特許第6082225号(P6082225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082225
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20170206BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170206BHJP
【FI】
   F21S8/10 170
   F21S8/10 183
   F21Y115:10
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-232651(P2012-232651)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2014-86202(P2014-86202A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠治
【審査官】 石井 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−154913(JP,A)
【文献】 特開2004−227981(JP,A)
【文献】 特開2005−294176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に対して斜めに傾斜した配列方向に沿って配列され、当該配列方向と略直交する方向であって前後方向とは異なる直交方向へ個別に光を出射させる複数のLEDと、
前記複数のLEDに対応して前記配列方向に沿って並設されつつ当該複数のLEDの前記直交方向に配置され、当該複数のLEDから出射された光を前方へ個別に反射させる複数の反射面と、
前記複数の反射面のうち最も後方に位置する一の反射面に隣接して配置された他の反射面と、
前記複数の反射面及び前記他の反射面の前方に配置され、前記配列方向に沿って延在する長尺なレンズと、
を備え、
前記レンズは、
前後方向及び前記配列方向の何れとも直交する第二直交方向の両側の2つの側板部と、当該2つの側板部の前端を連結する前板部とを有するとともに、
前記前板部の後面が、前記複数の反射面及び前記他の反射面で反射された光を拡散させつつ前方へ透過させる拡散面となっており、
前記複数の反射面は、
前後方向及び前記直交方向の何れにも沿った側壁と各反射面とが前記配列方向に交互に連なることで、階段状に連結されており、
各反射面が、当該反射面に対応するLEDから出射された光を、前記第二直交方向と直交する断面では、前記レンズに入射する手前において前後方向及び前記第二直交方向の何れとも直交する第三直交方向に交差させつつ、前方へ反射させ、
前記他の反射面は、前記複数の反射面のうち最も後方であって前記第三直交方向の一方に位置する一の反射面よりも前記第三直交方向の一方側に配置され、当該一の反射面に対応するLEDから出射された光の一部を前方へ反射させることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記レンズは、前記一の反射面よりも前記第三直交方向の一方側にまで亘って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載される各種の車両用灯具として、LED(発光ダイオード)から出射した光をリフレクタ(反射面)で反射させた後にレンズに透過させて、前方へ照射するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の車両用灯具において、発光面を長尺なライン状に発光させようとした場合、複数のLEDと、これに対応する複数の反射面とをそれぞれライン状に配列し、複数の反射面の前方に配置した長尺なレンズを発光させるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−146977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、LEDから出射される光は指向性が強いため、各反射面で反射された当該光を単純にレンズに透過させただけでは、このレンズのうち、各反射面の前方に位置する部分が、隣り合う2つの反射面の間の前方に位置する部分よりも強く光ってしまい、輝度ムラのない均一な発光態様を実現することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、従来に比べ、より輝度ムラが少なく均一なライン状の発光態様を実現することができる車両用灯具の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、車両用灯具であって、
前後方向に対して斜めに傾斜した配列方向に沿って配列され、当該配列方向と略直交する方向であって前後方向とは異なる直交方向へ個別に光を出射させる複数のLEDと、
前記複数のLEDに対応して前記配列方向に沿って並設されつつ当該複数のLEDの前記直交方向に配置され、当該複数のLEDから出射された光を前方へ個別に反射させる複数の反射面と、
前記複数の反射面のうち最も後方に位置する一の反射面に隣接して配置された他の反射面と、
前記複数の反射面及び前記他の反射面の前方に配置され、前記配列方向に沿って延在する長尺なレンズと、
を備え、
前記レンズは、
前後方向及び前記配列方向の何れとも直交する第二直交方向の両側の2つの側板部と、当該2つの側板部の前端を連結する前板部とを有するとともに、
前記前板部の後面が、前記複数の反射面及び前記他の反射面で反射された光を拡散させつつ前方へ透過させる拡散面となっており、
前記複数の反射面は、
前後方向及び前記直交方向の何れにも沿った側壁と各反射面とが前記配列方向に交互に連なることで、階段状に連結されており、
各反射面が、当該反射面に対応するLEDから出射された光を、前記第二直交方向と直交する断面では、前記レンズに入射する手前において前後方向及び前記第二直交方向の何れとも直交する第三直交方向に交差させつつ、前方へ反射させ、
前記他の反射面は、前記複数の反射面のうち最も後方であって前記第三直交方向の一方に位置する一の反射面よりも前記第三直交方向の一方側に配置され、当該一の反射面に対応するLEDから出射された光の一部を前方へ反射させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のLEDから出射された光が、当該複数のLEDに対応する複数の反射面で前方へ個別に反射された後に、レンズの前板部を透過して前方へ照射される。このとき、複数の反射面で反射された光がレンズの前板部の後面によって拡散されつつ前方へ透過されるので、反射面からの反射光を単純にレンズに透過させていた従来に比べ、より輝度ムラの少ない発光態様で長尺なレンズの前板部を発光させることができる。したがって、従来に比べ、より輝度ムラが少なく均一なライン状の発光態様を実現することができる。
【0008】
また、レンズの前板部の後面が拡散面となっているので、発光時の当該前板部を前方から見たときに、より奥側が光って見える見栄えとなる。したがって、点灯時の見栄えを奥行き感(立体感)のあるものとすることができる。
更に、レンズが、第二直交方向の両側の2つの側板部と、当該2つの側板部の前端を連結する前板部とを有する前方への凸状に形成されているので、非点灯時の見栄えも奥行き感(立体感)のあるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における車両用灯具の正面図である。
図2図1のII−II線での断面図である。
図3図1のIII−III線での断面図である。
図4】実施形態における車両用灯具の変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態における車両用灯具1の正面図であり、図2及び図3は、図1のII−II線及びIII−III線での断面図である。
なお、以下の説明では、「前」「後」「左」「右」「上」「下」との記載は、特に断りのない限り、車両用灯具1から見た方向を意味するものとする。
【0011】
図1図3に示すように、車両用灯具1は、図示しない車両の前部に搭載されたヘッドランプであり、前面が開口した図示しないハウジングと、当該ハウジングの前面開口を覆う素通しのアウターレンズ2とを備えている。アウターレンズ2は左方に向かって斜め後方へ傾斜した形状に形成されており、車両用灯具1のうち、当該アウターレンズ2に前方を覆われた灯室の内部には、複数のLED(発光ダイオード)3,…と、リフレクタ4と、インナーレンズ5とが収容されている。
【0012】
複数のLED3,…は、アウターレンズ2に倣って、左方に向かって斜め後方へ傾斜した方向(以下、配列方向という。)Xに略沿って配列されている。この複数のLED3,…は、下方へ個別に光を出射させるように各発光面を下方へ向けた状態で、上下方向の高さ位置が揃えられており、共通の基板31の下面に実装されている。
【0013】
リフレクタ4は、複数のLED3,…の下方に配置されており、当該複数のLED3,…から下方へ出射された光を前方へ反射させる。具体的には、リフレクタ4は、上下方向と略直交する平板状の上板部40を有している。この上板部40には、複数のLED3,…に対応して、上下方向に貫通する複数の貫通孔40a,…が当該複数のLED3,…の直下に形成されるとともに、この複数の貫通孔40a,…の下方を覆うように当該上板部40の下面後部から下斜め前方へ延出する湾曲板状の複数の反射部41,…が設けられている。
【0014】
複数の反射部41,…は、複数のLED3,…に対応して配列方向Xに略沿って並設されており、左右方向と略直交する平板状の側壁部42と当該各反射部41とが配列方向Xに交互に連なることで、右側のものほど段階的に前方に位置する階段状に連結されている。この複数の反射部41,…は、それぞれが対応するLED3の下方に配置されて当該LED3の下方を覆うように上斜め前方へ開口する凹板状にそれぞれ形成されており、その各開口内面(前面)が、対応するLED3から出射された光を前方へ反射させる反射面410となっている。
【0015】
また、複数の反射部41,…は、最も後方に位置する1つを除く複数の第一反射部41a,…と、最も後方に位置する第二反射部41bとから構成されている。
このうち、複数の第一反射部41a,…は、それぞれの開口内面(前面)が第一反射面410aとなっている。この第一反射面410aは、左右方向と直交する縦断面形状が、対応するLED3の近傍位置を焦点とする放物面状に形成されている一方で、上下方向と直交する横断面形状が、対応するLED3の近傍位置を第一焦点とするとともに当該第一焦点の前方の所定位置を第二焦点f2とする楕円面状に形成されている。そのため、この第一反射面410aは、対応するLED3から出射された光を、縦断面では略平行光としつつ前方へ反射させ、横断面では第二焦点f2に集光させることで左右方向に交差させつつ前方へ反射させる。ここで、第一反射面410aが横断面において左右方向に交差させつつ前方へ光を反射させるのは、当該第一反射面410aの右端に連なる側壁部42に反射光が遮られないようにするためである。
【0016】
一方、第二反射部41bは、第一反射部41aよりも左右方向にやや大きく形成されており、その開口内面(前面)が第二反射面410bとなっている。この第二反射面410bは、縦断面では、第一反射面410aと同様に、対応するLED3の近傍位置を焦点とする放物面状に形成されており、当該LED3から出射された光を略平行光としつつ前方へ反射させる。一方、横断面では、第二反射面410bは、対応するLED3から出射された光を左右方向に広く拡散させつつ左斜め前方へ反射させる。第二反射面410bには、縦断面に沿った蒲鉾状のフルートカット(図示せず)が左右方向に複数並設されており、このフルートカットが光を左右方向に広く拡散させる。但し、この第二反射面410bにおいても、第一反射面410aと同様に、当該第二反射面410bの右端に連なる側壁部42に反射光が遮られないようにするために、横断面では当該光を左右方向に交差させつつ前方へ反射させる。
【0017】
インナーレンズ5は、配列方向Xに沿って延在する長尺な形状に形成され、リフレクタ4の複数の反射部41,…の前方に配置されている。但し、インナーレンズ5は、第二反射部41b(第二反射面410a)で左斜め前方へ反射された光をも透過可能なように、第二反射面410aよりも左側にまで亘って設けられている。当該インナーレンズ5は、上下方向の両側の上側板部51及び下側板部52と、これら上側板部51及び下側板部52の前端を連結する前板部53とを有する前方への凸状に形成されており、このうちの前板部53が複数の反射面410,…(すなわち、複数の第一反射面410a,…及び第二反射面410b)の前方に位置している。より詳しくは、前板部53は、複数の第一反射面410a,…の横断面における第二焦点f2よりも前側に位置している。また、前板部53の後面53aは、シボ加工が施されたシボ面(拡散面)となっており、複数の反射面410,…で反射された光を左右方向及び上下方向に拡散させつつ前方へ透過させる。
【0018】
以上のように、本実施形態の車両用灯具1によれば、複数のLED3,…から出射された光が、当該複数のLED3,…に対応する複数の反射面410,…で前方へ個別に反射された後に、インナーレンズ5の前板部53を透過して前方へ照射される。このとき、複数の反射面410,…で反射された光がインナーレンズ5の前板部53の後面53aによって拡散されつつ前方へ透過されるので、反射面からの反射光を単純にレンズに透過させていた従来に比べ、より輝度ムラの少ない発光態様で長尺なインナーレンズ5の前板部53を発光させることができる。したがって、従来に比べ、より輝度ムラが少なく均一なライン状の発光態様を実現することができる。
【0019】
また、インナーレンズ5の前板部53の後面53aがシボ面(拡散面)となっているので、発光時の当該前板部53を前方から見たときに、より奥側が光って見える見栄えとなる。したがって、点灯時の見栄えを奥行き感(立体感)のあるものとすることができる。
更に、インナーレンズ5が、上下方向の両側の上側板部51及び下側板部52と、当該上側板部51及び下側板部52の前端を連結する前板部53とを有する前方への凸状に形成されているので、非点灯時の見栄えも奥行き感(立体感)のあるものとすることができる。
【0020】
また、各反射面410は、当該反射面410に対応するLED3から出射された光を、横断面では左右方向に交差させつつ前方へ反射させるので、当該反射面410から直接に左右方向へ広がるように光を反射させる場合と異なり、各反射面410の右端に連なる側壁部42に反射光が遮られることなく、当該光を左右方向へ広がるように反射させることができる。
【0021】
また、複数の反射面410,…のうち、最も後方且つ左方に位置する第二反射面410bは、当該第二反射面410bに対応するLED3から出射された光を、横断面では左斜め前方へ反射させるので、インナーレンズ5の前板部53のうち、後方に反射面410が設けられていない左端部(後端部)まで広く発光させることができる。すなわち、インナーレンズ5をより長尺なライン状に発光させることができる。
【0022】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0023】
例えば、上記実施形態では、本発明に係る車両用灯具として、ヘッドランプである車両用灯具1を例に挙げて説明したが、本発明は、ヘッドランプ以外の車両用灯具にも好適に適用可能である。
【0024】
また、複数のLED3,…の配列方向Xが左方に向かって斜め後方へ傾斜した方向であることとしたが、この配列方向Xは、前後方向と交差する方向であれば特に限定されない。更に、この配列方向Xに応じて、各LED3が光を出射させる方向は当該配列方向Xと略直交する方向であって前後方向とは異なる直交方向であればよく、その他の構成についても、例えば以下のようなものとしてよい。
リフレクタ4の側壁部42は、左右方向と略直交するものでなくともよく、前後方向及び上記直交方向の何れにも沿うように設けられていればよい。
インナーレンズ5の上側板部51及び下側板部52は、上下方向の両側のものでなくともよく、前後方向及び上記配列方向Xの何れとも直交する第二直交方向の両側のものであればよい。
各反射面410は、対応するLED3から出射された光を、横断面において左右方向に交差させつつ前方へ反射させるものでなくともよく、上記第二直交方向と直交する断面において、前後方向及び上記第二直交方向の何れとも直交する第三直交方向に交差させつつ前方へ反射させるものであればよい。
第二反射面410bは、複数の反射面410,…のうち、最も後方であって上記第三直交方向の一方に位置するものである場合に、対応するLED3から出射された光を、上記第二直交方向と直交する断面において、上記第三直交方向の一方側の斜め前方へ反射させるものであればよい。このとき、インナーレンズ5は、第二反射面410bよりも上記第三直交方向の一方側にまで亘って設けられていればよい。
【0025】
また、最も後方に位置する第二反射面410bが光を左斜め前方へ反射させることで、インナーレンズ5が左端部まで広く発光することとしたが、当該第二反射面410bを第一反射面410aと同様の構成(前方へ光を反射させる構成)とした場合でも、他の部品を利用することによってインナーレンズ5を左端部まで発光させることは可能である。
具体的には、図4に示すように、この場合には、第二反射部41bよりも左側であってインナーレンズ5の左端部の後方にエクステンション6が設けられており、このエクステンション6の前面が、第二反射面410bに対応するLED3の近傍位置を焦点とする放物面状の反射面6aとされて、当該LED3からの光を前方へ反射させる。また、第二反射部41b(第二反射面410b)は、対応するLED3からエクステンション6の反射面6aへの光路を遮らないように、左端部が取り除かれている。
このような構成によれば、第二反射面410bを第一反射面410aと同様の構成(前方へ光を反射させる構成)とした場合でも、第二反射面410bに対応するLED3から出射された光の一部を、エクステンション6の反射面6aで前方へ反射させて、インナーレンズ5の前板部53のうち、後方に反射面410が設けられていない左端部を発光させることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 車両用灯具
3 LED
X 配列方向
4 リフレクタ
41 反射部
410 反射面
410a 第一反射面
410b 第二反射面(一の反射面)
42 側壁部(側壁)
5 インナーレンズ(レンズ)
51 上側板部
52 下側板部
53 前板部
53a 後面
図1
図2
図3
図4