特許第6082180号(P6082180)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082180
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】車両用電子式モジュール
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/14 20060101AFI20170206BHJP
   H05K 3/36 20060101ALI20170206BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20170206BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   H05K1/14 H
   H05K3/36 Z
   H05K3/28 B
   H05K5/00 B
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-207205(P2011-207205)
(22)【出願日】2011年9月22日
(65)【公開番号】特開2012-124459(P2012-124459A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2014年9月11日
(31)【優先権主張番号】1057648
(32)【優先日】2010年9月23日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509019750
【氏名又は名称】ヴァレオ システム ドゥ コントロール モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・イヴ モレノ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー ゴヴィンダッサミー
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト シルベストル
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−022576(JP,A)
【文献】 特開2004−087735(JP,A)
【文献】 特開2004−140072(JP,A)
【文献】 特開2002−315358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/14
H05K 3/36
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の中に装備されるようになっている電子式モジュール(10,20)であって、少なくとも1本の電気伝導体(14,24)により連結された少なくとも2枚の回路基板(12,13;22,23)を収容するケーシング(11,21)を備え、前記電気伝導体(14,24)は、これにより連結される2枚の回路基板(12,13;22,23)のうちの1枚に、その一端が接合されており、他端がもう1枚の回路基板に接合されており、かつ前記電気伝導体(14,24)の両端は、「ウエッジボンディング」技術により接合されており、前記ケーシング(11,21)の中で、前記電気伝導体(14,24)の両端の接合部のうちの少なくとも一接合部が、保護樹脂(17,27)で被覆されている電子式モジュール(10,20)において、
前記保護樹脂(17,27)はポリウレタン樹脂であり、
前記電気伝導体(14,24)により連結された2枚の回路基板(12,13;22,23)は、前記ケーシング(11,21)の底面に垂直な方向における異なる二つの位置で、互いに平行に配置されており、
これら回路基板(12,13;22,23)に水平な方向における、前記電気伝導体(14,24)の両接合部間の距離は6mm以上であり、これら回路基板(12,13;22,23)に垂直な方向における、前記電気伝導体(14,24)の両接合部間の距離は10mm以下であり、
前記電気伝導体(14,24)は、直径300〜500ミクロンのアルミ製電線からなり、もってその両接合部の各近傍において湾曲した形状となっていることを特徴とする電子式モジュール。
【請求項2】
前記電気伝導体(14,24)により連結されている2枚の回路基板(12,13;22,23)のうちの1枚(12,22)はパワー基板であり、他方の回路基板(13,23)は制御基板であることを特徴とする請求項1に記載の電子式モジュール。
【請求項3】
前記保護樹脂(17)は、前記2枚の回路基板(12,13)を完全に被覆していることを特徴とする請求項2に記載の電子式モジュール。
【請求項4】
前記保護樹脂(27)は、前記パワー基板(22)のみを被覆していることを特徴とする請求項2に記載の電子式モジュール。
【請求項5】
前記制御基板(23)は、前記パワー基板(22)を被覆している前記保護樹脂(27)の層の上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の電子式モジュール。
【請求項6】
前記ケーシング(11,21)は、アルミ製であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電子式モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、例えば自動車に装備されるようになっている電子式モジュールに関する。本発明は、機械電子技術分野で使用される積載エレクトロニクスにおいて、回路基板または印刷回路基板(パワー電子回路、制御電子回路用)を、金属またはプラスチック製のケーシングの内面に装着した、あらゆる組立て部品に関する。本明細書における例は自動車用であるが、本発明は、それと近似又は類似する分野にも適用しうる。
【背景技術】
【0002】
自動車に装備されている電子式モジュールは、通常、メーカー各社の規格に応じて、熱衝撃試験や振動試験を受ける。各メーカーの要求する品質規格を満足させるために、回路基板(パワー用および制御用)は、ケーシングの中で、各種の技術、中でも特に「ウエッジボンディング」と呼ばれる技術により、接合して装着されている。
【0003】
この「ウエッジボンディング」技術とは、次のようなものである。最も一般的にはアルミの電線を、ある種の道具(スタイレット又はニードルと呼ばれる)で挿入して、パッドに接続させる。電線と接続面とを、圧力と超音波振動との組合せにより結合させる。ここで「冷間結合」と呼ばれる結合が行われる。超音波のエネルギーが、電線を加熱した場合と同様の作用を起こして、電線を軟化させる。次に、前記の道具により、電線をパッドに導いて結合させる。この電線は、直径がおよそ75〜650マイクロメートル(μm)のものである。
【0004】
この結合が、酸化、熱衝撃、振動、湿気、熱などによって破壊されるのを防止するために、エポキシ系かアクリル系の樹脂、あるいはシリコーン系ゲル剤が用いられる。この樹脂類は、販売店を通じて手元に保管して置かれる。これらの樹脂は、オーブン内や紫外線で重合する性質がある。シリコーンゲルは、連結用電線を接合させるための保持部に流し込まれる。
【0005】
エポキシ樹脂、アクリル樹脂およびシリコーンゲルは、断熱性、および電気的・機械的絶縁性能が優れている。しかし、これらを車輌搭載用の電子式モジュールに使用するのは、コスト高となるので、自動車メーカーはそれを嫌っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記に説明した高コストの問題を改善するために、ケーシングの中の回路基板の保護剤(エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーンゲル)を、ポリウレタン樹脂で置き換えることが提案されている。ポリウレタン樹脂は、断熱性、電気絶縁性、機械的絶縁性において、公知の材料(エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーンゲル)と同等の特性を持っており、これを使用することによる材料面並びに価格面での経済的な利益は非常に大きい。
【0007】
機械的性質と熱膨張率(220×10-6 m/℃)がすぐれているため、本発明は、直径250μm又はそれ以上のアルミ製電線とアルミ製リボンに対して有利に適用することが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の主題は、車両の中に装備されるようになっている電子式モジュールであって、そのモジュールは、少なくとも2枚の回路基板を収容しているケーシングを備えており、そのケーシングの中で、少なくとも2枚の回路基板が、少なくとも1個の電気伝導体で相互に接合され、その電気伝導体の一端は回路基板の1枚に、他端は他方の回路基板に、いずれもウエッジボンディング技術によって接合されており、電気伝導体の少なくとも一端が、保護樹脂で被覆されているモジュールにおいて、
保護樹脂がポリウレタン樹脂であり、
電気伝導体により連結された2枚の回路基板は、ケーシングの底面に垂直な方向における異なる二つの位置で、互いに平行に配置されており、
これら回路基板に水平な方向における、電気伝導体の両接合部間の距離は6mm以上であり、これら回路基板に垂直な方向における、電気伝導体の両接合部間の距離は10mm以下であり、
電気伝導体は、直径300〜500ミクロンのアルミ製電線からなり、もってその両接合部の各近傍において湾曲した形状となっていることを特徴とする電子式モジュールに関するものである。
【0009】
電気伝導体により連結されている2枚の回路基板のうちの1枚はパワー基板であり、他方の基板は制御基板である場合がある。ある実施例では、これら2枚の回路基板は完全に保護樹脂で被覆されている。
【0010】
別の実施例では、上記2枚の回路基板のうちのパワー回路基板のみが保護樹脂で被覆されている。この場合、制御回路基板は、パワー回路基板を被覆している保護樹脂の層の上に設けることが出来る。
【0012】
ケーシングは、アルミ製であると有利である。
【0013】
図示の本発明の非限定的な実施例に関する以下の説明を読めば、本発明とその利点および特徴につき、より良く理解することができると思う。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】1枚のパワー回路基板と1枚の制御回路基板を備える本発明の電子式モジュールの第1実施例を示す。
図2】1枚のパワー回路基板と1枚の制御回路基板を備える本発明の電子式モジュールの第2実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、例えば、自動車に装備するようになっている電子式モジュール10を示す。このモジュールは、2枚の回路基板12 、13を含む、例えばアルミ製のケーシング11を備えている。回路基板12 および13(プリント回路基板)は、図示されていない装着手段(例えば、ボルト、ナットおよびワッシャー)を使ってケーシングに装着されている。
【0016】
回路基板12は、例えばパワー基板であり、回路基板13は制御基板である。図1では、単純化のために、1本の電気伝導体14のみを、2枚の回路基板12および13を連結させるものとして示してあるが、実際には数本の場合もある。同様に、モジュール10は、2枚以上の回路基板を備えていることがあり、その場合、各基板は、1本または複数の電気伝導体で、他の基板と連結することが出来る。
【0017】
電気伝導体14は、回路基板12の電導パッド15を、回路基板13の電導パッド16に電気的に連結している。電気伝導体14の両端は、ウエッジボンディング技術により、パッド15および16に接合されている。このようにして、回路基板12における1個又は複数の電子式コンポーネントは、回路基板13の1個又は複数の電子式コンポーネントに接合されている。
【0018】
図1に示すように、被覆樹脂17をケーシング11の中に注入し、2枚の回路基板を被覆するように重合させる。これにより、電気伝導体14の接合された両端は、酸化、熱衝撃、振動、および湿気に対して保護される。
【0019】
図1は、回路基板が樹脂で完全に被覆されており、回路基板上に配置されたコンポーネントおよび基板が振動応力を受けても、保護されるようになっている本発明の一実施例を示す。
【0020】
この保護樹脂は、電気伝導体の接合部の片方だけを被覆しても良く、あるいは、電気伝導体の両端を被覆しても良い。
【0021】
図2は、本発明の第2実施例を示す。この実施例においては、電子式モジュール20は、2個の回路基板22および23が収容されているケーシング21を備えている。前例と同様に、回路基板22および23は、図示されていない装着手段によって、ケーシング21に装着されている。また前記のように、回路基板22はパワー基板であり、回路基板23は制御基板である。電気伝導体24は、回路基板22の電導パッド25を回路基板23の電導パッド26に電気的に連結させている。電気伝導体24の両端は、ウエッジボンディング技術によって、パッド25およびパッド26に結合されている。
【0022】
図2に示すモジュールの場合は、保護樹脂27をケーシング21に注入し、回路基板22のみを被覆するように重合させてある。
【0023】
本発明の実施例に使用されるポリウレタン樹脂は、常温重合性の誘電性封止材用に
販売されている樹脂であるのが良い。それを使用すると、熱衝撃抵抗力は、−40℃から125℃まで有効であり、かつ30G以上の振動抵抗試験に合格する。
【0024】
ポリウレタン樹脂は、パワー基板で発熱する熱を、0.4w/m.℃の率で、モジュールの金属ケーシングに放熱させることが出来る。
【0025】
ポリウレタン樹脂を使用することにより、重合釜の使用が不要となる。図1に例示した電子式モジュールでは、接続用の電気伝導体は、樹脂で完全に被覆されおり、樹脂を堆積させるためのロボットや、重合のための紫外線ランプや光ファイバー導線などからなる装置も必要ないという利点を有している。製造時間も短縮される。
【0026】
ポリウレタン樹脂は、安価で有利である。図1に示した例では、エポキシ樹脂の場合に比較して、製造コストが75%も削減される。さらに、ポリウレタン樹脂は放熱性を改善する。
【0027】
ポリウレタン樹脂は、例えば、ショアー硬度計でスケールAとなる硬度の材料である。
【0028】
本発明はまた少なくとも1個のパワーコンポーネントを備えるパワーモジュールにも関する。このパワーモジュールは、パワーコンポーネントを搭載し、そのコンポーネントを前述した電子式モジュールの中で保護するために、ポリウレタン樹脂を充填したケーシングを備えている。パワーコンポーネントとは、例えれば、エレクトロニクスにおける金型である。パワーコンポーネントは電導性パッド15、16、25、26に、または前述のウエッジボンディングの技術で結合した電気伝導体14を通じて、別のパワーコンポーネントに、いずれも電気的に連結されているのが好ましい。電気伝導体14は、このコンポーネントの連結パッドに接着されている。
【0029】
ある実施例においては、電気伝導体14とコンポーネントの連結パッド、即ち電導性パッド15、16、25、26は、ポリウレタン樹脂の中で、電気伝導体14の機械的形状を良好に保たせると言う特徴を有している。詳しく述べると、電気伝導体14は、電導性パッド15、16、25、26、即ち連結パッドの付近で、湾曲した形状となる。
【0030】
例えば、電気伝導体14の各端は接合されており、両接合部間の水平線上の距離は、6 mmまたはそれ以上である。また両接合部間の垂直線上の距離は、10 mm またはそれ以下である。伝導体14の長さは、150xD (但し、Dは伝導体14の直径)、またはそれ以下で良い。伝導体14の直径Dは、好ましくは、300〜500ミクロンの範囲内が良い。これらの値とすると、ポリウレタン樹脂内における伝導体14の性能は向上する。
【符号の説明】
【0031】
10、20 電子式モジュール
11、21 ケーシング
12、22 プリント回路パワー基板
13、23 プリント回路制御基板
14、24 電気伝導体
15、16、25、26 電導パッド
17、27 保護樹
図1
図2