(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
[光電変換層用組成物]
本発明の組成物は、半導体およびイオン性ポリマーを少なくとも含む。このような組成物は、後述するように、特に、電極を構成する光電変換層(又は電極を構成する光電変換層)を形成するための組成物として有用である。
【0030】
(半導体)
半導体としては、無機半導体、有機半導体に大別でき、本発明では、無機半導体を好適に用いることができる。無機半導体としては、半導体特性を有する無機物であればよく、用途に応じて適宜選択でき、例えば、金属単体、金属化合物(金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物など)が挙げられる。
【0031】
無機半導体を構成する金属としては、例えば、周期表第2族金属(例えば、カルシウム、ストロンチウムなど)、周期表第3族金属(例えば、スカンジウム、イットリウム、ランタノイドなど)、周期表第4族金属(例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなど)、周期表第5族金属(例えば、バナジウム、ニオブ、タンタルなど)、周期表第6族金属(例えば、クロム、モリブデン、タングステンなど)、周期表第7族金属(例えば、マンガンなど)、周期表第8族金属(例えば、鉄など)、周期表第9族金属(例えば、コバルトなど)、周期表第10族金属(例えば、ニッケルなど)、周期表第11族金属(例えば、銅など)、周期表第12族金属(例えば、亜鉛、カドミウムなど)、周期表第13族金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムなど)、周期表第14族金属(例えば、ゲルマニウム、スズなど)、周期表第15族金属(例えば、ヒ素、アンチモン、ビスマスなど)、周期表第16族金属(例えば、テルルなど)などが挙げられる。
【0032】
半導体は、これらの金属を単独で含む化合物であってもよく、複数組み合わせて含む化合物であってもよい。例えば、半導体は、合金であってもよく、金属酸化物は複合酸化物であってもよい。また、半導体は、上記金属と、他の金属(アルカリ金属など)とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0033】
具体的な半導体としては、例えば、金属酸化物{例えば、遷移金属酸化物[例えば、周期表第3族金属酸化物(酸化イットリウム、酸化セリウムなど)、周期表第4族金属酸化物(酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムなど)、周期表第5族金属酸化物(酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル(五酸化二タンタルなど)など)、周期表第6族金属酸化物(酸化クロム、酸化タングステンなど)、周期表第7族金属酸化物(酸化マンガンなど)、周期表第8族金属酸化物(酸化鉄、酸化ルテニウムなど)、周期表第9族金属酸化物(酸化コバルト、酸化イリジウム、コバルトとナトリウムとの複合酸化物など)、周期表第10族金属酸化物(酸化ニッケルなど)、周期表第11族金属酸化物(酸化銅など)、周期表第12族金属酸化物(酸化亜鉛など)など]、典型金属酸化物[例えば、周期表第2族金属酸化物(酸化ストロンチウムなど)、周期表第13族金属酸化物(酸化ガリウム、酸化インジウムなど)、周期表第14族金属酸化物(酸化ケイ素、酸化スズなど)、周期表第15族金属酸化物(酸化ビスマスなど)など]、これらの金属を複数含む複合酸化物[例えば、周期表第11族金属と遷移金属(周期表第11族金属以外の遷移金属)との複合酸化物(例えば、CuYO
2などの銅と周期表第3族金属との複合酸化物)、周期表第11族金属と典型金属の複合酸化物(例えば、CuAlO
2、CuGaO
2、CuInO
2などの銅と周期表第13族金属との複合酸化物;SrCu
2O
2などの銅と周期表第2族金属との複合酸化物;AgInO
2などの銀と周期表第13族金属との複合酸化物など)など]、これらの複数の金属および酸素以外の周期表第16族元素を含む酸化物[例えば、周期表第11族金属と遷移金属(周期表第11族金属以外の遷移金属)との複合酸硫化物(例えば、LaCuOSなどの銅と周期表第3族金属との複合酸硫化物)、周期表第11族金属と遷移金属(周期表第11族金属以外の遷移金属)との複合酸セレン化物(例えば、LaCuOSeなどの銅と周期表第3族金属との複合酸セレン化物)など]など}、金属窒化物(窒化タリウムなど)、金属リン化物(InPなど)、金属硫化物{例えば、Cds、硫化銅(CuS、Cu
2S)、複合硫化物[例えば、周期表第11族金属と典型金属との複合硫化物(例えば、CuGaS
2、CuInS
2などの銅と周期表第13族金属との複合硫化物)など}、金属セレン化物(CdSe、ZnSeなど)、金属ハロゲン化物(CuCl、CuBrなど)、周期表第13族金属−第15族金属化合物(GaAs、InSbなど)、周期表第12族金属−第16族金属化合物(CdTeなど)などの金属化合物(又は合金);金属単体(例えば、パラジウム、白金、銀、金、ケイ素、ゲルマニウム)などが挙げられる。
【0034】
なお、半導体は、他の元素をドープした半導体であってもよい。
【0035】
半導体は、n型半導体であってもよく、p型半導体であってもよい。本発明では、特に、後述するイオン性ポリマーのうち、n型半導体に対してはアニオン性ポリマー、p型半導体に対してはカチオン性ポリマーを好適に組み合わせてもよい。このような組み合わせにより、効率よく蓄電機能を備えた光電変換層を形成できる。
【0036】
上記例示の半導体(特に無機半導体)のうち、代表的なn型半導体としては、例えば、周期表第4族金属酸化物(酸化チタンなど)、周期表第5族金属酸化物(酸化ニオブ、酸化タンタルなど)、周期表第12族金属酸化物(酸化亜鉛など)、周期表第13族金属酸化物(酸化ガリウム、酸化インジウムなど)、周期表第14族金属酸化物(酸化スズなど)などが挙げられる。
【0037】
また、代表的なp型半導体としては、例えば、周期表第6族金属酸化物(酸化クロムなど)、周期表第7族金属酸化物(酸化マンガンなど)、周期表第8族金属酸化物(酸化鉄など)、周期表第9族金属酸化物(酸化コバルト、酸化イリジウムなど)、周期表第10族金属酸化物(酸化ニッケルなど)、周期表第11族金属酸化物(酸化銅など)、周期表第15族金属酸化物(酸化ビスマスなど)、周期表第11族金属と遷移金属又は典型金属との複合酸化物(例えば、CuYO
2、CuAlO
2、CuGaO
2、CuInO
2、SrCu
2O
2、AgInO
2など)、周期表第11族金属と遷移金属との複合酸硫化物(例えば、LaCuOSなど)、周期表第11族金属と遷移金属との複合酸セレン化物(例えば、LaCuOSeなど)、周期表第11族金属と典型金属との複合硫化物(例えば、CuGaS
2、CuInS
2など)などが挙げられる。
【0038】
これらの半導体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0039】
これらのうち、好ましい半導体には、金属酸化物が含まれ、特に透明金属酸化物(透明性を有する金属酸化物)が好ましい。このような金属酸化物としては、酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO
2)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、銅−アルミニウム酸化物(CuAlO
2)、酸化イリジウム(IrO)、酸化ニッケル(NiO)、これらの金属酸化物のドープ体などが挙げられる。
【0040】
また、半導体のうち、電子伝導性などの観点から、n型半導体を好適に使用してもよい。特に、本発明では、酸化チタン(TiO
2)などのn型の金属酸化物半導体を好適に使用してもよい。
【0041】
酸化チタンの結晶形(結晶型)は、ルチル型(金紅石型)、アナターゼ型(鋭錐石型)、ブルッカイト型(板チタン石型)のいずれであってもよい。本発明では、ルチル型又はアナターゼ型酸化チタンを好適に用いることができ、特に、アナターゼ型酸化チタンが好ましい。一方、ルチル型酸化チタンは、配向しやすく、酸化チタン間の接触面積を比較的大きくできるため、導電性や耐久性の面から好適に用いてもよい。
【0042】
半導体(例えば、酸化チタンなどの金属酸化物)の形状は、特に限定されず、粒子状、繊維状(又は針状又は棒状)、板状などであってもよい。好ましい形状は、粒子状又は針状であり、特に、粒子状の半導体(半導体粒子)が好ましい。
【0043】
半導体粒子の平均粒径(平均一次粒子径)は、1〜1000nm(例えば、1〜700nm)程度の範囲から選択でき、通常、ナノサイズ(ナノメータサイズ)、例えば、1〜500nm(例えば、2〜400nm)、好ましくは3〜300nm(例えば、4〜200nm)、さらに好ましくは5〜100nm(例えば、6〜70nm)、特に50nm以下[例えば、1〜50nm(例えば、2〜40nm)、好ましくは3〜30nm(例えば、4〜25nm)、さらに好ましくは5〜20nm(例えば、6〜15nm)、通常10〜50nm]であってもよい。
【0044】
また、針状(又は繊維状)の半導体において、平均繊維径は、例えば、1〜300nm、好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは50〜100nm程度であってもよい。また、針状の半導体において、平均繊維長は、10〜2000nm、好ましくは50〜1000nm、さらに好ましくは100〜500nm程度であってもよい。針状の半導体において、アスペクト比は、例えば、2〜200、好ましくは5〜100、さらに好ましくは20〜40程度であってもよい。
【0045】
半導体(例えば、繊維状又は粒子状の半導体)の比表面積は、形状などにもよるが、例えば、1〜600m
2/g、好ましくは2〜500m
2/g、さらに好ましくは3〜400m
2/g程度であってもよい。
【0046】
特に、半導体粒子の比表面積は、例えば、5〜600m
2/g(例えば、7〜550m
2/g)、好ましくは10〜500m
2/g(例えば、15〜450m
2/g)、さらに好ましくは20〜400m
2/g(例えば、30〜350m
2/g)、特に50m
2/g以上[例えば、50〜500m
2/g、好ましくは70〜450m
2/g、さらに好ましくは100〜400m
2/g、特に150〜350m
2/g(例えば、200〜350m
2/g)]であってもよい。
【0047】
なお、繊維状又は針状の半導体の比表面積は、1〜100m
2/g、好ましくは2〜70m
2/g、さらに好ましくは3〜50m
2/g(例えば、4〜30m
2/g)程度であってもよい。
【0048】
なお、半導体(酸化チタンなど)は、分散液(水分散液など)として、イオン性ポリマー(および後述の色素)と混合してもよい。また、半導体は、市販品を利用してもよく、慣用の方法を利用して合成したものを使用してもよい。例えば、酸化チタンの分散液は、特許第4522886号公報などに記載の方法により得ることができる。
【0049】
(イオン性ポリマー)
本発明は、半導体とイオン性ポリマーとを組み合わせる(複合化する)ことに特徴を有している。このような組み合わせにより、光電変換機能と蓄電機能とを兼ね備えた光電変換層(いわゆる電気二重層又はキャパシタとしての機能を備えた光電変換層)を形成できる。また、イオン性ポリマーがバインダー的に作用するためか、半導体(酸化チタンナノ粒子など)を焼結しなくても、光電変換特性に優れた光電変換層を形成できる。この理由は定かではないが、所定量のイオン性ポリマーと半導体[特に、ナノサイズの半導体粒子(半導体ナノ粒子)]との組み合わせにより、半導体の分散安定性を向上でき、半導体特性を有効に発揮できることや、イオン性のポリマーの種類によってはイオン性ポリマー自体が光電変換により発生した電荷を輸送する電解質(固体電解質)としても機能することなどが考えられる。
【0050】
イオン性ポリマー(イオン性高分子)は、イオン性(電解質性)を有するポリマー(すなわち、高分子電解質)であればよく、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、両性ポリマー(カルボキシル基とアミノ基の双方を有するポリマーなど)のいずれであってもよい。
【0051】
本発明では、代表的には、半導体の種類に応じて、イオン性ポリマーを選択してもよい。すなわち、(i)半導体が、n型半導体であるとき、アニオン性ポリマーで構成されたイオン性ポリマーを選択し、(ii)半導体がp型半導体であるとき、カチオン性ポリマーで構成されたイオン性ポリマーを選択してもよい。このような半導体とイオン性ポリマーとの組み合わせにより、理由は定かではないが、優れた蓄電機能を効率よく光電変換層に付与できる。
【0052】
特に、本発明では、通常、アニオン性ポリマー又はカチオン性ポリマーを好適に使用することができ、特にアニオン性ポリマーを好適に使用してもよい(特にn型半導体とアニオン性ポリマーで構成されたイオン性ポリマーとの組み合わせを選択してもよい)。アニオン性ポリマー又はカチオン性ポリマーは、半導体(酸化チタンなど)の表面に対して結合(化学結合、水素結合など)して固定化されやすいためか、バインダーとして好適に作用するようである。特に、イオン性ポリマーは、イオン交換樹脂(又はイオン交換体又は固体高分子電解質)であってもよい。
【0053】
アニオン性ポリマーは、通常、酸基[カルボキシル基、スルホ基(又はスルホン酸基)など]を有するポリマーである。アニオン性ポリマーは、酸基(又は酸性基)を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。なお、酸基は、その一部又は全部が中和されていてもよい。
【0054】
代表的なアニオン性ポリマー[又は陽イオン交換樹脂(カチオン型イオン交換樹脂、酸型イオン交換樹脂)]としては、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂{例えば、カルボキシル基を有するイオン交換樹脂[例えば、(メタ)アクリル酸ポリマー(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸;メタクリル酸−ジビニルベンゼンコポリマー、アクリル酸−ジビニルベンゼンコポリマーなどの(メタ)アクリル酸と他の共重合性単量体(架橋性モノマーなど)との共重合体など)、カルボキシル基を有するフッ素含有樹脂(パーフルオロカルボン酸樹脂)など]などが挙げられる。
【0055】
中でも、好ましいアニオン性ポリマーには、強酸性陽イオン交換樹脂が含まれる。強酸性イオン交換樹脂としては、例えば、スルホ基を有するフッ素含有樹脂{例えば、フルオロアルケンとスルホフルオロアルキル−フルオロビニルエーテルとの共重合体[例えば、テトラフルオロエチレン−[2−(2−スルホテトラフルオロエトキシ)ヘキサフルオロプロポキシ]トリフルオロエチレン共重合体(例えば、グラフト共重合体)など]などのフルオロスルホン酸樹脂(特に、パーフルオロスルホン酸樹脂)など}、スルホ基を有するスチレン系樹脂[例えば、ポリスチレンスルホン酸、架橋スチレン系重合体のスルホン化物(例えば、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーのスルホン化物など)など]などが挙げられる。
【0056】
なお、スルホ基を有するフッ素含有樹脂は、デュポン社から商品名「ナフィオン」シリーズなどとして入手可能である。
【0057】
アニオン性ポリマーは、酸性、中性、アルカリ性のいずれであってもよい。特に、本発明では、比較的pHが小さいアニオン性ポリマーを好適に使用してもよい。pHが小さいと半導体(特にn型半導体)との組み合わせにおいて、電解液中で電気二重層を形成しやすいためか、十分な蓄電機能を得やすくなる場合が多い。このような理由は定かではないが、豊富なプロトンにより、半導体上に電荷がとどまりやすくなることもその一因として考えられる。このようなアニオン性ポリマー(例えば、強酸性陽イオン交換樹脂)又はアニオン性ポリマーで構成されたイオン性ポリマーのpH(25℃)は、10以下(例えば、0.1〜8)の範囲から選択でき、例えば、7未満(例えば、0.15〜6.5)、好ましくは6以下(例えば、0.2〜5)、さらに好ましくは4以下(例えば、0.3〜3)、特に2以下(例えば、0.5〜1.5)、通常3以下(例えば、1〜3)であってもよい。なお、pHは、イオン性ポリマーの水溶液又は水分散液における値(又は水を含む溶媒中における値)であってもよい。換言すれば、上記pHは、25℃において、イオン性ポリマーを水又は水を含む溶媒に溶解又は分散させたときの溶液(水溶液など)又は分散液(水分散液など)における値(pH)であってもよい。
【0058】
なお、pHは、慣用の方法(例えば、酸基を適当な塩基で中和する方法など)により調整することができる。なお、酸基を中和する場合、中和された酸基において、カウンターイオンとしては、特に限定されず、例えば、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムなど)であってもよい。
【0059】
なお、イオン性ポリマーをアニオン性ポリマーで構成する場合、イオン性ポリマーをアニオン性ポリマーのみで構成してもよく、アニオン性ポリマーと他のイオン性ポリマー(例えば、両性ポリマーなど)とを組み合わせてもよい。このような場合、イオン性ポリマー全体に対するアニオン性ポリマーの割合は、例えば、30重量%以上(例えば、40〜99重量%)、好ましくは50重量%以上(例えば、60〜98重量%)、さらに好ましくは70重量%以上(例えば、80〜97重量%)であってもよい。
【0060】
カチオン性ポリマーは、通常、塩基性基(アルカリ性基)を有するポリマーである。塩基性基としては、例えば、アミノ基[例えば、アミノ基、置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのモノ又はジアルキルアミノ基)などの第1級、第2級又は第3級アミノ基]、イミノ基(−NH−、−N<)、第4級アンモニウム塩基(例えば、トリメチルアンモニウム塩基などのトリアルキルアンモニウム塩基)などが挙げられる。カチオン性ポリマーは、これらの塩基性基を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。なお、塩基性基は、その一部又は全部が中和されていてもよい。
【0061】
代表的なカチオン性ポリマー[又は陰イオン交換樹脂(アニオン型イオン交換樹脂、塩基型イオン交換樹脂)]としては、例えば、アミン系ポリマー{例えば、アリルアミン系ポリマー[ポリアリルアミン、アリルアミン−ジメチルアリルアミン共重合体、ジアリルアミン−二酸化硫黄共重合体などのアリルアミン系単量体(例えば、アリルアミン、ジアリルアミン、ジアリルアルキルアミン(ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミンなど)など)の単独又は共重合体(複数のアリルアミン系単量体の共重合体のみならず、アリルアミン系単量体と共重合性単量体との共重合体も含む、以下同様の表現において同じ)]、ビニルアミン系ポリマー(例えば、ポリビニルアミンなどのビニルアミン系単量体の単独又は共重合体)、アミノ基を有する(メタ)アクリル系ポリマー[例えば、アミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのN−モノ又はジアルキルアミノC
1−4アルキル(メタ)アクリレート)、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどのN−モノ又はジアルキルアミノC
1−4アルキル(メタ)アクリルアミド)などのアミノ基を有する(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体など]、ヘテロ環式アミン系ポリマー[例えば、イミダゾール系ポリマー(例えば、ポリビニルイミダゾールなど)、ピリジン系ポリマー(例えば、ポリビニルピリジンなど)、ピロリドン系ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)など]、アミン変性エポキシ樹脂、アミン変性シリコーン樹脂など}、イミン系ポリマー[例えば、ポリアルキレンイミン(例えば、ポリエチレンイミンなど)などのイミン系単量体の単独又は共重合体]、第4級アンモニウム塩基含有ポリマーなどが挙げられる。
【0062】
第4級アンモニウム塩基含有ポリマーにおいて、塩としては、特に限定されず、例えば、ハロゲン化物塩(例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物など)、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩などのアルカン酸塩)、スルホン酸塩などが挙げられる。
【0063】
第4級アンモニウム塩基含有ポリマーとしては、例えば、上記例示のアミン系ポリマーやイミン系ポリマーのアミノ基やイミノ基を第4級アンモニウム塩基化したポリマー{例えば、N,N,N−トリアルキル−N−(メタ)アクリロイルオキシアルキルアンモニウム塩[例えば、トリメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライドなどのトリC
1−10アルキル(メタ)アクリロイルオキシC
2−4アルキルアンモニウム塩]の単独又は共重合体}の他、ビニルアラルキルアンモニウム塩系ポリマー{例えば、ビニルアラルキルアンモニウム塩[例えば、N,N,N−トリアルキル−N−(ビニルアラルキル)アンモニウム塩(例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライドなどのトリC
1−10アルキル(ビニル−C
6−10アリールC
1−4アルキル)アンモニウム塩)、N,N−ジアルキル−N−アラルキル−N−(ビニルアラルキル)アンモニウム塩(例えば、N,N−ジメチル−N−ベンジル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライドなどのN,N−ジC
1−10アルキル−N−C
6−10アリールC
1−4アルキル−N−(ビニル−C
6−10アリールC
1−4アルキル)アンモニウム塩)]の単独又は共重合体など}、カチオン化セルロース[例えば、ヒドロキシ基含有セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロースなどのヒドロキシC
2−4アルキルセルロース)と第4級アンモニウム塩基(例えば、トリアルキルアンモニウム塩基など)を有するエポキシ化合物(例えば、N,N,N−トリアルキル−N−グリシジルアンモニウム塩)との反応物]、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーに第4級アンモニウム塩基を導入したポリマーなどが挙げられる。
【0064】
なお、カチオン性セルロース(カチオン化セルロース)は、(株)ダイセルから、商品名「ジェルナー」、ポリアリルアミンは、ニットーボーメディカル(株)から商品名「PAA」シリーズ、アミン変性シリコーン樹脂は、信越化学工業(株)から、商品名「KF」シリーズなどとして入手できる。
【0065】
好ましいカチオン性ポリマーは、第4級アンモニウム塩基含有ポリマーなどの強塩基性のカチオン性ポリマー(陰イオン交換樹脂)が挙げられる。
【0066】
カチオン性ポリマーは、酸性、中性、アルカリ性のいずれであってもよい。特に、本発明では、p型半導体との組み合わせにおいては、比較的pHが大きいカチオン性ポリマーを好適に使用してもよい。このようなカチオン性ポリマー(例えば、強塩基性陰イオン交換樹脂)又はカチオン性ポリマーで構成されたイオン性ポリマーのpH(25℃)は、5以上(例えば、6〜14)の範囲から選択でき、例えば、7以上(例えば、7.5〜14)、好ましくは8以上(例えば、8.5〜14)、さらに好ましくは9以上(例えば、9.5〜13.5)、特に10以上(例えば、10.5〜13)であってもよい。なお、pHは、イオン性ポリマーの水溶液又は水分散液における値(又は水を含む溶媒中における値)であってもよい。換言すれば、上記pHは、25℃において、イオン性ポリマーを水又は水を含む溶媒に溶解又は分散させたときの溶液(水溶液など)又は分散液(水分散液など)における値(pH)であってもよい。なお、pHは、慣用の方法(例えば、塩基性基を適当な酸基で中和する方法など)により調整することができる。
【0067】
なお、イオン性ポリマーをカチオン性ポリマーで構成する場合、イオン性ポリマーをカチオン性ポリマーのみで構成してもよく、カチオン性ポリマーと他のイオン性ポリマー(例えば、両性ポリマーなど)とを組み合わせてもよい。このような場合、イオン性ポリマー全体に対するカチオン性ポリマーの割合は、例えば、30重量%以上(例えば、40〜99重量%)、好ましくは50重量%以上(例えば、60〜98重量%)、さらに好ましくは70重量%以上(例えば、80〜97重量%)であってもよい。
【0068】
イオン性ポリマー(アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーなど)は、架橋構造を有していてもよく(例えば、前記例示の(メタ)アクリル酸−ジビニルベンゼンコポリマーやスチレン系重合体のスルホン化物など)、架橋構造を有していなくてもよい。本発明では、特に、架橋構造を有していない(又は架橋度が非常に低い)イオン性ポリマーを好適に使用してもよい。
【0069】
イオン性ポリマー(イオン交換樹脂)において、イオン交換容量は、0.1〜5.0meq/g(例えば、0.15〜4.0meq/g)、好ましくは0.2〜3.0meq/g(例えば、0.3〜2.0meq/g)、さらに好ましくは0.4〜1.5meq/g、特に0.5〜1.0meq/g程度であってもよい。
【0070】
なお、イオン性ポリマーの分子量は、溶媒に対して溶解もしくは分散できる範囲であれば特に制限されない。
【0071】
イオン性ポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0072】
イオン性ポリマーの割合は、半導体1重量部に対して、0.05重量部以上(例えば、0.07〜100重量部)の範囲から選択でき、例えば、0.1重量部以上(例えば、0.1〜50重量部)、好ましくは0.15重量部以上(例えば、0.15〜30重量部)、さらに好ましくは0.2重量部以上(例えば、0.2〜20重量部)、通常0.1〜10重量部[例えば、0.1〜8重量部(例えば、0.1〜7重量部)、好ましくは0.15〜5重量部(例えば、0.15〜3重量部)、さらに好ましくは0.2〜2重量部(例えば、0.2〜1重量部)]程度であってもよい。上記のような割合で半導体とイオン性ポリマーとを組み合わせる(さらには、前記のように半導体とイオン性ポリマーとの組み合わせを選択する)ことにより、蓄電機能を有する光電変換層を効率よく得ることができる。
【0073】
(色素)
本発明の組成物は、さらに、色素を含んでいてもよい。色素を含有させることで、色素増感型の光電変換層又は色素増感型の光電変換素子(色素増感太陽電池など)を効率よく形成することができる。
【0074】
色素(染料、顔料)としては、増感剤(増感色素、光増感色素)として機能する成分(又は増感作用を示す成分)であれば特に限定されず、例えば、有機色素、無機色素(例えば、炭素系顔料、クロム酸塩系顔料、カドミウム系顔料、フェロシアン化物系顔料、金属酸化物系顔料、ケイ酸塩系顔料、リン酸塩系顔料など)などが挙げられる。色素は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0075】
有機色素(有機染料又は有機顔料)としては、例えば、ルテニウム錯体色素{例えば、ルテニウムのビピリジン錯体[例えば、シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)ビステトラブチルアンモニウム(別名:N719)、シス−ビス(イソチオシアナト)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)、シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)、シス−ビス(シアニド)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)、トリス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(II)ジクロリドなど]、ルテニウムのターピリジン錯体[例えば、トリス(イソチオシアナト)ルテニウム(II)−2,2’:6’,2’’−ターピリジン−4,4’,4’’−トリカルボン酸 トリステトラブチルアンモニウム塩など]などのルテニウムのピリジン系錯体}、オスミウム錯体色素、ポルフィリン系色素(マグネシウムポルフィリン、亜鉛ポルフィリンなど)、クロロフィル系色素(クロロフィルなど)、キサンテン系色素(ローダミンB、エリスロシンなど)、シアニン系色素(メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニンなど)、フタロシアニン系色素、アゾ系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、クマリン系色素、キノン系色素、アントラキノン系色素、スクアリリウム系色素、アゾメチン系色素、キノフタロン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリン系色素、ニトロソ系色素、ピロロピロール系色素、塩基性色素(メチレンブルーなど)などが挙げられる。
【0076】
これらの色素の中でも、有機色素が好ましく、中でも、ルテニウム錯体色素が好ましい。また、カルボキシル基、エステル基、スルホ基などの官能基を配位子として有する色素(例えば、N719などのカルボキシル基を有するルテニウム色素)も好ましい。このような配位子を有する色素は、酸化チタンなどの半導体表面と結合しやすく、脱離しにくいため好適である。
【0077】
なお、色素は、通常、半導体(又は半導体表面)に付着した(又は固定化された)形態で光電変換層(又は光電変換素子)に含まれる。付着(又は固定化)の態様としては、吸着(物理吸着)、化学結合などが挙げられる。そのため、色素は、半導体に対して付着しやすい色素を好適に選択してもよい。
【0078】
色素の割合(付着又は吸着割合)は、特に限定されないが、例えば、半導体およびイオン性ポリマーと関連づけて、下記式の範囲となるように選択してもよい。
【0079】
0<(I
A×I
S+D
A×D
S)/S
S≦1
(式中、I
Aはイオン性ポリマー中のイオン性基の数、I
Sはイオン性基1個あたりの占有面積、D
Aは色素(色素分子)の数、D
Sは色素1個あたりの占有面積、S
Sは、半導体の表面積を示す。)
上記式において、I
Aはイオン性基の総数であり、例えば、イオン性ポリマーのイオン交換容量(meq/g)にイオン性ポリマーの重量(g)及びアボガドロ数を掛けることで求めることができ、通常、I
A×I
S<S
Sである。I
S、D
Sは、それぞれ、イオン性基1つの占有面積(m
2)、色素1分子の占有面積(m
2)であり、面積が最大となるよう投影した時の値を用いることができる。
【0080】
具体的な色素の割合は、半導体1重量部に対して、例えば、0.001〜1重量部(例えば、0.003〜0.7重量部)、好ましくは0.005〜0.5重量部(例えば、0.007〜0.3重量部)、さらに好ましくは0.01〜0.2重量部(例えば、0.02〜0.1重量部)程度であってもよい。
【0081】
本発明の組成物は、溶媒を含む組成物(コーティング組成物)であってもよい。溶媒としては、特に限定されず、有機溶媒[例えば、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルカノール類)、芳香族系溶媒(例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートなどの酢酸エステル類)、ケトン系溶媒(例えば、アセトンなどの鎖状ケトン類;シクロヘキサノンなどの環状ケトン類)、エーテル系溶媒(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロアルカン類)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、ニトロ系溶媒(例えば、ニトロベンゼンなど)など]、水などが挙げられる。溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0082】
溶媒を含む組成物において、固形分(又は不揮発性成分)の割合は、光電変換層を形成する際のコーティング方法などに応じて適宜選択でき、例えば、0.1〜90重量%(例えば、0.5〜70重量%)、好ましくは1〜50重量%(例えば、5〜40重量%)、さらに好ましくは10〜30重量%程度であってもよい。本発明では、比較的イオン性ポリマーの割合を大きくできるので、半導体を含む固形分が高濃度であっても、半導体の分散安定性を十分に担保できる。
【0083】
また、溶媒を含む組成物のpHは、特に限定されないが、前記のようにイオン性ポリマーの種類や、半導体とのイオン性ポリマーとの組み合わせに応じて、適当な範囲を選択してもよい。例えば、イオン性ポリマーをアニオン性ポリマーで構成する場合、溶媒を含む組成物のpH(25℃)は、10以下(例えば、0.1〜8)の範囲から選択してもよく、例えば、7未満(例えば、0.15〜6.5)、好ましくは6以下(例えば、0.2〜5)、さらに好ましくは4以下(例えば、0.3〜3)、特に2以下(例えば、0.5〜1.5)、通常3以下(例えば、1〜3)であってもよい。
【0084】
また、イオン性ポリマーをカチオン性ポリマーで構成する場合、溶媒を含む組成物のpH(25℃)は、5以上(例えば、6〜14)の範囲から選択でき、例えば、7以上(例えば、7.5〜14)、好ましくは8以上(例えば、8.5〜14)、さらに好ましくは9以上(例えば、9.5〜13.5)、特に10以上(例えば、10.5〜13)であってもよい。
【0085】
本発明の組成物は、各成分(半導体、イオン性ポリマー、必要に応じて色素など)を混合することにより得ることができる。例えば、溶媒を含む組成物は、各成分を溶媒中で混合することで調製してもよく、予め各成分(例えば、半導体およびイオン性ポリマー)を混合した後、溶媒に混合(又は分散)させて調製してもよい。なお、前記のように、酸化チタンなどの半導体は、予め溶媒に分散させた分散液の形態で、イオン性ポリマー(および色素)と混合してもよい。なお、前記のように、組成物のpHを調整する場合、pHの調整は適当な段階で行うことができ、例えば、半導体の分散液中のpHを予め前記範囲となるように調整して、イオン性ポリマー(および色素)と混合してもよく、半導体(又はその分散液)とイオン性ポリマー(および色素)との混合系において組成物のpHを調整してもよい。
【0086】
また、色素は、半導体およびイオン性ポリマーと予め混合してもよく、基板に半導体およびイオン性ポリマーを含む組成物を塗布して形成された塗膜に、色素をコーティング(付着)させることもできる。本発明では、後述のように、半導体を焼結(焼成)させる必要がないため、予め半導体およびイオン性ポリマーと混合することが可能である。
【0087】
本発明の組成物は、光電変換層(又は光電変換素子を構成する光電変換層)を形成するための組成物として有用である。このような光電変換層は、通常、基板上に形成される。すなわち、光電変換層は、基板とともに積層体を構成する。以下に、光電変換層およびその製法について詳述する。
【0088】
[積層体およびその製造方法]
本発明の積層体(電極)は、基板と、この基板上に積層された光電変換層(前記組成物で形成された光電変換層)とで構成される。
【0089】
基板は、用途にもよるが、通常、導電性基板であってもよい。導電性基板は、導電体(又は導電体層)のみで構成してもよいが、通常、ベースとなる基板(ベース基板)上に導電体層(又は導電層又は導電膜)が形成された基板などが挙げられる。なお、このような場合、光電変換層は、導電体層上に形成される。
【0090】
導電体(導電剤)としては、用途に応じて適宜選択できるが、例えば、導電性金属酸化物[例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、アンチモンドープ金属酸化物(アンチモンドープ酸化錫など)、錫ドープ金属酸化物(錫ドープ酸化インジウムなど)、アルミニウムドープ金属酸化物(アルミニウムドープ酸化亜鉛など)、ガリウムドープ金属酸化物(ガリウムドープ酸化亜鉛など)、フッ素ドープ金属酸化物(フッ素ドープ酸化スズなど)など]などの導電体が挙げられる。これらの導電体は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、導電体は、通常、透明導電体であってもよい。
【0091】
ベース基板としては、無機基板(例えば、ガラスなど)、有機基板[例えば、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、セルロース系樹脂(セルローストリアセテートなど)、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルスルホンなど)、ポリスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィドなど)、ポリイミド樹脂などのプラスチックで形成された基板又はフィルム(プラスチック基板又はプラスチックフィルム)など]などが挙げられる。本発明では、半導体の焼結工程が不要であるため、ベース基板としてプラスチック基板(プラスチックフィルム)を用いることが可能である。
【0092】
光電変換層は、前記組成物を基板(導電体層)上に塗布(又はコーティング)することにより形成できる。塗布方法としては、特に限定されず、例えば、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ブレードコート法、ドクターブレード法、スキージ法、ディップコート法、スプレー法、スピンコート法、インクジェット印刷法などが例示できる。塗布後、所定の温度(例えば、室温〜150℃程度)で乾燥させてもよい。
【0093】
なお、色素は、前記のように、半導体およびイオン性ポリマーを基板上に塗布した後、半導体およびイオン性ポリマーを含む塗膜に色素を付着させることで光電変換層に含有させてもよい。色素を付着させる方法としては、色素を含む溶液を塗膜に噴霧する方法、塗膜を形成した基板を色素を含む溶液に浸漬する方法などが挙げられる。なお、噴霧又は浸漬後、前記と同様に乾燥させてもよい。
【0094】
なお、本発明では、組成物を基板上に塗布した後、半導体を焼結(又は焼成)させることなく[又は高温(例えば、400℃以上)で加熱処理することなく]、光電変換層を形成する。本発明では、このような焼結工程を経なくても、優れた光電変換特性を有する光電変換層を形成できる。しかも、焼結により半導体の比表面積が小さくなるが、上記のように本発明では焼結しなくても光電変換層を形成できるので、半導体由来の表面積を維持でき、好適である。
【0095】
上記のようにして光電変換層が基板(導電性基板)上に形成され、電極(積層体)が得られる。電極の厚みは、例えば、0.1〜100μm(例えば、0.3〜70μm)、好ましくは0.5〜50μm(例えば、0.7〜40μm)、さらに好ましくは1〜30μm程度であってもよい。また、光電変換層の厚みは、例えば、0.1〜100μm(例えば、0.3〜70μm)、好ましくは0.5〜50μm(例えば、1〜30μm)、さらに好ましくは3〜20μm程度であってもよい。
【0096】
上記のようにして得られる積層体は、導電体層と光電変換層とを有しており、光電変換素子を構成する電極として利用できる。以下、光電変換素子について詳述する。
【0097】
[光電変換素子]
光電変換素子は、前記積層体(電極)を備えている。すなわち、光電変換素子(電池)は、前記電極と、この電極に対する対極とを備えている。代表的な光電変換素子の一例としては、太陽電池が挙げられる。特に、光電変換層が色素を含む場合、光電変換素子は、色素増感太陽電池を形成する。
【0098】
太陽電池は、例えば、電極としての積層体と、この電極(電極の光電変換層側)に対向して配置される対極と、これらの電極間に介在し、封止処理された電解質層とで構成されている。すなわち、電解質層(又は電解質)は、両電極(又はその縁部)を封止材[例えば、熱可塑性樹脂(アイオノマー樹脂など)、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂、シリコーン樹脂など)などで構成された封止材]により封止処理することで形成された空間又は空隙内に介在している(又は封入される)。
【0099】
なお、対極は、電極(又は積層体)を構成する半導体の種類によって、正極又は負極となる。すなわち、半導体がn型半導体であるとき、対極は正極(積層体は負極)を形成し、半導体がp型半導体であるとき、対極は負極(積層体は正極)を形成する。
【0100】
対極は、前記積層体と同様に、導電性基板と、この導電性基板上(又は導電性基板の導電体層上)に形成された触媒層(正極触媒層又は負極触媒層)とで構成される。なお、導電体層が導電性に加えて還元能力を有している場合、必ずしも触媒層を設ける必要はない。なお、対極は、導電体層又は触媒層の面を積層体(又は電極)と対向させる。対極において、導電性基板は、前記と同様の基板の他、後述のようにベース基板上に導電体層と触媒層とを兼ね備えた層(導電触媒層)を形成した基板などであってもよい。また、触媒層(正極触媒層又は負極触媒層)は、特に限定されず、導電性金属(金、白金など)、カーボンなどで形成できる。
【0101】
触媒層は、非多孔質層(又は非多孔性層)であってもよく、多孔質構造を有する層(多孔質層)であってもよい。特に、対極は、多孔質層を有する電極(詳細には、最表面に多孔質層を有する電極)であるのが好ましい。このような多孔質層を備えた電極と、前記光電変換層とを組み合わせると、蓄電機能を効率よく発揮させることができ、蓄電容量が大きい光電変換素子を得やすい。
【0102】
このような電極(対極)において、多孔質層は、通常、触媒層(正極触媒層又は負極触媒層)として機能する層(多孔質触媒層)である場合が多い。このような多孔質触媒層は、多孔性触媒成分(多孔質触媒成分)で構成されていてもよく、多孔性成分(多孔質成分)とこの多孔性成分に担持された触媒成分とで構成してもよく、これらを組み合わせて構成してもよい。すなわち、多孔性触媒成分は、多孔性を有するとともに、触媒成分として機能する成分(多孔性と触媒機能とを兼ね備えた成分)である。なお、後者の態様において、多孔性成分は、触媒機能を備えていてもよい。
【0103】
多孔性触媒成分としては、例えば、金属微粒子(例えば、白金黒など)、多孔質カーボン[活性炭、グラファイト、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック(カーボンブラック集合体)、カーボンナノチューブ(カーボンナノチューブ集合体)など]などが挙げられる。これらの成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。多孔質触媒成分のうち、活性炭などを好適に用いることができる。
【0104】
多孔性成分としては、上記多孔質カーボンの他、金属化合物粒子[例えば、前記例示の導電性金属酸化物(例えば、錫ドープ酸化インジウムなど)の粒子(微粒子)など]などが挙げられる。これらの成分は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、触媒成分としては、導電性金属(例えば、金、白金)などが挙げられる。
【0105】
多孔性触媒成分および多孔性成分の形状(又は形態)は、特に限定されず、粒子状、繊維状などであってもよく、好ましくは粒子状である。
【0106】
このような粒子状の多孔性触媒成分及び多孔性成分(多孔性粒子)の平均粒径は、例えば、1〜1000μm(例えば、5〜700μm)、好ましくは10〜500μm(例えば、20〜400μm)、さらに好ましくは30〜300μm(例えば、40〜200μm)、特に50〜150μm(例えば、70〜100μm)程度であってもよい。
【0107】
多孔性触媒成分及び多孔性成分の比表面積は、例えば、1〜4000m
2/g(例えば、10〜3500m
2/g)、好ましくは20〜3000m
2/g(例えば、30〜2500m
2/g)、さらに好ましくは50〜2000m
2/g(例えば、100〜1500m
2/g)、特に200〜1000m
2/g(例えば、300〜500m
2/g)程度であってもよい。
【0108】
なお、多孔質層(多孔質触媒層)は、必要に応じて、バインダー成分[例えば、樹脂成分[例えば、セルロース誘導体(メチルセルロース)などの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂]などを含んでいてもよい。
【0109】
バインダー成分の割合は、多孔質層(多孔質触媒層)全体に対して、例えば、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%(例えば、3〜20重量%)程度であってもよい。
【0110】
多孔質層を有する電極は、少なくとも多孔質層を備えていればよく、通常、少なくとも基板(導電性基板であってもよい基板)と多孔質触媒層とで少なくとも構成されている。代表的な多孔質層を有する電極としては、(i)導電性基板(ベース基板上に導電体層が形成された基板、前記例示の導電性基板など)と、この導電性基板(又は導電体層)上に形成され、多孔性触媒成分で構成された多孔質触媒層とで構成された電極(又は積層体)、(ii)ベース基板(前記例示のベース基板など)と、このベース基板上に形成され、多孔性成分および触媒成分(例えば、触媒成分が担持された多孔性成分)で構成された多孔質触媒層とで構成された電極(又は積層体)などが挙げられる。
【0111】
多孔質層(多孔質触媒層)の厚みは、例えば、0.1〜100μm(例えば、0.3〜70μm)、好ましくは0.5〜50μm(例えば、0.7〜40μm)、さらに好ましくは1〜30μm程度であってもよい。
【0112】
電解質層は、電解質と溶媒とを含む電解液で形成してもよく、電解質を含む固体層(又はゲル)で形成してもよい。電解液を構成する電解質としては、特に限定されず、汎用の電解質、例えば、ハロゲン(ハロゲン分子)とハロゲン化物塩との組み合わせ[例えば、臭素と臭化物塩との組み合わせ、ヨウ素とヨウ化物塩との組み合わせなど]などが挙げられる。ハロゲン化物塩を構成するカウンターイオン(カチオン)としては、金属イオン[例えば、アルカリ金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンなど)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなど)など]、第4級アンモニウムイオン[テトラアルキルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩(例えば、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム塩)など]などが挙げられる。電解質は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0113】
これらのうち、好ましい電解質には、ヨウ素とヨウ化物塩との組み合わせ、特に、ヨウ素とヨウ化金属塩[例えば、アルカリ金属塩(ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなど)、第4級アンモニウム塩など]との組み合わせが挙げられる。
【0114】
電解液を構成する溶媒としては、特に限定されず、汎用の溶媒を用いることができ、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルカノール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類)、ニトリル類(アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、カーボネート類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートなど)、ラクトン類(γ−ブチロラクトンなど)、エーテル類(1,2−ジメトキシエタン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなどの鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、4−メチルジオキソランなどの環状エーテル類)、スルホラン類(スルホランなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、水などが挙げられる。溶媒は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0115】
なお、光電変換素子において、イオン性ポリマーと電解液とは接触する(又は電解液中にイオン性ポリマーが存在する)が、前記のように、イオン性ポリマーのpHを調整する場合、光電変換素子においてもイオン性ポリマーのpHを維持するのが好ましい。具体的には、イオン性ポリマーをアニオン性ポリマーで構成する場合、電解液(電解液中におけるイオン性ポリマー)のpH(25℃)は、10以下(例えば、0.1〜8)の範囲から選択してもよく、例えば、7未満(例えば、0.15〜6.5)、好ましくは6以下(例えば、0.2〜5)、さらに好ましくは4以下(例えば、0.3〜3)、特に2以下(例えば、0.5〜1.5)、通常3以下(例えば、1〜3)であってもよい。
【0116】
また、イオン性ポリマーをカチオン性ポリマーで構成する場合、電解液(又は電解液中におけるイオン性ポリマー)のpH(25℃)は、5以上(例えば、6〜14)の範囲から選択でき、例えば、7以上(例えば、7.5〜14)、好ましくは8以上(例えば、8.5〜14)、さらに好ましくは9以上(例えば、9.5〜13.5)、特に10以上(例えば、10.5〜13)であってもよい。
【0117】
このようなpH調整の観点から、電解液を構成する成分はpH調整に影響を及ぼさない成分を好適に使用してもよい。例えば、イオン性ポリマーをアニオン性ポリマーで構成する場合、電解液として、中性溶媒又は非塩基性溶媒(例えば、非アミン系溶媒)を好適に使用してもよい。一方、イオン性ポリマーをカチオン性ポリマーで構成する場合、電解液として、中性溶媒又は非酸性溶媒(又は非プロトン性溶媒)を好適に使用してもよい。
【0118】
なお、電解液において、電解質の濃度は、例えば、0.01〜10M、好ましくは0.03〜8M、さらに好ましくは0.05〜5M程度であってもよい。また、ハロゲン(ヨウ素など)とハロゲン化物塩(ヨウ化物塩など)とを組み合わせる場合、これらの割合は、ハロゲン/ハロゲン化物塩(モル比)=1/0.5〜1/100、好ましくは1/1〜1/50、さらに好ましくは1/2〜1/30程度であってもよい。
【0119】
また、電解質を含む固体層を構成する電解質としては、前記例示の電解質の他、固体状電解質{例えば、樹脂成分[例えば、チオフェン系重合体(例えば、ポリチオフェンなど)、カルバゾール系重合体(例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)など)など]、低分子有機成分(例えば、ナフタレン、アントラセン、フタロシアニンなど)などの有機固体成分;ヨウ化銀などの無機固体成分など}などが挙げられる。これらの成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0120】
なお、固体層は、前記電解質や電解液をゲル基材[例えば、熱可塑性樹脂(ポリエチレングリコール、ポリメチルメタクリレートなど)、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂など)など]に保持した固体層であってもよい。
【実施例】
【0121】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0122】
(実施例1)
酸化チタン粒子(石原産業(株)製、「ST−01」、平均一次粒子径7nm、比表面積300m
2/g、アナターゼ型結晶)10重量部、アニオン性ポリマーを含む分散液(アルドリッチ社製「ナフィオン117」、20%の割合で含む水および1−プロパノール分散液、イオン交換容量0.95〜1.03meq/g、pH(25℃)=1、1分子当たりの占有面積約0.024nm
2)25重量部(すなわち、アニオン性ポリマー5重量部)、色素(N719、東京化成工業(株)製、分子量1188.57、1分子当たりの占有面積約1nm
2)0.1重量部およびメタノール65重量部を混合して酸化チタン分散液を調製した。
【0123】
得られた酸化チタン粒子分散液を、スキージ法によりITO付ガラス基板(Luminescence Technology社製 サイズ25mm×25mm、ITO層の厚み0.14μm)のITO層側に塗布したのち、大気中70℃で乾燥させ、色素吸着酸化チタン電極(負極)が形成された基板を得た(乾燥後の塗膜の厚み5μm)。
【0124】
得られた色素吸着酸化チタン電極のITO層側(色素吸着側)と、多孔質層を有する対極[ITO付ガラス基板(Luminescence Technology社製 サイズ25mm×25mm、ITO層の厚み0.14μm)と、このITO層上に活性炭粉末(東京化成工業(株)製)を含むスラリー(活性炭粉末1重量部に対してメチルセルロース(東京化成工業(株)製)0.1重量部を含む10重量%水分散液)をスキージ法により塗布することにより形成された活性炭触媒層(厚み5μm)とで構成された電極]のITO層側(活性炭触媒層側)とを50μmの間隔で対向させ、各基板(又は各電極又は各ITO層側)の周囲を互いに結ぶように封止材又はスペーサ(三井・デュポンポリケミカル製、「ハイミラン」)で封止し、両基板(又は両電極)間に形成された空隙(又は封止材で封止された空間)内に電解液を充填し、色素増感太陽電池を作製した。なお、電解液には、ヨウ化リチウムを0.5M、ヨウ素を0.05M含むアセトニトリル溶液を用いた。
【0125】
そして、得られた色素増感太陽電池をソーラーシミュレーター(三永電機製作所(株)製「XES-301S+EL-100」)を用い、AM 1.5、100mW/cm
2、25℃の条件で評価した。
【0126】
(実施例2)
多孔質層を有する対極として、ITO付ガラス基板と、このITO層上にITO粉末(アルドリッチ(株)製、粒子径<50nm、比表面積27m
2/g)を含むスラリー(ITO粉末1重量部に対してメチルセルロース(東京化成工業(株)製)0.1重量部を含む10重量%水分散液)を塗布することにより形成された多孔質層(厚み5μm)とで構成された基板にさらにスパッタリング法により白金を3.5nmの厚みで被覆した電極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製し、評価した。
【0127】
(実施例3)
多孔質層を有する対極として、ITO付ガラス基板と、このITO層上に白金担持炭素粉末(石福金属興業(株)製、IFPC40−II)を含むスラリー(白金担持炭素粉末1重量部に対してメチルセルロース(東京化成工業(株)製)0.1重量部を含む10重量%水分散液)を塗布することにより形成された多孔質層(厚み5μm)とで構成された電極を用いたこと以外は、実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製し、評価した。
【0128】
(実施例4)
実施例1において、対極として、非多孔質構造の電極[ITO付ガラス基板(Luminescence Technology社製 サイズ25mm×25mm、ITO層の厚み0.14μm)と、このITO層上にスパッタリング法により形成された白金層(白金層厚み3.5nm、電極面積6.25cm
2/g)とで構成された電極]を用いたこと以外は、実施例1と同様にして色素増感太陽電池を作製し、評価した。
【0129】
実施例で得られた各色素増感太陽電池について、出力特性を
図1に、遮光後の開放電圧変化を
図2に示す。なお、遮光はソーラーシミュレータのランプを消すことで行った。図から明らかなように、実施例では光電変換特性と蓄電機能を備えていた。中でも、対極として多孔質層を有する電極を用いた色素増感太陽電池(実施例1〜3)では、高い蓄電機能を有することがわかった。