特許第6082240号(P6082240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧 ▶ 富士電機機器制御株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6082240-閉鎖型配電盤 図000002
  • 特許6082240-閉鎖型配電盤 図000003
  • 特許6082240-閉鎖型配電盤 図000004
  • 特許6082240-閉鎖型配電盤 図000005
  • 特許6082240-閉鎖型配電盤 図000006
  • 特許6082240-閉鎖型配電盤 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082240
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】閉鎖型配電盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/20 20060101AFI20170206BHJP
   H02B 1/28 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   H02B1/20 C
   H02B1/28 G
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-269499(P2012-269499)
(22)【出願日】2012年12月10日
(65)【公開番号】特開2014-117078(P2014-117078A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 岳
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−038315(JP,A)
【文献】 実開昭57−195322(JP,U)
【文献】 特開昭54−073247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 − 1/38
H02B 1/46 − 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
盤内に電源側から負荷側に給電する裸バー導体の主回路母線を布設した閉鎖型配電盤において、
前記主回路母線の布設経路の一部に各相の母線ごとに、その母線導体の電源側から盤内の前方に引き出した負荷側の屈曲コーナー部を包囲して導体周面に絶縁材により形成したアークブロック層を被着するとともに、
前記アークブロック層がアーク熱を受けてアブレーションガスを発生する高分子樹脂材で構成されたことを特徴とする閉鎖型配電盤。
【請求項2】
請求項1に記載の閉鎖型配電盤において、前記アークブロック層を前記主回路母線の布設経路の負荷側の閉鎖型配電盤の内壁に近い位置に被着することを特徴とする閉鎖型配電盤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盤内に電源側から負荷側に給電する裸バー導体の主回路母線を布設した受電盤,母線盤などを対象とする閉鎖型配電盤に関し、詳しくは短絡事故が基で主回路母線導体の相間に発生したアークが母線導体を伝搬して負荷側の機器,配電盤の筐体を損傷するのを防ぐ母線の回路構成に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の閉鎖型配電盤においては、盤内に布設した主回路母線に万一短絡事故が生じると母線導体の相間にアークが発生する。この場合に母線が絶縁の施されない裸のバー導体で構成されていると、アークに流れる電流と電源側からアーク発生地点に向けて母線導体に流れる電流の磁界との間に作用する電磁力(ローレンツ力)を受けて、アークが母線導体に沿って電源側から負荷側に駆動される。
【0003】
この場合に、アークが母線導体に接続された負荷側の機器、母線の周辺に配置されている計測,制御機器に伝搬すると、これらの各機器がアークに曝されて焼損、破損するほか、アークが配電盤の筐体の壁面に直接接触した場合にはアーク熱により筐体が破損してアークによって発生された盤内の高温ガスが盤外周囲に放出されるなど、重大なアーク事故に進展するおそれがある。
【0004】
そこで、盤内に布設した主回路母線に万一短絡事故が生じてアークが発生した場合には、このアークが負荷側の機器,配電盤の筐体壁面に伝搬しないように停滞させてアークを減衰,鎮静化させる対策が望まれ、その手段として負荷側に通じる母線導体の途中の屈曲部から分岐してアークを停滞位置に誘導するアークホーン形の補助導体を設け、電源側から母線導体の屈曲部まで伝搬して来たアークを母線導体から補助導体に誘導して負荷側機器へのアーク伝搬を防ぐようにした配電盤の構成が知られており(例えば、特許文献1参照)、その盤内構造を図5図6に示す。
【0005】
図3図4において、1は閉鎖型配電盤(母線盤)、2は電源側から盤内に引き込んで布設した、R,S,Tの各相導体からなる主回路母線、2aは主回路母線2から負荷側に向けて延在する導体屈曲部、2bは導体屈曲部2aの根元から分岐して母線2と同じ方向に延在するよう設けたアーク誘導用の補助導体である。
【0006】
上記の構成で受電中に盤内に布設した主回路母線2に万一短絡事故が発生して母線導体の2相間にアーク3が発生すると、アーク3はアーク電流と電源側から主回路母線2に流れる電流の作る磁界との間に作用する電磁力F(ローレンツ力)を受け、図4に示すように母線導体R、Sに沿って電源側から負荷側に向けて駆動される。ここで、アーク3が導体屈曲部2aまで伝搬すると、アーク3は直線状に延在する補助導体2bに移行してその先端部に停滞し、その後に電源側に接続した上位の遮断器が電流を遮断してアークを消滅させる。これにより主回路母線2の負荷側に接続された機器がアーク3に曝されるのを回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−38315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1の開示されている構造(図5図6参照)では、盤内の主回路母線2に接続したアーク誘導用の補助導体2bが配電盤2の筐体壁面1aに向けて突出していることから、補助導体2bの先端と配電盤1の筐体壁面1aとの間の距離が十分確保されてないと、補助導体2bの先端に停滞したアーク3が配電盤1の筐体側壁1aに触れて筐体の壁面1aが破損する危険性があるため、筐体と補助導体2bの先端との間の十分な絶縁距離を確保するために配電盤1の筐体を大きく作る必要がある。
【0009】
なお、盤内に布設した主回路母線2の全長域に亙って導体表面に樹脂等を被覆して母線の短絡事故時のアーク発生を防ぐ方法も考えられるが、その場合には主回路母線2に流れる電流のジュール発熱を盤外に放熱する冷却対策が必要となる。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は先記の特許文献1に開示の補助導体を用いることなしに、簡易な手段で前記課題を解消して主回路母線に発生したアークから負荷側の機器を安全に保護できるようにした閉鎖型配電盤提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、盤内に電源側から負荷側に給電する裸バー導体の主回路母線を布設した閉鎖型配電盤において、前記主回路母線の布設経路の一部に各相の母線ごとに、その母線導体を包囲して導体周面に絶縁材により形成したアークブロック層を被着するものとする(請求項1)。
【0012】
ここで、前記のアークブロック層は、前記主回路母線の布設経路の負荷側の前記閉鎖型配電盤の内壁に近い位置に設けるのがよい(請求項2)。
【0013】
また、このアークブロック層は、アーク熱を受けてアブレーションガスを発生する高分子樹脂材で構成するのがよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0014】
上記構成によれば,万一の短絡事故が基で主回路母線の相間に発生したアークが負荷側に向け母線導体上を伝搬する途上で絶縁材におより形成されたアークブロック層まで移動すると、このアークブロック層に阻まれてアークの発弧点がその位置に停滞するとともに、このアーク熱を受けて絶縁材により形成したアークブロック層の表面から溶発した高温高圧のアブレーションガスがアークに向けて噴出,拡散する。これにより、アークはアブレーションガスの反力を受け、電磁力(ローレンツ力)による伸長が抑えられるとともに、アブレーションガスの冷却作用によりアークエネルギーも減衰して鎮静化される。
【0015】
これにより、主回路母線の電源側導体上に発生したアークが母線導体を伝わって負荷側の機器、および配電盤の筐体壁面に向け伝搬するのを抑止して負荷側機器,盤筐体をアークから安全に保護できる。しかも、盤内に布設した主回路母線には、特許文献1のようにアークを停滞位置に向けて誘導する補助導体、および該補助導体の先端と盤筐体の壁面との間に絶縁距離の確保が必要なくなるので配電盤筐体の小形,コンパクト化が図れる。また、母線導体はその全長域を絶縁物で被覆する必要も無いので、母線導体のジュール発熱対する放熱性も問題ない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1に係わる閉鎖型配電盤の盤内構造を表す模式図である。
図2図1における主回路母線に被着した絶縁材により形成したアークブロック層によるアーク伝搬抑止機能を表す説明図である。
図3】本発明の実施例2に係わる閉鎖型配電盤の盤内構造を表す模式図である。
図4図3における主回路母線に被着した絶縁材により形成したアークブロック層によるアーク伝搬抑止機能を表す説明図である。
図5】特許文献1に開示されている配電盤の盤内構造を表す模式図である。
図6図5における主回路母線の補助導体によるアーク伝搬抑止機能を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明による昇温装置の実施の形態を図1図2に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例1,実施例2の図中で図5図6に対応する部材には同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0018】
図1図2に示す実施例1の閉鎖型配電盤1においては、その盤内に布設した主回路母線に対し、電源側導体2から盤内の前方に引き出した負荷側導体2aよりも電源側に近い経路の中間部位に位置に揃えてR,S,T各相の母線導体を個別に包囲するように、その導体周面に絶縁材で形成したアークブロック層4を被着している。ここで、アークブロック層4は、アーク熱を受けてアブレーションガスを溶発する高分子材(ポリマー)として例えばPOM(ポリアセタール樹脂),PTTE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)などのポリマー・バルク材で形成されている。
【0019】
上記の構成により、主回路母線に万一発生した短絡事故が基で電源側導体2の相間に発生したアーク3は、先に図4で述べたように電磁力F(ローレンツ力)を受けて電源側から負荷側に向けて母線導体上で駆動されるが、その際にアーク3が前記のアークブロック層4の被着された位置まで伝搬すると、図2で表すようにアークブロック層4に阻まれてアーク3の発弧点がその位置に停滞したまま、電磁力Fによりアーク長が伸長して図示のように隣り合うアークブロック層4の間の間隙に押し込まれるようになる。この状態になると、高温のアーク熱により絶縁材で形成したアークブロック層4の表面からアブレーションガス5が溶発するようになる。
【0020】
この場合にアブレーションガスはアーク熱を受けて高温,高圧ガスとなり、隣り合うアークブロック4の相互間隙を蓄圧空間として図示の矢印Gで表すようにアーク3に向け、噴流となって拡散する。これにより、アーク3はアブレーションガス5による反力を受けて負荷側導体2aへの伝搬が抑えられるとともに、アーク3に吹きつけられるアブレーションガス5の冷却作用によりアークエネルギーも減衰して鎮静化される。
【0021】
その結果、主回路母線2の電源側導体上に発生したアーク3が母線導体を伝わって負荷側導体2aに接続された負荷側機器、あるいは負荷側導体2aの引き出しコーナー部位に間隔を隔てて対峙する配電盤筐体の内壁面に伝搬するのを抑止して負荷側機器,盤筐体をアークから安全に保護できる。しかも、盤内に布設した主回路母線2には、特許文献1のようにアークを停滞位置に向けて誘導する補助導体、および該補助導体の先端と盤筐体の壁面との間に所要の絶縁距離を確保する必要なくなるので、配電盤筐体を小形,コンパクトに構成できる。
【実施例2】
【0022】
次に、本発明の請求項2に対応する実施例2の構成を図3図4に基づいて説明する。この実施例2においては、閉鎖型配電盤1の盤内に布設した主回路母線の電源側導体2に被着したアークブロック層4が、先記の実施例1とは異なり次記のような位置に設けられている。
【0023】
すなわち、アークブロック層4が、R,S,T各相に対応する電源側導体2から盤内の前方に引き出した負荷側導体2aの引き出し部(導体の屈曲コーナー部)を包囲して閉鎖型配電盤1の内壁1aに近い位置に設けている。
【0024】
この構成におけるアーク3の移動制止,および鎮静効果は先述した原理と同様であるが、先記の実施例1と比べてアークブロック層4の位置を負荷側に寄せた分だけ短絡アークの制止保護範囲が拡大する。しかも、閉鎖配電盤1の内壁1a(筐体側壁)に接近して対峙する負荷側導体2aの引き出しコーナー部分を絶縁材のアークブロック層4で覆うことで、主回路母線と盤筐体の内壁1aとの間の絶縁距離を実施例1(図1参照)より更に短縮して盤の小型,コンパクト化が図れる。
【符号の説明】
【0025】
1:閉鎖型配電盤
2:主回路母線
2a:負荷側導体
3:アーク
4:絶縁材により形成したアークブロック層
5:アブレーションガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6