(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の携帯端末と、送受信機と、を備え、当該各携帯端末及び送受信機の両者の間の距離を測定し、当該距離に基づいて所定機能を実行する距離測定システムであって、当該両者が、
無線により当該両者の間での認証を行う認証部と、
当該両者の間の距離を測定するための無線を継続的に送受する測距信号送受部と、を含み、
前記送受信機は、
前記送受した無線の送受時刻に基づいて、当該両者の間の距離を算出する距離算出部と、
当該算出された距離に基づいて前記複数の携帯端末の中から代表を設定すると共に、当該設定した代表を前記複数の携帯端末の各々に通知する代表設定部と、を含み
前記複数の携帯端末の各々は、
前記通知された代表が自身である場合に、自身における前記測距信号送受部の送受を継続させ、前記通知された代表が自身ではない場合に、自身における前記測距信号送受部の送受を停止する設定受信部を含み、
前記代表として設定された携帯端末との距離に基づいて前記所定機能が実行されることを特徴とする距離測定システム。
前記代表設定部は、前記算出された距離に対する閾値判定により、所定範囲の内部に最初に進入したと判定された携帯端末を、前記代表として設定することを特徴とする請求項1に記載の距離測定システム。
前記代表設定部は、前記算出された距離に対する閾値判定により、所定範囲の内部に進入したと判定された時刻の早い所定数の携帯端末の中から、前記代表を設定することを特徴とする請求項1に記載の距離測定システム。
前記代表設定部は、前記所定数の携帯端末の中から、バッテリ残量割合の最大の携帯端末を、携帯端末の移動履歴より予測される前記送受信機への到達時刻が最も早い携帯端末を、又は、前記所定数に達した際の距離が最小の携帯端末を、前記代表として設定することを特徴とする請求項3に記載の距離測定システム。
前記代表設定部は、前記代表として設定された携帯端末において算出される距離を監視し、当該距離が所定条件を満たす場合に、当該代表を解除する旨を前記複数の携帯端末の各々に通知し、
前記複数の携帯端末の各々は、当該解除する旨の通知を受けて、前記測距信号送受部にて停止していた送受を再開することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の距離測定システム。
前記解除するための所定条件が、前記代表として設定された携帯端末において算出される距離が所定値を超えたこと、又は、前記代表として設定された携帯端末において算出される距離が所定期間に渡って所定量以上変動しないこと、であることを特徴とする請求項5に記載の距離測定システム。
複数の携帯端末と、送受信機と、を備え、当該各携帯端末及び送受信機の両者の間の距離を測定し、当該距離に基づいて所定機能を実行する距離測定システムであって、当該両者が、
当該両者の間の距離が全て第一閾値以内である時点から開始して、当該両者の間の距離を測定するための無線を継続的に送受する測距信号送受部を含み、
前記送受信機は、
前記送受した無線の送受時刻に基づいて、当該両者の間の距離を算出する距離算出部を含み、
前記開始時点から所定期間後において、前記算出された距離が前記第一閾値以内である携帯端末と、前記算出された距離が前記第一閾値より大きい第二閾値を超えた所定数以上の携帯端末と、が存在する場合に、前記第一閾値以内の距離にある携帯端末が存在する旨と、当該携帯端末を除外して前記所定機能を実行することの許可又は禁止についての確認と、を前記第二閾値を超えた携帯端末へと通知し、
当該通知された携帯端末のユーザより許可の旨の返信があった場合に、前記所定機能の実行に際して、前記第一閾値以内の距離にある携帯端末の距離を考慮しないよう設定し、当該ユーザより禁止の旨の返信があった場合に、前記所定機能を実行しないことを特徴とする距離測定システム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の距離測定システム100の構成概要を説明するための図である。距離測定システム100は、送受信機1aと、複数n台の携帯端末1b-1, 1b-2, ..., 1b-nとを備える。
図1では、一例として送受信機1aが自動車に設置されているところが概念的に描かれている。当該自動車に設置する場合、距離測定システム100をスマートエントリシステムに利用することができる。送受信機1aはまた、自動車以外にも、自転車、オフィスや自宅のドア、パーソナルコンピュータ(PC)その他に設置されてもよい。携帯端末1bには、スマートフォンや携帯電話を利用することができる。
【0022】
なお、本発明の説明においては、特に、送受信機1aと携帯端末1b-i(i=1, 2, ..., n)との間でのやりとりを説明する場合には適宜、送受信機1aを親機であるものとして親1aと略称し、携帯端末1b-iを子機であるものとして子1b-iと略称する。
【0023】
本発明においては、親1aが定位置に固定され、子1b-iはユーザが携帯して移動する状況を想定している。親子1a,1b-i間では、無線のやりとりがなされることにより、
図1に示すようにその間の各距離Ei(t)(i=1, 2, ..., n) (tは時間)が時系列上で逐次、測定される。親1aは当該各子1b-iにつき測定された各距離Ei(t)に基づいて所定の機能を実行する。
【0024】
図2は、距離測定システム100を構成している送受信機1a及び携帯端末1bの機能ブロック図である。なお、複数の携帯端末1b-i(i=1, 2, ..., n)に共通の機能を説明するため、当該複数の携帯端末のうちの任意の1つを携帯端末1bと称する。
【0025】
送受信機1aは、範囲判断部2a、付加情報取得部20a、認証部3a、鍵管理部30a、測距信号送受部4a、設定部40a、距離算出部51、代表設定部52、機能実行部61及び環境情報取得部73を備える。携帯端末1bは、範囲判断部2b、付加情報取得部20b、認証部3b、鍵管理部30b、測距信号送受部4b、設定部40b、設定受信部53、関連情報送信部54、通知受信部71及び許可情報送信部72を備える。
【0026】
なお、機能ブロックに付与した上記参照番号に関して、親子1a,1b間にて、同一名を付与し且つ対応する符号を付している機能ブロック同士(例えば、親1aの範囲判断部2aと、子1bの範囲判断部2b)は、同一の又は対応する機能を担うことを表している。
【0027】
範囲判断部2a,2bでは、親1a側(範囲判断部2a)より、子1b側(範囲判断部2b)へと定期的にビーコン信号を送信する。子1b側では、当該ビーコン信号を受信した場合には、親1a側へと応答する。付加情報取得部20a,20bは、上記範囲判断部2a,2bがビーコン信号を送受するに際しての付加情報、例えば位置情報を取得する。
【0028】
なお、以下にてさらに各機能部を説明するに際して、上記範囲判断部2a,2bの説明と同様に、「親1a側」及び「子1b側」などにより、「親1a側の機能部Xa」及び「子1b側の機能部Xb」を表すものとする。ここで、Xに該当するのは2, 20, 3, 30, 4, 40である。
【0029】
認証部3a,3bでは、上記ビーコン信号の送受信が行われた際さらに、親子1a,1b間での認証を行う。当該認証を可能とすべく、親子1a,1bではそれぞれ、鍵管理部30a,30bにより、予め自身の鍵情報を設定し管理しておく。
【0030】
測距信号送受部4a,4bでは、上記認証がなされた親子1a,1b間にて単方向又は双方向で測距信号の送受を継続的に行うと共に、当該測距信号の送受時刻を記録する。子1b側はさらに、自身における当該送受時刻を、親1a側へと通知する。当該通知は、測距信号とは別途の無線で行ってもよいし、子1b側が送信する測距信号自体を、当該送受時刻の伝達機能を担うように構成しておいてもよい。設定部40a,40bは、測距信号送受部4a,4bにて送受する測距信号の送信間隔・周波数などを設定する。
【0031】
距離算出部51は、測距信号送受部4aが取得した測距信号の送受時刻に基づいて、親1aと子1bとの間の距離を算出する。ここで、測距信号が継続して送受され、送受時刻も継続して取得されるので、当該距離も、時系列上で継続的に算出される。
【0032】
代表設定部52は、距離算出部51が各子1b-i(i=1, 2, ..., n)につき算出した距離Ei(t)に基づき、当該複数の子1b-iの中から、代表となる端末を設定して、当該設定された代表情報を、各子1b-iにおける設定受信部53へと送信する。
【0033】
設定受信部53は、親1a側からの上記代表情報を受信して、自分自身(当該子1b-i自身)が代表に設定されていれば、測距信号送受部4bにおける測距信号の送受処理を継続させ、自分自身が代表に設定されていなければ、測距信号送受部4bにおける測距信号の送受処理を停止させる。
【0034】
関連情報送信部54は、代表設定部52に対して、代表を設定する際に考慮する各子1b-i(i=1, 2, ..., n)の関連情報を送信する。当該関連情報には例えば、各子1b-iにおけるバッテリ残量割合や、加速度センサ等のセンサ情報や、スピーカ及び/又はマイクの利用可否(測距信号が音波の場合)の情報などを用いてよい。当該利用可否は、イヤホンを利用しているか否かによって判定してもよい。
【0035】
機能実行部61は、代表設定部52により代表として設定された子1b-iを対象として、距離算出部51の算出した距離に基づいて、所定機能を実行する。親1aが自動車に設置されていれば、当該距離が閾値以下となった場合に、自動車のドアのロックを解除し、閾値より大きくなった場合に、自動車のドアをロックしてもよい。さらに別の閾値を併用して同様に、エンジンロックの解除/設定を行ってもよい。
【0036】
機能実行部61では上記と同様の閾値判定により、自動車に限らず、親1aが自転車、オフィスや自宅のドア、パーソナルコンピュータ(PC)その他に設置されている場合も、対応する複数ユーザにおける鍵の解除/施錠その他用途に応じた制御を行うことができる。例えばPCの場合であれば、画面ロックの制御を行ってもよい。
【0037】
機能実行部61はまた、親1aの内部ないし近辺に存在していた子1bの一部又は全部が親1aから遠ざかっていく場合(自動車であれば、降車時)の処理として、遠ざかっていない子1b(自動車であれば、車内に残ったままである子1b)が存在する場合に、その旨を既に遠ざかっていると判断されている子1bにおける通知受信部71へと通知する。
【0038】
なお、機能実行部61にて当該遠ざかっているか否かを判断するための情報は、距離算出部51より取得し、当該判断する際には、上記説明した代表設定部52の代表情報は利用しない。代表情報は、親1aへと子1bが近づいていく場合(自動車であれば、乗車時)に利用される。
【0039】
許可情報送信部72は、機能実行部61から受信した上記遠ざかっていない子1bが存在する旨の情報に対する返信として、機能実行部61へと、所定機能を実行してよいか否かに関する許可又は禁止の情報を返信する。当該許可又は禁止は、当該子1bの端末を保持するユーザが判断して、ユーザからの入力として与えられる。
【0040】
機能実行部61では、許可の情報が返信された場合には所定機能を実行し、禁止の情報が返信された場合には所定機能を実行しない。また、機能実行部61では、当該所定機能を実行するか否かの判断に際してさらに、環境情報取得部73の取得した環境情報(自動車の場合であれば、例えば車内の音情報など)を考慮するようにしてもよい。
【0041】
こうして、自動車の降車時であれば、車内に子1bの端末が残っている場合に、既に社外に存在する子1bの端末のユーザに予め確認を取ったうえで、ドアのロックなど所定機能を実行させるようにすることができる。
【0042】
以上、
図2の各部の概要を説明したので、補足事項を説明する。上記各機能部により親子1a,1b間にて信号や情報のやりとりがなされる場合、各種の無線を利用することができる。無線の種類として、音波や超音波、また、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの電波などが利用でき、各機能部ではそれぞれ個別の種類の無線を利用してよく、この際、同一種類の無線が利用される機能部があってもよい。
【0043】
なお、範囲判断部2a,2bにおけるビーコン信号及びその応答と、測距信号送受部4a,4bにおける測距信号の送受に関しては、親子1a,1b間での当該無線信号が直接到達する種類のものである必要がある。その他のやりとりは、親子1a,1b間で無線信号が必ずしも直接に到達する必要はなく、別途のネットワークなどを介するものであってもよい。
【0044】
以下、本発明による処理手順を説明する。
【0045】
本発明の処理手順は、親子1a,1b間の距離に応じて場合分けされて実施される。第一の場合分けは、無線通信可能範囲の内外のいずれであるかによる場合分けである。第二の場合分けは、当該無線通信可能な内部においてさらに距離に応じてなされる場合分けである。以下ではまず、第一の場合分けを説明する。
【0046】
図3は、第一の場合分け、すなわち、当該無線通信可能範囲内外による処理手順の場合分けを説明するための図である。
【0047】
図3では、固定位置にある親1aを中心として無線通信可能範囲R1が示されており、子1bが当該範囲R1内に存在する場合に、親子1a,1b間では無線が直接到達することによる通信が可能である。当該無線通信可能範囲R1内では認証が行われるので、範囲R1を認証範囲R1とも呼ぶ。
【0048】
図3では、(2)が範囲R1内に子1bが存在する場合を、(1)及び(3)が範囲R1外に子1bが存在する場合を、それぞれ例として示している。当該区別のもと、各範囲では以下のような手順が実施される。
【0049】
(1.無線通信可能範囲外の場合)
無線通信可能範囲外の場合、親子1a,1b間では範囲判断部2a,2bによるビーコンの送受のみが試みられる。こうして、親1aは無線通信可能範囲内に子1bが入ってくるのを待機し、子1bは当該範囲内に入ったかを常時監視する。具体的には、親1aの範囲判断部2aは所定周期にてビーコン信号を送信し、子1bからの応答を待機する。一方、子1bの範囲判断部2bは、ビーコン信号の受信があるかを監視し続け、受信があった場合には応答を行う。
【0050】
(2.無線通信可能範囲内の場合)
図4に、上記無線通信範囲外にあった後、無線通信可能範囲内に入ってきた以降の親子1a,1b間での処理手順を示す。ここで、ステップ(S1)〜(S4)については、
図3の矢印A12のように無線通信可能範囲内に入ってきたことが検出され、認証が実施されるステップであり、以降のステップ(S5)〜(S8)が、ブロックBとして囲まれるように繰り返し実施される、無線通信可能範囲内の手順に相当する。
【0051】
(2−1.無線通信可能範囲内に入ったことの検出及び認証)
ステップ(S1)では、子1bが範囲R1内に移動してきたことにより、親1aの送信したビーコン信号が子1bで受信される。ステップ(S2)では、子1bは当該ビーコン信号に対して、親1aへと応答信号を送る。こうして、子1bはビーコン信号の受信で範囲R1内に存在することを知り、無線通信可能範囲内の処理へ切り替え可能となる。同じく、親1aも、応答信号の受信により、範囲R1内に子1bが存在することを知り、無線通信可能範囲内の処理への切り替えが可能となる。
【0052】
ステップ(S3)では、前述のように認証部3a,3bにより親子1a,1b間にて認証処理すべく、子1b側より親1a側へと鍵情報を送信し、ステップ(S4)では、当該子1bより受信した鍵情報と親1a自身が保持している鍵情報とを比較して、親1a側が子1bの認証を行う。鍵情報については前述のように鍵管理部30a,30bに予め設定しておく。なお、鍵情報の親子1a,1b間での送受信の態様に関して、例えば子1b側で認証を行う、相互に行うなど、ステップ(S3),(S4)以外の手法で認証が実施されてもよい。
【0053】
当該ステップ(S4)の認証が成功した場合は、ステップ(S5)以降の無線通信可能範囲内での処理へと進む。なお、当該ステップ(S4)の認証が失敗した場合には、ステップ(S5)以降での処理へは進まず、上記(1.無線通信可能範囲外の場合)での処理に戻る。
【0054】
(2−2.無線通信可能範囲内の処理手順)
ステップ(S5)では、設定部40a,40bが、それぞれ測距信号送受部4a,4bで送信する測距信号の設定(当該無線の周波数・送信間隔など)を行う。なお、親子1a,1b間で当該設定を共有することで、以降の手順(S6)における測距信号の送受時刻が、記録している無線受信データの中から検出可能となる。この際、ステップ(S4)での認証の情報した所定の設定により、その他の関係のない端末が親1aに対する子になりすますことを防止するようにしてもよい。
【0055】
当該設定は、測距信号の実際の送受前に親子1a,1b間で互いに予め設定しておき、繰り返し処理Bにおいて同一の設定を継続して用いてもよい。あるいは、当該設定は、当該繰り返し処理Bにおいて得られる時系列上の一連の距離(親子1a,1b間の距離)の履歴に基づいて変動させることで、適切な測距処理がなされるようにしてもよい。具体例については後述する。
【0056】
ステップ(S6)では、設定部40a,40bの設定に従い、測距信号送受部4a,4bが測距信号を送受し、送受の時刻を記録する。さらに、子1bの測距信号送受部4bは、当該記録を、親1aの測距信号送受部4aへと通知する。当該測距信号の送受の具体例は後述する。
【0057】
ステップ(S7)では、親1a側にて距離算出部51が、測距信号送受部4aで得た当該親1a側及び子1b側の双方の送受時刻に基づいて、当該時点における親子1a,1b間の距離を算出する。当該算出は、上記測距信号の具体例を後述する際に、併せて説明する。
【0058】
ステップ(S8)では、ステップ(S7)にて算出された距離に基づいて、親1a側にて機能実行部61が所定の機能を実行する。所定の機能として、例えば前述のように、当該距離に対する閾値判定により、ロック・アンロックの状態とするような制御を実行してもよい。
【0059】
なお、機能実行部61が所定機能を実行するために利用する距離は、代表設定部52により代表に設定された子1bにおける距離である。これに関しては、第二の場合分けの説明において説明する。
【0060】
以上、ステップ(S5)〜(S8)は、ブロックBとして囲まれるように、繰り返し実行される。この際、ステップ(S6)での測距信号の送受信の各回i(i=1, 2, 3, ...)の間隔T(i)に従って、当該ブロックBも間隔T(i)を置いて繰り返し実行される。すなわち、ステップ(S6)以外のステップ(S5), (S7), (S8)は、実質的に瞬時に判断ないし処理するステップとみなしてよい。
【0061】
従って、当該間隔T(i)は、測距信号送受部4a,4bによる測距信号の送受信の各回の間隔であり、距離算出部51による距離の算出間隔であり、また、当該算出された距離に基づく機能実行部61による機能実行の間隔でもある。
【0062】
(3.無線通信可能範囲内から無線通信可能範囲外へ移動した場合の判断)
無線通信可能範囲内においては、以上の
図4のブロックBの処理が繰り返されるが、当該繰り返しているうちに、子端末1bの移動により
図3の矢印A23に示すように、無線通信可能範囲外に移動する場合もある。この場合、次のようにすればよい。
【0063】
すなわち、
図4のステップ(S6)において、親1a側及び子1b側のそれぞれにおいて、相手側から送信されるはずの測距信号が受信されないことが所定回数又は所定期間以上続いた場合に、当該親子1a,1bの両者は、無線通信可能範囲外になったものと判断し、上記(1.無線通信可能範囲外の場合)の処理に移行すればよい。なお、当該判断は、親1a側及び子1b側においてそれぞれ独立に行ってよい。
【0064】
当該判断するための回数については、前記繰り返す間隔T(i)を利用して、時間軸上においてカウントすればよい。当該判断するための所定期間は、設定部40a,40bにおいて予め設定しておいてもよい。
【0065】
なお、以上の
図3及び
図4のような認証範囲の内外によって区別した処理は、親1aと、複数の子1b-i(i=1, 2, ..., n)の各々との間においてそれぞれなされる。従って、ある子1bが範囲外であり、ある子1bが範囲内にあるといった場合がありうる。
【0066】
また、認証の際の鍵は、各子1b-iにおいてそれぞれ定めておく。間隔T(i)は、子1b-i毎にそれぞれ異なる値を利用することもできるが、全ての子1b-iにおいて共通の値としておくことが好ましい。測距信号に関して、子1b-iから親1aへと送信する信号は、親1aにおいて当該信号のみからいずれの子1b-iが送信したものであるかを識別できるよう、構成周波数等を区別して設定しておく必要がある。親1aから子1b-iへと送信する信号は、全ての子1b-iにおいて共有して利用される1種類の信号でよい。
【0067】
以上、
図3及び
図4を参照して、第一の場合分けを説明した。次に、第一の場合分けにより認証範囲内とされた場合(
図3の認証範囲R1内にあり、
図4の繰り返し処理Bがなされている場合)にさらに行われる、第二の場合分けを説明する。
【0068】
図5は、第二の場合分けを概念的に説明するための図である。
図5に示すように、第一の場合分けがなされる認証範囲R1の内部において第二の場合分けではさらに、親1a子1b間での距離に応じて、代表判定範囲R2及び機能実行範囲R3を予め設定しておく。
【0069】
当該各範囲の関係は、
図5に示すように、R1⊃R2⊃R3である。スマートエントリシステムに適用する際の、当該範囲を定義する親1aからの距離の数値例を挙げると、認証範囲R1は100m程度の範囲、代表判定範囲R2は10m程度の範囲、機能実行範囲R3は1m〜1.5m程度の範囲としてよい。その他、距離測定システム100の用途に応じて所定の範囲を設定することができる。
【0070】
図5では、距離測定システム100における全ての子1b-i(i=1, 2, ..., n)のうちの全て又は一部として、認証範囲R1内にある子1b-1, 1b-2, 1b-3, 1b-mが例示されている。当該認証範囲R1内に存在する子1bについては、
図4のステップ(S7)等で説明したように、距離算出部51による距離算出が実施される。第二の場合分けによって、当該距離算出を実施する子1bを、認証範囲R1内にある子1bのうち一部分のみに限定する処理が、代表設定部52によってなされる。
【0071】
すなわち、認証範囲R1内に進入後、最初に代表判定範囲R2に進入した1台の子1bのみを、当該進入したと判断された時点で、代表設定部52が距離測定の対象すなわち代表として設定し、その旨を認証範囲R1内の全ての子1b(の設定受信部53)へと通知する。通知を受けた各子1bにおいては、自分自身が代表であれば、測距信号送受部4bにおける処理を継続し、自分自身が代表でなければ、測距信号送受部4bにおける処理を停止し、消費電力の低減を図る。
【0072】
代表として設定された子1bにおいては、測距信号送受部4b, 4a間の測距信号の送受及び距離算出部51での距離算出処理が継続され、第一の場合分けにおいても説明したように、さらに、当該距離によって機能実行範囲R3内へと進入したと判断された時点で、機能実行部61が所定機能(車であればドアロックの解除など)を実施する。
【0073】
図5の例であれば、(1)に示すように子1b-1が最初に代表判定範囲R2に進入して代表とされた場合、その他の子1b-2等は全て、測距信号送受部4bの処理を停止し、電力浪費を防止する。以降、代表である子1b-1との間においてのみ、親1aとの距離測定が継続される。そして、(2)に示すように代表である子1bがさらに機能実行範囲R3内へと進入した時点で、所定機能が実行される。
【0074】
図6は、当該第二の場合分けに関連する親1aの処理(及び関連する子1b)のフローチャートである。ステップS11では、距離算出部51が認証範囲R1内にある全ての子1bを対象として逐次的に算出している距離を参照して、代表設定部52が、子1bのうち代表判定範囲R2内に進入したものが存在するかを判定する。存在していると判定された場合、ステップS12へと進む。存在していないと判定された場合、所定タイミング後に再度、当該ステップS11を繰り返す。当該所定タイミングは
図4で説明した距離算出の間隔T(i)と同一でよい。
【0075】
ステップS12では、代表設定部52が、自身がステップS11にて代表判定範囲R2内に進入したと判定した子1b(1b-Rとする)が代表である旨の通知を、認証範囲R1内の全ての子1bにおける設定受信部53へと送信する。ステップS12ではさらに、当該通知を受けた各子1bにおいて、代表とされた子1b-Rのみが測距信号送受部4bでの処理を継続させ、当該代表とされた子1b-R以外の子1bは、測距信号送受部4bでの処理を停止する。こうして、親1aと代表の子1b-Rとのみの間で測距処理を継続させるようにした後、ステップS13へと進む。
【0076】
なお、ステップS12の通知後は、新たに認証範囲R1内へ進入して認証が成功した子1bがあった場合にも、当該新たな子1bにおいて測距処理は開始しない。このため、認証の際、当該開始しない旨の指示を子1bに通知すればよい。
【0077】
ステップS13では、当該代表とされている子1b-Rを、代表として継続して設定してよいか否かを判定する。継続設定してよければステップS14へと進み、逆に、継続設定させない場合にはステップS11へと戻る。
【0078】
なお、ステップS13からステップS11へ戻る判断が下された場合には、ステップS13では追加処理として、代表設定部52から認証範囲R1内の全ての子1bの設定受信部53に、代表設定解除の旨の通知を行い、代表とされなかった全ての子1bにおいて、停止させていた測距信号送受部4bの処理を再開させる。代表とされた子1b-Rにおいては、代表の地位は失うが、測距信号送受部4bの処理は継続させる。
【0079】
当該ステップS13における継続設定してよいかの判定には種々の実施形態がある。第一実施形態では、代表とされた子1b-Rが、代表判定範囲R2の外に出てしまった場合、継続設定させないと判定する。当該判定は、距離が範囲R2に対応する所定値を超えたことによって判定すればよい。
【0080】
第二実施形態では、代表とされた子1b-Rの距離が、一定期間に渡って所定量以上変動しなかった場合に、当該子1b-Rのユーザは親1aへ向けての移動を停止しているものと判断して、継続設定させないと判定する。第二実施形態では、代表とされた子1b-Rの端末が停止しており、その他の子1bが親1aへ近い方へと、代表とされた子1b-Rを追い抜いて進んでしまっているような場合にも、対応することが可能となる。
【0081】
第二実施形態の判定が下された場合、ステップS11に戻って代表判定範囲R2内に存在する子1bであって、当該継続設定させないと判定された子1b-R以外のものを、新たな代表1b-R2として設定する。当該条件を満たす子1b-R2が複数存在した場合、距離が最も小さいものを代表とする。当該条件を満たす子1b-R2が存在しない場合、ステップS11では当該継続設定させないと判定された子1b-Rを再度、代表として設定する。
【0082】
なお、以上のステップS13はオプションのステップである。ステップS13が省略されることでステップS12の後ただちにステップS14へと進むように、
図6のフローが構成されていてもよい。
【0083】
ステップS14では、代表とされた子1b-Rが、機能実行範囲R3内に進入したか否かを、距離算出部51で得られる当該子1b-Rの距離を参照することによって機能実行部61が判定する。進入していると判定されればステップS15へと進み、機能実行部61は所定機能を実行する。進入していないと判定されれば所定タイミングの後、ステップS13へと戻る。当該所定タイミングは
図4で説明した距離算出の間隔T(i)と同一でよい。
【0084】
以上、一実施形態として
図6のフローを説明した。以下、当該
図6のフローの別の実施形態を説明する。
【0085】
ステップS11の別の実施形態として、代表判定範囲R2内に進入した子1bが所定の複数に到達した時点で、ステップS12へ進むようにしてもよい。ステップS12以降では、当該複数の代表のそれぞれにおいて、上記説明したのと同様の処理がなされる。ステップS13で継続して代表に設定しないと判定された場合、当該判定がなされた1台の子に代わる1台の代表をステップS11(及びS12)において新たに設定すればよい。
【0086】
この場合、代表設定部52は、代表判定範囲R2に進入する子1bを監視し続け、当該進入数が所定数に達した時点で、当該進入時刻の早い上位所定数の子1bを代表として設定し、それ以外の子1bを代表ではないとして、設定受信部53へと通知した後、上記1台のみの場合と同様にしてもよい。この際、いずれかの1台の子1bが機能実行範囲R3内へと進入した時点で、機能実行部61は所定機能を実行すればよい。
【0087】
ステップS11のさらに別の実施形態として、代表判定範囲R2内に進入した子1bが所定の複数に到達した時点で、当該複数の中からさらに所定の条件を満たす1台の子1bを、代表として設定してもよい。所定条件による代表設定としては、以下(1)、(2)又は(3)を利用してよい。
【0088】
(1)当該複数のうち、関連情報送信部54より取得したバッテリ残量割合(あるいは、残りのバッテリ稼働時間)が最大のものを代表として設定してもよい。
【0089】
(2)当該複数のうち、関連情報送信部54より取得した地図情報上での所定期間に渡る移動履歴を参照して、親1aに最も早く到達すると想定されるものを代表として設定してよい。到達予想時刻としては、子1bの移動履歴より平均速度(方向及び大きさで定義される速度)を求め、ステップS11の判断が下された時点から先の移動を当該平均速度で予測し、親1aに最も近接した時刻を採用することができる。その他の周知のフィッティング手法で予測してもよい。
【0090】
なお、上記(2)において移動履歴を取得するために、子1bの各々においてはGPS(全地球測位システム)及び/または慣性航法装置(加速度センサ及び方位センサなど)その他の周知の設備を備えると共に、マップ情報を取得しておく必要がある。
【0091】
(3)当該所定の複数に到達した時点における距離が最小のものを代表として設定してもよい。
【0092】
また、当該
図6のフローにおけるステップS11についての補足として、次がある。すなわち、一部分の子1bを予め、代表として判定する対象から除外しておいてもよい。当該除外は、アプリケーション等を介してユーザ側から手動で設定してもよい。また、子1b側において(音波で測距処理を実施するとした場合に)測距処理に利用するスピーカ及び/又はマイクが利用できない旨の情報を、関連情報送信部54より親1a側へと送信して、当該利用できない子1bを自動で除外するようにしてもよい。この場合、逆に、当該スピーカ及び/又はマイクを利用できない子1bのユーザに対して、親1a側よりスピーカ及び/又はマイクを解放して利用可能な状態に設定すべき旨を通知して、子1bのユーザ操作によって当該解放がなされた旨を親1a側において確認した後に、測距処理を実行するようにしてもよい。
【0093】
なおまた、上記除外する場合は、
図3及び
図4で説明した認証範囲R1内に入った際の測距処理の開始対象からも除外するようにしてよい。
【0094】
以上、第一及び第二の場合分けとして、
図3〜
図6を参照して、本発明の処理手順を説明した。当該説明は、スマートエントリシステムにおける乗車時を想定していた。次に、スマートエントリシステムにおける降車時を想定した処理を説明する。降車時の場合も、
図1の構成において、距離算出部51の処理が行われることは乗車時と共通である。また、距離算出の前処理としての認証等は乗車時に済んでいるので、不要である。
【0095】
一実施形態では、降車開始時に全ての子1bとの間で測距処理を開始し、代表判定範囲R2よりも外に出たと判定された子1bについては、測距信号送受部4bを停止させることで消費電力の低減を図ってよい。そして、全ての子1bが機能実行範囲R3の外に出た時点で、機能実行部61において所定機能(例えば、ドアのロック)を実行させてよい。
【0096】
しかしながら、上記一実施形態では、ユーザが携帯せず移動して、親1aの存在する箇所(車の内部)に放置された子1bの端末が存在する場合に、ドアが開放されたままで車が放置され、適切な対応できない。
図7にこのような不都合の生ずる場合を模式的に示す。
【0097】
図7では、1つの子1b-1が車内R4に残り、その他の端末1b-2, 1b-3, 1b-mが、矢印(2), (3), (m)に示すように当該範囲R4から出て、認証範囲R5の内部に留まっている。このような場合に、当該車内に残った端末1b-1のユーザも、端末1b-1を放置しただけで、実際には範囲R4から出てその他のユーザと共に外出していることがありうる。こうして、放置された端末1b-1の存在により、車がロックされないまま放置されてしまう。なお、範囲R4は、車内を想定しているが、
図5の機能実行範囲R3と同一であってもよい。
【0098】
従来技術においては、このような場合にはアラーム通知がなされるが、やはり専用ハードなどが必要となる。以下、本発明における測距処理の枠組みでこのような状況に対応する手法を説明する。
【0099】
図8は、降車時の親1aのフローチャートである。なお、スマートエントリシステムにおける降車時を例に説明するが、同様の処理が適用可能なその他の状況にも適用可能である。
【0100】
ステップS21では、降車開始のトリガを受け、全ての子1bと親1aとの間で、測距信号送受部4a, 4b及び距離算出部51による距離算出が開始される。当該距離算出は、乗車時と同様である。降車開始のトリガは、エンジン停止且つドアの開放である。
【0101】
ステップS22では、所定期間に渡る距離算出の履歴を各子1bにおいて取得した後に、機能実行部22が、車内に残存している子1bの端末が存在するかを判定する。具体的には、車内R4すなわち機能実行範囲R3内にとどまる子1bが存在し、且つ、所定数以上の子1bが当該機能実行範囲R3より外部へと移動している場合に、車内に残存する子1bの端末が存在すると判定する。当該判定するための外部は、範囲R3の直近の外部を除外すべく、機能実行範囲R3より広い範囲の外部、例えば代表判定範囲R2よりも外部として定めてもよい。
【0102】
残存すると判定された場合は、ステップS23へ進む。残存しないと判定された場合、すなわち、全ての子1bが機能実行範囲R3より外部へと移動している場合、ステップS26へと進んで所定機能を実行を待機する状態(乗車時と同様)へと移行する。
【0103】
ステップS23では、機能実行範囲R3より外部へと移動している子1bへと、残存している子1bの端末が存在する旨と、当該残存端末を除外して所定機能を実行することの許可又は禁止についての確認と、を通知して、ステップS24へと進む。
【0104】
ステップS24では、ステップS23の通知を受け取った子1bの端末のユーザからの返信を確認して、許可であったか又は禁止であったかを判定する。許可であった場合、ステップS25へと進み、禁止であった場合、ステップS27へと進む。
【0105】
ステップS25では、残存端末から算出される距離を除外した形で、所定機能の実行を待機する状態(乗車時と同様)へと移行する。ステップS27では、所定機能の実行を、残存端末の今後の移動を確認してからでないと、実行させない状態へと移行する。
【0106】
以上、
図8のフローの補足として、ステップS24の追加条件として、環境情報取得部73が車内の音声を取得して解析し、人が車内に存在するか否かを判定し、ステップS25へ移行する場合にはさらに、当該人が車内に存在していないことを条件として課してもよい。
【0107】
次に、距離算出部51による距離算出の各例(第一手法及び第二手法)を、対応する測距信号送受部4a,4bの送受処理と共に説明する。
図9は、第一手法を説明するための図であり、
図10は、第二手法を説明するための図である。なお、
図9,
図10はそれぞれ、
図4にてブロックBとして繰り返される部分のうち、ステップ(S6)及び(S7)に関連する部分を抜粋したものに相当し、共にパルス状の測距信号を送受している。
【0108】
第一手法は、
図9にステップ(T0)として示すように、親子1a,1b間での時刻同期が、設定部40a,40bによって、予め実施されていることを前提とする。こうして、両者における時計を合わせたうえで、ステップ(T1)に示すように、子1b側より親1a側へとパルス状の測距信号を送信する。この際、[B1]として示すように、子1b側では、送信時刻tb1を取得する。一方、[A1]として示すように、親1a側では、受信時刻ta1を取得する。さらに、ステップ(T1-1)として示すように、子1b側は、取得した送信時刻tb1を、親1a側へと通知する。
【0109】
こうして、親1a側では、ステップ(T1-2)として示すように、自身が取得した受信時刻ta1と、子1b側での送信時刻tb1との差に、予め既知の測距信号の速度を乗ずることにより、親子1a,1b間の距離を算出する。以上がブロックT10として示すような1回分の処理であり、2回目以降も、ブロックT20として示すように、同様の処理を継続する。
【0110】
なお、当該第一手法において時刻同期は、GPS(全地球測位システム;Global Positioning System)信号などを利用することで可能である。時刻同期の要求精度は、距離算出の要求精度と測距信号の無線の種類に依存する。例えば、距離算出の要求精度が50cmの場合、電波の時刻同期の要求精度は1.67ns、音波/超音波の時刻同期の要求精度は0.15ms程度となる。
【0111】
なお、第一手法では、親1aを測距信号の送信側、子1bを受信側としてもよい。
【0112】
一方、
図10に示す第二手法は、第一手法と異なり、時刻同期を必要としない手法である。第二手法では、インターネットで広く使われているNTP(Network Time Protocol)と同様の方法を利用する。
【0113】
具体的には、親子1a,1bがそれぞれ測距信号を送信し、お互いが自身の送信信号の送信時刻と、相手の送信信号の受信時刻を測定する。子1bの送信時刻、受信時刻をTm_s、Tm_rとする。親1aの送信時刻、受信時刻をTc_s、Tc_rとする。また、親子1a,1b間での時計の誤差をΔtとする。NTPと同様に、伝搬時間P_Tは次式で計算される。従って、時刻のずれΔtの影響を受けず、伝搬時間を計算できる。
P_T =((Tm_r - (Tc_s + Δt)) + ((Tc_r + Δt) - Tm_s) ) / 2
= ((Tm_r-Tm_s) + (Tc_r-Tc_s) )/2
【0114】
なお、
図10は上記式の各時刻を概念的に説明するものであり、(1)では時間軸上の観点から、(2)では送受デバイス上の観点から、各時刻を示している。(2)では、親1a,子1bの測距信号の送信部(音波であれば、スピーカ)がそれぞれ1aS,1bSであり、親1a,子1bの測距信号の受信部(音波であれば、マイク)がそれぞれ1aM,1bMである。例えば、Tm_sは1bSの送信を1bMが受信した時刻であり、Tm_rは、1aSの送信を1bMが受信した時刻である。
【0115】
なお、上記第二手法では、親1a側からの測距信号の送信を受信した子1bが、当該受信をトリガとしてただちに親1a側へ向けて測距信号を送信するようにしておけば、前述の間隔T(i)は親1a側のみで管理しておき、子1b側へ通知する必要はなくなる。ただし、この場合、どのような測距信号が送信されてくるか(構成周波数など)につき、予め設定したうえで、子1b側の設定部40bに設定しておく必要がある。
【0116】
以下、本発明における補足事項(1)〜(6)を説明する。
【0117】
(補足1)前述のように、各機能部により親子1a,1b間にて信号や情報のやりとりがなされる場合、各種の無線を利用することができるが、一例では、測距信号に音波を、それ以外には電波を利用してもよい。
【0118】
こうして、例えば、通信速度が高速なWi-Fi(登録商標)を制御信号(親子1a,1b間での測距信号以外の信号)の送受信に使用することで鍵情報その他の高速な送受信を、伝搬速度が遅い音波を測距信号の送受信に使用することで高精度な距離測定をそれぞれ図ることができる。
【0119】
(補足2)消費電力などを無駄にしない観点から、次のようにしてもよい。すなわち、前述の(1.無線通信可能範囲外)の場合は、親子1a,1b間において、範囲判断部2a,2bのみを稼働させ、認証部3a,3bや、測距信号送受部4a,4b、また、親1a側における距離算出部51及び機能実行部61は、稼働させない。逆に、前述の(2.無線通信可能範囲内)では、ビーコン信号が到達し応答が得られた時点で、範囲判断部2a,2bの稼働を停止させる。
【0120】
(補足3)範囲判断部2a,2bにより、前述の(1.無線通信可能範囲外)によるビーコン信号の到達の試みがなされている際に、当該ビーコン信号の送信間隔は、一定間隔とする他に、次のように制御してもよい。
【0121】
このため、付加情報取得部20a,20bによりそれぞれ、親1a,子1bが自身の位置を取得して利用する。位置取得には、GPSや、携帯電話網やWi-Fi(登録商標)の接続先情報などを利用できる。子1b側は、当該位置情報を親1a側へと通知する。当該通知の際は、直接の無線の到達範囲外であるので、別途のネットワークなどを介して通知を行う。
【0122】
親1a側では、当該取得した自身の位置と、子1bの位置と、によって、親子1a,1b間の距離Xを求める。当該距離Xが、
図3で説明したような無線通信可能範囲R1よりもさらに大きい所定値R2を超えている場合、範囲判断部2a,2bにてビーコン信号を到達させる試みを中断させる。子1b側へは、当該中断の旨は、同じくインターネットなどを介して通知すればよい。
【0123】
親1a側では、上記親子1a,1b間の距離Xをそれぞれの位置情報に基づいて定期的に取得し、上記所定値R2以下となった時点で、ビーコン信号を到達させる試みを再開するようにしてもよい。
【0124】
あるいは、上記距離Xを求め、当該距離Xが長いほど長く設定する所定周期によって、親1a側よりビーコン信号の送信を行うようにしてもよい。子1b側には、当該距離Xより設定された所定周期を通知することで、次にビーコン信号が到達する可能性のある小期間を把握させ、当該小期間の間のみビーコン信号の受信処理を起動させるようにしてもよい。
【0125】
上記所定周期Pは、以下のように求めてもよい。ここで、V_max2はユーザ(子1bを保持しいているユーザ)の移動速度の最大値である。
P=X/V_max2
【0126】
なお、上記所定周期Pの経過前に、再度位置情報を取得して距離Xが更新された際は、その時点で同じく、所定周期Pを更新してよい。
【0127】
(補足4)本発明においては、
図2に示したように、距離算出部51及び機能実行部61が、送受信機(親)1a側に存在するものとして説明したが、当該両者又は当該両者のうち少なくとも一方は、携帯端末(子)1b側に、距離算出部5b及び/又は機能実行部6bとして、存在していてもよい。
【0128】
例えば一例では、携帯端末1bが「距離算出部5b」を含み、送受信機1aは「距離算出部51」を含まず、距離算出機能を携帯端末1b側で担うようにして、算出した距離を逐次、送受信機1a側に伝えるようにすることで、所定機能を送受信機1aの機能実行部61で実行させるようにしてもよい。同様に、必要な情報を適宜、送受信機1aと携帯端末1bとの間でやりとりし、所定機能の実行が「機能実行部6b」を含む携帯端末1bにて行われてもよい。
【0129】
(補足5)上記(補足4)と同様に、範囲判断部2a,2bにおけるビーコン信号の送受信の役割を交替してもよい。すなわち、携帯端末1bの側でビーコン信号を定期的に送信し、送受信機1aの側では当該ビーコン信号の受信を試みるようにしてもよい。
【0130】
(補足6)前述の繰り返し間隔T(i)の設定の例を説明する。当該設定のうち、以下の固定値の設定以外は、代表として設定された子1bにおいて利用することが好ましい。当該設定は、親1a側の設定部40aが行い、子1b側の設定部40bに当該設定を共有するようにすればよい。代表の設定がなされる前の時点では、以下の固定値の設定を利用することが好ましい。
【0131】
一例では、T(i)は回数iによらず固定値としてもよい。当該設定は、代表の設定前においてなされることが好ましい。
【0132】
一例では、スマートエントリシステム等を想定して、所定閾値の距離Ethと算出距離Eとの大小比較に基づいて、ドアのロック/アンロック制御を機能実行部61が実行する場合等に好適となるよう、次のようにしてもよい。当該設定は、代表設定後になされることが好ましい。代表が複数存在すれば、以下の距離E(i)はそれらのうち最小値を利用すればよい。
【0133】
すなわち、当該i回目に取得された親子1a,1b間の距離をE(i)に応じて、T(i)を動的に変更して設定してもよい。例えば、上記閾値距離Ethと取得された距離E(i)との差が小さい場合には、間隔T(i)を小さくすることで、閾値距離Ethを横切るタイミングを当該間隔T(i)内において検出し、ドアロックの解除・施錠の遅延を低減することができる。反対に、閾値距離Ethと算出距離E(i)の差が大きい場合は、間隔T(i)を大きくすることで、頻繁な距離算出による消費電力を低減することができる。
【0134】
上記考察に基づく間隔T(i)の算出例を次式に示す。
I = MAX(Tmin, |Eth-E(i)|/Vmax)
ここで、MAX(X,Y)はXとYの大きい方を返す関数である。
Tminは間隔の最小値の設定値である。これにより、必要以上に間隔が小さくなることによる消費電力の浪費を防止する。
Vmaxはユーザ(子1b)が自動車(親1a)へ近づく、あるいは自動車から遠ざかる場合に想定される最大移動速度の設定値である。
【0135】
なお、上記式にて、間隔T(i)におけるiは、当該距離E(i)を取得してから、次に距離E(i+1)を取得するまでの間隔を表しているものとする。
【0136】
その他にも、上記のように機能実行部61で利用する閾値距離Ethとの差を考慮した上で算出距離E(i)に基づいて間隔T(i)を定める以外にも、当該閾値Eth=0とみなして、算出距離E(i)のみに基づいて間隔T(i)を定めるようにしてもよい。例えば、距離E(i)に概ね比例するように間隔T(i)を定めて、親子1a,1b間の距離E(i)が小さい場合は頻繁に距離算出を行い、当該距離E(i)が大きい場合は距離算出をまばらに行うようにしてもよいし、その逆としてもよい。機能実行部61の実装態様に応じた種々の方式が可能である。