特許第6082106号(P6082106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6082106少なくとも1つの表面の一部または全部が平らな基板およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082106
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】少なくとも1つの表面の一部または全部が平らな基板およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/22 20060101AFI20170206BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20170206BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20170206BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   C30B29/22 Z
   B01D71/02 500
   B01D69/10
   B01D69/12
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-517156(P2015-517156)
(86)(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公表番号】特表2015-521576(P2015-521576A)
(43)【公表日】2015年7月30日
(86)【国際出願番号】KR2012004724
(87)【国際公開番号】WO2013187541
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2014年12月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成23年12月15日にサイエンス(Science)誌のウェブサイトにて発表
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】312015417
【氏名又は名称】インテレクチュアル ディスカバリー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨン キョンビョン
(72)【発明者】
【氏名】ファム カオタートゥン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンソン
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−028248(JP,A)
【文献】 特開2000−026115(JP,A)
【文献】 特開2004−344755(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/033347(WO,A2)
【文献】 特開2003−238147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
B01D 69/10
B01D 69/12
B01D 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板形成粒子により成形された基材と、
前記基材の少なくとも1つの表面上にある第1基板形成粒子によって形成された第1孔隙の一部または全部を埋めるために充填された第2基板形成粒子と、
前記第2基板形成粒子が充填された部位に残っている第2孔隙の一部または全部を埋めるために充填された高分子と
を含み、
少なくとも1つの表面の一部又は全部が平らであり、
前記少なくとも1つの表面の平らな部分に、複数の非球形種結晶(non−spherical seed crystals)を、その結晶軸a軸、b軸およびc軸のうち1つ以上または全てが一定の規則に従って配向するように整列可能であり且つ共有結合を介して固定可能である基板、および
前記基板の少なくとも1つの表面の平らな部分に、a軸、b軸およびc軸のうち1つ以上または全てが一定の規則に従って配向するように整列し且つ共有結合を介して固定された複数の非球形種結晶を含む基板複合体。
【請求項2】
第1基板形成粒子の平均粒径が、第2基板形成粒子の平均粒径よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の基板複合体。
【請求項3】
第1基板形成粒子と第2基板形成粒子が、それぞれ独立して、規則的多孔性物質(ordered porous materials)であることを特徴とする、請求項1に記載の基板複合体。
【請求項4】
前記高分子が、表面にヒドロキシル基を有しているか、またはヒドロキシル基を有するように処理が可能な高分子であることを特徴とする、請求項1に記載の基板複合体。
【請求項5】
第1基板形成粒子により成形された基材と、
前記基材の少なくとも1つの表面上にある第1基板形成粒子によって形成された第1孔隙の一部または全部を埋めるために充填された第2基板形成粒子と、
前記第2基板形成粒子が充填された部位に残っている第2孔隙の一部または全部を埋めるために充填された高分子と
を含み、
少なくとも1つの表面の一部又は全部が平らであり、
前記少なくとも1つの表面の平らな部分に、複数の非球形種結晶(non−spherical seed crystals)を、その結晶軸a軸、b軸およびc軸のうち1つ以上または全てが一定の規則に従って配向するように整列可能であり且つ共有結合を介して固定可能である基板の少なくとも1つの表面の平らな部分に、複数の非球形種結晶を置いた後、ラビングによって、複数の種結晶の全てのa軸が互いに平行であったり、複数の種結晶の全てのb軸が互いに平行であったり、複数の種結晶の全てのc軸が平行であったり、またはこれらの組み合わせによって配向するように、複数の非球形種結晶を整列させる第1工程と、
複数の種結晶を成長させる溶液に前記整列した複数の種結晶を露出させ、2次成長法を用いて前記複数の種結晶から膜を形成および成長させる第2工程と
を含む、薄膜または厚膜を製造する膜の製造方法。
【請求項6】
第1基板形成粒子の平均粒径が、第2基板形成粒子の平均粒径よりも大きいことを特徴とする、請求項5に記載の膜の製造方法。
【請求項7】
前記高分子が、表面にヒドロキシル基を有しているか、またはヒドロキシル基を有するように処理が可能な高分子であることを特徴とする、請求項5に記載の膜の製造方法。
【請求項8】
第2工程において、種結晶の表面から2次成長によって複数の種結晶が2次元的に互いに連結しながら、3次元的に垂直成長して膜を形成することを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の膜の製造方法。
【請求項9】
第1工程において複数の種結晶が、a軸、b軸、またはc軸が基板面に対して垂直に配向されていることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の膜の製造方法。
【請求項10】
隣接した複数の種結晶の少なくとも1つの結晶軸の配向が同じブロック内で形成された膜が、
基板面に平行な軸方向にチャンネルが連続的に連結されて拡張したり、
基板面に垂直または傾斜した軸方向にチャンネルが連続的に連結して拡張したり、または、
2つの条件を全て満たすことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の膜の製造方法。
【請求項11】
前記第1工程と前記第2工程との間に、前記第2孔隙の一部または全部に充填された高分子を除去するとともに、前記基板表面上に共有結合の形成を介して前記種結晶を固定させる工程を含むことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの表面の一部または全部が平らな基板およびこれを用いて薄膜または厚膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、結晶格子内にオングストロームサイズの細孔およびチャンネルを有する結晶性アルミノシリケートである。アルミノシリケートの骨格においてアルミニウムを有する場所は負電荷を帯びているので、電荷相殺のための陽イオンが細孔の中に存在し、細孔内の残りの空間は、通常水の分子で満たされている。ゼオライトが有する3次元的な細孔構造、形状およびサイズはゼオライトの種類によって異なるが、細孔の直径は普通分子サイズに相当する。従って、ゼオライトは種類に応じて細孔の中に収容される分子のサイズ選択性または形状選択性を有することから、分子篩(molecular sieve)とも呼ばれる。
【0003】
一方、ゼオライトの骨格構造を構成する元素であるシリコン(Si)とアルミニウム(Al)の代わりに、他の様々な要素でシリコンやアルミニウムの一部または全部を置き換えたゼオタイプ分子篩(zeotype molecular sieves)が知られている。例えば、アルミニウムを完全に除去した多孔性シリカとシリコンをリン(P)で置き換えたアルポ(AlPO)系分子篩、このようなゼオライトおよびゼオタイプ分子篩の骨格にTi、Mn、Co、FeおよびZnなど様々な金属元素を一部置換して得られたゼオタイプ分子篩が知られている。これらはゼオライトから派生した物質であり、本来の鉱物学的分類によるとゼオライトに属さないが、当業界ではこれらをいずれもゼオライトと呼んでいる。
【0004】
従って、本明細書におけるゼオライトとは、前述のゼオタイプ分子篩を含む広い意味のゼオライトを意味する。
【0005】
一方、MFI構造を有するゼオライトは、ゼオライトの中でも最もよく使用されているゼオライトの一つであり、その種類は次のとおりである:
1)ZSM−5:シリコンとアルミニウムが一定の比率で形成されたMFI構造のゼオライト。
2)シリカライト−1:シリカのみからなる構造を有するゼオライト。
3)TS−1:アルミニウム部分の一部にチタン(Ti)を有するMFI構造のゼオライト。
【0006】
MFI構造は、図1AおよびBに示すとおりである。このゼオライトは、楕円形(0.51×0.55nm)細孔がジグザグ型につながったチャンネルがa軸方向に流れており、円形に近い(0.54 ×0.56nm)細孔が直線を成してb軸方向に伸びているため、直線型チャンネルを形成する。c軸方向にはチャネルが開かれていない。
【0007】
また、この他のゼオライト、ベータ(BEA)は、a(またはb)軸に沿って流れる6.6×6.7Åチャンネルを有し、c軸に沿って湾曲して流れる5.6×5.6Åチャンネルを有する截頭された2つのピラミッド形状(truncated bipyramid shape)を有している(図1C)。
【0008】
粉末状態のゼオライトは、原油のクラッキング触媒、吸着剤、脱水剤、イオン交換剤、および気体浄化剤などとして日常生活および産業界において非常に広範囲に使用されているが、多孔性アルミナなどの多孔性基板上に形成された薄膜構造のMFIゼオライト薄膜は、分子をサイズに応じて分離できる分子分離膜として広く利用されている。それだけでなく、MFIゼオライト薄膜は、2次および3次の非線形光学薄膜、3次元的メモリー素材、太陽エネルギー収集装置、電極補助物質、半導体量子ドットおよび量子線担体、分子回路、感光装置、発光体、低誘電薄膜、および防錆コーティング剤など広範囲に応用されている。
【0009】
前述のように、ゼオライトは結晶方向に沿って細孔の形状、サイズおよびチャネル構造が異なる。
【0010】
一方、ガラス板のような基板上にMFI構造のゼオライト薄膜を生成する方法は、 1次成長法と2次成長法に大別される。1次成長法の場合、前処理せずに基板をMFIゼオライト合成用ジェルの中に入れ、その後MFIゼオライト膜が自発的に基板上で成長するように誘導する。このとき使用される合成用ジェルは、通常テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(tetraproplyammonium hydroxide、TPAOH)を添加したものが使用される。この場合、反応初期には、ガラス板上の複数のMFI結晶は、b軸がガラス板に垂直な配向に成長する。しかし、ガラス板上に生成された大部分の複数の結晶の中心部に、a軸に配向した複数の結晶が寄生的に成長し始める。それだけでなく、時間の経過に伴い複数の結晶が様々な方向に成長し、その結果、生成された薄膜は様々な配向に置かれるようになる。従って、生成されたMFIゼオライト薄膜はランダム配向を有し、それなりの用途はあるが、その応用性において劣っている。特に分子分離膜としての応用時に最も重要な要素の一つである分子透過性(permeability)が顕著に低下する。1次成長法の場合、TPAOH以外の他の有機塩基を使用すると、MFIゼオライト薄膜が基板上に成長しない。このような問題を克服するために、2次成長法が用いられる。
【0011】
2次成長法の場合、複数のMFIゼオライト結晶を予め付着させた基板をMFI合成ジェルに浸漬した後、反応を進行させてMFI薄膜を形成する。ここで、すでに付着したMFI結晶は、種結晶の役割を果たす。このとき、付着したMFIゼオライト結晶の配向が後に生成されるMFIゼオライト薄膜の配向に非常に重要な役割を果たす。例えば、MFIゼオライト種結晶のa軸が基板に垂直に配向すると、生成されるMFIゼオライト薄膜のa軸が基板に垂直な方向に配向する傾向があり、種結晶のb軸が基板に垂直に配向すると、後に生成されるMFIゼオライト薄膜のb軸が基板に垂直な方向に配向する傾向がある。
【0012】
本明細書の全体を通して多数の論文および特許文献が参照され、その引用が示されている。引用された論文および特許文献の開示内容は、本明細書に参照として組み込まれており、本発明が属する技術分野のレベルおよび本発明の内容がより明確に説明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国特許公開第2009−120846号
【特許文献2】米国特許第7,357,836号
【特許文献3】国際出願PCT/KR2010/002180
【特許文献4】国際出願PCT/KR2010/002181
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】J. Hedlund、F. Jareman、A.J. Bons、M. Anthonis、J. Membr.Sci.222、163(2003)
【非特許文献2】Z.P. Lai、M. Tsapatsis、J.R. Nicolich、Adv. Funct. Mater. 14、716(2004)
【非特許文献3】C.J. Gump、V.A. Tuan、R.D. Noble、J.L. Falconer、Ind. Eng. Chem. Res. 40、565(2001)
【非特許文献4】M. O. Daramola et al.、Sep. Sci. Technol. 45、21(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
基板上にMFIゼオライト結晶のような複数の非球形種結晶を整列させた後、2次成長法を用いて薄膜または厚膜を製造する場合、複数の非球形種結晶の整列時に基板の表面が平らであるときに限り、非球形種結晶のa軸、b軸およびc軸の1つ以上または全てを一定の規則に従って配向することができる。
【0016】
したがって、本発明者らは、非球形種結晶のa軸、b軸およびc軸の1つ以上または全てを一定の規則に従って配向することができるように、表面が平らであり、尚且つ前記基板上に形成させたゼオライト系薄膜または厚膜が分子分離膜として使用可能な多孔性基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1実施態様は、第1基板形成粒子に成形された基材と、前記基材の少なくとも1つの表面上にある第1基板形成粒子によって形成された第1孔隙の一部または全部を埋めるために充填された第2基板形成粒子、および第2基板形成粒子が充填された部位に残っている第2孔隙の一部または全部を埋めるために充填された高分子とを含むことを特徴とする、少なくとも1つの表面の一部または全部が平らな基板を提供する。
【0018】
本発明の第2実施態様は、本発明による基板、ならびに前記基板の少なくとも1つの表面における平らな部分に、a軸、b軸およびc軸の1つ以上または全てが一定の規則に従って配向するように整列した複数の非球形種結晶を含む基板複合体を提供する。
【0019】
本発明の第3実施態様は、本発明による基板の少なくとも1つの表面の平らな部分に、a軸、b軸およびc軸のうち1つ以上または全てが一定の規則に従って配向するように、複数の非球形種結晶を整列させる第1工程、および複数の種結晶を成長させる溶液に前記整列した複数の種結晶を露出させ、2次成長法を用いて前記複数の種結晶から膜を形成および成長させる第2工程を含む、薄膜または厚膜を製造する方法、ならびに前記方法によって製造された膜を提供する。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本明細書における結晶軸a軸、b軸およびc軸の関係は、結晶軸a軸、b軸が形成する平面上に結晶軸c軸が存在しないというものである。一例として、結晶軸a軸、b軸およびc軸互いに垂直であってもよく、または結晶軸a軸とb軸が形成する平面上に結晶軸c軸は傾斜を成してもよい。
【0022】
複数の非球形種結晶の整列時に、非球形種結晶のa軸、b軸およびc軸の1つ以上または全てを一定の規則に従って配向させるためには、基板の表面が平らでなけれならない。さもなければ、基板上の凹凸面によって種結晶の軸がランダムな方向および角度に傾いてしまう。さらに、前記基板上に形成した薄膜または厚膜を分離膜として使用しようとする場合、基板は多孔性基板であることが好ましい。
【0023】
したがって、本発明によって少なくとも1つの表面の一部または全部が平らな基板を提供するために、第1基板形成粒子として成形された基材と、前記基材の少なくとも1つの表面上にある第1基板形成粒子によって形成された第1孔隙の一部または全部を埋めるために充填された第2基板形成粒子、および第2基板形成粒子が充填された部位に残っている第2孔隙の一部または全部を埋めるために充填された高分子とを、前記基板が具備していることを特徴とする。
【0024】
本発明による基板は、第1基板形成粒子に成形された基材表面上に第2基板形成粒子を置いて圧力を加え、第1基板形成粒子によって形成された第1孔隙に第2基板形成粒子を挿入して焼成した後、高分子溶液を表面コーティングして加熱し、溶媒を乾燥するか、または高分子を硬化させて製造することができる。
【0025】
第2孔隙の一部または全部に充填された高分子は、今後焼成などの方法によって除去され、前記基板上に形成させた薄膜または厚膜を分離膜として使用することが
できる。
【0026】
第1基板形成粒子の平均粒径は、第2基板形成粒子の平均粒径よりも大きいことが好ましい。第1基板形成粒子および第2の基板を形成粒子のサイズは限定されないが、目的に応じてマイクロスケールまたはナノスケールであってもよい。
【0027】
第1基板形成粒子で成形された基材の表面上に物理的圧力で第2基板形成粒子を注入することによって、基板の表面に主に第2基板形成粒子が配置される。
【0028】
本発明による基板において、1つ以上の第2基板形成粒子は、第1基板形成粒子によって形成された1つの第1孔隙に充填されて、第1基板形成粒子によって形成された表面凹凸の大きさをより小さいサイズの表面凹凸に転換させる。
【0029】
次いで、第2基板形成粒子が充填された部位に残っている第2孔隙の一部または全部に高分子が充填されると、滑らかで平らな表面が形成される。
【0030】
第1基板形成粒子と第2基板形成粒子は、同じかまたは異なる材料であってもよい。
【0031】
第1基板形成粒子と第2基板形成粒子の非限定的な例としては、(i)金属および非金属元素が単独または2種以上含まれている酸化物であり、表面にヒドロキシ基を有する物質、(ii)チオール基(−SH)またはアミン基(−NH)と結合する単一金属または金属の合金、(iii)表面に官能基を有する高分子、(iv)半導体化合物、もしくは(v)ゼオライトまたはゼオタイプ分子篩、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0032】
第1基板形成粒子と第2基板形成粒子は、それぞれ独立して 規則的多孔性物質 (ordered porous materials)であることが好ましい。前記基板上に形成させた薄膜または厚膜を分離膜として使用する際に基板によって分離膜の役割を果たせないようにすることを防ぐためである。一実施例では、第1基板形成粒子と第2基板形成粒子として多孔性シリカを使用した。
【0033】
一方、高分子の非制限的な例としては、セルロース、澱粉(例:アミロースおよびアミロペクチン)、およびリグニンなどの天然高分子、合成高分子、または導電性高分子がある。高分子でありながら溶媒に溶解し、前記第2孔隙の一部または全部を埋めることのできるものであれば、高分子の種類およびサイズは限定されない。前記高分子は、表面にヒドロキシル基を有しているか、またはヒドロキシル基を有するように処理が可能な高分子であることが好ましい。後に本発明による基板上に複数の種結晶を付着させる場合に、付着力を向上させることができるからである。
【0034】
また、本発明による薄膜または厚膜を製造する方法は、本発明による前記基板の少なくとも1つの表面の平らな部分に、a軸、b軸およびc軸の1つ以上または全てが一定の規則に従って配向するように、複数の非球形種結晶を整列させる第1工程と、複数の種結晶を成長させる溶液に前記整列した複数の種結晶を露出させ、2次成長法を用いて前記複数の種結晶から膜を形成および成長させる第2工程を含む。
【0035】
種結晶は、規則的多孔性物質であることが好ましい。
【0036】
本発明により使用される種結晶および形成された膜の骨格成分は、特に限定されない。
【0037】
種結晶および形成された膜は、ゼオライトまたはゼオタイプ分子篩であってもよい。また、種結晶および形成された膜は、MFI構造を有してもよい。
【0038】
本明細書におけるゼオライトとは、(i)アルカリまたはアルカリ土類金属のケイ酸アルミニウム水和物である鉱物の総称であるだけではなく、(II)ゼオライトの骨格構造を構成する元素であるシリコン(Si)とアルミニウム(Al)の代わりに、他の様々な要素でシリコンやアルミニウムの一部または全部を置き換えたゼオタイプ分子篩も含まれており、広い意味では、表面にヒドロキシル基を有する全ての多孔性酸化物または硫化物を含む。
【0039】
「分子篩」とは、サイズの異なる分子が混合しているとき、これらを分離させることができる多孔性物質を意味する。
【0040】
MFI構造のゼオライトまたはゼオタイプ分子篩の例としては、ZSM−5、シリカライト、TS−1、AZ−1、Bor−C、ボラライトC 、エンシライト 、FZ−1、LZ−105、モノクリニックH−ZSM−5 ムティーナ沸石(mutinaite)、NU−4、NU−5、TSZ、TSZ−III、TZ−01、USC−4、USI−108、ZBHおよびZKQ−1Bなどが挙げられる。
【0041】
その他の種結晶の例は、韓国特許公開2009−120846号およびUS7,357,836に開示されている。
【0042】
一方、本発明による薄膜または厚膜の製造方法における第1工程は、後に2次成長の鋳型として使用される基板上に整列した複数の非球形種結晶が、結晶軸a軸、b軸およびc軸のうちの1つ以上または全てが一定の規則に従って配向するように整列していることを特徴とする。
【0043】
非球形シリカライト−1または複数のゼオライトベータ種結晶は、規則的多孔性物質であり、結晶内にa軸、b軸、および/またはc軸にチャンネルを有している(図1A、B、C)。
【0044】
例えば、基板上に整列した複数の種結晶は、複数の種結晶の全てのa軸が互いに平行であったり、複数の種結晶の全てのb軸が互いに平行であったり、複数の種結晶の全てのc軸が平行であったり、またはこれらの組み合わせによって配向したものであってもよい。
【0045】
また、基板上に整列した複数の種結晶は、a軸、b軸、c軸が基板面に対して垂直に配向したものであってもよい。
【0046】
一方、基板上にa軸、b軸およびc軸の1つ以上または全てが一定の規則に従って配向した複数の種結晶は、単一層を形成することが好ましい(図1A、B、C)。
【0047】
基板上に、複数の種結晶を置いた後、物理的圧力によって複数の種結晶のa軸、b軸、c軸配向を整列させることができる。
【0048】
特許文献1には、基板上に複数のMFI型種結晶の全てのb軸を垂直方向に配向させる方法が開示されており、基板上に複数の結晶のa軸、b軸、および/またはc軸配向を調節することができる技術は特許文献3および特許文献に記載されている。したがって、基板上にa軸、b軸およびc軸配向のうち少なくとも1つまたは全てが整列した複数の種結晶は、特許文献1、特許文献3および特許文献4に記載された方法によって、あるいはこれを応用して準備することができる。
【0049】
具体的には、第1工程において、基板上にa軸、b軸およびc軸配向が全て整列した複数の種結晶は、以下のような工程によって準備することができる:
【0050】
[第1工程]
複数の種結晶の位置および配向を固定することができる陰刻または陽核が表面に形成された基板を準備するA工程と、
前記基板上に、複数の種結晶を置いた後、物理的圧力により種結晶の一部または全部を陰刻または陽核によって形成された孔隙に挿入するB工程とを含む工程。
【0051】
[第2工程]
複数の種結晶の位置および配向を固定すことができる陰刻または陽刻が表面に形成された鋳型基板を準備するA工程と、
前記鋳型基板上に複数の種結晶を置いた後、物理的圧力により種結晶の一部または全部を陰刻または陽核によって形成された孔隙に挿入して複数の種結晶を鋳型基板上に整列させるB工程と、
複数の種結晶が整列している鋳型基板と被印刷体基板とを接触させて複数の前記種結晶を被印刷体基板上に転写させるC工程とを含む工程。
【0052】
前記工程において、前記孔隙の形状は前記種結晶の結晶軸配向を調整するために、孔隙内に挿入される種結晶の所定の部分の形状と対応するように形成されたものが好ましい。
【0053】
前記工程において、物理的圧力はラビング (rubbing)またはプレッシング(pressing)によって加えることができる。
【0054】
一方、基板または鋳型基板と複数の種結晶は、付加される物理的圧力によって水素結合、イオン結合、共有結合、配位結合、またはファンデルワールス結合を形成することができる。
【0055】
基板または鋳型基板の表面に形成された陰刻または陽刻は、基板自体に直接刻印されたり、フォトレジストによって形成されたり、犠牲層をコーティングした後、レーザーアブレーションによって形成されたり、インクジェット印刷法によって形成され得る。
【0056】
フォトレジストやインクは、基板上に複数の種結晶を整列させた後除去してもよいが、2次成長時にも継続して種結晶の支持体として存在することができる。第1工程で基板上に整列した複数の種結晶は、隣接する種結晶と接触または離隔してもよいが、フォトレジストやインクが2次成長時にも種結晶の支持体としての役割を十分に果たすためには厚さが必要であるため、隣接する複数の種結晶は離間していることが好ましい。
【0057】
第1工程以前に、基板と複数の種結晶とを結合させうるカップリング剤を基板表面上に使用することができる。本明細書における用語「カップリング剤」とは、基板と種結晶との間の結合を可能にする、末端に官能基を有する全ての化合物を意味する。好ましいカップリング剤ならびに、その作用機序および使用例は、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0058】
第2工程では、種結晶の表面から2次成長によって複数の種結晶が2次元的に互いに連結しながら、3次元的に垂直成長して膜を形成する。
【0059】
このとき、シリカライト−1またはゼオライトベータのように規則的多孔性物質である複数の種結晶は、結晶内にチャンネルを形成しているので、前記種結晶のチャンネルがそれから形成された膜にまで拡張し得る。
【0060】
隣接する複数の種結晶の少なくとも1つの結晶軸配向が同じブロック内で形成された膜は、基板面に平行な軸方向にチャンネルが連続的に連結されて拡張されたり、基板面に垂直または傾斜を成した軸方向にチャンネルが連続的に連結されて拡張されたり、もしくは2つの条件を全て満たすことができる。
【0061】
第2工程では、結晶核生成反応(crystal nucleation)が結晶成長溶液中または種結晶の表面で起こらないことが好ましい。
【0062】
第2工程で使用される種結晶成長溶液中の溶媒は、水または有機溶媒であってもよい。
【0063】
第2工程で使用される種結晶成長溶液は、構造誘導剤(Structure directing agent)を含有することが好ましい。
【0064】
構造誘導剤は、特定の結晶構造の鋳型の役割を果たす物質であり、構造誘導剤の電荷分布、サイズ、および幾何学的形状が構造誘導特性(structure directing properties)を提供する。本発明による第2工程で使用される構造誘導剤は、複数の種結晶の表面から2次成長のみを誘導して、種結晶成長溶液中または種結晶の表面において結晶核生成反応を誘導しない種類であることが好ましい。結晶核生成反応さえ誘導しない限り、各結晶軸に応じた結晶成長速度は重要ではない。
【0065】
第1工程で使用される種結晶も種子構造誘導剤を使用して形成することができる。種子構造誘導剤を使用すると、結晶核生成反応を誘導するため、種子の構造誘導剤を第2工程の構造誘導剤として使用することは好ましくない。したがって、第2工程で使用される種結晶成長溶液中の構造誘導剤(SDA)は、種子構造誘導剤と異なることが好ましい。
【0066】
種結晶および形成された膜がゼオライトまたはゼオタイプ分子篩である場合、第2工程で使用される構造誘導剤は、アミン、イミンまたは第4級アンモニウム塩であってもよく、好ましくは、下記化1で示される第4級水酸化アンモニウム またはこれを繰り返し単位としたオリゴマーであってもよい。
【0067】
【化1】
【0068】
前記式で、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、C−C30のアルキル、アラルキルまたはアリール基を表し、前記C−C30のアルキル、アラルキルまたはアリール基はヘテロ原子として酸素、窒素、硫黄、リン、または金属原子を含むことができ、オリゴマー中の繰り返し単位の数は、2〜10であってもよく、2〜4個が好ましい。
【0069】
化学式1における用語「C−C30のアルキル」とは、炭素数1〜30の直鎖または分岐飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、ペンタデシルおよびヘプタデシルなどを含む。好ましくは、アルキル基は、C−C直鎖または分岐鎖アルキル基である。
【0070】
用語「アラルキル」とは、1つまたはそれ以上のアルキル基による構造に結合したアリール基を意味し、好ましくはベンジル基である。
【0071】
用語「アリール基」とは、全体的にまたは部分的に不飽和された置換もしくは非置換のモノサイクリックまたはポリサイクリック炭素環を意味し、好ましくは、モノアリールまたはビアリールである。モノアリールは、炭素数5〜6を有することが好ましく、ビアリールは、炭素数9〜10を有することが好ましい。最も好ましくは、前記アリールは、置換または非置換のフェニルである。
【0072】
一方、種結晶および形成された膜がゼオライトまたはゼオタイプ分子篩である場合、第2工程で使用される種結晶成長溶液は、構造誘導剤以外にも下記ような原料物質を含むことができる:
1)アルミニウム(Al)の原料としてアルミニウムイソプロポキシドのようなアルミニウムに有機物が結合された有機無機ハイブリッド物質、硫酸アルミニウムのようなAlが含まれている塩形態の物質、Alのみからなる粉末または塊状の金属物質およびアルミナなどのアルミニウム酸化物の全ての物質。
2)シリコン原料としてTEOS(テトラエチルオーソシリケート)のようなシリコンに有機物が結合された有機無機ハイブリッド物質、ケイ酸ナトリウムのようなSi元素が含まれている塩形態の物質、Siのみからなる粉末あるいは塊状の物質、ガラス粉末および石英などのシリコン酸化物の全ての物質。
3)F原料としてHF、NHF、NaF、KFなどのFを含む全ての物質。
4)アルミニウムとシリコンに加えて、骨格の他の種類の元素を挿入するために使用される物質。
【0073】
本発明の好ましい実施態様によると、ゼオライトまたはゼオタイプ分子篩の種結晶成長溶液は、[TEOS][TEAOH][(NHSiF[HO] の組成からなる。前記組成からX:Y:Z:Wの含量比は、(0.1〜30):(0.1〜50):(0.01〜50):(1〜500)であり、好ましくは(0.5〜15):(0.5 〜25):(0.05〜25):(25〜400)、より好ましくは(1.5〜10):(1.0〜15):(0.1〜15):(40〜200)、最も好ましくは(3 〜6):(1.5〜5):(0.2〜5):(60〜100)である。
【0074】
本方法におけるゼオライトまたはゼオタイプ分子篩体のための種結晶成長溶液は、前記組成物以外にもさらにチタンなどの遷移金属、ガリウムなどの13族、およびジェルマニウムなどの14族元素などを添加することができるが、これに限定されるものではない。これらの追加的な原料物質の比率は0.1〜30の比率の範囲に限定される。
【0075】
本方法において、膜形成および成長のための反応温度は、使用される種結晶成長溶液の組成または作製しようとする物質に応じて50〜250℃まで、さまざまに変化することができる。好ましくは、その反応温度は、80〜200℃であり、より好ましくは120〜180℃である。また、反応温度は、常に固定されたものではなく、様々な段階に温度を変化させながら反応させることができる。
【0076】
本方法において、膜形成および成長のための反応時間は、0.5時間〜20日まで様々に変えることができる。反応時間は、好ましくは2時間〜15日、より好ましくは6時間〜2日、最も好ましくは10時間〜1日である。
【0077】
本発明によって製造された膜は分子分離膜、半導体産業における低誘電体物質、非線形光学物質、水分解装置用薄膜、太陽電池用薄膜、光学用部品、航空機用の内部または外部部品、化粧品容器、生活容器、鏡およびその他のゼオライトのナノ細孔の特性を利用する薄膜など多様に応用できるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0078】
本発明による表面が平らな基板を使用すると、非球形種結晶のa軸、b軸およびc軸の1つ以上または全てを一定の規則に従って配向させることができ、前記基板上に形成させたゼオライト系薄膜または厚膜を分子分離膜として使用することができる。
【0079】
また、本発明による表面が平らな基板を使用すれば、基板面に垂直方向だけでなく、水平方向にもチャンネルが形成された膜を形成することができ、ナノチャンネル内に様々な機能性分子、高分子、金属ナノ粒子、半導体量子ドット、量子線などを一定の配向に内包させた膜は、様々な光学用、電子用、電子光学用先端素材として使用することができる。特に多孔性アルミナ、多孔性シリカ、メソ細孔物質で形成された膜において垂直方向にチャネルが形成される場合、分子を分離する分離膜としての機能が非常に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】(A)leaflet形、(B)coffin形SL結晶および(C)截頭された2つのピラミッド形(truncated bipyramid shape)Si−BEA結晶およびこれらのチャンネルシステムの模式図、ならびに(D) a−配向、(E)b−配向および(F)a−配向の単一層の模式図を示したものである。(G)〜(I)は、単一膜上の2次成長が均一に配向した膜を生成することを示したものである。
図2】本発明に係る基板の製造工程を示した模式図である。
図3】(A)leaflet形SL種結晶のSEM像、および(B)ジェル−2内の2次成長によってSL種結晶から成長したSL結晶を示したものであり、(C)は、leaflet形種結晶のXRD回折パターンとジェル−2内の2次成長によって種結晶から成長したSL結晶のXRD回折パターンを示したものであり、(D)は、ジェル−2内のleaflet形SL結晶の2次成長中のSL結晶の平均成長の長さに対する反応時間のグラフを示したものである。(E)は、2次成長後のSL種結晶の形態学的変化を示したものである。
図4】(A)は、350nm〜600nmビーズの1:1の混合物からなる、30秒間の加圧(150 kgfcm−2)および1020℃で2時間焼成することよって製造された多孔性基板(3mm)を研磨(polisshing)した後のSEM上部のイメージを示したものである。(B)は、さらに表面を70nmのシリカビーズによってラビングし、50℃で8時間焼成した多孔性基板のSEM上部画像を示したものである。(C)は、多孔性シリカ支持体上に付着したb−配向したSL単一層のSEMイメージを示したものである。(D)は、18時間165℃でジェル−2で単層の2次成長によって製造された多孔性シリカ支持体上に支持されるb−配向SL防ぐ示すものである。
図5】p−/o−キシレンの分離のための設備の概括的な模式図を示したものである。
図6】(A)HC−n染料の構造、(B)HC−n染料のアルキル鎖の長さに対するSL膜の単一チャネル(Nc)nに含まれるHC−n染料の数のグラフを示したものである。(C)参照(厚さ3mmのYカットの水晶)対HC−n染料のアルキル鎖の長さに対するHC−n−含有SL膜(厚さに指示されている)の相対的な2次調和強度のグラフを示したものである。また、p−およびo−キシレンの透過度のグラフであり、(D)80℃、(E)150℃の2つの動作温度での時間に対するSFを示す。
【発明を実施するための形態】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨により、本発明の範囲がこれらの実施例により限定されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【実施例】
【0082】
実施例1:多孔性シリカ基板の準備
多孔性シリカの基板はストーバー法(stober method)によって合成された50−550nmサイズのシリカビーズから製造した。このため、350nm SiO10gおよび550nm SiO10gをフードミキサーで混合した。混合されたシリカビーズにNaSiO(0.5%脱イオン蒸留水)水溶液0.6mLを一滴ずつ入れて、シリカビーズ混合物をミキサーで10分間攪拌した。ホームメードステンレス鋼モールドに前記混合物1.8gを静置し、150kgf/cmの圧力でプレッシンク゛して多孔性シリカ支持体を製造した。得られたシリカ皿を100℃/hの速度で2時間加熱し、1020℃で焼成した。室温に温度を下げた後、多孔性シリカディスクの両側をSiCサンドペーパー(Presi、粒径 P800)でポリッシングした。表面を平らにするために、一方の面は再びSiCサンドペーパー(Presi、粒径 P1200)でポリッシングした。多孔性シリカディスクの直径および厚さは、それぞれ20mmおよび3mmであった。水銀多孔度計によって測定された多孔度は、250nmの平均粒子サイズを有しており、多孔度は45.5%であった。
【0083】
脱イオン蒸留水一滴を多孔性シリカ支持体上に滴下した。独立して、70nmのシリカビーズを製造し、550℃で24時間焼成した。表面から艶がでるまで、焼成された70nmのシリカビーズを多孔性シリカ支持体上で穏やかにラビングした。艶の出る多孔性シリカ支持体を室温で一晩乾燥し、マッフル(muffle)炉で550℃で8時間 焼成した。8時間で550℃に温度上昇させ、室温で4時間冷却した。エポキシ樹脂(10 wt%)のアセトン溶液を3000rpmの速度で15秒間多孔性シリカ上にスピンコーティングし、30分間80℃で保管した。
【0084】
実施例2:多孔性シリカ基板上のSL単一膜アセンブリ
エポキシ−コーティングされた多孔性シリカ支持体上にポリエチレンイミン(PEI、0.1%)のエタノール溶液を2,500rpmの速度で15秒間スピンコーティングした。前記多孔性支持体上に指でSL結晶(1.0×0.5×1.4μm)を擦り付け、SL結晶を完全にb−配向するように整列させた。多孔性シリカ上のSL結晶単一層は、b−SLm/p−SiO2と称する。b−SLm/p−SiOプレートを管状(tubular)炉で空気中において550℃で24時間焼成して有機高分子層を除去し、シリカ支持体上にSi−O−Si結合の形成を介してSL単層を固定させた。 65℃/時の速度で温度を上昇させ、100℃/時の速度で温度を下げた。
【0085】
焼成されたb−SLm/p−SiO2プレートを、一定湿度のチャンバー内で一晩静置し、前記プレートがHOを吸着するようにした。次いで、水和したb−SLm/p−SiOプレートをNHF水溶液(0.2M)に5時間浸漬した。 NHF処理されたb−SLm/p−SiOプレートを1時間、新たな脱イオン蒸留水に浸漬し、24時間室温で乾燥した。
【0086】
実施例3:ジェル−2におけるb−SLm/p−SiO膜の2次成長(多孔性SiO上に完全にb−配向されたSL膜の製造)
TEOS:TEAOH:(NHSiF:HO=4.00:1.92:0.36:n(n=40〜80)(モル比)で構成されたジェル−2を下記のように調製した。
【0087】
(I)TEOS/ TEAOH溶液(溶液I)の製造:TEAOH(35%、20.2g)および脱イオン蒸留水(22.2 g)を順次31.8gのTEOS(98%)の入ったプラスチックビーカーに添加した。前記溶液の入ったビーカーにプラスチック製のカバーをしっかりと覆い、溶液が透明になるまで約30分間磁気攪拌した。
(II)TEAOH/(NHSiF溶液の製造(溶液II):TEAOH(35%、10.1 g)、(NHSiF(2.45g)、および脱イオン蒸留水(11.1g)をプラスチックビーカーに入れ(NHSiFが溶解するまで攪拌した。
【0088】
激しく攪拌しながら、溶液IIを溶液Iに迅速に注いだ。混合物は、すぐに個体化した。固化された混合物をプラスチック棒で2分間攪拌し、静止状態で6時間熟成させた。熟成後、半固体ジェルをフードミキサーで攪拌してテフロン(登録商標)内張り(テフロンライン)高圧反応器に移した。
【0089】
b−SLm/p−SiO膜をジェル−2に垂直に静置した。165℃で18時間水熱反応を行った。多孔性SiO基板上に完全にb−配向されたSL膜(b−SLf/p−SiOと称する)が製造され、過剰量の脱イオン蒸留水で洗浄した。多孔性SiO基板内のアルカリを除去するために、b−SLf/p−SiOメンブレン(membrane)を脱イオン蒸留水に2時間浸漬し、次いで4時間NHF溶液(0.2M)に浸漬した。膜を脱イオン蒸留水で洗浄し、窒素で乾燥して室温で24時間保管した。最後に、空気中において440℃で8時間焼成してTEAOHの鋳型を除去した。加熱速度は60℃/時であり、冷却速度は90℃/時であった。焼成された膜は浸透テストのために乾燥機で保管した。
【0090】
実験例1: 共焦点顕微鏡レーザースキャン(LSCM)の測定
2種類のメンブレン、 即ち、多孔性シリカ基板上にランダムに配向されたシリカライト−1膜(r−SLF/p−SiO)とb−SLf/p−SiOに対してLSCM測定を行った。焼成されたメンブレンホームメイド浸透性セル(home−made permeance cell)上に搭載した。ゼオライト部位は、純粋なMeOHと接触させながら、支持体部位は、MeOH内の0.1Mの下記化2のフルオレシン溶液と接触させた。接触部位は、Oリングで密封した。4日間、室温で染料を含有させた後、メンブレンを除去し、過剰量のMeOHで洗浄し、窒素で乾燥して室温で12時間保管した。
【0091】
LSCM測定は、アルゴン(Ar)レーザー源(488nm)およびz−スタックスキャンモードにLSM−710(Carl Zeiss)を用いて行った。r−SLF/p−SiO膜は、0.6のズーム値および547のMaster gain値を有するプランアボクロマード(Plan−Apochromat 40×/0.95 Korr M27対物レンズを用いて、3.5%のレーザー出力で測定した。b−SLF/p−SiO膜は、2.0のズーム値と700のMaster gain値を有するPlan−Apochromat40×/0.95 Korr M27対物レンズを用いて6.5%のレーザー出力で測定した。3D映像は、ZEN2009 Light Edition software(Carl Zeiss)を用いて得た。
【0092】
【化2】
【0093】
[2−(6−ヒドロキシ−3−オキソ−(3H)−キサンテン−9−イル)安息香酸
最大吸光:496nm
実験例2:b−SLf/p−SiOでo−/p−キシレン混合物の分離
キシレン混合物の分離は、Wicke−Kallenbach法によって実施した(図5)。b−SLf/P−SiO膜をホームメイドステンレス鋼セルに搭載した AS−568A Oリング(Kalrez、DuPont Performance Elastomers)をシーリング(sealing)材料として使用した。
【0094】
活性領域は2.0cmであった。25℃に維持されたコンテナ内キシレン混合物にヘリウムを通過させた。ミキサー中で水蒸気の流れを第2ヘリウムの流れと混合させた。キシレンガスをメンブレンの供給(feed)面に供給した。供給面での全体の流れの速度を60mL/分に維持した。供給面でのp−とo−キシレン気体の圧力は、それぞれ0.32、および0.31kPaであった。15mL/分の流速を有するヘリウムで濾過面を洗浄した。両面での全体圧力は大気圧であった。分離セルを対流(convection)オーブンに搭載した。結露を防止するために、システムの全てのラインをテープヒーター(tape heater)によって110℃に維持した。透過度テストは、好ましい温度で1℃/分の速度で室温から徐々に上昇させていった。清浄な膜を様々な温度で、それぞれのテストに使用した。温度上昇中、純粋なヘリウムガスは、メンブレン の両側を通過させた。
【0095】
透過度の測定のために、透過面のガスの流れは、6ポートバルブを通ってGCを通過させた。成分(p−およびo−キシレン)の濃度は、GCクロマトグラムの面積で分析した。面積−濃度曲線を得た後、各成分対する様々な濃度でHeの流れを通過させて、各成分について膜テストを行った。
【0096】
透過度(P mole s−1−2Pa−1)は、成分Mの供給面と透過面との間の部分の圧力の差に対する成分Mの流速(F mole s−m−)で定義される(式1)。
P= F/△p (1)
分離因子(αP/O)は、供給面と透過面でオルソ異性体(fo)に対するパラ異性体(fp)のモル分率の比で定義される(式2)。
αP/ O=[(fp/fo)]透過/[(fp/fo)]の供給 (2)
【0097】
<実験結果>
本実施例で製造されたゼオライト膜は、小さな分子の混合物を純粋な物質に分離するメンブレン媒介(membrane−mediated)分離に用いることができる。キシレン混合−分離膜として均一にb−配向されたSL膜の使用を調べるために、多孔性シリカ薄膜上に円形のcoffin形SL結晶の単一の層を製造し、ジェル−2において厚さ1.0μmの均一にb−配向されたSL薄膜を成長させた(図4)。多孔性シリカ支持体の使用は、SL膜の一貫したb−配向を維持するために必須である。アルミニウムを含む多孔性支持体が、膜の成長を抑制するからである。多孔性シリカ支持体の製造は、実施例1に記載の方法によって得られる。o−、およびp−キシレン混合物の分離は、二つの異なる温度(80℃および150℃)で標準的に報告された条件において行われた(図5)。
【0098】
80℃で初期測定されたp−キシレンの透過度は、o−キシレンの透過度よりもはるかに高い(>1900)分離因子(SF)が与えられる(図6D)。しかし、透過度は継続的に216時間にわたり減少し、安定した状態に至った。p−キシレンおよびo−キシレンの安定した状態透過度は、それぞれ0.7×10−8および0.0092×10−8 mols−1−2Pa−1であり、これは71の安定した状態SFをもたらす。継続的なp−キシレン透過度の減少とSF値の減少は、チャネルにo−キシレンの漸進的な吸着によるチャンネル閉塞(blockage)が次第に増加するためであり、p−キシレン分子の拡散速度が減少するためであると判断される。透過度がほぼゼロに減少するという事実もまた、b−配向SL薄膜にクラック(crack)を有さないことを意味する。
【0099】
150℃でのp−キシレン透過度は、400時間にわたり21.6×10−8から5×10−8 mols−1m−2Pa−1に減少する(図6E)。同じ期間中に、o−キシレン透過度は0.0097×10−8から0.0068×10−8 mols−1−2Pa−1に減少する。150℃でのp−キシレン透過度の漸進的な減少は、150℃でo−キシレンによるチャンネル閉塞が依然として続き、b−配向SL薄膜は、作動時間中にクラックが形成されないことを意味する。20〜370時間のSF値は、ほぼ均一に〜1000に留まっている。これらの一定状態のSF値はランダムに配向された管状のSL膜から観測される最も高い値より小さいが、同じ厚さを有するランダムに配向した非管状のSL膜の値よりも約2倍程度高い(表1)。
【0100】
【表1】
【0101】
参考文献1. J. Hedlund、F. Jareman、A.J. Bons、M. Anthonis、J. Membr.Sci.222、163(2003)
参考文献2. Z.P. Lai、M. Tsapatsis、J.R. Nicolich、Adv. Funct. Mater. 14、716(2004)
参考文献3. C.J. Gump、V.A. Tuan、R.D. Noble、J.L. Falconer、Ind. Eng. Chem. Res. 40、565(2001)
参考文献4. M. O. Daramola et al.、Sep. Sci. Technol. 45、21(2009)
【0102】
表1は、本発明の方法と他の方法とを比較して示したものであり、均一にb−配向したSL膜の特性およびそれを比較したものである。SFは分離要素を示したものであり、焼成方法(C)は、一般的に使用される低速加熱および低音冷却の方法である。
【0103】
以上で、本発明の特定部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、これらの具体的な技術は単に好ましい実施一例であって、これに本発明の範囲が限定されるないことはは自明である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求項とその等価物によって定義されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6