(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る媒体供給装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から
図30を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、媒体供給装置に関する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像読取装置の概略構成を示す断面図、
図2は、ジャムの発生箇所の説明図、
図3は、媒体の座屈を示す図、
図4は、座屈条件の説明図、
図5は、座屈に係る長さの説明図、
図6は、実施形態に係る媒体供給装置の概略構成を示す断面図、
図7は、実施形態に係る媒体供給装置の要部を示す断面図、
図8は、実施形態に係る媒体供給装置の要部を示す正面図、
図9は、実施形態の媒体供給装置による腰付けを示す斜視図、
図10は、第二アームによるジャム抑制の説明図である。
【0011】
図1に示すように、実施形態に係る画像読取装置100は、媒体供給装置1−1と、シュータ1と、搬送ローラ2と、第一画像読取部3と、第二画像読取部4と、スタッカ5とを含んで構成されている。
【0012】
シュータ1は、画像読取装置100の背面側に設けられている。シュータ1は、載置台であり、複数の媒体S(
図2参照)が重ねて載置される。媒体供給装置1−1は、シュータ1に載置された媒体Sを1枚ずつ用紙搬送方向に送り出す。搬送ローラ2は、媒体供給装置1−1によって送り出された媒体Sを用紙搬送方向に送る。第一画像読取部3は、媒体Sの表面(上側面)の画像を読み取り、表面画像の画像データを生成する。第二画像読取部4は、媒体Sの裏面(下側面)の画像を読み取り、裏面画像の画像データを生成する。スタッカ5は、画像読取装置100の前面側に設けられている。画像読取部3,4による画像の読み取りが終了した媒体Sは、搬送ローラ2によって画像読取装置100の前面側に排出され、スタッカ5に載置される。
【0013】
画像読取装置100は、机上等に載置される本体部100aと、回動部100bとを有する。回動部100bは、本体部100aに対して回動可能に支持されており、
図1に示すように開閉方向に回動することができる。媒体供給装置1−1のピックローラ6、および第二画像読取装置4は、本体部100aに設けられている。媒体供給装置1−1のブレーキローラ7、および第一画像読取部3は、回動部100bに設けられている。
【0014】
図2に示すように、媒体供給装置1−1は、ピックローラ6とブレーキローラ7とを含んで構成されている。シュータ1の載置面1aには、複数の媒体Sが重ねて載置されている。ピックローラ6は、シュータ1に載置された媒体Sを送り出す繰り出し部である。ピックローラ6は、最も載置面1a側(下層側)に載置された媒体Sの下面に接触するように配置されている。ピックローラ6は、図示しない駆動装置、例えばモータによって回転駆動される。ピックローラ6の回転方向Y1は、接触した媒体Sを用紙搬送方向に送り出す方向である。
【0015】
ブレーキローラ7は、ピックローラ6に接圧して配置される分離部である。ピックローラ6とブレーキローラ7は、互いに外周面を接して半径方向に相互に押圧し合うように配置されている。ブレーキローラ7は、ピックローラ6との間に挟み込んだ媒体Sに対して搬送方向と反対方向の摩擦力を作用させる。ブレーキローラ7は、ピックローラ6によって複数の媒体Sが重なって送り出されようとした場合に、重なり合った複数の媒体Sを分離して重送を抑制する。
【0016】
ここで、媒体供給装置1−1では、媒体Sの詰まり(ジャム)が発生しやすい箇所が存在する。一つは、ニップ領域Nである。ニップ領域Nは、ピックローラ6とブレーキローラ7とが接圧する領域である。ニップ領域Nは、ピックローラ6とブレーキローラ7との間に媒体Sが存在しない場合に、ピックローラ6の外周面とブレーキローラ7の外周面とが互いに押圧し合う領域であり、ピックローラ6とブレーキローラ7との間に媒体Sを挟んだ場合に媒体Sを挟んでピックローラ6の外周面とブレーキローラ7の外周面とが互いに押圧し合う領域である。ニップ領域Nでは、媒体Sがピックローラ6から受ける力の方向とブレーキローラ7から受ける力の方向とが反対方向であるため、媒体Sの詰まりが発生しやすい。
【0017】
また、媒体Sの搬送路におけるニップ領域Nよりも搬送方向の上流側の領域Rにおいて媒体Sの詰まりが発生しやすい。上流側の領域Rは、シュータ1に載置された媒体Sの搬送方向下流側の端部Sdから、ニップ領域Nの搬送方向上流側の端部までの領域である。上流側の領域Rでは、以下に説明するように、座屈による詰まりが発生しやすい。
【0018】
図3に示すように、送り出される媒体Sに対しては、ピックローラ6から搬送方向の力(ピック搬送力Fp)が作用する。一方、ブレーキローラ7からは搬送方向と反対方向のブレーキ力Fbが作用する。ここで、上流側の領域Rでは、搬送される媒体Sに対して、ブレーキローラ7側に空間部R1が存在する。空間部R1は、ピックローラ6の軸方向から見た場合に、ピックローラ6によって送り出される媒体Sと、ブレーキローラ7と、シュータ1に載置された媒体Sとで形成される空間部である。空間部R1が存在することにより、
図3に破線Sbで示すように、媒体Sが座屈した場合に屈曲しやすく、媒体Sの詰まりが生じやすい。
【0019】
図4に示す部材の座屈条件は、以下の式(1)で表される。
P=π
2・E・I/L
2…(1)
ここで、P:座屈荷重(力)[N]、E:縦弾性係数[GPa]、I:断面二次モーメント[m
4]、L:部材の長さ[m]である。
【0020】
図5に示すように、送り出される媒体Sにおいて、座屈に係る長さLは、上流側の領域Rの搬送方向の長さに相当する。画像読取装置100等の利便性を向上するためには、シュータ1に多くの媒体Sを載置できることが好ましい。一方で、シュータ1に載置する媒体Sの枚数が多くなると、空間部R1が大きくなり、また送り出される媒体Sの座屈に係る長さLが長くなる。上記式(1)からわかるように、座屈に係る長さLが大きくなると、小さな荷重で座屈し易く、媒体Sの詰まりが発生しやすくなるという問題がある。
【0021】
本実施形態に係る媒体供給装置1−1は、
図6に示すように、ピックローラ6の軸方向視において空間部R1を閉塞する可動式の閉塞部21を有する。これにより、上流側の領域Rにおける媒体Sの詰まりを抑制することができる。また、本実施形態に係る媒体供給装置1−1は、送り出される媒体Sをピックローラ6側に向けて押圧して湾曲させる可動式の腰付け部13を有する。これにより、ニップ領域Nにおける媒体Sの詰まりを抑制することができる。
【0022】
図7に示すように、実施形態に係る媒体供給装置1−1は、第一アーム10と、第二アーム20とを有する。第一アーム10および第二アーム20は、それぞれピックローラ6の回転軸と平行な軸によって回動自在に支持されている。本実施形態では、第一アーム10の回転軸の中心軸線X1と、第二アーム20の回転軸の中心軸線X2とは異なる。本実施形態では、第一アーム10の中心軸線X1は、第二アーム20の中心軸線X2よりも搬送方向の上流側に位置している。また、第一アーム10の中心軸線X1は、第二アーム20の中心軸線X2よりも媒体Sの搬送路Bから遠い位置にある。第一アーム10および第二アーム20は、それぞれ搬送方向の下流側の端部において回動自在に支持されており、中心軸線X1,X2から搬送方向の上流側に向けて延在している。第一アーム10および第二アーム20は、媒体Sの搬送路Bよりもブレーキローラ7側に配置されている。
【0023】
図8には、
図7のA矢視図が示されている。本実施形態の媒体供給装置1−1は、2つのピックローラ6と、2つのブレーキローラ7と、2つの第一アーム11,12と、1つの第二アーム20とを有している。2つのピックローラ6は、同軸上に配置され、かつ軸方向において第一アーム11,12および第二アーム20を間に挟んで配置されている。同様に、2つのブレーキローラ7は、同軸上に配置され、かつ軸方向において第一アーム11,12および第二アーム20を間に挟んで配置されている。2つの第一アーム11,12は、軸方向において第二アーム20を間に挟んで配置されている。以下の説明では、2つの第一アーム11,12を特に区別しない場合、単に第一アーム10と称する。
【0024】
図7に示すように、第一アーム10は、腰付け部13を有する。腰付け部13は、ピックローラ6によって送り出される媒体Sをピックローラ6側に向けて押圧して媒体Sを湾曲させる。第一アーム10は、軸方向視においてブレーキローラ7からピックローラ6へ向けて凸となるように湾曲しており、湾曲部は、ピックローラ6側に向けて突出している。第一アーム10におけるピックローラ6側に向けて突出した部分が腰付け部13として機能する。腰付け部13は、軸方向視した場合に基端側から先端側へ向かうに従い幅が小さくなるテーパ状となっている。第一アーム10は、コイル状の付圧ばねSp1によって、腰付け部13をピックローラ6側に向けて押圧する回転方向(
図7における時計回りの方向)の付勢力を受けている。腰付け部13は、閉塞部21よりも搬送方向の下流側にあり、媒体Sにおける閉塞部21によって押圧される部分よりも搬送方向下流側の部分を腰付けする。
【0025】
腰付け部13は、ピックローラ6とブレーキローラ7とによって挟まれた媒体Sをピックローラ6側に向けて押圧し、
図9に示すように媒体Sを湾曲させる。本実施形態では、腰付け部13は2つのピックローラ6の間に配置されており、媒体Sの幅方向の中央部を腰付けする。
【0026】
第二アーム20は、閉塞部21を有する。
図10に示すように、閉塞部21は、ピックローラ6の軸方向視において空間部R1を閉塞する。第二アーム20は、軸方向視においてブレーキローラ7からピックローラ6へ向けて凸となるように湾曲しており、湾曲部は、ピックローラ6側に向けて突出している。第二アーム20におけるピックローラ6側に向けて突出した部分が閉塞部21として機能する。閉塞部21は、軸方向視した場合に基端側から先端側へ向かうに従い幅が小さくなるテーパ状となっている。第二アーム20は、コイル状の付圧ばねSp2によって、閉塞部21をピックローラ6側に向けて押圧する回転方向(
図7,
図10における時計回りの方向)の付勢力を受けている。
【0027】
閉塞部21は、軸方向視において空間部R1を閉塞しており、媒体Sがブレーキローラ7側に向けて湾曲することを抑制する。従って、閉塞部21は、媒体Sの座屈による詰まりの発生を抑制することができる。媒体Sがブレーキローラ7側に向けて湾曲しようとすると、付圧ばねSp2の付勢力に抗して閉塞部21を押圧することとなる。従って、閉塞部21は、付圧ばねSp2の付勢力によって媒体Sの湾曲を抑制し、媒体Sの詰まりの発生を抑制することができる。媒体Sの湾曲を抑制する観点からは、閉塞部21がピックローラ6によって送り出される媒体Sのブレーキローラ7側の面に接していることが好ましい。
【0028】
本実施形態の媒体供給装置1−1では、第一アーム10と第二アーム20とが別の部材であり、独立して回動することができる。従って、腰付け部13と閉塞部21とは別の部材であって独立して移動可能である。これにより、上流側の領域Rにおける媒体Sの詰まりの抑制と、ニップ領域Nにおける媒体Sの詰まりの抑制とが効果的に実現される。
図11は、媒体供給装置1−1による詰まり抑制効果の一例を説明する図、
図12は、媒体供給装置1−1による詰まり抑制効果の他の例を説明する図である。
【0029】
図11は、シュータ1の載置面1a上に媒体Sが搬送方向下流側の端部Sdを揃えて載置されている場合の詰まり抑制効果を示す図である。閉塞部21は、軸方向において空間部R1を閉塞しており、上流側の領域Rにおける媒体Sの詰まりを抑制する。閉塞部21は、腰付け部13とは独立して移動可能である。従って、腰付け部13が媒体Sによってブレーキローラ7側に持ち上げられたとしても、適宜空間部R1を閉塞して媒体Sの湾曲を抑制することができる。また、腰付け部13は、閉塞部21とは独立して移動可能である。従って、閉塞部21が媒体Sによってブレーキローラ7側に持ち上げられたとしても、適宜媒体Sをピックローラ6側に向けて押圧し、媒体Sを湾曲させることができる。つまり、閉塞部21による上流側の領域Rにおける詰まり抑制効果と、腰付け部13によるニップ領域Nにおける詰まり抑制効果とは相互に影響を受けることなく、最大限にそれぞれの効果が発揮される。
【0030】
図12は、シュータ1の載置面1a上に媒体Sがテーパ状に載置され、媒体Sがブレーキローラ7と接触している場合の詰まり抑制効果を示す図である。
図12に示すように、下層側へ向かうに従い媒体Sが搬送方向の下流側に位置するように媒体Sが積層されている場合、閉塞部21は次に送り出される媒体S2(現在送り出されている媒体Sよりも1枚上層側の媒体S)により押圧されてブレーキローラ7側に持ち上げられているが、空間部R1が非常に小さいため、領域Rでの媒体Sの詰まりは発生し難い。また、腰付け部13は閉塞部21とは独立して移動可能である。従って、閉塞部21が媒体Sによってブレーキローラ7側に持ち上げられたとしても、適宜媒体Sをピックローラ6側に向けて押圧し、媒体Sを湾曲させることができる。つまり、閉塞部21による上流側の領域Rにおける詰まり抑制効果と、腰付け部13によるニップ領域Nにおける詰まり抑制効果とは紙束の状態によらず、最大限にそれぞれの効果が発揮される。
【0031】
第一アーム10や第二アーム20の設計に当たっては、少なくともジャムを抑制する観点から各パラメータを決定することが望ましい。本実施形態では、以下に説明するように、ジャムの抑制の他に、媒体Sの不送りの抑制、媒体Sの斜行の抑制、媒体Sの裂けの抑制、製造性やコスト低減等の観点から各アーム10,20の設計方法について説明する。
【0032】
図13は、アーム10,20の設計パラメータを示す図、
図14は、アーム10,20の設計パラメータの一覧を示す図である。
図13および
図14に示すように、アーム10,20について、第一角度θap1、第二角度θap2、アーム角度変更点高さHarm、アーム最下点深さParm、交点距離Ltip、最下点距離Lprj、最下点部の幅Wprj、押付力Farm、支点位置高さAarm、支点距離Barmおよび摩擦係数μapの11個のパラメータを設定する。
図14において、関連項目の欄には、相互に関連するパラメータの番号が記載されている。例えば、第一角度θap1の決定に当たっては、8番目のパラメータである押付力Farm、9番目のパラメータである支点位置高さAarm、10番目のパラメータである支点距離Barmおよび11番目のパラメータである摩擦係数μapを考慮して決定することが望ましい。
【0033】
なお、
図13には、アーム10,20が許容回動範囲において最もピックローラ6側(時計回り方向)に位置する状態が示されている。アーム10,20は、図示しないストッパによって、ピックローラ6側への回動が規制されている。本明細書では、アーム10,20の回転方向において、ピックローラ6側へ向かう回転方向(
図13の時計回り)を正回転、これと反対の回転方向(
図13の反時計回り)を負回転と称する。アーム10,20は、付圧ばねSp1,Sp2によって正回転方向の付勢力を受けている。
図13には、アーム10,20が正回転方向の回動を規制するストッパに当接した状態が示されている。
【0034】
図13に示すように、第一アーム10における搬送方向上流側の面は、搬送方向となす角度が異なる第一面14と第二面15を有する。つまり、第一面14と第二面15は、搬送される媒体Sとなす角度が異なっている。第一面14は、角度変更点16よりもピックローラ6側の面であり、第二面15は、角度変更点16よりもピックローラ6側と反対側の面である。言い換えると、第一アーム10における搬送方向上流側の面は、角度変更点16を境にして屈曲している。同様にして、第二アーム20における搬送方向上流側の面は、角度変更点24を境にして屈曲しており、角度変更点24よりもピックローラ6側の面が第一面22、角度変更点24よりもピックローラ6側と反対側の面が第二面23である。
【0035】
第一角度θap1は、ピックローラ6の軸方向視において第一面14,22と搬送方向がなす角度である。第二角度θap2は、ピックローラ6の軸方向視において第二面15,23と搬送方向がなす角度である。第一角度θap1および第二角度θap2は、第一面14,22や第二面15,23が搬送方向と直交する場合に90度となる。本実施形態では、第一アーム10および第二アーム20のそれぞれにおいて、第一角度θap1が第二角度θap2よりも小さい。すなわち、第一アーム10の腰付け部13における搬送方向上流側の面は、搬送される媒体Sに近づくに従い媒体Sとなす角度が小さくなっている。また、第二アーム20の閉塞部21における搬送方向上流側の面は、搬送される媒体Sに近づくに従い媒体Sとなす角度が小さくなっている。つまり、腰付け部13および閉塞部21における搬送方向上流側の面は、ブレーキローラ7側からピックローラ6側へ向かうに従い軸方向視において媒体Sの搬送路となす角度が小さくなる。なお、腰付け部13および閉塞部21における搬送方向上流側の面は、軸方向視において搬送路となす角度が異なる3以上の面を有していてもよい。この場合に、腰付け部13や閉塞部21の先端側へ向かうに従い、軸方向視において搬送路となす角度が小さくなることが望ましい。
【0036】
アーム角度変更点高さHarmは、
図13に示す交点Xpを基準とした角度変更点16,24の高さを示す。交点Xpは、ピックローラ6の軸方向視におけるアーム10,20とピックローラ6の外周面との交点位置であり、本実施形態ではアーム10,20の搬送方向上流側の面とピックローラ6とが交差する位置である。各パラメータにおいて、「高さ」とは、搬送方向と直交する方向の距離を示し、ピックローラ6からブレーキローラ7へ向かう方向を正とする。
【0037】
アーム最下点深さParmは、交点Xpからアーム10,20の最下点までの高さ方向の距離(深さ)を示す。本実施形態の第一アーム10では、腰付け部13の先端である最下点部17が高さ方向の最も深い位置にある。言い換えると、最下点部17は、第一アーム10において最もブレーキローラ7側からピックローラ6側に向けて突出している。最下点部17は、ピックローラ6によって送り出される媒体Sに接触して媒体Sをピックローラ6側に向けて押圧する押圧部としての機能を有する。本実施形態の最下点部17は、平面であり、搬送方向の上流側と下流側の端部が面取りされている。なお、最下点部17は、軸方向視において円弧形状であってもよい。第一アーム10において、アーム最下点深さParmは、交点Xpから最下点部17の最先端位置までの高さ方向の距離である。
【0038】
本実施形態の第二アーム20では、閉塞部21の先端である最下点部25が高さ方向の最も深い位置にある。すなわち、最下点部25は、第二アーム20において最もブレーキローラ7側からピックローラ6側に向けて突出している。最下点部25は、ピックローラ6によって送り出される媒体Sに接触して媒体Sをピックローラ6側に向けて押圧する押圧部としての機能を有する。最下点部25の形状は、最下点部17と同様とすることができる。第二アーム20において、アーム最下点深さParmは、交点Xpから最下点部25の最先端位置までの高さ方向の距離である。
【0039】
交点距離Ltipは、ニップ領域Nの搬送方向上流端から交点Xpまでの搬送方向の距離である。交点距離Ltipは、交点Xpがニップ領域Nの搬送方向上流端よりも搬送方向の上流側にある場合を正とし、交点Xpがニップ領域Nの搬送方向上流端よりも搬送方向の下流側にある場合を負とする。
【0040】
最下点距離Lprjは、ニップ領域Nの搬送方向上流端から最下点部17,25までの搬送方向の距離であり、本実施形態では、ニップ領域Nの搬送方向上流端と、最下点部17,25の搬送方向上流端との搬送方向の距離である。最下点距離Lprjは、最下点部17,25の搬送方向上流端がニップ領域Nの搬送方向上流端よりも搬送方向の上流側にある場合を正とし、搬送方向の下流側にある場合を負とする。
【0041】
最下点部の幅Wprjは、最下点部17,25の搬送方向の幅である。押付力Farmは、ブレーキローラ7側からピックローラ6側へ向けての最下点部17,25の押し付け力であり、搬送方向と直交する方向の分力である。
【0042】
支点位置高さAarmは、交点Xpを基準としたアーム10,20の回転軸の中心軸線X1,X2の高さを示す。支点距離Barmは、交点Xpからアーム10,20の回転軸の中心軸線X1,X2までの搬送方向の距離である。摩擦係数μapは、アーム10,20の搬送方向上流側の面と媒体Sとの摩擦係数である。
【0043】
(ジャム抑制)
まず、ジャム抑制の観点からのアーム10,20の設計について説明する。
図15は、第二アーム20のパラメータ設計に係る第1の図である。第二アーム20は、ニップ領域Nよりも搬送方向上流側の空間部R1を十分に閉塞していることが望ましい。このためには、例えば、交点距離Ltipが正の値であることが必要である。交点距離Ltipは、送り出される媒体Sの湾曲を閉塞部21によって適切に抑制できるように、適合実験によって定めることができる。また、第二アーム20の押付力Farmは、薄紙等の薄手の媒体Sが送り出される場合に第二アーム20が媒体Sによって持ち上げられない大きさであることが好ましい。すなわち、第二アーム20は、薄手の媒体Sに対しては最も正回転方向の位置にあるままで媒体Sを通過させ、一定以上の厚さの媒体Sに対しては媒体Sによって押圧されてブレーキローラ7側に退避して媒体Sを通過させることが好ましい。なお、薄紙とは、例えば、厚み:連量17Kg(坪量:20g/m
2)の紙である。
【0044】
また、第二アーム20の最下点部25は、ピックローラ6の軸方向視においてピックローラ6と重なっていることが好ましい。すなわち、第二アーム20のアーム最下点深さParmは、正であることが好ましい。アーム最下点深さParmは、適合実験等に基づいて定めることができる。
【0045】
図16は、第二アーム20に係る問題点の説明図、
図17は、第二アーム20のパラメータ設計に係る第2の図である。第二アーム20が、シュータ1に載置された媒体Sに接触して移動を阻害されることは好ましくない。例えば、
図16に示すように、第二角度θap2が小さいと、第二アーム20の搬送方向上流側の面が、上層側に載置された媒体Sと接触して、第二アーム20の正回転方向の回動が阻害される可能性がある。これにより、閉塞部21が空間部R1を十分に閉塞することができず、ジャム抑制効果が低減する可能性がある。
【0046】
従って、第二アーム20の第二角度θap2を可能な限り大きな角度とすることが好ましい。第二角度θap2は、
図17に示すように、第二アーム20の搬送方向上流側の面が載置された媒体Sに接触することなく最も正回転側まで回動できるように定められることが好ましい。第一アーム10や第二アーム20の回動軌跡がシュータ1に載置された媒体Sと干渉しないようにすることで、第一アーム10や第二アーム20の回動が載置された媒体Sによって阻害されることを抑制することができる。
【0047】
図18は、第二アーム20に係る他の問題点の説明図、
図19は、第二アーム20のパラメータ設計に係る第3の図である。第二アーム20が、先に送り出されている媒体Sによって持ち上げられたままであると、次に送られる媒体Sに対して空間部R1を十分に閉塞できなくなる可能性がある。
図18に示すように、先に送り出された1枚目の媒体Sの後端部によって第二アーム20がブレーキローラ7側に持ち上げられたままで2枚目の媒体Sが送り出されると、閉塞部21が空間部R1を十分に閉塞することができず、2枚目の媒体Sに対する詰まり抑制効果が低減する可能性がある。ニップ領域Nにおいて閉塞部21が媒体Sに接触すると、閉塞部21が媒体Sによって持ち上げられたままとなり空間部R1を閉塞する効果が低減しやすい。
【0048】
こうした問題を抑制できるように、第二アーム20の最下点部25は、媒体Sにおけるニップ領域Nにある部分とは接触しないことが好ましい。第二アーム20の最下点部25は、例えば
図19に示すように、ニップ領域Nよりも搬送方向の上流側に位置しており、搬送方向においてニップ領域Nと重ならないことが好ましい。また、第二アーム20の最下点部の幅Wprjを小さくし、第二アーム20が媒体Sによって持ち上げられている期間を短くすることが好ましい。
【0049】
(第一アーム10の押付力等について)
媒体Sのジャムを抑制できるためには、第一アーム10が媒体Sに対して十分に腰付けできることが望ましい。第一アーム10および付圧ばねSp1は、第一アーム10の押付力Farmを所定押付力以上とできることが好ましい。所定押付力は、例えば、薄紙等の薄手の媒体Sが送り出される場合に第一アーム10が媒体Sによって持ち上げられない大きさであることが好ましい。また、第一アーム10の最下点部17は、ピックローラ6の軸方向視においてピックローラ6と重なっていることが好ましい。すなわち、第一アーム10のアーム最下点深さParmは、0よりも大きいことが好ましい。本実施形態では、第一アーム10の回動範囲は、最下点部17がピックローラ6と軸方向視において重なる位置を含んでいる。よって、腰付け部13によって媒体Sを十分に腰付けすることができる。また、最下点部17は、搬送方向においてニップ領域Nと重なっており、媒体Sにおけるニップ領域Nにある部分を押圧できることが好ましい。例えば、搬送方向において、最下点部17の全体がニップ領域Nに含まれるようにしてもよい。
【0050】
(不送りの抑制)
次に、媒体Sの不送りの抑制について説明する。第二アーム20の持ち上がり性をある程度確保しないと、第二アーム20による不送りが発生する可能性がある。薄紙等の変形性が大きい媒体Sの場合、第二アーム20が持ち上がらなくても媒体Sが変形(湾曲)して第二アーム20を回避することで不送りが抑制される。一方で、変形性が小さい媒体Sの場合、第二アーム20が持ち上がらないと、第二アーム20によって搬送方向の移動が抑制され、不送りが発生する可能性がある。
【0051】
図20は、第二アーム20に係る他の問題点の説明図、
図21は、第二アーム20のパラメータ設計に係る第4の図、
図22は、第二アーム20のパラメータ設計に係る第5の図である。
図20には、支点位置高さAarmを大きくした第二アーム20が示されている。この場合、
図23を参照して説明するように、第一角度θap1を小さくする必要がある。
【0052】
図23は、第二アーム20の中心軸線X2回りの力を示す図である。媒体Sには、ピックローラ6からのピック搬送力F4が作用する。第二アーム20には、付圧ばねSp2による付勢力F1、媒体Sによる持ち上げ力F2、媒体Sとの摩擦力F3がそれぞれ作用する。持ち上げ力F2は、下記式(2)で表される。また、摩擦力F3は、下記式(3)で表される。
F2=F4・sinθap1…(2)
F3=F2・μap…(3)
【0053】
第二アーム20が媒体Sによってブレーキローラ7側に持ち上げられる条件は、下記式(4)を満たすことである。
F1・r1+F3・r3<F2・r2…(4)
【0054】
第二アーム20の持ち上がり性を向上させるためには、持ち上げ力F2や持ち上げ力F2に係る半径r2を大きくすることが好ましい。そのために、第一角度θap1を小さくすることが考えられるが、第一角度θap1を小さくすると閉塞部21が空間部R1を十分に閉塞できなくなる可能性がある。つまり、ジャム抑制効果とトレードオフとなってしまう。これに対して、
図21に示すように、支点位置高さAarmを小さくすれば、第一角度θap1が同じであっても第二アーム20の持ち上がり性を向上することができる。つまり、第二アーム20の回転支点位置は、搬送方向においてニップ領域Nの入口よりも搬送方向の下流側であることが好ましい。また、第二アーム20の回転支点位置は、搬送路Bよりもブレーキローラ7側の位置であってかつ搬送路Bの近傍であることが好ましい。
【0055】
また、
図22に示すように支点距離Barmを大きくすることにより、持ち上げ力F2に係る半径r2を大きくし、上記式(4)を成立させやすくすることができる。また、第二アーム20と媒体Sとの摩擦係数μapを小さくすることで、上記式(4)を成立させやすくすることができる。
【0056】
図24は、第二アーム20に係る他の問題点の説明図、
図25は、不送りが発生しやすい第二アーム20の形状を示す図、
図26は、第二アーム20のパラメータ設計に係る第6の図である。
図24に示すように、シュータ1に積載された媒体Sによって第二アーム20の回動が規制されると、媒体Sの搬送負荷が大きくなる。
図24に示す第二アーム20では、上層の媒体Sが第二アーム20の上に載ってしまい、第二アーム20の負回転方向の回動を規制している。これにより、送り出される媒体Sが第二アーム20を押し上げるためには、大きなピック搬送力F4が必要となり、搬送負荷が大きくなって不送りが発生しやすい。
【0057】
不送りが発生しやすいアーム形状について、
図25を参照して説明する。
図25において、回転軌跡C1は、閉塞部21の第一の点21aの軌跡、回転軌跡C2は、閉塞部21の第二の点21bの軌跡、回転軌跡C3は、閉塞部21の第三の点21cの軌跡である。第一の点21a、第二の点21bおよび第三の点21cは、それぞれ搬送方向上流側の面上にある点である。第三の点21cは、第二の点21bよりもピックローラ6から高さ方向に離れた点であるが、その回転軌跡C3は第二の点21bの回転軌跡C2よりも内側にある。これにより、第二の点21bと第三の点21cとの間の領域に媒体Sが載って回動を阻害しやすい。
【0058】
これに対して、
図26に示す実施形態の第二アーム20の搬送方向上流側の面では、ピックローラ6から遠くなるに従い、回転軌跡が径方向外側に位置する。
図26では、第一の点21aよりも高さ方向においてピックローラ6から遠い第二の点21bは、どの点を取ってもその回転軌跡C2が第一の点21aの回転軌跡C1よりも外側に位置する。これにより、第二アーム20に媒体Sが載って第二アーム20の回転が規制されることを抑制することができる。
【0059】
図27は、第二アーム20に係る他の問題点の説明図、
図28は、第二アーム20に係る他の問題点の説明図である。
図27に示す媒体Sは、搬送方向下流側端部がブレーキローラ7側に向けてカールしている。小さな半径でカールしている媒体Sの場合、先端部の上向き角αが大きくなるものの、先端部がそれほど大きくそり上がらず、搬送路Bから先端部までの高さは小さい。一方、大きな半径でカールしている媒体Sの場合、先端部の上向き角αが小さいものの、搬送路Bから先端部までの高さが大きくなる。ここで、
図27に示すように小さな半径でカールしている媒体Sが第二面23に当接し、第二角度θap2が大きい場合、小さな半径でカールしている媒体Sはブレーキローラ7側に移動し、不送りが発生しやすい。また、
図28に示すように大きな半径でカールしている媒体Sが第二面23に当接し、第二角度θap2が大きい場合大きな半径でカールしている媒体Sはブレーキローラ7側に移動し、不送りが発生しやすい。
【0060】
そこで、アーム角度変更点高さHarmを適宜設定することにより、不送りを抑制するようにできる。本実施形態の第二アーム20では、第一角度θap1が第二角度θap2よりも小さい。小さな半径でカールしている媒体Sに対してはその先端部に第一面22が当接し、大きな半径でカールしている媒体Sに対してはその先端部に第二面23が当接するように、アーム角度変更点高さHarmが設定される。例えば、
図27に示すように小さくカールした媒体Sに対しては、第一面22が当接するようにアーム角度変更点高さHarmを設定することにより、媒体Sの先端部を第一面22に沿って最下点部25に導くようにする。
【0061】
また、
図28に示すような大きな半径でカールした媒体Sは、その先端部が第二面23に当接することとなる。これに対しては、第二面23の第二角度θap2を適宜定めることにより、媒体Sの先端部を第二面23に沿って第一面22に導き、更に第一面22に沿って最下点部25に導くようにする。このように、第一角度θap1、第二角度θap2およびアーム角度変更点高さHarmを適宜定めることにより、媒体Sのカール半径によらず、媒体Sの先端部を最下点部25に導き、不送りを抑制することが可能となる。
【0062】
また、不送りを抑制できるように、ピック搬送力F4を適宜定めることが望ましい。上記式(4)の条件を満たすように、ピックローラ6によるピック搬送力F4を確保するようにすればよい。
【0063】
(斜行抑制)
次に、媒体Sの斜行抑制について説明する。厚さが大きい媒体Sでは、斜行が生じやすい。例えば、上記式(4)を満たすために必要なピック搬送力F4が大きすぎると、斜行が発生しやすくなる。最大仕様厚みの媒体Sであっても斜行することなく第二アーム20をブレーキローラ7側に持ち上げて搬送されることができるように最大のピック搬送力F4を定め、この最大のピック搬送力F4と上記式(4)に基づいて付圧ばねSp2の付勢力F1等が定められることが好ましい。
【0064】
図29は、第二アーム20に係る他の問題点の説明図、
図30は、第二アーム20のパラメータ設計に係る第7の図である。第二アーム20の負回転方向の回動は、ストッパ8によって規制される。
図29および
図30に示される媒体Sは、例えば、最大仕様厚みの媒体Sであり、一例として、摩擦係数が低い樹脂カードである。こうした媒体Sの場合、次に搬送される2枚目の媒体Sは、以下の理由により不安定な状態となる。
(1)摩擦係数の低い媒体Sによって挟まれており、動き出しやすい。
(2)1枚目の媒体Sが搬送されており、この媒体Sから搬送方向の力を受ける。
【0065】
こうした不安定な状態で媒体Sの先端中央に第二アーム20が接触することとなる。このときに、
図29に示すように第二アーム20がストッパ8に当接して負回転方向の回動が規制されていると、斜行が生じやすい。
図29に示す第二アーム20は、2枚目の媒体Sの通過を許容できる位置まで負回転方向に回動することができない。従って、第二アーム20は、2枚目の媒体Sによってブレーキローラ7側に持ち上げられることができず、2枚目の媒体Sの搬送方向の移動を規制してしまう。その結果、1枚目の媒体Sが搬送されている間に2枚目の媒体Sが傾いてしまい、最終的に斜行してしまうことがある。
【0066】
本実施形態の第二アーム20は、
図30に示すように、2枚目の媒体Sが搬送方向に移動することを許容できる。1枚目の媒体Sと2枚目の媒体Sとが重なった状態で2枚目の媒体Sが第二アーム20をブレーキローラ7側に持ち上げることが可能であり、2枚目の媒体Sによって持ち上げられた状態で第二アーム20がストッパ8に当接しない。従って、第二アーム20が2枚目の媒体Sの移動を過度に規制することが抑制され、媒体Sの斜行の発生が抑制される。
【0067】
(裂け抑制)
脆い用紙等の媒体Sを供給するときの媒体Sの裂けを抑制できることが望ましい。例えば、脆い媒体Sに対する第一アーム10や第二アーム20の押付力Farmが大きすぎると、媒体Sが裂けてしまう可能性がある。また、腰付け部13のピックローラ6側への突出量が大きいと、媒体Sの裂けが発生しやすくなる。
【0068】
脆い媒体Sの裂けを抑制できるように、第一アーム10の押付力Farmやアーム最下点深さParmを適宜定めることが好ましい。また、第二アーム20は、脆い媒体Sの通紙時には媒体Sによってブレーキローラ7側に持ち上げられて退避するように押付力Farm等が定められていることが好ましい。各パラメータは、用いられる可能性がある脆い媒体Sを使用した適合実験等により定められることが好ましい。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る媒体供給装置1−1では、閉塞部21を有する第二アーム20が、シュータ1に載置された媒体Sと干渉することなく回動可能なように設けられている。従って、第二アーム20は、媒体Sの積載枚数にかかわらず閉塞部21によって空間部R1を閉塞することができる。
【0070】
また、第二アーム20は、媒体Sを挟んでピックローラ6と対向して配置されており、座屈変形し始めた媒体Sに当接して更なる変形を規制すること、あるいは座屈変形しようとする媒体Sの変形を規制することが可能である。第二アーム20の閉塞部21は、ピックローラ6によって送り出される媒体Sに対して接触していることが好ましいが、媒体Sとの間に隙間を空けて配置されていてもよい。
【0071】
また、閉塞部21は、ピックローラ6によって送られる媒体Sによって押圧されて押し上げられ、媒体Sに対してブレーキローラ7側に退避することができる。よって、媒体Sの搬送に対する負荷の増加が抑制される。なお、閉塞部21は、第二アーム20の回動動作によって退避することに代えて、あるいは加えて、変形することによって媒体Sに対してブレーキローラ7側に退避するものであってもよい。例えば、閉塞部21が媒体Sからの押圧力によって弾性変形するものであってもよい。
【0072】
なお、アーム10,20の回転軸の中心軸線X1,X2は、ニップ領域Nに対して搬送方向の上流側、下流側のいずれにあってもよく、また、媒体Sの搬送路Bに対してピックローラ6側あるいはブレーキローラ7側のいずれにあってもよい。また、アーム10,20は、本体部100aあるいは回動部100bのいずれによって回動自在に支持されていてもよい。
【0073】
また、本実施形態の媒体供給装置1−1では、第一アーム10と第二アーム20が互いに干渉することなく回動可能なように、軸方向の位置をずらして配置されている。よって、閉塞部21の空間埋めによる媒体詰まりの抑制機能と、腰付け部13による腰付け機構とを最大限に発揮可能である。
【0074】
[実施形態の第1変形例]
図31は、実施形態の第1変形例に係るアーム10,20の概略構成図である。第1変形例のアーム10,20は、回転の中心軸線X1,X2に対して、アーム10,20が平行移動可能である。すなわち、腰付け部13や閉塞部21の、中心軸線X1,X2に対する半径方向位置が可変である。アーム10,20には、それぞれアーム10,20の長手方向に延在する長孔10a,20aが形成されている。アーム10,20は、それぞれ長孔10a,20aに挿入された回転軸Sftによって回転自在に支持されている。長孔10a,20aにおける回転軸Sftの位置は、ばねSprによって調節される。ばねSprは、腰付け部13および閉塞部21が最も搬送方向の上流側に位置するように、回転軸Sftを付勢している。
【0075】
これにより、媒体Sの厚み・崩れ方などの条件に合わせて、アーム10,20の位置が自動的に最適に調整される。例えば、厚手の媒体Sの場合、第二アーム20が媒体Sによって押されて搬送方向下流側に移動する。閉塞部21がニップ領域Nの入口よりも下流側まで移動することで媒体Sの不送りを抑制することが可能となる。このようにする場合、第二アーム20の押付力Farmをより大きく設定することが可能となる。
【0076】
[実施形態の第2変形例]
図32は、実施形態の第2変形例に係るアーム10,20の概略構成図である。第2変形例の第一アーム10は、第二アーム20によって回動自在に支持されている。このようにしても、第一アーム10と第二アーム20とが独立して移動することができる。なお、第二アーム20が第一アーム10によって回動自在に支持されてもよい。
【0077】
[実施形態の第3変形例]
実施形態の第3変形例について説明する。アーム10,20をブレーキローラ7側に退避させる機構が設けられてもよい。例えば、媒体供給装置1−1は、媒体Sの厚さを検知する装置と、アーム10,20を退避させる退避機構と、退避機構を制御する制御装置とを備えることができる。制御装置は、媒体Sの厚さが所定以上である場合、退避機構によって第二アーム20をブレーキローラ7側に退避させる。これにより、第二アーム20の閉塞部21により媒体Sの湾曲を抑制する効果と、厚手の媒体Sの不送りや斜行を抑制する効果とを両立させることができる。
【0078】
[実施形態の第4変形例]
図33は、実施形態の第4変形例に係るアーム10,20の概略構成図である。
図33に示すように、第一アーム10と第二アーム20とが同じ中心軸線X1,X2を回転中心として支持されてもよい。
【0079】
[実施形態の第5変形例]
図34は、実施形態の第5変形例に係るアーム10,20の概略構成図である。上記実施形態では、2つの第一アーム10の間に第二アーム20が挟まれていたが、これとは逆に、2つの第二アーム20の間に第一アーム10が挟まれるようにしてもよい。
【0080】
[実施形態の第6変形例]
図35は、実施形態の第6変形例に係る分離部の概略構成図である。第6変形例に係る分離部は、上記実施形態のブレーキローラ7に代えて、分離パッド30である。分離パッド30は、媒体Sとの摩擦力により、媒体Sに対して搬送方向と反対方向の力を作用させる。なお、分離パッドに限らず、媒体Sに対してブレーキ力を作用させるものが分離部として採用可能である。
【0081】
[実施形態の第7変形例]
図36は、実施形態の第7変形例に係る繰り出し部の概略構成図である。第7変形例に係る繰り出し部は、上記実施形態のピックローラ6に代えて、搬送ベルト31である。搬送ベルト31は、ローラ32を介してモータ等によって回転駆動されて回転する。搬送ベルト31は、ピックローラ6と同様にして、シュータ1に載置された媒体Sを搬送方向に送り出す。なお、搬送ベルト31に限らず、媒体Sに対して搬送力を作用させるものが繰り出し部として採用可能である。
【0082】
[実施形態の第8変形例]
図37は、実施形態の第8変形例に係る第二アーム20の概略構成図である。
図37に示すように、上記実施形態の媒体供給装置1−1において第一アーム10が省略されてもよい。第二アーム20の閉塞部21に空間部R1を閉塞することによる媒体Sの座屈抑制機能に加えて、媒体Sを腰付けする機能を持たせることができる。
【0083】
[実施形態の第9変形例]
図38は、実施形態の第9変形例に係るアームの概略構成図である。
図38に示すアーム40は、上記実施形態の第一アーム10の機能と第二アーム20の機能とを兼ね備えている。アーム40は、突出部41を有する。突出部41は、ブレーキローラ7側からピックローラ6側に向けて突出する略台形状の部分である。突出部41は、搬送方向において上流側の領域Rからニップ領域Nまで延在している。突出部41は、搬送方向上流側の空間部R1を閉塞する機能と、ニップ領域Nにおいて媒体Sをピックローラ6側に向けて押圧して湾曲させる機能とを有する。これにより、突出部41は、上流側の領域Rにおける媒体Sの詰まりを抑制する効果と、ニップ領域Nにおける媒体Sの詰まりを抑制する効果の両方を奏することができる。
【0084】
なお、
図38に示すようなアーム40を備える場合には、ブレーキローラ7側からピックローラ6側への突出量や押付力Farmを調整する機構を備えるようにしてもよい。例えば、媒体Sの厚さ等の条件に応じて突出量や押付力Farmを適宜調整することにより、ジャムの抑制、不送りの抑制、斜行の抑制等のバランスを取ることができる。
【0085】
[実施形態の第10変形例]
図39は、実施形態の第10変形例に係るアームの概略構成図である。
図39に示すように、アーム10,20は、ニップ領域Nよりも搬送方向の上流側の位置X3を回転中心として回動自在に支持されてもよい。
【0086】
[実施形態の第11変形例]
図40は、実施形態の第11変形例に係るアームの概略構成図である。
図40に示すように、屈曲したアーム50の両端部が腰付け部51、閉塞部52とされてもよい。アーム50は、略V字形状に屈曲しており、屈曲部(回転中心X4)において回動自在に支持されている。アーム50の一方の端部は、ニップ領域Nにおいて媒体Sを腰付けする腰付け部51であり、他方の端部は、ニップ領域Nよりも搬送方向上流側の空間部R1を閉塞する閉塞部52である。アーム50は、回転中心X4を支点にして回動する。従って、例えば、シュータ1上の媒体Sがテーパ上に崩れて閉塞部52が持ち上げられてしまった場合、腰付け部51がピックローラ6側に押し下げられ、腰付け機能を発揮し続けることができる。
【0087】
[実施形態の第12変形例]
図41は、実施形態の第12変形例に係るアームの概略構成図である。
図41に示すように、アーム10,20は、スライド機構によって移動するものであってもよい。第一アーム10および第二アーム20は、ケース101に対してスプリング式のスライド機構33を介して支持されている。アーム10,20は、搬送方向と直交する方向、すなわち送り出される媒体Sと直交する方向にスライドして移動可能である。アーム10,20は、スライド機構33のスプリングによって、ブレーキローラ7側からピックローラ6側へ向かう方向に付勢されている。アーム10,20は、媒体Sによって押圧されると、スプリングの付勢力に抗してブレーキローラ7側に退避することができる。本変形例に係るアーム10,20は、スライドしても搬送方向における位置が変化しないため、狙いとする位置で媒体Sを押圧することができる。
【0088】
[実施形態の第13変形例]
図42は、実施形態の第13変形例に係るアームの概略構成図である。
図42に示すように、第13変形例の第二アーム20は、ピックローラ6の軸方向視においてピックローラ6と重ならないようにされている。第二アーム20が最も正回転側に回動した位置であっても、第二アーム20の閉塞部21は、ピックローラ6と重ならない。これにより、媒体Sの不送りの発生が軽減される。
【0089】
[実施形態の第14変形例]
図43は、実施形態の第14変形例に係るアームの概略構成図である。
図43に示すように、第二アーム20の中心軸線X2は、媒体Sの搬送路Bよりもピックローラ6側にあってもよい。
【0090】
[実施形態の第15変形例]
図44は、実施形態の第15変形例に係るアームの概略構成図である。
図44に示すように、第一アーム10と第二アーム20とがピックローラ6の軸方向と直交する方向から見たときに重なっていてもよい。この場合、第一アーム10の回動軌跡と第二アーム20の回動軌跡とが干渉しないことが好ましい。
【0091】
[実施形態の第16変形例]
図45は、実施形態の第16変形例に係るアームの概略構成図である。第一アーム10あるいは第二アーム20の一方が軸方向の内側に、他方が軸方向の外側に配置されてもよい。例えば、
図45に示すように、第二アーム20が2つのブレーキローラ7の間に挟まれた内側に配置され、2つの第一アーム10が2つのブレーキローラ7を間に挟んで外側に配置されてもよい。これとは逆に、第一アーム10が2つのブレーキローラ7の間に配置され、2つの第二アーム20が2つのブレーキローラ7を間に挟んで外側に配置されてもよい。
【0092】
[実施形態の第17変形例]
図46は、実施形態の第17変形例に係るアームの概略構成図である。第一アーム10および第二アーム20が、いずれもピックローラ6やブレーキローラ7よりも軸方向の外側に配置されてもよい。例えば、
図46に示すように、2つの第二アーム20が2つのブレーキローラ7を間に挟んで配置され、2つの第一アーム10が2つの第二アーム20を間に挟んで配置されてもよい。第一アーム10の位置と第二アーム20の位置とが入れ替えられてもよい。
【0093】
[実施形態の第18変形例]
図47は、実施形態の第18変形例に係る閉塞部および腰付け部の概略構成を示す図である。閉塞部および腰付け部は、上記実施形態のアーム10,20に代えて、板ばね60であってもよい。
図47では、板ばね60の一部が軸方向視において空間部R1を閉塞する閉塞部61である。板ばね60は、弾性変形可能な部材である。媒体Sによって閉塞部61が押圧されると、板ばね60が変形して閉塞部61がブレーキローラ7側に退避する。同様にして、板ばね60によって腰付け部を実現することができる。
【0094】
[実施形態の第19変形例]
図48は、実施形態の第19変形例に係る閉塞部および腰付け部の概略構成を示す図である。閉塞部および腰付け部は、上記実施形態のアーム10,20に代えて、コロであってもよい。
図48では、コロ72が閉塞部として機能する。コロ72は、支持軸71によって回転自在に支持されている。コロ72の回転軸は、ピックローラ6の回転軸と平行である。支持軸71は、コロ72がブレーキローラ7側に退避可能なようにコロ72を支持していることが好ましい。すなわち、コロ72の回転軸70が支持軸71の長手方向に移動可能であることが好ましい。あるいは、支持軸71自体がスライド機構等によって搬送方向と直交する方向に移動可能に支持されていることが好ましい。閉塞部と同様にして、支持軸71とコロ72によって腰付け部を実現することができる。
【0095】
なお、閉塞部や腰付け部は、例示した板ばね60やコロ72に限定されるものではない。例えば、閉塞部は、空間部R1を閉塞できる平面状のガイド等のその他の構成であってもよく、腰付け部は、媒体Sを湾曲させて腰付けを行うことができる平面状のガイド等のその他の構成であってもよい。
【0096】
[実施形態の第20変形例]
上記実施形態の媒体供給装置1−1において、第一アーム10の付圧ばねSp1と第二アーム20の付圧ばねSp2の部品仕様の共通化がなされてもよい。共通化による部品種類の削減で、コスト低減等が可能である。また、一つの付圧ばねによって、第一アーム10および第二アーム20にそれぞれ押付力Farmを発生させるようにしてもよい。上記実施形態では、付圧ばねSp1,Sp2としてコイルバネが例示されたが、これには限定されない。付圧ばねSp1,Sp2は、板ばねや弾性を有する樹脂など、押付力Farmを発生させることができるものであればよい。
【0097】
なお、上記実施形態および各変形例に開示された媒体供給装置1−1は、画像読取装置100に搭載されるものには限定されない。画像形成装置等の他の装置に媒体供給装置1−1が搭載されてもよい。
【0098】
上記の実施形態および各変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。