(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6081982
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】シート材及びそれを使用した植物の防除用幹巻き、遺体又は動物死体袋並びにシート材の製造方法
(51)【国際特許分類】
A01N 25/34 20060101AFI20170206BHJP
A01M 29/34 20110101ALI20170206BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20170206BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20170206BHJP
A01N 59/06 20060101ALI20170206BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20170206BHJP
A01N 1/00 20060101ALI20170206BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20170206BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20170206BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
A01N25/34 A
A01M29/34
A01P3/00
A01N25/04
A01N59/06 Z
A01P17/00
A01N1/00
B05D5/00 Z
B32B27/18 Z
B65D30/02
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-258092(P2014-258092)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-117680(P2016-117680A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2015年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】505040811
【氏名又は名称】日本帆布製品販売協同組合
(73)【特許権者】
【識別番号】514324911
【氏名又は名称】株式会社カシヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100117374
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真一
(72)【発明者】
【氏名】出来 珠夫
(72)【発明者】
【氏名】神藤 博行
【審査官】
斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】
特許第5379926(JP,B2)
【文献】
特開2015−189699(JP,A)
【文献】
特開2000−302615(JP,A)
【文献】
特開2000−178457(JP,A)
【文献】
特開2010−241704(JP,A)
【文献】
特開2010−209490(JP,A)
【文献】
特開2007−106876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/00−65/48
B05D 5/00
B32B 27/18
B65D 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性塗膜を備えるシート材の製造方法であって、
前記抗菌性塗膜は、全体100重量部に対し、アルカリ性樹脂溶液20〜70重量部と、粉粒状の消石灰10〜70重量部と、増粘剤0.1〜10重量部とを含む泥状塗材から形成されてなり、
前記アルカリ性樹脂溶液は、ホモポリマー又はコポリマーを粘結剤とし、希釈溶媒5〜70重量部と、ポリカルボン酸型界面活性剤系分散剤を1.0〜20重量部とを配合する、消石灰と混合しても中和作用が生じないものであり、
前記泥状塗材を前記シート基材に塗工し、高温乾燥により前記泥状塗材から水分を沸騰蒸発させ、その沸騰時に無数の微小な蒸気道を前記抗菌性塗膜層に形成するように前記シート材に形成し、
前記抗菌性塗膜の表面に付着する水分を前記蒸気道から内部に浸透させて内部の消石灰を溶解させ前記抗菌性塗膜の表面に染み出させることにより前記抗菌性塗膜の表面をpH9以上のアルカリ性表面とする
ことを特徴とするシート材の製造方法。
【請求項2】
前記増粘剤は、非イオン系高分子界面活性剤系増粘剤であることを特徴とする請求項1に記載のシート材の製造方法。
【請求項3】
前記シート材は、前記抗菌性塗膜が形成される塗面の表面濡れ指数を36dyn/平方cm以上に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート材の製造方法。
【請求項4】
前記泥状塗材は、塗面改質剤を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載のシート材の製造方法。
【請求項5】
前記泥状塗材は、硬化剤を含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載のシート材の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一に記載のシート材の製造方法により製造したシート材を帯状に裁断して形成されてなることを特徴とする樹木又は花木を含む植物からダニ又は蜘蛛並びにハエ、アブラムシを含む昆虫類を防除する防除用幹巻きの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか一に記載のシート材の製造方法により製造したシート材を帯状に裁断し樹木又は花木を含む植物の幹又は枝に巻き付けて、樹木又は花木を含む植物からダニ又は蜘蛛並びにハエ、アブラムシを含む昆虫類を防除する防除方法。
【請求項8】
請求項1乃至5の何れか一に記載のシート材の製造方法により製造したシート材を袋状に形成してなることを特徴とする遺体又は動物死体袋の製造方法。
【請求項9】
前記泥状塗材を前記シート材に塗工する工程と、
100℃以上の複数の温度領域を有し、前記複数の温度領域は徐々に高温に設定されてなる乾燥炉によって、前記泥状塗材から水分を沸騰蒸発させ、その沸騰時に無数の微小な蒸気道を形成する工程と
を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載のシート材の製造方法。
【請求項10】
抗菌性塗膜を備えるシート材であって、
前記抗菌性塗膜は、全体100重量部に対し、アルカリ性樹脂溶液20〜70重量部と、粉粒状の消石灰10〜70重量部と、増粘剤0.1〜10重量部とを含む泥状塗材から形成されてなり、
前記アルカリ性樹脂溶液は、ホモポリマー又はコポリマーを粘結剤とし、希釈溶媒5〜70重量部と、ポリカルボン酸型界面活性剤系分散剤を1.0〜20重量部とを配合されてなり、消石灰と混合しても中和作用が生じないものであって、
前記抗菌性塗膜は、平面視において、平面方向に対して上方に向かって開通する無数の微小な蒸気道からなる微小孔を備え、前記抗菌性塗膜の表面に付着する水分を前記蒸気道から内部に浸透させて内部の消石灰を溶解させ前記抗菌性塗膜の表面に染み出させることにより前記抗菌性塗膜の表面をpH9以上のアルカリ性表面とさせてなる
ことを特徴とするシート材。
【請求項11】
前記増粘剤は、非イオン系高分子界面活性剤系増粘剤であることを特徴とする請求項10に記載のシート材。
【請求項12】
前記シート材は、前記抗菌性塗膜が形成される塗面の表面濡れ指数を36dyn/平方cm以上に形成されてなることを特徴とする請求項10又は11に記載のシート材。
【請求項13】
前記泥状塗材は、塗面改質剤を含むことを特徴とする請求項10乃至12の何れか一に記載のシート材。
【請求項14】
前記泥状塗材は、硬化剤を含むことを特徴とする請求項10乃至13の何れか一に記載のシート材。
【請求項15】
請求項10乃至14の何れか一に記載のシート材を帯状に裁断して形成されてなることを特徴とする樹木又は花木を含む植物からダニ又は蜘蛛並びにハエ、アブラムシを含む昆虫類を防除するための防除用幹巻き。
【請求項16】
請求項10乃至14の何れか一に記載のシート材を袋状に形成してなることを特徴とする遺体又は動物死体袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鶏などの家禽や牛豚等の家畜を飼育する鶏舎、畜舎やその周辺設備等に使用したり、果樹その他の樹木や花木等の植物の防除に使用する抗菌性及び防除性を有するシート材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、畜産業においては、例えば、高病原性鳥インフルエンザや口蹄疫等の家畜伝染病が度々伝播し、家禽や家畜に深刻な被害を与えている。したがって、これらの鳥インフルエンザウイルスや口蹄疫ウイルスの鶏舎や畜舎への侵入を防止する必要がある。また、前記鶏舎や畜舎等には、ウイルスと同様に大腸菌や黄色ブドウ球菌等の細菌の侵入や増殖も効果的に防止する必要があり、さらには、ダニやハエ等の昆虫の侵入や繁殖についても効果的に防止する必要がある。
【0003】
前述のようなウイルス、細菌等の微生物を不活化し、さらに、ダニ及びハエ、アブラムシ等の昆虫類を防除するための先行技術としては、例えば、
図3に示すような、特許第5379926号(特許文献1)に記載のものが公知である。
【0004】
前記特許文献1に記載されたシート材は、全体100重量部に対し、消石灰を含有しても凝集固化による増粘が生じない非アルカリ増粘型樹脂5〜45重量部を含むエマルジョン15〜75重量部と、希薄水溶液がpH10.0以上を呈する消石灰10〜50重量部、濃度調整用水5〜40重量部を含み、これらを混合攪拌して得られる混合物スラリーを母材とし、同母材を、物体の表面に塗膜しかつ乾燥固化させることにより、内部に消石灰が固形粒子の形で分散包埋されると共に、内部の消石灰の固形粒子と外面とが微小クラックCで連通されてなる防除用固化体を、シート材の表面に塗膜しかつ乾燥固化させることにより、シート材の表面に皮膜状の固化体が形成されてなることを特徴とするものであり、前記混合物スラリーをシート材の表面に塗膜し、混合物スラリーが硬化するまで静置して、硬化の過程で微小クラックが生じるように形成されている。
【0005】
前記シート材によれば、自然の結露水の付着や、降雨、散水などにより、水が前記固化体の表面に付着して、内部の消石灰(アルカリ性物質)の固形粒子に連通する微小クラックをしみ出し通路として、前記固化体の表面に付着した水分が微小クラックを浸透し、内部の消石灰の固形粒子を溶解し、溶解した消石灰が表面にしみ出して固化体の表面をpH10.0以上として、前記固化体の表面に付着した鳥インフルエンザウイルスや豚インフルエンザウイルスなどの病原性ウイルスは不活化し、抗ウイルス効果を得ると共に、前記固化体の表面からダニおよび昆虫類を忌避せしめるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5379926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記のように形成されたシート材の塗膜は、主剤が非アルカリ性で形成されるため、強アルカリ性である消石灰と混合した場合に、一部中和され、所望のphの強アルカリ性を維持形成しにくい場合がある。
【0008】
さらに、前記のように形成されたシート材にあっては、塗膜された前記混合物スラリーは硬化するまで静置されて形成されるため、消石灰を硬化させるのに必要な乾燥時間が長時間必要となることや、乾燥によるクラックC(
図3参照)が発生し、このクラックCは、
図3(b)に示すように、塗膜の厚さ方向のみならず、前記シート材の平面視において筋状に発生することがあり、剥落の原因になることから、事実上、前述のようなシート材をシート状に連続に加工された商品は開発されていない。
【0009】
加えて、その形成過程により生じた微小クラックCを有する塗膜は、可撓性の高いシート材に対して、シート本体が撓む場合の追従性に欠け、シート本体が撓むと塗膜が剥離する等の不都合が生じ、例えば、畜舎、鶏舎等の建造物に張設するようなシート材に使用することは好適ではない。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シート材の塗膜材の混合時に中和されることなく、強アルカリ性を維持形成し易いものとするシート材を提供することである。
【0011】
また、本発明の他の目的は、前記塗膜層に、前記シート材の平面視において微小点状の多穴性の蒸気道を形成し、前記塗膜の剥落の原因となるクラックを生ぜずに、塗膜内部の消石灰を前記塗膜の表面に染み出させるようになし、可撓性の高いシート材に対して、シート基材が撓む場合の追従性に優れ、シート基材が撓むと塗膜が剥離する等の不都合が生じにくい、例えば、建造物に張設するようなシート材に使用することに好適な、シート材を提供することである。
【0012】
さらに、本発明の他の目的は、前記シート材を適宜大きさの帯状体に裁断され形成したものを樹木又は花木等の幹に巻き付けて、ダニ及びハエ、アブラムシ等の昆虫類を防除するための防除用幹巻きの提供及びその防除用幹巻きを使用する防除方法を提供することである。
【0013】
加えて、本発明の他の目的は、前記シート材を適宜大きさの袋状に形成した遺体又は動物死体袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載のシート材は、抗菌性塗膜を備えるシート材であって、前記抗菌性塗膜は、全体100重量部に対し、ホモポリマー又はコポリマーを粘結剤とする水溶液に分散剤を1,0〜20重量部とを配合する、消石灰と混合しても中和作用が生じないアルカリ性樹脂溶液20〜70重量部と、希釈溶媒5〜70重量部と、粉粒状の消石灰10〜70重量部と、増粘剤0,1〜10重量部とを含む泥状塗材を、前記シート材に塗工し、高温乾燥により前記泥状塗材から水分を沸騰蒸発させ、その沸騰時に無数の微小な蒸気道を形成するように前記シート材に形成され、前記抗菌性塗膜の表面に付着する水分を前記蒸気道から内部に浸透させて内部の消石灰を前記抗菌性塗膜の表面に染み出させることにより前記抗菌性塗膜の表面をpH9以上のアルカリ性表面とさせてなることを特徴とする。
【0015】
請求項1に係るシート材にあっては、前記泥状塗材の母材となる樹脂溶液をアルカリ性としているので、強アルカリ性の消石灰と混合しても、中和作用が生ぜず、所望のpHを維持形成し易い。また、前記抗菌性塗膜から内部の消石灰を前記塗膜の表面に染み出させるために、無数の微小な蒸気道を形成し、前記蒸気道は前記抗菌性塗膜中の水分が蒸発するときに前記平面方向に対して上方に向かって垂直方向に開通するものであるため、平面視においては無数の微小孔として認められ、平面方向のひび割れ(クラック)が生じにくいため、剥落し難くなると共に、可撓性の高いシート材に対して、シート本体が撓む場合の追従性に富むものとなる。
【0016】
請求項2に記載のシート材は、請求項1に記載のシート材において、前記分散剤は、ポリカルボン酸型界面活性剤系分散剤であることを特徴とする。
【0017】
請求項2に係るシート材にあっては、請求項1に記載のシート材の前記抗菌性塗膜に、分散剤として、ポリカルボン酸型界面活性剤系分散剤を使用するため、高分子型分散剤と比べて、ぬれ性が良く、湿潤効果の高いものとなる。
【0018】
請求項3に記載のシート材は、請求項1に記載のシート材において、前記増粘剤は、非イオン系高分子界面活性剤系増粘剤であることを特徴とする。
【0019】
請求項3に係るシート材にあっては、請求項1に記載のシート材の前記抗菌性塗膜に、増粘剤として非イオン系高分子界面活性剤系増粘剤を使用するため、水に溶けたとき、イオン化しない親水基を有しているため、水の硬度や電化質の影響を受けにくく、他の界面活性剤と併用し易いものとなる。
【0020】
請求項4に記載のシート材は、前記シート材は、請求項1乃至3の何れか一に記載のシート材において、前記抗菌性塗膜が形成される塗面の表面濡れ指数を36dyn/平方cm以上に形成されてなることを特徴とする。
【0021】
請求項4に係るシート材にあっては、前記抗菌性塗膜が形成される塗面の表面濡れ指数を36dyn/平方cm以上に形成しているので、前記抗菌性塗膜層を塗工したときに、体積収縮の水平方向の動きを防止し、厚み方向のみに体積収縮を起こさせるようにでき、前記抗菌性塗膜層が動き易くなり乾燥時の体積収縮等の影響に依って島状に塗膜が形成されクラックの発生原因となることを防止することができる。
【0022】
請求項5に記載のシート材は、請求項1乃至3の何れか一に記載のシート材において、前記泥状塗材は、塗面改質剤を含むことを特徴とする。
【0023】
請求項5に係るシート材にあっては、前記シート材は、請求項1乃至3の何れか一に記載のシート材において、前記泥状塗材は、例えば、ポリビニールアルコール系の塗面改質剤を含んでいるので、前記抗菌性塗膜が形成される塗面の表面濡れ指数が34dyn/平方cm以下であっても、前記抗菌性塗膜層を塗工したときに、体積収縮の水平方向の動きを防止し、厚み方向のみに体積収縮を起こさせるようにでき、前記抗菌性塗膜層が動き易くなり乾燥時の体積収縮等の影響に依って島状に塗膜が形成されクラックの発生原因となることを防止することができる。
【0024】
請求項6に記載のシート材は、請求項1乃至5の何れか一に記載のシート材において、前記泥状塗材は、硬化剤を含むことを特徴とする。
【0025】
請求項6に係るシート材にあっては、請求項1乃至5の何れか一に記載のシート材において、前記泥状塗材に硬化剤を含んでいるので、前記シート材の使用時に、前記シート材に形成される前記抗菌性塗膜が使用により溶解する速度を遅めるように調整することができる。
【0026】
請求項7に記載の樹木又は花木等の防除用幹巻きは、請求項1乃至6の何れか一に記載のシート材を適宜大きさの帯状に裁断して形成されてなることを特徴とする。
【0027】
請求項7に係る樹木又は花木等の防除用幹巻きにあっては、請求項1乃至6の何れか一に記載のシート材を適宜大きさの帯状に裁断して形成しているので、前記シート材に設けられる前記抗菌性塗膜に含まれる消石灰により、ダニ及びハエ、アブラムシ等の昆虫類を防除することができる。また、前記樹木又は花木等の防除用幹巻きは、前記シート材を、対象植物の大きさに適宜合わせた大きさの帯状に裁断しするだけで良いので、安価かつ簡易に製造することができる。
【0028】
請求項8に記載の樹木又は花木等の防除方法は、請求項1乃至6の何れか一に記載のシート材を適宜大きさの帯状に裁断し樹木又は花木等の植物の幹又は枝に巻き付けて、樹木又は花木等の植物からダニ、蜘蛛又はハエ等の昆虫を防除する。
【0029】
請求項8に記載の樹木又は花木等の防除方法にあっては、請求項1乃至6の何れか一に記載のシート材を適宜大きさの帯状に裁断した幹巻きを、樹木又は花木等の植物の幹又は枝に巻き付けるだけで良いので、容易に樹木又は花木等の植物からダニ、蜘蛛又はハエ等の昆虫を防除することができる。
【0030】
請求項9に記載の遺体又は動物死体袋は、請求項1乃至6の何れか一に記載のシート材を適宜大きさの袋状に形成してなることを特徴とする。
【0031】
請求項9に記載の遺体又は動物死体袋にあっては、請求項1乃至6の何れか一に記載のシート材を適宜大きさの袋状に形成しているので、高い抗菌性及び防除性を有することとなる。
【0032】
請求項10に記載のシート材の製造方法は、請求項1乃至6の何れか一に記載のシート材を製造する方法であって、前記泥状塗材を前記シート材の塗工する工程と、100℃以上の複数の温度領域を有し、前記複数の温度領域は徐々に高温に設定されてなる乾燥炉によって、前記泥状塗材から水分を沸騰蒸発させ、その沸騰時に無数の微小な蒸気道を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0033】
請求項10に記載のシート材の製造方法にあっては、請求項1乃至6の何れか一に記載のシート材を製造する方法であって、前記泥状塗材を前記シート材の塗工する工程と、100℃以上の複数の温度領域を有し、前記複数の温度領域は徐々に高温に設定されてなる乾燥炉によって、前記泥状塗材から水分を沸騰蒸発させ、その沸騰時に無数の微小な蒸気道を形成する工程とを備えるので、前記抗菌性塗膜に前記蒸気道を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0034】
請求項1に記載のシート材によれば、抗菌性塗膜を備えるシート材であって、前記抗菌性塗膜は、全体100重量部に対し、ホモポリマー又はコポリマーを粘結剤とする水溶液に分散剤を1,0〜20重量部とを配合する、消石灰と混合しても中和作用が生じないアルカリ性樹脂溶液20〜70重量部と、希釈溶媒5〜70重量部と、粉粒状の消石灰10〜70重量部と、増粘剤0,1〜10重量部とを含む泥状塗材を、前記シート材に塗工し、高温乾燥により前記泥状塗材から水分を沸騰蒸発させ、その沸騰時に無数の微小な蒸気道を形成するように前記シート材に形成され、前記抗菌性塗膜の表面に付着する水分を前記蒸気道から内部に浸透させて内部の消石灰を前記抗菌性塗膜の表面に染み出させることにより前記抗菌性塗膜の表面をpH9以上のアルカリ性表面とさせているので、前記泥状塗材の母材となる樹脂溶液を、強アルカリ性の消石灰と混合しても、中和作用が生ぜず、所望のpHを維持形成し易い。また、前記塗膜から内部の消石灰を前記抗菌性塗膜の表面に染み出させるために、無数の微小な蒸気道を形成し、前記蒸気道は前記抗菌性塗膜中の水分が蒸発するときに前記平面方向に対して上方に向かって垂直方向に開通するものであるため、平面視においては無数の微小孔として認められ、平面方向のひび割れ(クラック)が生じにくいため、剥落し難くなると共に、可撓性の高いシート材に対して、シート本体が撓む場合の追従性に富むものとなる。
【0035】
請求項2に記載のシート材によれば、請求項1に記載のシート材において、前記分散剤は、ポリカルボン酸型界面活性剤系分散剤であるであるので、前記シート材の前記抗菌性塗膜に、分散剤として、ポリカルボン酸型界面活性剤系分散剤を使用するため、高分子型分散剤と比べて、ぬれ性が良く、湿潤効果の高いものとなる。
【0036】
請求項3に記載のシート材によれば、請求項1に記載のシート材において、前記増粘剤は、非イオン系高分子界面活性剤系増粘剤であるので、増粘剤として非イオン系高分子界面活性剤系増粘剤を使用するため、水に溶けたとき、イオン化しない親水基を有しているため、水の硬度や電化質の影響を受けにくく、他の界面活性剤と併用し易いものとなる。
【0037】
請求項4に記載のシート材によれば、前記シート材は、請求項1乃至3の何れか一に記載のシート材において、前記抗菌性塗膜が形成される塗面の表面濡れ指数を36dyn/平方cm以上に形成しているので、前記抗菌性塗膜層を塗工したときに、体積収縮の水平方向の動きを防止し、厚み方向のみに体積収縮を起こさせるようにでき、前記抗菌性塗膜層が動き易くなり乾燥時の体積収縮等の影響に依って島状に塗膜が形成されクラックの発生原因となることを防止することができる。
【0038】
請求項5に記載のシート材によれば、前記シート材は、請求項1乃至3の何れか一に記載のシート材において、前記泥状塗材は、例えば、ポリビニールアルコール系の塗面改質剤を含んでいるので、前記抗菌性塗膜が形成される塗面の表面濡れ指数が34dyn/平方cm以下であっても、前記抗菌性塗膜層を塗工したときに、体積収縮の水平方向の動きを防止し、厚み方向のみに体積収縮を起こさせるようにでき、前記抗菌性塗膜層が動き易くなり乾燥時の体積収縮等の影響に依って島状に塗膜が形成されクラックの発生原因となることを防止することができる。
【0039】
請求項6に記載のシート材によれば、請求項1乃至5の何れか一に記載のシート材において、前記泥状塗材は、硬化剤を含んでいるので、前記シート材の使用時に、前記シート材に形成される前記抗菌性塗膜が使用により溶解する速度を遅めるように調整することができる。
【0040】
請求項7に記載の防除用幹巻きによれば、請求項1乃至6の何れか一に記載のシート材を適宜大きさの帯状に裁断して形成しているので、前記シート材に設けられる前記抗菌性塗膜に含まれる消石灰により、ダニ及びハエ、アブラムシ等の昆虫類を防除することができる。また、前記樹木又は花木等の防除用幹巻きは、前記シート材を、対象植物の大きさに適宜合わせた大きさの帯状に裁断しするだけで良いので、安価かつ簡易に製造することができる。
【0041】
請求項8に記載の防除方法によれば、請求項1乃至6の何れか一に記載のシート材を適宜大きさの帯状に裁断した幹巻きを、樹木又は花木等の植物の幹又は枝に巻き付けるだけで良いので、容易に樹木又は花木等の植物からダニ、蜘蛛又はハエ等の昆虫を防除することができる。
【0042】
請求項9に記載の遺体又は動物死体袋によれば、請求項1乃至6の何れか一に記載のシート材を適宜大きさの袋状に形成しているので、高い抗菌性及び防除性を有することとなる。
【0043】
請求項10に記載のシート材の製造方法によれば、請求項1乃至6の何れか一に記載のシート材を製造する方法であって、前記泥状塗材を前記シート材の塗工する工程と、100℃以上の複数の温度領域を有し、前記複数の温度領域は徐々に高温に設定されてなる乾燥炉によって、前記泥状塗材から水分を沸騰蒸発させ、その沸騰時に無数の微小な蒸気道を形成する工程とを備えているので、前記抗菌性塗膜に前記蒸気道を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明に係るシート材の部分拡大模式図であり、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。
【
図2】(a)及び(b)は、本発明に係るシート材を使用した幹巻きを樹木に巻き付けた状態の斜視図である。
【
図3】従来例を示すシート材の部分拡大模式図であり、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明に係るシート材を実施するための最良の形態について、図面に従って説明する。
【0046】
図1は本発明に係るシート材の模式図であり、(a)は断面図であり、(b)は平面図である。
【0047】
図1中、10は本発明に係るシート材であり、前記シート材10は、後述する材料によってシート状に形成されるシート基材11と、前記シート基材11の表面に設けた抗菌性塗膜12を備えている。なお、本実形態においては、前記抗菌性塗膜12は、前記シート基材11の表面にのみ設けているが、これに限らず、前記抗菌性塗膜12は、前記シート基材11の裏面のみに設けても、また、表裏面に設けても良い。
【0048】
前記シート基材11は、100℃以上の耐熱軟化性を備え、130℃における耐熱収縮率が10%以下のシート状材料から構成され、具体的には、前記シート基材11の材質として、綿、麻、レーヨン、ポリ乳酢繊維又は化学合成繊維等で形成された織布又は不織布、ポリ塩化ビニル又は酢酸ビニル製のターポリン、メッシュシートとガラス織布と合成樹脂を使用した複合シート、紙並びにプラスチックフイルム等が挙げられる。
【0049】
前記材料で形成されたシート基材11であっても、前述した100℃以上の耐熱軟化性を備え、130℃における耐熱収縮率が10%以下であるという条件が満たされない場合は、100℃〜150℃での前処理加熱加工やアニーリング加工(加熱処理)を施すことによって、前記所定の特性条件を満たすように予め処理を行う。
【0050】
前記シート基材11に塗工する前記抗菌性塗膜12を形成する泥状塗材は、全体100重量部に対し、アルカリ性樹脂溶液20〜70重量部に、粒径1〜10μmかつ純度90%以上の消石灰13を10〜70重量部と、増粘剤を0,1〜10重量部とを
含んで混合して形成されている。
【0051】
前記アルカリ性樹脂溶液は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂等何れかのホモポリマー又はコポリマーを粘結剤と
し、ポリカルボン酸型界面活性剤系分散剤を1,0〜20重量部、水溶媒5〜70重量部を配合し、後述する消石灰13を混合する時に、中和作用に依ってpH低下が起きないようにアルカリ性混合溶液となるように構成される。
【0052】
前記消石灰13は、粒径1〜50μm程度の粉粒体であって、純度90%以上の消石灰であり、混合時に混合し易いものを選定する。そして
、非イオン系高分子界面活性剤系増粘剤を0,1〜1,0重量部加える。なお、沸点調整の為に、アルコール溶媒0〜50重量部を加える場合がある。
【0053】
なお、前記シート基材11の材質によっては、塗工時に表面濡れ指数の関係で前記塗膜12が動き易く、乾燥時の体積収縮等の影響に依り、島状に塗膜が形成されたり、クラックの発生原因となるため、体積収縮の水平方向における動きを止め、厚さ方向にのみ体積収縮が行えるように、ポリビニルアルコール系塗面改質剤を0〜30重量部程度前記泥状塗材に添加し、36dyn/平方cm以上になるように調整する場合がある。
【0054】
また、前記の如く、前記泥状塗材に予めポリビニルアルコール系塗面改質剤を添加する替わりに、予め前記シート基材11の塗面にアクリル樹脂系コート剤をコーティングして、前記表面濡れ指数を通常34dyn/平方cm以下であるところを36dyn/平方cm以上になるように調整しても良く、さらに硬化剤を添加してもよい。
【0055】
以上のように形成した泥状塗材を、コンマドクター法、グラビアオフセット法、エアーナイフ法、デッピング法等の塗工加工方法によって、前記シート基材11に、塗工厚さ50g/m
2dry〜400g/m
2dry(ドライ膜厚)程度に塗工し、100℃〜180℃で30秒〜5分以内で乾燥させる。このとき、前記泥状塗材から水溶媒等を沸騰蒸気化させて、無数の微小な蒸気道14を発生させるように、塗工厚さ、塗工粘度、乾燥温度、傾斜温度設定及び加工速度等の条件設定を行うのである。
【実施例】
【0056】
本発明に係るシート材10の好適な構成例を2例、実施例1及び実施例2として下記に示す。
【0057】
実施例1
【0058】
実施例1の前記シート材10は、シート基材11として、綿布(金布3号)を採用し、前記塗膜12を形成する前記泥状塗材は下記の表1の構成とする。
【表1】
【0059】
前記表1に示すように、実施例1の前記シート材10の前記抗菌性塗膜12を形成する前記泥状塗材を構成する前記アルカリ性樹脂溶液は、前記粘結剤として、アクリル酸エステル共重合水性エマルジョン(PCカサマツ株式会社製、商品名「PCテックスK−260B」)を35,0重量部と、前記分散剤としてポリカルボン酸型界面活性剤を2,0重量部と、前記希釈溶媒として水18,7重量部とを配合して形成される。
【0060】
そして、前記アルカリ性樹脂溶液に、前記消石灰は水酸化カルシウムの含有量が95%以上のものを40,0重量部と、前記増粘剤として非イオン系界面活性剤を1,3重量部と、硬化剤としてポリイソシアネート(PCカサマツ株式会社製、商品名「PCフィクサー」)を3,0重量部とを混合して、前記泥状塗材を形成するのである。
【0061】
すなわち、前記実施例1のシート材10は、先ず、前記粘結剤の中に前記分散剤及び前記水を加え、攪拌混合して、前記アルカリ性樹脂溶液を製造し、前記アルカリ性樹脂溶液に、前記消石灰を徐々に加えつつ攪拌し、更に前記増粘剤を加えて塗工に適正な粘度状態とし、塗工開始時点で前記硬化剤を加え、コンマドクター方式の塗工機にて、前記綿布の表面に200g/m
2 wet(ウエット膜厚)の量を塗工し、沸騰蒸気圧に依って無数の微小な蒸気道14を形成できるように、120℃、130℃、150℃の3区画の温度領域の乾燥炉にて塗膜の乾燥を行い、前記シート材10を形成するのである。
【0062】
以上のように形成される前記シート材10においては、前記泥状塗材はアルカリ性樹脂溶液を主剤としているので、消石灰と混合しても一部が中和されることなく、強アルカリ性を維持できる。また、前記蒸気道14は前記泥状塗材中の水分が蒸発するときに前記平面方向に対して上方に向かって垂直方向に開通するものであるため、平面視においては無数の微小孔として認められ、平面方向のひび割れ(クラック)が生じにくいため、剥落し難くなると共に、可撓性の高いシート材に対して、シート本体が撓む場合の追従性に富むものとなる。
【0063】
また、分散剤としてポリカルボン酸型界面活性剤系分散剤を使用しているので、高分子型分散剤と比べて、ぬれ性が良く、湿潤効果の高いものとなる。さらに。増粘剤として非イオン系高分子界面活性剤系増粘剤を使用しているので、水に溶けたとき、イオン化しない親水基を有しており、水の硬度や電化質の影響を受けにくく、他の界面活性剤と併用し易いものとなる。
【0064】
また、前記泥状塗材には、硬化剤を含んでいるので、前記シート材10の使用時に、前記シート10材に形成される前記抗菌性塗膜12が使用により溶解する速度を遅めるように調整することができる。
【0065】
また、シート基材として用いる前記綿布は36dyn以上であるので、前記抗菌性塗膜層を塗工したときに、体積収縮の水平方向の動きを防止し、厚み方向のみに体積収縮を起こさせるようにでき、前記抗菌性塗膜層が動き易くなり乾燥時の体積収縮等の影響に依って島状に塗膜が形成されクラックの発生原因となることを防止することができる。
【0066】
前記シート材によれば、結露水の付着や、降雨時、散水時などにより水分が前記抗菌性塗膜の表面に付着することにより、内部の消石灰(アルカリ性物質)の固形粒子に連通する前記蒸気道14を経て、前記固化体の表面に付着した水分が前記蒸気道14から浸透し、内部の消石灰の固形粒子を溶解し、溶解した消石灰が表面にしみ出して前記抗菌性塗膜の表面を強アルカリ性として、前記抗菌性塗膜の表面に付着した鳥インフルエンザウイルスや豚インフルエンザウイルスなどの病原性ウイルスを不活化させ、抗菌効果を得ると共に、前記抗菌性塗膜の表面からダニおよび昆虫類を忌避させて防除効果を発揮することとなる。
【0067】
また、前記シート材は、前記抗菌効果及び防除効果の他に環土性にも優れたものとなり、樹木又は花木等の植物の防除用幹巻き等の農業用資材、畜産用資材に好適なものとなる。
【0068】
実施例2
【0069】
実施例2の前記シート材10は、シート基材11として、ポリ塩化ビニル製の養生2類ターポリンシート(日本ウェーブロック株式会社製 品番「ZTR2600F」)を採用し、前記泥状塗材は下記の表2の構成とする。
【表2】
【0070】
前記表2に示すように、実施例2の前記シート材10の前記抗菌性塗膜12を形成する前記泥状塗材を構成する前記アルカリ性樹脂溶液は、前記粘結剤として、アクリル酸エステル共重合水性エマルジョン(PCカサマツ株式会社製、商品名「PCテックスK−260A」)を20,0重量部と、前記分散剤としてポリカルボン酸型界面活性剤を1,0重量部と、前記希釈溶媒として水32,7重量部とを配合して形成される。
【0071】
そして、前記アルカリ性樹脂溶液に、前記消石灰は水酸化カルシウムの含有量が95%以上のものを35,0重量部と、前記増粘剤として非イオン系界面活性剤を1,3重量部と、前記塗面改質剤としてポリビニールアルコール系添加剤を10,0重量部とを混合して、前記泥状塗材を形成するのである。
【0072】
すなわち、前記実施例2のシート材10は、先ず、前記粘結剤の中に前記分散剤及び前記水を加え、攪拌混合して、前記消石灰を徐々に加えつつ攪拌し、更に前記増粘剤を加えて塗工に適正な粘度状態とし、前記塗面改質剤を加え、コンマドクター方式又はグラビア方式の塗工機にて、前記ポリ塩化ビニル製ターポリンの表面に180g/m
2 wet(ウエット膜厚)の厚さで塗工し、110℃、120℃、140℃の3区画の温度領域の乾燥炉にて塗膜の乾燥を行い、沸騰蒸気圧に依って無数の微小な蒸気道14を形成しながら、前記シート材10を形成するのである。
【0073】
以上のように形成される前記シート材10においては、前記泥状塗材はアルカリ性樹脂溶液を主剤としているので、消石灰と混合しても一部が中和されることなく、強アルカリ性を維持できる。また、前記蒸気道14は前記泥状塗材中の水分が蒸発するときに前記平面方向に対して上方に向かって垂直方向に開通するものであるため、平面視においては無数の微小孔として認められ、平面方向のひび割れ(クラック)が生じにくいため、剥落し難くなると共に、可撓性の高いシート材に対して、シート本体が撓む場合の追従性に富むものとなる。
【0074】
また、分散剤としてポリカルボン酸型界面活性剤系分散剤を使用しているので、高分子型分散剤と比べて、ぬれ性が良く、湿潤効果の高いものとなる。さらに。増粘剤として非イオン系高分子界面活性剤系増粘剤を使用しているので、水に溶けたとき、イオン化しない親水基を有しており、水の硬度や電化質の影響を受けにくく、他の界面活性剤と併用し易いものとなる。
【0075】
また、前記表面濡れ指数を36dyn/平方cm以上になるように、前記泥状塗材に、予めポリビニルアルコール系塗面改質剤を添加しているので、前記抗菌性塗膜層を塗工したときに、体積収縮の水平方向の動きを防止し、厚み方向のみに体積収縮を起こさせるようにでき、前記抗菌性塗膜層が動き易くなり乾燥時の体積収縮等の影響に依って島状に塗膜が形成されクラックの発生原因となることを防止することができる。
【0076】
前記シート材によれば、結露水の付着や、降雨時、散水時などにより水分が前記抗菌性塗膜の表面に付着することにより、内部の消石灰(アルカリ性物質)の固形粒子に連通する前記蒸気道14を経て、前記固化体の表面に付着した水分が前記蒸気道14から浸透し、内部の消石灰の固形粒子を溶解し、溶解した消石灰が表面にしみ出して前記抗菌性塗膜の表面を強アルカリ性として、前記抗菌性塗膜の表面に付着した鳥インフルエンザウイルスや豚インフルエンザウイルスなどの病原性ウイルスを不活化させ、抗菌効果を得ると共に、前記抗菌性塗膜の表面からダニおよび昆虫類を忌避させて防除効果を発揮することとなる。
【0077】
また、前記シート材は、前記抗菌効果及び防除効果の他に強度的にも優れたものとなり、畜舎、鶏舎等の壁面シートや堆肥カバーー等の農業用資材、畜産用資材に好適なものとなる。
【0078】
実施例1の前記シート材の抗菌性試験の結果を下記に示す。なお前記試験は大阪府立産業技術綜合研究所によるものである。
【0079】
(1)試験名
抗菌消石灰シート
(2)報告日
平成26年12月1日
(3)試験項目
電位差測定(pH測定を含む)及び抗菌性試験
(4)試験方法
抗菌消石灰シートを37mm×37mmの正方形にカットした。100ml容量ビーカーに超純水10mlを入れ、消石灰コーティング面が下になるようにカットしたシートを浸漬して30℃で定温静置した。その後、表3に示す時間にビーカーの水を取り除き、新たに10mlの超純水を添加した。この際、除去した水のpHを測定した。なお、試験は3つのサンプルで個別に行った。
(4−1)pH測定
pHの測定にはpH/イオンメーターF−23(堀場製作所)を使用した。3つのサンプルをそれぞれ測定し、その平均値を結果とした。
(4−2)抗菌性試験
pH測定と同じ方法で調整した抗菌消石灰シートを、70,5、143,5及び269,0時間目にビーカーから回収し、以下の抗菌性試験に使用した。
試験は、繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果JIS L 1902:2008を参考に行った。Staphylococcus aureus ATCC6538P(黄色ぶどう球菌)を前培養し、1白金耳の菌を採取して1/20ニュートリエント培地に分散希釈して試験菌液とした。試験菌液0,2mlをバイアル瓶中の上記抗菌消石灰シートに接種し、試験菌液を接種したバイアル瓶を37℃で18時間培養した後、SCDLP培地20mlを加えて接種した試験菌の洗い出しを行った。洗い出し液は、生理食塩水で希釈して、10倍希釈系列希釈液を作製した。洗い出し液及び各希釈液について、ニュートリエント寒天培地を用いた混釈平板培養法により、37℃で48時間培養した後、生菌数を測定した。
(5)結果
(5−1)電位差測定(pH測定を含む)
測定したpH値の試験結果を表3に示す。表3は抗菌消石灰シートを浸漬した水のpH測定結果である。
【表3】
(5−2)抗菌性試験
抗菌性試験の結果を表4乃至表6に示す。表4は70,5時間後試料の生菌数であり、表5は143,5時間後試料の生菌数であり、表6は269,0時間後試料の生菌数である。
【表4】
【表5】
【表6】
【0080】
図2(a)及び(b)は、本発明に係る前記シート材10を使用した幹巻き20を、果樹Tに巻き付けて固定した状態の斜視図である。
【0081】
図2において、幹巻き20は、前記シート材10を、適用する植物の種類、大きさにより、適宜の大きさの帯状に裁断して形成している。前記幹巻き20においては、前記シート材10に設けられる前記抗菌性塗膜12から染み出す消石灰13成分により、ダニ及びハエ、アブラムシ等の昆虫類を防除することができる。
【0082】
また、前記樹木又は花木等の防除用幹巻き20は、前記シート材10を、対象植物の大きさに適宜合わせた大きさの帯状に裁断しするだけで良いので、安価かつ簡易に製造することができる。
【0083】
また、前記シート材10を、袋状に形成して、遺体又は動物死体袋を形成しても良い。その場合は、前記シート材10に設けられる前記抗菌性塗膜12から染み出す消石灰13成分により、抗菌効果を有することとなる。
【符号の説明】
【0084】
10 シート材
12 抗菌性塗膜
13 消石灰粒子
14 蒸気道
15 水分
20 幹巻き
T 樹木