(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082034
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】酢酸とジメチルエーテルを製造する触媒およびプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 27/00 20060101AFI20170206BHJP
C07C 51/09 20060101ALI20170206BHJP
C07C 41/16 20060101ALI20170206BHJP
C07C 43/04 20060101ALI20170206BHJP
C07C 53/08 20060101ALI20170206BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20170206BHJP
【FI】
C07C27/00
C07C51/09
C07C41/16
C07C43/04 D
C07C53/08
!C07B61/00 300
【請求項の数】29
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-558116(P2014-558116)
(86)(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公表番号】特表2015-513536(P2015-513536A)
(43)【公表日】2015年5月14日
(86)【国際出願番号】EP2013053528
(87)【国際公開番号】WO2013124404
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】12250049.9
(32)【優先日】2012年2月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001798
【氏名又は名称】ビーピー ケミカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BP CHEMICALS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,トーマス エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ロー,ディビッド ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,ブルース レオ
【審査官】
井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/027105(WO,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2009−0103512(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 41/00−53/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールと酢酸メチルの混合物から酢酸とジメチルエーテルを同時製造するプロセスであって、該プロセスは、反応帯域において200から260℃の温度でメタノール供給原料と酢酸メチル供給原料を触媒組成物と接触させて、酢酸とジメチルエーテルを製造することからなり、該触媒組成物は、10員環を有する少なくとも1つのチャネルからなる2次元チャネルシステムを有し、シリカ:アルミナのモル比が少なくとも22:1であるゼオライトからなるメタノールと酢酸メチルの混合物から酢酸とジメチルエーテルを同時製造するプロセス。
【請求項2】
ゼオライトが、更に8員環を有する少なくとも1つのチャネルからなる請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ゼオライトが、FER,HEU、MFS、DAC、STI、NES,MWW及びTERからなる群から選ばれる立体網状構造を有する請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ゼオライトが、FERの立体網状構造を有する請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
FERの立体網状構造を有するゼオライトが、フェリエライトである請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
ゼオライトが水素型である請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
ゼオライトのSARは、22から90の範囲にある請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
ゼオライトのSARは、30から90の範囲にある請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
ゼオライトのSARは、30から60の範囲にある請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
プロセスが、220から250℃の範囲の温度で実施される請求項1〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
供給原料のメタノールと酢酸メチルの少なくとも1つが、アセトンを含む請求項1〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
アセトンは、供給原料の合計量(再循環物を含む)に対して0より大きく5モル%までの合計量で、供給原料のメタノールと酢酸メチルの少なくとも1つに存在する請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
供給原料のメタノールと酢酸メチルの少なくとも1つは、アセトンを含み、供給原料のメタノールと酢酸メチルを、210から250℃の温度で、SARが22から90の範囲にある水素型のフェリエライトであるゼオライトと接触させる請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
アセトンが、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して0より大きく5モル%までの合計量で供給原料のメタノールと酢酸メチルの少なくとも1つに存在する請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
アセトンが、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して0.5から5モル%までの合計量で供給原料のメタノールと酢酸メチルの少なくとも1つに存在する請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
ゼオライトのSARは、30から90の範囲にある請求項13に記載のプロセス。
【請求項17】
ゼオライトのSARは、30から60の範囲にある請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
供給原料の酢酸メチルは、ジメチルエーテルをゼオライト触媒によりカルボニル化して酢酸メチルを作る方法により誘導される請求項1〜17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
触媒組成物は、少なくとも1つの無機酸化物結合剤を含む請求項1〜18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
結合剤がアルミナである請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
触媒組成物が押出成型物の形体である請求項19または20に記載のプロセス。
【請求項22】
メタノールと酢酸メチルのモル比は、1:0.1から1:40の範囲にある請求項1〜21のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項23】
水は、反応帯域に導入される請求項1〜22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
水は、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して、0.1から60モル%の範囲の量で導入される請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
水は、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して、3から40モル%の範囲の量で導入される請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
水は、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して、5から30モル%の範囲の量で導入される請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
プロセスが気相で行われる、請求項1〜26のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項28】
200から260℃の温度で行われる、メタノールと酢酸メチルの混合物から酢酸とジメチルエーテルを同時製造するプロセスにおいて、寿命が改良された触媒組成物であって、該触媒組成物は、10員環を有する少なくとも1つのチャネルからなる2次元チャネルシステムを有し、シリカ:アルミナのモル比が少なくとも22:1であるゼオライトからなる触媒組成物。
【請求項29】
ゼオライトがフェリエライトであり、アルミナ結合剤で結合されている請求項28に記載の触媒組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温下、シリカ対アルミナのモル比が高いゼオライトからなる触媒組成物の存在下、メタノールと酢酸メチルから酢酸とジメチルエーテルを同時製造するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライト触媒を使ってメタノールの脱水を行い、ジメチルエーテルを作ることは公知である。水素型のフェリエライトを触媒として使ってメタノールの脱水を行うことは、例えば、US2009/0326281A,“メタノール転換における生成物選択性に対する、ゼオライトの触媒機能の影響”Seung−Chan Baekら、Energy&Fuels,2009,23(2),593−598ページと、“メタノールからジメチルエーテルへの液相脱水のための最適触媒の決定”、Khandan,Nら、Applied Catalysis:General,vol.349,Issues1−2,31 October 2008、6−12ページなどの文献に述べられている。
【0003】
韓国特許出願公開、KR2009/131560Aには、フェリエライト系触媒または、アルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンを部分導入して得られた触媒の存在下、200−350℃、1−50気圧でメタノールの脱水を行いジメチルエーテルを製造することが述べられている。
【0004】
韓国特許出願公開、KR2009/0103512には、一定含有率のリン酸アルミニウム結合剤を含むゼオライト触媒の存在下、メタノールの脱水を行いジメチルエーテルを製造することが述べられている。
【0005】
触媒は、メタノールと酢酸メチルの脱水/加水分解転換用に公知である。米国特許6,521,783には、同じでも異なっていても良いエステル加水分解触媒とアルコール脱水触媒を含む加水分解/脱水反応器に、酢酸、酢酸メチル、メタノール、ジメチルエーテルおよび水を供給するプロセスが述べられている。アルコール脱水触媒は、固体酸、ヘテロポリ酸、酸性ゼオライト、チタニアまたはシリカ担持アルミナ、リン酸アルミニウムまたはシリカ−アルミナ上に担持された酸化タングステンから選ぶことができる。エステル加水分解触媒は、酸性イオン交換樹脂、酸性ガンマアルミナ、フッ化アルミナ、硫酸塩またはタングステン酸塩担持ジルコニア、チタニアまたはシリカ担持アルミナ、リン酸アルミニウム、シリカ−アルミナ上に担持された酸化タングステン、クレー、担持された鉱酸、ゼオライト、ヘテロポリ酸から選ぶことができる。該プロセスに関する実施例では、触媒の性質は特に述べられていない。
【0006】
WO2011/027105には、ゼオライト触媒の存在下、140から250℃で、メタノールと酢酸メチルを酢酸とジメチルエーテル化合物に転換する方法が述べられており、該ゼオライト触媒は、10員環を有する少なくとも1つのチャネルからなる2次元チャネルシステムを有する。この形のものとして特定されるゼオライトとしては、フェリエライト、ZSM−35,クリノプチロライトなどである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、ゼオライト触媒の存在下、メタノールと酢酸メチルの脱水と加水分解により酢酸とジメチルエーテルを同時製造するに際して、フェリエライトなどのゼオライト触媒の触媒活性が経時的に失われ、それが結果的に生成物、酢酸とジメチルエーテルの生産性の喪失に至ることが分かっている。触媒のそのような失活では、費用と時間のかかる再生法により触媒を賦活化しなければならない。
【0008】
通常、脱水と加水分解反応は、少なくとも140から約250℃の温度で行われる。一般的には、反応温度を高めると生産速度がより速くなるので、有利である。しかし、反応温度を上昇すると、反応に役立つゼオライト触媒の活性がずっと早く失われることも分かっている。
【0009】
また、原料ソースにもよるが、供給原料のメタノールおよび/または酢酸メチルは、アセトンなどの不純物をいくつか含んでいることもある。現在、そのような不純物が特に比較的高濃度で存在する場合は、ゼオライト触媒の毒になることが分かっている。もし、ゼオライト触媒との接触に先立って、そのような不純物を供給原料のメタノールおよび/または酢酸メチルから除去する工程が無ければ、それらにより触媒が失活する速度が増す。
【0010】
従って、供給原料のメタノールと酢酸メチルから酢酸とジメチルエーテルを同時製造する際に使用されるゼオライト触媒の失活速度を低下させること、特に高い反応温度および/またはアセトンなどの不純物の存在下でゼオライト触媒の失活速度を低下させることは、極めて望ましい。
【0011】
現在、上記要約した有害作用を、10員環を有する少なくとも1つのチャネルからなる2次元チャネルシステムを有し、シリカ:アルミナのモル比が高いゼオライトを用いて脱水と加水分解反応を行うことにより、意外にも改善できることが分かっている。特に、上記のゼオライトが、高い反応温度および/またはアセトンの存在下で、失活に対する抵抗性が増すことが分かっている。上記特性を有するゼオライトを採用すると、その結果としてメタノールと酢酸メチルの脱水と加水分解のプロセス、特に供給原料がアセトンを含んでいるプロセスにおいてゼオライト触媒の実効寿命が上昇することは、有利である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は、メタノールと酢酸メチルの混合物から酢酸とジメチルエーテルを同時製造するプロセスであって、該プロセスは、反応帯域において200から260℃の温度でメタノール供給原料と酢酸メチル供給原料を触媒組成物と接触させて、酢酸とジメチルエーテルを製造することからなり、該触媒組成物は、10員環を有する少なくとも1つのチャネルからなる2次元チャネルシステムを有し、シリカ:アルミナのモル比が少なくとも22:1であるゼオライトからなる、プロセスを提供する。
【0013】
さらに本発明は、200から260℃の温度でメタノールと酢酸メチルの混合物から酢酸とジメチルエーテルを同時製造するプロセスにおいて、寿命が改良された触媒組成物を提供するが、該触媒組成物は、10員環を有する少なくとも1つのチャネルからなる2次元チャネルシステムを有し、シリカ:アルミナのモル比が少なくとも22:1であるゼオライトからなる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書の範囲では、“ゼオライト”の用語は、10員環を有する少なくとも1つのチャネルからなる2次元チャネルシステムを有するゼオライトを意味する。
【0015】
ゼオライトは自然界に存在するものであるが、合成することも可能である。ゼオライトは、酸素原子と四面体型に配位するアルミニウムとシリコンの3次元四面体構造を有する、アルミノシリケート形の結晶物である。これらの四面体は、共有する酸素原子により互いに結合している。網状結晶構造で作られるチャネルシステムにより、ゼオライトを触媒として使用することが可能になり、0、1、2、3次元チャネルシステムがある。本発明で有用と考えられるゼオライトは、2次元チャネルシステムを有する。国際ゼオライト協会では、3文字表記法を採用して、ゼオライトをその立体網状構造に従い分類する。ゼオライトに関する情報、その立体網状構造とチャネルシステムについては、Atlas of Zeolite Framework Types, C.H. Baerlocher, L.B. MccuskerおよびD.H. Olson,改良6版、Elsevier,Amsterdam,2007に表されており、www.iza−online.orgの国際ゼオライト協会のウェブサイトでも入手できる。
【0016】
本発明では、ゼオライトの2次元チャネルシステムは、10員環を有する少なくとも1つのチャネルからなり、4、5、6、8、10、12、14または16員環を有する1つ以上のチャネルをさらに有してもよい。
【0017】
好ましくは、本発明で使用するゼオライトは、10員環を有する少なくとも1つのチャネルおよび8員環を有する少なくとも1つのチャネルからなる2次元チャネルシステムを有する。そのようなゼオライトの例としては、立体網状構造 FER(例えば、フェリエライト、ZSM−35、ISI−6およびFU−9),HEU(例えばクリノプチロライト)、MFS(例えばZSM−57)、DAC(例えばダキアルダイト)およびSTI(例えば束沸石)のゼオライトがある。
【0018】
本発明の使用に適する他のゼオライトとしては、NES(例えばNU−87)、MWW(例えばMCM−22)、TER(テラノヴァ沸石)から選ばれる立体網状構造を有するゼオライトがある。
【0019】
好ましくは、ゼオライトは、FER、HEUおよびMFSから選ばれる立体網状構造を有しており、さらに好ましくは、立体網状構造FERを有する。
【0020】
本発明で使用するゼオライトとしては、フェリエライト、ZSM−35、ZSM−57およびクリノプチロライトが適している。好ましくは、ゼオライトは、フェリエライトおよびZSM−35から選ばれるが、より好ましくは、ゼオライトはフェリエライトである。
【0021】
ゼオライトの2次元チャネルシステムは、相互接続チャネルまたは非相互接続チャネルからなってもよいが、好ましくは相互接続チャネルからなる。
【0022】
ゼオライトは、多くの供給者、例えばZeolyst International Inc.やZeochem AGなどから市販されているが、合成品もある。市販品や合成品の型体としては、水素型や、アルカリ金属型やアンモニウム型などの水素前駆体型がある。
【0023】
本発明で使用するゼオライトは、好ましくは水素型またはアンモニウム型であるが、最も好ましくは水素型である。
【0024】
水素前駆体型のゼオライト(アンモニウム型またはアルカリ金属型)は、公知の技術により容易に水素型に転換することができる。アルカリ金属型は、アルカリ金属カチオンと交換するアンモニウムイオンを含む水溶液と単に接触させるだけで、アンモニウム型に転換することができる。アンモニウム型を焼成すれば、水素型になる。
【0025】
適当なアンモニウム塩を使用して、アンモニウムイオンの水溶液を調製することができる。適当なアンモニウム塩の例としては、硝酸アンモニウムや塩化アンモニウムがある。
【0026】
ゼオライトをアンモニウム塩の水溶液と接触させた後、ゼオライトを水洗してから乾燥し、アルカリ金属がついていた部位にアンモニウムイオンがあるゼオライトを製造することができる。
【0027】
乾燥に続いて、ゼオライトを焼成してアンモニウムカチオンを水素カチオンに転換することができる。
【0028】
本発明で使用するゼオライトのシリカ対アルミナモル比は、容積比または全体比である。これは、多くの化学分析技術のいずれか1つにより求めることができる。そのような技術としては、X線蛍光分析、原子吸光分析およびICP(誘導結合プラズマ質量分析)がある。上記すべての技術で、実質的に同じシリカ対アルミナのモル比の値が得られる。
【0029】
天然または合成ゼオライトのシリカ対アルミナの容積モル比(SARとも言う)は、変わる。例えば、フェリエライトなどのゼオライトのSARは、10から90以上の低い範囲である。現在、本発明の脱水/加水分解プロセスでは、SARが比較的高いゼオライトは失活がより遅いので、寿命がより長くなることが分かっている。本発明で使用できるゼオライトのSARは、22より大きい。本発明で使用するゼオライトのSARは、22から90の範囲にあり、22から60、30から90または30から60などの範囲にあるのが適切である。
【0030】
ゼオライトのSARを上昇させる技術は、公知である。そのような技術としては、脱アルミニウムがある。代表的な脱アルミニウムの方法としては、ゼオライトを水蒸気と鉱酸に交互に接触させるか、またはゼオライトをジカルボン酸と接触させて、水蒸気処理をすることがある。これらの方法により、ゼオライトの網状構造からアルミニウムを除去し、それによりゼオライトのSARを高める。
【0031】
本発明の具体的な実施態様では、ゼオライトは立体網状構造FERを有しており、好ましくはフェリエライトである;特に、ゼオライトは、FERゼオライトまたはフェリエライトの水素型であり、そのSARは、22から90の範囲にあり、22から60、30から90または30から60などの範囲にあるのが適切である。
【0032】
別の実施態様では、ゼオライトは立体網状構造FERを有しており、好ましくはフェリエライトであり、より好ましくは水素型のフェリエライトであり、SARは30から55の範囲にある。
【0033】
ゼオライト触媒は、市販されているかまたは微結晶粉として合成可能である。粉末は明確な機械的強度を持たないので、その実際の用途は限られる。ゼオライト集合物、例えばピルや押出成型物などの形成物を作ることにより、ゼオライトに械的強度を付与することが出来る。押出成型物は、ゼオライトを結合剤の存在下に押出して、得られた押出成型物を乾燥、焼成することにより形成することが出来る。
【0034】
本発明で使用する触媒組成物は、少なくとも1つの無機酸化物結合剤からなるのが好適である。好適な無機酸化物結合剤の例は、シリカ、アルミナ、アルミナ−シリケート、マグネシウムシリケート、マグネシウムアルミニウムシリケート、チタニア、ジルコニアおよびクレー、特にアルミナ、アルミナ−シリケートまたはシリカ結合剤である。好適なアルミナの例としては、ベーマイト型アルミナやガンマアルミナがある。
【0035】
触媒組成物中に存在する無機酸化物結合剤の量は、10から90wt%、好ましくは15から60wt%(ゼオライトと結合剤の合計重量に対して)の範囲であるのが適切である。
【0036】
ゼオライト粉末はまた、結合剤を使わずに粒子にすることができる。代表的な触媒粒子としては、断面が円形であるか、または触媒粒子の中心部から外向きに延びている複数の弧状の突出を有する押出成型物がある。
【0037】
本発明の実施態様では、触媒組成物はフェリエライトからなり、好ましくは水素型であり、アルミナ結合剤で結合されており、好適には押出成型物の形である。
【0038】
本発明に従い、供給原料のメタノールおよび酢酸メチルは、ゼオライト触媒組成物と接触して酢酸とジメチルエーテルを同時製造する。本発明で使用するゼオライトは、メタノールの脱水と酢酸メチルの加水分解に触媒作用を及ぼす。メタノールの脱水と酢酸メチルの加水分解反応は、式(1)と(2)でそれぞれ表すことが出来る:
【化1】
【0039】
供給原料のメタノールおよび酢酸メチルは、単独の供給原料として反応帯域に導入される。しかし、供給原料のメタノールおよび酢酸メチルは、別々の供給原料として反応帯域に導入するのが好ましい。
【0040】
酢酸メチルに対するメタノールのモル比は、希望する比で構わないが、1:0.1から1:40、例えば1:1から1:30が好適である。
【0041】
加水分解反応には、反応物として水が必要である。水は、それを生成する脱水反応から得ることができる。しかし、水をプロセス中に添加するのが好ましい。水は、供給原料のメタノールおよび/または酢酸メチルに添加するか、または別の供給原料として反応帯域に導入してもよい。酢酸メチル、メタノールおよび水の合計量に対する水の量は、0.1から60モル%の範囲にあり、3から40モル%の範囲などであり、例えば5から30モル%の範囲にあるのが好適である。
【0042】
メタノールと酢酸メチルは商業生産されている。メタノールは、合成ガスの接触転換により工業規模で生産するのが代表的である。酢酸メチルは、例えば、メタノールで酢酸をエステル化することにより工業生産されている。酢酸メチルはまた、ゼオライト触媒の存在下、ジメチルエーテルの無水カルボニル化によっても製造することが出来る。
【0043】
本発明で使用する供給原料のメタノールおよび酢酸メチルの供給源にもよるが、酢酸、ジメチルエーテル、水及びアセトンなどの副生物のいくつかは、低含有量なら存在しても構わない。アセトンは、例えば、ジメチルエーテルのゼオライト触媒による無水カルボニル化から誘導される酢酸メチル中に存在してもよいし、合成ガスの接触転換により製造されるメタノール中に存在してもよい。上記のプロセスで作られるメタノールと酢酸メチルの中に存在するアセトンの合計量は変動するが、例えば、0.005から5モル%の量である。
【0044】
アセトンの沸点は酢酸メチルとメタノールに近いので、単純な蒸留法でアセトンをこれらの化合物から分離するのは難しい。しかし、出願人は、比較的低レベル(ppm)でも、アセトンはフェリエライトなどのゼオライト触媒のいくつかの失活に有害であり、触媒をより早く失活させることを発見した。このことは、反応温度が高まるにつれ特に起こり得る。従って、メタノールと酢酸メチルを転換してジメチルエーテルと酢酸を生成するプロセスであって、メタノールと酢酸メチルの少なくとも1つがアセトンを含むプロセスにおいて、失活が低い触媒であることが極めて望ましい。
【0045】
本発明で使用するゼオライトは、その失活率の低下によって示されている通り、高反応温度であってもアセトンに耐えうることが分かっている。特に、本発明で使用するゼオライトは、反応帯域に供給される合計原料(再循環物を含む)に対して0より大きく5モル%までのレベルのアセトンに耐えうることが分かっている。さらに、本発明で使用するゼオライトは、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して0より大きく5モル%までのレベルのアセトンおよび高反応温度に耐えうることが分かっている。
【0046】
さらに本発明は、反応帯域において200から260℃の温度で供給原料のメタノールと酢酸メチルを、触媒組成物と接触させて酢酸とジメチルエーテルを製造することにより、メタノールと酢酸メチルの混合物から酢酸とジメチルエーテルを同時製造するプロセスにおいて、寿命が改良された触媒組成物を提供するが、該触媒組成物は、10員環を有する少なくとも1つのチャネルからなる2次元チャネルシステムを有し、シリカ:アルミナのモル比が少なくとも22:1であるゼオライトからなり、メタノールと酢酸メチルの少なくとも1つは、アセトンを含む。
【0047】
このように、本発明の実施態様においては、供給原料のメタノールと酢酸メチルの少なくとも1つは、アセトンを含む。アセトンは、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して0より大きく5モル%までの量、例えば、0.5から5モル%の量で反応帯域に導入されてもよい。
【0048】
本発明で使用する供給原料の酢酸メチルは、ジメチルエーテルのゼオライト触媒による無水カルボニル化により酢酸メチルを製造するプロセスから誘導されるが、アセトンを、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して0より大きく5モル%までの量、0.5から5モル%などの量で含んでもよい。
【0049】
あるいはまた、本発明で使用する供給原料のメタノールは、合成ガスを接触転換してメタノールを製造するプロセスから誘導することができ、アセトンを、反応帯域供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して0より大きく5モル%までの量、0.5から5モル%などの量で含んでもよい。
【0050】
アセトンが、供給原料の酢酸メチルとメタノールの少なくとも1つに存在する場合、水は、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して、0.1から60モル%の範囲、3から40モル%の範囲などで、例えば5から30モル%の範囲の量で反応帯域に導入されるのが好ましい。
【0051】
本発明の具体的な実施態様では、供給原料の酢酸メチルとメタノールの少なくとも1つは、アセトンを、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して、例えば0より大きく5モル%までの量、0.5から5モル%などの量で含み、使用するゼオライト触媒は、立体網状構造FERを有し、例えばフェリエライトであり、好適にはFERゼオライトまたはフェリエライトの水素型であり、そのSARは、22から90の範囲にあり、30から90、22から60および30から60などの範囲にある。
【0052】
別の実施態様では、供給原料の酢酸メチルとメタノールの少なくとも1つは、アセトンを、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して、例えば0より大きく5モル%までの量、0.5から5モル%などの量で含み、使用するゼオライト触媒は、立体網状構造FERを有し、例えばフェリエライトであり、好適にはFERゼオライトまたはフェリエライトの水素型であり、そのSARは、22から90の範囲にあり、30から90、22から60および30から60などの範囲にあり、水は、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して、0.1から60モル%の範囲、例えば3から40モル%の範囲、5から30モル%などの範囲の量で反応帯域に導入される。
【0053】
発明のさらに別の実施態様では、ゼオライトはフェリエライトであり、好ましくは水素型のフェリエライトであり、そしてアセトンは、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して0より大きく5モル%までの量、0.5から5モル%などの量で反応帯域に導入される。この実施態様では、フェリエライトのSARは、30から55の範囲にある。水は、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して、0.1から60モル%の範囲、例えば3から40モル%の範囲で、5から30モル%などの範囲の量で反応帯域に導入される。
【0054】
不活性ガス、例えば窒素ガスやヘリウムガスなどの希釈剤を、工程中に供給してもよい。
【0055】
本プロセスは、気相または液相工程、例えば固定床法またはスラリー相法で反応帯域中で実施される。
【0056】
本プロセスが気相で行われる場合、供給原料は、反応帯域に入る前は液相でもよい。しかし、ゼオライトと接触する前に、液相成分は、例えば予熱器などを使って気化しなければならない。
【0057】
本プロセスは、200から260℃、例えば200から250℃、220から250℃および210から250℃などの温度で行われる。
【0058】
本発明の具体的な実施態様では、酢酸とジメチルエーテルを同時製造する本プロセスは、供給原料のメタノールと酢酸メチルを、220から250℃の範囲、または210から250℃の範囲の温度で、フェリエライトなどの立体網状構造FERのゼオライトと接触させることにより行われるが、該供給原料の少なくとも1つはアセトンを、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して0より大きく5モル%までの量、0.5から5モル%などの量で含む場合があり、ゼオライトは、特に水素型のFERゼオライトまたはフェリエライトであり、そのSARは、22から90の範囲にあり、30から90、22から60および30から60などの範囲にあるのが好ましい。
【0059】
別の実施態様では、酢酸とジメチルエーテルを同時製造する本プロセスは、供給原料のメタノールと酢酸メチルを、210から250℃の温度で、水素型のフェリエライトであるゼオライトと接触させることにより行われるが、該供給原料の少なくとも1つはアセトンを、反応帯域に供給される原料の合計量(再循環物を含む)に対して0より大きく5モル%までの量、0.5から5モル%などの量で含み、フェリエライトのSARは、22から90などの範囲、30から90、22から60または30から60などの範囲にある。
【0060】
本プロセスは、大気圧または大気圧より大きな圧力で行ってもよい。本プロセスを液相で行う場合は、生成物のジメチルエーテルを溶液中に維持するのに充分な全反応圧で行うのが好ましい。従って、圧力は少なくとも40barG、40から100barG、好適には40から60barGである。プロセスを気相で行う場合は、好適な操作圧力は大気圧から30barG、2から20barGの範囲にある。
【0061】
ガス空間速度(GHSV)は、500から40,000h
−1、1,000から25,000h
−1など、例えば1,000から15,000h
−1の範囲が好適である。
【0062】
液体空間速度(LHSV)は、0.2から20h
−1、0.5から10h
−1など、例えば0.5から5h
−1または2から8h
−1の範囲が好適である。
【0063】
本プロセスは、連続式またはバッチ式のどちらで行ってもよいが、連続式が好ましい。
【0064】
本発明の生成物流は、酢酸とジメチルエーテルからなる。生成物流は、水、未反応のメタノールと未反応の酢酸メチルを含んでもよい。酢酸とジメチルエーテルは、蒸留などの通常の精製法で生成物流から回収することができる。ジメチルエーテルは一般に、塔頂留分として蒸留塔から回収され、酢酸は、通常酢酸メチル、メタノールや水と共に塔底留分として蒸留塔から回収される。酢酸は、さらに蒸留を行ってこれらの化合物から分離することができる。回収ジメチルエーテルは外販してもよいし、酢酸メチルを製造する炭酸化法の供給原料として使用することもできる。酢酸は外販してもよいし、酢酸ビニルや酢酸エチルの製造などの他の下流プロセスにおける供給原料として使用することもできる。
【0065】
以下の未限定の実施例を参照しながら、本発明を説明する。
【実施例1】
【0066】
SARが20、30、40、50および55の一連の水素型フェリエライトを、対応するアンモニウム型フェリエライト(Zeolyst International Inc.より供給)を空気中、500℃で3時間焼成することにより調製した。
【実施例2】
【0067】
実施例1で調製した各フェリエライト触媒0.015gを圧縮し、100から160μの粒子にふるい分けし、反応器に充填して、150μlの炭化ケイ素で覆った。窒素ガスとヘリウムガスをそれぞれ、4.4ml/分と0.9ml/分の速度で反応器に流して、ガス空間速度を16,000/hとした。圧力を10barGに上げ、反応器温度を180℃に調整した。50mol%の酢酸メチル、30mol%のメタノールと20mol%の水からなるガス状供給原料を、4,000/hのガス空間速度で触媒床に通して、180℃の反応器温度で48時間保持し、その後温度を220℃に上げて120時間保持してから180℃に下げて36時間保持した。反応器からの出口留分を、2つのTCDと1つのFID検出器を備えたInterscience Traceガスクロマトグラフで定期的に分析したが、酢酸とジメチルエーテルからなっていた。フェリエライト触媒の不活性化を、220℃で120時間の期間にわたる活性の減少により計算した。触媒の相対不活性化率を、表1に示す。相対不活性化率が高くなるほど、触媒の不活性化は遅くなる。
【0068】
【表1】
【0069】
表1から分かるように、SARのより高い触媒を用いると、触媒の不活性化率が著しく低下して、そのため上記プロセスにおいては、触媒の寿命が改良される。
【実施例3】
【0070】
反応器に供給する原料の組成を、47.5mol%の酢酸メチル、28.5mol%のメタノール、19mol%の水と5%のアセトンにした以外は、実施例1に従って調製したフェリエライト触媒を用いて実施例2の操作を繰り返した。供給原料を、50μl/分の速度で触媒床に通した。反応器を180℃に36時間維持した後、200℃に上げてさらに72時間維持してから、さらに220℃に上げて72時間維持して、その後180℃に下げて48時間維持した。反応器からの出口留分を、2つのTCDと1つのFID検出器を備えたInterscience Traceガスクロマトグラフで定期的に分析したが、酢酸とジメチルエーテルからなっていた。200から220℃でのフェリエライト触媒の不活性化を、144時間の期間にわたる活性の減少により計算した。触媒の相対不活性化率を、表2に示す。相対不活性化率が高くなるほど、触媒の不活性化は遅くなる。
【0071】
【表2】
【0072】
表2から分かるように、アセトンの存在下で行われるプロセスについては、SARのより高い触媒を用いると、触媒の不活性化率が著しく低下して、そのため上記プロセスにおいては、触媒の寿命が改良される。
【実施例4】
【0073】
アルミナ20wt%からなるH−フェリエライト(Zeolyst International Inc.より入手)を触媒に用いて、実施例2の加水分解/脱水プロセスを繰り返した。H―フェリエライトにSARは20と55だった。触媒は、直径3.2mmの円柱状押し出し成型物を粉砕し、100から160ミクロンにふるい分けした粒子の形体で使用した。この実施例では、SAR55のフェリエライトの不活性化は、SAR20のフェリエライトより6.6倍遅いことが分かった。
【実施例5】
【0074】
20wt%のアルミナ(Zeolyst International Inc.製)と複合したSAR20とSAR55のH−フェリエライトを触媒に用いて、実施例3の操作(アセトンの存在下、メタノールと酢酸メチルの加水分解/脱水プロセス)を繰り返した。触媒は、直径3.2mmの円柱状押し出し成型物を粉砕し、100から160ミクロンにふるい分けした粒子の形体で使用した。この実施例では、SAR55のフェリエライトの不活性化は、SAR20のフェリエライトより4.4倍遅いことが分かった。
【実施例6】
【0075】
この実施例では、粒状のSAR20とSAR55のH−フェリエライト(Zeolyst International Inc.製)を触媒に用いた。フェリエライト触媒0.015gを圧縮し、100から160μの粒子にふるい分けし、反応器に充填して、150μlの炭化ケイ素で覆った。窒素ガスとヘリウムガスをそれぞれ、4.4ml/分と0.9ml/分の速度で反応器に導入して、ガス空間速度を16,000/h
−1とした。圧力を10barGに上げ、反応器温度を180℃に調整した。72.0mol%の酢酸メチル、7.5mol%のメタノール、20mol%の水と0.5mol%のアセトンからなるガス状供給原料を、4,000h
−1のガス空間速度で触媒床に通して、180℃の反応器温度で46時間保持した。その後、温度を210℃に上げて(昇温速度3℃/分)110時間保持してから、180℃に下げて45時間保持した。次に、温度を210℃に上げて111時間保持してから、180℃に下げて55時間保持した。さらに温度を230℃に上げて116時間保持してから、180℃に下げて45時間保持した。次に、温度を250℃に上げて97時間保持してから、180℃に下げて35時間保持した。触媒の不活性化速度(ジメチルエーテル(DME)と酢酸の1日当たりのSTY損失%として)を、210℃の2回目の期間および230℃と250℃で計算した。その結果を下記表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
表3から分かるように、アセトンの存在下で行われるプロセスについては、SAR55の触媒の不活性化率は、SARがより低い触媒と比べると実質的に低下している。
【実施例7】
【0078】
この実施例では、メタノールと酢酸メチルの加水分解/脱水プロセスが、アセトンの存在下、非存在下およびH−フェリエライト触媒(SAR20、Zeolyst International Inc.製)の存在下で行われたが、触媒は20wt%のアルミナと複合し、3.2mm円柱状押出成型物を粉砕し、250から500ミクロンにふるい分けした粒子の形体で使用した。
【0079】
触媒0.3gを、4−反応流路ミクロ反応器ユニットの反応器4つにそれぞれ充填した。ミクロ反応器ユニットは、内径6mmの別々の4つのハステロイU字形反応管からなっており、それぞれの反応管は、専用ガス(別々の質量流量制御バルブで制御)と液体原料流を有している。各液体原料流は、シリンジ駆動ポンプにより気相で反応器に送入した。触媒床と接触するに先立ち、ガス化原料を触媒床に通す前に、不活性炭化ケイ素予備床上で約10,500h
−1の全体ガス空間速度(GHSV)で、80mol%の不活性ガスと混合した。
【0080】
50mol%の酢酸メチル、30mol%のメタノールと20mol%の水の液体原料組成物を、反応器1に送入した。アセトンを0.5%、1.0%及び3.0%のモル濃度で添加した、酢酸メチル、メタノールと水の液体原料組成物を、反応器2、3と4にそれぞれ送入した。
【0081】
各反応器を、流動砂浴加熱器で180℃の反応器温度に維持した。各反応器は、独立した圧力制御器を持っており、各反応器の全反応圧力を10barGに維持した。各反応を、約450時間継続した。各反応器から出てくる生成物流を、一連の加熱炉とトレース加熱された流路で加熱して、気相流を維持して分析を行った。分析に先立ち、各生成物流の圧力を大気圧まで下げた。各生成物流を、ガスクロマトグラフィ(Agilent MicroGC)で定期的に分析して、供給原料と生成物成分の組成データを得た。50から400時間の期間の稼働中のアセトンの触媒性能への影響を、下記表4に示す。
【0082】
【表4】
【0083】
表4から明らかなように、アセトンが加水分解/脱水反応に存在すると、触媒の不活性化率を増加させるので、触媒には有害である。