(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、上段に冷蔵室、中段に冷凍室、下段に野菜室を配置し、中段に配置される冷凍室の奥に冷却器を収納する冷却室を設けた、いわゆるミッドフリーザータイプの冷蔵庫が知られている。この種の冷蔵庫において、冷却器で冷却された空気を野菜室に供給するための野菜室供給風路を冷凍室の奥に形成することがある(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0003】
特許文献1に開示された冷蔵庫は、冷蔵庫の最上段に位置する冷蔵室と、最下段に位置する野菜室とを連通し、冷蔵室を経由した冷気を野菜室へと導く野菜室供給風路(同文献では、野菜室送風ダクトと記載)を備えている。冷凍室の背部には、冷却器を収納する冷却室(同文献では、冷気送風ダクト)が、仕切体(同文献では、エバカバー)と内箱とによって形成されている。同文献の野菜室供給風路(野菜室送風ダクト)は、冷凍室の奥に形成され、冷却室(冷気送風ダクト)に隣接して設けられている。
【0004】
また、特許文献2に開示された冷蔵庫は、冷却器で冷却された空気を、冷蔵室を経由させずに、直接野菜室に供給する野菜室供給風路(同文献では、冷気通路)を有する。同文献の野菜室供給風路(冷気通路)は、冷却室を形成する仕切体(同文献では、背面部材)と、冷却室の前方に冷凍室供給風路を形成する仕切体(同文献では、カバー部材)とによって形成されている。具体的には、冷却室を形成する仕切体(背面部材)に上下方向に延在する凹部を形成し、前記凹部を前面カバー(カバー部材)で覆って野菜室供給風路(冷気通路)を形成している。
【0005】
また、同文献に開示された冷蔵庫は、冷蔵室及び野菜室に送る冷気を制御するダンパ装置を備えている。該ダンパ装置は、冷凍室の後方投影面内に収めて配設されており、冷却室を形成する仕切体(背面部材)に組み込まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術の冷蔵庫では、野菜室供給風路の気密性を確保することが難しく、その結果、野菜室の適切な温度管理が阻害されるという問題点があった。
【0008】
具体的には、一体成形された仕切体と内箱との間に冷却室と野菜室とを同時に形成する場合、仕切体の寸法誤差やウレタン発泡による内箱の変形等により、野菜室供給風路と冷却室とを区画するシール部分(仕切体と内箱との当接部)に隙間が生じ易かった。
【0009】
その結果、例えば、野菜室の温度が所定の目標値まで低下し、野菜室への冷気の供給を停止しているときに、冷却室から前述した隙間を介して野菜室供給風路へと冷気が漏れ、野菜室が冷え過ぎる原因となっていた。
【0010】
他方、野菜室の冷却を行っているときには、送風機の運転により冷却室が負圧になり野菜室供給風路の圧力が冷却室の圧力よりも高くなるので、野菜室供給風路から前記の隙間を介して冷却室へと冷気が吸引され、野菜室が冷却不良になる恐れがある。
【0011】
また、特許文献2に開示された冷蔵庫のように、一体成形された仕切体と一体成形された前面カバーとによって、冷凍用供給風路と野菜室供給風路とを同時に形成する場合も、冷凍用供給風路と野菜室供給風路との間の気密性を確保することが難しかった。即ち、冷凍用供給風路と野菜室供給風路とを区画するシール部(仕切体と前面カバーとの当接部)をネジ止めすることが困難であったので、当該部分で仕切体と前面カバーとの間に隙間が生じ易かった。
【0012】
冷凍用供給風路と野菜室供給風路とのシール部に隙間があると、野菜室の冷却を行っていないときに冷凍室供給風路から野菜室供給風路へと温度の低い空気が漏れ、野菜室が冷え過ぎてしまう。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、優れた組立性を維持しつつ野菜室供給風路の気密性を高め、野菜室の温度を適切に維持することができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の冷蔵庫は、断熱仕切壁によって少なくとも上段の冷蔵室と中段の冷凍室と下段の野菜室とに区画される貯蔵室と、仕切体によって区画され、前記冷凍室の奥に形成される冷却室と、前記冷却室に配設され、前記貯蔵室に供給する空気を冷却する冷却器と、前記仕切体の前方に前面カバーを取り付けることにより形成され、前記冷却器で冷却された前記空気を流す冷凍室供給風路と、前記空気を前記冷凍室の奥を経由して前記野菜室へと供給する野菜室供給風路と、を備え、前記冷凍室の奥に形成される前記野菜室供給風路は、前記仕切体及び前記前面カバーとは別に設けられる野菜室風路カバーによって区画された空間に形成され
、前記野菜室風路カバーの内側には、前記野菜室供給風路を形成する筒状の断熱部材が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の冷蔵庫によれば、野菜室供給風路は、冷却室を区画する仕切体及び冷凍室供給風路を区画する前面カバーとは別に独立して設けられる野菜室風路カバーによって区画された空間に形成される。
【0016】
そのため、冷却室または冷凍室供給風路と野菜室供給風路との間を直接に区画するシール部をなくすことができる。即ち、冷却室または冷凍室供給風路を区画する仕切体や前面カバーに取り付けられるシール部材は、冷却室または冷凍室供給風路と冷凍室との間をシールし、野菜室供給風路に取り付けられるシール部材は、野菜室供給風路と冷凍室との間をシールする。
【0017】
これにより、冷却室または冷凍室供給風路から野菜室供給風路へと冷気が漏れることを防止することができる。また、冷却室が負圧になった際に、野菜室供給風路内の冷気が冷却室に吸引されることを防止することができる。その結果、野菜室の冷え過ぎや冷却不良を回避し、野菜室を適切な温度に維持することができる。
【0018】
また、野菜室風路カバーを別部品として設けることにより、組立性が向上し、冷却室や冷凍室供給風路を形成する仕切体及び前面カバーのシール部をネジ止め等によって内箱に固定することができるようになる。その結果、冷却室または冷凍室供給風路から冷凍室への、またはその逆方向の、空気の漏れを防止することができる。
【0019】
また、野菜室風路カバーの内側に、野菜室供給風路を形成する筒状の断熱部材を設けることにより、野菜室供給風路の組立性が向上すると共に、野菜室供給風路の気密性を更に高めることができる。また更に、野菜室供給風路とその外部との熱伝達を減らし、熱損失を低減することができる。
【0020】
また、野菜室供給風路を、冷凍室の上面及び底面を各々形成する断熱仕切壁の内部を経由するよう形成しても良い。これにより、野菜室風路カバー及び前記断熱部材を上下方向に直線状に延在する部品として、野菜室供給風路を冷凍室の奥に容易に組み立てることができる。
【0021】
また、野菜室風路カバーまたは前記断熱部材の上下端面を、シール部材を介して、前記断熱仕切壁と各々結合するよう構成しても良い。これにより、組み立て作業を容易に行うことができ、且つ野菜室供給ダクトの優れた気密性を確保することができる。
【0022】
また、冷蔵室及び野菜室に流す空気の量を1つの駆動モータで各々独立して制御可能なダンパ装置を設け、冷蔵室を経由しない冷気を野菜室へと供給しても良い。これにより、冷蔵室の冷却とは独立して野菜室の冷却を行うことができ、野菜室の温度を適切に制御することができる。
【0023】
また、前記ダンパ装置を、冷凍室の上面を形成する断熱仕切壁の奥に配置しても良い。これにより、直線状に延在する野菜室風路カバーまたは前記断熱部材を採用し、該上下端面を各々シールして断熱仕切壁に接合することにより、冷凍室の奥に野菜室供給風路を容易に形成することができる。
【0024】
また、前記ダンパ装置を、その最上部が冷蔵室の底面より下方になるように配設しても良い。これにより、冷蔵室ダンパを閉じた状態において、冷蔵室内の空気が供給風路内の空気によって冷やされて、冷蔵室内に結露が発生することを防止できる。
【0025】
また、冷蔵室から冷却室へと空気を流す帰還風路を設け、該帰還風路を、断熱箱体(内箱)の内壁と野菜室供給風路を形成する断熱部材とによって形成しても良い。これにより、気密性及び断熱性の高い帰還風路を形成することができ、帰還風路内を流れる空気によって、野菜室供給風路や冷凍室が暖められてしまうことを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る冷蔵庫を図面に基づき詳細に説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る冷蔵庫1の概略構造を示す正面外観図である。
図2は、冷蔵庫1の右側面断面図である。
図3は、冷蔵庫1の供給風路の概略を示す正面略図である。尚、
図2及び
図3において、各貯蔵室3〜7に供給される冷気の流れを実線矢印で、各貯蔵室3〜7から冷却室13へと戻る空気の流れを破線矢印で示している。
【0029】
図1に示すように、冷蔵庫1は、本体としての断熱箱体2を備え、該断熱箱体2の内部に食品等を貯蔵する貯蔵室を形成している。貯蔵室の内部は、保存温度や用途に応じて複数の収納室3〜7に区分されている。最上段が冷蔵室3、その下段左側が製氷室4で右側が上段冷凍室5、更にその下段が下段冷凍室6、最下段が野菜室7である。尚、製氷室4、上段冷凍室5及び下段冷凍室6は、何れも冷凍温度域の収納室であり、以下の説明では適宜、これらをまとめて冷凍室4〜6と称する。
【0030】
断熱箱体2の前面は開口しており、前記各収納室3〜7に対応した前記開口部には、各々断熱扉8〜12が開閉自在に設けられている。冷蔵室扉8a、8bは、冷蔵室3の前面を分割して塞ぐもので、冷蔵室扉8aの左上下部及び冷蔵室扉8bの右上下部が断熱箱体2に回転自在に支持されている。また、断熱扉9〜12は、冷蔵庫2の前方に引出自在に、断熱箱体2に支持されている。
【0031】
図2に示すように、冷蔵庫2の本体である断熱箱体2は、前面に開口部を有する鋼板製の外箱2aと、該外箱2aの内側に間隙を持たせて配設され、前面に開口部を有する合成樹脂製の内箱2bと、前記外箱2aと内箱2bとの間隙に充填発泡された発泡ポリウレタン製の断熱材2cと、から構成されている。尚、各断熱扉8〜12も、断熱箱体2と同様の断熱構造を採用している。
【0032】
冷蔵室3と、その下段に位置する冷凍室4〜6との間は、断熱仕切壁35によって仕切られている。断熱仕切壁35は、合成樹脂の成形品であり、その内部には断熱材が充填されている。
【0033】
また、冷凍室4〜6内部の製氷室4と上段冷凍室5との間は、仕切壁(図面に表れない)によって仕切られている。製氷室4及び上段冷凍室5と、その下段に設けられた下段冷凍室6とは、冷気が流通自在に連通している。そして、冷凍室4〜6と野菜室7との間は、断熱仕切壁36によって区分けされている。
【0034】
また、冷凍室4〜6の奥側には、合成樹脂製の仕切部材である前面カバー24で区画され、冷凍室供給風路14が形成されている。具体的には、冷凍用供給風路14は、仕切体25とその前方に組み付けられる前面カバー24との間に形成された空間であり、冷却器33で冷却された冷気を流す風路となる。
【0035】
前面カバー24には、冷凍室4〜6に冷気を吹き出す開口である吹出口15が形成されている。また、下段冷凍室6の下部背面には、冷凍室4〜6から冷却室13へと空気を戻す戻り口20が形成されている。
【0036】
また、冷蔵室3の背面には、冷蔵室3へと冷気を供給する冷蔵室供給風路16が形成されている。冷蔵室供給風路16には、冷蔵室3に冷気を流す吹出口17が形成されている。冷凍室供給風路14と冷蔵室供給風路16とは、ダンパ装置34(風路開閉器)の冷蔵室ダンパ34aを介して連通している。冷蔵室ダンパ34aは、冷蔵室3へと供給する冷気の流量を制御して、冷蔵室3内部の温度を適切に維持するためのものである。
【0037】
内箱2b内部の冷凍室供給風路14の更に奥側には、仕切体25で区分けされ形成された冷却室13が設けられている。即ち、冷却室13は、内箱2bと仕切体25とによって挟まれて形成された空間である。冷却室13上部の仕切体25には、冷却室13と冷凍室供給風路14とをつなぐ開口13aが形成されており、開口13aには、各貯蔵室3〜7に冷気を供給するための送風機32が配設されている。他方、冷却室13の下方には、貯蔵室からの帰還冷気を冷却室13の内部へと吸入する開口13bが形成されている。
【0038】
そして、冷却室13の内部には、循環する空気を冷却するための冷却器33(蒸発器)が配置されている。冷却器33は、圧縮器31、放熱器(図示せず)、膨張弁(キャピラリーチューブ)(図示せず)に冷媒配管を介して接続されており、蒸気圧縮式の冷凍サイクル回路を構成するものである。尚、本実施形態に係る冷蔵庫1では、前記冷凍サイクルの冷媒として、イソブタン(R600a)を用いている。
【0039】
図3に示すように、冷蔵庫1は、冷蔵室3から冷却室13(
図2参照)へと空気を流す帰還風路21を備えている。冷蔵室3の下部には、帰還風路21につながる開口である戻り口22が形成されている。冷蔵室3内の空気は、戻り口22を介して帰還風路21へと流れ、冷却器33の下方へと流れる。
【0040】
また、帰還風路21の前方には、冷却器33で冷却された空気を野菜室7へと流す野菜室供給風路18が形成されている。野菜室供給風路18は、冷凍室供給風路14から上方に分岐して、冷凍室4〜6の上方の断熱仕切壁35の内部を経由して下方に向きを変え、冷凍室4〜6の奥を通過している。そして、断熱仕切壁36を貫通して野菜室7へとつながっている。野菜室7には、野菜室供給風路18から冷気を吹き出す開口である吹出口19が形成されている。
【0041】
断熱仕切壁35の奥側の野菜室供給風路18には、野菜室に供給する冷気の流れを制御する野菜室ダンパ34bが設けられている。これにより、冷蔵室3の冷却とは独立して野菜室7の冷却を行うことができ、野菜室7の温度を適切に制御することができる。
【0042】
また、野菜室7には、戻り口29が形成されており、野菜室7内の空気は、戻り口29から野菜室帰還風路23(
図2参照)及び開口13b(
図2参照)を経由して冷却室13の下部へと流れる。
【0043】
図4は、冷蔵庫1の冷凍室4〜6奥の供給風路を説明する断面図であり、
図3におけるA−A線断面を表している。
【0044】
図4に示すように、内箱2bに組み付けられる仕切体25によって冷却室13が区画形成され、その冷却室13に冷却器33が配設されている。また、仕切体25と、その前方に取り付けられる前面カバー24とによって冷凍室供給風路14が区画形成されている。
【0045】
仕切体25及び前面カバー24は、該両側縁部24b、25b(シール部)が、図示しないシール部材を介して、例えばネジ等によって内箱2bに固定されている。これにより、冷却室13や冷凍室供給風路14の気密性を高めることができる。
【0046】
冷凍室4〜6の奥側の冷却室13及び冷凍室供給風路14の右側の内箱2bには、野菜室風路カバー26が取り付けられる。そして、野菜室風路カバー26によって区画された空間、即ち、野菜室風路カバー26と内箱2bとによって挟まれた空間には、野菜室供給風路18を形成する略筒形状に組み立てられた断熱部材27、28が配設される。
【0047】
ここで、従来技術の冷蔵庫では、仕切板や前面カバーで野菜室供給風路を形成することが行われていた。即ち、本願発明の仕切体25と野菜室風路カバー26とに相当する部品が一体成形された一つの部品となり、冷却室の横に野菜室供給風路を形成することがあった。また、本願発明の前面カバー24と野菜室風路カバー26とに相当する部品が一体成形された一つの部品として、冷凍室冷却風路の横に野菜室供給風路を形成することも考えられる。
【0048】
このような従来技術の構成では、冷却室または冷凍室供給風路と野菜室供給風路とを直接に区画してシールする部分が必要であった。具体的には、冷却室または冷凍室供給風路と野菜室供給風路とを区画する部分で仕切体と内箱とを、または前面カバーと仕切体とを、発泡ゴム材料等からなるシール部材を挟んで当接させていた。しかしながら、各部品の加工寸法誤差やウレタン発泡による変形、仕切体と前面カバーとをネジ止め困難である等の理由により、当該シール部には隙間が発生し易く、冷気が漏れる原因となっていた。
【0049】
これに対して本願発明では、前述の通り、野菜室供給風路18は、冷却室13や冷凍室供給風路14を形成する仕切体25及び前面カバー24とは別に独立して設けられる野菜室風路カバー26によって区画された空間に形成される。これにより、冷却室13または冷凍室供給風路14と野菜室供給風路18との間を直接に区画するシール部をなくすことができる。即ち、冷却室13または冷凍室供給風路14を区画する仕切体25や前面カバー24に取り付けられるシール部材は、冷却室13または冷凍室供給風路14と冷凍室4〜6との間をシールする構成である。
【0050】
これにより、冷却室13または冷凍室供給風路14から野菜室供給風路18へと冷気が漏れることを防止することができる。また、冷却室13が負圧になった際に、野菜室供給風路18内の冷気が冷却室13に吸引されることを防止することができる。その結果、野菜室7(
図2参照)の冷え過ぎや冷却不良を回避し、野菜室7に冷却保存される食品等の品質劣化を防止することができる。
【0051】
また、野菜室供給風路18の更に奥には、断熱部材28と内箱2bとによって帰還風路
21が形成されている。断熱部材28と内箱2bとの接合部分には、例えば発泡ゴム材料等からなるシール部材41を挟み込み気密性を確保している。このように、断熱部材28によって帰還風路21を形成することにより、気密性及び断熱性を確保することができ、帰還風路21内を流れる空気によって野菜室供給風路18や冷凍室4〜6が暖められてしまうことを防ぐことができる。
【0052】
図5は、冷蔵庫1の供給風路の構成を説明する分解斜視図である。
図5において、説明のため、冷蔵庫1を、背面付近では冷凍室4〜6の上面付近で破断し、前方では適当な曲面で破断した部分破断図として表している。背面付近の破断面より下方には、本図には表れない冷却室13(
図4参照)や冷凍室供給風路14(
図4参照)がある。
【0053】
図5に符号(I)で示すように、野菜室風路カバー26は、横断面略コ字状で直線状に延在する合成樹脂製の部品である。野菜室風路カバー26の内部には、例えばポリスチレン等の樹脂材料から成り、所定の横断面形状を有し直線状に延在する断熱部材27と断熱部材28とが配設されている。断熱部材27及び断熱部材28は、互いに組み合わされて、同図(II)に示す如く、略筒形状の形態を成し、野菜室供給風路18を形成する。
【0054】
このように、野菜室風路カバー26の内側に、野菜室供給風路18を形成する略筒形状の断熱部材27、28を設けることにより、野菜室供給風路18の組立性が向上すると共に、野菜室供給風路18の気密性を更に高めることができる。また更に、野菜室供給風路18とその外部との熱伝達を減らし、熱損失を低減することができる。
【0055】
そして、略筒形状に組み立てられた断熱部材27、28の上下端面には、例えば発泡ゴム材料等からなるシール部材40が取り付けられ、同図(III)に示す如く、冷凍室4〜6の背面に組み付けられる。そして、断熱部材27、28の上下端面は、シール部材40を介して、断熱仕切壁35(
図2参照)及び断熱仕切壁36に各々結合される。ここで取り付けられるシール部材40は、野菜室供給風路18と冷凍室4〜6との間をシールする。
【0056】
このように、冷蔵庫1では、野菜室供給風路18を形成する断熱部材27、28の上下端面のみをシールする構成であるので、組立が容易であり、且つ優れた気密性を発揮することができる。
【0057】
また、冷蔵庫1では、仕切体25や前面カバー24を取り付けた後に野菜室風路カバー26を組み付ける構成を採用している。これにより、組立性が向上し、前述の通り、仕切体25及び前面カバー24の右側のシール部24b、25bをネジ止め等によって内箱2bに固定することができるようになる。その結果、冷却室13または冷凍室供給風路14から冷凍室4〜6への、またはその逆方向の、空気の漏れを防止することができる。
【0058】
また、野菜室風路カバー26には、野菜室風路カバー26を固定するための係止部26a、26bが形成されている。係止部26aは、前面カバーに形成された係止受部24aに係合し、係止部26bは内箱2bに形成された図示しない係合受部に係合する。これにより、野菜室風路カバー26を容易に取り付けることができ、組立作業性が向上する。尚、野菜室風路カバー26をネジ止め等により固定する方法を採用しても良い。
【0059】
図6は、野菜室供給風路18を形成する断熱部材27、28を示す横断面図である。
図6の符号(I)に示すように、断熱部材27及び断熱部材28には、両部品を組み合わせたときに嵌合する凸部27a及び凹部28aが形成されている。具体的には、断熱部材27には、嵌合部である凸部27aが形成されており、断熱部材28には、凹部28bが形成されている。これにより、同図(II)に示す如く、断熱部材27、28を組み立てた際に、凸部27aと凹部28aとが嵌合し、該嵌合により優れた保持力とシール性能を確保することができる。その結果、前述の通り、断熱部材27、28の上下端面のみをシール部材40(
図5参照)でシールすることにより、気密性に優れた野菜室供給風路18を容易に形成することができる。
【0060】
ここで、凸部27aの幅寸法を、凹部28bの幅寸法より僅かに大きく形成しても良い。これにより、凸部27a及び凹部28aは、僅かな締め代を有して嵌合するので、該嵌合部の保持力とシール性能を更に高めることができる。
【0061】
尚、前述した嵌合部(凸部27a、凹部28a)としては、その他種々の形態を作用し得る。断熱部材27、28の接合面に各々対応する形状(例えば、波形状等)の凹凸を形成することによっても、接合面積を増大させ当該部分のシール性を向上させることができる。また、接着剤を用いて当該接合部分を接合しても良く、当該接合部分にシール部材を設けても構わない。
【0062】
また更に、断熱部材27と断熱部材28とを組み合わる構成に代えて、一体成形された略筒形状の断熱部材を採用しても良い。これにより、野菜室供給風路18の組立性及び気密性を更に高めることができる。
【0063】
また、断熱部材28の断熱厚みt1(野菜室供給風路18と断熱部材28の外表面との距離)は、断熱部材27の断熱厚みt2(野菜室供給風路18と断熱部材27の外表面との距離)よりも大きい。これにより、温度差が大きくなる野菜室供給風路18と帰還風路21との間の断熱性能を高めることができる。その結果、野菜室供給風路18内の空気が帰還風路21を流れる帰還空気によって暖められることによる野菜室7(
図2参照)の冷却不足を防止することができる。
【0064】
図7(A)は、冷蔵庫1のダンパ装置34の組み付けを説明する冷凍室4〜6上方に配置される断熱仕切壁35の下部仕切部材38の斜視図であり、同図(B)は、上部仕切部材37を取り付けた状態を示す断熱仕切壁35の斜視図である。
【0065】
図7(A)に示すように、断熱仕切壁35を構成する合成樹脂製の下部仕切部材38には、例えばポリスチレン等から成る断熱構造体39が取り付けられる。断熱構造体39には、冷凍室供給風路16、野菜室供給風路18及び帰還風路21となる開口が形成されている。更に、断熱構造体39には、野菜室供給風路18を形成する凹溝39aが形成されている。
【0066】
また、断熱構造体39には、ダンパ装置34が組み付けられている。前述の通り、ダンパ装置34は、冷蔵室3(
図2参照)に流す空気量を制御する冷蔵室ダンパ34aと、野菜室7(
図2参照)に流す空気の量を制御する野菜室ダンパ34bとを、1つの駆動モータ34cで各々独立して制御可能に構成されている。
【0067】
そして、断熱構造体39及びダンパ装置34が取り付けられた下部仕切部材38に、
図7(B)に示す如く、合成樹脂製の上部仕切部材37が取り付けられ、断熱仕切壁35が形成される。尚、上部仕切部材37や断熱仕切壁35は、図示した構成に限定されるものではなく、何らかの仕切部材により野菜室供給風路18の上方が遮蔽され、冷蔵室供給風路16及び帰還風路21のみが上方に開口すれば良い。
【0068】
これにより、野菜室供給風路18は、冷凍室4〜6(
図2参照)の上面(下部仕切部材38)よりも上方に流れ、断熱仕切壁35内部の風路を経由して下方に向きを変えた後、冷凍室4〜6の奥に形成された風路を流れて、野菜室7へと流れるように形成される。また、ダンパ装置34は、断熱仕切壁35の奥に配置されることになる。
【0069】
このような構成を採用することにより、
図5に示すように、野菜室風路カバー26及び断熱部材27、28を直線状に延在する部品とすることができ、野菜室風路カバー26及び断熱部材27、28の加工が容易になる。また、野菜室供給風路18を冷凍室4〜6の奥に容易に組み立てることができる。
【0070】
また、
図7(A)及び(B)に示すように、野菜室供給風路18は、その最上部が冷蔵室3(
図2参照)の底面(上部仕切部材37)より下方になり、野菜室ダンパ34bを通過した冷気が冷蔵室3を経由しないで野菜室7(
図2参照)へと流れるよう形成される。これにより、野菜室7へと供給される冷気の熱損失を低減することができ、野菜室7の温度を効率良く適切に制御することができる。
【0071】
また、ダンパ装置34は、その最上部が冷蔵室3の底面(上部仕切部材37)より下方になるように配設される。これにより、冷蔵室ダンパ34aを閉じた状態において、冷蔵室3内の空気が冷蔵室ダンパ34a下方の空気によって冷やされて冷蔵室3内に結露が発生することを防止できる。
【0072】
以上、本発明の実施形態に係る冷蔵庫について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。