【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1実施態様は、第1基板形成粒子に成形された基材と、前記基材の少なくとも1つの表面上にある第1基板形成粒子によって形成された第1孔隙の一部または全部を埋めるために充填された第2基板形成粒子、および第2基板形成粒子が充填された部位に残っている第2孔隙の一部または全部を埋めるために充填された高分子とを含むことを特徴とする、少なくとも1つの表面の一部または全部が平らな基板を提供する。
【0018】
本発明の第2実施態様は、本発明による基板、ならびに前記基板の少なくとも1つの表面における平らな部分に、a軸、b軸およびc軸の1つ以上または全てが一定の規則に従って配向するように整列した複数の非球形種結晶を含む基板複合体を提供する。
【0019】
本発明の第3実施態様は、本発明による基板の少なくとも1つの表面の平らな部分に、a軸、b軸およびc軸のうち1つ以上または全てが一定の規則に従って配向するように、複数の非球形種結晶を整列させる第1工程、および複数の種結晶を成長させる溶液に前記整列した複数の種結晶を露出させ、2次成長法を用いて前記複数の種結晶から膜を形成および成長させる第2工程を含む、薄膜または厚膜を製造する方法、ならびに前記方法によって製造された膜を提供する。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本明細書における結晶軸a軸、b軸およびc軸の関係は、結晶軸a軸、b軸が形成する平面上に結晶軸c軸が存在しないというものである。一例として、結晶軸a軸、b軸およびc軸互いに垂直であってもよく、または結晶軸a軸とb軸が形成する平面上に結晶軸c軸は傾斜を成してもよい。
【0022】
複数の非球形種結晶の整列時に、非球形種結晶のa軸、b軸およびc軸の1つ以上または全てを一定の規則に従って配向させるためには、基板の表面が平らでなけれならない。さもなければ、基板上の凹凸面によって種結晶の軸がランダムな方向および角度に傾いてしまう。さらに、前記基板上に形成した薄膜または厚膜を分離膜として使用しようとする場合、基板は多孔性基板であることが好ましい。
【0023】
したがって、本発明によって少なくとも1つの表面の一部または全部が平らな基板を提供するために、第1基板形成粒子として成形された基材と、前記基材の少なくとも1つの表面上にある第1基板形成粒子によって形成された第1孔隙の一部または全部を埋めるために充填された第2基板形成粒子、および第2基板形成粒子が充填された部位に残っている第2孔隙の一部または全部を埋めるために充填された高分子とを、前記基板が具備していることを特徴とする。
【0024】
本発明による基板は、第1基板形成粒子に成形された基材表面上に第2基板形成粒子を置いて圧力を加え、第1基板形成粒子によって形成された第1孔隙に第2基板形成粒子を挿入して焼成した後、高分子溶液を表面コーティングして加熱し、溶媒を乾燥するか、または高分子を硬化させて製造することができる。
【0025】
第2孔隙の一部または全部に充填された高分子は、今後焼成などの方法によって除去され、前記基板上に形成させた薄膜または厚膜を分離膜として使用することが
できる。
【0026】
第1基板形成粒子の平均粒径は、第2基板形成粒子の平均粒径よりも大きいことが好ましい。第1基板形成粒子および第2の基板を形成粒子のサイズは限定されないが、目的に応じてマイクロスケールまたはナノスケールであってもよい。
【0027】
第1基板形成粒子で成形された基材の表面上に物理的圧力で第2基板形成粒子を注入することによって、基板の表面に主に第2基板形成粒子が配置される。
【0028】
本発明による基板において、1つ以上の第2基板形成粒子は、第1基板形成粒子によって形成された1つの第1孔隙に充填されて、第1基板形成粒子によって形成された表面凹凸の大きさをより小さいサイズの表面凹凸に転換させる。
【0029】
次いで、第2基板形成粒子が充填された部位に残っている第2孔隙の一部または全部に高分子が充填されると、滑らかで平らな表面が形成される。
【0030】
第1基板形成粒子と第2基板形成粒子は、同じかまたは異なる材料であってもよい。
【0031】
第1基板形成粒子と第2基板形成粒子の非限定的な例としては、(i)金属および非金属元素が単独または2種以上含まれている酸化物であり、表面にヒドロキシ基を有する物質、(ii)チオール基(−SH)またはアミン基(−NH
2)と結合する単一金属または金属の合金、(iii)表面に官能基を有する高分子、(iv)半導体化合物、もしくは(v)ゼオライトまたはゼオタイプ分子篩、またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0032】
第1基板形成粒子と第2基板形成粒子は、それぞれ独立して 規則的多孔性物質 (ordered porous materials)であることが好ましい。前記基板上に形成させた薄膜または厚膜を分離膜として使用する際に基板によって分離膜の役割を果たせないようにすることを防ぐためである。一実施例では、第1基板形成粒子と第2基板形成粒子として多孔性シリカを使用した。
【0033】
一方、高分子の非制限的な例としては、セルロース、澱粉(例:アミロースおよびアミロペクチン)、およびリグニンなどの天然高分子、合成高分子、または導電性高分子がある。高分子でありながら溶媒に溶解し、前記第2孔隙の一部または全部を埋めることのできるものであれば、高分子の種類およびサイズは限定されない。前記高分子は、表面にヒドロキシル基を有しているか、またはヒドロキシル基を有するように処理が可能な高分子であることが好ましい。後に本発明による基板上に複数の種結晶を付着させる場合に、付着力を向上させることができるからである。
【0034】
また、本発明による薄膜または厚膜を製造する方法は、本発明による前記基板の少なくとも1つの表面の平らな部分に、a軸、b軸およびc軸の1つ以上または全てが一定の規則に従って配向するように、複数の非球形種結晶を整列させる第1工程と、複数の種結晶を成長させる溶液に前記整列した複数の種結晶を露出させ、2次成長法を用いて前記複数の種結晶から膜を形成および成長させる第2工程を含む。
【0035】
種結晶は、規則的多孔性物質であることが好ましい。
【0036】
本発明により使用される種結晶および形成された膜の骨格成分は、特に限定されない。
【0037】
種結晶および形成された膜は、ゼオライトまたはゼオタイプ分子篩であってもよい。また、種結晶および形成された膜は、MFI構造を有してもよい。
【0038】
本明細書におけるゼオライトとは、(i)アルカリまたはアルカリ土類金属のケイ酸アルミニウム水和物である鉱物の総称であるだけではなく、(II)ゼオライトの骨格構造を構成する元素であるシリコン(Si)とアルミニウム(Al)の代わりに、他の様々な要素でシリコンやアルミニウムの一部または全部を置き換えたゼオタイプ分子篩も含まれており、広い意味では、表面にヒドロキシル基を有する全ての多孔性酸化物または硫化物を含む。
【0039】
「分子篩」とは、サイズの異なる分子が混合しているとき、これらを分離させることができる多孔性物質を意味する。
【0040】
MFI構造のゼオライトまたはゼオタイプ分子篩の例としては、ZSM−5、シリカライト、TS−1、AZ−1、Bor−C、ボラライトC 、エンシライト 、FZ−1、LZ−105、モノクリニックH−ZSM−5 ムティーナ沸石(mutinaite)、NU−4、NU−5、TSZ、TSZ−III、TZ−01、USC−4、USI−108、ZBHおよびZKQ−1Bなどが挙げられる。
【0041】
その他の種結晶の例は、韓国特許公開2009−120846号およびUS7,357,836に開示されている。
【0042】
一方、本発明による薄膜または厚膜の製造方法における第1工程は、後に2次成長の鋳型として使用される基板上に整列した複数の非球形種結晶が、結晶軸a軸、b軸およびc軸のうちの1つ以上または全てが一定の規則に従って配向するように整列していることを特徴とする。
【0043】
非球形シリカライト−1または複数のゼオライトベータ種結晶は、規則的多孔性物質であり、結晶内にa軸、b軸、および/またはc軸にチャンネルを有している(
図1A、B、C)。
【0044】
例えば、基板上に整列した複数の種結晶は、複数の種結晶の全てのa軸が互いに平行であったり、複数の種結晶の全てのb軸が互いに平行であったり、複数の種結晶の全てのc軸が平行であったり、またはこれらの組み合わせによって配向したものであってもよい。
【0045】
また、基板上に整列した複数の種結晶は、a軸、b軸、c軸が基板面に対して垂直に配向したものであってもよい。
【0046】
一方、基板上にa軸、b軸およびc軸の1つ以上または全てが一定の規則に従って配向した複数の種結晶は、単一層を形成することが好ましい(
図1A、B、C)。
【0047】
基板上に、複数の種結晶を置いた後、物理的圧力によって複数の種結晶のa軸、b軸、c軸配向を整列させることができる。
【0048】
特許文献1には、基板上に複数のMFI型種結晶の全てのb軸を垂直方向に配向させる方法が開示されており、基板上に複数の結晶のa軸、b軸、および/またはc軸配向を調節することができる技術は特許文献3および特許文献に記載されている。したがって、基板上にa軸、b軸およびc軸配向のうち少なくとも1つまたは全てが整列した複数の種結晶は、特許文献1、特許文献3および特許文献4に記載された方法によって、あるいはこれを応用して準備することができる。
【0049】
具体的には、第1工程において、基板上にa軸、b軸およびc軸配向が全て整列した複数の種結晶は、以下のような工程によって準備することができる:
【0050】
[第1工程]
複数の種結晶の位置および配向を固定することができる陰刻または陽核が表面に形成された基板を準備するA工程と、
前記基板上に、複数の種結晶を置いた後、物理的圧力により種結晶の一部または全部を陰刻または陽核によって形成された孔隙に挿入するB工程とを含む工程。
【0051】
[第2工程]
複数の種結晶の位置および配向を固定すことができる陰刻または陽刻が表面に形成された鋳型基板を準備するA工程と、
前記鋳型基板上に複数の種結晶を置いた後、物理的圧力により種結晶の一部または全部を陰刻または陽核によって形成された孔隙に挿入して複数の種結晶を鋳型基板上に整列させるB工程と、
複数の種結晶が整列している鋳型基板と被印刷体基板とを接触させて複数の前記種結晶を被印刷体基板上に転写させるC工程とを含む工程。
【0052】
前記工程において、前記孔隙の形状は前記種結晶の結晶軸配向を調整するために、孔隙内に挿入される種結晶の所定の部分の形状と対応するように形成されたものが好ましい。
【0053】
前記工程において、物理的圧力はラビング (rubbing)またはプレッシング(pressing)によって加えることができる。
【0054】
一方、基板または鋳型基板と複数の種結晶は、付加される物理的圧力によって水素結合、イオン結合、共有結合、配位結合、またはファンデルワールス結合を形成することができる。
【0055】
基板または鋳型基板の表面に形成された陰刻または陽刻は、基板自体に直接刻印されたり、フォトレジストによって形成されたり、犠牲層をコーティングした後、レーザーアブレーションによって形成されたり、インクジェット印刷法によって形成され得る。
【0056】
フォトレジストやインクは、基板上に複数の種結晶を整列させた後除去してもよいが、2次成長時にも継続して種結晶の支持体として存在することができる。第1工程で基板上に整列した複数の種結晶は、隣接する種結晶と接触または離隔してもよいが、フォトレジストやインクが2次成長時にも種結晶の支持体としての役割を十分に果たすためには厚さが必要であるため、隣接する複数の種結晶は離間していることが好ましい。
【0057】
第1工程以前に、基板と複数の種結晶とを結合させうるカップリング剤を基板表面上に使用することができる。本明細書における用語「カップリング剤」とは、基板と種結晶との間の結合を可能にする、末端に官能基を有する全ての化合物を意味する。好ましいカップリング剤ならびに、その作用機序および使用例は、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0058】
第2工程では、種結晶の表面から2次成長によって複数の種結晶が2次元的に互いに連結しながら、3次元的に垂直成長して膜を形成する。
【0059】
このとき、シリカライト−1またはゼオライトベータのように規則的多孔性物質である複数の種結晶は、結晶内にチャンネルを形成しているので、前記種結晶のチャンネルがそれから形成された膜にまで拡張し得る。
【0060】
隣接する複数の種結晶の少なくとも1つの結晶軸配向が同じブロック内で形成された膜は、基板面に平行な軸方向にチャンネルが連続的に連結されて拡張されたり、基板面に垂直または傾斜を成した軸方向にチャンネルが連続的に連結されて拡張されたり、もしくは2つの条件を全て満たすことができる。
【0061】
第2工程では、結晶核生成反応(crystal nucleation)が結晶成長溶液中または種結晶の表面で起こらないことが好ましい。
【0062】
第2工程で使用される種結晶成長溶液中の溶媒は、水または有機溶媒であってもよい。
【0063】
第2工程で使用される種結晶成長溶液は、構造誘導剤(Structure directing agent)を含有することが好ましい。
【0064】
構造誘導剤は、特定の結晶構造の鋳型の役割を果たす物質であり、構造誘導剤の電荷分布、サイズ、および幾何学的形状が構造誘導特性(structure directing properties)を提供する。本発明による第2工程で使用される構造誘導剤は、複数の種結晶の表面から2次成長のみを誘導して、種結晶成長溶液中または種結晶の表面において結晶核生成反応を誘導しない種類であることが好ましい。結晶核生成反応さえ誘導しない限り、各結晶軸に応じた結晶成長速度は重要ではない。
【0065】
第1工程で使用される種結晶も種子構造誘導剤を使用して形成することができる。種子構造誘導剤を使用すると、結晶核生成反応を誘導するため、種子の構造誘導剤を第2工程の構造誘導剤として使用することは好ましくない。したがって、第2工程で使用される種結晶成長溶液中の構造誘導剤(SDA)は、種子構造誘導剤と異なることが好ましい。
【0066】
種結晶および形成された膜がゼオライトまたはゼオタイプ分子篩である場合、第2工程で使用される構造誘導剤は、アミン、イミンまたは第4級アンモニウム塩であってもよく、好ましくは、下記化1で示される第4級水酸化アンモニウム またはこれを繰り返し単位としたオリゴマーであってもよい。
【0067】
【化1】
【0068】
前記式で、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、C
1−C
30のアルキル、アラルキルまたはアリール基を表し、前記C
1−C
30のアルキル、アラルキルまたはアリール基はヘテロ原子として酸素、窒素、硫黄、リン、または金属原子を含むことができ、オリゴマー中の繰り返し単位の数は、2〜10であってもよく、2〜4個が好ましい。
【0069】
化学式1における用語「C
1−C
30のアルキル」とは、炭素数1〜30の直鎖または分岐飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、トリデシル、ペンタデシルおよびヘプタデシルなどを含む。好ましくは、アルキル基は、C
1−C
4直鎖または分岐鎖アルキル基である。
【0070】
用語「アラルキル」とは、1つまたはそれ以上のアルキル基による構造に結合したアリール基を意味し、好ましくはベンジル基である。
【0071】
用語「アリール基」とは、全体的にまたは部分的に不飽和された置換もしくは非置換のモノサイクリックまたはポリサイクリック炭素環を意味し、好ましくは、モノアリールまたはビアリールである。モノアリールは、炭素数5〜6を有することが好ましく、ビアリールは、炭素数9〜10を有することが好ましい。最も好ましくは、前記アリールは、置換または非置換のフェニルである。
【0072】
一方、種結晶および形成された膜がゼオライトまたはゼオタイプ分子篩である場合、第2工程で使用される種結晶成長溶液は、構造誘導剤以外にも下記ような原料物質を含むことができる:
1)アルミニウム(Al)の原料としてアルミニウムイソプロポキシドのようなアルミニウムに有機物が結合された有機無機ハイブリッド物質、硫酸アルミニウムのようなAlが含まれている塩形態の物質、Alのみからなる粉末または塊状の金属物質およびアルミナなどのアルミニウム酸化物の全ての物質。
2)シリコン原料としてTEOS(テトラエチルオーソシリケート)のようなシリコンに有機物が結合された有機無機ハイブリッド物質、ケイ酸ナトリウムのようなSi元素が含まれている塩形態の物質、Siのみからなる粉末あるいは塊状の物質、ガラス粉末および石英などのシリコン酸化物の全ての物質。
3)F原料としてHF、NH
4F、NaF、KFなどのFを含む全ての物質。
4)アルミニウムとシリコンに加えて、骨格の他の種類の元素を挿入するために使用される物質。
【0073】
本発明の好ましい実施態様によると、ゼオライトまたはゼオタイプ分子篩の種結晶成長溶液は、[TEOS]
X[TEAOH]
Y[(NH
4)
2SiF
6]
Z[H
2O]
Wの組成からなる。前記組成からX:Y:Z:Wの含量比は、(0.1〜30):(0.1〜50):(0.01〜50):(1〜500)であり、好ましくは(0.5〜15):(0.5 〜25):(0.05〜25):(25〜400)、より好ましくは(1.5〜10):(1.0〜15):(0.1〜15):(40〜200)、最も好ましくは(3 〜6):(1.5〜5):(0.2〜5):(60〜100)である。
【0074】
本方法におけるゼオライトまたはゼオタイプ分子篩体のための種結晶成長溶液は、前記組成物以外にもさらにチタンなどの遷移金属、ガリウムなどの13族、およびジェルマニウムなどの14族元素などを添加することができるが、これに限定されるものではない。これらの追加的な原料物質の比率は0.1〜30の比率の範囲に限定される。
【0075】
本方法において、膜形成および成長のための反応温度は、使用される種結晶成長溶液の組成または作製しようとする物質に応じて50〜250℃まで、さまざまに変化することができる。好ましくは、その反応温度は、80〜200℃であり、より好ましくは120〜180℃である。また、反応温度は、常に固定されたものではなく、様々な段階に温度を変化させながら反応させることができる。
【0076】
本方法において、膜形成および成長のための反応時間は、0.5時間〜20日まで様々に変えることができる。反応時間は、好ましくは2時間〜15日、より好ましくは6時間〜2日、最も好ましくは10時間〜1日である。
【0077】
本発明によって製造された膜は分子分離膜、半導体産業における低誘電体物質、非線形光学物質、水分解装置用薄膜、太陽電池用薄膜、光学用部品、航空機用の内部または外部部品、化粧品容器、生活容器、鏡およびその他のゼオライトのナノ細孔の特性を利用する薄膜など多様に応用できるが、これに限定されるものではない。