【実施例】
【0025】
溶媒実験
材料
生MMA製品の貯蔵タンクに例示される、不飽和酸エステルの固形残留物の代表的なものは、ポンプの排出口におけるろ過器から得られる。固形残留物は、吸引器を用いて真空ろ過される。フィルタから黒〜茶色のゴム状の固体が回収され、6〜8時間風乾される。これにより固形残留物はゴム状の物質から、粉砕可能な硬い物質へ変化する。得られた固体は可溶性実施例で使用する。以下で使用される全ての溶媒は、フィッシャー社製の10%NaOHを除いて、アルドリッチ社製である。
【0026】
可溶性実施例
酢酸、アセトン、メチルスルホキシド(DMSO)、エチルアルコールメチルアルコール、アセトニトリル、エチレングリコール、2−プロパノール(イソプロパノール)、水酸化ナトリウム水溶液、N−メチルピロリドン(NMP)、及びこれらの混合物、の溶媒を、MMAの調製に用いた機器から固形残留物を除去する洗浄液として検査する。試験管内で、固体残留物1グラムに特定の溶媒3グラムを加え、一晩放置する。大型の貯蔵タンクにおいては撹拌を行えない可能性があるため、本溶媒実験においては、あえて撹拌を行わない。
【0027】
有機酸を含有する洗浄液が、不要な固形残留物の溶解に関して最も優れた結果を有する。24時間後、酢酸を使用した試料は、驚くべきことに、試験管を傾けると流動可能なスラリーとなっており、これ以外では、全ての固形残留物が、膨張するか、溶解せずに残っていることが確認される。
【0028】
興味深いことに、水酸化ナトリウム水溶液は、典型的な総合MMA製造工程から得られるスラッジ/重合型固体の溶解には効果的でないことが分かる。メチルエステルの、可溶と推定される対応するカルボン酸塩への加水分解は十分に低速であり、2か月を超えて室温下に置いても、腐食剤25%と重合性の固形残留物との溶液はほぼ溶解されずに維持される。
【0029】
溶解スクリーニング実験では、3倍過剰〜1未満:1(洗浄液:固形残留物)の割合を用いる。3倍過剰は、存在し得る固形残留物のサイズと量を考慮した場合の実際的な限界を表す。例えば、寸法が直径18m、高さ12mの、数年使用した典型的な貯蔵タンクにおいて、底部の固形残留物及びスラッジのレベルは高さ1m以上になり得る。したがって、溶解のために、潜在的に多量の洗浄液が必要となる。
【0030】
酢酸副産物溶液の実験
材料
総合アクリル酸浄化装置から得られる粗製品としての酢酸を、得られた状態のまま用いる。固形残留物は、生MMA製品の貯蔵タンクのポンプの排出口におけるろ過器から得る。
【0031】
図1は、ろ過器から得られた固形残留物の
1H核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。この固体は乾燥され、重水素化酢酸内でNMR試料が調製される。このスペクトルには、1.2〜2.3ppmの強いメチル及びメチレン共鳴を有する、メタクリレート重合体骨格に特有の信号が表れている。メチルエステルの強いメトキシ共鳴は、4.15ppmがピークである。興味深いのは、5.9〜6.8ppmの芳香族領域にみられるピークであり、これらは、使用されているジフェニルジアミン系阻害剤の芳香族プロトンに起因すると考えられる。
【0032】
図2は、重合体のメチレン骨格(52ppm)と、アルキルメチル(17及び19ppm)とを示す、
図1の
1H−NMRの拡大図である。
【0033】
工程
32オンスの広口瓶に、ろ過器から得られた固形残留物175gを乾燥せずに投入し、酢酸350gを加える。機械的撹拌を行わずに、得られた混合物を一晩放置し、更に調査すると相当量の固体が溶解していることが確認された。混合物を更に放置し、24時間後、撹拌及び容器の反転を行うと、固体が酢酸に溶解したことが確認された。
【0034】
実施例1〜4及び比較例1
実施例1:16オンスの広口瓶に、1重量当量の固形残留物(28.1g)、次いで1重量当量の酢酸(28.2g)を投入する。内容物を室温で保管する。24時間後、得られたスラリーでは、固形残留物の大半が溶解しているものの、まだかなりの量が残っていることが示される。
図3は、実施例1における、洗浄液の投入時の写真である。
【0035】
実施例2:16オンスの広口瓶に、1重量当量の固形残留物(21.5g)、次いで2重量当量の酢酸(44.3g)を投入する。内容物を室温で保管する。4〜6時間後、混合物は、容器を傾けたときの混合物の動きから排出可能とみられる、有効なスラッジであった。24時間後、混合物内に固形残留物は視認できない。
【0036】
実施例3:16オンスの広口瓶に、1重量当量の固形残留物(28.3g)、次いで3重量当量の酢酸(83.4g)を投入する。内容物を室温で保管する。4時間未満で、混合物は流動的なスラリーであった。24時間後、混合物内に固形残留物は視認できない。
【0037】
実施例4:1重量当量の固形残留物と、1重量当量の酢酸溶液とのスラリー化した混合物を含む16オンスの広口瓶を、59±1℃で湯煎する。上述の実施例と同様、当初、混合物はあまり流動的でなく、粘度が維持されている。フラスコを撹拌せずに静置する。30分後、容器を湯煎から引き揚げると、均質な混合物として容器内で自由に流動することが確認される。容器を傾けたり回転させたりしても、溶解しない物質は見られなかった。
【0038】
図4は、洗浄液を追加してから15分以内に撮影された実施例1〜3の写真である(向かって左:実施例1、中央:実施例2、右:実施例3)。
【0039】
比較例1では、8オンスの広口瓶に固形残留物5.0gを投入する。続いて、水酸化ナトリウム15gを水100gに溶解して得られる15%の腐食性溶液25gを固形残留物に加え、撹拌した後、撹拌を停止して静置する。24時間後、固形残留物は溶解していない。定期的に撹拌しながら1週間後、固体の大きな塊がフラスコ内に残っている。
【0040】
固形残留物上への洗浄液の積層
材料
総合アクリル酸浄化装置から得られる粗製品としての酢酸を、得られた状態のまま用いる。固形残留物は、生MMA製品の貯蔵タンクのポンプの排出口におけるろ過器から得る。
【0041】
工程
実施例5のスラリーは、固形残留物20.90gを入れた16オンスの容器の壁面に沿って洗浄液15.27gを静かに加えることで得る。実施例6は、固形残留物12.0gを16オンスのフラスコに投入し、フラスコの壁面に沿って洗浄液51.6gをゆっくりと加えることで得る。洗浄液をゆっくり加えるのは、タンクに洗浄液をゆっくり加える様子を模倣するためである。
【0042】
実施例5及び6
実施例5で採用する比率は0.73:1(洗浄液:固形残留物)であり、実施例6で採用する比率は4.3:1である。
図5は、実施例5及び6において、固形残留物に洗浄液を加えた後の写真(左から右、つまり左:実施例5、右:実施例6)である。
図6は、実施例5及び6において、洗浄液の追加から48時間後、固形残留物が視認可能に溶解していることを示す写真(左から右)である。
図7は、洗浄液の追加直後に傾けて回転させた実施例5を撮影した写真である。
図8は、24〜48時間後に実施例5を撮影した写真であり、固形残留物が洗浄液に効果的に溶解され、広口瓶の底に固形残留物が実質的に存在しないことが示されている。
以下に、本願発明に関連する発明の実施形態について列挙する。
[実施形態1]
(メタ)アクリル酸又はエステルの処理に用いる機器から固形残留物を除去する方法であって、
前記固形残留物を、2〜10個の炭素原子を有する有機カルボン酸を含む洗浄液に溶解して、固形残留物スラリーを生成する手順と、
前記機器から前記固形残留物スラリーを除去する手順と、を含む方法。
[実施形態2]
実施形態1に記載の方法であって、前記有機カルボン酸が、酢酸、プロピオン酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、又はこれらの組み合わせである、方法。
[実施形態3]
実施形態1に記載の方法であって、前記洗浄液のpKaが3〜7である、方法。
[実施形態4]
実施形態1に記載の方法であって、前記洗浄液の前記固形残留物に対する割合が0より大きい数:1である、方法。
[実施形態5]
実施形態1に記載の方法であって、前記洗浄液の前記固形残留物に対する割合が1:1である、方法。
[実施形態6]
実施形態1に記載の方法であって、前記洗浄液の前記固形残留物に対する割合が2:1である、方法。
[実施形態7]
実施形態1に記載の方法であって、前記固形残留物スラリーを除去する前に前記固形残留物を前記洗浄液に24時間浸漬する手順を更に含む、方法。
[実施形態8]
実施形態1に記載の方法であって、前記洗浄液がアクリル酸3〜5重量%と水1〜2重量%を更に含む、方法。
[実施形態9]
実施形態1に記載の方法であって、前記洗浄液がアクリル酸の処理から得られる酢酸副生成物溶液である、方法。
[実施形態10]
実施形態1に記載の方法であって、前記固形残留物を洗浄液に溶解する手順が、前記固形残留物を撹拌することを含む、方法。
[実施形態11]
実施形態1に記載の方法であって、前記溶解及び除去手順を、24時間後に繰り返す、方法。
[実施形態12]
実施形態1に記載の方法であって、前記溶解手順が、100℃よりも低い温度で、かつ、大気圧下で行われる、方法。
[実施形態13]
実施形態1に記載の方法であって、前記溶解手順が、40℃よりも低い温度で、かつ、大気圧下で行われる、方法。
[実施形態14]
実施形態1に記載の方法であって、前記溶解手順が、室温で、かつ、大気圧下で行われる、方法。