(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081981
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】教示プログラムの自動表示手段を備える数値制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/42 20060101AFI20170206BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20170206BHJP
G05B 19/409 20060101ALI20170206BHJP
B25J 9/22 20060101ALI20170206BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
G05B19/42 K
G05B19/18 C
G05B19/409 C
G05B19/42 P
B25J9/22 A
B23Q17/00 E
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-257534(P2014-257534)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-118888(P2016-118888A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛太
【審査官】
木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−134738(JP,A)
【文献】
特開平02−064715(JP,A)
【文献】
特開2003−308115(JP,A)
【文献】
特開2006−004275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 − 19/416
G05B 19/42 − 19/46
B25J 1/00 − 21/02
B23Q 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
教示ポイントへ軸を手動送りで移動させ、複数の位置を教示ポイントとして設定する教示操作を行うことが可能な数値制御装置において、
手動送りで移動している軸が存在するかどうかの監視を行う手動移動軸監視手段と、
前記軸を制御している教示プログラムを選定する教示対象プログラム選定手段と、
前記軸の移動方向から教示ポイントを選定し、前記教示ポイントを終点とする前記教示プログラム内のブロックを教示ブロックとして選定する教示ブロック選定手段と、
を有することを特徴とする数値制御装置。
【請求項2】
前記手動移動軸監視手段により移動している軸が検出された場合、前記軸が属している系統を特定して切換える教示対象系統切換手段を更に備え、
前記教示対象プログラム選定手段は、前記教示対象系統切換手段が切換えた前記系統内で前記軸を制御している教示プログラムを選定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
【請求項3】
前記教示対象系統切換手段で切換えることが可能な系統は、前記軸が作用する軸の属する系統とすることを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。
【請求項4】
教示設定用の表示器を更に備え、
前記表示器に、前記教示プログラムを表示すると共に前記教示ブロックにカーソルを移動させて表示する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の数値制御装置。
【請求項5】
前記手動移動軸監視手段は、前記軸を駆動するサーボアンプの励磁が落ちている状態において外力により前記軸が動かされた場合であっても手動送り動作と同様に監視する、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の数値制御装置。
【請求項6】
前記手動移動軸監視手段は、実際には機械が移動しないマシンロック状態において移動指令を行った場合でも監視動作を行う、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の数値制御装置。
【請求項7】
前記手動移動軸監視手段は、信号または選択画面により選択された前記軸を教示対称軸として選定する、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の数値制御装置。
【請求項8】
前記教示対象プログラム選定手段は、抽出したプログラムが複数ある場合には、最も使用頻度の高いプログラムを選定する、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の数値制御装置。
【請求項9】
前記教示対象プログラム選定手段は、抽出したプログラムが複数ある場合には、最後に使用したプログラムを選定する、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の数値制御装置。
【請求項10】
前記教示対象プログラム選定手段は、抽出したプログラムが複数ある場合には、最も使用頻度の高いプログラム、あるいは最後に使用したプログラムを選定確率の高い教示プログラムとして選定画面に表示する、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の数値制御装置。
【請求項11】
前記教示対象プログラム選定手段は、プログラムが存在しない状態の場合には、新規にプログラムを作成する、
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の数値制御装置。
【請求項12】
前記教示ブロック選定手段は、抽出したブロックが複数ある場合には、最も教示ポイント変更が多いブロックを選定する、
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の数値制御装置。
【請求項13】
前記教示ブロック選定手段は、抽出したブロックが複数ある場合には、最も最近教示を行った教示ポイントを選定する、
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の数値制御装置。
【請求項14】
前記教示ブロック選定手段は、抽出したブロックが複数ある場合には、最も教示ポイント変更が多いブロック、あるいは最も最近教示を行った教示ポイントを選定確率の高い教示ポイントとして選定画面に表示する、
ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の数値制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置に関し、特に教示操作において多数の教示対象があるときに教示対象を選択する作業時間を減らすことを可能とする数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ジョグ送りなどの手動送りにより教示位置まで軸を移動させ、教示プログラムを作成・変更する教示操作を行う場合、教示用プログラムの選択、プログラム内で教示を行うブロックへのカーソルの移動など、教示操作の前準備を行う必要があり、これらの操作を誤ると、教示プログラムの実行時、予想外の動作となり、機械同士の衝突や機械とワークとの衝突につながる可能性がある。特に、複数の独立した機構の制御を1台で行う多系統制御機能を持つ数値制御装置においては、上記に加えて教示を行う機構に対応する系統の選択も必要となり、前準備における操作の誤りの問題がより一層深刻となる。
【0003】
また、教示操作を多数行う必要がある場合、前準備に費やされる操作により、効率的に教示作業を行えない場合がある。これらの問題を解決する手段の一つとして、例えば、特許文献1には、複数の機構部それぞれに識別情報を割り当て、オペレータが教示表示盤にて操作予定の機構部を選択する技術が開示されている。また、特許文献2には、制御対象器に固有のキーを挿入したときにのみ教示装置からの教示に従って動作させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4586092号公報
【特許文献2】特許第5166170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に開示される技術は、教示対象を特定する技術であり、実際に教示操作を行うためには、「教示プログラムの選択」、「プログラム内での教示を行うブロックへのカーソルの移動」を行う必要があり、この操作に時間が費やされる課題は解決できない。
【0006】
また、教示対象がさらに複数の制御機構や系統に分かれている場合、教示対象内で制御機構や系統を選択する必要があり、この操作に時間が費やされる課題を解決できない。更に、教示対象の特定のために、識別情報やカメラ、キーなど付加機器が必要となる。
【0007】
そこで本発明の目的は、教示操作において多数の教示対象があるときに教示対象を選択する作業時間を減らすことを可能とする数値制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明は、教示ポイントへ軸を手動送りで移動させ、複数の位置を教示ポイントとして設定する教示操作を行うことが可能な数値制御装置において、手動送りで移動している軸が存在するかどうかの監視を行う手動移動軸監視手段と、前記軸を制御している教示プログラムを選定する教示対象プログラム選定手段と、前記軸の移動方向から教示ポイントを選定し、前記教示ポイントを終点とする前記教示プログラム内のブロックを教示ブロックとして選定する教示ブロック選定手段と、を有することを特徴とする数値制御装置である。
【0009】
本願の請求項2に係る発明は、前記手動移動軸監視手段により移動している軸が検出された場合、前記軸が属している系統を特定して切換える教示対象系統切換手段を更に備え、前記教示対象プログラム選定手段は、前記教示対象系統切換手段が切換えた前記系統内で前記軸を制御している教示プログラムを選定する、ことを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置である。
本願の請求項3に係る発明は、前記教示対象系統切換手段で切換えることが可能な系統は、前記軸が作用する軸の属する系統とすることを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置である。
【0010】
本願の請求項4に係る発明は、教示設定用の表示器を更に備え、前記表示器に、前記教示プログラムを表示すると共に前記教示ブロックにカーソルを移動させて表示する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の数値制御装置である。
【0011】
本願の請求項5に係る発明は、前記手動移動軸監視手段は、前記軸を駆動するサーボアンプの励磁が落ちている状態において外力により前記軸が動かされた場合であっても手動送り動作と同様に監視する、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の数値制御装置である。
本願の請求項6に係る発明は、前記手動移動軸監視手段は、実際には機械が移動しないマシンロック状態において移動指令を行った場合でも監視動作を行う、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の数値制御装置である。
本願の請求項7に係る発明は、前記手動移動軸監視手段は、信号または選択画面により選択された前記軸を教示対称軸として選定する、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の数値制御装置である。
【0012】
本願の請求項8に係る発明は、前記教示対象プログラム選定手段は、抽出したプログラムが複数ある場合には、最も使用頻度の高いプログラムを選定する、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の数値制御装置である。
本願の請求項9に係る発明は、前記教示対象プログラム選定手段は、抽出したプログラムが複数ある場合には、最後に使用したプログラムを選定する、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の数値制御装置である。
本願の請求項10に係る発明は、前記教示対象プログラム選定手段は、抽出したプログラムが複数ある場合には、最も使用頻度の高いプログラム、あるいは最後に使用したプログラムを選定確率の高い教示プログラムとして選定画面に表示する、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の数値制御装置である。
本願の請求項11に係る発明は、前記教示対象プログラム選定手段は、プログラムが存在しない状態の場合には、新規にプログラムを作成する、ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の数値制御装置である。
【0013】
本願の請求項12に係る発明は、前記教示ブロック選定手段は、抽出したブロックが複数ある場合には、最も教示ポイント変更が多いブロックを選定する、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の数値制御装置である。
本願の請求項13に係る発明は、前記教示ブロック選定手段は、抽出したブロックが複数ある場合には、最も最近教示を行った教示ポイントを選定する、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の数値制御装置である。
本願の請求項14に係る発明は、前記教示ブロック選定手段は、抽出したブロックが複数ある場合には、最も教示ポイント変更が多いブロック、あるいは最も最近教示を行った教示ポイントを選定確率の高い教示ポイントとして選定画面に表示する、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の数値制御装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、教示を行いたい軸を手動送りで教示ポイント方向に移動させると、プログラム選定、教示プログラム内での教示ポイントへのカーソル移動が自動的に実行される。また、多数の教示対象をもつ多系統制御で教示操作を行う場合は、系統切換えも自動的に実行されるため、教示を行う系統の選択、教示プログラムの選択、教示ポイントへのカーソル移動にかかる作業の時間を減らせ、誤ったプログラム操作による機械衝突、ワーク破損などの誤動作の可能性も減らすことができる。また、教示プログラムの作成にかかる時間を削減することにより、教示操作にかかる時間も削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態における教示操作の例を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態における手動移動データテーブルの例である。
【
図3】本発明の実施の形態における軸系統対応テーブルの例である。
【
図4】本発明の実施の形態におけるプログラム管理テーブルの例である。
【
図5】本発明の実施の形態における教示ポイント候補の例である。
【
図6】本発明の実施の形態における手動移動軸監視処理のフローチャートである。
【
図7】本発明の実施の形態における教示対象系統切換処理のフローチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態における教示対象プログラム選定処理のフローチャートである。
【
図9】本発明の実施の形態における教示対象プログラム選定画面の例である。
【
図10】本発明の実施の形態における教示ブロック選定処理のフローチャートである。
【
図11】本発明の実施の形態における教示ブロック選定画面の例である。
【
図12】本発明の実施の形態における教示ポイント選定処理を説明する図(その1)である。
【
図13】本発明の実施の形態における教示ポイント選定処理を説明する図(その2)である。
【
図14】本発明の実施の形態における教示ポイント選定処理を説明する図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。はじめに本発明の概要を説明する。
本発明では従来技術の課題を解決するために、手動送り、あるいは外力により移動している軸(サーボモータ)が存在するかどうかを監視し、存在する場合には、該軸が属している教示プログラムを抽出する。また、多系統制御機能を利用している場合には、該軸が属している系統に切換え、切換えた系統内で該軸が属している教示プログラムを抽出する。
更に、該軸の移動方向から教示ポイントを選定し、教示ポイントを終点とするブロックにカーソルを移動させる、または複数の教示ポイント候補の選定画面を表示しオペレータに選定させる。
【0017】
図1を用いて、本発明の数値制御装置における、手動送り、または外力による軸移動があった場合の自動選定処理を説明する。なお、以下では多系統制御機能を利用している場合の例に基づいて説明する。
図1は、系統1と系統2の多系統制御機能を利用している際に、系統1において手動送りによる教示操作を行った例を示している。本発明の数値制御装置は、教示操作モード中に系統1において手動送りによる教示操作を行うと、最初に教示操作により移動させられた移動軸を手動移動軸監視手段により特定する。次に、特定した移動軸に基づいて、教示対象系統切換手段が、当該移動軸が属する系統(
図1では系統1)を選択して教示対象系統とする。
【0018】
次に、教示対象プログラム選定手段が、教示対象系統を制御しているプログラムを自動的に教示プログラムとして選択する、あるいは、オペレータに対して教示プログラムの候補となるプログラムを教示プログラム選定画面を表示し選定操作を実行する。そして、教示操作による移動軸の手動移動経路に基づいて、教示ブロック選定手段が、教示ポイントに対応する指令ブロックにカーソルを自動的に移動させるか、あるいは教示ポイント候補(図では<1>〜<4>)の選定画面をオペレータに対して表示し、オペレータによる選定操作後に対応する指令ブロックにカーソルを移動させる。
【0019】
以下では、上記各機能手段の動作について、
図1の教示操作を例として説明する。
手動移動軸監視手段は、教示操作を行うモード中に、手動送り、あるいは外力により移動しているサーボモータがあるかどうかについて、全軸のサーボモータの位置の監視を行う。前回の位置に対して変化した軸がある場合には、軸番号(軸名称)と移動方向をメモリ(図示せず)上に設けた手動移動データテーブルに記録する。
図2は、
図1に示した教示操作を行った際に、手動移動データテーブルに記録される移動軸の情報の一例である。
【0020】
手動移動軸監視手段は、オペレータが操作盤などを操作して手動送りした軸や、軸を駆動するサーボアンプの励磁が落ちている状態において外力により前記軸が動かされた場合に、当該軸の移動を教示操作として監視するようにしてもよいし、実際には機械が移動しないマシンロック状態において移動指令を行った場合を教示操作としてでも監視するようにしてもよい。また、全ての移動軸を監視するようにしてもよいし、信号または選択画面により選択された特定の軸を教示対称軸として監視するようにしてもよい。
【0021】
教示対象系統切換手段は、手動移動データテーブルに記録された移動軸が属する系統を、予めメモリ(図示せず)に設定してある軸系統対応テーブルを参照して特定して教示対象系統とし、該教示対象系統への切換えを行う。
図3は、本実施例における軸系統対応テーブルの一例である。本実施例においては、移動軸がX軸乃至Y軸であるから、
図3の軸系統対応テーブルを参照することで、教示対象系統が系統1であることが特定できる。
【0022】
教示対象プログラム選定手段は、メモリに記憶されたプログラム管理テーブルを参照し、移動軸が属するプログラムを選定し、頭だしを行う。
図4は、本実施例におけるプログラム管理テーブルの一例である。プログラム管理テーブルは、系統ごとに、プログラム、該プログラムに属する軸、該プログラムの各ブロック実行時における各軸の終点座標、該プログラムの使用頻度、該プログラムが最後に実行されたプログラムであるかを示す最終使用フラグの項目を備えており、教示プログラムとして選定には使用頻度、最終仕様フラグがプログラム選定の判断に用いられる。本実施例においては、系統1のプログラムであって、X軸、Y軸が属するプログラムの内、すでに実行されている一番上のプログラムが教示プログラムとして選定される。
【0023】
教示ブロック選定手段は、プログラム管理テーブルを参照し、教示対象プログラム選定手段が選定した教示プログラムの教示ポイント候補の情報から、移動軸がどの教示ポイント候補に近づいているか判断を行う。本実施例では、プログラム管理テーブルから
図5(a)に示すようにポイント<1>〜<4>の教示ポイント候補が抽出される。そして、
図1に示すステップ1の教示操作によりポイント<3>,<4>に移動軸が接近し、ステップ2の教示操作によりポイント<2>,<3>に、ステップ3の教示操作により再びポイント<3>,<4>に移動軸が接近していることが把握される。このように、教示操作においてポイント<3>に移動軸を接近させている回数が多いことから、ポイント<3>を教示ポイントとして選定し、終点がポイント<3>(110,100)となるプログラムO1のN3ブロックへカーソルを移動する。
【0024】
図6は、手動移動軸監視手段が実行する手動移動軸監視処理のフローチャートである。本処理は、手動移動軸監視手段の監視周期毎に実行される。本フローチャートの説明において、POScは手動移動軸監視手段の監視周期における各軸の現在の位置を、POSpは各軸の監視周期1周期前の位置を、Diffは各軸の移動方向の符号と移動量(POSC−POSp)を示している。また、
図6下に示した表は、
図1に示す教示操作の各ステップでの移動軸の移動におけるPOSp、POSc、Diffの各値を表にしたものである。
【0025】
●[ステップSA01]各軸の現在位置(POSc)を、各軸のサーボモータなどから読み取る。
●[ステップSA02]ステップSA01で取得した現在位置と、メモリ上に記憶している1周期前の「現在位置」(POSp)との差分Diffを算出する。
●[ステップSA03]ステップSA02で算出した各軸の差分Diffが0であるか否かを判定する。すべての軸において0である場合には、ステップSA06へ進み、そうでない場合にはステップSA04へ進む。
【0026】
●[ステップSA04]差分Diffが0ではない軸について、その軸番号と軸名称を手動移動データテーブルに記録する。
●[ステップSA05]差分Diffが0ではない軸について、Diffの符号と現在位置を手動移動データテーブルに記憶する。
●[ステップSA06]POSpにPOScを代入し、本周期における手動移動軸監視処理を終了する。
【0027】
図7は、教示対象系統切換手段が実行する教示対象系統切換処理のフローチャートである。
●[ステップSB01]手動移動データテーブルに記録された軸が存在するか否かを判定する。存在する場合にはステップSB02へ進み、存在しない場合には本周期の処理を終了する。
●[ステップSB02]手動移動データテーブルに記録されている軸について、軸系統対応テーブルを参照し、当該軸が属する系統を教示対象系統として選定する。
●[ステップSB03]ステップSB02で選定された教示対象系統への切換えを実行する。
【0028】
図8は、教示対象プログラム選定手段が実行する教示対象プログラム選定処理のフローチャートである。
●[ステップSC01]手動移動データテーブルに記録された軸が存在するか否かを判定する。存在する場合にはステップSC02へ進み、存在しない場合には本周期の処理を終了する。
●[ステップSC02]手動移動データテーブルに記録されている軸について、プログラム管理テーブルに基づいて教示対象系統切換処理により切換えを行った系統内で該当軸が属する教示プログラムを選択する。教示プログラムの使用頻度で選択を行う場合は「使用頻度」が最も多いプログラムを選択、あるいは最後に使用したプログラムを選択する場合は「最終使用フラグ」が1になっているプログラムを自動選定、あるいは選定確率の高い教示プログラムとして選定画面に表示して手動選定操作を実行する。なお、「最終使用フラグ」は教示プログラムを使用し、教示操作を実行した後1を設定する。それ以外の該当軸が属するプログラムの「最終使用フラグ」は0に設定する。
【0029】
図9は、
図8のフローチャートのステップSC02において、オペレータに教示プログラムを選択させる場合に表示する教示プログラム選定画面の例である。
図9の例では、系統内で該当軸が属する教示プログラムを、使用頻度又は最終仕様フラグなどの情報に基づいて選定確率の順位をつけ、選定確率が高い順序で表示している。オペレータは選定画面を見て教示対象となる教示プログラムを選択することができる。
【0030】
図10は、教示ブロック選定手段が実行する教示ブロック選定処理のフローチャートである。
●[ステップSD01]手動移動データテーブルに記録された軸が存在するか否かを判定する。存在する場合にはステップSD02へ進み、存在しない場合にはステップSD07へ進む。
●[ステップSD02]後述する教示ポイント選定処理により、教示操作により近づいている教示ポイントを選定する。
【0031】
●[ステップSD03]教示ポイント選定画面を表示するか否かを判定する。教示ポイントを選定する設定となっている場合、或いは教示ポイントが1つに絞り込めない場合にはステップSD05へ進み、そうでない場合にはステップSD04へ進む。
●[ステップSD04]プログラム管理テーブルに基づいて、選定した教示プログラム内で教示ポイントが終点になるブロックを選定する。選定が終了したら、ステップSD08へ進む。
【0032】
●[ステップSD05]選定確率を考慮した教示ポイント選定画面を表示する。
●[ステップSD06]オペレータによる選定操作を実行する。選定操作が終了したら、ステップSD08へ進む。
●[ステップSD07]新規に教示プログラムを作成して先頭ブロックを選定し、ステップSD08へ進む。
●[ステップSD08]選定した教示ポイントに対応するブロックにカーソルを移動し、教示操作を実行する。実行後、選定した教示プログラムについてプログラム管理テーブルの「最終使用フラグ」を1に設定し、使用頻度をカウントアップする。
【0033】
図11は、
図10のフローチャートのステップSD06において、オペレータに教示ポイントを選択させる場合に表示する教示ポイント選定画面の例である。
図11の例では、教示プログラム内の教示ポイント候補を、教示操作により近づいている回数などの情報に基づいて選定確率の順位をつけ、選定確率が高い順序で表示している。オペレータは選定画面を見て教示ポイントを選択することができる。
【0034】
図10のフローチャートにおけるステップSD02で実行される教示ポイント選定処理を、
図12〜14を用いて説明する。
図12〜14は、
図1に示した教示操作の各ステップにおける、各軸(X軸、Y軸)の教示操作による移動と、教示プログラムの各ブロック指令による軸移動後の位置(教示ポイント候補)であるポイント<1>〜ポイント<4>との位置関係を表にしたものである。
【0035】
図12に示すように、
図1における教示操作のステップ1では、ポイント<1>,<2>からは遠ざかる方向に、ポイント<3>,<4>に近づく方向に、Y軸の位置のみが移動している。
また、
図13に示すように、
図1における教示操作のステップ2では、ポイント<1>,<4>からは遠ざかる方向に、ポイント<2>,<3>に近づく方向に、X軸の位置のみが移動している。
更に、
図14に示すように、
図1における教示操作のステップ3では、ポイント<1>,<2>からは遠ざかる方向に、ポイント<3>,<4>に近づく方向に、Y軸の位置のみが移動している。
【0036】
本実施例では、このように各教示操作のステップごとに、教示操作による軸の位置と、教示ポイント候補の位置との位置関係を求め、近づいている回数が最も多い教示ポイント候補を教示ポイントとして選定する。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例に限定されることなく、適宜の変更を加えることにより、その他の態様で実施することができる。
例えば、上記実施の形態の説明では多系統制御を行っている数値制御装置における教示操作を例として説明してきたが、単系統で複数のプログラムを利用している場合の教示操作に本発明を適用しても、本発明の効果を発揮することができる。この場合、教示対象系統切換手段、及び系統に関する情報の管理は不要となり、教示操作モードにおいては、手動移動軸監視処理により移動軸の存在が確認されると、教示対象プログラム選定処理が実行され、その後教示ブロック選定処理が実行される。