特許第6082023号(P6082023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サフラン・エアクラフト・エンジンズの特許一覧

特許6082023超音波を使用して弾性特性を測定するための方法
<>
  • 特許6082023-超音波を使用して弾性特性を測定するための方法 図000002
  • 特許6082023-超音波を使用して弾性特性を測定するための方法 図000003
  • 特許6082023-超音波を使用して弾性特性を測定するための方法 図000004
  • 特許6082023-超音波を使用して弾性特性を測定するための方法 図000005
  • 特許6082023-超音波を使用して弾性特性を測定するための方法 図000006
  • 特許6082023-超音波を使用して弾性特性を測定するための方法 図000007
  • 特許6082023-超音波を使用して弾性特性を測定するための方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082023
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】超音波を使用して弾性特性を測定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20170206BHJP
【FI】
   G01N29/04
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-546620(P2014-546620)
(86)(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公表番号】特表2015-500495(P2015-500495A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】FR2012052980
(87)【国際公開番号】WO2013093331
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年12月17日
(31)【優先権主張番号】1161915
(32)【優先日】2011年12月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャテリエ,ジャン−イブ・フランソワ・ロジェ
【審査官】 横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−083797(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0112540(US,A1)
【文献】 米国特許第05447069(US,A)
【文献】 特開2000−221076(JP,A)
【文献】 米国特許第03416365(US,A)
【文献】 特開平06−011385(JP,A)
【文献】 特開2008−232825(JP,A)
【文献】 特開2009−282005(JP,A)
【文献】 特開2004−053288(JP,A)
【文献】 国際公開第99/044051(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
G01B 17/00−17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した表面を有する部品の弾性特性を決定するための方法にして、前記部品内に波を生成するために部品の表面上の衝突点に向かう超音波のビームの放射を含む方法であって、
第1方向Dにおける衝突点での部品の厚さdと、第1方向に対して決定された角度βを形成する第2方向Dの厚さdと、を知ることにより、
第1測定値tは、伝播された縦超音波が前記衝突点から距離dを移動するのに要する時間から得られており、
第2測定値tは、伝播された横超音波が前記衝突点から距離dを移動するのに要する時間から得られており、
材料のヤング率および/またはポアソン比は、縦速度V=d/tおよび横速度V=d/tに基づいて決定され
部品が球体状であるとき、dは直径に相当し、dは前記角度βを形成する弦の長さに相当することを特徴とする、方法。
【請求項2】
超音波のビームが、水など、結合流体を通って放射される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
部品の材料が、等方性である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
材料が、金属またはセラミックである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
角度βが、45°である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
の測定のために、別個の測定が、結合流体を通る波の伝播時間tから、その後、部品および結合流体の双方における伝播時間tから得られており、必要に応じて修正される時間tは、その後、時間tから減算される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊検査方法、および、より詳しくは等方性金属材料の弾性特性を超音波により非破壊的に決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
均質かつ等方的な材料からなる部品の、ヤング率またはポアソン比のような弾性特性を決定することを可能にする利用可能な方法が、恒久的に必要である。湾曲した外面を有する部品に関する方法が、特に必要である。超音波を使用してヤング率を決定することは、平面の部品に対しては既知であるが、外面が湾曲している複雑な部品に対しては、信頼できる結果を得るために送信機および受信機を正確に配置することが難しい。
【0003】
複雑な部品の縦弾性係数―ヤング率―を計算するための既知の手段は、引張試験機の顎の間に配置される亜鈴型の試験片を作り出すことからなっている。しかし、亜鈴型の試験片の生産は、常に可能とは限らないか、またはいくつかの材料に対しては非常に高価になりうる。さらに、試験片の形状は、使用される部品の形状とは、しばしば大きく異なっている。部品を製造する方法によっては、それらの弾性係数の測定は、関連性がないかもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3416265号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願人は、複雑な部品、特に湾曲した形状を有する複雑な部品を検査するための非破壊方法を完成する目的を、自身に設定しており、縦弾性係数およびポアソン比のような弾性特性を決定するために超音波を使用することを提案する。
【0006】
米国特許第3,416,265号明細書は、厚さが既知の材料を通って移動する縦波および横波の測定を使用して、曲面を有しかつ所定の厚さの部品の弾性特性を決定するための方法を開示しているが、異なる方向で2つの厚さを有する部品に対するその適用を教示していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、湾曲した表面を有する部品の弾性特性を決定するための方法にして、前記部品内に波の伝播を生成するように部品の表面上の衝突点(point of impact)に向かう超音波のビームの放射を含む方法であって、
前記衝突点での接線面に対して垂直な第1方向Dにおける衝突点での部品の厚さdと、第1方向に対して決定された角度αを形成する第2方向Dにおける厚さdとを知ることにより、
伝播された縦超音波が前記衝突点から距離dを部品内で移動するのに要する時間tの測定値と、
伝播された横超音波が前記衝突点から距離dを部品内で移動するのに要する時間tの測定値とが得られる、ことを特徴としている。
【0008】
材料のヤング率および/またはポアソン比は、縦速度V=d/tおよび横速度V=d/tに基づいて決定される。
【0009】
好ましくは、超音波のビームは、水などの結合流体を通って放射される。
【0010】
本方法は、好適には、等方性材料からなる部品に適用可能である。
【0011】
より詳しくは、本方法は、球体状の部品に適用可能であり、dは、球体(sphere)の直径に相当しており、dは、前記角度αを形成する弦の長さに相当している。例えば、本方法は、好適には、金属球(metal balls)、特にステンレス鋼からなる金属球の検査に、適用可能である。さらに、本方法は、Si、SiCまたはZrOのようなセラミック材料からなる、ベアリングに用いられる球にとって、特別に価値がある。しかし、本方法は、球体状の部品に限定されるものではなく、部品内の超音波の経路を数学的に予測することができるモデル、特にコンピューターモデルが利用可能である限りにおいて、より複雑な形状に適用することができる。
【0012】
部品に伝播される波が、部品と外部環境との間の境界平面に関連して画定され、縦波および横波の偏りを特定するための基準として役立つことが、思い出されるだろう。これらの波は、境界平面に対して垂直な球欠面内で偏っており、横波は、境界面を通る縦波の伝播によって生成されている。
【0013】
金属サンプルの弾性特性が、縦波および横波の伝播およびそれらの速度に影響しており、同様に、その知識を使用して弾性特性を計算することを可能にしていることが、知られている。微小変形の力学は、縦波Vの伝搬速度および横波Vの伝搬速度を、ヤング率Eおよびポアソン比νに関連する。
【0014】
その関係は、以下のとおりである:
E=ρV2(3V−4V)/(V−V
ν=0.5(V−2V)/(V−V
【0015】
したがって、伝搬速度VおよびVを計算すると、ヤング率およびポアソン比を計算することを可能にするパラメータが利用可能であり、それに基づいて、材料の他の特徴が利用可能である。
【0016】
純粋に例示的かつ非限定的な実施例として与えられた本発明の実施形態の、次に来る詳細な説明の記述を、添付の線図を参照して読むことで、本発明が、より理解されるであろうし、その目的、詳細、特徴、および利点が、より明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】分析される球体に対する超音波トランスデューサの反射モードにおける位置、および球体上での縦超音波の2つの連続反射(successive reflection)の概略図である。
図2】球体の底面での境界面エコーおよび反射を伴う、図1に示される場合においてトランスデューサによって作り出される信号における変動のオシロスコープ上のトレースを示す図である。
図3】球体上の送信機に対して横方向に配置されている受信トランスデューサに向かって45°で伝搬する横波を作り出すための送信トランスデューサの2つの連続位置を示す正確な縮尺ではない略図である。
図4】集束送信トランスデューサおよび集束受信トランスデューサを使用する組立体の実施形態を示す図である。
図5】トランスデューサから放射されて、球体の表面で反射される信号のトレースの図である。
図6】送信トランスデューサから受信トランスデューサに送信される信号のトレースの図である。
図7】入射角の関数として計算される横波の速度における変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を説明するために、本方法は、ステンレス鋼球体の検査に適用されている。ここで説明されている実施例において、球体は、次の特徴を有している:
直径=19.050mm
質量=28.1865g
密度ρ=7,789.2kg/m
【0019】
縦波の伝搬速度の測定
トランスデューサ2は、球体1と一緒に結合流体3内に沈められており、結合流体は水である。トランスデューサ、例えば、6インチの焦点距離を有するPanametrics V322−6 10MHzトランスデューサは、制御するためのかつ信号を受信するためのワークステーションに電気的に接続されている。ワークステーションは、示されていない。トランスデューサは、送受信モードに配置されており、球体の中心を通過する軸に沿って配向されている。
【0020】
図2に示されるように、時間の関数として作り出される超音波の振幅のグラフから、前記波の伝搬時間tL1は、トランスデューサ2と球体の表面の片側での境界面との間で見られており、伝搬時間tL2は、トランスデューサ2とトランスデューサから見た球体の底面との間で見られる。
【0021】
図2のグラフで特定される伝搬時間は、以下のとおりである:
L1=205.517μs
L2=211.897μs
【0022】
したがって、縦波Vの伝搬速度は、移動時間に対する球体の直径の2倍の比である:
=2×直径/(tL1−tL2)、本実施例では、38.10×10−3/6.380×10−6=5,971.8m/sである。
【0023】
横波の速度Vの測定
使用される原理は、Snell−Descartesの法則の原理に従うモード変換により、縦伝播波の方向Dに対して所定角度βを形成する方向Dにおける横波Vの伝搬の原理である。
【0024】
角度βを形成する横波の伝搬を作り出す正確な入射角θ、およびこの横波の球体における移動時間tが決定される。選ばれる角度は、45°である。
【0025】
図3を参照して、本方法を説明する。この図面では、センサおよび球は、正確な縮尺ではなく、球は、センサに対して拡張されている。tの測定のために、結合流体を通る波の伝播時間tと、部品および結合流体の双方における伝播時間tとが、別個に測定される。必要に応じて修正される時間tは、その後、時間tから減算される。
【0026】
放射トランスデューサ2が、結合流体内に球体と一緒に配置されており、I3−1004−R、10MHz 1” Φ0.25”と称されるようなトランスデューサのような受信トランスデューサ4が、方向Dと球体との交点で横に配置されている。
【0027】
横波の伝搬速度は、このように、超音波の衝突点と、この方向Dにおける球体との交点と、を隔てる距離dの比率である。d=R×21/2
【0028】
第1ステップにしたがって、波の正確な移動時間tが、センサの表面から球体への法線までの所定角度θに対して、測定される。結合流体は、エコーの重ね合せがないことを保証する。
【0029】
送受信モードにトランスデューサを配置することによって、反射信号の最大振幅が決定される。この最大振幅は、信号が、当該角度θで球体に対して垂直であることを示している。我々が送受信モードにあるとき、移動時間は、オシロスコープスクリーン上で測定される時間の半分である。
【0030】
その後、球体の頂点にビームをもたらすように、センサが水平に変位される。その変位は、球体の半径Rの関数R×tgθとして計算される。
【0031】
第2ステップでは、受信トランスデューサ4までの波の移動時間tが測定される。
【0032】
横波の速度は、この波が移動する距離dのその距離を移動するのに要する時間tに対する比率である。移動時間の測定は、トランスデューサが水平に移動されているので、波が短距離を移動するということのため、調整されなければならない。
【0033】
時間tに関して経路Aの調整は、以下のように表現される:
=R×(1−1cosθ)/cosθ×Vwater
ここで、Vwaterは、水中での伝搬速度である。
【0034】
測定時間tが、トランスデューサから球体の表面までの経路に対応する時間(t−t)と、弦の長さdに沿って移動するのに要する時間tとの合計であり、したがって、移動時間tは、以下のように表現される:
=t−(t−t
【0035】
横波の速度は、移動の経路d=R√2の、この距離を移動するのに要する時間に対する比率である:V=d/t
【0036】
19°の角度θについては、次の値が得られている(1nsまで正確なデジタルオシロスコープで測定された時間):
water=1486.5m/s
2×t=202.63μs (図5
=105.02μs (図6
変位:R×tgθ=3.279mm
=R(1−cosθ)/cosθ×Vwater=0.3692μs
d=√2×R=13.470mm
=3306.2m/s
【0037】
角度θの値19°は、推定値である。角度θの正確な値を得るために、この推定値のまわりで測定される。したがって、17°と23°の間の範囲に含まれている角度θの値に対して、上述の作業が繰り返される。計算された速度が、繰り返される。
17°において V=3323.7m/s
18°において V=3326.1m/s
19°において V=3306.2m/s
20°において V=3284.4m/s
21°において V=3304.8m/s
22°において V=3302.3m/s
23°において V=3314.5m/s
【0038】
得られかつ図7で再現されている曲線は、最小速度の点を有する。最小点に対応する速度は、2つのトランスデューサを隔てる距離に対する移動の最短経路に関連している。
【0039】
したがって、V=3284.4m/s
【0040】
音波の伝播速度に対して得られている値は、部品の特有のパラメータを計算することを可能にする。
【0041】
鋼球の機械的特性の計算
ρ=7789.2kg/m
=5971.8m/s
=3284.4m/s
E=ρV2(3V−4V)/(V−V)=215.6GPa
ν=0.5(V−2V)/(V−V)=0.283
【0042】
窒化ケイ素Siからなる球の機械的特性の計算
ρ=3166.5kg/m
=11202m/s
=6041.8m/s
E=ρV2(3V−4V)/(V−V)=299.3GPa
ν=0.5(V−2V)/(V−V)=0.295
【0043】
正確な測定を得ることを可能にするために、非常に短い焦点距離と、したがって球を中心に配置することを可能にする小さな曲率半径とを有する受信トランスデューサ4を使用することが望ましいことに注目すべきである。その結果、球の軸は、トランスデューサの幾何学的軸と完全に一致し、その好ましい構成が図4に示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7