(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、角速度センサ装置において、振動を誘起する振動誘起部に印加する駆動信号の電圧値を上げることで素子感度を向上させることができるという知見を得た。共振周波数を、インピーダンス最小(アドミッタンス最大)を示す周波数と定義すると、同一振幅の交流電圧で駆動した時、共振周波数で振動振幅が最大になる。しかしながら、駆動信号の電圧値を所定の電圧以上にした場合、駆動信号の周波数を低いほうから高いほうへ掃引したときの共振周波数を第1の共振周波数とし、駆動信号の周波数を高いほうから低いほうへ掃引したときの共振周波数を第2の共振周波数とすると、第2の共振周波数が第1の共振周波数よりも低くなるヒステリシス特性を示す角速度センサがあることが判った。より具体的には、この種の角速度センサでは、駆動信号の周波数を低いほうから高いほうへ掃引すると、第1の共振周波数において電圧値に対する変位検出部の出力電圧の比である利得が最大値になり、さらに周波数を増加させると利得が減少し、その後駆動信号の周波数を高いほうから低いほうへ掃引すると、第1の共振周波数よりも低い第2の共振周波数で利得が最大値になるヒステリシス特性を示す。そのため、この種の角速度センサで、ヒステリシス特性が生じる範囲では、動作が不安定になり、自励発振の場合には発振が停止してしまうという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、駆動信号の電圧値を所定の電圧以上にして、素子感度を向上させながら、動作を安定させることができる角速度センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が対象とする角速度センサ装置は、可撓性弾性基板と、可撓性弾性基板に形成された圧電体層と、圧電体層に設けられて駆動されると圧電体層を振動させる複数の振動励起用電極と、圧電体層に設けられた複数の角速度検出用電極を含んで構成されて、振動と外部角速度により誘発される変位を複数の角速度検出用電極の出力で検出する変位検出部とを備えた角速度センサと、振動を励起する為に複数の振動励起用電極に駆動信号を印加する駆動回路とを備えている。
【0007】
本発明では、駆動信号の電圧値として、駆動信号の周波数を低いほうから高いほうへ掃引したときの共振周波数を第1の共振周波数とし、駆動信号の周波数を高いほうから低いほうへ掃引したときの共振周波数を第2の共振周波数としたときに、第2の共振周波数が第1の共振周波数よりも低くなるヒステリシス特性を示す所定電圧以上の電圧値を用いる。そして、本発明においては、駆動回路から出力される駆動信号を、所定電圧以上の電圧値を有し且つヒステリシス特性を示す領域を避けた第2の共振周波数よりも低い周波数に設定されている。
【0008】
なお、本明細書においては、このヒステリシス特性を、「周波数ヒステリシス」と定義する。また、本明細書においては、共振周波数とは、上述のように、振動の振幅が最も大きくなる時の周波数のことである。
【0009】
このように振動励起用電極に印加する駆動信号の電圧及び周波数を設定することにより、素子感度を向上させながら、駆動には不向きな周波数ヒステリシスが発生する周波数領域を避けることができる。そのため、素子感度の向上と、動作の安定とを両立させることができる。
【0010】
より具体的には、本発明が対象とする角速度センサ装置は、平板状のダイアフラムと、ダイアフラムの中央部に配置された重錘と、ダイアフラムの外周部を支持する支持部と、ダイアフラム上に形成された圧電体層と、圧電体層に対して設けられた複数の振動励起用電極を含み、駆動信号が複数の振動励起用電極に印加されているときに、重錘に対して、所定の振動軸の方向の運動成分をもった振動を誘起する振動励起部と、圧電体層に対して設けられた複数の角速度検出用電極を含み、コリオリ力に基づいて重錘に生じる変位軸の方向の変位を複数の角速度検出用電極に現れる電圧に基づいて検出する変位検出部とを備えた角速度センサと、角速度センサの複数の振動励起用電極に駆動信号を印加する駆動回路とを備えている。角速度センサは、ダイアフラムの中心位置に原点Oをもち、ダイアフラムの表面がXY平面に含まれるようなXYZ三次元直交座標系を定義したときに、X軸及びZ軸のうちの一方を振動軸、他方を変位軸とし、変位検出部からの検出値に基づいてY軸まわりの角速度を検出する。
【0011】
特に、本発明では、角速度センサが、複数の振動励起用電極に印加する駆動信号の電圧値が所定電圧以上であるときに、駆動信号の周波数を低いほうから高いほうへ連続的に増加させると、第1の共振周波数において電圧値に対する変位検出部の出力電圧の比である利得が最大値になり、さらに周波数を増加させると利得が減少し、その後駆動信号の周波数を高いほうから低いほうへ掃引すると、第1の共振周波数よりも低い第2の共振周波数で利得が最大値になるヒステリシス特性を示すものである。そして、本発明では、駆動回路が、第2の共振周波数より低く該第2の共振周波数に近い周波数を有し且つ所定電圧以上の電圧値を有する駆動信号が印加するように設定している。
【0012】
このように振動励起用電極に印加する駆動信号の電圧及び周波数を設定することにより、素子感度を向上させながら、駆動には不向きな周波数ヒステリシスが発生する周波数領域を避けることができる。そのため、素子感度の向上と、動作の安定とを両立させることができる。
【0013】
駆動信号の周波数が、第2の共振周波数より低い周波数であれば、駆動による振動は安定することがわかっているが、低くしすぎてしまうと、振動が小さくなり素子感度が低下する。そこで、本発明では、駆動信号の周波数を第2の共振周波数より低い周波数で、しかもヒステリシス特性が現れない駆動信号の電圧値で得られる素子感度よりも高い素子感度が得られる周波数にするのが望ましい。このように設定すれば、確実に素子感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)〜(C)は、本発明の角速度センサ装置に用いる角速度センサの実施の形態の一例の平面図、底面図及び断面図である。
【
図2】本発明の角速度センサ装置の実施の形態のブロック図である。
【
図3】周波数を低いほうから高いほうへ掃引し、その後、周波数を高いほうから低いほうへ掃引した場合に得られる利得を示す波形図である。
【
図4】第2の共振周波数を基準にして、0%〜4%の周波数範囲で駆動信号の周波数を変化させた場合の検出出力を示す図であり、(A)は、ピッチ(Y軸回り)、(B)は、ロール(X軸回り)の図である。
【
図5】第2の共振周波数を基準にして、0%〜4%の周波数範囲で駆動信号の周波数を変化させた場合の素子感度及び素子感度変化率を示す図であり、(A)は、ピッチ(Y軸回り)、(B)は、ロール(X軸回り)の図である。
【
図6】第2の共振周波数を基準にして、0%〜4%の周波数範囲で駆動信号の周波数を変化させた場合の他軸感度を示す図であり、(A)は、ピッチ(Y軸回り)、(B)は、ロール(X軸回り)の図である。
【
図7】駆動信号の電圧値を0.8Vpp、1.0Vpp、1.2Vppにした場合に、駆動信号の周波数を第2の共振周波数から2%下げたときの素子感度を示す図であり、(A)は、ピッチ(Y軸回り)、(B)は、ロール(X軸回り)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の蓄電装置の実施の形態の一例について説明する。
【0016】
本発明の角速度センサ装置GMに用いる角速度センサGSでは、平板状のダイアフラム1と、ダイアフラム1の中央部に配置された重錘3と、ダイアフラムの外周部を支持する支持部5と、ダイアフラムの表面に絶縁膜6を介して形成された下部電極7と、下部電極の上に形成された圧電薄膜(圧電体層)9と、圧電薄膜9の上に形成された4つの振動励起用電極11及び4つの角速度検出用電極13とを備えている。ダイアフラム1は、可撓性弾性基板を構成している。ダイアフラム1と、重錘3と支持部5とは、結晶方位が(100)の半導体基板の一方の面上に重錘3の端面と支持部5の端面に対応する形状を有するマスクを配置し、このマスク側からドライエッチングを施すことにより、一体に形成されている。本実施の形態では、4つの振動励起用電極11により、重錘3に対して、所定の振動軸の方向の運動成分をもった振動を誘起する振動励起部が構成されている。また角速度検出用電極13により、コリオリ力に基づいて重錘3に生じる変位軸の方向の変位を検出する変位検出部が構成されている。
【0017】
重錘3に対して、所定の振動軸の方向の運動成分をもった振動を誘起するためには、4つの振動励起用電極11からなる振動励起部を交流電圧駆動する。そしてコリオリ力に基づいて重錘3に生じる変位軸の方向の変位を、4つの角速度検出用電極13に発生する電圧で検出して、角速度を求める。この角速度センサでは、ダイアフラム1の中心位置に原点Oをもち、ダイアフラム1の表面がXY平面に含まれるようなXYZ三次元直交座標系を定義したときに、X軸及びZ軸のうちの一方を振動軸、他方を変位軸とし、変位検出部を構成する角速度検出用電極13からの検出値に基づいてY軸まわりの角速度を検出する。またX軸周り及びY軸周りの角速度を検出するためには、重錘3をZ方向に振動させることになる。また、Z軸周りの角速度を検出するためには、重錘3をX軸方向またはY軸方向に振動させることになる。
【0018】
重錘3は、円柱状または円錐状を有している。そしてダイアフラムの外周部の輪郭形状は、四角形(本実施の形態では略正方形)の四隅に直線部SLを有する形状になっている。本実施の形態では、正方形の各辺S1〜S4と直線部SLとの交点部には、小さいアール部が形成されている。
【0019】
本実施の形態の角速度センサは、4つの振動励起用電極11を、第1の仮想対角線CL1と第2の仮想対角線CL2によって仕切られた4つの領域内にそれぞれ形成している。そして4つの角速度検出用電極13も、第1の仮想対角線CL1と第2の仮想対角線CL2によって仕切られた4つの領域内にそれぞれ形成されている。本実施の形態では、第1の仮想線L1及び第2の仮想線L2がX軸の軸線及びY軸の軸線とそれぞれ一致している。このような配置では、ダイアフラムの輪郭の第2の仮想線に添う長さ寸法をR1とし、ダイアフラムの輪郭の第1の仮想線に添う長さ寸法をR2とし、第1の仮想対角線及び第2の仮想対角線に添う長さ寸法をR3とした場合に、R1:R2:R3=(0.95±0.02の範囲の値):1:(0.85±0.02の範囲の値)の関係を満たすようにすると、主軸感度及び他軸感度を共にバランスさせることができることが実験により確認されている。なお本実施の形態では、4つの振動励起用電極11は、重錘3の径方向外側に位置する外辺12Aと、この外辺12Aと径方向に対向する内辺12Bと、外辺12Aと内辺12Bとを連結する一対の連結辺12C及び12Dとからなる。外辺12Aの形状は、ダイアフラム1の外周部の一部(隣合う2つの辺SLの一部と直線部S1に亘る部分)の形状と相似形になっている。また振動励起用電極11の輪郭形状の内辺12Bの形状は、円弧形状を有している。4つの振動励起用電極11をこのような形状にすると最も効率良く、しかも安定に振動を生じさせることができることが確認されている。また4つの角速度検出用電極13の輪郭形状は、重錘3の径方向外側に位置する外辺14Aと、外辺14Aと径方向に対向する内辺14Bと、外辺14Aと内辺14Bとを連結する一対の連結辺14C及び14Dとからなる。本実施の形態では、外辺14A及び内辺14Bはそれぞれ同心の円弧形状を有している。4つの振動励起用電極11と4つの角速度検出用電極13をこのように定めると、X軸方向の振動とY軸方向の振動の区分ができる信号を4つの角速度検出用電極13から確実に得ることができることが確認されている。なお本実施の形態では[
図1(A)のrで示した部分]、4つの振動励起用電極11及び4つの角速度検出用電極13の角部を湾曲させているので、電極が剥離することを有効に防止することができる。また本実施の形態ではダイアフラム1の輪郭の辺と隅部との連結部[
図1(B)のrで示した部分]は湾曲しているので、ダイアフラム1の機械的強度が高い。
【0020】
図2は、本実施の形態の角速度センサ装置GMのブロック図である。本実施の形態の角速度センサ装置GMは、大きく分けて、上述の角速度センサGSと、角速度センサGSを駆動する駆動装置DCとから構成されている。駆動装置DCは、振動励起用電極11に入力する駆動信号を発生させる発振回路21と、角速度検出用電極13の出力を増幅させる増幅器23と、増幅器23の出力の所定の周波数以外の周波数を減衰させるバンドパスフィルタ25と、利得比較器27とから構成されている。利得比較器27は、所定の周波数で角速度センサGSを駆動してバンドパスフィルタ25から出力される電圧の利得と周波数をデクリメントされてバンドパスフィルタ25から出力される電圧の利得とを比較し、第2の共振周波数を決定する機能を有している。位相比較器29については、後述する。
【0021】
図3を用いて、本実施の形態で振動励起用電極11に印加する駆動信号を説明する。本実施の形態では、X軸周り及びY軸周りの角速度を検出するために、重錘3をZ方向に振動させて、測定を行っている。
図3は、横軸が駆動信号の周波数[kHz]であり、縦軸が利得(印加する駆動信号の電圧値に対する変位検出部の出力電圧の比)[dB]である。
図2では、本実施の形態の駆動信号における利得特性(sweep up 1Vpp及びsweep down 1Vpp)と、その比較のために、従来の角速度センサ装置で用いる駆動信号における利得特性(sweep up 0.5Vpp及びsweep down 0.5Vpp)も図示してある。
【0022】
従来の角速度センサ装置においては、動作を安定させるために、駆動信号の周波数を変化させた場合でも、利得がヒステリシス特性を示さない電圧値を用いている。角速度センサGSの場合、この電圧値の一例は0.5Vppであり、
図3に示したように、周波数を連続的に上げた場合(低いほうから高いほうに掃引した場合〔sweep up〕)、利得は増加し、34.42kHzの時の−4.0dBを最大値にして、利得は連続的に減少する特性を示す。最大値を示す周波数、すなわち、振幅が最大になる周波数が、「共振周波数」である。その後、周波数を連続的に下げた場合(高いほうから低いほうに掃引した場合〔sweep down〕)、利得は増加し、周波数を連続的に上げた場合と同様、34.42kHzの時の−4.0dBを最大値にして、利得は連続的に減少する特性を示す。周波数を連続的に上げた場合と周波数を連続的に下げた場合の利得の変化はほぼ同じであるため、
図3においては、2つの波形は、ほぼ重なって表示されている。
【0023】
本実施の形態の角速度センサGSに印加する駆動信号は、周波数を連続的に上げて、その後、連続的に下げた場合に、利得がヒステリシス特性を示す領域を有する電圧値を用いる。本実施の形態の角速度センサGSの場合、この電圧値の一例は1.0Vppである。
図3に示したように、周波数を連続的に上げた場合(sweep up)、利得は増加し、34.91kHz(第1の共振周波数)の時の−4.1dBを最大値にして、34.92kHzを超えた直後に、利得は急激に減少する特性を示す。その後、周波数を連続的に下げた場合(sweep down)、利得は34.83kHzを超えた時に、急激に増加する特性を示し、直後の34.82kHz(第2の共振周波数)の時に、周波数を連続的に下げた場合の利得の最大値である−4.4dBになる。
図3からも明らかなように、電圧値1.0Vppの場合には、周波数に対して、利得はヒステリシス特性を示す。この特性は、弾性体と圧電薄膜の非線形特性によるものであり、特に圧電薄膜の非線形効果によるものであると推測される。本明細書においては、このヒステリシス特性を、「周波数ヒステリシス」と定義する。
図3は一例であり、周波数変化や利得やヒステリシス領域などは異なる場合もある。
【0024】
本実施の形態においては、
図3に示される周波数ヒステリシスを示す電圧値(1.0Vpp)の駆動信号を用いて、安定した駆動を実現するため、周波数ヒステリシスが発生する周波数領域を避けるように、第2の共振周波数より低い範囲の周波数を用いるように設定する。
図4乃至
図6は、第2の共振周波数を基準にして、0%〜4%の周波数範囲で駆動信号の周波数を変化させた場合の各要素の変化を示すものである。なお、
図4乃至
図6においては、(A)は、重錘3をZ軸方向に振動させ、X軸を変位軸として、Y軸回りの角速度を検出する場合(ピッチ)であり、(B)は、重錘3をZ軸方向に振動させ、Y軸を変位軸として、X軸回りの角速度を検出する場合(ロール)である。
【0025】
図4(A)及び(B)は、第2の共振周波数を基準にして、0%〜4%の周波数範囲で駆動信号の周波数を変化させた場合の検出出力[mVpp]を示す図である。凡例の記号X1,X2,Y1,Y2は、
図1(A)の4つの振動励起用電極11に付した記号に対応するものであり、点線の丸で囲ったデータは駆動信号の電圧値を0.5Vppにした場合の比較のためのデータである。0%〜2%程度の間であれば、駆動信号の電圧値を1.0Vppとした場合の方が、4つの振動励起用電極11全てにおいて、駆動信号の電圧値を0.5Vppにした場合よりも検出出力が高いことが読み取れる。
【0026】
図5(A)及び(B)は、第2の共振周波数を基準にして、0%〜4%の周波数範囲で駆動信号の周波数を変化させた場合の素子感度[μV/dps]及び素子感度変化率[%]を示す図である。点線の丸で囲ったデータは駆動信号の電圧値を0.5Vppにした場合の比較のためのデータである。
図5(A)及び(B)より、0%〜1.5%程度の間であれば、駆動信号の電圧値を1.0Vppとした場合の方が、駆動信号の電圧値を0.5Vppにした場合よりも素子感度が高くなることが読み取れる。
【0027】
図6(A)及び(B)は、第2の共振周波数を基準にして、0%〜4%の周波数範囲で駆動信号の周波数を変化させた場合の他軸感度[%]を示す図である。点線の丸で囲ったデータは駆動信号の電圧値を0.5Vppにした場合の比較のためのデータである。
図6(A)及び(B)より、0%〜2%の間で、駆動信号の電圧値を1.0Vppとした場合に、駆動信号の電圧値を0.5Vppにした場合に比べて、他軸感度が悪化することはないことが読み取れる。
【0028】
以上の実験結果により、駆動信号の電圧値を1.0Vppとした場合、本実施の形態では、動作を安定させるために、駆動信号の周波数を第2の共振周波数から1.5%以内の周波数範囲内の周波数に決定している。ただし、角速度センサGSが温度や経時変化等による影響を受けやすいため、この周波数の範囲は一例にすぎないものであり、
図7に示すように、駆動信号の電圧値が1.0Vppの場合には、駆動信号の周波数を第2の共振周波数から2%以内にすることを目安としている。
【0029】
図7は、駆動信号の電圧値を周波数ヒステリシスが発生する0.8Vpp、1.0Vpp、1.2Vppにした場合に、駆動信号の周波数を第2の共振周波数から2%下げたときの素子感度[μV/dps]を示した図である。(A)は、重錘3をZ軸方向に振動させ、X軸を変位軸として、Y軸回りの角速度を検出する場合(ピッチ)であり、(B)は、重錘3をZ軸方向に振動させ、Y軸を変位軸として、X軸回りの角速度を検出する場合(ロール)である。
図7(A)及び(B)より、この場合には、駆動信号の電圧値が0.8Vppの場合には、0.5Vppのときよりも低下してしまうのに対して、1.0Vpp及び1.2Vppの場合には、周波数を2%下げたとしても、0.5Vppのときよりも高くすることができることが読み取れる。したがって、駆動信号の電圧値や、角速度センサ装置GMを利用する環境に応じて、駆動信号の周波数を第2の共振周波数から何%下げるかを決定することになる。
【0030】
以上より、本発明においては、次の工程から決定した電圧値及び周波数の駆動信号を用いることで、素子感度を向上させ、且つ、動作を安定させることができる。
【0031】
(1)周波数ヒステリシスを示す電圧値の駆動信号を印加して、駆動信号の周波数を連続的に上げた後(この動作を必要としない場合もある)、周波数を連続的に下げて、利得比較器27によって第2の共振周波数を見つける。なお、第2の共振周波数を見つけるにあたっては、
図3のグラフを図示しない表示画面に表示しておき、目視によって見つけてもよい。
【0032】
(2)第2の共振周波数より低い周波数であって、第2の共振周波数から数%以内の適切な周波数範囲内の周波数を決定する。
【0033】
上記工程は、角速度センサ装置GMについて予め行っておき、予め駆動信号の電圧値と周波数を決定しておけば角速度センサ装置を容易に利用することができる。また、利用する際に、必要に応じて(例えば、一定時間おき、起動時、温度変化時等)上記工程を実行し、駆動信号の電圧値と周波数を決定する(キャリブレーションを行う)ようにしてもよいのはもちろんである。このようにすれば、環境や状況に合わせた適切な駆動信号を用いることができる。
【0034】
上記数値は一例であり、条件や環境が異なることにより、数値は変化する。特に、角速度センサは、環境温度により特性が変化することがあることが知られているため、温度による変化は予想される。その場合でも、本発明と同様の工程により駆動信号の電圧値及び周波数を決定することにより、素子感度を向上させ、且つ、動作を安定させることができる。本実施の形態では、さらに、動作を安定させるために、駆動回路DCに位相比較器29を備えている。位相比較器29は、発振回路21の出力電圧の位相と、バンドパスフィルタ25の出力電圧の位相とを比較し、初期状態(利得から算出して決定した駆動信号の周波数での振動状態)から位相がずれないように発振回路21の出力電圧の周波数を補正するフィードバック信号を発生する。このようにしてフィードバック信号に基づいて発振回路21を制御することにより、温度や経時変化により発生する位相のずれを防止し、初期状態を維持することができる。
【0035】
また、本実施の形態では、角速度センサの形状・電極の配置として、
図1(A)乃至(C)のものを用いたが、角速度センサの形状・電極の配置は、これに限られるものではない。他の材料及び他の形状・電極の配置のものにおいても、本発明と同様の工程により駆動信号の電圧値及び周波数を決定することにより、素子感度を向上させ、且つ、動作を安定させることができる。