(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置が、前記標準液位を逸脱している時間が所定の時間継続したときに、前記戻り方向に、前記逸脱したときの前記標準周波数の第2の所定の割合の値である継続補正周波数を、前記第1の所定の割合の値で加減された運転周波数に対して加減した値を新たな運転周波数として送信するように構成された;
請求項1に記載の吸収式熱源装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0014】
まず
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る吸収式熱源装置としての吸収冷凍機1を説明する。
図1は、吸収冷凍機1の模式的系統図である。吸収冷凍機1は、二重効用吸収冷凍機であり、吸収冷凍サイクルを行う主要構成機器として、吸収器31と、蒸発器34と、高温再生器32Aと、低温再生器32Bと、凝縮器33とを備えていると共に、制御装置65を備えている。吸収冷凍機1は、吸収液に対して冷媒が相変化をしながら循環することで熱移動を行わせ、被冷却媒体である冷水pの温度を低下させる機器である。吸収冷凍機1では、再生器が高温再生器32A及び低温再生器32Bの2つに分割されている。以下の説明において、吸収液に関し、吸収冷凍サイクル上における区別を容易にするために、性状や吸収冷凍サイクル上の位置に応じて、「希溶液Sw」、「濃溶液Sa」、「中間濃度溶液Sb」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「溶液S」ということとする。また、冷媒に関し、吸収冷凍サイクル上における区別を容易にするために、性状や吸収冷凍サイクル上の位置に応じて、「蒸発器冷媒蒸気Ve」、「高温冷媒蒸気Va」、「低温冷媒蒸気Vb」、「冷媒液Vf」等と呼称するが、性状等を不問にするときは総称して「冷媒V」ということとする。本実施の形態では、溶液S(吸収剤と冷媒との混合物)としてLiBr水溶液が用いられており、冷媒Vとして水(H
2O)が用いられているが、これに限らず他の冷媒、溶液(吸収剤)の組み合わせで使用してもよい。
【0015】
蒸発器34は、被冷却媒体としての冷水pの熱で冷媒液Vfを蒸発させて蒸発器冷媒蒸気Veを発生させることにより冷水pを冷却する部位である。蒸発器34には、冷却する対象である冷水pを流す冷水管34aが配設されている。冷水管34aは、エアハンドリングユニット等の冷水利用機器(不図示)と配管52を介して接続されている。また、蒸発器34には、冷媒液Vfを冷水管34aに向けて散布するための冷媒液散布ノズル34bが冷水管34aの上方に配設されている。蒸発器34の下部には、導入した冷媒液Vfを貯留する貯留部34cが形成されている。
【0016】
吸収器31は、蒸発器34で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを混合濃溶液Scで吸収する部位である。吸収器31には、混合濃溶液Scで蒸発器冷媒蒸気Veを吸収した際に発生する吸収熱を奪う冷却水qを流す冷却水管31aが内部に配設されている。冷却水管31aは、凝縮器33内の冷却水管33aと配管53を介して、及び冷却塔(不図示)と配管54を介して、それぞれ接続されている。また、吸収器31には、混合濃溶液Scを冷却水管31aに向けて散布する濃溶液散布ノズル31bが冷却水管31aの上方に配設されている。吸収器31は、冷却水管31aの下方に、蒸発器冷媒蒸気Veを吸収して濃度が低下した希溶液Swを貯留する貯留部31cが形成されている。
【0017】
吸収器31と蒸発器34とは共に1つの缶胴内にシェルアンドチューブ型に形成され、両者の間には仕切壁31dが設けられている。吸収器31と蒸発器34とは仕切壁31dの上部で連通しており、蒸発器34で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを吸収器31に移動させることができるように構成されている。缶胴外側の蒸発器34側には、貯留部34cに貯留されている冷媒液Vfを上部の冷媒液散布ノズル34bに導く循環冷媒管51が配設されている。循環冷媒管51には、貯留部34cに貯留している冷媒液Vfを冷媒液散布ノズル34bに圧送する冷媒ポンプ39が配設されている。
【0018】
吸収器31の底部には、貯留部31cの希溶液Swを高温再生器32A及び低温再生器32Bに導く希溶液管55が接続されている。希溶液管55には、希溶液Swを高温再生器32A及び低温再生器32Bに圧送する液体ポンプとしての溶液ポンプ38が配設されている。溶液ポンプ38は、インバータ38vにより、電動機の回転速度を調節することが可能なように構成されており、冷凍負荷に応じた流量の希溶液Swを圧送することができるように構成されている。すなわち、溶液ポンプ38は、吐出流量が調節可能に構成されている。本実施の形態では、高温再生器32Aが対象構成機器に相当し、溶液Sが対象液体に相当する。
【0019】
溶液ポンプ38の下流側の希溶液管55には、希溶液Swと混合濃溶液Scとの間で熱交換を行わせる低温溶液熱交換器36が配設されている。低温溶液熱交換器36には、また、混合濃溶液Scを流す混合濃溶液管56が接続されている。低温溶液熱交換器36は、典型的にはプレート型熱交換器が用いられるがシェルアンドチューブ型やその他の熱交換器であってもよい。
【0020】
希溶液管55は、低温溶液熱交換器36の下流側で、高温再生器32Aに接続される希溶液管55Aと、低温再生器32Bに接続される希溶液管55Bとに分岐している。希溶液管55Aには、希溶液Swと濃溶液Saとの間で熱交換を行わせる高温溶液熱交換器35が配設されている。高温溶液熱交換器35には、また、濃溶液Saを流す濃溶液管56Aが接続されている。高温溶液熱交換器35は、典型的にはプレート型熱交換器が用いられるがシェルアンドチューブ型やその他の熱交換器であってもよい。
【0021】
ここで、
図2を参照して、高温再生器32Aの構成を説明する。
図2は、高温再生器32Aの模式的縦断面図である。本実施の形態では、高温再生器32Aは貫流式再生器であり、希溶液Swを導入する下部管寄せ14と、下部管寄せ14の希溶液Swを上方に向けて流す複数の液管10と、液管10内で希溶液Swが加熱されて生成された混合流体Fmを収集する上部管寄せ15と、液管10内の希溶液Swを加熱する燃焼ガスを生成する加熱装置としてのバーナー16と、これらの部材を収容する外容器13と、濃溶液Saと高温冷媒蒸気Vaとを分離して濃溶液Saを一旦貯留する気液分離器22と、気液分離器22と連通する液面制御ケース24とを備えている。なお、混合流体Fmは、液管10内で加熱された希溶液Swが濃縮して生成された濃溶液Saと、希溶液Swから離脱した冷媒の蒸気である高温冷媒蒸気Vaとが混合したものである。
【0022】
下部管寄せ14は、希溶液Swを複数の液管10に分配する部材である。下部管寄せ14は、典型的には、水平断面が円環状に、鉛直断面が矩形状に形成されている。なお、水平断面は円形以外の多角形状にひとまわりしているものであってもよく、環状につながれずにC字状に形成されていてもよい。鉛直断面は矩形以外の円形あるいは楕円形であってもよい。また、下部管寄せ14の中心部に形成された空洞部分には、耐火材17が充填されている。下部管寄せ14には、希溶液Swを導入する希溶液管55Aと、気液分離器22から導出された濃溶液Saを導入する戻り管25とが接続されている。
【0023】
下部管寄せ14には、複数の液管10がほぼ鉛直に配設されている。液管10がほぼ鉛直とは、液管10の軸線がほぼ鉛直の状態である。ほぼ鉛直は、液管10内で加熱されて希溶液Swから蒸発して生じた高温冷媒蒸気Vaが濃溶液Saと共に円滑に排出される程度であればよい。液管10の長さは、高温再生器32Aの高さに制限があるときは、その高さに納まるように決定されると共に、内部を流れる希溶液Swに与える熱量によって希溶液Sw中から高温冷媒蒸気Vaを発生させて濃溶液Saを生成することができるように、高温再生器32Aに供給される希溶液Swの流量、液管10の本数及び径との関係を総合的に勘案して決定される。また、複数の液管10は、下部管寄せ14とほぼ同心円上にほぼ等間隔に配設されている。下部管寄せ14と同心円上にほぼ等間隔に配設された複数の液管10の内側には、燃料を燃焼して燃焼ガスGbを生成する燃焼室20が形成されている。
【0024】
複数の液管10の頂部には、上部管寄せ15が接続されている。上部管寄せ15は、下部管寄せ14と同様に、典型的には、水平断面が円環状に、鉛直断面が矩形状に形成されている。上部管寄せ15には、濃溶液Saと高温冷媒蒸気Vaとが混合した混合流体Fmを気液分離器22に導く混合流体管21が接続されている。上部管寄せ15の中心部に形成された空洞部分には、バーナー16が配設されている。バーナー16は、制御装置65からの信号を受信して点火及び停止することができるように構成されている。
【0025】
外容器13は、燃焼室20で生成された燃焼ガスGbを外部に漏らさないガスシール構造となっており、典型的には、円筒形状を有している。外容器13は、下部管寄せ14及び上部管寄せ15とほぼ同心円となっており、下部管寄せ14及び上部管寄せ15を嵌め込むことができるような内径を有している。外容器13には、燃焼ガスGbを排出する煙道18が接続されている。
【0026】
気液分離器22は、典型的には、円筒状に形成されているが、四角柱形状や多角形形状、その他の形状であってもよい。気液分離器22は、鉛直方向に長手方向がくるようにして上部管寄せ15に近接した位置に配設されている。気液分離器22は、混合流体管21で上部管寄せ15と接続されている。気液分離器22内には、混合流体管21を介して導入した混合流体Fmを高温冷媒蒸気Vaと濃溶液Saとに分離する気液分離板としてのバッフル板22aが設けられている。バッフル板22aは、気液分離器22の上部を2分割するように気液分離器22の天板に取り付けられている。バッフル板22aによって分割された空間の、混合流体管21が接続されていない方の領域の気液分離器22の上面には、分離した高温冷媒蒸気Vaを導出する高温冷媒蒸気導出口22eが形成されており、高温冷媒蒸気導出口22eには冷媒蒸気管58が接続されている。冷媒蒸気管58には、高温冷媒蒸気Vaの温度を検出する温度センサ28が配設されている。典型的には、温度センサ28は高温冷媒蒸気導出口22eの近傍に配設されている。この位置に配設されていると、飽和蒸気の高温冷媒蒸気Va温度を検出することができ(すなわち高温冷媒蒸気Vaの飽和温度を検出することができ)、高温再生器32Aの圧力を推定することができる。温度センサ28は、制御装置65と信号ケーブルで接続されており、制御装置65に検出した温度を信号として送信することができるように構成されている。高温冷媒蒸気導出口22eは、気液分離器22の上部側面に形成されていてもよいが、冷媒蒸気管58に溶液Sが混入するのを防ぐようにする観点から、気液分離器22の上面に形成されていることが好ましい。
【0027】
また、気液分離器22は、分離した濃溶液Saを下部に貯留する液体貯留部として機能する。気液分離器22の底面には一旦貯留した濃溶液Saを導出する濃溶液導出口22nが形成されており、濃溶液導出口22nには濃溶液管56Aが接続されている。濃溶液導出口22nは、典型的には気液分離器22の底面に形成されているが、気液分離器22の下部側面に形成されていてもよい。さらに気液分離器22の底面の別の部分には、分離した濃溶液Saのうちの余剰分を下部管寄せ14に戻す戻り管25が接続されている。本実施の形態では、戻り管25により下部管寄せ14と気液分離器22とが連絡している。下部管寄せ14と気液分離器22とが連絡していると、気液分離器22内に貯留した濃溶液Saを下部管寄せ14に還流でき、気液分離器22内の液位の上昇を抑制して、気液分離器22から導出される高温冷媒蒸気Vaに同伴する溶液量を少なくすることができる。
【0028】
液面制御ケース24は、典型的には、円筒状に形成されているが、四角柱形状や多角形形状、その他の形状であってもよい。液面制御ケース24の内部には、低液位Lsを検出する低液位電極棒23sと、高液位Ltを検出する高液位電極棒23tとが鉛直方向に延びるようにして収納されている。以下、低液位電極棒23s及び高液位電極棒23tを総称して「液位検出電極棒23」ということもある。本実施の形態では、液位検出電極棒23が液位検出器に相当する。液位検出電極棒23は、それぞれ液面制御ケース24の天板に取り付けられている。低液位電極棒23sの下端は低液位Lsに位置している。低液位電極棒23sは、接液がないとき、すなわちOFFになっているときに低液位Ls以下であることを検出するように構成されている。高液位電極棒23tの下端は高液位Ltに位置している。高液位電極棒23tは、接液しているとき、すなわちONになっているときに高液位Lt以上であることを検出するように構成されている。なお、液面制御ケース24には、必要に応じて、濃溶液Saを介して液位検出電極棒23と電気回路を形成するコモン電極棒(不図示)も配設されるが、以降の説明では、コモン電極棒についての言及を特に行わない。液位検出電極棒23は、制御装置65と信号ケーブルで接続されており、気液分離器22の高液位信号及び低液位信号を制御装置65に送信することができるように構成されている。
【0029】
ここで、高液位Ltは、本実施の形態では下部管寄せ14に供給される希溶液Swの流量を減少させる信号を溶液ポンプ38に送信する液位である。低液位Lsは、本実施の形態では下部管寄せ14に供給される希溶液Swの流量を増加させる信号を溶液ポンプ38に送信する液位である。
【0030】
液面制御ケース24の上部は、気液分離器22の上部側面と上部連通管29Aで接続されている。また、液面制御ケース24は、下方の部分と戻り管25とが下部連通管29Bで接続されている。このように、液面制御ケース24が、上部連通管29Aと下部連通管29Bとで気液分離器22あるいは戻り管25と接続されていることにより、気液分離器22内の濃溶液Saの液位(貯留液位Lx)及び液管10内の溶液の液位が液面制御ケース24内に正しく現れることになる。
【0031】
再び
図1に戻って吸収冷凍機1の構成の説明を続ける。上述のように、高温再生器32Aは、吸収器31で蒸発器冷媒蒸気Veを吸収して濃度が低下した希溶液Swを導入し、希溶液Swを加熱し冷媒を蒸発させて濃度が上昇した濃溶液Saを生成する部位である。もう一方の再生器である低温再生器32Bは、吸収器31から希溶液Swを導入し、高温再生器32Aで発生した高温冷媒蒸気Vaで希溶液Swを加熱し冷媒を蒸発させて濃度が上昇した中間濃度溶液Sbを生成する部位である。
【0032】
低温再生器32Bには、希溶液Swを加熱するための加熱源となる高温冷媒蒸気Vaを流す加熱蒸気管32Baが配設されている。加熱蒸気管32Baは、一端が冷媒蒸気管58に接続されている。他端は、凝縮冷媒管59に接続されている。凝縮冷媒管59は、加熱蒸気管32Ba内で高温冷媒蒸気Vaが凝縮した冷媒液Vdを凝縮器33へと導く配管である。低温再生器32Bには、導入した希溶液Swを加熱蒸気管32Baに向けて散布する希溶液散布ノズル32Bbが配設されている。希溶液散布ノズル32Bbは、希溶液管55Bに接続されている。
【0033】
凝縮器33は、低温再生器32Bで希溶液Swから蒸発した低温冷媒蒸気Vbを冷却して凝縮させ、蒸発器34に送る冷媒液Vfを生成する部位である。凝縮器33には、低温再生器32Bで発生した低温冷媒蒸気Vbを冷却するための冷却水qを流す冷却水管33aが配設されている。冷却水管33aは、一端が吸収器31内の冷却水管31aと配管53を介して、他端が冷却塔(不図示)と配管54を介して、それぞれ接続されている。
【0034】
凝縮器33と低温再生器32Bとは共に1つの缶胴内にシェルアンドチューブ型に形成され、両者の間には仕切壁33dが設けられている。凝縮器33と低温再生器32Bとは仕切壁33dの上部で連通しており、低温再生器32Bで発生した低温冷媒蒸気Vbを凝縮器33に移動させることができるように構成されている。
【0035】
低温再生器32Bの底部には、濃度が上昇した中間濃度溶液Sbを通す中間濃度溶液管56Bが接続されている。中間濃度溶液管56Bには濃溶液管56Aが接続されて混合濃溶液管56となっている。混合濃溶液管56は、低温溶液熱交換器36を経由して、濃溶液散布ノズル31bに接続されている。凝縮器33の底部には、冷媒液Vfを蒸発器34に向けて導出する冷媒液管60が接続されている。冷媒液Vfは、低温冷媒蒸気Vbが凝縮した冷媒液Vcと、加熱蒸気管32Ba内で高温冷媒蒸気Vaが凝縮し、凝縮器33で冷却された冷媒液Vdとが混合した冷媒液である。
【0036】
制御装置65は、吸収冷凍機1を制御する。制御装置65は、インバータ38vに流量調節信号を送信することにより、溶液ポンプ38の吐出流量を調節することができるように構成されている。制御装置65は、高液位電極棒23t(
図2参照)から高液位信号を受信することにより気液分離器22(
図2参照)内の濃溶液Saの液位が高液位Ltに至ったことを検出したときに、溶液ポンプ38に信号を送信して回転速度(rpm)を減少させる。これにより、下部管寄せ14(
図2参照)に導入される希溶液Swが減少する。また、制御装置65は、低液位電極棒23s(
図2参照)から低液位信号を受信することにより気液分離器22(
図2参照)内の濃溶液Saの液位が低液位Lsに至ったことを検出したときに、溶液ポンプ38に信号を送信して回転速度(rpm)を増加させる。これにより、下部管寄せ14(
図2参照)に導入される希溶液Swが増加する。また、制御装置65は、温度センサ28から温度信号を受信して高温冷媒蒸気Vaの温度を検出する。制御装置65には、飽和蒸気の温度と圧力との関係がテーブルとして記憶されており、温度センサ28から受信した温度信号を参照して高温再生器32Aの圧力を把握することができるように構成されている。このように、本実施の形態では、温度センサ28と制御装置65とで内圧検出器を構成している。また、制御装置65は、吸収冷凍機1の運転負荷に応じて溶液ポンプ38の回転速度(rpm)を調節する他、吸収冷凍機1の運転を制御する。溶液ポンプ38の制御については、後述する作用の説明の中で詳述する。
【0037】
引き続き
図1及び
図2を参照して吸収冷凍機1の作用を説明する。まず吸収冷凍機1の冷媒側のサイクルを説明する。凝縮器33では、低温再生器32Bで蒸発した低温冷媒蒸気Vbを受け入れて、冷却水管33aを流れる冷却水qで冷却して凝縮し、冷媒液Vcとする。凝縮した冷媒液Vcは、冷媒液Vdと混合され冷媒液Vfとなって蒸発器34へと送られ、貯留部34cに冷媒液Vfとして貯留される。貯留部34cに貯留された冷媒液Vfは、冷媒ポンプ39により冷媒液散布ノズル34bに送液される。蒸発器34の冷媒液Vfが冷媒液散布ノズル34bから冷水管34aに散布されると、冷媒液Vfは冷水管34a内の冷水pから熱を受けて蒸発する一方、冷水pは冷やされる。冷やされた冷水pは冷熱を利用する場所(不図示)に送られて使われる。他方、蒸発器34で蒸発した冷媒液Vfは蒸発器冷媒蒸気Veとなって、連通している吸収器31へと移動する。
【0038】
次に吸収冷凍機1の溶液側のサイクルを説明する。吸収器31では、高濃度の混合濃溶液Scが濃溶液散布ノズル31bから散布され、蒸発器34で発生した蒸発器冷媒蒸気Veを混合濃溶液Scが吸収して希溶液Swとなる。希溶液Swは、貯留部31cに貯留される。混合濃溶液Scが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際に発生する吸収熱は、冷却水管31aを流れる冷却水qによって除去される。貯留部31cの希溶液Swは、溶液ポンプ38で高温再生器32A及び低温再生器32Bへ、それぞれ圧送される。なお、貯留部31cに溜まった溶液を溶液循環ポンプ(不図示)により循環させて冷却水管31aに散布する構成としてもよい。このようにすると、冷却水管31aを溶液Sで十分に濡らすことができ、冷却水管31aに接触する溶液Sの偏りを防止することができる。溶液ポンプ38で圧送されて希溶液管55を流れる希溶液Swは、低温溶液熱交換器36で混合濃溶液Scと熱交換して温度が上昇し、その後、分流した一部が希溶液管55Aを流れて高温溶液熱交換器35で高温再生器32Aから導出された濃溶液Saと熱交換して温度が上昇した後に高温再生器32Aへと導入され、分流した残りの希溶液Swは、希溶液管55Bを流れて低温再生器32Bへと導かれる。
【0039】
ここで特に
図2を参照して、高温再生器32Aにおける作用を説明する。希溶液管55Aを流れて高温再生器32Aへと導入された希溶液Swは、下部管寄せ14に流入する。下部管寄せ14に流入した希溶液Swは、各液管10の下部に達し、溶液ポンプ38の圧力により複数の液管10内を上昇して上部管寄せ15へと向かう。希溶液Swは、各液管10を上昇する過程でバーナー16の火炎及び燃焼ガスGbにより加熱され、冷媒が蒸発して高温冷媒蒸気Vaが発生し、溶液自体の濃度は上昇して濃溶液Saとなる。希溶液Swから濃度が上昇した濃溶液Saと高温冷媒蒸気Vaとは、混合流体Fmとして各液管10から上部管寄せ15に流入して収集され、混合流体管21を介して気液分離器22に流入される。
【0040】
気液分離器22に流入した混合流体Fmは、バッフル板22aに衝突後にバッフル板22aの面に案内されて下方に流れる際に高温冷媒蒸気Vaと濃溶液Saとに分離され、高温冷媒蒸気Vaはバッフル板22aの下端を反転して上方に移動し、濃溶液Saは気液分離器22の下部に溜まる。気液分離器22の上方に移動した高温冷媒蒸気Vaは、高温冷媒蒸気導出口22eから導出され、冷媒蒸気管58を低温再生器32B(
図1参照)に向かって流れる。他方、気液分離器22の下部に溜まった濃溶液Saは、濃溶液導出口22nから導出され、濃溶液管56Aを吸収器31(
図1参照)に向かって流れる。また、気液分離器22の下部に溜まった濃溶液Saの余剰分が、戻り管25を流れて下部管寄せ14に還流する。
【0041】
このとき、気液分離器22と連通する液面制御ケース24にも濃溶液Saが流入する。液面制御ケース24の上部が気液分離器22の気相部と上部連通管29Aで接続されているため、液面制御ケース24の気相部と気液分離器22の気相部とがほぼ等しい圧力となり、液面制御ケース24内には気液分離器22内の濃溶液Saの液位が現れる。また、液面制御ケース24は下部連通管29Bで戻り管25と接続されているため、戻り管25を流通する濃溶液Saの一部は下部連通管29Bを介して液面制御ケース24に流入する。これによって、液面制御ケース24内の濃溶液Saの液位は、気液分離器22内の濃溶液Saの液位が正しく反映されることとなる。そして、気液分離器22内の濃溶液Saの液位が正しく反映される液面制御ケース24内に液位検出電極棒23が設けられているので、気液分離器22内の濃溶液Saの液位を正確に検出することができる。
【0042】
ここで再び
図1を主に参照して、溶液側のサイクルの説明を再開する。高温再生器32Aから導出されて濃溶液管56Aを流れる濃溶液Saは、高温溶液熱交換器35に導かれて高温再生器32Aに向かう希溶液Swと熱交換を行い温度が低下する。他方、高温再生器32Aから導出されて冷媒蒸気管58を流れる高温冷媒蒸気Vaは、低温再生器32Bの加熱蒸気管32Baに流入する。
【0043】
他方、希溶液管55Bを流れて低温再生器32Bに導かれた希溶液Swは、希溶液散布ノズル32Bbから散布される。希溶液散布ノズル32Bbから散布された希溶液Swは、加熱蒸気管32Baを流れる高温冷媒蒸気Vaによって加熱され、低温再生器32B内の希溶液Sw中の冷媒が蒸発して中間濃度溶液Sbとなる。他方、希溶液Swから蒸発した冷媒は低温冷媒蒸気Vbとして凝縮器33へと送られる。高温冷媒蒸気Vaからの受熱により温度が上昇した中間濃度溶液Sbは、中間濃度溶液管56Bへ導出される。なお、加熱蒸気管32Baを流れる高温冷媒蒸気Vaは、希溶液Swに熱を奪われ凝縮して冷媒液Vdとなり、凝縮冷媒管59を流れて凝縮器33に導入される。
【0044】
低温再生器32Bから導出されて中間濃度溶液管56Bを流れる中間濃度溶液Sbは、高温溶液熱交換器35から導出されて濃溶液管56Aを流れてきた濃溶液Saと合流して混合濃溶液Scとなって混合濃溶液管56を流れる。その後混合濃溶液Scは、低温溶液熱交換器36に流入して吸収器31から導出された希溶液Swと熱交換を行い温度が低下する。温度が低下した混合濃溶液Scは、吸収器31に導かれ、濃溶液散布ノズル31bから冷却水管31aに向けて散布される。以降、同様のサイクルを繰り返す。
【0045】
上述のような運転を行う吸収冷凍機1は、その運転中、高温再生器32Aにおける空焚きや溶液溢れ等の招来を回避するように、制御装置65がインバータ38vを介して溶液ポンプ38の吐出量を調節することにより、適正な溶液の液位が維持される。本実施の形態の高温再生器32Aにおける適正な液位は、気液分離器22内の濃溶液Saの貯留液位Lxが低液位Lsと高液位Ltとの間に位置する液位であり、この液位が標準液位に相当する。しかし、吸収冷凍機1内の溶液Sの循環流量は、冷水pの供給先である冷凍負荷の変動に起因して溶液Sの濃度や他の要因の影響を受け、貯留液位Lxが適正な液位を逸脱する場合も生じ得る。高温再生器32Aが適正な(吸収冷凍機1の運転中に維持すべき)貯留液位Lxを維持するために、また、貯留液位Lxが標準液位から逸脱してしまった場合は速やかに標準液位に戻して標準液位を維持することができるように、吸収冷凍機1では以下のような制御を行う。
【0046】
図3は、溶液ポンプ38の制御を説明するフローチャートである。以下の説明において、吸収冷凍機1の構成に言及しているときは適宜
図1及び
図2を参照することとする。吸収冷凍機1は、停止中は、溶液Sの結晶を回避するため、溶液Sが希釈された状態となっている。吸収冷凍機1が起動すると(開始)、当初は溶液Sが希釈された状態であるために所望の冷凍能力が発揮されないが、濃溶液散布ノズル31bに導入される溶液Sの濃度が高くなり、高温再生器32A及び低温再生器32Bに導入される溶液Sの濃度が低くなるように、溶液Sに濃度差がついてくると冷凍能力が発揮されるようになり、やがて所望の冷凍能力を発揮し得る定常運転に至る。吸収冷凍機1では、冷凍負荷の変動に伴う高温再生器32Aの内圧の変動が1つの要因となって、溶液Sの循環流量が変動する。本実施の形態では、温度センサ28で高温冷媒蒸気Va(飽和蒸気と見ることができる)の温度を検出して高温再生器32Aの圧力を推定し、高温再生器32Aの圧力に応じたインバータ38vの周波数で溶液ポンプ38を運転することとしている。制御装置65は、吸収冷凍機1の運転中、常に、あるいは所定の間隔で、温度センサ28から高温冷媒蒸気Vaの温度の信号を受信して、高温再生器32Aの圧力を算出している。
【0047】
図4は、高温再生器32Aの圧力と溶液ポンプ38のインバータ38vの周波数との関係を示すグラフである。吸収冷凍機1は、高温冷媒蒸気Vaの温度の上昇、すなわち高温再生器32Aの内部圧力が上昇するのに伴って溶液Sの循環流量が増加するため、制御装置65は、
図4の曲線CVに示すように、高温再生器32Aの圧力が上昇するのに応じて溶液ポンプ38の運転周波数を上昇させて溶液ポンプ38の回転速度(rpm)を増加させることにより、必要とされる循環流量に見合う希溶液Swを吸収器31から高温再生器32Aに送るように制御する。
図4に示す、高温再生器32Aの圧力と溶液ポンプ38のインバータ38vの周波数との関係は、制御装置65に記憶されている。この、制御装置65に記憶されている、高温再生器32Aの圧力に対応する溶液ポンプ38のインバータ38vの周波数を、「標準周波数」ということとする。
【0048】
再び主に
図3を参照して、溶液ポンプ38の制御の説明を続ける。吸収冷凍機1の運転中、制御装置65は、貯留液位Lxが標準液位にあるか否かを判断する(S1)。貯留液位Lxが標準液位にある場合、制御装置65は、標準周波数(
図4に示す高温再生器32Aの圧力応じた周波数)を運転周波数として(S2)、溶液ポンプ38の運転を行う。溶液ポンプ38の運転周波数を標準周波数に調節したら、再び貯留液位Lxが標準液位にあるか否かを判断する工程(S1)に戻る。
【0049】
他方、貯留液位Lxが標準液位にあるか否かを判断する工程(S1)において、標準液位にない場合、すなわち、低液位電極棒23sが低液位Lsを検出したとき、又は高液位電極棒23tが高液位Ltを検出したときに、制御装置65は、貯留液位Lxが標準液位に戻る方向(戻り方向)に溶液ポンプ38の吐出流量を変えるように、その時の運転周波数に対して検出補正周波数を加算又は減算した値を、新たに溶液ポンプ38の運転周波数とする(S3)。ここで、「戻り方向」とは、標準液位から逸脱した貯留液位Lxを標準液位に戻す方向であって、貯留液位Lxが低液位Ls以下になった場合は導入する希溶液Swを増やす方向であり、貯留液位Lxが高液位Lt以上になった場合は導入する希溶液Swを減らす方向である。したがって、制御装置65は、貯留液位Lxが低液位Ls以下になった場合はその時の運転周波数に検出補正周波数を加算した値を新たな運転周波数とし、貯留液位Lxが高液位Lt以上になった場合はその時の運転周波数に検出補正周波数を減算した値を新たな運転周波数として、当該新たな運転周波数をインバータ38vに送信する。また、「検出補正周波数」とは、標準液位を逸脱したとき(低液位Ls又は高液位Ltを検出したとき)の標準周波数に対して所定の割合(第1の所定の割合に相当)の値である。
【0050】
図5は、逸脱時の標準周波数と補正周波数との関係を示すグラフである。
図5は、横軸に逸脱時標準周波数を、縦軸に補正周波数(検出補正周波数又は後述する継続補正周波数)をとっている。
図5(A)中の線HdA、あるいは
図5(B)中の線HdBが、逸脱時標準周波数に対する検出補正周波数の値を示している。
図5に示すように、検出補正周波数は、逸脱時標準周波数が小さいときは小さく、大きいときは大きくなっている。このようにすることで、貯留液位Lxが標準液位から逸脱したときに補正するインバータ38vの周波数(ひいては溶液ポンプ38の吐出流量)が過不足することを抑制することができる。仮に、従来のように、補正する周波数を一定(例えば5Hz)とした場合、その時の運転周波数が比較的大きいとき(例えば50Hz)は変化量が小さくなり(例えば10%)、その時の運転周波数が比較的小さいとき(例えば10Hz)は変化量が大きくなるため(例えば50%)、液面制御が安定しないことがある。これに対して本実施の形態に係る吸収冷凍機1では、逸脱時標準周波数の所定の割合の値である検出補正周波数を、その時の運転周波数(すなわち逸脱時標準周波数)に対して加算又は減算するので、補正する周波数が過不足することを抑制して、全負荷領域において安定な液面制御を行うことができる。なお、
図5(A)では検出補正周波数HdAが一定の傾きで直線状に変化し、
図5(B)では、検出補正周波数HdBが階段状に変化する例を示したが、逸脱時標準周波数が小さいときは検出補正周波数が小さく、逸脱時標準周波数が大きいときは検出補正周波数が大きくなる関係であれば、検出補正周波数は、逸脱時標準周波数に対して二次曲線状等に変化することとしてもよい。
【0051】
再び主に
図3を参照して、溶液ポンプ38の制御の説明を続ける。制御装置65は、逸脱時標準周波数に対して検出補正周波数を加算又は減算した値を新たな運転周波数としたら(S3)、貯留液位Lxが標準液位にあるか否かを判断する(S4)。この工程(S4)は、内容的には工程(S1)と同じであるが、標準液位を一端逸脱した貯留液位Lxが標準液位に戻ったか否かを判断するという点において工程(S1)とは異なるため、別の工程としている。貯留液位Lxが標準液位にあるか否かを判断する工程(S4)において、標準液位にない場合、制御装置65は、周波数の補正を行ってから所定の時間が経過したか否かを判断する(S5)。ここでの「所定の時間」は、典型的には、行った周波数の補正が貯留液位Lxに表れるのに要すると想定される時間である。周波数の補正を行ってから所定の時間が経過したか否かを判断する工程(S5)において、所定の時間が経過していない場合は、貯留液位Lxが標準液位にあるか否かを判断する工程(S4)に戻る。
【0052】
他方、周波数の補正を行ってから所定の時間が経過したか否かを判断する工程(S5)において、所定の時間が経過した場合、制御装置65は、上述した戻り方向に溶液ポンプ38の吐出流量を変えるように、その時の運転周波数に対して継続補正周波数を加算又は減算した値を、新たに溶液ポンプ38の運転周波数とする(S6)。ここで、「継続補正周波数」とは、標準液位を逸脱したとき(低液位Ls又は高液位Ltを検出したとき)の標準周波数に対して所定の割合(第2の所定の割合に相当)の値である。継続補正周波数は、貯留液位Lxが標準液位から逸脱して周波数を戻り方向に補正しても貯留液位Lxが標準液位に戻らない場合に追加して補正する周波数であり、典型的には、
図5(A)で線HcA、
図5(B)で線HcBとして示すように、検出補正周波数よりも小さな値であるが、検出補正周波数と同じ値でもよく、検出補正周波数よりも大きな値であってもよい。
【0053】
制御装置65は、その時の運転周波数に対して継続補正周波数を戻り方向に加算又は減算した値を新たに溶液ポンプ38の運転周波数としたら(S6)、貯留液位Lxが標準液位にあるか否かを判断する工程(S4)に戻る。そして、貯留液位Lxが標準液位にあるか否かを判断する工程(S4)において、標準液位にある場合、制御装置65は、上述した戻り方向とは逆の復帰方向に溶液ポンプ38の吐出流量を変えるように、その時の運転周波数に対して検出補正周波数を加算又は減算した値を、新たに溶液ポンプ38の運転周波数とする(S7)。念のため、「復帰方向」について言及すると、貯留液位Lxが低液位Ls以下から標準液位に戻った場合は導入する希溶液Swを減らす方向であり、貯留液位Lxが高液位Lt以下から標準液位に戻った場合は導入する希溶液Swを増やす方向である。したがって、制御装置65は、貯留液位Lxが低液位Ls以下から標準液位に戻った場合はその時の運転周波数に検出補正周波数を減算した値を新たな運転周波数とし、貯留液位Lxが高液位Lt以下から標準液位に戻った場合はその時の運転周波数に検出補正周波数を加算した値を新たな運転周波数として、当該新たな運転周波数をインバータ38vに送信する。このようにすることで、標準液位に戻った貯留液位Lxが逆側(例えば貯留液位Lxが低液位Ls以下から標準液位に戻った場合は高液位Lt側)にオーバーシュートすることを抑制することができる。制御装置65は、その時の運転周波数に対して検出補正周波数を復帰方向に加算又は減算した値を新たに溶液ポンプ38の運転周波数としたら(S7)、貯留液位Lxが標準液位にあるか否かを判断する工程(S1)に戻り、以降、上述のフローを繰り返す。
【0054】
図6を参照して、上述した溶液ポンプ38の制御の説明を補足する。
図6は、溶液ポンプ38の周波数の補正状況の推移を示すタイムチャートである。
図6に示すタイムチャート中、横軸は経過時間を示し、縦軸は、上部に液位検出の有無、下部に運転周波数の補正状況を示している。縦軸の上部の液位検出の有無では、その上部に高液位電極棒23tの接液の有無を、下部に低液位電極棒23sの接液の有無を示している。液位検出の有無を示す領域の横に描かれている段違いの折れ線のうち、上段は電極棒23t、23sが接液を検出している状態(ON)を示し、下段は電極棒23t、23sが接液を検出していない状態(OFF)を示している。また、縦軸の下部の運転周波数の補正状況は、検出補正周波数あるいは継続補正周波数の加減による補正状況を示しており、説明の便宜上、標準液位にある際の高温再生器32Aの圧力変動に伴う標準周波数の変動は反映していない。
【0055】
図6のタイムチャートに示す例では、初めのうちは標準液位にあった貯留液位Lxが、時刻T1で高液位電極棒23tがON、すなわち高液位Ltを検出したので、検出補正周波数Hdを運転周波数から減算している。ここで、検出補正周波数Hdを減算しているのは、減算が、高液位Ltを検出したときの戻り方向に相当するからである。そして、高液位Ltを検出したまま時刻T1から所定の時間が経過した時刻T2で継続補正周波数Hcをそのときの運転周波数から減算している。その後、高液位Ltを検出したまま時刻T2から所定の時間が経過した時刻T3で継続補正周波数Hcをそのときの運転周波数から減算し、さらに、高液位Ltを検出したまま時刻T3から所定の時間が経過した時刻T4で継続補正周波数Hcをそのときの運転周波数から減算している。そして、時刻T5で高液位電極棒23tがOFF、すなわち高液位Ltから標準液位に戻ったので、このときに検出補正周波数Hdを運転周波数に加算している。ここで、検出補正周波数Hdを加算しているのは、加算が、高液位Ltから標準液位に戻ったときの復帰方向に相当するからである。
【0056】
その後、時刻T6で低液位電極棒23sがOFF、すなわち低液位Lsを検出したので、検出補正周波数Hdを運転周波数に加算している。ここで、検出補正周波数Hdを加算しているのは、加算が、低液位Lsを検出したときの戻り方向に相当するからである。そして、低液位Lsを検出したまま時刻T6から所定の時間が経過した時刻T7で継続補正周波数Hcをそのときの運転周波数から加算している。その後、時刻T8で低液位電極棒23sがON、すなわち低液位Lsから標準液位に戻ったので、このときに検出補正周波数Hdを運転周波数から減算している。ここで、検出補正周波数Hdを減算しているのは、減算が、低液位Lsから標準液位に戻ったときの復帰方向に相当するからである。
【0057】
以上で説明したように、本実施の形態に係る吸収冷凍機1によれば、貯留液位Lxが標準液位から逸脱したときの運転周波数に対して戻り方向に加減する検出補正周波数が、逸脱したときの標準周波数の第1の所定の割合の値であるので、貯留液位Lxが標準液位から逸脱したときに補正する周波数が過大となることを防ぐことができ、冷凍負荷に応じて最適な値の周波数を補正することが可能になって、全負荷領域において安定な液面制御が可能になる。また、貯留液位Lxが標準液位を逸脱している時間が所定の時間継続したときに、逸脱したときの標準周波数の第2の所定の割合の値である継続補正周波数を、運転周波数に対して戻り方向に加減するので、貯留液位Lxが標準液位へ復帰することを促すことができる。また、貯留液位Lxが標準液位から逸脱した状態から標準液位に戻ったときに、検出補正周波数を運転周波数に対して復帰方向に加減するので、標準液位に戻った貯留液位Lxが逆側にオーバーシュートすることを抑制することができる。
【0058】
以上の説明では、内圧検出器が、飽和蒸気である高温冷媒蒸気Vaの温度を検出する温度センサ28及び検出した高温冷媒蒸気Vaの温度から高温再生器32Aの圧力を推定する制御装置65から構成されることで高温再生器32Aの内圧を間接的に検出することとしたが、高温再生器32Aの圧力を直接検出する圧力センサで構成されていてもよく、あるいは、これら以外の、溶液Sの温度及び濃度から圧力を演算する構成等としてもよい。
【0059】
次に
図7を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る吸収式熱源装置としての吸収冷凍機2を説明する。
図7は、吸収冷凍機2の模式的系統図である。吸収冷凍機2の、吸収冷凍機1(
図1参照)と異なる点は、低温再生器32Bに貯留されている中間濃度溶液Sbを吸収器31に向けて圧送する液体ポンプとしての濃溶液ポンプ38Bが中間濃度溶液管56Bに配設され、低温再生器32B内の中間濃度溶液Sbの液面制御が行われる点である。これに付随して、低温再生器32Bには、内部の圧力を検出する低温圧力センサ28Bと、低温再生器32B内の液体貯留部としての貯留部32Bcに貯留される中間濃度溶液Sbの高液位及び低液位をそれぞれ検出可能な液位検出器としての低温液位検出電極棒23Bとが設けられている。また、濃溶液ポンプ38Bには、インバータ38Bvが設けられている。制御装置65Aは、高温再生器32Aの圧力及び貯留液位Lxに基づく溶液ポンプ38の運転周波数の調節に加え、低温再生器32Bの圧力及び中間濃度溶液Sbの貯留液位に基づく濃溶液ポンプ38Bの運転周波数の調節を行うように構成されている。吸収冷凍機2の上記以外の構成は、吸収冷凍機1(
図1参照)と同じである。
【0060】
吸収冷凍機2は、濃溶液ポンプ38Bとの関係において、低温再生器32Bが対象構成機器となり、中間濃度溶液Sbが対象液体となる。また、濃溶液ポンプ38Bの吐出流量を調節すると、低温再生器32Bから導出される中間濃度溶液Sbの流量が変化することになる。このため、低温再生器32Bと濃溶液ポンプ38Bとの関係における「戻り方向」とは、低温再生器32Bの貯留液位が低液位以下になった場合は導出する中間濃度溶液Sbを減らす方向であり、貯留液位が高液位以上になった場合は導出する中間濃度溶液Sbを増やす方向である。したがって、制御装置65Aは、低温再生器32Bの貯留液位が低液位以下になった場合はその時の濃溶液ポンプ38Bの運転周波数に検出補正周波数を減算した値を新たな運転周波数とし、低温再生器32Bの貯留液位が高液位以上になった場合はその時の濃溶液ポンプ38Bの運転周波数に検出補正周波数を加算した値を新たな運転周波数として、当該新たな運転周波数をインバータ38Bvに送信する。濃溶液ポンプ38Bの運転周波数を補正する際に加減する検出補正周波数及び継続補正周波数も、溶液ポンプ38と同様に、標準液位を逸脱したときの標準周波数に対して所定の割合の値である。なお、濃溶液ポンプ38Bの基準周波数、検出補正周波数及び継続補正周波数は、典型的には溶液ポンプ38とは独立して設定される。
【0061】
なお、
図7においては、濃溶液ポンプ38Bは中間濃度溶液管56B中に設けられているが、濃溶液Sa及び中間濃度溶液Sbの混合後の混合濃溶液管56中に設けることも可能である。この場合の制御方法も、上述した濃溶液ポンプ38Bに対する制御方法と同じである。
【0062】
以上の説明では、高温再生器32Aが貫流ボイラ式の高温再生器であるとしたが、貫流ボイラ式以外の、煙管型の高温再生器や、液管型の高温再生器、熱源として蒸気や温水や排ガス等を使用した高温再生器であってもよい。
図8は、変形例に係る煙管型の高温再生器の縦断面図であり、(A)は第1の変形例に係る高温再生器32P、(B)は第2の変形例に係る高温再生器32Qの図である。高温再生器32P、32Qは、内部に形成された燃焼室120においてバーナー(不図示)で火炎を形成して燃焼ガスを生成する炉筒111と、燃焼ガスを流して周囲の溶液を加熱する煙管112と、炉筒111及び煙管12を内部に収容する缶胴113とを備えている。缶胴113の下部(典型的には底部)には希溶液Swを缶胴113内に導入する希溶液管55Aが接続されており、缶胴113の上部(典型的には頂部)には高温冷媒蒸気Vaを導出する冷媒蒸気管58が接続されている。
【0063】
そして
図8(A)に示す高温再生器32Pでは、維持すべき缶胴113内液位の近傍の缶胴113側部に濃溶液Sa取出用の角穴113hが形成され、角穴113hから流出する濃溶液Saを受け入れる液体貯留部としての溶液貯留容器124Aが缶胴113の側部に設けられている。溶液貯留容器124A内には、低液位電極棒23s及び高液位電極棒23tを有する液位検出器としての液位検出電極棒23が配設されている。溶液貯留容器124Aの底部には、濃溶液Saを導出する濃溶液管56Aが接続されている。高温再生器32Pでは、導入された希溶液Swが炉筒111及び煙管12から受熱して加熱濃縮され、高温冷媒蒸気Vaと濃溶液Saとが生成される。
【0064】
他方
図8(B)に示す高温再生器32Qでは、液面制御ケース24が2つの連通管29A、29Bを介して缶胴113に接続されている。液面制御ケース24は、缶胴113内の気相部と連通管29Aを介して接続されており、缶胴113内の液相部と連通管29Bを介して接続されている。これにより、缶胴113内の液位(貯留液位Lx)が液面制御ケース24内に現れる。液面制御ケース24内には、低液位電極棒23s及び高液位電極棒23tを有する液位検出器としての液位検出電極棒23が配設されている。液位検出電極棒23で検出した液位に基づいて溶液ポンプ38の吐出流量を制御することにより、缶胴113内の貯留液位Lxを制御することができる。高温再生器32Qでは、缶胴113自体が液体貯留部となる。
【0065】
以上の吸収冷凍機1、2(変形例を含む)の説明では、吸収サイクルがいわゆる二重効用パラレルフローであるとしたが、上述した液体ポンプ(溶液ポンプ38等)の制御は、溶液Sを低温再生器32B、高温再生器32Aの順に流すシリーズフロー、溶液Sを高温再生器32A、低温再生器32Bの順に流すリバースフローといった吸収サイクルにおいても適用可能であり、また、二重効用以外の単効用や三重効用、あるいは一二重効用等の多重効用の吸収サイクルにおいても適用可能である。なお、一二重効用は、高温の熱源媒体でまず高温再生器を加熱し、高温再生器で発生した冷媒蒸気で低温再生器を加熱する二重効用としつつ、さらに別途外部から導入した低温熱源を使用して上記低温再生器とは異なる低温再生器を加熱するものである。
【0066】
以上の説明では、吸収式熱源装置が吸収冷凍機であるとしたが、吸収ヒートポンプであってもよい。
図9に、本発明の第3の実施の形態に係る吸収式熱源装置としての吸収ヒートポンプ3の例を示す。吸収ヒートポンプ3は、駆動熱源温度より高い温度の被加熱媒体を取り出す昇温型のヒートポンプである第二種吸収ヒートポンプである。吸収ヒートポンプ3は、吸収冷凍機1(
図1参照)における吸収器31、蒸発器34、低温再生器32B、凝縮器33と概ね同様に構成された、吸収器31、蒸発器34、再生器32、凝縮器33を備えている。吸収ヒートポンプ3は、さらに、吸収器31で加熱された被加熱媒体Wを被加熱媒体Wの蒸気(被加熱媒体蒸気Wv)と液(被加熱媒体液Wq)とに分離する気液分離器80を備えている。気液分離器80は、補充被加熱媒体Wsが導入されることで、被加熱媒体Wの不足分を補充することができるように構成されている。吸収ヒートポンプ3は、相互に連通した吸収器31及び蒸発器34の圧力が、相互に連通した再生器32及び凝縮器33の圧力よりも高くなっている点で、吸収冷凍機1(
図1参照)と異なっている。
【0067】
吸収ヒートポンプ3は、再生器32に貯留された濃溶液Saが、インバータ338vを有する液体ポンプとしての濃溶液ポンプ338によって、濃溶液管356を介して吸収器31に送られ、吸収器31に散布された濃溶液Saが蒸発器34からの蒸発器冷媒蒸気Veを吸収する際の吸収熱で被加熱媒体Wを加熱するように構成されている。また、吸収ヒートポンプ3は、吸収器31で濃溶液Saが蒸発器冷媒蒸気Veを吸収することで濃度が低下した希溶液Swが液体貯留部としての貯留部31cで一旦貯留され、貯留部31cの希溶液Swが希溶液管355を介して再生器32に導かれ、再生器32で散布された希溶液Swが熱源温水hの熱で加熱されて冷媒の一部が離脱し、濃度が上昇した濃溶液Saは再生器32の下部に貯留され、離脱した冷媒は再生器冷媒蒸気Vgとして凝縮器33に導かれるように構成されている。また、吸収ヒートポンプ3は、凝縮器33において、凝縮器33に導入された再生器冷媒蒸気Vgが冷却水qで冷却されて凝縮して冷媒液Vfとなり、凝縮器33の下部に貯留されるように構成されている。また、吸収ヒートポンプ3は、凝縮器33に貯留された冷媒液Vfが、インバータ339vを有する液体ポンプとしての冷媒ポンプ339によって、冷媒液往管351を介して蒸発器34に送られ、蒸発器34に散布された冷媒液Vfが熱源温水hの熱で加熱されて一部が蒸発して蒸発器冷媒蒸気Veとなり、残りは冷媒液Vfのまま一旦液体貯留部としての貯留部34cに貯留された後、冷媒液還管360を介して凝縮器33に導かれるように構成されている。
【0068】
また、吸収ヒートポンプ3は、吸収器31の圧力を検出する内圧検出器としての圧力センサ328を有している。吸収ヒートポンプ3は、吸収器31と蒸発器34とが連通しているため、両者の圧力は同じと見て差し支えない。したがって、圧力センサ328は、吸収器31の圧力を検出するのみならず、蒸発器34の圧力を検出する内圧検出器をも兼ねている。また、吸収ヒートポンプ3は、吸収器31の貯留部31cに貯留される希溶液Swの高液位及び低液位をそれぞれ検出可能な液位検出器としての吸収器液位検出電極棒123と、蒸発器34の貯留部34cに貯留される冷媒液Vfの高液位及び低液位をそれぞれ検出可能な液位検出器としての蒸発器液位検出電極棒423とをそれぞれ有している。
【0069】
吸収ヒートポンプ3は、制御装置365が、吸収器31の圧力及び貯留部31cに貯留されている希溶液Swの液位に基づく濃溶液ポンプ338の運転周波数の調節を行うように構成されている。濃溶液ポンプ338との関係においては、吸収器31が対象構成機器となり、溶液S(濃溶液Sa、希溶液Sw)が対象液体となる。吸収ヒートポンプ3における濃溶液ポンプ338の制御においても、吸収冷凍機1(
図1参照)における溶液ポンプ38と同様に、貯留液位が標準液位から逸脱したときにそのときの運転周波数に対して検出補正周波数を戻り方向に加減し、運転周波数を補正しても標準液位を逸脱した状態が所定の時間継続したときにそのときの運転周波数に対して継続補正周波数を戻り方向に加減し、標準液位から逸脱した状態から標準液位に戻ったときにそのときの運転周波数に対して検出補正周波数を復帰方向に加減する。この場合、濃溶液ポンプ338は、対象構成機器(吸収器31)に導入される対象液体(濃溶液Sa)の流量を調節することになるので、戻り方向及び復帰方向と周波数の加減との関係は、吸収冷凍機1(
図1参照)における溶液ポンプ38と同様になる。
【0070】
また、吸収ヒートポンプ3は、制御装置365が、蒸発器34の圧力(吸収器31の圧力と同じ)及び貯留部34cに貯留されている冷媒液Vfの液位に基づく冷媒ポンプ339の運転周波数の調節を行うように構成されている。冷媒ポンプ339との関係においては、蒸発器34が対象構成機器となり、冷媒液Vfが対象液体となる。吸収ヒートポンプ3における冷媒ポンプ339の制御においても、吸収冷凍機1(
図1参照)における溶液ポンプ38と同様に、貯留液位が標準液位から逸脱したときにそのときの運転周波数に対して検出補正周波数を戻り方向に加減し、運転周波数を補正しても標準液位を逸脱した状態が所定の時間継続したときにそのときの運転周波数に対して継続補正周波数を戻り方向に加減し、標準液位から逸脱した状態から標準液位に戻ったときにそのときの運転周波数に対して検出補正周波数を復帰方向に加減する。この場合、冷媒ポンプ339は、対象構成機器(蒸発器34)に導入される対象液体(冷媒液Vf)の流量を調節することになるので、戻り方向及び復帰方向と周波数の加減との関係は、吸収冷凍機1(
図1参照)における溶液ポンプ38と同様になる。
【0071】
以上で説明したように、貯留液位が標準液位から逸脱したときにそのときの運転周波数に対して検出補正周波数を戻り方向に加減し、運転周波数を補正しても標準液位を逸脱した状態が所定の時間継続したときにそのときの運転周波数に対して継続補正周波数を戻り方向に加減し、標準液位から逸脱した状態から標準液位に戻ったときにそのときの運転周波数に対して検出補正周波数を復帰方向に加減するという液体ポンプの制御は、第2種吸収ヒートポンプに対しても適用可能であり、溶液Sのみならず冷媒液Vfにも適用可能である。
【0072】
以上の説明では、液位検出器が電極棒で構成されているとしたが、フロートスイッチ等、電極棒以外の液位を検出できるものであってもよい。
【0073】
以上の説明では、液体ポンプの制御において、貯留液位が標準液位から逸脱した状態から標準液位に戻ったときに、そのときの運転周波数に対して検出補正周波数を復帰方向に加減することとしたが、標準液位に戻ったときの復帰方向への検出補正周波数の加減は行わなくてもよい。しかしながら、逆方向へのオーバーシュートを抑制する観点から、標準液位に戻ったときの復帰方向への検出補正周波数の加減を行うことが好ましい。
【0074】
以上の説明では、液位検出器が、標準液位の上限である高液位と、標準液位の下限である低液位とを検出することとしたが、高液位よりも上方の高高液位と、低液位よりも下方の低低液位とをもそれぞれ検出することとして、貯留液位が高高液位あるいは低低液位を検出したときに、標準液位を逸脱したときの基準周波数に対して所定の割合(第3の所定の割合)の値である加速補正周波数を、そのときの運転周波数に対して戻り方向に加減することとしてもよい。この場合、加速補正周波数を、検出補正周波数よりも大きな値とすると、貯留液位の標準液位への戻りを促進させることができるので好ましい。
【0075】
以上の吸収式熱源装置の説明では、蒸発器及び吸収器を1つずつ有することとしたが、上述した液体ポンプの制御は、異なる圧力レベルで稼働する複数の蒸発器及び吸収器を有する吸収式熱源装置においても適用可能である。