(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6082503
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】ソフトカプセル剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/485 20060101AFI20170206BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20170206BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20170206BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20170206BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
A61K31/485
A61K9/48
A61K47/14
A61K47/02
A61P25/00
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-550820(P2016-550820)
(86)(22)【出願日】2016年6月3日
(86)【国際出願番号】JP2016066537
【審査請求日】2016年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-113876(P2015-113876)
(32)【優先日】2015年6月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219587
【氏名又は名称】東海カプセル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591048508
【氏名又は名称】伊藤忠ケミカルフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 保彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 浩士
(72)【発明者】
【氏名】中島 祥充
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭
【審査官】
山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/113841(WO,A1)
【文献】
特開2015−168630(JP,A)
【文献】
特開2015−172043(JP,A)
【文献】
特許第5918895(JP,B2)
【文献】
特許第3743449(JP,B2)
【文献】
堀内保秀,製剤化のサイエンス レミッチカプセル2.5μg,ファルマシア,2012年,Vol.48,No.4,p.323-325,323ページ右欄「2.軟カプセル剤選定の経緯とメリット」
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/485
A61K 9/48
A61K 47/02
A61K 47/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル内容物中にナルフラフィン又はその酸付加塩、中鎖脂肪酸トリグリセリドからなる疎水性の油性基剤及び没食子酸プロピルを含有し、カプセル皮膜中にチオ硫酸ナトリウムを含有するソフトカプセル剤。
【請求項2】
ナルフラフィン又はその酸付加塩1質量部に対し、疎水性の油性基剤400〜200,000質量部、没食子酸プロピル68〜20,000質量部を含有する請求項1記載のソフトカプセル剤。
【請求項3】
ナルフラフィン又はその塩1質量部に対し、チオ硫酸ナトリウム34〜20,000質量部を含有する請求項1又は2記載のソフトカプセル剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナルフラフィン又はその酸付加塩を含有するソフトカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ナルフラフィン(Nalfurafine)は、選択的オピオイドκ受容体作動薬として、オピオイドシステムが関与する中枢性の痒みに対して強力な止痒作用を示す(特許文献1)。そして、ナルフラフィン塩酸塩を含有したソフトカプセル剤が経口そう痒症改善剤として上市されている。
【0003】
しかしながら、ナルフラフィンは、熱、光、酸素、水分に対して化学的に不安定であり、保存時には、低温保存、遮光、不活性ガス置換等の手段を講じる必要がある。
【0004】
このため、ナルフラフィン又はその酸付加塩を含有するカプセル剤は、水及びポリエチレングリコールに、水溶性の酸化防止剤であるチオ硫酸ナトリウムを配合することにより、その安定性が確保されている(特許文献2)。
【0005】
しかしながら、親水性のポリエチレングリコールを基剤として使用すると、水分を起因としたソフトカプセル剤同士の付着及び凹みが起きやすくなる。そのため、ソフトカプセル剤の厳密な水分管理が必要となり、乾燥工程が煩雑となりやすい。また、親水性のポリエチレングリコールを基剤として使用しているために、ポリエチレングリコールに含有する水によってナルフラフィンの含量安定性の低下及び分解物の生成が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3531170号公報
【特許文献2】特許第3743449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ナルフラフィン又はその酸付加塩の優れた含量安定性を有するソフトカプセル剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ナルフラフィン又はその酸付加塩を含有するソフトカプセル剤について鋭意研究を重ねた結果、カプセルの内容物中に、疎水性の油性基剤を用いてナルフラフィン又はその酸付加塩及び没食子酸プロピルを含有させ、皮膜中にチオ硫酸ナトリウムを含有させたソフトカプセル剤が、ナルフラフィン又はその酸付加塩の含量安定性が極めて良好であることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の1)〜3)に係るものである。
1)カプセル内容物中にナルフラフィン又はその酸付加塩、疎水性の油性基剤及び没食子酸プロピルを含有し、カプセル皮膜中にチオ硫酸ナトリウムを含有するソフトカプセル剤。
2)ナルフラフィン又はその酸付加塩1質量部に対し、疎水性の油性基剤400〜200,000質量部、没食子酸プロピル150〜20,000質量部を含有する1)のソフトカプセル剤。
3)ナルフラフィン又はその塩1質量部に対し、チオ硫酸ナトリウム150〜20,000質量部を含有する1)又は2)のソフトカプセル剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明を用いることにより、ナルフラフィン又はその酸付加塩の優れた含量安定性及び特定の分解物の生成が抑制された、安定なナルフラフィン又はその酸付加塩を含有するカプセル剤を製造することができ、またカプセルの製造工程において、厳密な水分管理が必要なくなり、乾燥工程を簡略化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、「ナルフラフィン」とは、は下記で表される(2E)-N-[(5R,6R)-17-(Cyclopropylmethyl)-4, 5-epoxy-3, 14-dihydroxymorphinan-6-yl]-3-(furan-3-yl)-N-methylprop-2-enamide monohydrochloride)を意味する。
【0013】
ナルフラフィンの酸付加塩としては、薬理学的に許容される塩であれば特に限定されず、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩等の有機カルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、カンファ―スルホン酸塩等の有機スルホン酸塩等が挙げられ、中でも塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩が好ましい。
【0014】
上記ナルフラフィン又はその酸付加塩を含有するソフトカプセル剤の内容物には、基剤として、疎水性の油性基剤が用いられる。
疎水性の油性基剤としては、例えば、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリカプリリン、カプロン酸、カプリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、植物油等が挙げられる。ここで植物油としては、ヤシ油、オリーブ油、ナタネ油、落花生油、コーン油、ダイズ油、綿実油、ぶどう油、紅花油等が挙げられる。これらは単独でも2種以上の混合物でもよい。このうち、炭素数8〜12の中鎖脂肪酸のグリセリドが好ましく、トリカプリル酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン等が好適である。
【0015】
斯かる疎水性の油性基剤の使用量は、ナルフラフィン又はその酸付加塩1質量部に対して400質量部以上、好ましくは1,000質量部以上、より好ましくは10,000質量部以上、更に好ましくは40,000質量部以上であり、好ましくは200,000質量部以下、より好ましくは150,000質量部以下、更に好ましくは120,000質量部以下である。また、好ましくは400〜200,000質量部、より好ましくは10,000〜150,000質量部であり、カプセルサイズを考えると、40,000〜120,000質量部が更に好ましい。
【0016】
本発明において、没食子酸プロピルは、安定剤として添加するものであり、その添加量はナルフラフィン又はその酸付加塩1質量部に対して、
好ましくは68質量部以上、好ましくは150質量部以上、好ましくは300質量部以上
、好ましくは500質量部以上であり、好ましくは20,000質量部以下、より好ましくは2,000質量部以下、更に好ましくは1,500質量部以下である。また、好ましくは
68〜20,000質量部
、好ましくは300〜2,000質量部
、好ましくは500〜1,500質量部である。
【0017】
本発明において、チオ硫酸ナトリウムは、カプセル皮膜中に配合される。チオ硫酸ナトリウムをカプセル皮膜中に配合することにより、分解物の生成を抑制できる。
チオ硫酸ナトリウムは、無水塩であっても含水塩であってもよく、好ましくはチオ硫酸ナトリウム五水和物である。
チオ硫酸ナトリウムの含有量は、ナルフラフィン又はその酸付加塩1質量部に対して、
好ましくは34質量部以上、好ましくは68質量部以上、好ましくは150質量部以上、好ましくは300質量部以上
、好ましくは500質量部以上であり、好ましくは20,000質量部以下、より好ましくは2,000質量部以下、更に好ましくは1,500質量部以下である。また、好ましくは
34〜20,000質量部
、好ましくは300〜2,000質量部
、好ましくは500〜1,500質量部である。
【0018】
本発明のソフトカプセル剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分以外に、内容物には、例えば可溶化剤、溶解補助剤、保存剤、界面活性剤、着色剤等を配合することができ、皮膜には、例えば皮膜基剤、可塑剤、着色剤、保存剤等を配合することができる。
【0019】
ここで、可溶化剤としては、例えばエタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、オレイン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、グリセリン等が挙げられる。
溶解補助剤としては、例えばシクロデキストリン等が挙げられる。
保存剤としては、例えばパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばポリソルベート80、ポリオキシル35ヒマシ油等が挙げられる。
着色剤としては、例えば酸化チタン、黄色三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色105号、食用赤色106号、三二酸化鉄等が挙げられる。
皮膜基剤としては、例えばゼラチン、コハク化ゼラチン、デンプン、プルラン、ポリビニルアルコール共重合体、マクロゴール等が挙げられる。
可塑剤としては、濃グリセリン、糖アルコール等が挙げられる。
【0020】
本発明のソフトカプセル剤の内容物は、例えば、ナルフラフィン又はその酸付加塩、及び没食子酸プロピルを、エタノール等の可溶化剤に溶解し、これを疎水性の油性基剤に配合し、混合、撹拌することにより製造することができる。
本発明のソフトカプセル剤の皮膜は、例えば、基剤、可塑剤及びチオ硫酸ナトリウムを水に分散させて、60℃〜90℃で溶解させた後、真空脱泡することにより製造できる。
本発明のソフトカプセル剤は、従来用いられているソフトカプセルの製法、例えばロータリー式全自動ソフトカプセル成型機を用いた打ち抜き法、二枚のゼラチンシート間に内容物を入れ金型で両面から圧縮して打ち抜く平板法或いは二重ノズルを用いた滴下法(シームレスカプセル等)等を用いて、内容物を皮膜に充填し、成型、乾燥することにより、製造することができる。
斯くして得られた上記ソフトカプセル剤は、後記実施例に示すとおり、有効成分であるナルフラフィン又はその酸付加塩の含量安定性が極めて高く、特定の分解物の生成が抑制される。
【実施例】
【0021】
本発明を以下の実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0022】
実施例1 ソフトカプセル剤の調製
下記表1に示す所定量のナルフラフィン塩酸塩及び没食子酸プロピルを所定量のエタノールに溶解し、これを所定量の中鎖脂肪酸トリグリセリド[トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリド(BASF社製)]に混合、撹拌してカプセル充填組成物を調製した。下記表1に示す所定量のゼラチン、コハク化ゼラチン、濃グリセリン、D-ソルビトール液、チオ硫酸ナトリウム及び酸化チタンを適量の精製水に撹拌・分散させて、60℃で撹拌・溶解させた後、真空脱泡してゼラチン皮膜を調製した。上記のカプセル充填組成物及びゼラチン皮膜を用いて、ロータリー式全自動ソフトカプセル成型機を用いた打ち抜き法により、ソフトカプセル剤を調製した。
また、比較品としてレミッチカプセル2.5μg[1カプセル中にナルフラフィン塩酸塩2.5μg配合(東レ社製)]を用いた。表2に比較品の配合成分を示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
実施例2 安定性試験
実施例1で調製したソフトカプセル剤をガラス瓶に入れ、密栓した状態で80℃に1週間保存した。保存期間終了後に、各ソフトカプセル剤中のナルフラフィン塩酸塩の含量及び分解物をHPLC法で測定した。測定結果を表3及び4に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
表3から明らかなように、本発明品は、比較品と比べ、ナルフラフィン塩酸塩の残存率が高く、顕著な含量安定性を示した。また表4から明らかなように、本発明品は、比較品で認められた10α−OH体の増加がなく、ナルフラフィンの分解物である10α−OH体の顕著な抑制効果を示した。
【0029】
実施例3 ソフトカプセル剤の調製
下記表5に示す所定量で実施例1と同様の方法によりソフトカプセル剤を調製した。
また、実施例1と同様に比較品としてレミッチカプセル2.5μg[1カプセル中にナルフラフィン塩酸塩2.5μg配合(東レ社製)]を用いた。
【0030】
【表5】
【0031】
実施例4 安定性試験
実施例3で調製したソフトカプセル剤をPTP/ピロー包装し、40℃75%RH6箇月間保存した。1箇月後、3箇月後、保存期間終了後に、各ソフトカプセル剤中のナルフラフィン塩酸塩の含量及び分解物をHPLC法で測定した。測定結果を表6及び7に示す。
【0032】
【表6】
【0033】
【表7】
【0034】
表6から明らかなように、本発明品は、比較品と比べ、ナルフラフィン塩酸塩の残存率が高く、顕著な含量安定性を示した。また表7から明らかなように、本発明品は、比較品で認められた分解物の増加がなく、ナルフラフィンの分解物の顕著な抑制効果を示した。
【要約】
ナルフラフィン又はその酸付加塩の優れた含量安定性を有するソフトカプセル剤の提供。カプセル内容物中にナルフラフィン又はその酸付加塩、疎水性の油性基剤及び没食子酸プロピルを含有し、カプセル皮膜中にチオ硫酸ナトリウムを含有するソフトカプセル剤。