(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クロック信号は、前記第1速度指令情報の前記上位の複数ビットと、前記第1速度指令情報から所定値を減算した後の値の前記上位の複数ビットとの比較結果に応じて、前記第1速度指令情報の変化に対して前記クロック信号がヒステリシスを持って変化するように生成される、請求項4に記載のモータ駆動制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、モータ駆動制御装置を用いてモータを駆動する場合において、速度制御ループを用いない制御を行えばよい場合もあれば、速度制御ループを構成し、指定された回転数(回転速度)でモータが駆動するようにモータ駆動制御装置が制御を行う必要がある場合もある。PWM信号を指令信号としてモータを駆動させるモータ駆動制御装置として、このような2通りの制御態様で制御可能となると便利である。
【0007】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、PWM信号に基づいてモータを駆動可能であって、広い用途に用いることができるモータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、入力されたPWM信号に基づいてモータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置は、モータの回転数情報に基づく駆動制御を行う制御モードで動作するか否かを決定する決定手段と、少なくとも決定手段で制御モードで動作しないと決定されたとき、PWM信号に対応する第1速度指令情報を出力する第1指令手段と、少なくとも決定手段で制御モードで動作すると決定されたとき、PWM信号に対応するクロック信号を生成するクロック信号生成手段と、少なくとも決定手段で制御モードで動作すると決定されたとき、クロック信号生成手段により生成されたクロック信号と、モータの回転数情報とに基づいて、第2速度指令情報を出力する第2指令手段と、決定手段で制御モードで動作しないと決定されたとき第1速度指令情報に基づいてモータを駆動させるための駆動制御信号を生成すると共に、決定手段で制御モードで動作すると決定されたとき第2速度指令情報に基づいて駆動制御信号を生成する駆動信号生成手段と、駆動信号生成手段により生成された駆動制御信号に基づいて、モータに駆動信号を出力してモータを駆動させるモータ駆動手段とを備え
、決定手段は、予めモータ駆動制御装置に設定された駆動制御の動作モードに関する設定情報又は外部から入力される駆動制御の動作モードに関する設定信号に応じて決定を行う。
【0009】
好ましくは、第1速度指令情報は、PWM信号のデューティ比に応じた所定ビットの情報である。
【0010】
好ましくは、クロック信号生成手段は、所定ビットの情報に基づいてクロック信号を生成する。
【0011】
好ましくは、クロック信号は、第1速度指令情報の、所定ビットの上位の複数ビットに基づいて生成される。
【0012】
好ましくは、クロック信号は、第1速度指令情報の上位の複数ビットと、第1速度指令情報から所定値を減算した後の値の上位の複数ビットとの比較結果に応じて、第1速度指令情報の変化に対してクロック信号がヒステリシスを持って変化するように生成される。
【0013】
好ましくは、駆動制御の動作モードに関する設定情報を記憶する記憶手段をさらに有し、決定手段は、記憶手段に記憶された設定情報に基づいて、制御モードで動作するか否かを決定する。
【0014】
好ましくは、第1指令手段は、決定手段の決定結果にかかわらず、第1速度指令情報を出力し、第2指令手段は、決定手段の決定結果にかかわらず、第2速度指令情報を出力する。
【0015】
好ましくは、モータ駆動制御装置は、その全部又は一部が集積回路装置としてパッケージ化されている。
【0016】
この発明の他の局面に従うと、入力されたPWM信号に基づいてモータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置の制御方法は、モータの回転数情報に基づく駆動制御を行う制御モードで動作するか否かを決定する決定ステップと、少なくとも決定ステップで制御モードで動作しないと決定されたとき、PWM信号に対応する第1速度指令情報を出力する第1指令ステップと、少なくとも決定ステップで制御モードで動作すると決定されたとき、PWM信号に対応するクロック信号を生成するクロック信号生成ステップと、少なくとも決定ステップで制御モードで動作すると決定されたとき、クロック信号生成ステップにより生成されたクロック信号と、モータの回転数情報とに基づいて、第2速度指令情報を出力する第2指令ステップと、決定ステップで制御モードで動作しないと決定されたとき第1速度指令情報に基づいてモータを駆動させるための駆動制御信号を生成すると共に、決定ステップで制御モードで動作すると決定されたとき第2速度指令情報に基づいて駆動制御信号を生成する駆動信号生成ステップと、駆動信号生成ステップにより生成された駆動制御信号に基づいて、モータに駆動信号を出力してモータを駆動させるモータ駆動ステップとを備え
、決定ステップは、予めモータ駆動制御装置に設定された駆動制御の動作モードに関する設定情報又は外部から入力される駆動制御の動作モードに関する設定信号に応じて決定を行う。
【発明の効果】
【0017】
これらの発明に従うと、制御モードで動作するか否かに応じて、第1速度指令情報又は第2速度指令情報に基づいて、駆動制御信号が生成される。したがって、PWM信号に基づいてモータを駆動可能であって、広い用途に用いることができるモータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態におけるモータ駆動制御装置について説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置の回路構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、モータ駆動制御装置1は、モータ20を例えば正弦波駆動により駆動させるように構成されている。本実施の形態において、モータ20は、例えば3相のブラシレスモータである。モータ駆動制御装置1は、ロータの回転位置信号に基づいて、モータ20の電機子コイルLu,Lv,Lwに正弦波状の駆動電流を流すことで、モータ20を回転させる。本実施の形態において、ロータの回転位置信号は、ホール(HALL)素子の出力信号から、ロータの回転位置を推定した信号である(不図示)。
【0023】
モータ駆動制御装置1は、インバータ回路2a及びプリドライブ回路2bを有するモータ駆動部(モータ駆動手段の一例)2と、制御回路部(決定手段の一例)4とを有している。なお、
図1に示されているモータ駆動制御装置1の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置1は、
図1に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
【0024】
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1は、その全部がパッケージ化された集積回路装置(IC)である。なお、モータ駆動制御装置1の一部が1つの集積回路装置としてパッケージ化されていてもよいし、他の装置と一緒にモータ駆動制御装置1の全部又は一部がパッケージ化されて1つの集積回路装置が構成されていてもよい。
【0025】
インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bとともに、モータ駆動部2を構成する。インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bから出力された出力信号に基づいてモータ20に駆動信号を出力し、モータ20が備える電機子コイルLu,Lv,Lwに通電する。インバータ回路2aは、例えば、直流電源Vccの両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対が、電機子コイルLu,Lv,Lwの各相(U相、V相、W相)に対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点に、モータ20の各相の端子が接続されている(不図示)。
【0026】
プリドライブ回路2bは、制御回路部4による制御に基づいて、インバータ回路2aを駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路2aに出力する。出力信号としては、例えば、インバータ回路2aの各スイッチ素子に対応するVuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlの6種類が出力される。これらの出力信号が出力されることで、それぞれの出力信号に対応するスイッチ素子がオン、オフ動作を行い、モータ20に駆動信号が出力されてモータ20の各相に電力が供給される。
【0027】
本実施の形態において、制御回路部4には、回転数信号(モータの回転数情報の一例)Srと、回転速度指令信号(PWM信号の一例)Scと、スタート信号Ssとが入力される。
【0028】
回転数信号Srは、モータ20から制御回路部4に入力される。回転数信号Srは、例えば、モータ20のロータの回転に対応するFG信号である。すなわち、回転数信号Srは、モータ20の回転数の検出結果を示す回転数情報である。FG信号は、ロータの側にある基板に設けたコイルパターンを用いて生成される信号(パターンFG)であってもよいし、モータ20に配置されたホール(HALL)素子の出力を用いて生成される信号(ホールFG)であってもよい。なお、モータ20の各相(U,V,W相)に誘起する逆起電圧を検出する回転位置検出回路を設け、検出された逆起電圧に基づき、モータ20のロータの回転位置と回転数とを検出するようにしてもよいし、モータの回転数や回転位置を検出するエンコーダなどのセンサ信号を用いてもよい。
【0029】
回転速度指令信号Scは、例えば、制御回路部4の外部から入力される。回転速度指令信号Scは、モータ20の回転数に関する信号であって、例えば、モータ20の目標回転速度に対応するPWM信号である。換言すると、回転速度指令信号Scは、モータ20の目標回転速度を指定する情報である。
【0030】
スタート信号Ssは、例えば、制御回路部4の外部から入力される。スタート信号Ssは、モータ20の駆動制御を行うか、駆動制御を行わないスタンバイ状態となるかを設定するための信号である。
【0031】
制御回路部4は、例えば、マイクロコンピュータやデジタル回路等で構成されている。制御回路部4は、回転数信号Srと、回転速度指令信号Scと、スタート信号Ssと、回転位置信号とに基づいて、駆動制御信号Sdをプリドライブ回路2bに出力する。制御回路部4は、駆動制御信号Sdを出力することで、モータ20が回転速度指令信号Scに対応する回転数で回転するようにモータ20の回転制御を行う。すなわち、制御回路部4は、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sdをモータ駆動部2に出力し、モータ20の回転制御を行う。モータ駆動部2は、駆動制御信号Sdに基づいて、モータ20に駆動信号を出力してモータ20を駆動させる。
【0033】
図2は、制御回路部4の構成を示すブロック図である。
【0034】
図2に示されるように、制御回路部4は、デューティ処理回路(第1指令手段の一例、クロック信号生成手段の一例)31と、速度制御回路(第2指令手段の一例)33と、正弦波駆動回路(駆動信号生成回路の一例)35と、メモリ(記憶手段の一例)37とを含む。各回路は、デジタル回路である。なお、
図2において、各回路間での信号や情報等の送受は、駆動制御信号Sdの生成に関する説明に係るものが示されている。
【0035】
メモリ37は、制御回路部4の動作に用いられる種々の設定値などを記憶する。メモリ37には、クロック生成情報37aと、設定情報37bとが記憶されている。
【0036】
ここで、本実施の形態において制御回路部4は、2つの駆動制御の動作モードのうち、いずれか一方の動作モードで動作する。2つの動作モードとしては、「制御モード」と、「非制御モード」とがある。どちらの動作モードで動作するかは、制御回路部4が、例えば、メモリ37に記憶されている1ビットの設定情報37bに応じて決定する。制御回路部4は、メモリ37に記憶されている設定情報37bを設定情報D2として読み込み、設定情報D2に応じた動作モードで、予め設定された制御動作を行う。
【0037】
図3は、設定情報D2と動作モードとの関係を示す図である。
【0038】
図3を参照して、設定情報D2が例えば「0」のとき、制御回路部4は、制御モードで動作する。制御モードでは、モータ20の回転数が、回転速度指令信号Scに対応する回転数になるように、モータ20の回転数を用いたフィードバック制御が行われる。すなわち、制御回路部4は、後述のように、回転速度指令信号Scに基づいてデューティ処理回路31により生成されたクロック信号S3と、モータ20から入力された回転数信号Srとを比較し、クロック信号S3と回転数信号Srとが同じになるように速度指令情報(第2速度指令情報S2)を生成することで、モータ20の制御を行う。
【0039】
他方、設定情報D2が例えば「1」のとき、制御回路部4は、非制御モードで動作する。非制御モードでは、制御モードとは異なり、モータ20の回転数を考慮したフィードバック制御は行われない。すなわち、非制御モードでは、制御回路部4は、モータ20の回転数に依存せず、回転速度指令信号Scのデューティ比に基づいた一義的な速度指令情報(第1速度指令情報S1)を生成することで、モータ20の制御を行う。
【0040】
図4は、モータ駆動制御装置1の動作を説明するフローチャートである。
【0041】
図4に示されるように、ステップS311において、制御回路部4に、回転速度指令信号Sc(PWMDUTY)が入力される。回転速度指令信号Scは、デューティ処理回路31に入力される。
【0042】
ステップS312において、デューティ処理回路31は、回転速度指令信号Scのデューティ比に応じた所定ビットの情報(所定ビット数の値)を生成する。本実施の形態では、所定ビット数の値として、10ビット値が生成される。10ビット値は、例えば、回転速度指令信号Scの1周期のカウント数とH区間(オンデューティ区間)のカウント数とに基づいてシフト演算や加算を行うことにより生成される。
【0043】
ステップS313において、制御回路部4は、動作モードが非制御モードであるか否かを決定する。上述のように、制御回路部4は、設定情報37bに応じて、動作モードが制御モードであるか非制御モードであるかを判断する。
【0044】
ステップS313で動作モードが非制御モードであれば(YESの場合)、ステップS314において、生成された10ビット値が、デューティ処理回路31から第1速度指令情報S1として出力される。そして、出力された第1速度指令情報S1に基づいた駆動制御信号Sdが正弦波駆動回路35から出力される。
【0045】
ステップS313で動作モードが非制御モードでないときすなわち制御モードであるとき(NOの場合)、ステップS315において、デューティ処理回路31が10ビット値から速度基準クロック(クロック信号S3)を生成し、速度制御回路33に出力する。このとき、後述のように、ヒステリシス動作が行われる。
【0046】
ステップS316において、速度制御回路33は、クロック信号S3と回転数信号Srとを比較して、モータ20の回転速度(回転数)がクロック信号S3に対応する回転速度すなわち回転速度指令信号Scに対応する回転速度になるように、第2速度指令情報S2を生成する。第2速度指令情報S2は、速度制御回路33から出力される。そして、出力された第2速度指令情報S2に基づいた駆動制御信号Sdが正弦波駆動回路35から出力される。
【0047】
ステップS314で第1速度指令情報S1に基づいて駆動制御信号Sdが出力されるか、ステップS316で第2速度指令情報S2に基づいて駆動制御信号Sdが出力されると、ステップS317の処理が行われる。すなわち、モータ駆動部2は、正弦波駆動回路35から出力された駆動制御信号Sdに基づいて、モータ20に駆動信号を出力してモータ20を駆動させる。
【0048】
本実施の形態においては、動作モードにかかわらず、モータ20の駆動時において、正弦波駆動回路35には、第1速度指令情報S1と第2速度指令情報S2との両方ともが正弦波駆動回路35に入力される。すなわち、動作モードにかかわらず、デューティ処理回路31は第1速度指令情報S1及びクロック信号S3を出力し、速度制御回路33は、第2速度指令情報S2を出力する。そして、正弦波駆動回路35には、切替回路35bが設けられている。切替回路35bは、設定情報D2に応じて、第1速度指令情報S1と第2速度指令情報S2とのうち、正弦波駆動回路35で駆動制御信号Sdの生成に用いるものを切り替える。換言すると、設定情報D2に応じて切替回路35bで選択された速度指令情報に基づいて、正弦波駆動回路35が駆動制御信号Sdを生成する。なお、回転数信号Srが入力されないときには、速度制御回路33は、例えばクロック信号S3に対応する第2速度指令情報S2を出力するように構成されていればよい。
【0049】
これに対し、制御回路部4は、設定情報37bに基づいて、次のように動作するようにしてもよい。すなわち、非制御モードで動作するか制御モードで動作するかを、デューティ処理回路31、速度制御回路33、正弦波駆動回路35のすべてがそれぞれ判断(決定)するようにしてもよいし、それらのうち一部が判断し、それに応じて他の回路が動作するようにしてもよい。
【0050】
例えば、デューティ処理回路31は、非制御モードで動作するときに、第1速度指令情報S1を出力し、制御モードで動作するときには、第1速度指令情報S1を出力しないようにしてもよい。また、非制御モードで動作するときにはクロック信号S3を出力せず、動作モードで動作するときにはクロック信号S3を出力するようにしてもよい。
【0051】
また、速度制御回路33は、非制御モードで動作するときには第2速度指令情報S2を出力せず、制御モードで動作するときには第2速度指令情報S2を出力するようにしてもよい。また、回転数情報Srが入力されているか否かやその値に応じて第2速度指令情報S2を出力するかどうか否かを切り替えてもよいし、クロック信号S3が入力されているか否かに応じて第2速度指令情報S2を出力するかどうかを切り替えてもよい。
【0052】
このように動作モードに応じて第1速度指令情報S1が出力されるか第2速度指令情報S2が出力されるかが切り替わるような構成では、正弦波駆動回路35は、特に両速度指令情報S1,S2を切り替えるような回路は用いずに、入力された情報に応じて駆動制御信号Sdを生成するようにしてもよいし、上述と同様に、切替回路を用いるようにしてもよい。
【0054】
ここで、クロック信号S3は、第1速度指令情報S1の、所定ビットの上位の複数ビットに基づいて生成される。本実施の形態において、クロック信号S3は、10ビット値である第1速度指令情報S1のうち、上位の5ビットで表されるテーブル値に基づいて生成される。なお、クロック信号S3は、第1速度指令情報S1のうち上位5ビットに限られず、10ビットのうち上位の複数ビットが用いられて生成されるようにしてもよい。
【0055】
クロック信号S3は、例えば、メモリ37に記憶されているクロック生成情報37aに基づいて表される生成テーブルに基づいて生成される。生成テーブルは、デューティ処理回路31がメモリ37からクロック生成情報37aをクロック生成情報D1として読み取ることで生成される。
【0056】
図5は、クロック信号S3の生成テーブルの一例について説明する図である。
【0057】
図5に示される生成テーブルにおいては、「入力No」、「デューティ比(DUTY)」、及び「内部生成CLK(クロック)」が互いに関連付けられて示されている。本実施の形態では、上述のテーブル値に基づいてクロック信号S3が生成されるところ、テーブル値(32段階の値)は「入力No」に対応し、それに応じて生成されるクロック信号S3は「内部生成CLK」に対応する。「デューティ比」は、テーブル値のそれぞれの値に対応するものが示されている。例えば、デューティ比が45%の回転速度指令信号Scが入力されたとき、テーブル値は「14」となり、それに対応するクロック信号S3は、「440Hz」となる。
【0058】
クロック生成情報37aとしては、例えば、出力がある場合の最小のクロック信号S3の周波数の値(最小周波数)fminと、テーブル値の増加に対するクロック信号S3の周波数の変化量の値(変動周波数)dfとが記憶されている。
図5に示される例は、例えば、fminとして「50Hz」が、dfとして「30Hz」が、それぞれ設定されている場合のものである。すなわち、出力が一番低い(ゼロではない)、テーブル値が「1」となるとき、クロック信号S3は「50Hz」となる。それから、テーブル値が「2」、「3」と増えるにつれ、クロック信号S3は「80Hz」、「110Hz」とdfの値分ずつ増加する。なお、クロック信号S3の範囲は、0Hz〜980Hzであるが、これに限られるものではない。
【0059】
クロック信号S3の周波数が生成テーブルに基づいて定まると、その周波数の値が繰り返し加算され、加算結果が所定値に達するまでの加算回数を求めることで、所定の周波数の分周回路における分周比が生成される。クロック信号S3は、その分周比に基づいて波形として出力される。
【0060】
ここで、本実施の形態では、クロック信号S3の生成時には、ヒステリシス動作が行われる。すなわち、出力するクロック信号S3を求めるためのテーブル値は、第1速度指令情報S1の変化に対してヒステリシスを持って変化するようにして決定される。これにより、クロック信号S3は、第1速度指令情報S1の変化(すなわち回転速度指令信号Scの変化)に対してヒステリシスを持って変化するようにして生成される。
【0061】
具体的には、テーブル値は、第1速度指令情報S1の値の上位5ビットの第1比較値と、第1速度指令情報S1から所定値を減算した後の値の上位の5ビットで表される第2比較値との比較結果に応じて決定される。
【0062】
図6は、デューティ処理回路31の動作について説明する第1のフローチャートである。
【0063】
テーブル値の初期値は、例えば「0」に設定されている。テーブル値は、5ビットの値に対応し、例えば「0」から「32」までの値をとりうる。
図6に示される処理は、常時繰り返して行われる。
【0064】
図6に示されるように、ステップS331において、デューティ処理回路31は、回転速度指令信号Sc(PWMDUTY)のL区間(オフデューティ区間)の計測カウンタがオーバーフローしていないか否かを判断する。すなわち、回転速度指令信号Scのデューティ比が0%でないかどうかを判断する。
【0065】
ステップS331においてデューティ比が0%であれば(NOの場合)、ステップS332において、テーブル値が「0」に更新される。
【0066】
ステップS331においてデューティ比が0%でなければ(YESの場合)、ステップS333において、デューティ処理回路31は、回転速度指令信号ScのH区間(オンデューティ期間)の計測カウンタがオーバーフローしていないか否かを判断する。すなわち、回転速度指令信号Scのデューティ比が100%でないかどうかを判断する。
【0067】
ステップS333においてデューティ比が100%であれば(NOの場合)、ステップS334において、テーブル値が上限の「32」に更新される。
【0068】
ステップS333においてデューティ比が100%でなければ(YESの場合)、ステップS335において、第2比較値の基となる値VSP_HISの設定処理が行われる。
【0069】
図7は、デューティ処理回路31の動作について説明する第2のフローチャートである。
【0070】
図7に示されるように、ステップS351において、回転速度指令信号Scに対応する10ビット値VSP_DUTYの値が、所定値である「5」以上であるか否かが判断される。
【0071】
ステップS351において所定値以上であれば(YESの場合)、ステップS352において、VSP_DUTYから所定値「5」を減算された値が、第2比較値の基となる値VSP_HISとして設定される。
【0072】
ステップS351において所定値以上でなければ(NOの場合)、ステップS353において、第2比較値の基となる値VSP_HISが「0」に設定される。このような処理が行われることにより、第2比較値の基となる値VSP_HISが、負ではない値に設定される。
【0073】
図6に戻って、ステップS336において、第1比較値VSP_DUTY[9:5]と、第2比較値VSP_HIS[9:5]とが等しいか否かを判断する。ここで、第1比較値VSP_DUTY[9:5](以下単に第1比較値という)は、回転速度指令信号Scに対応する10ビット値VSP_DUTYの上位5ビットの値である。また、第2比較値VSP_HIS[9:5](以下単に第2比較値という)は、上述のようにして減算を行って設定された10ビット値VSP_HISの上位5ビットの値である。
【0074】
ステップS336において第1比較値と第2比較値とが等しければ(YESの場合)、ステップS337の処理が行われる。すなわち、ステップS337において、第1比較値がテーブル値として、テーブル値が更新される。
【0075】
ステップS336において第1比較値と第2比較値とが等しくなければ(NOの場合)、ステップS338の処理が行われる。ステップS338において、現在選択されているテーブル値と、第2比較値との間に、2以上の差があるか否かが判断される。
【0076】
ステップS338において2以上の差があれば(YESの場合)、ステップS339の処理が行われる。すなわち、ステップS339において、第2比較値がテーブル値として、テーブル値が更新される。
【0077】
他方、ステップS338において2以上の差がなければ(NOの場合)、ステップS340の処理が行われる。すなわち、ステップS340において、現在選択されているテーブル値が保持される(テーブル値が変更されない)。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態においては、モータ駆動制御装置1は、動作モードが非制御モードであるか制御モードであるかに応じて、回転速度指令信号Scに基づいて、2つの異なる制御態様でモータ20を駆動できる。すなわち、モータ20からの回転数信号Srを入力しないような態様であっても、モータ20の回転速度のフィードバック制御を行う場合であっても、同一のモータ駆動制御装置1を用いてモータ20を駆動させることができ、モータ駆動制御装置1を広い用途に用いることができる。動作モードはメモリ37の設定情報37bに基づいて決定されるので、設定情報37bを適宜設定することにより、容易に動作モードを設定することができる。
【0080】
制御モードのときに必要となる第2速度指令情報S2は、第1速度指令情報S1に基づいて生成される。すなわち、制御モードで利用する回路の一部を利用して非制御モードでモータ20を駆動させることができる。また、デジタル回路を利用して、デジタル情報の演算を行って効率良くモータ20を駆動させるための信号を生成することができる。したがって、モータ駆動制御装置1の回路規模をコンパクトにすることができる。
【0081】
制御モードにおいて、第2速度指令情報S2の生成に用いられるクロック信号S3の生成時にはヒステリシス動作が行われるので、回転速度指令信号Scのデューティ比がテーブル値の閾値をまたぐような幅で高頻度に変更されても、クロック信号S3が乱れることがなくなる。したがって、モータ20の回転動作を安定させることができる。
【0083】
制御回路部は、
図2に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的にあうように構成された、様々な回路構成が適用できる。
【0084】
動作モードは、メモリに記憶されている設定情報に応じて決定されるものに限られず、制御回路部の外部から入力された設定信号に応じて動作モードが決定されるようにしてもよいし、モータの動作に関する種々の検出結果等にあわせて動作モードが決定されるようにしてもよい。
【0085】
モータ駆動制御装置の各構成要素は、少なくともその一部がハードウェアによる処理ではなく、ソフトウェアによる処理であってもよい。
【0086】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、3相のブラシレスモータに限られず、他の種類のモータであってもよい。
【0087】
本発明は、正弦波駆動方式によりモータを駆動するモータ駆動制御装置に限られず、例えば矩形波駆動方式によりモータを駆動するモータ駆動制御装置に適用してもよい。
【0088】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウェアによって行われるようにしても、ハードウェア回路を用いて行われるようにしてもよい。
【0089】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。