、排ガスを複数のセルの各々に小分けして流し、各セル内において、小分された排ガスと隔壁の表面に担持させた触媒との接触を行わせる。このように、ハニカム触媒体では、複数に小分けした排ガスを同時に処理することにより、排ガスを高い浄化効率で処理することができる。
【0004】
さらに、ハニカム触媒体については、無数の細孔を有した多孔質の隔壁でハニカム構造を形作り、隔壁の細孔の内壁面にも触媒を担持させる技術が提案されている(例えば、特許文献1)。この技術では、細孔内に触媒を担持させることによって、ハニカム触媒体における触媒の担持量を増加させる。さらに、この技術では、隔壁の細孔内に排ガスを流入させ、細孔内でも排ガスと触媒とを接触させることにより、排ガスと触媒との接触頻度をより高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−154148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述のハニカム触媒体では、細孔内に触媒を担持させることによって触媒の担持量を増加させることは可能になるが、細孔内に担持させた触媒を有効に機能させることができないことがある。上述のハニカム触媒体では、細孔が触媒によって塞がれてしまうあるいは隔壁表面の細孔の開口部が狭窄してしまうことが生じる。そのため、上述のハニカム触媒体では、細孔内に排ガスを流入させることができず、細孔内に担持させた触媒と排ガスとの接触が不可能となることがある。
【0007】
上記の問題に鑑みて、本発明の目的は、多量の触媒を担持させることを可能にし、かつ担持させた触媒に触媒作用を有効に発揮させることを可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体、ならびにハニカム構造体の製造方法が提供される。
【0009】
[1] 流体の流路となる複数のセルを区画形成し、複数の細孔が形成された多孔質の隔壁を備え、前記隔壁の気孔率が45〜70%であり、前記隔壁の厚さ方向に平行な断面において最大幅が10μm超である前記細孔を大細孔とし、前記隔壁を前記厚さ方向に沿って中心領域と該中心領域の両側にある表層領域とに3等分する場合に、前記厚さ方向に平行な前記隔壁の前記表層領域の断面においては、前記表層領域の前記断面に現れている前記大細孔の断面の総面積が前記表層領域の前記断面に現れている全ての前記細孔の断面の総面積の60〜100%であり、かつ、前記厚さ方向に平行な前記隔壁の前記中心領域の断面においては、前記中心領域の前記断面に現れている前記大細孔の断面の総面積が前記中心領域の前記断面に現れている全ての前記細孔の断面の総面積の0〜40%であるハニカム構造体。
【0010】
[2] 前記厚さ方向に直交する前記隔壁の断面において、前記細孔の全個数の20〜100%に相当する前記細孔の輪郭の形状が略円形および略楕円形のいずれかである前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0011】
[3] パーミアビリティが1×10−12〜10×10−12(m)である前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体。
【0012】
[4] セル密度が7.75〜46.5個/cmであり、前記隔壁は、気孔率が50〜70%でありかつ平均細孔径が10〜50μmである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0013】
[5] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体と、前記ハニカム構造体の前記隔壁の前記細孔の表面に担持された触媒と、を備えるハニカム触媒体。
【0014】
[6] 前記触媒は金属置換ゼオライトおよびバナジウムのうちのいずれかを少なくとも含むとともに触媒担持量が100〜300g/Lであり、前記隔壁は、前記触媒を担持させる前の気孔率(A)に対して前記触媒を担持させた状態での気孔率(B)が0.1〜0.6倍である前記[5]に記載のハニカム触媒体。
【0015】
[7] 前記[1]〜[4]のいずれかに記載のハニカム構造体を得るためのハニカム構造体の製造方法であって、セラミックス原料と伸縮性を有する造孔材とを含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る坏土調製工程と、前記坏土を押出成形して、複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を得る成形工程と、前記ハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を得る焼成工程と、を備え、前記造孔材が、該造孔材の表面に複数の突起部を有するものであるハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明のハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体、ならびにハニカム構造体の製造方法によれば、隔壁の表面において多くの割合の細孔が開口しかつ中心領域において多くの割合の細孔が幅を狭めたものとできるので、多量の触媒を隔壁の細孔内に担持させることが可能になる。さらに、本発明のハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体、ならびにハニカム構造体の製造方法によれば、触媒によって細孔の開口部が閉塞あるいは狭窄されにくくなるので、細孔内にガスを流入させて細孔内での触媒作用を有効に発揮させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2図1中のA−A’断面の模式図である。
図3図2中の枠α内を模式的に示す隔壁の断面図である。
図4】従来のハニカム構造体の隔壁を模式的に示す断面図である。
図5図3に示されている隔壁に触媒を担持させて排ガスの浄化を実施した場合の説明図である。
図6図4に示されている隔壁に触媒を担持させて排ガスの浄化を実施した場合の説明図である。
図7】本発明のハニカム構造体の製造方法において用い得る造孔材の一例の模式的な断面図である。
図8A】本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態において行われる押出成形の説明図である。
図8B図8Aに示されている押出成形により形成される、成形体の隔壁の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0020】
1.ハニカム構造体:
図1は、本発明のハニカム構造体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。図示されているように、本実施形態のハニカム構造体100は、円筒形状の外周壁7と、外周壁7の内部を複数のセル4に区画形成する多孔質の隔壁5とを備えている。本実施形態のハニカム構造体100の軸方向Xにおける両端では、複数のセル4が開口し、また、外周壁7の縁や隔壁5の縁によって端面2,3が形作られている。
【0021】
図2は、図1中のA−A’断面の模式図である。図示されているように、本実施形態のハニカム構造体100では、複数のセル4が軸方向Xに沿って延びており、これらのセル4の各々が流体の流路としての役割を果たすことができる。例えば、本実施形態のハニカム構造体100では、一方の端面2(第1端面)からセル4内にガスGを流入させると、ガスGを軸方向Xに沿って他方の端面3(第2端面)まで通過させ、外部に排出させることが可能である。
【0022】
図3は、図2中の枠α内を模式的に示す隔壁5の断面図である。図示されているように、本実施形態のハニカム構造体100の隔壁5は、多孔質であるので、複数の細孔10が形成されている。
【0023】
本明細書においては、隔壁5の厚さ方向Yに平行な隔壁5の断面(例えば、図3に示されている断面)において最大幅が10μm超である細孔10を大細孔12と定める。
【0024】
図3に示されている隔壁5の断面では、例えば、細孔10aの最大幅Wおよび細孔10bの最大幅Wが10μm以上であり、細孔10cの最大幅Wが10μm未満である。よって、細孔10a〜10cのうちでは、細孔10aおよび10bのそれぞれが大細孔12aおよび大細孔12bとして分類される。
【0025】
なお、例えば、図3に示されている大細孔12aおよび大細孔12bのように、隔壁5の断面において、複数の大細孔12同士が、幅10μm未満の細孔10によって繋がっている場合がある。こうした場合には、繋がっている大細孔12a,12bのそれぞれを1個の独立した大細孔12と識別するものとする。また、大細孔12同士を繋いている幅10μm未満の細孔10については、大細孔12の一部分であるものとする。例えば、図3中の経路R(点線矢印で示す)については、隔壁5の一方の表面に面したセル4aから、大細孔12a内を通過し、続いて、大細孔12bを通過して、隔壁5の反対側の表面に面したセル4bへと至ることになる。すなわち、図3中の経路Rは、2個の大細孔12a,12bから構成されているものとする。
【0026】
図3中では、隔壁5の断面に現れた細孔10の断面のうち、隔壁5の中心領域の断面に現れた細孔10の断面を「網掛け」で示している。
【0027】
本実施形態のハニカム構造体100では、隔壁5を厚さ方向Yに沿って中心領域と該中心領域の両側にある表層領域とに3等分した場合に、厚さ方向Yに平行な隔壁5の表層領域の断面においては、当該表層領域の断面に現れている大細孔12の断面の総面積が当該表層領域の断面に現れている全ての細孔10の断面の総面積の60〜100%であり、かつ、厚さ方向Yに平行な隔壁5の中心領域の断面においては、当該中心領域の断面に現れている大細孔12の断面の総面積が当該中心領域の断面に現れている全ての細孔10の断面の総面積の0〜40%である。
【0028】
本実施形態のハニカム構造体100のように、表層領域の断面における大細孔12の断面の総面積が当該表層領域の断面における全ての細孔10の断面の総面積の60〜100%であり、かつ、中心領域の断面における大細孔12の断面の総面積が当該中心領域の断面における全ての細孔10の断面の総面積の0〜40%である場合には、隔壁5の表面において、多くの割合の細孔10が大きく開口し、かつ、隔壁5の中心領域において、多くの割合の細孔10が幅を狭めていることになる。さらに、細孔10によって隔壁5を貫通する流路(例えば、図3中に示されている大細孔12a,12bからなる経路R)が形成されているのであれば、当該流路は隔壁5の中心領域において幅が小さくなっていることになる。
【0029】
その結果、本実施形態のハニカム構造体100では、触媒を担持させる工程において、隔壁5の表層領域の細孔10内に触媒を浸入させることが容易になる。これに加えて、本実施形態のハニカム構造体100では、表層領域の細孔10内に浸入した触媒を、さらに隔壁5の中心領域の細孔10内にまで浸入させることも容易になる。また、本実施形態のハニカム構造体100では、隔壁5の中心領域の細孔10は幅が狭まっているので、隔壁5の中心領域まで浸入させた触媒を適度に保持させることが可能になる。したがって、本実施形態のハニカム構造体100によれば、図5に示されているように、隔壁5の表層領域の細孔10の表面および中心領域の細孔10の表面のいずれにも触媒を均一に担持させることが容易になる(図5の説明については後述)。
【0030】
また、本実施形態のハニカム構造体100のように、表層領域の断面における大細孔12の断面の総面積が当該表層領域の断面における全ての細孔10の断面の総面積の60〜100%であり、かつ、中心領域の断面における大細孔12の断面の総面積が当該中心領域の断面における全ての細孔10の断面の総面積の0〜40%である場合には、隔壁5の中心領域において十分な強度が保たれる。すなわち、本実施形態のハニカム構造体100では、隔壁5が高気孔率である場合であっても、隔壁5の強度は維持できる。
【0031】
さらに、本実施形態のハニカム構造体100では、厚さ方向Yに平行な隔壁5の表層領域の断面においては、当該表層領域の断面に現れている大細孔12の断面の総面積が当該表層領域の断面に現れている全ての細孔10の断面の総面積の60〜90%であり、かつ、厚さ方向Yに平行な隔壁5の中心領域の断面においては、当該中心領域の断面に現れている大細孔12の断面の総面積が当該中心領域の断面に現れている全ての細孔10の断面の総面積の10〜40%であることが好ましく、特に、当該表層領域の断面に現れている大細孔12の断面の総面積が当該表層領域の断面に現れている全ての細孔10の断面の総面積の70〜80%であり、かつ、当該中心領域の断面に現れている大細孔12の断面の総面積が当該中心領域の断面に現れている全ての細孔10の断面の総面積の20〜30%であることがより好ましい。
【0032】
対して、図4に、従来のハニカム構造体の隔壁の断面図を模式的に示す。図4中では、隔壁5の断面に現れた細孔10の断面のうち、隔壁5の中心領域の断面に現れた細孔10の断面を「網掛け」で示している。こうした従来のハニカム構造体の多孔質の隔壁5では、大細孔12が隔壁5の表層領域よりも中心領域に多く、あるいは表層領域と中心領域とで偏りなく存在する。よって、図示されているように、従来のハニカム構造体では、上述した本実施形態のハニカム構造体100と比べて、隔壁5の表面で大きく開口する細孔10の割合が少なくなる。そのため、従来のハニカム構造体では、触媒を担持させる工程において、隔壁5の中心領域の細孔10にまで触媒を浸入させることが容易ではない(図6を参照)。
【0033】
本実施形態のハニカム構造体100では、隔壁5の気孔率が45〜70%である。なお、本明細書にいう隔壁の気孔率とは、水銀ポロシメーターにより測定した値である。本実施形態のハニカム構造体100では、隔壁5の気孔率が45〜70%以下の場合には、隔壁の強度を所定以上に保ちつつ、担持する触媒量を多くできる点において優れる。
【0034】
さらに、本実施形態のハニカム構造体100では、隔壁5の気孔率が50〜65%であることが好ましく、特に、50〜60%であることがより好ましい。
【0035】
本実施形態のハニカム構造体100では、厚さ方向Yに直交する隔壁5の断面において、細孔10の全個数の20〜100%に相当する細孔10の輪郭の形状が略円形および略楕円形のいずれかであることが好ましい。上述のような割合で略円形および略楕円形の輪郭を持つ断面形状の細孔10が存在する場合、隔壁5への触媒の担持が良好になる。なお、本明細書において「細孔10の輪郭の形状が略円形」とは、円形、または輪郭が波形であっても1個の細孔の断面の輪郭全体を見た場合に円形に近似可能な形状のことを意味する。また、本明細書において、細孔10の輪郭の形状が略楕円形とは、楕円形、または輪郭が波形であっても1個の細孔の断面の輪郭全体を見た場合に楕円形に近似可能形状のことを意味する。
【0036】
また、本実施形態のハニカム構造体100では、連通性および触媒の担持を良好にする観点から、パーミアビリティが1×10−12〜10×10−12(m)であることが好ましい。このパーミアビリティは、ハニカム構造体100の内部にガスを通過させた場合の通過抵抗の指標となる。
【0037】
ダルシー則として、次式が一般的に存在する。ΔP/L=1/k×μ×u、ΔP[Pa]:空気透過時の圧力損失、L[m]:試料厚み、μ[Pa・s]:空気粘度25℃、1atmの粘度18.35−6、u[m/s]:流体速度。このときの透過係数k[m]をパーミアビリティと定義する。
【0038】
本実施形態のハニカム構造体100では、隔壁5の厚さは、特に制限はないが、0.060〜0.288mmであることが好ましく、0.108〜0.240mmであることが更に好ましく、0.132〜0.192mmであることが特に好ましい。このように構成することによって、強度が高く、且つ圧力損失が低減されたハニカム構造体100とすることができる。
【0039】
本明細書にいう「隔壁の厚さ」とは、ハニカム構造体100をセル4の延びる方向(X方向)に垂直に切断した断面における、隣接する2つのセル4を区画する壁(隔壁5)の厚さのことを意味する。「隔壁の厚さ」は、例えば、画像解析装置(ニコン社製、商品名「NEXIV、VMR−1515」)によって測定することができる。
【0040】
本実施形態のハニカム構造体100では、セル密度は、特に制限はないが、セル密度が15〜140個/cmであることが好ましく、31〜116個/cmであることが更に好ましく、46〜93個/cmであることが特に好ましい。このように構成することによって、ハニカム構造体100の強度を維持しつつ、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0041】
本明細書にいう「セル密度」とは、セルの延びる方向に垂直に切断した断面における、単位面積当たりのセルの個数のことである。
【0042】
本実施形態のハニカム構造体100では、セル密度が7.75〜46.5個/cmであり、かつ隔壁5は気孔率50〜70%でありかつ平均細孔径10〜50μmであることが好ましい。上述のセル密度、気孔率、および平均細孔径の条件の全てを満たす場合、金属置換ゼオライトまたはバナジウムを含む触媒を用いるときに有意な触媒作用を発揮させることができる。具体的には、量依存的な触媒作用を発現する金属置換ゼオライトまたはバナジウムを含む触媒を用いる場合に、多量の触媒を隔壁5に担持させて、量依存的な触媒作用を十分に発現させることができる。加えて、金属置換ゼオライトまたはバナジウムを含む触媒の隔壁5からの剥離が抑制可能となる。
【0043】
従来のハニカム構造体では、セル密度が7.75〜46.5個/cmの場合、多量の触媒を隔壁に担持させると、多くの触媒が隔壁表面に堆積してしまい、その結果、触媒が剥離し易い。特に、触媒が金属置換ゼオライトを含む場合には、触媒が嵩高くなるため、触媒が隔壁表面に堆積してしまう傾向が強くなる。また、触媒は、隔壁表面に堆積している場合、隔壁からの剥離がより一層生じ易くなる。本実施形態のハニカム構造体100によれば、上述したように隔壁5の表面において多くの割合の細孔10が開口しかつ中心領域において多くの割合の細孔10が幅を狭めているので、触媒が隔壁5の中心領域まで十分に担持される。その結果として、本実施形態のハニカム構造体100によれば、セル密度7.75〜46.5個/cmの条件下で多量の触媒を担持させても、隔壁からの触媒の剥離が生じにくくなる。また、本実施形態のハニカム構造体100では、金属置換ゼオライトを含む嵩高い触媒を用いる場合であっても、隔壁からの触媒の剥離を十分に抑制可能になる。
【0044】
本実施形態のハニカム構造体100では、隔壁5は、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。隔壁5の材質としては、具体的には、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、およびアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、コージェライトが好ましい。隔壁5の材質としてコージェライトを用いると、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体が得られる。なお、本明細書において、「セラミックを主成分とする」というときは、セラミックを全体の50質量%以上含有することをいう。
【0045】
本実施形態のハニカム構造体100では、軸方向Xに直交する断面からみた場合の、セルの形状としては、特に制限はなく、図1に示された四角形や、それ以外にも、例えば、三角形、六角形などの多角形、円形、楕円形などを挙げることができる。
【0046】
本実施形態のハニカム構造体100では、外周壁7の厚さは、特に限定されないが、0.2〜4.0mmが好ましい。外周壁7の厚さを上記範囲内とする場合には、ハニカム構造体100の強度を適度に維持しつつ、セル4内に流体(例えば、排ガス)を流した際における圧力損失の増大を防止することができる。
【0047】
本実施形態のハニカム構造体100では、外周壁7の材質は、隔壁5と同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0048】
本実施形態のハニカム構造体100では、外周壁7の形状は、特に限定されないが、図1に示された円筒形状や、それ以外にも、底面が楕円形の筒形状、底面が四角形、五角形、六角形等の多角形の筒形状等であってもよい。
【0049】
本実施形態のハニカム構造体100では、ハニカム構造体100の大きさは、特に限定されないが、軸方向Xにおける長さが50〜300mmであることが好ましい。また、例えば、ハニカム構造体100の外形が円筒形の場合、その底面の直径は、110〜350mmであることが好ましい。
【0050】
2.ハニカム触媒体:
本発明のハニカム触媒体は、上述した本発明のハニカム構造体(例えば、上記「1.ハニカム構造体」の欄で述べた「本実施形態のハニカム構造体100」)と、このハニカム構造体の隔壁の細孔の表面に担持された触媒と、を備えている。
【0051】
図5は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態を示した説明図である。より詳しくは、図5は、図3に示されている隔壁5に触媒20を担持させ、排ガスGの浄化を実施した場合の説明図である。上述のハニカム構造体100における隔壁5に触媒20を担持させる場合には、隔壁5の表層領域および中心領域のいずれにおいても、内壁面で触媒20を均一に担持した細孔10の割合が多くなる。すなわち、本実施形態のハニカム触媒体では、隔壁5の細孔内に多量の触媒20を担持させることが可能である。
【0052】
本実施形態のハニカム触媒体では、細孔10の内壁面に触媒20の層が形成されている。さらに、本実施形態のハニカム触媒体では、上述したハニカム構造体100を用いているので、細孔10については、触媒20が細孔10内に担持されていても、ガスGを流入可能な細孔10の割合が依然として多い傾向にある。したがって、図5に示されているように、本実施形態のハニカム触媒体では、細孔10を通じて隔壁5の内部にガスGを浸入させ、細孔10の内壁面に担持されている触媒20によって、ガスGの浄化をすることが可能である。このように、本実施形態のハニカム触媒体では、細孔内でのガスGの浄化が可能であるので、従来のハニカム触媒体と比べて浄化効率が向上している。
【0053】
また、図示されているように、本実施形態のハニカム触媒体では、隔壁5の表面において、多くの割合の細孔10が大きく開口し、その一方で隔壁5の中心領域では多くの割合の細孔10が幅を狭めている傾向がある。こうした細孔10の形状により、ガスGを、セル4aから細孔10内に流入させることが容易であり、さらに、ガスGを隔壁5の中心領域まで到達させると、図5中に示されたガスGのように、再び同じセル4aに復帰させることも容易である。もちろん、ガスGを隔壁5の中心領域まで到達させて再びセル4aに復帰させる過程では、細孔10の内壁面に担持されている触媒20によってガスGを浄化することが可能である。
【0054】
さらに、本実施形態のハニカム触媒体では、触媒20を担持させても細孔10がなお隔壁5を貫通している場合には、ガスGを隔壁5の中心領域まで到達させると、図5中に示されているガスGのように、隣のセル4bに排出させることも容易である。
【0055】
よって、本実施形態のハニカム触媒体では、隔壁5の表層領域の細孔10の内壁面に担持されている触媒20はもちろんのこと、隔壁5の中心領域の細孔10の内壁面に担持されている触媒20もガスGの浄化に効率良く利用可能である。
【0056】
対して、図6は、図4に示されている従来の隔壁5に触媒20を担持させ、排ガスGの浄化を実施した場合の説明図である。従来のハニカム構造体では、触媒を担持させる工程において、隔壁5の中心領域の細孔10にまで触媒を浸入させることが容易ではない。そのため、図6に示されているように、本発明のハニカム触媒体(例えば、その一実施形態を図5に示す)と比べて、隔壁5の中心領域おいて、触媒20を担持した細孔10の割合が少ない傾向がある。
【0057】
また、従来のハニカム触媒体では、隔壁5の表面において大きく開口する細孔10の割合が少なくなっているので、図6中のガスGのように、隔壁5の中心領域にまで流入したガスGが、再びセル4に復帰しにくくなる傾向がある。よって、従来のハニカム触媒体では、上述の本発明の一実施形態のハニカム触媒体と比べて、隔壁5の中心領域に担持されている触媒20を、ガスGの浄化に効率良く利用することが困難である。
【0058】
本発明のハニカム触媒体では、流入側の端面(一方の端面)からセル内にガスを流入させると、隔壁に担持されている触媒によってガスを浄化し、最終的に、浄化されたガスを流出側の端面(他方の端面)から排出させることができる。具体的には、隔壁に担持されている触媒により、ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等の有害物質を浄化することが可能である。
【0059】
特に、本発明のハニカム触媒体は、排ガスの浄化に用いることが好適である。本明細書にいう排ガスとは、自動車用、建設機械用、および産業用定置エンジン、ならびに燃焼機器等から排出される排ガスのことである。こうした種々のエンジンや燃焼機器からの排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等の有害物質が多く含まれていることがある。本発明のハニカム触媒体によれば、こうした種々のエンジンや燃焼機器の排ガスに含まれている有害物質を効率良く浄化することが可能である。
【0060】
本発明のハニカム触媒体では、触媒の充填率が50〜90%であることが好ましく、60〜80%であることが更に好ましく、65〜75%であることが特に好ましい。触媒の充填率が上記範囲内である場合には、触媒とガスとの接触がよくなり、浄化率の低下が抑えられるという利点がある。また、ハニカム触媒体にガスを流入させた際の圧力損失の増大を防止することができる。触媒の充填率が下限値以上である場合には、ガスを流入させた際の圧力損失の増大を防止することができる。また、触媒の充填率が上限値以下である場合には、触媒がガスと接触がよくなり、浄化率の低下が抑えられるという利点がある。なお、本明細書にいう触媒の充填率とは、「触媒の充填されている容積/細孔容積」のことを意味する。
【0061】
本発明のハニカム触媒体では、触媒は、目的に応じて適宜決定することができる。例えば、三元触媒、酸化触媒、NO選択還元触媒、NO吸蔵還元触媒などを挙げることができる。ハニカム触媒体の単位体積当りの触媒の担持量は、100〜300g/Lであることが好ましく、150〜250g/Lであることが更に好ましい(なお、Lはリットル)。
【0062】
三元触媒とは、主に炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)を浄化する触媒のことをいう。例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含む触媒を挙げることができる。
【0063】
酸化触媒としては、貴金属を含有するものを挙げることができる。具体的には、白金、パラジウム、およびロジウムからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものが好ましい。
【0064】
NO選択還元触媒としては、金属置換ゼオライト、バナジウム、チタニア、酸化タングステン、銀、およびアルミナからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを挙げることができる。
【0065】
本発明のハニカム触媒体では、触媒が金属置換ゼオライトおよびバナジウムのうちのいずれかを少なくとも含む場合には、触媒とガスとの接触頻度を十分に高めて浄化効率を向上させる観点から、触媒担持量が100〜300g/Lであり、かつ、隔壁は触媒を担持させる前の気孔率(A)に対して触媒を担持させた状態での気孔率(B)が0.1〜0.6倍[換言すると、気孔率(B)/気孔率(A)=0.1〜0.6]であることが好ましい。
【0066】
さらに、本発明のハニカム触媒体では、触媒が金属置換ゼオライトおよびバナジウムのうちのいずれかを少なくとも含む場合には、触媒担持量が100〜300g/Lであり、かつ、隔壁は気孔率50〜70%かつ平均細孔径10〜50μmであるとともに触媒を担持させる前の気孔率(A)に対して触媒を担持させた状態での気孔率(B)が0.1〜0.6倍であり、さらにセル密度が7.75〜46.5個/cm(50〜300cpsi)であることが好ましい。上記の触媒担持量、気孔率(B)/気孔率(A)の値、およびセル密度の条件を全て満たす場合、触媒とガスとの接触頻度を十分に高めて浄化効率を向上させ、かつ、圧力損失の上昇の抑制および隔壁からの触媒の剥離を抑制することが可能になる。
【0067】
NO吸蔵還元触媒としては、アルカリ金属、および/またはアルカリ土類金属等を挙げることができる。アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム、リチウム等を挙げることができる。アルカリ土類金属としては、カルシウムなどを挙げることができる。
【0068】
3.ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体は、例えば、以下の製造方法(本発明のハニカム構造体の製造方法)によって得ることができる。本発明のハニカム構造体の製造方法は、坏土調製工程と、成形工程と、焼成工程と、を備えている。坏土調製工程は、セラミック原料および造孔材を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る工程である。成形工程は、坏土調製工程によって得られた坏土をハニカム形状に押出成形し、複数のセルが形成されたハニカム成形体を得る工程である。焼成工程は、ハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を得る工程である。以下において実施形態を詳しく説明する、本発明のハニカム構造体の製造方法によれば、上述した本発明のハニカム構造体を良好に作製することができる。
【0069】
本発明のハニカム構造体の製造方法の一実施形態について、以下に具体的に説明する。
【0070】
3−1.坏土調製工程:
本実施形態のハニカム構造体の製造方法の坏土調製工程においては、セラミック原料および造孔材を含有する成形原料を混合し混練して坏土を得る。そして、本実施形態のハニカム構造体の製造方法における坏土調製工程では、造孔材として、伸縮性を有する材質で作られたものを用いる。本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、伸縮性を有する造孔材を使用することにより、上述のハニカム構造体を効率的に作製することが可能になる。
【0071】
すなわち、本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、伸縮性を有する造孔材を用いることにより、気孔率45〜70%で、かつ、「隔壁の表層領域の断面においては、表層領域の断面に現れている大細孔の断面の総面積が表層領域の断面に現れている全ての細孔の断面の総面積の60〜100%であり、かつ、厚さ方向に平行な隔壁の中心領域の断面においては、中心領域の断面に現れている大細孔の断面の総面積が中心領域の断面に現れている全ての細孔の断面の総面積の0〜40%である」との大細孔の分布状態(以下、説明の便宜上、「大細孔の分布状態A」という)を備える隔壁を効率的に作ることが可能になる。
【0072】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法に用い得る造孔材としては、伸縮性に優れて、大細孔の分布状態Aを備える隔壁を作り易いという観点において、特に、発泡樹脂や、吸水性ポリマーが好ましい。
【0073】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、造孔材の平均粒子径は、50〜200μmであることが好ましい。造孔材の平均粒子径が50〜200μmである場合、最終的に得られるハニカム構造体の隔壁の強度を十分なものとでき、かつ、隔壁の細孔内に触媒を充填する効率を高めることが可能になる。さらに、本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、80〜170μmであることが更に好ましく、100〜150μmであることが特に好ましい。
【0074】
さらに、本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、造孔材は、その表面に複数の突起部を有するものである(複数の突起部を有する造孔材によって、大細孔の分布状態Aを備える隔壁を作製されるようになる仕組みの一例については後述)。
【0075】
図7は、本実施形態のハニカム構造体の製造方法において用い得る、複数の突起部250を有する造孔材200の一例の断面図である。こうした複数の突起部250を有する造孔材200については、伸縮性を有する材質(例えば、発泡樹脂、吸水性ポリマー)で、複数の突起形状(突起部250)を持つものを一体的に成形して作製し、これを用いてもよい。
【0076】
また、複数の突起部を有する造孔材については、略球形状の伸縮性を有する造孔材(I)の表面に、造孔材(I)より小さな平均粒子径で伸縮性を有する造孔材(II)を接着させて作られたものを用いてもよい。ここで、造孔材(II)の平均粒子径は、大細孔の分布状態Aを備える隔壁をより確実に作製可能となるという観点から、造孔材(I)の平均粒子径の1/40〜1/7であることが好ましい。
【0077】
また、本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、複数の突起部を有する造孔材を用い、さらに、当該造孔材が造孔材(I)と造孔材(II)から作られている場合、造孔材(II)の平均粒子径が造孔材(I)の平均粒子径の1/40〜1/7であり、かつ、造孔材(I)の粒子1個の表面に造孔材(II)の粒子を5〜20個を接着させて作られたものであることがより好ましい。上記の造孔材(II)の平均粒子径の条件および造孔材(I)の粒子1個の表面に接着させる造孔材(II)の粒子の個数の条件を満たす場合、大細孔の分布状態Aを備える隔壁をより一層確実に作製可能となる。
【0078】
なお、本明細書にいう造孔材の平均粒子径とは、篩いにより分級した平均粒子径(ふるい分け法によって測定した試験用ふるい目開きで表したもの)を意味する。
【0079】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、造孔材の平均粒子径は、50〜200μmであることが好ましい。造孔材の平均粒子径が50〜200μmである場合、最終的に得られるハニカム構造体の隔壁の強度を十分なものとでき、かつ、隔壁の細孔内に触媒を充填する効率を高めることが可能になる。さらに、本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、造孔材の平均粒子径は、80〜170μmであることが更に好ましく、100〜150μmであることが特に好ましい。
【0080】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、複数の突起部を有する造孔材を用い、さらに、当該造孔材が造孔材(I)と造孔材(II)から作られている場合、造孔材(I)の平均粒子径が30〜180μmであり、かつ、造孔材(II)の平均粒子径が2〜20μmであることが好ましい。造孔材(I)および造孔材(II)の平均粒子径が上記の条件を満たす場合、最終的に得られるハニカム構造体の隔壁の強度を十分なものとでき、かつ、隔壁の細孔内に触媒を充填する効率を高めることが可能になる。さらに、本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、造孔材(I)の平均粒子径が60〜150μmであり、かつ、造孔材(II)の平均粒子径が2〜17μmであることがより好ましい。特に、本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、造孔材(I)の平均粒子径が80〜130μmであり、かつ、造孔材(II)の平均粒子径が5〜15μmであることが最も好ましい。
【0081】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、成形原料中の造孔材の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、通常、1〜10質量部であり、1〜8質量部であることが好ましく、1〜6質量部であることがより好ましい。造孔材の添加量が、1質量部未満であると、隔壁に形成される大細孔の数が減少し、得られるハニカム構造体に担持できる触媒量が少なくなってしまうことがある。一方、造孔材の添加量が、10質量部を超えると、大細孔が隔壁に過剰に形成されてしまい、その結果、得られるハニカム構造体の強度が低下してしまうことがある。
【0082】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法に用い得るセラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、およびアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。ここに列挙したセラミック原料の中でも、コージェライト化原料が好ましい。コージェライト化原料を用いる場合には、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体が得られるためである。
【0083】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、成形原料は、セラミック原料および造孔材以外に、分散媒、添加剤などを含むものであってもよい。
【0084】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法に用い得る分散媒としては、例えば、水などを挙げることができる。添加剤としては、有機バインダ、界面活性剤等を挙げることができる。分散媒の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、30〜150質量部であることが好ましい。
【0085】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法に用い得る有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。有機バインダの含有量は、セラミック原料100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましい。
【0086】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法に用い得る界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。
【0087】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機などを用いる方法を挙げることができる。
【0088】
3−2.成形工程:
本実施形態のハニカム構造体の製造方法の成形工程では、坏土調製工程で得られた坏土をハニカム形状に押出成形してハニカム成形体を得る。このハニカム成形体では、ハニカム成形体を貫通する複数のセルが形成されている。押出成形は、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて行うことができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0089】
次に、本実施形態のハニカム構造体の製造方法の成形工程について、図7に示された造孔材200を用いて押出成形した場合を一例として詳しく述べる。
【0090】
図8Aは、本実施形態のハニカム構造体の製造方法における押出成形の説明図である。ここで述べる押出成形では、格子状に切られた薄い溝(スリット)を持つ口金を用いる。この口金のスリットを通過した坏土150がハニカム成形体の隔壁170を形作ることになる。
【0091】
さらに、本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、図7に示されたように、造孔材200として、伸縮性を有する材質から作られ、かつ複数の突起部250を有するものを用いる。このような造孔材200では、造孔材200を押しつぶす外力が加わると、まず始めに、突起部250から変形および収縮していく傾向がある。
【0092】
そのため、本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、図8Aに示されているように、坏土150に含まれる造孔材200が口金のスリットの壁面400の近くに偏在している場合には、当該造孔材200の中でも、主として突起部250がスリットの壁面400によって押しつぶされて変形していく。そのため、本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、造孔材200の位置(造孔材200に中心の位置)はスリットの壁面400の近くに偏在させたまま保たれる。例えば、図8A中に示されている突起部250aは、スリットの壁面400に押しつぶされて変形してゆく状態にあり、また、図8A中に示されている突起部250bは、隣接した別の造孔材200によって押しつぶされて変形している状態にある。こうして、本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、造孔材200を偏在させたまま、坏土150をスリット内に通していくことが可能である。
【0093】
図8Bは、図8Aに示されている押出成形により形成される、ハニカム成形体の隔壁の断面の模式図である。図8Aに示されている態様によって、ハニカム成形体の隔壁170を形成すると、図8Bに示されているように、隔壁170の表層領域に多くの造孔材200を偏在させることが可能になる。この造孔材200の偏在を反映する形で、最終的に得られるハニカム構造体の隔壁においても、例えば図3に示されているような、大細孔を隔壁の表層領域に多く偏在させたものとできる。
【0094】
3−3.焼成工程:
本実施形態のハニカム構造体の製造方法の焼成工程では、上述の成形工程で得られるハニカム成形体を焼成し、ハニカム構造体を得る。こうして得られるハニカム構造体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成し、複数の細孔が形成された多孔質の隔壁を備えている。
【0095】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法の焼成工程では、焼成温度は、ハニカム成形体の材質よって適宜決定することができる。例えば、ハニカム成形体の材質がコージェライトの場合、焼成温度は、1380〜1450℃が好ましく、1400〜1440℃が更に好ましい。また、焼成時間は、3〜10時間程度とすることが好ましい。
【0096】
本実施形態のハニカム構造体の製造方法では、ハニカム成形体を焼成する前に乾燥させてもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などを挙げることができる。これらの中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥または熱風乾燥を単独でまたは組合せて行うことが好ましい。また、乾燥条件としては、乾燥温度30〜150℃、乾燥時間1分〜2時間とすることが好ましい。
【0097】
4.ハニカム触媒体の製造方法:
本発明のハニカム触媒体は、例えば、以下のように製造することができる。
【0098】
まず、触媒担体としてハニカム構造体を作製する。このハニカム構造体は、上述した本発明のハニカム構造体の製造方法に従って作製することができる。
【0099】
次に、触媒スラリーを調製する。触媒スラリーに含有される触媒の平均粒子径は、0.5〜5μmである。更に、触媒スラリーの粘度(25℃)は、1〜10mPa・sである。上記触媒の平均粒子径および粘度のいずれもが下限値以上である場合には、触媒が細孔内に過度に充填されてしまうことを抑制することが可能であり、また、得られたハニカム触媒体における圧力損失の増加を抑制することが可能である。触媒の平均粒子径および粘度のいずれもが上限値以下である場合には、触媒を確実に細孔内に充填させることが可能になる。そのため、排ガスの浄化性能の高いハニカム触媒体を得やすくなる。
【0100】
次に、触媒スラリーをハニカム構造体に担持させる。触媒スラリーをハニカム構造体に担持させる方法は、ディッピングや吸引などの従来公知の方法を採用することができる。なお、ディッピングや吸引などを行った後に、余剰の触媒スラリーを圧縮空気で吹き飛ばしてもよい。
【0101】
次に、触媒スラリーを担持しているハニカム構造体を乾燥、焼成する。このようにして、ハニカム触媒体を作製することができる。乾燥条件は、120〜180℃、10〜30分とすることができる。焼成条件は、550〜650℃、1〜5時間とすることができる。
【実施例】
【0102】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0103】
(実施例1)
[造孔材の作製]
発泡樹脂製の造孔材(I)に対して、造孔材(I)よりも平均粒径の小さな発泡樹脂製の造孔材(II)を接着させることにより、複数の突起部を有する造孔材を作製した。具体的には、造孔材(II)の表面に予め接着剤を塗布しておいた後、造孔材(I)を入れた容器中に添加することにより、造孔材(I)と造孔材(II)とを混ぜ合わせ、造孔材(I)の表面に造孔材(II)を接着させた。なお、この接着させる処理を行った後、造孔材を取り出し、光学顕微鏡を用いて観察することにより、複数の突起部を有する造孔材が作製されたことを確認した。造孔材(I)の平均粒子径、造孔材(II)の平均粒子径(μm)、および造孔材(I)に造孔材(II)を混ぜ合わせて接着させる際における造孔材(I)の個数に対する造孔材(II)の個数の比の値[造孔材(II)の個数/造孔材(I)の個数]を表1に示す。
【0104】
[ハニカム構造体の作製]
コージェライト化原料として、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、およびシリカを使用した。コージェライト化原料100質量部に、上述の複数の突起部を有する造孔材5質量部、水(分散媒)85質量部、吸水性ヒドロキシプロピルメチルセルロース(有機バインダ)8質量部、および界面活性剤3質量部を添加した。その後、混合、さらに混練して、坏土を得た。
【0105】
次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形してハニカム成形体を得た。ハニカム成形体は、セルの延びる方向に直交する断面において四角形のセルが形成され、全体形状が円柱形状であった。そして、得られたハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥した。その後、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた。続いて、乾燥させたハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。
【0106】
このようにして得られたハニカム成形体を、更に、1410〜1440℃で、5時間、焼成することによってハニカム構造体を得た。
【0107】
得られたハニカム構造体は、直径が266.7mmであり、中心軸方向の長さが152.4mmであった。隔壁の厚さは、165.1μmであり、セル密度は62.0個/cmであった。
【0108】
[ハニカム触媒体の作製]
平均粒子径5μmのβ−ゼオライト(銅イオン交換ゼオライト)200gに水1kg加え、ボールミルにて湿式粉砕した。得られた解砕粒子にバインダとして、アルミナゾルを20g加えて触媒スラリーを得た。この触媒スラリーは、粘度5mPa・sとなるように調製した。そしてこの触媒スラリーの中にハニカム構造体を浸漬させた。その後、120℃で20分乾燥させ、600℃で1時間焼成した。このようにしてハニカム触媒体を得た。ハニカム触媒体における触媒担持量は、250g/リットルであることが判明した。
【0109】
(実施例2〜14)
実施例2〜14では、表1に示されている、造孔材(I)の平均粒子径(μm)、造孔材(II)の平均粒子径(μm)、および造孔材(I)に造孔材(II)を混ぜ合わせて接着させる際における造孔材(I)の個数に対する造孔材(II)の個数の比の値[造孔材(II)の個数/造孔材(I)の個数]にて、複数の突起部を有する造孔材を作製し、こうして得られた造孔材を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、ハニカム構造体、およびハニカム触媒体を作製した。
【0110】
(比較例1〜3)
比較例1〜3では、表2に示されている平均粒子径(μm)の、略球形状のカーボン粉末の造孔材として用いた以外は、実施例1と同様の方法により、ハニカム構造体、およびハニカム触媒体を作製した。
【0111】
(実施例15〜19)
実施例15〜19では、表3に示されている、造孔材(I)の平均粒子径(μm)、造孔材(II)の平均粒子径(μm)、および造孔材(I)に造孔材(II)を混ぜ合わせて接着させる際における造孔材(I)の個数に対する造孔材(II)の個数の比の値[造孔材(II)の個数/造孔材(I)の個数]にて、複数の突起部を有する造孔材を作製し、これを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、ハニカム構造体、およびハニカム触媒体を作製した。なお、実施例15〜19のいずれも平均細孔径が23μm、表層領域における大細孔の割合が72%、中心領域における大細孔の割合が25%であった。
【0112】
(実施例20〜26)
実施例20〜26では、表3に示されている、造孔材(I)の平均粒子径(μm)、造孔材(II)の平均粒子径(μm)、および造孔材(I)に造孔材(II)を混ぜ合わせて接着させる際における造孔材(I)の個数に対する造孔材(II)の個数の比の値[造孔材(II)の個数/造孔材(I)の個数]にて、複数の突起部を有する造孔材を作製し、これを用い、さらに、触媒スラリーの調製時にβ−ゼオライト(銅イオン交換ゼオライト)に代えてバナジウムを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、ハニカム構造体、およびハニカム触媒体を作製した。なお、実施例20〜26のいずれも平均細孔径が23μm、表層領域における大細孔の割合が72%、中心領域における大細孔の割合が25%であった。
【0113】
(比較例4〜6)
表3に示されている平均粒子径(μm)の、略球形状のカーボン粉末の造孔材として用い、さらに、表5に示されているセル密度以外は比較例1と同様の方法により、ハニカム構造体およびハニカム触媒体を作製した。比較例4〜6では、表層領域における大細孔の割合が50%〜71%、中心領域における大細孔の割合が26%〜42%であった。また、比較例4〜6では、気孔率(A)が35%以下(45〜70%の範囲外)であった。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
【表5】
【0119】
実施例1〜26および比較例1〜6のハニカム構造体について、[気孔率(A)]、[平均細孔径]、[大細孔の割合の測定]、および[パーミアビリティの測定]の各評価を行った(結果を表4または表5に示す)。各評価の評価方法を以下に示す。各評価では、「A」、「B」、「C」の3段階で評価する。「A」および「B」は合格である。「A」は、「B」よりも優れていることを意味する。「C」は不合格である。
【0120】
[気孔率(A)(%)]:
ハニカム構造体における気孔率(A)(%)は、水銀ポロシメータ(水銀圧入法)によって測定した。水銀ポロシメータとしては、Micromeritics社製、商品名:Auto Pore III 型式9405を用いた。
【0121】
[平均細孔径(μm)]:
隔壁の平均細孔径は、水銀ポロシメータ(水銀圧入法)によって測定した。
【0122】
[大細孔の割合の測定]:
走査型電子顕微鏡(SEM)によって、ハニカムの隔壁の、セルの延びる方向に直交する断面を任意に4視野撮影した。撮影倍率は、100倍とする。1視野は、縦640×横480ピクセル、1ピクセル=1μmとした。撮影された画像を画像解析(三谷商事社製の「WINROOF」)によって二値化を行った。二値化を行った後、細孔の面積割合を算出した。
【0123】
[パーミアビリティの測定]
ダルシー則として、次式が一般的に存在する。ΔP/L=1/k×μ×u、ΔP[Pa]:空気透過時の圧力損失、L[m]:試料厚み、μ[Pa・s]:空気粘度25℃、1atmの粘度18.35−6、u[m/s]:流体速度。このときの透過係数k[m]をパーミアビリティと定義し、算出した。
【0124】
実施例1〜26および比較例1〜6のハニカム触媒体について、[気孔率(B)]、[浄化効率]、[圧力損失]、[耐熱衝撃性]、および[触媒剥がれ]の各評価を行った(結果を表4または表5に示す)。各評価の評価方法を以下に示す。各評価では、「A」、「B」、「C」の3段階で評価する。「A」および「B」は合格である。「A」は、「B」よりも優れていることを意味する。「C」は不合格である。
【0125】
[気孔率(B)(%)]:
ハニカム触媒体における気孔率(B)(%)は、上述の気孔率(A)と同様の方法によって測定した。さらに、気孔率(A)に対する気孔率(B)の比[気孔率(B)/気孔率(A)]を算出した。
【0126】
[浄化効率(NO浄化効率)]
まず、ハニカム触媒体に、NOを含む試験用ガスを流した。その後、このハニカム触媒体から排出された排出ガスのNO量をガス分析計で分析した。
【0127】
ここで、ハニカム触媒体に流入させる試験用ガスの温度200℃とした。なお、ハニカム触媒体および試験用ガスは、ヒーターにより温度調整した。ヒーターは、赤外線イメージ炉を用いた。試験用ガスは、窒素に、二酸化炭素5体積%、酸素14体積%、一酸化窒素350ppm(体積基準)、アンモニア350ppm(体積基準)および水10体積%が混合されたガスを用いた。この試験用ガスは、水と、その他のガス(窒素、二酸化炭素、酸素、一酸化窒素、アンモニア)を混合した混合ガスとを別々に準備しておいた。そして、試験を行う際に、配管中においてこれらを混合させて試験用ガスを得た。ガス分析計は、「HORIBA社製、MEXA9100EGR」を用いた。また、試験用ガスがハニカム触媒体に流入するときの空間速度は、50000(時間−1)とした。
【0128】
表4中の「NO浄化率」は、試験用ガスのNO量から、ハニカム触媒体からの排出ガスのNO量を差し引いた値を、試験用ガスのNO量で除算し、100倍した値である。ここで、NO浄化率が50%以上である場合には「A」、30%超かつ50%未満である場合には「B」、30%以下である場合には「C」とした。
【0129】
[圧力損失]
室温条件下において0.5m/分の流速でエアーをハニカム触媒体に流通させた。この状態で、エアー流入側の圧力とエアー流出側の圧力との差を測定した。この圧力の差を圧力損失として算出した。圧力損失比が1.15未満である場合には「A」、1.15以上かつ1.20未満である場合には「B」、1.20以上である場合には「C」とした。
【0130】
[強度]
ハニカム触媒体の強度を測定した。強度の測定は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)M505−87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて行った。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器にハニカム触媒体を入れてアルミ製板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。即ち、アイソスタティック破壊強度試験は、コンバータの缶体にハニカム触媒体が外周面把持される場合の圧縮負荷加重を模擬した試験である。アイソスタティック破壊強度は、ハニカム触媒体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。加圧圧力値(MPa)が2.00MPa以上である場合には「A」、0.9MPa以上かつ2.0MPa未満である場合には「B」、0.9MPa未満である場合には「C」とした。
【0131】
[耐熱衝撃性]
まず、ハニカム触媒体をある所定の温度の炉の中へ搬入し、60分間同温度のままハニカム触媒体を置いておいた。60分後に炉内からハニカム触媒体を取り出して常温の場所へと移し、ハニカム触媒体の端面にクラックが入っているのか否かを確認した。クラックが発生し始めた時点での炉内の温度が550℃以上である場合には「A」、500℃以上かつ550℃未満である場合には「B」、500℃未満である場合には「C」とした。
【0132】
[触媒剥離試験]
ハニカム触媒体を板金容器にパッケージして、入口排温650℃、30Gの加振力を与え、100時間の耐久試験を行った。耐久試験前および耐久試験後のハニカム触媒体の重量を測定し、ハニカム触媒体の重量減少分を触媒剥離量として測定した。ハニカム触媒体の重量減少が3%未満である場合には「A」、3%以上かつ5%未満である場合には「B」、5%以上である場合には「C」とした。
【0133】
実施例1〜14のハニカム触媒体では、「NO浄化率」、「圧力損失」、「強度」、「耐熱衝撃性」の評価がいずれも「A」または「B」、すなわち「合格」であった。対して、比較例1〜3のハニカム触媒体では、上記の4項目の評価のうち、少なくとも1項目は「C」(不合格)であった。
【0134】
実施例15〜26のハニカム触媒体では、「NO浄化率」、「圧力損失」、「触媒剥がれ」の評価がいずれも「A」または「B」、すなわち「合格」であった。対して、比較例4〜6のハニカム触媒体では、「触媒剥がれ」の評価が「C」(不合格)であった。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、排ガス浄化用の触媒を担持させるハニカム構造体およびこれを用いたハニカム触媒体、ならびにハニカム構造体の製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0136】
2:(一方の)端面、3:(他方の)端面、4,4a,4b:セル、5:隔壁、7:外周壁、10,10a〜10c:細孔、12,12a,12b:大細孔、20:触媒、30:(触媒によって塞がった)細孔の開口部、100:ハニカム構造体、150:坏土、170:坏土から作られた隔壁、200:造孔材、250,250a,250b:突起部、270:(造孔材の)表面、400:(口金のスリットの)壁面、450:(スリットの)入口、G,G〜G:ガス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B