(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
可変の周期で動作するよう構成された表示パネルとともに設置される電極群を有するセンサに接続されたセンサコントローラと、該センサコントローラと双方向通信を行うアクティブスタイラスとを用いた方法であって、
前記センサコントローラが、前記表示パネルの現在の動作周期を取得するステップと、
前記センサコントローラが、取得した現在の前記動作周期に対応する同期の基準となるアップリンク信号を生成して未検出あるいは既検出の前記アクティブスタイラスに対して前記動作周期で送信するステップと
を含む方法。
前記アップリンク信号は、未検出あるいは既検出の前記アクティブスタイラスに対して前記アップリンク信号を基準としてダウンリンク信号を送信する時刻を指定する信号である
請求項1に記載の方法。
前記センサコントローラは、前記少なくとも1つのブランク期間のうち、画像フレームに対応した1フレームの最初に位置する1つを前記第1のブランク期間として使用する
請求項6に記載の方法。
前記ダウンリンク信号を送信するステップは、前記少なくとも1つの第2のブランク期間のうちのN個(N≧0)において位置信号を送信する一方、前記少なくとも1つの第2のブランク期間のうちのM個(M≧0)において前記アクティブスタイラスの操作状態によって変化するデータ信号を送信する
請求項8乃至13のいずれか一項に記載の方法。
可変の周期で動作するよう構成された表示パネルとともに設置される電極群を有するセンサに接続されたセンサコントローラと、該センサコントローラと双方向通信を行うアクティブスタイラスとを含むシステムであって、
前記センサコントローラが、前記表示パネルの現在の前記動作周期に対応する同期の基準となり、かつ、前記アクティブスタイラスがダウンリンク信号を送信する時刻を指定する基準となるアップリンク信号を前記動作周期で未検出あるいは既検出の前記アクティブスタイラスに対して送信し、
前記アップリンク信号を検出した前記アクティブスタイラスが、検出した前記アップリンク信号を基準として指定された時刻にダウンリンク信号を送信し、
前記センサコントローラが、前記ダウンリンク信号を検出することで前記アクティブスタイラスを検出する
システム。
可変の周期で動作するよう構成された表示パネルとともに設置される電極群を有するセンサに接続され、アクティブスタイラスと双方向通信を行うセンサコントローラであって、
前記表示パネルの現在の動作周期を特定し、特定した現在の前記動作周期に対応するダウリンク信号の送信動作の同期の基準となるアップリンク信号を前記アクティブスタイラスに対して送信する
センサコントローラ。
可変の周期で動作するよう構成された表示パネルとともに設置される電極群を有するセンサに接続されたセンサコントローラと双方向通信を行うアクティブスタイラスであって、
前記センサコントローラから前記表示パネルの現在の動作周期で繰り返し送信される同期の基準となるアップリンク信号を受信し、
前記アップリンク信号により指定される時刻で、前記センサコントローラに対しダウンリンク信号を送信する
アクティブスタイラス。
前記センサコントローラは、前記少なくとも1つの第2のブランク期間の少なくとも一部において、前記アップリンク信号に比して時間長が短い信号であって、それぞれの前記第2のブランク期間を示す補助アップリンク信号を送信し、
前記アクティブスタイラスは、前記補助アップリンク信号の受信に応じてそれぞれの前記第2のブランク期間内に前記ダウンリンク信号の送信を開始する
請求項24又は25に記載のアクティブスタイラス。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。まず第1の実施の形態として、アウトセル型のシステムに本発明を適用した場合について説明する。続いて第2の実施の形態として、インセル型のシステムに本発明を適用した場合について説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態による位置入力システム1の概要図である。位置入力システム1はアクティブ静電方式を利用したシステムである。位置入力システム1は、指示位置P(P0〜Pk〜Pn)と、筆圧等の操作状態データODを電子機器3に入力するためのスタイラス2(アクティブスタイラス)と、液晶パネル33に重畳されたセンサボード34を用いて現在のスタイラス2の指示位置Pを導出し操作状態データODとともに電子機器制御部30に出力するセンサコントローラ31とを含み構成される。センサコントローラ31は、液晶パネル33及び液晶駆動部32と、これらを制御する電子機器制御部30とを備えた電子機器3に備えられる。
【0025】
スタイラス2は、センサコントローラ31から所定の周期で送信されるアップリンク信号USを検出し、検出されたアップリンク信号USを基準時刻として指示された時間にダウンリンク信号DSを送信するための電源、通信回路、及び電極を備えているアクティブ静電方式のスタイラスである。指示された時間とは、(1)センサコントローラ31がスタイラス2を検出する前に事前に指定されている時間(以下、アップリンク信号USの直後の時間)である場合と、互いを検出した後に(2)アップリンク信号USに含まれるコマンドCC_UPによってアップリンク信号USを基準時刻として明示的に指定された時間である場合とがある。
【0026】
ダウンリンク信号DSには、スタイラス2が検出された位置に存在することを示す位置信号D_DP、及び、筆圧情報等の操作状態データOD等のデータにより変調されたデータ信号OD_DPが含まれる。位置信号D_DPは、センサコントローラ31が後述のアップリンク信号USを送信し、これに対してスタイラス2が応答することでセンサコントローラ31がスタイラス2を検出するための応答信号としても利用される。以下では、これら位置信号D_DPとデータ信号OD_DPとを区別しない場合にダウンリンク信号DSと総称する。
【0027】
センサコントローラ31は、液晶パネル33の法線方向に液晶パネル33と対向するように設けられたセンサボード34と接続され、センサボード34を介してスタイラス2との間で通信を行う集積回路(IC:Integrated Circuit)である。センサコントローラ31は、液晶駆動部32の動作状態に基づいてアップリンク信号USを送信する周期及び時間を管理し、この周期及び時間でアップリンク信号USを送信し、このアップリンク信号USを基準時刻として送信されるダウンリンク信号DSを検出することによりスタイラス2を検出する。またその検出位置に基づいてスタイラス2の指示位置Pを導出し、データ信号OD_DPに含まれたデータから筆圧等の操作状態データODを抽出し、操作状態データODを指示位置Pとともに電子機器制御部30に供給する。
【0028】
液晶パネル33は、パネル面を形成する2方向(
図1に示すX方向及びY方向)に沿ってマトリクス状に並ぶ複数の画素を含む。各画素は画素電極及び液晶を含んで構成される。また、液晶パネル33は他に、偏光板、ガラス基板、カラーフィルタ、共通電極、バックライト光源等を有して構成される。このうち共通電極はパネル面を複数の領域に分割してなる領域ごとに設けられるもので、表示動作期間には画素電極との間で画素の値に応じた電位差が形成されるように固定あるいは可変の電圧が印加される。
【0029】
液晶駆動部32は、電子機器制御部30から供給されるビデオ信号Vに基づいて駆動信号LD(ゲート・ソース電圧等)を生成する。駆動信号LDは、液晶パネル33内の各画素の液晶の偏光を制御し、ビデオ信号Vに応じた映像を表示する役割を果たす。駆動信号LDには高周波数の成分が含まれており、駆動信号LDが液晶パネル33に供給される度に、センサボード34との間に形成された寄生容量(図中C2で代表)を介して、センサコントローラ31が受信しようとする信号にも液晶ノイズLCDnzが含まれることになる。
【0030】
次に、ユーザのスタイラス2の典型的な操作方法に照らして位置入力システム1の動作の概要を説明する。
【0031】
ユーザは、スタイラス2を操作するとき、まずスタイラス2を操作パネル35に近づける操作(ペンダウン操作)を行う。ペンダウン操作によるスタイラス2の移動は、操作パネル35の法線方向(
図1に示すZ方向)の成分を含む空間移動である。スタイラス2が、
図1に示すように指示位置P0付近でセンサボード34に近接すると、センサボード34を構成する電極群とスタイラス2の先端との間で信号を送受信するために十分な結合容量Cが形成される。スタイラス2はこの結合容量Cを介してセンサコントローラ31が送信したアップリンク信号USを検出することが可能になる。スタイラス2は、アップリンク信号USに同期するための内部処理を行い、アップリンク信号USを基準時刻としてセンサコントローラ31が指定する時間(例えば直後の時間)にダウンリンク信号DSを送信する。センサコントローラ31は、スタイラス2が送信したダウンリンク信号DSをノイズLCDnzの影響等を受けずに受信できた場合には、スタイラス2の検出と指示位置Pの導出等の処理を開始することができる。
【0032】
ペンダウン操作の後、ユーザはスタイラス2の先端を操作パネル35に接触させた状態で、例えば、
図1に示すP0〜Pnまでの軌跡Pathを描くように、スタイラス2の先端を移動させる。この間、スタイラス2は、アップリンク信号USにより与えられた基準時刻に基づいて指示される時間に位置信号D_DPとデータ信号OD_DPとの送信を繰り返す。この間、結合容量Cの値はペンダウン時に比して比較的大きい値となる。
【0033】
ユーザは、スタイラス2の先端を操作パネル35から離す操作(ペンアップ操作)を行う。ペンアップ操作はペンダウン操作とは逆の操作である。指示位置Pn付近で十分な結合容量Cが形成されなくなるほどセンサコントローラ31とスタイラス2とが離間すると、スタイラス2とセンサコントローラ31の間で信号の送受信ができなくなる。送受信ができなくなった後であっても、一定期間はスタイラス2とセンサコントローラ31それぞれの内部状態として基準時刻とその周期とが維持される。一定期間が経過すると、スタイラス2とセンサコントローラ31それぞれの内部状態としての基準時刻が解除される。
【0034】
スタイラス2がアップリンク信号USを検出できないことが原因であるか、あるいは、スタイラス2から返信されたダウンリンク信号DSをセンサコントローラ31が検出できないことが原因であるかを問わず、スタイラス2がペンダウン操作をされ検出可能範囲に入っているにもかかわらず、液晶ノイズLCDnzによりセンサコントローラ31がスタイラス2から送信されたダウンリンク信号DSを検出できなかった場合には、センサコントローラ31がスタイラス2を検出するまでの時間が少なくとも次のアップリンク信号USの送信まで遅れることになる。
【0035】
センサコントローラ31がスタイラス2を検出することが遅れることは、例えばセンサコントローラ31による座標検出処理や電子機器制御部30での座標位置のカーソル表示処理等後続の処理の遅れとなる。ここで、スタイラス2がペンダウン操作を行っている時間は、ユーザがスタイラス2を操作パネル上で利用開始している時間であり、後続の表示処理の遅れはユーザが体感する位置入力システム1の応答遅延となってしまう。
【0036】
そこで、本実施の形態では、ユーザがスタイラス2のペンダウン操作をすることでスタイラス2がセンサコントローラ31の検出可能範囲に入ったときに、早期かつより高い確率でセンサコントローラ31がスタイラス2を検出することができることを目的とする。
【0037】
具体的には、センサコントローラ31は、液晶ノイズLCDnzが比較的に少ないブランク期間BPの発生周期毎ににスタイラス2からダウンリンク信号DSが送信されるように、スタイラス2に対して液晶パネル33の動作の周期(動作周期VT)でアップリンク信号USを送信する。
【0038】
図2は、スタイラス2の機能ブロックを示す略ブロック図である。同図に示すように、スタイラス2は、電極20、送受信切替部21、発振部22、送信部23、受信部24、操作情報検出部25、操作入力部26、構成情報保持部27、及び通信制御部28を含み構成される。
【0039】
電極20は、ダウンリンク信号DSあるいはアップリンク信号USに対応した電荷が誘導される導体である。送受信切替部21は、通信制御部28から供給される切替信号S_Selに基づいて、電極20と送信部23又は受信部24との間の接続状態を切り替えるスイッチである。送受信切替部21は、送信と受信とを時分割で切り替えるために用いられる。
【0040】
発振部22は、通信制御部28から供給される周波数設定信号F_selに基づいてセンサコントローラ31とスタイラス2との間で通信に用いる周波数のキャリア信号を生成する発振回路である。キャリア信号は正弦波であってもクロックパルスの矩形波であってもよい。
【0041】
受信部24は、電極20に誘導された電荷量の変化(信号)を検波して復調することで信号に含まれた探索パターンD_UPあるいはコマンドCC_UPを抽出して通信制御部28に出力するよう構成される。アップリンク信号USの変調方法として、拡散符号を用いた変調を行う場合(詳しくは第2の実施の形態で説明する)には、受信した信号を相関器により予め記憶している拡散符号と受信信号との相関演算を行い、探索パターンD_UPあるいはコマンドCC_UPを抽出する。
【0042】
送信部23は、通信制御部28から供給されたデータに基づいてダウンリンク信号DSを生成し、電極20に供給することでセンサコントローラ31に対して送信する。位置信号D_DPを送信する際には、発振部22から与えられるキャリア信号をそのまま変調せず出力する。データ信号OD_DPを送信する際には、操作状態データODや構成データCD等のデータを符号化して送信デジタル信号を生成し、これにより発振部22から与えられるキャリア信号を変調することによってデータ信号OD_DPを生成する。
【0043】
操作情報検出部25は、スタイラス2の側面に設けられた押しボタンなどである操作入力部26のオンオフなどの操作状態、図示しない筆圧検出部により検出された筆圧Fの値、又は、スタイラス2の駆動電源であるバッテリの残量データなど、スタイラス2の操作状態によって変化する動的なデータである操作状態データODを取得し、通信制御部28に適宜供給する。
【0044】
構成情報保持部27は、上述したスタイラス識別子SIDの他、スタイラス2のメーカーを示すベンダID、スタイラス2のペン先のタイプ(ボールペン、ブラシなど)、操作入力部26の数など、スタイラス2の操作状態によって変化しない静的なデータである構成データCDを保持し、通信制御部28に供給する。
【0045】
通信制御部28は、ペンダウン操作の開始後に受信部24が検出したアップリンク信号USの受信時刻を基準時刻としてセンサコントローラ31に指示された時間にダウンリンク信号DSが送信されるように送信部23を制御する。指示された時間とは、(1)センサコントローラ31がスタイラス2を検出完了するまでの間は、スタイラス2とセンサコントローラ31との間で事前に決まっている時間であり、具体的には探索パターンD_UPを含むアップリンク信号USを検出した直後(送受信の切り替えギャップを挟んでもよい)の時間である。また、(2)センサコントローラ31がスタイラス2を検出した後においては、アップリンク信号USに含まれるコマンドCC_UPによってアップリンク信号USを基準時刻として明示的に指定された時間である。(2)の場合、通信制御部28は送信部23に、コマンドCC_UPによって指定されたデータ(操作状態データODや構成データCDを含む)を含むデータ信号OD_DPを送信させる。また、通信制御部28は、通信設定テーブルを保持し、一度検出された基準時刻時間のタイミングや、通信に用いる時間(時間スロット等)あるいは周波数等を保持する。
【0046】
図3は、センサコントローラ31の機能ブロックを示す略ブロック図である。本実施の形態のシステムはアウトセル型に該当する。液晶パネル33の外部に(上部に)透明接着層等を介してセンサボード34が載設される。
【0047】
センサボード34は、
図1に示した操作パネル35と平行な面を形成するように2次元に配設された行電極群45及び列電極群46を含む。これら行電極群45及び列電極群46は、液晶パネル33を構成する電極(画素電極、共通電極)とは別に設けられている。行電極群45に現れる信号には、液晶パネル33で発生する液晶ノイズLCDnzが含まれる。
【0048】
センサコントローラ31は、センサボード34に接続される集積回路であり、
図3に示すように、送受信切替部47、発振部40、送信部41、受信部42、指示体検出部43、及び動作周期取得部44を含み構成される。
【0049】
送受信切替部47は、指示体検出部43から供給される切替信号S_Selに基づいて、行電極群45を構成する各電極と後述する送信部41又は受信部42との間の接続状態を切り替えるスイッチ群である。切替信号S_Selは、指示体検出部43がスタイラス2に向けてアップリンク信号USを送信する時間(及び、指タッチの検出を行う際)には行電極群45が送信部41に接続され、スタイラス2からの信号を受信する際には行電極群45が受信部42に接続されることを指示する信号である。
【0050】
発振部40は、指示体検出部43から供給される周波数設定信号F_selに基づく周波数の正弦波(又は矩形波)の信号を生成する発振回路である。
【0051】
送信部41は、指示体検出部43の指示するタイミングで指示体検出部43から供給される探索パターンD_UP及びコマンドCC_UPにより発振部40から与えられるキャリア信号を変調して、行電極群45にアップリンク信号USを出力する。
【0052】
受信部42は、指示体検出部43の指示するタイミングで指示体検出部43のダウンリンク信号DSの受信動作を実行する。受信期間にダウンリンク信号DSが検出された場合には、受信部42はデータ信号OD_DPに含まれた操作状態データOD等を抽出して指示体検出部43に供給するとともに、当該データ信号OD_DPに対応するダウンリンク信号DSを受信した電極を示す位置情報Posを取得して指示体検出部43に供給する。
【0053】
動作周期取得部44は、液晶駆動部32から出力される駆動信号LD若しくはリフレッシュレートRr、又は、監視した液晶ノイズLCDnzの状況などに基づいて、液晶駆動部32による液晶パネル33の制御の周期を示す動作周期VT(
図7参照)と、動作周期VTで液晶ノイズLCDnzの出現頻度が小さくなる(他の期間に比して粗となる)期間であるブランク期間BP(
図4、
図7参照)とを特定する機能部である。ブランク期間BPは、リフレッシュレートRrに対応する動作周期VTから表示動作期間を除いた期間であり、
図7を用いて後述する通り、本実施の形態では垂直ブランキング期間VBとなる。
【0054】
図3のようなアウトセル型の位置入力システムにおいては、液晶駆動部32とセンサコントローラ31とは、互いに独立して設計された別々の集積回路によって構成されており、駆動信号LD又はリフレッシュレートRrを取り出すための端子が液晶駆動部32に設けられているとは限らない。そこで、動作周期取得部44は、可能な場合には液晶駆動部32から駆動信号LD又はリフレッシュレートRrの供給を受け、これらから動作周期VT及びブランク期間BPを抽出する一方、液晶駆動部32から駆動信号LD又はリフレッシュレートRrの供給を受けることが不可能な場合には、液晶ノイズLCDnzを監視してその粗密を検出することによって動作周期VT及びブランク期間BPを抽出する。
【0055】
指示体検出部43は、動作周期取得部44によって取得された動作周期VT及びブランク期間BPに、未検出のスタイラス2を検出するための通信リソースを割り当て通信リソーステーブルCRTblに格納する。また、割り当てられた通信リソースで探索パターンD_UPを含むアップリンク信号USを動作周期毎に送信するための制御を行う。
【0056】
探索パターンD_UPは、スタイラス2に既知とされたビットパターンを含むデータであり、例えば、0あるいは1が連続するあるいは交互に繰り返されるデータである。探索パターンD_UPによる変調により生成されたアップリンク信号USが、これを検出するスタイラス2に同期の基準タイミングを与える信号であれば探索パターンD_UPのビット長あるいは内容は問わない。1ビットあるいは複数のビットを含む探索パターンD_UPが含まれたアップリンク信号USは、アップリンク信号USの受信時刻を基準時刻として即座にダウンリンク信号DSを送信するよう、スタイラス2に指示する信号となる。
【0057】
指示体検出部43は、動作周期取得部44によって抽出された動作周期VT及びブランク期間BPを示す動作モード情報等に基づいて、動作モード情報等に対して予め設定されている有限個のアップリンク信号USの送信周期(時間スロットS0の周期)の中から一の送信周期を決定するとしてもよい。こうして複数の動作周期VTの中から決定されたアップリンク信号USの送信周期はブランク期間BPに加えて通信リソーステーブルCRTblに格納される通信リソースの一つの構成要素となる。
【0058】
指示体検出部43は、スタイラス2を検出した後は、既検出のスタイラス2に対して位置信号D_DPとデータ信号OD_DPとを送信する時間を割り当て、通信リソーステーブルCRTblに格納する。また、位置信号D_DPやデータ信号OD_DPなど送信すべきデータの内容と、これらの信号をスタイラス2が送信するタイミング(アップリンク信号USの受信時刻を基準とするタイミング)とをスタイラス2に指示するためのコマンドCC_UPを含むアップリンク信号USを送信する。
【0059】
図4は、ある1つの液晶パネル33における駆動信号LDと液晶ノイズLCDnzの関係の例を説明する図である。同図の上側の図は、下側に示す信号波形図の一部拡大図となっている。
【0060】
図4の信号波形図は、駆動信号LDの一種である水平同期信号HSYNCと、この水平同期信号HSYNCを受けてセンサボード34上で検出される液晶ノイズLCDnzの波形の測定結果の一例である。同図において、横軸は時間を示し、縦軸は信号のレベルを示している。
【0061】
水平同期信号HSYNCは、典型的には帯状の映像ラインを液晶パネル33上で表示する際の表示期間の開始及び終了を通知する信号であり、
図4の上側の図に示すように、水平同期周期HIで立ち上がりエッジE1と立ち下がりエッジE2とが繰り返し現れる信号となる。立ち上がりエッジE1は表示期間の開始を示し、立ち下がりエッジE2は表示期間の終了を示す。
【0062】
上述したように、駆動信号LDの高周波成分は、センサボード34にとっては液晶ノイズLCDnzとなる。立ち上がりエッジE1及び立ち下がりエッジE2は水平同期信号HSYNCが高周波となるところであるから、これらのエッジに伴って、
図4の上側の図に示すように、液晶ノイズLCDnzが発生する。より具体的に言えば、立ち上がりエッジE1及び立ち下がりエッジE2のそれぞれから任意のノイズ期間NDにわたり、液晶ノイズLCDnzが大きい状態が継続する。これに対し、隣接するノイズ期間NDの間の時間、すなわち図示したノイズフリー期間NFにおいては、液晶ノイズLCDnzのレベルは無視できるほど小さくなる。
【0063】
水平同期周期HIは可変であり、
図4の下側の図に示すように、大きく分けて長い場合と短い場合とがある。これは、液晶パネル33の一部に非表示エリアが設けられることによるものである。以下、この点について、
図5を参照しながら詳しく説明する。
【0064】
図5は、液晶パネル33の表示面を示す図である。同図の外枠は表示面の全体を示しており、破線枠は有効に映像が表示されることになる表示エリアDAを示している。表示面の外縁と表示エリアDAの間の領域は、表示面内であっても実際に映像が表示されることのない非表示エリアとなる。
図5には、このうち表示エリアDAの上下に位置する部分を、垂直方向非表示エリアNDAとして特にハッチングで示している。少なくとも現在製造されている液晶パネル33においては、このような非表示エリアが不可避的に発生する。水平同期周期HIは、液晶駆動部32が表示エリアDAに対応する水平同期信号HSYNCを生成しているときに相対的に短くなり、液晶駆動部32が垂直方向非表示エリアNDAに対応する水平同期信号HSYNCを生成している間(垂直ブランキング期間VB(Vertical Blanking))に相対的に長くなる。
【0065】
図4の例に示す液晶パネル33の例では、ノイズフリー期間NFは、液晶駆動部32が表示エリアDAに対応する水平同期信号HSYNCを生成している間に相対的に短くなり(図示したノイズフリー期間NF_Dense)、液晶駆動部32が垂直方向非表示エリアNDAに対応する水平同期信号HSYNCを生成している間(垂直ブランキング期間VB)に相対的に長くなっている(図示したノイズフリー期間NF_Sparse)。このような液晶パネル33では、1画像フレーム期間の間に、液晶ノイズLCDnzの発生頻度が相対的に大きいノイズ期間NP(表示動作期間)と、少なくとも1つのブランク期間BP(液晶ノイズLCDnzの発生頻度が相対的に小さい期間)とが存在することになる。
【0066】
ここで、
図4の液晶パネル33の例では、ブランク期間BPにおける水平同期信号HSYNCのレベルは概ね高(High)の状態となっている。しかし、これはあくまで一例であって、ブランク期間BPにおける水平同期信号HSYNCのレベルが低(Low)の状態となる例も存在する。
【0067】
図6は、そのような例における駆動信号LDと液晶ノイズLCDnzの関係を説明する図である。この例でも、
図4の例と同様、ノイズフリー期間NFが表示エリアDAに対応するノイズフリー期間NF_Denseとなる期間と、ノイズフリー期間NFが垂直方向非表示エリアNDAに対応するノイズフリー期間NF_Sparseとなる期間とが、時間軸上に見て交互に現れる。後者は、液晶ノイズLCDnzが相対的に小さいブランク期間BPに対応する。そして、このブランク期間BP内における水平同期信号HSYNCのレベルは、
図6に示すように低(Low)となっている。
【0068】
このように、液晶パネル33の種類に応じて駆動信号LDの特性は異なるが、センサボード34で検出される液晶ノイズLCDnzには、リフレッシュレートRrの周期の中に相対的に密にノイズが発生するノイズ期間NPと、相対的に疎にノイズが発生するブランク期間BPとが存在する。また、リフレッシュレートRrの周期の中に、垂直ブランキング期間VBに対応するブランク期間BPが少なくとも1つは存在すると期待される。ここで、このブランク期間BPの発生間隔及び持続時間は、液晶パネル33に現在設定されているリフレッシュレートRrに応じて異なるものとなる。
【0069】
以下の説明では、動作周期取得部44は、液晶駆動部32からリフレッシュレートRrの供給を受け、供給されたリフレッシュレートRrに基づいて記憶された複数の動作周期VTのうちの一つを選択するよう構成される。そして、指示体検出部43は、上述したように予め複数のアップリンク信号USの送信周期を記憶しており、その中の一つを、動作周期取得部44によって選択された動作周期VTに応じて選択する。そして、選択した送信周期により、アップリンク信号USの送信を行う。
【0070】
図7は、液晶パネル33のリフレッシュレートRrと、アップリンク信号USの送信周期との関係を示す図である。
【0071】
図7に示す期間T_Rr1は、液晶パネル33のリフレッシュレートRrが第1のレート60Hz(60p)である期間である。この期間内における液晶パネル33の動作周期VTは、第1の動作周期VT1となる。第1の動作周期VT1の具体的な値は第1のレートの逆数であり、例えば第1のレートが60Hzである場合には約16.7msecとなる。画像P1〜P4は、この期間内に表示される画像を示している。また、
図7に示す期間T_Rr2は、液晶パネル33のリフレッシュレートRrが例えば第2のレート48Hz(48p)である期間である。この期間内における液晶パネル33の動作周期VTは、第2の動作周期VT2となる。第2の動作周期VT2の具体的な値は第2のレートの逆数であり、例えば第2のレートが48Hzである場合には約20msecとなる。画像P11〜P13は、この期間内に表示される画像を示している。
【0072】
図7から理解されるように、液晶パネル33上に表示される画像は、液晶パネル33の動作周期VTに等しい周期で更新される。また、画像が更新される都度、液晶ノイズLCDnzの発生間隔が疎となるブランク期間BPが少なくとも1回は現れる。同図では、画像P1〜P4,P11〜P13のそれぞれに対応するブランク期間BPを、ブランク期間BP1〜BP4,BP11〜BP13として図示している。
【0073】
図7の下側に示す通信リソーステーブルCRTblは、動作周期VTとアップリンク信号USの送信タイミングとの関係を示している。通信リソーステーブルCRTblにおいて、横方向は時間スロット(ただし、一部分のみを模式的に記載)を、縦方向は通信周波数を示している。
【0074】
センサコントローラ31は、スタイラス2を検出するために、図示した送信タイミング700でアップリンク信号USを送信するよう構成される。
図7に示す例では、送信タイミング700は各動作周期VTのうちブランク期間BPが存在している時間スロットS0を用いて送信され、したがって、アップリンク信号USの送信周期は動作周期VTと等しくなる。例えば、動作周期VTが第1の動作周期VT1(例えば約16.7msec)となる期間T_Rr1ではアップリンク信号USの送信周期もVT1(例えば約16.7msec)となり、動作周期VTが第2の動作周期VT2(例えば約20msec)となる期間T_Rr2ではアップリンク信号USの送信周期もVT2(例えば約25msec)となる。図示していないが、動作周期VTがさらに短くなるようなリフレッシュレートRrが設定される場合(例えば、120Hzや240Hz)には、それに応じて、アップリンク信号USの送信周期もより短い値となる。
【0075】
図7において期間T_Rr1と期間T_Rr2の間に示す期間T_Rr_chngは、リフレッシュレートRrを第1のレートから第2のレートに変更するために必要となる時間を示している。なお、このようなリフレッシュレートRr(描画タイミングの周期)の変更は、例えば液晶パネル33の動作モードが省電力モード等に変更された場合や、より滑らかな表示を行うために画像フレームの生成レートfpsを上げ、リフレッシュレートRrを120Hzや240Hz等に上げた場合などに発生する。
【0076】
図8は、液晶パネル33の動作周期VTと位置入力システム1における送信あるいは受信動作に割り振られる通信のリソースを示す通信リソーステーブルCRTblの例を示す図である。同図の例では、通信リソースは、周波数f0、f1、f2と、例として20個の時間スロットS0〜S19で管理されている。このスロット数は動作周期VTによって変化する。
【0077】
図8は、スタイラス2を検出するための探索パターンを含むアップリンク信号USの送信タイミング700、未検出のスタイラス2がアップリンク信号USに応答するための応答タイミング719、既検出のスタイラス2が位置信号D_DPや操作状態データODを含むデータ信号OD_DPを送信するための送信タイミング701,702を示している。
【0078】
図8や
図7に示すように、アップリンク信号USの送信タイミング700は、ブランク期間BP内の時間スロットS0に付与される。送信タイミング700が付与される周期(アップリンク信号USの送信周期)は、液晶パネル33のリフレッシュレートRrに依存して変化し、また、少なくとも1つのブランク期間BPに合致するようにセンサコントローラ31の起動後あるいはリセット後に一回決定される。センサコントローラ31は、リフレッシュレートRrの周期毎にブランク期間BPに該当する時間スロットS0で、スタイラス2を検出するまでの間、探索パターンD_UPを含むアップリンク信号USの送信を行うことになる。
【0079】
応答タイミング719は、スタイラス2が探索パターンD_UPを含むアップリンク信号USを検出した後、このアップリンク信号USを基準時刻としてその直後に応答するためのタイミングである。アップリンク信号USが送信される直後の時間スロットS1に付与されるのは、応答タイミング719がブランク期間BPに含まれるようにするためである。
【0080】
センサコントローラ31が未だ検出していないスタイラス2は、時間スロットS0でアップリンク信号USを受信すると、そのアップリンク信号USへの応答信号として、自己の存在を示すためのダウンリンク信号DSである位置信号D_DPを直後の時間スロットS1で送信する。
【0081】
応答タイミング719をアップリンク信号USが送信される時間スロットS0に連続する直後の時間スロットS1に固定的に設定することで、応答信号が時間スロットS0と同じブランク期間BP内に位置するように、ダウンリンク信号DSの送信を誘導することができる。これにより、定期的にアップリンク信号USを送信し、ダウンリンク信号DSを検出することによりスタイラス2を検出するセンサコントローラ31において、スタイラス2がペンダウン操作されている操作パネル35に接触するまでの間にできるだけ早く、液晶ノイズLCDnzの影響を受けない期間にダウンリンク信号DSを得ることができる。尚、スタイラス2でのアップリンク信号USの検出に液晶ノイズLCDnzが影響を受けない場合には、送信タイミング701のみがブランク期間BPに含まれるようにしてもよい。
【0082】
送信タイミング701は、既に検出されたスタイラス2(2B)に対してコマンドCC_UPによって、アップリンク信号USを基準時刻(S0)として明示的に指定された時間である時間スロットS2,S4と使用周波数f1とを示している。送信タイミング702は、既に検出されたスタイラス2(2C)に対してコマンドCC_UPによって明示的に指定された時間スロットS3,S5と使用周波数f2とを示している。時間スロットS0〜S19の20個の時間スロットのうち、なるべくアップリンク信号USが送信される時間に近い前方の時間スロットが利用されているのは、ブランク期間が動作周期VTのなかで1つしか得られないときであっても、できる限りブランク期間BPに含まれる可能性のある時間にスタイラス2からのダウンリンク信号DSを行うように制御するためである。
【0083】
コマンドCC_UPは、データ信号OD_DPを時間スロットS2に、位置信号D_DPを時間スロットS4にするなど、送信される信号の種別を含むとしても良い。
【0084】
1動作周期VTの中に複数のブランク期間BPが存在する場合には、少なくとも1つのブランク期間にアップリンク信号USを送信してダウンリンク信号DSの応答を待ち、他のブランク期間にデータ信号OD_DPが送信されるようにコマンドCC_UPを送信するとしてもよい。
【0085】
以上説明したように、本実施の形態による位置入力システム1、センサコントローラ31、及びスタイラス2、並びに、これらによって実行される方法によれば、センサコントローラ31が液晶パネル33の現在の動作周期VTを取得しているので、センサコントローラ31からスタイラス2に対し、取得した動作周期VTに対応する同期の基準となるアップリンク信号USを送信することが可能になり、したがって、アップリンク信号USを同期の基準時刻として指定されたタイミングでダウンリンク信号DSを返信するスタイラス2に対し、液晶パネル33の状態に応じた信号の好ましい送信タイミングを伝えることが可能になる。特に、ペンダウン操作されているスタイラス2から送信された信号を早期かつ液晶パネル33の動作に影響されない期間に検出することが可能となる。
【0086】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態による位置入力システム1と第1の実施の形態による位置入力システム1の主要な相違点は、センサボード34の行電極群45を液晶パネル33の共通電極と共用している点、すなわち、いわゆるインセル式のセンサボード34(あるいは液晶パネル33)を用いている点である。以下では、本実施の形態と第1の実施の形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0087】
図9は、本実施の形態による液晶パネル33兼センサボード34の構造を示す模式図である。
図9(a)に示すように、液晶パネル33兼センサボード34においては、液晶層50の上面に行電極群45が形成される。行電極群45は、
図9(b)に示すように、それぞれY方向(液晶パネル33の表示面内の一方向)に延在する複数の行電極45a〜45cによって構成される。なお、ここでは3つの行電極45a〜45cを例示しているが、実際の行電極群45はより多くの行電極により構成される。
【0088】
行電極群45は、第1の実施の形態で説明したように、スタイラス2に向けて信号を送信する際及び指タッチを検出する際には送信電極(Tx)となり、スタイラス2からの信号を受信する際には受信電極(Rx)となる。また、行電極群45は液晶パネル33の共通電極を兼ねており、液晶パネル33の駆動の際には、行電極群45に固定電位Vcomが供給される。行電極群45の以上の3つの役割、すなわち、送信電極(Tx)としての役割、受信電極(Rx)としての役割、及び、液晶パネル33の共通電極(Vcom)としての役割は、時分割で実現される。
【0089】
行電極群45の上層には、図示しない透明絶縁層を介してカラーフィルターガラス51が配置され、その上面には列電極群46が配置される。列電極群46は、
図9(b)に示すように、それぞれX方向(液晶パネル33の表示面内でY方向と直交する方向)に延在する複数の列電極46a〜46cによって構成される。なお、ここでは3つの列電極46a〜46cを例示しているが、実際の列電極群46はより多くの列電極により構成される。列電極群46は液晶パネル33の電極を兼ねておらず、第1の実施の形態で説明した列電極群46と同様、常に受信電極(Rx)として機能する。列電極群46の上層には、図示しない透明絶縁層を介して、偏光板52が配置される。
【0090】
図10は、本実施の形態による電子機器3に設けられる制御装置60の機能ブロックを示す略ブロック図である。同図と
図3を比較すると理解されるように、本実施の形態による電子機器3では、第1の実施の形態では別々に設けられていたセンサコントローラ31、液晶駆動部32、及び電子機器制御部30が1つの制御装置60として実装される。
【0091】
制御装置60は、第1の実施の形態で説明した発振部40、送信部41、及び受信部42に加え、制御部61及び指示体検出部62を有して構成される。制御部61は、まず、第1の実施の形態で説明した電子機器制御部30及び液晶駆動部32の機能を有している。すなわち、例えば図示しない記憶媒体に記録された映像信号を再生することによって得られるビデオ信号Vに基づいて上述した駆動信号LDを生成し、液晶パネル33に供給する機能を有している。
【0092】
制御部61はまた、第1の実施の形態で説明した動作周期取得部44としての機能も有している。具体的には、液晶パネル33の制御の周期を示す動作周期VTと、液晶ノイズLCDnzの出現頻度が小さくなる期間であるブランク期間BPaとを抽出する機能を有している。ただし、動作周期取得部44とは異なり制御部61は自身で駆動信号LDを生成しているため、動作周期VT及びブランク期間BPaを抽出する処理は内部で完結し、液晶ノイズLCDnzを監視する必要はない。
【0093】
ここで、本実施の形態によるブランク期間BPaは、第1の実施の形態によるブランク期間BPとは異なる期間である。すなわち、
図5を参照して説明したように、第1の実施の形態によるブランク期間BPは、液晶駆動部32が垂直方向非表示エリアNDAに対応する駆動信号LDを生成している期間であり、垂直ブランキング期間VBに対応する期間であった。
【0094】
これに対し、本実施の形態によるブランク期間BPaは、水平帰線期間HB(Horizontal Blanking)の後半部分、すなわち、駆動対象の画素を画面の右端から左端に戻す期間に、画素の駆動処理が行われない期間である。ブランク期間BPaはブランク期間BPに比して非常に短い時間であるため、センサコントローラ31と液晶駆動部32とが分離したICで実現されるアウトセル型のシステムのセンサボード34を用いる第1の実施の形態では有効に活用できなかったが、センサコントローラ31と液晶駆動部32とが一体の集積回路で構成され、厳密に動作タイミングを調整することができるインセル型のシステム(あるいはオンセル型のシステム)のセンサボード34を用いる本実施の形態では有効に活用することができる。詳しくは後述するが、ブランク期間BPaはその性質上、1動作周期VT内に繰り返し何度も出現する。本実施の形態では、こうして何度も現れるブランク期間BPaのそれぞれをリフレッシュレートRrの周期のうちに発生するブランク期間BPに見立てて、センサコントローラとしての制御装置60とスタイラス2の間の通信を実現する。
【0095】
図11(a)は、本実施の形態によるブランク期間BPaの配置例の一例を示す図である。動作周期VTは、
図7にも示したように1つの画像フレームの表示が実行される時間(画像フレーム時間)に対応しており、
図11(a)に示すように、パルス信号である映像同期信号Vsyncの活性化とともに開始するよう構成される。
図11(a)の例では、動作周期VT内に第1の個数(525個)の水平帰線期間HBが含まれており、それぞれの水平帰線期間HBの後半部分がブランク期間BPaとして利用できる。したがって、1動作周期VT内に525個のブランク期間BPaが離散して等間隔で配置される。ブランク期間BPaでないタイミングでは、画素を駆動する必要があるため、行電極群45の電位が上述した固定電位Vcomに固定される。したがって、指タッチの検出、スタイラス2に向けての信号の送信、スタイラス2からの信号の受信等の目的で行電極群45を使用することはできない。一方、ブランク期間BPaにおいては、行電極群45の電位は特に固定されない。そこで制御装置60は、ブランク期間BPaを利用して、指タッチの検出、スタイラス2に向けての信号の送信、スタイラス2からの信号の受信等、第1の実施の形態で説明したセンサコントローラ31としての動作を実行するよう構成される。尚、1動作周期VT内におけるブランク期間BPaの数や配置方法には、QHD〜FullHD等高解像度対応になるにつれて増えることもあれば、逆にブランク期間BPaを数十個に集約したものなど、様々なものが存在し得る。
【0096】
図10に戻る。制御部61は、複数の規定の動作周期VTと複数の規定のブランク期間BPaの配置方法とを予め記憶しており、駆動信号LDの生成を行うにあたり、それぞれを1つずつ選択する。具体的な例を挙げると、動作周期VTとして60Hz、48Hzの2種類を予め記憶しており、液晶パネル33がAC電源に接続されている場合には60Hz、液晶パネル33がバッテリ駆動されている場合には48Hzを選択する。このように、バッテリ駆動の場合に動作周期VTを下げるのは、消費電力を小さくするためである。また、ブランク期間BPaの配置方法として、1動作周期VT内に第1の個数(例えば525個)のブランク期間BPaを配置する配置方法と、1動作周期VT内に第2の個数(第1の個数とは異なる個数)のブランク期間BPaを配置する配置方法とを記憶しており、液晶パネル33の種類等に応じてこれらのうちのいずれかを選択する。制御部61は、選択した動作周期VT及びブランク期間BPaの配置方法に応じて駆動信号LDを生成するとともに、選択した動作周期VT及びブランク期間BPaの配置方法を指示体検出部62に供給する。
【0097】
指示体検出部62は、動作周期VTの中に含まれるこれら複数の個数のブランク期間BPaを利用して、指タッチの検出、スタイラス2に向けての信号の送信、スタイラス2からの信号の受信を行う。指示体検出部62は、これらの1つのセットの処理を1動作周期VTの単位で繰り返し行うよう構成される。
【0098】
図11(b)(c)は、1動作周期VT内に第1の個数L1(例としてL1=525)個のブランク期間BPaが配置される場合における、指示体検出部62によるブランク期間BPaの使い方の例を示す図である。
図11(b)(c)には、第1の個数L1個のブランク期間BPaの個々にそれぞれ対応する時間T1〜T525と各ブランク時間内で行われる通信を図示している。
図11(b)は、スタイラス2を検出するまでについての例を示し、
図11(c)は、スタイラス2が検出された後のN個の位置信号D_DPとM個のデータ信号OD_DPの送信の割り当てを示している。
【0099】
まずスタイラス2が未検出である場合、
図11(b)に示すように、指示体検出部62は複数の時間T1,T129,T257,・・・,T513で探索パターンD_UPが含まれたアップリンク信号USを送信する。この探索パターンD_UPには、これを受信したスタイラス2が動作周期VTの基準時刻を得ることができるように何回目の探索パターンなのかを示すシーケンス番号が含まれる。
【0100】
図12は、このように構成されたアップリンク信号USの構成例を示す図である。同図の例によるアップリンク信号USは、先頭から順に、2つの補助アップリンク信号USsubと、3つのコマンド信号CC0〜CC2と、コマンド信号CC0〜CC2から生成される巡回冗長符号CRCとを含んで構成される。
【0101】
1つの補助アップリンク信号USsubは、スタイラス2に対して予め既知とされている1ビットの探索パターンD_UPを含む信号である。複数ビットの探索パターンD_UPあるいはコマンドCC_UPを含むアップリンク信号USは、第1の実施の形態と同様に現在の液晶パネル33の動作周期VTに対応する同期の基準となるアップリンク信号USであり、補助アップリンク信号USsubは複数存在する個々のブランク期間BPaの個々の時刻と個々のブランク期間BPaにおけるダウンリンク信号DSの送信タイミングをスタイラス2に通知する役割を果たす。これは液晶駆動の状況によって異なることとなるブランク期間BPaの個々のパターンを事前にスタイラス2と共有する必要なくスタイラス2に通知するためである。1つの補助アップリンク信号USsubは、アップリンク信号USに比して短い時間の信号であり1つのブランク期間BPaにおいてダウンリンク信号DSを受信することが可能となる。
【0102】
第2の実施の形態のブランク期間BPaは第1の実施の形態のブランク期間BPに比して短い時間であるが、補助アップリンク信号USsubは1ビット分の時間長の信号であるため、この補助アップリンク信号USsubに応答してスタイラス2がダウンリンク信号DSを送信する時間が1つのブランク期間BPaの内に確保できるようにしている。
【0103】
尚、補助アップリンク信号USsubは、所定チップ数の拡散符号により生成された信号の周波数が拡散された状態で送信される。スタイラス2は、こうして送信された既知の拡散符号に対して相関処理を実行することにより、補助アップリンク信号USsubの到来を検出するよう構成される。補助アップリンク信号USsubを2回送信しているのは、スタイラス2が、動作周期VTのフレームを識別するためのアップリンク信号と、個々のブランク期間BPaを示すための補助アップリンク信号USsubとを区別できるようにするためである。
【0104】
コマンド信号CC0〜CC2は、スタイラス2に対して通知するコマンドCC_UPを示す信号である。
図12には示していないが、コマンド信号CC0〜CC2も、補助アップリンク信号USsubと同様に所定チップ数の拡散符号により拡散された状態で送信される。なお、コマンド信号CC0〜CC2それぞれにより示される情報量は、拡散符号の使い方によって異なる。例えば、拡散符号の反転/非反転により1ビットを示す場合には、コマンド信号CC0〜CC2はそれぞれ1ビットの情報となる。一方、拡散符号を巡回シフトして用いる場合には、コマンド信号CC0〜CC2のそれぞれにより、より多くのビット数を表すことができる。いずれの場合であっても、スタイラス2は受信される可能性のある拡散符号をすべて予め記憶しており、そのそれぞれと受信信号との相関処理を実行することにより、コマンド信号CC0〜CC2を受信するよう構成される。コマンド信号CC0〜CC2により通知されるコマンドCC_UPには、動作周期VT(例えば48Hz又は60Hz)を示す情報、ブランク期間BPaの配置方法(例えば1動作周期内に第1の個数か第2の個数か)を示す情報、スタイラス2から制御装置60に対して送るべきデータ(第1の実施の形態で説明した操作状態データOD及び構成データCDのうち制御装置60が必要とするもの)を示す情報、スタイラス2がデータの送信に使用すべきブランク期間BPaを示す情報等が含まれる。
【0105】
巡回冗長符号CRCは、コマンド信号CC0〜CC2により示されるデータを数値とみなし、所定の定数で割った余りを示す符号である。
【0106】
図11(b)に戻る。スタイラス2が未検出である場合、時間T1,T129,・・・,T513以外の時間T2〜T128等では、指示体検出部62は補助アップリンク信号USsubの送信を行う。ここで送信される補助アップリンク信号USsubの内容は、
図14を参照して説明したアップリンク信号US内の補助アップリンク信号USsubと同一である。図示していないが、指示体検出部62は、このような単体の補助アップリンク信号USsubの送信を、スタイラス2の検出後も含め、すべての時間の先頭において少なくとも1回行う。このようにアップリンク信号USと補助アップリンク信号USsubとを組み合わせて送信することで、アップリンク信号USによりスタイラス2に対しコマンドCC_UPを伝えつつも、補助アップリンク信号USsubを受信したスタイラス2から位置信号D_DPを早期に受信することで制御装置60がスタイラス2をできる限り早く検出することができる。
【0107】
補助アップリンク信号USsubを受信したスタイラス2は、早期に制御装置60に自身の存在を知らせるための位置信号D_DPを送信する。スタイラス2から位置信号D_DPを受信した指示体検出部62は、スタイラス2を検出済とし、それ以降の各時間の使用方法を
図11(c)のように変更する。具体的には、1フレームの最初に位置する時間T1のみを、上述したアップリンク信号USを送信する「第1のブランク期間」として使用し、それ以外の時間のうちの少なくとも1つを、スタイラス2がダウンリンク信号DSを送信するための「第2のブランク期間」として使用する。
図11(c)の例では、L1個のブランク期間のうち、「第2のブランク期間」として使用される時間は、時間T2〜T128,T130〜T256等である。より具体的に言えば、時間T2〜T5のN1個の時間,T130〜T133のN2個の時間等を合計したN個の時間はスタイラス2が位置信号D_DPを送信するために使用される。また、時間T6〜T128のM1個、T134〜T256のM2個の時間等を合計したM個の時間は、スタイラス2が操作状態データOD等を含むデータ信号OD_DPを送信するために使用される。以下では、M個の時間中のm番目(mは1〜492の整数)の時間内に送信されるデータ信号OD_DPを、
図11(c)にも示すようにデータ信号Dmと表記する場合がある。その他の時間は指示体検出部62が指タッチを検出するために使用される。
【0108】
図13は、一例として時間T6においてスタイラス2がデータ信号OD_DPの送信を行う場合における、補助アップリンク信号USsubとダウンリンク信号DSの例を示している。図示していないが、他の時間においてスタイラス2がデータ信号OD_DPの送信を行う場合も同様である。
【0109】
図13に示すように、時間T6の先頭では、探索パターンD_UP1ビットを含む補助アップリンク信号USsubが一度、指示体検出部62により送信される。スタイラス2は、この1回の補助アップリンク信号USsubの受信に応じて、このブランク期間BPaの残余の時間にデータ信号OD_DPの送信を開始する。例えば、1度に4ビットのデータdata1〜data4が送信される。
【0110】
図11に戻る。
図11(c)の例では、データ信号OD_DPを送信するための時間が492個確保されている。スタイラス2は、この492個の時間のうちのM1個において第1の種別のデータ(例えば構成データCD)を送信する一方、M2個(M2≧0)において操作状態データODを送信するよう構成される。以下、具体的な例を挙げて説明する。
【0111】
図14(a)は、M1=0、M2=492とした例である。この例では、6つのデータ信号D1〜D3を用いて、
図2に示した操作入力部26のオンオフ状態を示す2ビット分のデータS1,S2と、筆圧Fを示すデータとが送信される。
【0112】
具体的に説明すると、操作入力部26のオンオフ状態を示すデータS1が、データ信号D1のデータdata3及びdata4を用いて送信される。これにより、1動作周期VT内で2度にわたり操作入力部26のオンオフ状態が制御装置60に通知されることになるが、これは冗長性を持たせるための構成である。筆圧Fは、データ信号D2のデータdata1〜data4及びデータ信号D3のデータdata1〜data4を用いて送信される。
【0113】
ここで、
図14(a)に例示するように、1つの動作周期VT内において2回以上、スタイラス2から制御装置60にデータS1及び筆圧Fを送信するようにしてもよい。これにより、制御装置60は、より高い頻度でデータS1及び筆圧Fを受信することができるので、より高い精度でスタイラス2の筆跡の幅を再現することが可能になる。この場合において、データS1及び筆圧Fがそれぞれ等しい時間間隔で送信されることとなるよう、データS1及び筆圧Fの送信タイミングを設定することが好ましい。
【0114】
図14(b)は、M1=5、M2=2とした例である。この例では、データ信号D1〜D7のすべてを用いて、スタイラス識別子SID及び筆圧Fが送信される。
【0115】
具体的に説明すると、まずスタイラス識別子SIDについてはデータ信号D1〜D5を用いて送信されるが、データ量が多すぎて1動作周期VTだけでは送信しきれないため、連続する複数の動作周期VTにわたって送信される。一方、筆圧Fは、データ信号D6,D7を用いて送信される。これにより、この例では、動作周期VTごとに一度、筆圧Fを示す8ビット分のデータが送信されることになる。
【0116】
ここで、スタイラス識別子SIDは、指示体検出部62がスタイラス2を検出したときに1度送れば足りる情報である。したがって、スタイラス2は、指示体検出部62によって検出された当初、
図14(b)のように各時間を用いて一度スタイラス識別子SIDを送信した後は、データ信号D1〜D5も筆圧Fの送信に利用することが好ましい。こうすることで、一度制御装置60に対してスタイラス識別子SIDを通知した後には、高い頻度で筆圧Fを送ることが可能になり、また、操作入力部26のオンオフ状態やバッテリの状態を制御装置60に通知することも可能になる。
【0117】
次に、本実施の形態による指示体検出部62及びスタイラス2が行う処理について、それぞれの処理フロー図を参照しながら、再度より詳しく説明する。
【0118】
図15は、指示体検出部62が行う処理を示す処理フロー図である。この処理フローは、
図11(b)(c)に示したブランク期間BPaの配置方法を前提としているが、他の配置方法を用いる場合も、各時間において行われる処理が入れ替わるだけで、他は同様である。
【0119】
指示体検出部62はまず、液晶パネル33の動作周期VT、動作周期VT内におけるブランク期間BPaの配置方法を取得する(ステップS1)。そして、時間T1を用いて、取得した動作周期VT及びブランク期間BPaの配置方法を示すコマンドCC_UPを含むアップリンク信号USを送信する(ステップS2)。その後、次の時間T2において、補助アップリンク信号USsubを送信しつつ、行電極群45及び列電極群46を構成するすべての電極を用いて(全面スキャン)、未知のスタイラス2が送信する位置信号D_DPの検出を実行する(ステップS3)。
【0120】
指示体検出部62は、位置信号D_DPを検出したか否かを判定し(ステップS4)、検出したと判定した場合にはペン検出フラグをセットする(ステップS5)とともに、検出した信号からスタイラス2の位置を分析する(ステップS6)。一方、ステップS3で検出していないと判定した場合には、ペン検出フラグをリセットする(ステップS7)。なお、ペン検出フラグは指示体検出部62の内部フラグであり、スタイラス2が検出されている間にセット状態とされ、検出されていない間にはリセット状態とされる。
【0121】
ここまでで説明した各ステップのうちステップS2の処理は、スタイラス2が未検出の場合には、アップリンク信号USの送信に割り当てられた他の時間T129,T257,T385,T513においても、時間T1と同様に実行される。一方、スタイラス2が検出済の場合には、他の時間T129,T257,T385,T513では実行されない。また、ステップS3〜S6の処理は、位置信号D_DPの受信に割り当てられた他の時間T3〜T5,T130〜T133,T258〜T262,T386〜T389においても、時間T2と同様に実行される。
【0122】
時間T6では、指示体検出部62はまずペン検出フラグを確認し(ステップS8)、セットされていれば(すなわち、スタイラス2が検出されていれば)、データ受信処理を行う(ステップS9)。一方、ペン検出フラグがリセットされていれば、補助アップリンク信号USsubの送信のみを行う(ステップS10)。
【0123】
図16は、ステップS9で実行されるデータ受信処理の詳細を示す処理フロー図である。同図に示すように、指示体検出部62はまず、補助アップリンク信号USsubを送信しつつ、行電極群45及び列電極群46のうちステップS6で検出した位置近傍の電極のみを利用して(ローカルスキャン)、データ信号OD_DPの検出を実行する(ステップS20)。そして、その結果として何らかの信号を検出したか否かを判定し(ステップS21)、検出したと判定した場合には、検出した信号を復調することによりスタイラス2が送信したデータを取得したうえで(ステップS22)、データ受信処理を終了する。一方、検出していないと判定した場合には、特に処理を行わずにデータ受信処理を終了する。
【0124】
図15に戻る。ステップS8〜S10の処理は、データ信号OD_DPの受信に割り当てられた他の時間T6〜T128,T134〜T256,T262〜T384,T390〜T512のうちデータ信号OD_DPの受信のために実際に使用されるものにおいても、時間T6と同様に実行される。
【0125】
時間T514では、指示体検出部62は、行電極群45及び列電極群46を構成するすべての電極を用いて(全面スキャン)指タッチの検出を行う(ステップS11)。
【0126】
指示体検出部62は、ステップS11の全面スキャンによって指タッチの信号を検出したか否かを判定し(ステップS12)、検出したと判定した場合には、検出した信号から指の位置を分析する(ステップS13)。一方、ステップS12で検出していないと判定した場合には、特に処理を行わず次の時間に処理を移行する。
【0127】
ステップS11〜S13の処理は、指の検出に割り当てられた他の時間T513〜T525においても、時間T514と同様に実行される。
【0128】
このように、指示体検出部62は、
図11に示される時間T1〜T525の順で、それぞれの時間に割り当てられた処理を繰り返し行う。また、新たな動作周期VTに入った場合には、ステップS1からの処理を繰り返す。これにより、動作周期VT及びブランク期間BPaの配置方法の取得、アップリンク信号USの送信、スタイラス2の検出及び位置導出、スタイラス2が送信したデータ信号OD_DPの受信、及び指タッチの検出と位置導出が時分割で繰り返されることになる。
【0129】
図17は、スタイラス2が行う処理を示す処理フロー図である。同図に示すように、スタイラス2はまず、補助アップリンク信号USsubのセンシングを行い(ステップS30)、それによって補助アップリンク信号USsubを検出したか否かを判定する(ステップS31)。スタイラス2は、ステップS30,S31の処理を、電源が入っている間、繰り返し実行する。
【0130】
ステップS31で補助アップリンク信号USsubを検出したと判定した場合、スタイラス2は、続けて探索パターンD_UPを含むアップリンク信号USのセンシングを行い(ステップS32)、それによってアップリンク信号USを検出したか否かを判定する(ステップS33)。この処理は要するに、ステップS30で検出した補助アップリンク信号USsubが単体で送信されたものか、アップリンク信号USの一部である(
図12参照)かを判定する処理である。ステップS33でアップリンク信号USを検出していないと判定した場合には、ステップS30に戻り、次の補助アップリンク信号USsubのセンシングを行う。
【0131】
ステップS33でアップリンク信号USを検出したと判定した場合、スタイラス2は次に、検出したアップリンク信号US内に含まれるコマンドCC_UPを分析し、その結果に基づいてダウンリンクパラメータを更新する(ステップS34)。ダウンリンクパラメータとは、要するに、上述したコマンド内に含まれる各種の情報、すなわち、動作周期VT(例えば48Hz又は60Hz)を示す情報、ブランク期間BPaの配置方法(例えば1動作周期内に第1の個数か第2の個数か)を示す情報、スタイラス2から制御装置60に対して送るべきデータ(第1の実施の形態で説明した操作状態データOD及び構成データCDのうち制御装置60が必要とするもの)を示す情報、スタイラス2がデータの送信に使用すべきブランク期間BPaを示す情報等であり、スタイラス2は、受信したダウンリンクパラメータを、次に新たなダウンリンクパラメータが受信されるまで保管する。
【0132】
次に、スタイラス2は、補助アップリンク信号USsubのセンシングを再度実行し(ステップS35)、それによって補助アップリンク信号USsubを検出したか否かを判定する(ステップS36)。その結果、補助アップリンク信号USsubを検出したと判定した場合、スタイラス2は、補助アップリンク信号USsubに応じたタイミングで、位置信号D_DP又はダウンリンクパラメータに示されるデータを含むデータ信号OD_DPであるダウンリンク信号DSの送信を行う(ステップS37)。
【0133】
ステップS36で補助アップリンク信号USsubを検出していないと判定した場合、スタイラス2は、ダウンリンクパラメータにより示される送信タイミングが到来したか否かを判定し(ステップS38)、到来したと判定した場合には、ダウンリンク信号DSの送信を行う(ステップS39)。この処理は、補助アップリンク信号USsubの受信ミスによりダウンリンク信号DSの送信がスキップされてしまうことを防止するための処理である。すなわち、スタイラス2は、ダウンリンクパラメータに含まれる動作周期VT及びブランク期間BPaの配置方法に基づき、次にダウンリンク信号DSを送信すべきタイミングを予測することができる。そこで、補助アップリンク信号USsubが受信されない場合であっても、予測したタイミングが到来した場合には、ダウンリンク信号DSを送信するようにしている。
【0134】
ステップS38でダウンリンクパラメータにより示される送信タイミングがまだ到来していないと判定した場合には、スタイラス2はステップS35に処理を戻し、再度補助アップリンク信号USsubのセンシングを行う。
【0135】
ステップS37又はステップS39でダウンリンク信号DSを送信した後には、スタイラス2は、保管しているダウンリンクパラメータに基づき、アップリンク信号USの受信タイミングが到来したか否かを判定する(ステップS40)。その結果、到来していないと判定した場合には、次のダウンリンク信号DSを送信すべく、ステップS35に処理を戻す。一方、ステップS40で到来していると判定した場合には、ステップS30に処理を戻す。これにより、動作周期VTごとに、同様の処理が繰り返されることになる。
【0136】
以上説明したように、本実施の形態による位置入力システム1、センサコントローラ31、及びスタイラス2、並びに、これらによって実行される方法によれば、センサコントローラとしての制御装置60が液晶パネル33の現在の動作周期VTを取得しているので、制御装置60からスタイラス2に対し、取得した動作周期VTに対応する同期の基準となるアップリンク信号USを送信することが可能になる。したがって、スタイラス2に対し、液晶パネル33の状態に応じた信号の好ましい送信タイミングを伝えることが可能になる。
【0137】
また、アップリンク信号USがブランク期間BPaの配置方法を示す情報を含んでいるので、スタイラス2は、ノイズの少ないブランク期間BPaにダウンリンク信号DSを送信することが可能になる。
【0138】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0139】
例えば、上記第2の実施の形態では、指示体検出部62が各時間の先頭で補助アップリンク信号USsubを送信する例を説明したが、このような補助アップリンク信号USsubの送信は必ずしも必要ではない。すなわち、
図17を参照しながら説明したように、アップリンク信号USによりスタイラス2には動作周期及びブランク期間BPaの配置方法が予め通知されているので、スタイラス2は、補助アップリンク信号USsubがなくても各時間の開始タイミングを知ることができる。したがって、スタイラス2は、補助アップリンク信号USsubを受信しなくても、適切なタイミングでダウンリンク信号DSの送信を行うことができる。補助アップリンク信号USsubはそもそも受信に失敗する可能性もあるので、補助的に時間の開始を通知するためのものとして位置付けることが好ましい。
【0140】
このように補助アップリンク信号USsubの送信が任意であることから、アップリンク信号USに含まれるコマンドCC_UPには、指示体検出部62が補助アップリンク信号USsubの送信を行うか否かを示す情報を含むこととしてもよい。スタイラス2は、この情報を参照することにより、ダウンリンク信号DSを送信する際に補助アップリンク信号USsubを待機するか否かを決定することができる。
【0141】
尚、上記各実施の形態では液晶パネル33を例として説明したが、本発明は、有機ELパネルなど他の方式を利用した表示パネルに対しても適用可能である。より具体的に言えば、本発明は、リフレッシュレートの周期ごとに表示動作期間と1以上のブランク期間とが存在するような表示パネルとともに利用されるアクティブスタイラスを用いた双方向通信システムに適用可能である。
【解決手段】本発明による方法は、可変の周期で動作するよう構成された表示パネルとともに設置される電極群を有するセンサに接続されたセンサコントローラと、該センサコントローラと双方向通信を行うアクティブスタイラスとを用いた方法であって、センサコントローラが、表示パネルの現在の動作周期を取得するステップS1と、センサコントローラが、取得した現在の動作周期に対応する同期の基準となるアップリンク信号USを生成して未検出あるいは既検出のアクティブスタイラスに対して送信するステップS2とを含む。