特許第6081851号(P6081851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081851
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】通電加熱装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/08 20060101AFI20170206BHJP
   H05B 6/36 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   B29C33/08
   H05B6/36 Z
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-83575(P2013-83575)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2014-205283(P2014-205283A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】外村 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡 範和
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰広
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 独国実用新案第202012103446(DE,U1)
【文献】 特開2002−096330(JP,A)
【文献】 特開2013−086508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00−51/44
H05B6/00−6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に凹凸形状をなす熱利用面を有する導電体と、
前記導電体に接続される電極を有し、前記導電体を通電加熱する通電加熱機構とを備え、
前記導電体の熱利用面とは反対側の面に、前記通電加熱機構による通電方向とは異なる方向に1又は複数の溝が形成されており、
前記1又は複数の溝は、前記導電体における位置によって、その深さが異なるように形成されている通電加熱装置。
【請求項2】
前記溝が、前記通電方向に対して直交方向に延び設けられている請求項1記載の通電加熱装置。
【請求項3】
前記溝に、絶縁部材又は前記導電体よりも高抵抗の高抵抗部材が設けられている請求項1又は2記載の通電加熱装置。
【請求項4】
前記導電体の通電方向に沿って貫通孔が形成されており、当該貫通孔に前記導電体と絶縁されたボルトを挿入して締め付けることにより、前記絶縁部材又は前記高抵抗部材が前記導電体に固定されている請求項3記載の通電加熱装置。
【請求項5】
前記通電加熱機構が、前記導電体が取り付けられる取り付け面を有し、当該取り付け面に取り付けられた前記導電体を通電加熱するものであり、
交流電圧が印加される誘導コイルと、
前記誘導コイルの中心部に設けられ、中心磁路を形成する鉄心と、
前記誘導コイルの周囲に設けられ、前記誘導コイルにより生じる磁束によって電流が流れるとともに、前記導電体に接続される極性の異なる2つの接続端子を有する二次導体と、
前記誘導コイル及び前記二次導体を収容する収容部を有し、外周磁路を形成する磁性体とを備え、
前記二次導体の接続端子が、前記取り付け面に取り付けられた前記導電体に接続可能に設けられている請求項1乃至4の何れかに記載の通電加熱装置。
【請求項6】
前記導電体が、金型である請求項1乃至5の何れかに記載の通電加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型等の導電体に電流を流すことによりジュール発熱させて加熱する通電加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金型に電流を流すことによりジュール発熱させて加熱する通電加熱装置としては、特許文献1に示すように、金型内部に誘導コイルが埋設されたものが考えられている。
【0003】
しかしながら、金型内部に誘導コイルを埋設したものでは、金型を交換する場合に誘導コイルも併せて交換する必要があり、金型の交換作業に加えて、誘導コイルの配線作業も必要となってしまい、作業が煩雑となってしまうという問題がある。
【0004】
また、単に金型内部に誘導コイルを埋設する又は金型の外部に誘導コイルを配置するだけでは、金型に温度ムラが生じてしまい、被加工物を均一に加熱することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−40847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願発明者は、金型に誘導コイルを埋設することなく、金型の外部に誘導コイルを有する通電加熱機構を設けて、当該通電加熱機構の電極を金型に接続することによって、前記金型を通電加熱する構成を考えている。
【0007】
そして、例えば、通電加熱機構を、交流電圧が印加される誘導コイルと、当該誘導コイルの中心部に設けられ、中心磁路を形成する鉄心と、前記誘導コイルの周囲に設けられ、前記誘導コイルにより生じる磁束によって電流が流れるとともに、前記導電体に接続される極性の異なる2つの電極を有する二次導体と、前記誘導コイル及び前記二次導体を収容する収容部を有し、外周磁路を形成する磁性体とを備える構成とすることを考えている。
【0008】
しかしながら、金型は、表面に凹凸構造が形成されており、前記電極による通電方向に沿って肉厚に差があるため、電気抵抗値の差による発熱斑が発生してしまう。ここで、前記通電加熱機構は、通電方向に直交する幅方向における発熱量を、前記誘導コイルを多分割する等により比較的細かく制御することができるものの、前記通電方向における発熱量を細かく制御することが難しい。
【0009】
また、金型に電極を接続して通電加熱すると、電極間において電気抵抗値が一番小さい経路に多くの電流が流れて発熱するため、必ずしも金型の表面部分が多く発熱するわけでは無く、加熱効率が悪いという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、導電体を通電加熱するものにおいて、導電体の熱利用面を効率良く均一に加熱することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明に係る通電加熱装置は、一方の面に凹凸形状を有する熱利用面が形成された導電体と、前記導電体に接続される電極を有し、前記導電体を通電加熱する通電加熱機構とを備え、前記導電体の熱利用面とは反対側の面に、前記通電加熱機構による通電方向とは異なる方向に1又は複数の溝が形成されていることを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、導電体の熱利用面とは反対側の面に、通電方向とは異なる方向に溝が形成されているので、電極間を流れる電流を熱利用面の近傍に流して熱利用面を効率良く発熱させることができる。また、電流を熱利用面の近傍に流しているので、熱利用面の昇温速度を速めることができる。さらに、1又は複数の溝の配置又は形状等を工夫することによって、導電体における通電方向に沿った電気抵抗値の差を小さくすることができ、熱利用面の発熱斑を低減することができる。したがって、導電体を効率良く均一に加熱することができる。その上、通電加熱機構が導電体に接続される電極を有しているので、導電体及び通電加熱装置の配線を簡略化することができる。
【0013】
前記溝が、前記通電方向に対して略直交方向に延び設けられていることが望ましい。
このように通電方向に対して略直交方向に溝を形成することで、電極間を流れる電流の略全てを熱利用面の近傍に流すことができ、熱利用面を効率良く発熱させることができる。
【0014】
前記溝が、前記導電体の最小肉厚未満の深さを有していることが望ましい。
これならば、複数の溝の深さを互いに同一とした場合であっても、当該溝が導電体の熱利用面側に貫通することが無い。また、複数の溝の深さを互いに同一にすることができるので、加工を容易にすることができる。
【0015】
また、複数の溝が形成された導電体において、前記各溝の底面と前記熱利用面との間の残存肉厚が、前記複数の溝において互いに同一であることが望ましい。これならば、複数の溝において、残存肉厚が同一であるので、各残存肉厚での電気抵抗値を略同一にすることができ、熱利用面の発熱斑をより一層低減することができる。
【0016】
さらに、前記溝において、前記溝の底面と前記熱利用面との間の残存肉厚が、前記溝の延在方向において同一であることが望ましい。これならば、各溝の延在方向において、電気抵抗値を略同一にすることができ、熱利用面の発熱斑をより一層低減することができる。
【0017】
前記溝に、絶縁部材又は前記導電体よりも高抵抗の高抵抗部材が設けられていることが望ましい。
これならば、導電体の機械的強度を増すことができ、導電体の熱利用面が加圧された状態で用いられても、当該熱利用面の変形を抑えることができる。また、溝に絶縁部材を設けることで、絶縁性を向上させることもできる。
【0018】
前記導電体の通電方向に貫通孔が形成されており、当該貫通孔に前記導電体と絶縁されたボルトを挿入して締め付けることにより、前記絶縁部材又は前記高抵抗部材が前記導電体に固定されることが望ましい。
これならば、絶縁部材又は高抵抗部材を導電体に固定するとともに、導電体の機械的強度を増すことができる。
【発明の効果】
【0019】
このように構成した本発明によれば、導電体を通電加熱するものにおいて、導電体の熱利用面を効率良く均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の通電加熱装置の平面図。
図2】第1実施形態の通電加熱装置のA−A’線断面図。
図3】第1実施形態の電気回路図。
図4】第1実施形態の導電体の構成を示す平面図及びA−A’線断面図。
図5】実施例の加熱試験装置の電気特性、導電体の形状及び寸法を示す図。
図6】比較例の加熱試験装置の電気特性、導電体の形状及び寸法を示す図。
図7】実施例における各計測点の温度変化を示すグラフ。
図8】比較例における各計測点の温度変化を示すグラフ。
図9】第2実施形態の通電加熱装置の平面図。
図10】第2実施形態の通電加熱装置のA−A’線断面図。
図11】第2実施形態の単相交流電源を接続した場合の電気回路図。
図12】導電体の変形例を示す幅方向に沿った断面図。
図13】導電体の変形例を示す通電方向に沿った断面図。
図14】誘導コイルを分割した場合の電気回路図。
図15】第2実施形態に三相交流電源を接続した場合の電気回路図。
図16】変形実施形態のスコット結線を接続した場合の電気回路図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下に本発明に係る通電加熱装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係る通電加熱装置100は、一方の面に凹凸形状をなす熱利用面2aを有する導電体2と、当該導電体2に接続される接続端子(電極)を有し、前記導電体2を通電加熱する通電加熱機構3とを備えている。そして、この通電加熱機構3により前記導電体2の熱利用面2aを発熱させることによって被加工物に熱を加えて成形等するものである。なお、導電体2は、例えば被加工物を加圧加熱成型するための金型である。また、前記熱利用面2aは、被加工物の成形形状に対応した形状とされており、被加工物に熱を与えることによって、被加工物を所望の形状に成型するものである。
【0023】
まず通電加熱機構3について説明する。
この通電加熱機構3は、図1及び図2に示すように、導電体2が取り付けられる取り付け面MFを有しており、当該取り付け面MFに取り付けられた導電体2を通電加熱するものである。本実施形態では、取り付け面MFが上面に形成された通電加熱機構3を示しているが、取り付け面MFを下面又は側面に有するものであっても良い。
【0024】
具体的に通電加熱機構3は、交流電圧が印加される誘導コイル4と、誘導コイル4の中心部に設けられた鉄心5と、誘導コイル4の周囲に設けられた二次導体6と、誘導コイル4及び二次導体6を収容する収容部71を有する磁性体7とを備えている。なお、交流電圧は、50Hz〜1000Hzの中周波のものであれば、高周波電源を用いた場合に比べて電源コストを小さくことができる。つまり、50Hz〜1000Hzの中周波の交流電圧は、変圧器の結線によって簡単に生成できるため、インバータを要する高周波に比べて大幅な低コストの電源とすることができる。
【0025】
誘導コイル4は、その中心軸が前記取り付け面MFに対して平行となるように配置されている。この誘導コイル4には、単相交流電源8が接続されている(図3参照)。
【0026】
鉄心5は、前記誘導コイル4に中心部に設けられて、誘導コイル4により生じる磁束を通過させる中心磁路を形成するものである。
【0027】
二次導体6は、前記誘導コイル4により生じる磁束によって電流が流れるものであり、前記誘導コイル4を収容する概略U字状のコイル収容部61と、当該コイル収容部61の両側壁611、612に接続された2つの接続端子62、63とを有している。本実施形態の二次導体6は、例えば銅等の導体金属から形成されている。
【0028】
磁性体7は、二次導体6のコイル収容部61を収容する概略U字状の収容部71を有しており、当該収容部71の両側壁711、712が前記二次導体6の接続端子62、63の下側に位置するように構成されている。この両側壁711、712が接続端子62、63を下側から支える構造としている。本実施形態の磁性体7は、例えばSS400等の磁性金属から形成されている。また、この磁性体7は、誘導コイル4及び二次導体6だけでなく、取り付け面MFに取り付けられた導電体2を支持する支持装置として機能する。なお、磁性体7及び二次導体6の間には、絶縁材9が設けられている。
【0029】
そして、この通電加熱機構3では、前記取り付け面MFに、前記二次導体6の接続端子62、63が露出するように構成されている。
【0030】
具体的には、前記二次導体6の両側壁611、612を架け渡すように絶縁板10が設けられており、当該絶縁板10の上面と前記接続端子62、63の上面とが前記取り付け面MFを構成している。また、2つの接続端子62、63は、取り付け面MFの両端部において、誘導コイル4の中心軸に沿った方向(幅方向)に延びて露出している。なお、本実施形態では、絶縁板10は、前記二次導体6のコイル収容部61の両側壁611、612と接続端子62、63との間に形成された平板部64上に載置して設けられている。これにより、本実施形態の通電加熱機構3は、誘導コイル4及び二次導体6が、磁性体7の内部に内蔵された構造となる。
【0031】
この通電加熱機構3の取り付け面MFに導電体2を取り付けると同時に、当該導電体2の下面に2つの接続端子62、63が接触することになる。このとき、磁性体7の両側壁711、712が接続端子62、63を下側から支える構造としているので、導電体2の下面と接続端子62、63とを押圧させて確実に接触させることができる。これにより、導電体2の一端部に一方の接続端子62が接続され、導電体2の他端部に他方の接続端子63が接続される。本実施形態では、導電体2の一端部及び他端部以外の部分は、絶縁板10に接触する。
【0032】
この通電加熱装置100の電気回路図を図3に示す。図3に示すように、本実施形態の通電加熱装置100は、誘導コイル4に流れる電流を制御するための電流制御装置11が設けられている。この電流制御装置11によって、誘導コイル4に流れる電流を制御することにより、二次導体6に流れる誘導電流を制御することができ、その結果、導電体2の温度上昇や加熱温度を制御することができる。
【0033】
しかして、本実施形態の導電体2は、図2及び図4に示すように、前記熱利用面2aとは反対側の面2b(下面)に複数の溝2Mが形成されている。
【0034】
複数の溝2Mは、通電加熱機構3による通電方向とは異なる方向に沿って形成されており、本実施形態では、通電方向に対して略直交する方向(誘導コイル4の中心軸に沿った方向(幅方向))に延び設けられている。ここで、通電方向とは、2つの接続端子62、63が互いに対向する対向方向であり、図4においては左右方向である。なお、本実施形態の導電体2は、通電方向において肉厚が異なり、且つ、誘導コイル4の中心軸に沿った方向(幅方向)において同一の肉厚を有するものである。
【0035】
本実施形態においては、各溝2Mは、幅方向に沿って同一の溝深さを有するものであり、等断面形状をなすものである。また、各溝2Mは、導電体2の下面2bにおいて、一端から他端に亘って形成されている。つまり、各溝2Mは、導電体2の一端面(前端面)2c及び他端面(後端面)2dに開口している。
【0036】
さらに、複数の溝2Mは、導電体2における形成位置によってその深さが異なるように形成されている。つまり、図4に示すように、導電体2の肉厚が大きい部分においては、溝2Mの深さが大きくなるように形成されており、導電体2の肉厚が小さい部分においては、溝2Mの深さが小さくなるように形成されている。つまり、導電体2の肉厚に応じて溝2Mの深さが規定されている。より詳細には、導電体2の熱利用面2aと溝2Mの底面との間の残存肉厚(距離)が、各溝2M同士で略同一となるように形成されている。
【0037】
なお、本実施形態では、導電体2の最小肉厚部には、溝2Mが形成されない態様であり、前記熱利用面2aと溝2Mの底面との間の残存肉厚が、前記最小肉厚部の肉厚と同一となるように、溝2Mが形成されている。
【0038】
次に、金型に溝を形成した本発明の通電加熱装置(以下、実施例という。)、及び金型に溝を形成しない通電加熱装置(以下、比較例という。)における通電加熱試験及びその結果を示す。
【0039】
図5に実施例の試験装置の構成を示す。この試験装置において、通電加熱機構の昇温特性は、図5(A)に示すとおりである。また、金型の材質は、SS400であり、その各寸法は、図5(B)(C)に示すとおりである。なお、単相交流電圧6の周波数は、60Hzである。この試験装置において、図5(B)に示す計測点1〜計測点15の温度を測定した。また、計測点15を制御点とした。
【0040】
図6に比較例の試験装置の構成を示す。この試験装置において、通電加熱機構の昇温特性は、図6(A)に示すとおりである。また、金型の材質は、SS400であり、その各寸法は、図6(B)(C)に示すとおりである。なお、単相交流電圧6の周波数は、60Hzである。この試験装置において、図6(B)に示す計測点1〜計測点15の温度を測定した。また、計測点15を制御点とした。
【0041】
図7に実施例における金型の各計測点における昇温特性を示し、図8に比較例における金型の各計測点における昇温特性を示す。図7及び図8を比較すると、制御点である計測点15の平均温度が、設定温度である150℃に到達する時間は、比較例では、昇温開始後20〜25分を要しているのに対して、実施例では、昇温開始後約8.4分である。つまり、実施例によれば、設定温度到達時間が1/3程度になっている。
【0042】
また、図7及び図8を比較すると、比較例においては、昇温過程において各計測点の温度のばらつきが大きいが、実施例においては、昇温過程において各計測定の温度のばらつきが抑えられていることが分かる。例えば、昇温開始から約8.4分時点での各計測点の最大温度差は、比較例が58Kであるのに対して、実施例が33Kであり、温度差も縮小されている。さらに、本試験では、金型の熱利用面と溝との間の残存肉厚を10mmで一定としたものであるが、前記残存肉厚を小さくする等、溝の形状によっては、前記温度差をさらに縮小させることができる。
【0043】
このように構成した本実施形態の通電加熱装置100によれば、導電体2の熱利用面2aとは反対側の面2bに、通電方向とは直交する方向に溝2Mが形成されているので、電極62、63間を流れる電流を熱利用面2aの近傍に流して熱利用面2aを効率良く発熱させることができる。また、電流を熱利用面2aの近傍に流しているので、熱利用面2aの昇温速度を速めることができる。さらに、1又は複数の溝2Mの配置又は形状等を工夫することによって、導電体2における通電方向に沿った電気抵抗値の差を小さくすることができ、熱利用面2aの発熱斑を低減することができる。したがって、導電体2を効率良く均一に加熱することができる。その上、通電加熱機構3が導電体2に接続される電極62、63を有しているので、導電体2及び通電加熱機構3の配線を簡略化することができる。
【0044】
また、本実施形態の通電加熱機構3は、導電体2が取り付けられる取り付け面MFを有しており、二次導体6の接続端子62、63が、当該取り付け面MFに取り付けられた導電体2に接触するように設けられているので、二次導体6の接続端子62、63を導電体2に接続するための配線を不要にすることができる。
【0045】
さらに、通電加熱機構3自体に取り付け面MFが設けられているので、別途金型やワークを支持するための支持装置が不要となり、装置の設置面積を小さくすることができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明及び図において、前記第1実施形態と同一の部材又は対向する部材には、同一の符号を付している。
【0047】
第2実施形態の通電加熱装置100は、前記第1実施形態の通電加熱装置100に対して通電加熱機構3の構成が異なる。なお、本実施形態の導電体2は、前記実施形態と同様に、前記熱利用面2aとは反対側の面2b(下面)に複数の溝2Mが形成されている。また、複数の溝2Mは、通電加熱機構3による通電方向に対して略直交する方向に延び設けられている。
【0048】
第2実施形態の通電加熱機構3は、図9及び図10に示すように、誘導コイル4を複数(具体的には3つ)有しており、複数の誘導コイル4が、その中心軸が互いに平行となるように並列配置されている。つまり、本実施形態では、導電体2の形状に対応して、取り付け面MFが長手方向に延びた長方形状をなす平面であり、当該取り付け面MFの長手方向に直交するように各誘導コイル4が配置されている。本実施形態では、複数の誘導コイル4が、同一形状であり、互いに等間隔に配置された場合を示しているが、これに限られず、複数の誘導コイル4を互いに異なる形状としても良いし、導電体2の形状に応じて種々の間隔で配置することが考えられる。
【0049】
また、この通電加熱装機構3は、互いに隣接する2つの誘導コイル4に設けられた2つの二次導体6において、互いに隣接する接続端子62、63が接続されて共通とされた接続端子部6Pを有している。つまり、本実施形態では、3つの誘導コイル4(第1の誘導コイル4a、第2の誘導コイル4b及び第3の誘導コイル4cという。)の周囲に設けられる二次導体6が単一の部材により構成されている。
【0050】
そして、3つの誘導コイル4a〜4cの間に2つの接続端子部6Pが設けられ、一方の最外側である第1の誘導コイル4aの外側に1つの接続端子62が設けられ、他方の最外側である第3の誘導コイル4cの外側に1つの接続端子63が設けられた構成とされている。
【0051】
さらに、3つの誘導コイル4a〜4c及び二次導体6を収容する収容部71を有する磁性体7は、前記3つの誘導コイル4a〜4c及び3つのコイル収容部61a〜61cに合わせて、3つの収容部71a〜71cを有している。
【0052】
また、このように構成された通電加熱機構3においても、前記第1実施形態と同様に、前記取り付け面MFに、前記二次導体6の接続端子部6P及び接続端子62、63が露出するように構成されている。具体的には、前記二次導体6の各端子(接続端子部6P、接続端子62、63)の間に絶縁板10が設けられており、当該絶縁板10の上面と前記接続端子部6P及び接続端子62、63の上面とが前記取り付け面MFを構成している。また、2つの接続端子部6P及び2つの接続端子62、63は、誘導コイル4の中心軸に沿った方向(幅方向)に延びて露出している。さらに、2つの接続端子部6P及び2つの接続端子62、63からなる4つの端子は、取り付け面MFにおいて等間隔に配置されている。
【0053】
そして、前記3つの誘導コイル4a〜4cには、図11に示すように、単相交流電源8が接続されている。具体的には、互いに隣接する2つの誘導コイル4に対応する2つの二次導体6において、互いに隣接する接続端子62、63から出力される極性が同一となるように構成されている。
【0054】
ここで、互いに隣接する接続端子62、63から出力される極性を同一とする構成としては、互いに隣接する2つの誘導コイル4の巻き方向を互いに異ならせる構成、つまり一方の誘導コイル4の巻き方向に対して他方の誘導コイル4の巻き方向を逆向きにするとともに、それら2つの誘導コイル4の一方側の端部に接続する単相交流電源8の極性を同一(U相)にし、他方側の端部に接続する単相交流電源8の極性を同一(V相)にする構成が考えられる。また、互いに隣接する2つの誘導コイル4の巻き方向を互いに同一にして、それら2つの誘導コイル4の一方側の端部に接続する単相交流電源8の極性を互いに異なるもの(一方の誘導コイルをU相、他方の誘導コイルをV相)とし、他方側の端部に接続する単相交流電源8の極性を互いに異なるもの(一方の誘導コイルをV相、他方の誘導コイルをU相)とする構成が考えられる。
【0055】
本実施形態では、互いに隣接する接続端子62、63が接続されて共通とされているので、4つの端子(接続端子部6P、接続端子62、63)から出力される電圧極性がU相、V相、U相、V相のように交互に出力されるように構成されている。このように構成することで、4つの端子(2つの接続端子部6P及び2つの接続端子62、63)に接続された導電体2において、各端子間に連続的に電流が流れるようになり、導電体2を効率的に加熱することができる。
【0056】
この通電加熱装置100の電気回路図を図11に示す。図11に示すように、単相交流電源8が接続される誘導コイル4a〜4cのU相には、誘導コイル4a〜4cに流れる電流を制御するための電流制御装置11a〜11cが設けられている。この電流制御装置11a〜11cによって、3つの誘導コイル4a〜4cに流れる電流を制御することにより、各端子間を流れる電流を制御することができる。したがって、導電体2の下面に形成された溝2Mとともに複数の誘導コイル4a〜4cにより、導電体2の長手方向に沿った各部の温度上昇や加熱温度をより一層精度良く制御することができる。
【0057】
このように構成した第2実施形態の通電加熱装置100によれば、導電体2が長手方向を有する長い形状をなすものの場合に、当該長手方向に沿って並列配置された複数の誘導コイル4a〜2cに単相交流電源8を接続して、導電体2の長手方向に沿った温度を均一にすることができる。
【0058】
また、二次導体6の接続端子を共通にしているので、導電体2に接続される接続端子の数を減らすことができる。また、互いに隣接する接続端子を接続して共通にすることで、複数の誘導コイル4を設けた場合の二次導体5を単一の部品とすることができる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0059】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記各実施形態に限られるものではない。
【0060】
例えば、前記実施形態の溝2Mは、通電方向に略直交する方向に沿って形成されているが、互いに対向する電極(接続端子)を遮るように形成されるものであれば、通電方向に対して略直交するものでなくても良い。また、溝2Mは、平面視において直線状をなすもののほか、平面視において湾曲状又は屈曲状をなすものであっても良い。
【0061】
また、前記実施形態では、各溝2Mの深さが延在方向(幅方向)において同一であったが、溝の深さを延在方向において異ならせても良い。この場合、溝2Mの深さは、図12に示すように、当該溝2Mが設けられた部分の熱利用面2aの凹凸形状に対応させることが望ましい。つまり、残存肉厚が延在方向において同一となるように形成することが望ましい。この構成は、導電体2が、幅方向において異なった肉厚を有するものにおいて特に有効である。
【0062】
さらに、前記実施形態では、複数の溝2Mが互いにほぼ平行で且つほぼ等間隔となるように配置されているが、これに限られず、導電体の熱利用面2aの形状に対応させて種々の配置とすることができる。また、溝2Mは、導電体2Mの一端面(前端面)2c及び他端面(後端面)2dに開口するように形成されているが、一端面2c又は他端面2dの少なくとも一方に開口しないように形成されていても良い。
【0063】
その上、前記実施形態では、接続端子62、63が、取り付け面MFに露出して設けられており、当該取り付け面MFに導電体2を取り付けると導電体2の下面2bに接触するものであったが、導電体2の下面2bに接触しない位置に設けられたものであっても良い。例えば、接続端子62、63が、取り付け面MFに取り付けられた導電体2の近傍に設けられたものであっても良い。
【0064】
前記実施形態の導電体2の溝2Mに、図13に示すように、絶縁部材12又は導電体2よりも高抵抗の高抵抗部材13を充填して設けても良い。これならば、導電体2の機械的強度を増すことができ、導電体2の熱利用面2aが加圧された状態で用いられても、当該熱利用面2aの変形を抑えることができる。また、溝2Mに絶縁部材12を設けた場合には、絶縁性を向上させることもできる。
【0065】
また、導電体2の通電方向に貫通孔を形成して、当該貫通孔に導電体2と絶縁されたボルトを挿入して締め付けることにより、前記絶縁部材12又は前記高抵抗部材13を導電体に固定しても良い。これならば、絶縁部材12又は高抵抗部材13を導電体2に固定するとともに、導電体2の機械的強度を増すことができる。
【0066】
導電体2としては、前記実施形態に例示した金型に限られず、熱利用面2aによって被加熱物を加熱するものであれば良い。
【0067】
加えて、導電体2の下面2bが平面状をなすものではなく、凹凸形状をなすものの場合には、前記取り付け面MFを前記導電体2の下面2bの形状に対応した凹凸形状をなすものとしても良い。
【0068】
また、前記第1実施形態等の構成に加えて、図14に示すように、前記誘導コイル4を中心軸に沿って複数の分割コイル41に分割することが考えられる。また、複数の分割コイル41は、単相交流電源8に並列に接続されている。また、複数の分割コイル41は、互いにその巻き方向が同一となるように構成されている。なお、複数の分割コイル41は、軸方向長さが互いに同じであっても良いし、軸方向長さが互いに異なるものであっても良い。
【0069】
このように誘導コイル4を分割して構成することで、各分割コイル41から発生する磁束が、軸方向で重畳することになり、導電体Wにおける誘導コイル4の中心軸に沿った方向(幅方向)における発熱の均一化を図ることができる。導電体2に複数の溝2Mを形成した構成とともに、誘導コイル4を分割する構成にすることで、導電体2の温度をより一層均一に発熱することができる。
【0070】
その上、第2実施形態の通電加熱装置100において、互いに隣接する接続端子62、63を共通として接続端子部6Pを構成しているが、共通とすることなく、別々のまま加熱対象物Wに接続する構成としても良い。
【0071】
また、図15に示すように、第2実施形態の通電加熱機構3に三相交流電源14を接続しても良い。なお、三相交流電源14を接続する場合には、誘導コイル4の数は、3個に限られず、3n個とすることができる。
【0072】
具体的には、互いに隣接する2つの誘導コイル4に対応する2つの二次導体6において、互いに隣接する接続端子62、63から出力される極性が同一となり、複数の接続端子62、63から出力される極性が全体として三相を繰り返すように構成されている。
【0073】
本実施形態では、図15の電気回路図に示すように、互いに隣接する接続端子62、63が接続されて共通とされた接続端子部6Pを有しているので、4つの端子(2つの接続端子部6P及び2つの接続端子62、63)から出力される電圧極性がU相、V相、W相、U相のように三相を繰り返して出力するように構成されている。このように構成することで、4つの端子に接続された導電体2において、各端子間に連続的に電流が流れるようになり、導電体2を効率的に加熱することができる。
【0074】
通電加熱機構3は、図16に示すように、2つの誘導コイル4をスコット結線して構成しても良い。具体的には、2個の誘導コイル4に対応する2つの二次導体6において、互いに隣接する接続端子62、63から出力される極性が同一となるように構成されている。
【0075】
このように構成した通電加熱機構3によれば、スコット結線によって三相入力電流を平衡させながら2つの誘導コイル4に通電して、導電体2に連続的に電流を流すことができる。また、入力側に設けられた電流制御装置11により、誘導コイル4に流れる電流を制御することで、端子間を流れる電流を制御することができ、その結果、導電体2の温度上昇や加熱温度を制御することができる。
【0076】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0077】
100・・・通電加熱装置
2・・・導電体
2a・・・熱利用面
2b・・・反対側の面
2M・・・溝
3・・・通電加熱機構
4・・・誘導コイル
5・・・鉄心
6・・・二次導体
62、63・・・接続端子
7・・・磁性体
12・・・絶縁部材
13・・・高抵抗部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16