特許第6081834号(P6081834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081834
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20170206BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   G03G9/08 331
   G03G9/08 365
   G03G9/08 381
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-56868(P2013-56868)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2013-235248(P2013-235248A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年12月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-90350(P2012-90350)
(32)【優先日】2012年4月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】芦沢 健
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 省伍
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴史
(72)【発明者】
【氏名】平井 規晋
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−099581(JP,A)
【文献】 特開2009−157236(JP,A)
【文献】 特開2002−287427(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/057233(WO,A1)
【文献】 特開2008−291243(JP,A)
【文献】 特開2009−197110(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/148545(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 − 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と離型剤とを含有してなる静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂が原料モノマーとして少なくともフラン環を有するカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又はフラン環を有するアルコールを含むアルコール成分を含み、該フラン環を有するカルボン酸化合物と該フラン環を有するアルコールとの合計量が、カルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、30〜100モル%であるカルボン酸成分とアルコール成分との縮重合物であるフラン環を有するポリエステルAを含有し、離型剤がエステルワックスを含有してなる、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量が、結着樹脂中のすべてのポリエステルのカルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、5〜80モル%である、請求項記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
結着樹脂が、軟化点が125℃を超えて160℃以下であるポリエステルHと、軟化点が90〜125℃であるポリエステルLを含有してなり、ポリエステルHとポリエステルLの軟化点の差が10℃以上であり、ポリエステルH及びポリエステルLの少なくともいずれか一方がフラン環を有するポリエステルAである、請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
フラン環を有するポリエステルAの含有量が、結着樹脂中、10重量%以上である、請求項1〜いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
エステルワックスの融点が、60〜100℃である、請求項1〜いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
離型剤がさらに炭化水素ワックスを含有する、請求項1〜いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量が、結着樹脂中のすべてのポリエステルのカルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、5モル%以上50モル%以下である、請求項1〜6いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
フラン環を有するポリエステルAの含有量が、結着樹脂中、50重量%以上である、請求項1〜いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
エステルワックスが、カルナバワックス、炭素数18〜24の1価の脂肪族アルコールと炭素数18〜24の脂肪酸を反応させたエステル、及びペンタエリスリトールと炭素数18〜24の脂肪酸を反応させたエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
エステルワックスの含有量が、結着樹脂100重量部に対して、2重量部以上13重量部以下である、請求項1〜いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
アルコール成分が、脂肪族ジオールを含有する、請求項1〜10いずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項12】
脂肪族ジオールが、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールである、請求項11記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項13】
請求項1〜12いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法であって、結着樹脂と離型剤を含む成分を、オープンロール型混練機を用いて溶融混練して溶融混練物を得る工程を含み、前記結着樹脂がフラン環を有するポリエステルAを含有し、離型剤がエステルワックスを含有してなる、静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費エネルギー低減、印字速度の高速化に伴い、トナーに低温定着性が要求されている。これを解決するために、エステルワックスを含有したトナーが多数検討されている。
【0003】
例えば、特定のエステルワックスと特定の脂肪族炭化水素重合体を使用したトナーが、保存性と低温定着性のバランスがとれ、さらには、耐オフセット性及び印字耐久性に優れることが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、特定のエステルワックスと特定の石油ワックスを使用したトナーが定着性及び耐久性、特にジャンピング現像方式での飛翔性のいずれにも優れることが開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
一方で、環境負荷低減の観点よりバイオマス原料の使用が近年、望まれている。
【0006】
例えば、フラン構造を有し、還元粘度(ηsp/C)が0.48dL/g以上、末端酸価が200μeq/g未満であることを特徴とする熱可塑性樹脂が耐熱性、機械物性、耐候性に優れることが開示されている(特許文献3参照)。
【0007】
また、特定のフラン環の構造単位を有するポリエステル樹脂が耐衝撃性に優れ、成形品製造用材料に好適であることが開示されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−271939号公報
【特許文献2】特開2005−141189号公報
【特許文献3】特開2008−291243号公報
【特許文献4】特開2009−197110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献3に記載の樹脂は、フィルム用途や射出成形品の用途を主として使用するものであるため結晶性が高く、トナー用結着樹脂には適していない。また、特許文献4に記載の樹脂も、成形品用組成物であるため結晶性が高く、トナー用結着樹脂には適していない。
【0010】
また、特許文献1、2に記載のトナーでは、低温定着性と耐熱保存性のさらなる要求に対しては未だ不十分である。
【0011】
本発明の課題は、低温定着性に優れ、耐熱保存性に優れる、静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
〔1〕 結着樹脂と離型剤とを含有してなる静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂がフラン環を有するポリエステルAを含有し、離型剤がエステルワックスを含有してなる、静電荷像現像用トナー、並びに
〔2〕 少なくとも結着樹脂と離型剤とを含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、結着樹脂と離型剤を含む成分を、オープンロール型混練機を用いて溶融混練して溶融混練物を得る工程を含み、前記結着樹脂がフラン環を有するポリエステルAを含有し、離型剤がエステルワックスを含有してなる、静電荷像現像用トナーの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の静電荷像現像用トナーは、低温定着性に優れ、耐熱保存性に優れるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂と離型剤を含有するトナーであって、結着樹脂がフラン環を有するポリエステルを含有し、離型剤がエステルワックスを含有している点に特徴を有する。
【0015】
本発明の静電荷像現像用トナーは、低温定着性に優れ、耐熱保存性に優れるという効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
フラン環を有する樹脂は、ガラス転移温度が高いために、軟化点を下げる、すなわち分子量を小さくしても、耐熱保存性や耐高温オフセット性を低下させることなく、低温定着性を向上させることができる。分子量を下げることができるために、さらに、エステルワックスとの相溶性が向上し、耐熱保存性や耐高温オフセット性を低下させることなく、よりいっそう低温定着性が向上するものと考えられる。
【0016】
<結着樹脂>
本発明のトナーに用いる結着樹脂は、フラン環を有するポリエステルAを含有する。
ポリエステルAは、原料モノマーとして少なくともフラン環を有するカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又はフラン環を有するアルコールを含むアルコール成分を用い、カルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られるポリエステルが好ましく、フラン環としては、式(Ia)又は(Ib):
【0017】
【化1】
【0018】
で表される構造が好ましい。
【0019】
また、フラン環を有するポリエステルAは、トナーの耐熱保存性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、非晶質樹脂であることが好ましい。
ここで、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表される。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.9〜1.2であり、非晶質樹脂は1.4を超えるか、0.6未満の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度は、軟化点との差が20℃以内であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超える場合はガラス転移に起因するピークとする。
【0020】
フラン環を有するカルボン酸化合物としては、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸等のフランジカルボン酸化合物;2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸等のフランカルボン酸化合物;5-ヒドロキシメチル-フラン-2-カルボン酸等のヒドロキシフランカルボン酸化合物;フルフリル酢酸化合物、3-カルボキシ-4-メチル-5-プロピル-2-フランプロピオネート等のカルボン酸化合物等が挙げられる。なお、本明細書中、カルボン酸化合物はカルボン酸、カルボン酸と炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルコールとのエステル及び酸無水物を含む。また、ヒドロキシカルボン酸化合物はカルボン酸化合物に含める。
【0021】
これらの中では、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐刷性を向上させる観点から、フランジカルボン酸化合物、フランカルボン酸化合物及びヒドロキシフランカルボン酸化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましく、フランジカルボン酸化合物がより好ましく、2,5-フランジカルボン酸がより好ましい。
【0022】
フラン環を有するアルコールとしては、ジヒドロキシフラン等のフランジアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフリルアルコール等のヒドロキシメチルフルフリルアルコール;フルフリルアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられる。
【0023】
式(Ia)で表されるフラン環を有するカルボン酸化合物として、2,5-フランジカルボン酸、2,4-フランジカルボン酸、2,3-フランジカルボン酸、3,4-フランジカルボン酸等のフランジカルボン酸化合物;5-ヒドロキシメチル-フラン-2-カルボン酸等のヒドロキシフランカルボン酸化合物等のカルボン酸化合物等が挙げられ、フランジカルボン酸化合物が好ましい。
【0024】
式(Ia)で表されるフラン環を有するアルコールとして、5-ヒドロキシメチルフルフリルアルコール等のヒドロキシメチルフルフリルアルコール;ジヒドロキシフラン等のフランジアルコール;5-ヒドロキシメチルフルフラール等が挙げられ、フランジアルコールが好ましい。
【0025】
式(Ib)で表されるフラン環を有するカルボン酸化合物として、2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸等のフランカルボン酸化合物;フルフリル酢酸化合物等が挙げられる。
【0026】
式(Ib)で表されるフラン環を有するアルコールとして、フルフリルアルコール等が挙げられる。
【0027】
上記のカルボン酸化合物及びアルコールの中では、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐刷性を向上させる観点から、式(Ia)で表されるフラン環を有するカルボン酸化合物とアルコールとが好ましく、フランジカルボン酸化合物及びフランジアルコールがより好ましく、フランジカルボン酸化合物がさらに好ましい。
【0028】
フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、耐刷性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、ポリエステルAのカルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜90モル%、さらに好ましくは20〜80モル%、よりさらに好ましくは30〜70モル%、よりさらに好ましくは40〜50モル%である。
【0029】
さらに、フラン環を有するカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、耐刷性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、ポリエステルAのカルボン酸成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%、よりさらに好ましくは60〜100モル%、よりさらに好ましくは90〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましく、100モル%がよりさらに好ましい。
【0030】
フランジカルボン酸化合物の含有量は、同様の観点から、ポリエステルAのカルボン酸成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%、よりさらに好ましくは60〜100モル%、よりさらに好ましくは90〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましく、100モル%がよりさらに好ましい。
【0031】
フラン環を有するカルボン酸化合物を用いる場合は、フラン環を有するアルコールを用いなくてもよい。フラン環を有するアルコールを用いる場合、フラン環を有するアルコールの含有量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、耐刷性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、ポリエステルAのアルコール成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜90モル%、さらに好ましくは20〜80モル%、よりさらに好ましくは20〜60モル%である。
【0032】
なお、結着樹脂が複数のポリエステルAを含有する場合、上記のフラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量、フラン環を有するカルボン酸化合物の含有量、フランジカルボン酸化合物の含有量及びフラン環を有するアルコールの含有量は、各ポリエステルAにおけるそれぞれの化合物の含有量と各ポリエステルAの重量分率の積の和によって求める。
【0033】
フラン環を有するアルコール以外のアルコール成分としては、トナーの低温定着性を向上させる観点から、脂肪族ジオールが好ましい。脂肪族ジオールの炭素数は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、2〜10が好ましく、3〜8がより好ましく、3〜4がさらに好ましい。
【0034】
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、2,3-ブタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0035】
これらの中で、フラン環とともに、樹脂の運動性をさらに低下させることで、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールが好ましい。かかる脂肪族ジオールは、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、炭素数は、3〜8が好ましく、3〜6がより好ましく、3〜4がさらに好ましく、具体的な好適例としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール等が挙げられ、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、1,2-プロパンジオール及び2,3-ブタンジオールが好ましい。
【0036】
脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、フラン環を有するアルコール以外のアルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましく、100モル%がよりさらに好ましい。
【0037】
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、フラン環を有するアルコール以外のアルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましく、100モル%がよりさらに好ましい。
【0038】
脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、アルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましく、100モル%がよりさらに好ましい。
【0039】
第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、アルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましく、100モル%がよりさらに好ましい。
【0040】
これら以外のアルコール成分としては、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、芳香族アルコールが挙げられる。
【0041】
芳香族アルコールとしては、トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、式(II):
【0042】
【化2】
【0043】
(式中、R1O及びOR1はオキシアルキレン基であり、R1はエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0044】
式(II)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物等のビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0045】
本発明において、アルコール成分は、トナーの耐刷性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、3価以上の多価アルコール、好ましくはグリセリン、ペンタエリスリトール及びトリメチロールプロパンからなる群より選ばれた少なくとも1種、より好ましくはグリセリンを含有していることが好ましい。3価以上の多価アルコールの含有量は、トナーの耐刷性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、アルコール成分中、1〜35モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましく、20〜25モル%がさらに好ましい。
【0046】
フラン環を有するカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物及び3価以上の多価カルボン酸化合物を含有してもよい。本発明においては、カルボン酸、酸無水物、炭素数1〜6のアルキルエステル等の誘導体等を含め、総称してカルボン酸化合物という。
【0047】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸無水物、炭素数1〜6のアルキルエステル等が挙げられる。
【0048】
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、これらの酸無水物、炭素数1〜6のアルキルエステル等が挙げられる。
【0049】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの酸無水物、炭素数1〜6のアルキルエステル等が挙げられる。
【0050】
アルコール成分にはフラン環を有さない1価のアルコールが、カルボン酸成分にはフラン環を有さない1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0051】
ポリエステルAにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルAの酸価を低減する観点から、0.70〜1.10が好ましく、0.75〜1.00がさらに好ましい。
【0052】
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられ、エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1.5重量部が好ましく、0.1〜1.0重量部がより好ましい。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.001〜0.5重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましい。
【0053】
ポリエステルAの軟化点は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、耐刷性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、90〜160℃が好ましく、90〜155℃がより好ましい。
【0054】
結着樹脂が複数のポリエステルAを含有する場合は、各ポリエステルAの軟化点と各ポリエステルAの重量分率の積の和が上記範囲となることが好ましい。
【0055】
ポリエステルAの軟化点は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
【0056】
ポリエステルAのガラス転移温度は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、耐刷性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、50〜85℃が好ましく、60〜75℃がより好ましい。
【0057】
ポリエステルAのガラス転移温度は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比等によって制御することができる。
【0058】
結着樹脂が複数のポリエステルAを含有する場合は、各ポリエステルAのガラス転移温度と各ポリエステルAの重量分率の積の和が上記範囲内となることが好ましい。
【0059】
ポリエステルAの酸価は、トナーの帯電安定性、耐熱保存性、耐刷性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、25mgKOH/g以下がより好ましい。
【0060】
ポリエステルAの酸価は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
【0061】
本発明に用いる結着樹脂は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、軟化点の異なる2種以上のポリエステルを含有することが好ましい。
【0062】
軟化点が高い方のポリエステルHと軟化点が低い方のポリエステルLの軟化点の差は、トナーの低温定着性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、10℃以上が好ましく、20〜60℃がより好ましく、30〜50℃がさらに好ましい。
【0063】
ポリエステルHの軟化点は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐刷性を向上させる観点から、125℃を超えて160℃以下が好ましく、135〜155℃がより好ましい。
【0064】
ポリエステルLの軟化点は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、90〜125℃が好ましく、90〜110℃がより好ましい。
【0065】
結着樹脂中、複数のポリエステルL、複数のポリエステルHを含有してもよい。結着樹脂が複数のポリエステルL、複数のポリエステルHを含有する場合、ポリエステルLの軟化点及びポリエステルHの軟化点は、各ポリエステルの軟化点と各ポリエステルの重量分率の積の和が上記範囲となることが好ましい。
【0066】
ポリエステルの軟化点は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
【0067】
ポリエステルH及びポリエステルLの合計の含有量は、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結着樹脂中、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがよりさらに好ましく、100重量%がよりさらに好ましい。
【0068】
本発明に用いる結着樹脂において、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐刷性を向上させる観点から、ポリエステルH及びポリエステルLの少なくともいずれか一方がポリエステルAであるのが好ましく、ポリエステルL及びポリエステルHがポリエステルAであることがより好ましい。
【0069】
ポリエステルA以外のポリエステルとしては、特に限定はされない。
【0070】
ポリエステルA以外のポリエステルのアルコール成分の好ましい態様は、ポリエステルAのフラン環を有するアルコール以外のアルコール成分と同様であり、脂肪族ジオールが好ましく、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールがより好ましい。
【0071】
また、トナーの低温定着性、耐高温オフセット性、耐熱保存性及び耐刷性を向上させる観点から、3価以上の多価アルコールを含有していることが好ましく、3価のアルコールを含有していることがより好ましく、グリセリンを含有していることがさらに好ましい。
【0072】
脂肪族ジオール、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオール及び3価以上の多価アルコールのアルコール成分中の好ましい含有量は、ポリエステルAで述べた態様と同様である。
【0073】
また、ポリエステルA以外のポリエステルのカルボン酸成分としては、トナーの帯電安定性、耐熱保存性及び耐刷性を向上させる観点から、芳香族カルボン酸化合物が好ましく、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸無水物、炭素数1〜6のアルキルエステル等が挙げられる。
【0074】
芳香族カルボン酸化合物のカルボン酸成分中の含有量は、トナーの帯電安定性、トナーの耐熱保存性及び耐刷性を向上させる観点から、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%であり、実質的に100モル%がよりさらに好ましく、100モル%がよりさらに好ましい。
【0075】
ポリエステルAの含有量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐刷性を向上させる観点から、結着樹脂中、10重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましく、80重量%以上がよりさらに好ましく、実質的に100重量%がよりさらに好ましく、100重量%がよりさらに好ましい。
【0076】
また、結着樹脂中のすべてのポリエステルのカルボン酸成分とアルコール成分との合計量中の、フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐刷性を向上させる観点から、5モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましく、30モル%以上がよりさらに好ましく、40モル%以上がよりさらに好ましい。また、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がより好ましく、60モル%以下がさらに好ましく、50モル%以下がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、5〜80モル%が好ましく、15〜80モル%がより好ましく、20〜70モル%がさらに好ましく、30〜60モル%がよりさらに好ましく、40〜50モル%がよりさらに好ましい。
【0077】
結着樹脂は、本発明の効果が損なわれない範囲において、ポリエステルA及びポリエステルA以外のポリエステルの他に、他の樹脂を含有していてもよいが、ポリエステルA及びポリエステルA以外のポリエステルの合計含有量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性、耐高温オフセット性及び耐刷性を向上させる観点から、結着樹脂中、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがよりさらに好ましく、100重量%がよりさらに好ましい。他の結着樹脂としては、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等が挙げられる。
【0078】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0079】
<離型剤>
本発明のトナーに用いる離型剤は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点からエステルワックスを含有する。
【0080】
エステルワックスとは、エステル基を有するワックスをいい、天然エステルワックス及び合成エステルワックスが挙げられる。トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、天然エステルワックスが好ましい。
【0081】
天然エステルワックスとしては、カルナバワックス、モンタン系エステルワックス、ライスワックス及びキャンデリラワックス等が挙げられ、本発明のトナーはいずれであってもよい。本発明では、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、カルナバワックスが好ましい。
【0082】
合成エステルワックスとは、カルボン酸とアルコールを反応させて得られるエステル化合物である。
【0083】
カルボン酸の炭素数は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、2〜30が好ましく、8〜30がより好ましく、12〜30がさらに好ましく、12〜24がよりさらに好ましく、14〜24がよりさらに好ましく、18〜24がよりさらに好ましい。
【0084】
また、カルボン酸の価数は、1価、2価、3価以上のいずれであってもよいが、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、1価が好ましい。
【0085】
カルボン酸は、同様の観点から、直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を有する脂肪酸が好ましく、直鎖のアルキル基を有する脂肪酸がより好ましい。
【0086】
直鎖アルキル基を有する脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、べへン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。
【0087】
アルコールの価数は、1価、2価、3価以上のいずれであってもよい。
【0088】
1価アルコールの炭素数は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、2〜30が好ましく、8〜30がより好ましく、12〜30がさらに好ましく、12〜24がよりさらに好ましい。また、同様の観点から、1価アルコールは、直鎖のアルキル基又はアルケニル基を持つものが好ましく、直鎖のアルキル基を持つものがより好ましい。
【0089】
直鎖のアルキル基又はアルケニル基を有する1価アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、べへニルアルコール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール等が挙げられる。
【0090】
2価アルコールの炭素数は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、2〜18が好ましく、2〜10がより好ましい。また、同様の観点から、α,ω−直鎖アルカンジオールが好ましい。
【0091】
2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール等が挙げられる。
【0092】
3価以上の多価のアルコールの炭素数は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、3〜10が好ましく、3〜5がより好ましい。また、3価以上の多価のアルコールの価数は、同様の観点から、3〜6が好ましく、3〜4がより好ましい。
【0093】
3価以上の多価のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、ペンタエリスリトールが好ましい。
【0094】
合成エステルワックスとしては、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、炭素数14〜24の1価の脂肪族アルコールと炭素数14〜24の脂肪酸を反応させたエステル及びペンタエリスリトールと炭素数14〜24の脂肪酸を反応させたエステルが好ましく、炭素数18〜24の1価の脂肪族アルコールと炭素数18〜24の脂肪酸を反応させたエステル及びペンタエリスリトールと炭素数18〜24の脂肪酸を反応させたエステルがより好ましい。
【0095】
エステルワックスとしては、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、カルナバワックス、モンタンワックス、ライスワックス、炭素数14〜24の1価の脂肪族アルコールと炭素数14〜24の脂肪酸を反応させて得られたエステル、及びペンタエリスリトールと炭素数14〜24の脂肪酸を反応させて得られたエステルが好ましく、カルナバワックス、炭素数18〜24の1価の脂肪族アルコールと炭素数18〜24の脂肪酸を反応させたエステル、及びペンタエリスリトールと炭素数18〜24の脂肪酸を反応させたエステルがより好ましく、カルナバワックスがさらに好ましい。
【0096】
エステルワックスの含有量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、2重量部以上が好ましく、3重量部以上がより好ましく、4重量部以上がさらに好ましく、5重量部以上がよりさらに好ましい。トナーの耐熱保存性を向上させる観点から、13重量部以下が好ましく、11重量部以下がより好ましく、9重量部以下がさらに好ましく、7重量部以下がよりさらに好ましい。これらの観点を総合すると、トナー中のエステルワックスの含有量は、結着樹脂100重量部に対して、2〜13重量部が好ましく、3〜11重量部がより好ましく、4〜9重量部がさらに好ましく、5〜7重量部がよりさらに好ましい。
【0097】
エステルワックスの融点は、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、60〜100℃が好ましく、70〜90℃がより好ましく、75〜85℃がさらに好ましい。
【0098】
<炭化水素ワックス>
離型剤は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、さらに炭化水素ワックスを含有することが好ましい。
【0099】
炭化水素ワックスとしては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素ワックス及びそれらの酸化物が挙げられる。これらのなかでは、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、低分子量ポリプロピレン及びパラフィンワックスが好ましい。さらに、トナーの低温定着性を向上させる観点から、パラフィンワックスがより好ましい。
【0100】
炭化水素ワックスの含有量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜6重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましく、2〜4重量部がさらに好ましい。
【0101】
炭化水素ワックスの融点は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、60〜140℃が好ましく、65〜120℃がより好ましく、70〜90℃がさらに好ましい。
【0102】
トナー中のエステルワックス及び炭化水素ワックスの総量は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、3〜15重量部が好ましく、5〜13重量部がより好ましく、6〜11重量部がさらに好ましく、7〜11重量部がよりさらに好ましい。
【0103】
<エステルワックス/炭化水素ワックス比>
エステルワックス/炭化水素ワックスの重量比[エステルワックス/炭化水素ワックス]は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、90/10〜10/90が好ましく、80/20〜40/60がより好ましく、70/30〜45/55がさらに好ましく、70/30〜55/45がよりさらに好ましい。
【0104】
エステルワックスと炭化水素ワックスの融点の差は、トナーの低温定着性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性を向上させる観点から、60℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、20℃以下がさらに好ましく、10℃以下がよりさらに好ましい。
【0105】
<その他の離型剤>
本発明のトナーは、エステルワックス及び炭化水素ワックス以外の離型剤を、本発明の効果が損なわれない程度に適宜含有してもよい。エステルワックス及び炭化水素ワックス以外の離型剤としては、シリコーンオイル、ホホバ油等の天然油が挙げられる。
エステルワックスと炭化水素ワックスの合計含有量は、離型剤中、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%がよりさらに好ましく、100重量%がよりさらに好ましい。
【0106】
本発明のトナーは、結着樹脂及び離型剤以外に、着色剤、荷電制御剤等を含有してもよい。
【0107】
<着色剤>
本発明において、着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等を用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。トナー中の着色剤の含有量は、トナーの印字濃度及び定着性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、2〜10重量部がより好ましく、3〜8重量部がさらに好ましい。
【0108】
<荷電制御剤>
荷電制御剤として、負帯電性荷電制御剤、正帯電性荷電制御剤のいずれも用いることができる。
【0109】
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「ボントロンS-28」(オリエント化学工業社製)、「T-77」(保土谷化学工業社製)、「ボントロンS-34」(オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」(保土谷化学工業社製)等;銅フタロシアニン染料;サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、例えば「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-304」(以上、オリエント化学工業社製)等;ニトロイミダゾール誘導体;ベンジル酸ホウ素錯体、例えば、「LR-147」(日本カーリット社製)等;無金属系荷電調整剤、例えば「ボントロンF-21」、「ボントロンE-89」(以上、オリエント化学工業社製)、「T-8」(保土ヶ谷化学工業社製)、「FCA-2521NJ」、「FCA-2508N」(以上、藤倉化成社製)等が挙げられる。
【0110】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」(以上、オリエント化学工業社製)、「CHUO CCA-3」(中央合成化学社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、「TP-415」(保土谷化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PXVP435」(クラリアント社製)等が挙げられる。
【0111】
トナー中の荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、結着樹脂100重量部に対して、0.5〜5重量部が好ましく、1〜3重量部がより好ましい。
【0112】
<他の成分>
本発明のトナーは、さらに、トナー中に、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜含有していてもよい。
【0113】
<トナー製造方法>
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化凝集法、重合法等の従来より公知のいずれの方法によって得られたトナーであってもよいが、生産性や離型剤の分散性を向上させる観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。従って、本発明のトナーの製造方法は、結着樹脂と離型剤とを含むトナー成分を、溶融混練して溶融混練物を得る工程を含む方法が好ましく、具体的には、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤、離型剤等のトナー成分をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、溶融混練し、冷却後、粉砕、分級を行ってトナーを製造することができる。一方、トナーの小粒径化の観点からは、重合法や乳化凝集法等によるトナーが好ましい。
【0114】
トナー成分の溶融混練は、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、結着樹脂に離型剤等のトナー成分を効率よく高分散させることができる観点、トナーの低温定着性を向上させる観点、及びトナーの耐熱保存性を向上させる観点から、ロールの軸方向に沿って設けられた供給口と混練物排出口を備えたオープンロール型混練機を用いることが好ましい。
【0115】
トナー成分は、予めヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて均一に混合した後、オープンロール型混練機に供することが好ましく、1箇所の供給口から混練機に供給してもよく、複数の供給口から分割して混練機に供給してもよいが、操作の簡便性及び装置の簡略化の観点からは、1箇所の供給口から混練機に供給することが好ましい。
【0116】
オープンロール型混練機とは、混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが好ましく、本発明に用いられるオープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機である。本発明においては、離型剤等のトナー成分の結着樹脂への分散性を向上させる観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが好ましい。
【0117】
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
【0118】
高回転側ロールの成分投入側端部温度は100〜160℃が好ましく、低回転側ロールの成分投入側端部温度は30〜100℃が好ましい。
【0119】
高回転側ロールは、成分投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、混練物のロールからの脱離防止の観点から、20〜60℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましく、30〜50℃であることがさらに好ましい。低回転側ロールは、成分投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、離型剤等のトナー成分の結着樹脂への分散性を向上させる観点から、0〜50℃であることが好ましく、0〜40℃であることがより好ましく、0〜20℃であることがさらに好ましい。
【0120】
高回転側ロールの周速度は、2〜100m/分であることが好ましく、10〜75m/分がより好ましく、25〜50m/分であることがさらに好ましい。低回転側ロールの周速度は1〜90m/分が好ましく、5〜60m/分がより好ましく、15〜30m/分がさらに好ましい。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
【0121】
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよいが、混練シェアを高めるために、各ロールの表面には複数の螺旋状の溝が刻んであることが好ましい。
【0122】
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに所望の粒径に微粉砕してもよい。
【0123】
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、衝突板式ジェットミル、流動層式ジェットミル、回転型機械ミル等が挙げられる。粉砕効率の観点から流動層式ジェットミルを用いることが好ましい。
【0124】
分級工程に用いられる分級機としては、風力分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよい。
【0125】
<外添処理工程>
本発明のトナーの製造方法は、粉砕、分級工程後、得られたトナー粒子(トナー母粒子)をさらに外添剤と混合する工程を含むことが好ましい。
【0126】
外添剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられる。なかでも、シリカを併用することが好ましく、平均粒子径が20nm未満のシリカと20nm以上のシリカを、90/10〜10/90の重量比で併用することがさらに好ましい。
【0127】
トナー母粒子と外添剤との混合には、回転羽根等の攪拌具を備えた混合機を用いることが好ましく、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速混合機がより好ましく、ヘンシェルミキサーがさらに好ましい。
【0128】
<トナーの体積中位粒径>
トナーの体積中位粒径(D50)は、トナーの画像品質を向上させる観点から、3〜15μmが好ましく、4〜12μmがより好ましく、6〜9μmがさらに好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーが外添剤で処理されている場合には、トナー母粒子の体積中位粒径とする。
【0129】
本発明のトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【0130】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の静電荷像現像用トナー及びその製造方法を開示する。
【0131】
<1> 結着樹脂と離型剤とを含有してなる静電荷像現像用トナーであって、前記結着樹脂がフラン環を有するポリエステルAを含有し、離型剤がエステルワックスを含有してなる、静電荷像現像用トナー。
【0132】
<2> フラン環を有するポリエステルAが、原料モノマーとして少なくともフラン環を有するカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分及び/又はフラン環を有するアルコールを含むアルコール成分を用い、カルボン酸成分とアルコール成分とを縮重合させて得られるポリエステルである、前記<1>記載の静電荷像現像用トナー。
【0133】
<3> フラン環を有するポリエステルAが、非晶質樹脂である、前記<1>又は<2>記載の静電荷像現像用トナー。
【0134】
<4> フラン環が、式(Ia)又は式(Ib)で表される構造を有する、前記<1>〜<3>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0135】
<5> フラン環を有するカルボン酸化合物が、好ましくは、フランジカルボン酸化合物、フランカルボン酸化合物及びヒドロキシフランカルボン酸化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、より好ましくはフランジカルボン酸化合物、さらに好ましくは2,5-フランジカルボン酸である、前記<2>〜<4>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0136】
<6> フラン環を有するカルボン酸化合物が、好ましくは式(Ia)で表されるフラン環を有するカルボン酸化合物であり、より好ましくはフランジカルボン酸化合物である、前記<2>〜<5>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0137】
<7> フラン環を有するアルコールが、好ましくは式(Ia)で表されるフラン環を有するアルコールであり、より好ましくはフランジアルコールである、前記<2>〜<6>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0138】
<8> フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量は、ポリエステルAのカルボン酸成分とアルコール成分との合計量中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜90モル%、さらに好ましくは20〜80モル%、よりさらに好ましくは30〜70モル%、よりさらに好ましくは40〜50モル%である、前記<2>〜<7>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0139】
<9> フラン環を有するカルボン酸化合物の含有量が、ポリエステルAのカルボン酸成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%、よりさらに好ましくは60〜100モル%、よりさらに好ましくは90〜100モル%、よりさらに好ましくは実質的に100モル%、よりさらに好ましくは100モル%である、前記<2>〜<8>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0140】
<10> フランジカルボン酸化合物の含有量が、ポリエステルAのカルボン酸成分中、好ましくは10〜100モル%、より好ましくは20〜100モル%、さらに好ましくは30〜100モル%、よりさらに好ましくは60〜100モル%、よりさらに好ましくは90〜100モル%、よりさらに好ましくは実質的に100モル%、よりさらに好ましくは100モル%である、前記<5>〜<9>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0141】
<11> フラン環を有するポリエステルAが、フラン環を有するアルコール以外のアルコール成分として、脂肪族ジオールを含有する、前記<1>〜<10>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0142】
<12> 脂肪族ジオールの炭素数が、好ましくは2〜10、より好ましくは3〜8、さらに好ましくは3〜4である、前記<11>記載の静電荷像現像用トナー。
【0143】
<13> 脂肪族ジオールが、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールである、前記<11>又は<12>記載の静電荷像現像用トナー。
【0144】
<14> 第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールは、炭素数が、好ましくは3〜8、より好ましくは3〜6、さらに好ましくは3〜4であり、好ましくは1,2-プロパンジオール及び/又は2,3-ブタンジオールである、前記<13>記載の静電荷像現像用トナー。
【0145】
<15> 脂肪族ジオールの含有量が、フラン環を有するアルコール以外のアルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%、よりさらに好ましくは実質的に100モル%、よりさらに好ましくは100モル%である、前記<11>〜<14>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0146】
<16> 第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量が、フラン環を有するアルコール以外のアルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%、よりさらに好ましくは実質的に100モル%、よりさらに好ましくは100モル%である、前記<13>〜<15>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0147】
<17> 脂肪族ジオールの含有量が、アルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%、よりさらに好ましくは実質的に100モル%、よりさらに好ましくは100モル%である、前記<11>〜<16>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0148】
<18> 第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量が、アルコール成分中、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%、よりさらに好ましくは実質的に100モル%、よりさらに好ましくは100モル%である、前記<13>〜<17>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0149】
<19> アルコール成分が、3価以上の多価アルコール、好ましくはグリセリン、ペンタエリスリトール及びトリメチロールプロパンからなる群より選ばれた少なくとも1種、より好ましくはグリセリンを含有している、前記<2>〜<18>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0150】
<20> 3価以上の多価アルコールの含有量が、アルコール成分中、好ましくは1〜35モル%、より好ましくは10〜30モル%、さらに好ましくは20〜25モル%である、前記<19>記載の静電荷像現像用トナー。
【0151】
<21> ポリエステルAのガラス転移温度が、好ましくは50〜85℃、より好ましくは60〜75℃である、前記<1>〜<20>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0152】
<22> 結着樹脂が、軟化点が125℃を超えて160℃以下であるポリエステルHと、軟化点が90〜125℃であるポリエステルLを含有してなり、ポリエステルHとポリエステルLの軟化点の差が10℃以上であり、ポリエステルH及びポリエステルLの少なくともいずれか一方がフラン環を有するポリエステルAである、<1>〜<21>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0153】
<23> 軟化点が高い方のポリエステルHと軟化点が低い方のポリエステルLの軟化点の差が、より好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは30〜50℃である、前記<22>記載の静電荷像現像用トナー。
【0154】
<24> ポリエステルHの軟化点が、より好ましくは135〜155℃である、前記<22>又は<23>記載の静電荷像現像用トナー。
【0155】
<25> ポリエステルLの軟化点が、より好ましくは90〜110℃である、前記<22>〜<24>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0156】
<26> ポリエステルH及びポリエステルLの合計の含有量が、結着樹脂中、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、よりさらに好ましくは実質的に100重量%、よりさらに好ましくは100重量%である、前記<22>〜<25>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0157】
<27> ポリエステルH及びポリエステルLの少なくともいずれか一方がポリエステルAであることが好ましく、より好ましくはポリエステルL及びポリエステルHがポリエステルAである、前記<22>〜<26>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0158】
<28> フラン環を有するポリエステルAの含有量が、結着樹脂中、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、よりさらに好ましくは80重量%以上、よりさらに好ましくは実質的に100重量%、よりさらに好ましくは100重量%である、前記<1>〜<27>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0159】
<29> 結着樹脂中のすべてのポリエステルのカルボン酸成分とアルコール成分との合計量中の、フラン環を有するカルボン酸化合物とフラン環を有するアルコールとの合計量は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上、よりさらに好ましくは30モル%以上、よりさらに好ましくは40モル%以上であり、また、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下、よりさらに好ましくは50モル%以下であり、好ましくは5〜80モル%、より好ましくは15〜80モル%、さらに好ましくは20〜70モル%、よりさらに好ましくは30〜60モル%、よりさらに好ましくは40〜50モル%である、前記<2>〜<28>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0160】
<30> ポリエステルA及びポリエステルA以外のポリエステルの合計含有量が、結着樹脂中、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、よりさらに好ましくは実質的に100重量%、よりさらに好ましくは100重量%である、前記<1>〜<29>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0161】
<31> エステルワックスが、天然エステルワックスである、前記<1>〜<30>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0162】
<32> 天然エステルワックスが、カルナバワックスである、前記<31>記載の静電荷像現像用トナー。
【0163】
<33> エステルワックスが、カルボン酸とアルコールを反応させて得られる合成エステルワックスである、前記<1>〜<32>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0164】
<34> 合成エステルワックスが、好ましくは炭素数14〜24の1価の脂肪族アルコールと炭素数14〜24の脂肪酸を反応させて得られたエステル及び/又はペンタエリスリトールと炭素数14〜24の脂肪酸を反応させて得られたエステルであり、より好ましくは炭素数18〜24の1価の脂肪族アルコールと炭素数18〜24の脂肪酸を反応させたエステル及び/又はペンタエリスリトールと炭素数18〜24の脂肪酸を反応させたエステルである、前記<33>記載の静電荷像現像用トナー。
【0165】
<35> エステルワックスが、好ましくは、カルナバワックス、モンタンワックス、ライスワックス、炭素数14〜24の1価の脂肪族アルコールと炭素数14〜24の脂肪酸を反応させて得られたエステル、及びペンタエリスリトールと炭素数14〜24の脂肪酸を反応させて得られたエステルであり、より好ましくは、カルナバワックス、炭素数18〜24の1価の脂肪族アルコールと炭素数18〜24の脂肪酸を反応させたエステル、及びペンタエリスリトールと炭素数18〜24の脂肪酸を反応させたエステル、さらに好ましくはカルナバワックスである、前記<1>〜<34>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0166】
<36> エステルワックスの含有量が、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは2重量部以上、より好ましくは3重量部以上、さらに好ましくは4重量部以上、よりさらに好ましくは5重量部以上であり、好ましくは13重量部以下、より好ましくは11重量部以下、さらに好ましくは9重量部以下、よりさらに好ましくは7重量部以下であり、好ましくは2〜13重量部、より好ましくは3〜11重量部、さらに好ましくは4〜9重量部、よりさらに好ましくは5〜7重量部である、前記<1>〜<35>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0167】
<37> エステルワックスの融点が、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃、さらに好ましくは75〜85℃である、前記<1>〜<36>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0168】
<38> 離型剤がさらに炭化水素ワックスを含有する、<1>〜<37>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0169】
<39> 炭化水素ワックスが、低分子量ポリプロピレン及び/又はパラフィンワックスが好ましく、より好ましくはパラフィンワックスである、前記<38>記載の静電荷像現像用トナー。
【0170】
<40> 炭化水素ワックスの含有量が、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは0.5〜6重量部、より好ましくは1〜5重量部、さらに好ましくは2〜4重量部である、前記<38>又は<39>記載の静電荷像現像用トナー。
【0171】
<41> 炭化水素ワックスの融点が、好ましくは60〜140℃、より好ましくは65〜120℃、さらに好ましくは70〜90℃である、前記<38>〜<40>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0172】
<42> トナー中のエステルワックス及び炭化水素ワックスの総量が、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは3〜15重量部、より好ましくは5〜13重量部、さらに好ましくは6〜11重量部、よりさらに好ましくは7〜11重量部である、前記<38>〜<41>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0173】
<43> エステルワックスと炭化水素ワックスの重量比[エステルワックス/炭化水素ワックス]が、好ましくは90/10〜10/90、より好ましくは80/20〜40/60、さらに好ましくは70/30〜45/55、よりさらに好ましくは70/30〜55/45である、前記<38>〜<42>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0174】
<44> エステルワックスと炭化水素ワックスの融点の差が、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは20℃以下、よりさらに好ましくは10℃以下である、前記<38>〜<43>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0175】
<45> トナーの体積中位粒径が、好ましくは3〜15μm、より好ましくは4〜12μm、さらに好ましくは6〜9μmである、前記<1>〜<44>のいずれか記載の静電荷像現像用トナー。
【0176】
<46> 少なくとも結着樹脂と離型剤とを含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、結着樹脂と離型剤を含む成分を、オープンロール型混練機を用いて溶融混練して溶融混練物を得る工程を含み、前記結着樹脂がフラン環を有するポリエステルAを含有し、離型剤がエステルワックスを含有してなる、静電荷像現像用トナーの製造方法。
【実施例】
【0177】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所社製、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0178】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却しそのまま1分間静止させた。その後、昇温速度10℃/分で測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
【0179】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、Q-100)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し測定した。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0180】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0181】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、DSC Q20)を用いて昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/分で-10℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で180℃まで昇温し、そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を離型剤の融点とした。
【0182】
〔外添剤の平均粒子径〕
一次粒子の平均粒子径を下記式より求める。
平均粒子径(nm)=6/(ρ×比表面積(m2/g))×1000
式中、ρは外添剤の真比重であり、シリカの場合、2.2である。比表面積は、窒素吸着法により求められたBET比表面積である。疎水化処理された外添剤の場合は、疎水化処理前の原体の比表面積とする。なお、上記式は、粒子径Rの球と仮定して、
比表面積=S×(1/m)
m(粒子の重さ)=4/3×π×(R/2)3×真比重
S(表面積)=4π(R/2)2
から得られる式である。
【0183】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5重量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0184】
[樹脂製造例]
表1に示す原料モノマー及びエステル化触媒・助触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した5リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、180℃まで昇温した後、210℃まで5時間かけて昇温を行った。その後210℃にて反応率が95%以上に到達したのを確認し、40kPaにて表1に記載の軟化点に達するまで反応を行って、樹脂L−1、L−2、H−1、H−2を得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
【0185】
【表1】
【0186】
[離型剤製造例1](W−2の製造)
攪拌器及び熱電対、窒素導入管を装備した4つ口丸型フラスコにペンタエリスリトール1モルに対してベヘン酸4モルを入れ、窒素雰囲気下130℃で5時間加熱しエステル化反応を行った。反応生成物をメチルエーテルで精製してペンタエリスリトールベヘン酸エステルを得た。なお、酸価は0.4mgKOH/g、水酸基価は1.6mgKOH/gであった。
【0187】
[離型剤製造例2](W−3の製造)
攪拌器及び熱電対、窒素導入管を装備した4つ口丸型フラスコにベヘニルアルコール1
モルに対してベヘン酸1モルを入れ、窒素雰囲気下130℃で3時間加熱しエステル化反応を行った。反応生成物をメチルエーテルで精製してベヘン酸ベヘニルを得た。なお、酸価は0.1mgKOH/g、水酸基価は1.2mgKOH/gであった。
【0188】
実施例、比較例に用いた離型剤を下記に示す。
W−1:カルナウバワックス(加藤洋行社製 カルナウバワックスC1:融点80℃)
W−2:ペンタエリスリトールベヘン酸エステル(融点80℃)
W−3:ベヘン酸ベヘニル(融点75℃)
W−4:パラフィンワックス(日本精蝋社製 HNP-9:融点75℃)
W−5:ポリプロピレンワックス(三井化学社製 三井ハイワックスNP056:融点120℃)
【0189】
[トナー製造例]
実施例1〜19及び比較例1〜5
表2、表3に示す所定量の結着樹脂、離型剤、正帯電性荷電制御剤「ボントロン N-01」(オリエント化学工業社製、ニグロシン染料)3.0重量部及び着色剤「Mogul-L」(キャボット社製、カーボンブラック)4.0重量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0190】
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度32.4m/分、低回転側ロール(バックロール)周速度21.7m/分、ロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が135℃及び混練物排出側が90℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の供給速度は4kg/時間、平均滞留時間は約6分間であった。
【0191】
混練物を冷却後、ロートプレックス(東亜機械社製)を用いて平均粒子径1mmに粗粉砕した。得られた粗粉砕物を流動層式ジェットミル粉砕機AFG-200(ホソカワアルピネ社製)にて微粉砕し、ロータ式分級機TTSP-100(ホソカワアルピネ社製)にて分級して、体積中位粒径(D50)が7.0μmのトナー母粒子を得た。
【0192】
得られたトナー母粒子100重量部と、疎水性シリカ「TG-820F」(キャボット・スペシャリティー・ケミカルズ・インク社製、平均粒子径:8nm)1.0重量部及び疎水性シリカ「NA50H」(日本アエロジル社製、平均粒子径:40nm)1.0重量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて2100r/分(周速度29m/秒)で3分間混合して、トナーを得た。
【0193】
実施例20、21
表4に示す所定量の結着樹脂、離型剤、正帯電性荷電制御剤「ボントロン N-01」(オリエント化学工業社製、ニグロシン染料)3.0重量部及び着色剤「Mogul-L」(キャボット社製、カーボンブラック)4.0重量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0194】
同方向回転二軸押出機PCM-30(池貝鉄工社製)を使用して、バレル設定温度 100℃、軸回転数 200r/分(軸の回転の周速 0.30m/秒)にて、混合物供給速度 10kg/hrの条件で溶融混練を行い、混練物を得た。
【0195】
粉砕及び分級を実施例1と同様に行い、体積中位粒径(D50)が7.0μmのトナー母粒子を得た。
【0196】
得られたトナー母粒子100重量部と、疎水性シリカ「TG-820F」(キャボット・スペシャリティー・ケミカルズ・インク社製、平均粒子径:8nm)1.0重量部及び疎水性シリカ「NA50H」(日本アエロジル社製、平均粒子径:40nm)1.0重量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて2100r/分(周速度29m/秒)で3分間混合して、トナーを得た。
【0197】
〔試験例1:最低定着温度〕
未定着画像を取れる様に改造した、ブラザー工業社製のプリンター「HL-2040」にトナーを充填し、2cm角のベタ画像の未定着画像を印刷した。オイルレス定着方式の「DL-2300」(コニカミノルタ社製)を改造した外部定着装置(定着ロールの回転速度を265mm/秒に設定し、定着装置中の定着ロール温度を可変にした装置)にて、定着温度として定着ロールの温度を100℃から230℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度でこの未定着画像の定着処理を行い、定着画像を得た。各定着温度で得られた画像を、500gの荷重をかけた砂消しゴムで5往復擦り、擦り前後の画像濃度を画像濃度測定器「GREGSPM50」(Gretag社製)を用いて測定し、擦り前後の画像濃度比率(擦り後/擦り前×100)が最初に90%を超える温度を最低定着温度とし、低温定着性の指標とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。結果を表2、3、4に示す。
【0198】
〔試験例2:耐高温オフセット性〕
未定着画像を取れる様に改造した、ブラザー工業社製のプリンター「HL-2040」にトナーを充填し、2cm角のベタ画像の未定着画像を印刷した。オイルレス定着方式の「DL-2300」(コニカミノルタ社製)を改造した外部定着装置(定着ロールの回転速度を140mm/秒に設定し、定着装置中の定着ロール温度を可変にした装置)にて、定着ロールの温度を上記最低定着温度から230℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度でこの未定着画像の定着処理を行い、定着ローラ汚染が発生して、白紙部分に汚れが発生する温度を高温オフセット発生温度とし、耐高温オフセット性の指標とした。高温オフセット発生温度が高いほど、耐高温オフセット性に優れる。結果を表2、3、4に示す。
【0199】
〔試験例3:耐熱保存性〕
20ml容のポリエチレン製のボトルに、4gのトナーを入れた。トナーの入ったボトルを、55℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽に入れ、ボトルの蓋をあけた状態で、48時間保存した。放置後のトナーの凝集度を測定し、耐熱保存性の指標とした。この数値が小さいほど、耐熱保存性に優れる。結果を表2、3、4に示す。
【0200】
〔凝集度〕
凝集度は、パウダーテスタ(ホソカワミクロン社製)を用いて測定する。
150μm、75μm、45μmの目開きの篩を重ね、一番上にトナーを4g載せ、1mmの振動幅で60秒間振動させる。振動後、篩い上に残ったトナー量を測定し、下記の計算式を用いて凝集度の計算を行う。
【0201】
【数1】
【0202】
【表2】
【0203】
【表3】
【0204】
表2、3から明らかなように、実施例1〜19のトナーは、比較例1〜5のトナーに比べ、低温定着性及び耐熱保存性に優れる。さらに、表3から明らかなように、離型剤が炭化水素ワックスを含有すると、耐高温オフセット性が向上する。
【0205】
【表4】
【0206】
表4から明らかなように、溶融混練工程において、連続式オープンロール型混練機を用いて溶融混練すると、低温定着性及び耐熱保存性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明の静電荷像現像用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられるものである。