(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動停止制御回路は、前記駆動停止指令情報の出力に関する設定情報に基づいて、前記入力停止情報と前記遅延回路から出力された遅延情報とに基づいて、前記駆動停止指令情報を前記駆動信号生成回路に出力する選択回路をさらに有する、請求項2に記載のモータ駆動制御装置。
【背景技術】
【0002】
モータ駆動制御装置によるモータ(例えば、ファンモータや扇風機用のモータとして使用されるブラシレスDCモータなど)の回転速度の制御方式として、外部から指令信号を入力し、モータの回転速度がその指令信号に応じたものになるように制御を行うものがある。指令信号としては、例えば、クロック信号が挙げられる。クロック信号を指令信号として用いる場合には、クロック信号とモータの回転数信号とを比較し、クロック信号と回転数信号とが同じになるようにモータの速度指令値を制御することで、モータの回転速度の制御が行われる。
【0003】
このようなモータの駆動制御装置は、クロック信号が停止されると、一般に、クロック信号の停止に合わせて全相の駆動をオフにするフリーラン停止方法によって、モータを停止させる。しかしながら、このような停止方法では、モータの惰性回転中に回生電流が流れ、騒音(異音)が発生するという問題がある。
【0004】
図6は、従来のモータ駆動制御装置の制御内容の一例を示す図である。
【0005】
図6においては、フリーラン停止方法によりモータが停止されるときのクロック信号Scと、モータの回転数信号Srと、モータ駆動制御装置の動作モードとのそれぞれの推移が示されている。ここでは、一例として、クロック信号Scが、時間の経過に伴い、500Hz、1000Hz、停止(0Hz)と変化する場合が示されている。
【0006】
すなわち、回転数信号Srが500Hzとなる駆動状態でモータを駆動中であるとき(駆動モード)、時刻t11にクロック信号Scがそれまでの500Hzから1000Hzに変化すると、モータを加速させる制御が行われ、回転数信号Srが1000Hzに変化する。時刻t12でクロック信号Scが停止されると、動作モードが減速モードに移り、モータの減速が開始される。時刻t13でモータ駆動部の全相に対応するスイッチ素子がすべてオフにされ、動作モードが停止モードに移り、モータが惰性回転による停止方法で(フリーラン停止方法で)減速され、時刻t14でモータの回転が停止する。
【0007】
ここで、このような従来のフリーラン停止方法では、時刻t13からt14の間(惰性回転の期間)に回生電流が流れる。これにより、異音(例えば「カチッ」という音)が発生することがある。
【0008】
このような問題に関して、下記特許文献1には、急激な回転停止による騒音の発生を防止することを図ったモータ制御装置が開示されている。このモータ制御装置は、運転スイッチをオフしたときの駆動回路への供給電圧の低下に基づいて運転停止を検出し、それに基づいて駆動回路のすべてのスイッチ素子を強制的にオフするように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されているような装置においては、次のような問題がある。すなわち、騒音を抑制するために電源をオフにして電圧低下を検出することで運転停止を検出するものであるため、電源がオンである状態では、運転停止(駆動停止;クロック信号の停止)を検出しても、それに対応できない。また、特許文献1に記載されているモータ駆動装置は、実際のモータ駆動状態の信号を検知して運転停止を検出するものではなく、間接的な停止条件である電源低下に応じて運転停止を検出するものであり、運転が停止したことの検出精度が悪い。例えば、電圧低下が検出されて運転停止を検出した場合であっても、モータが惰性回転している状態である可能性もある。
【0011】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、確実にモータの回転を静かに停止させることができるモータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、モータ駆動制御装置は、入力された目標回転数の指令情報とモータの回転数検出情報とに基づいて、モータを駆動制御するための駆動制御信号を出力する制御回路部と、制御回路部から出力された駆動制御信号に基づいて、モータに駆動信号を出力してモータを駆動させるモータ駆動部とを備え、制御回路部は、目標回転数の指令情報と回転数検出情報とに基づき、モータの回転数に関する速度指令情報を出力する速度制御回路と、目標回転数の指令情報の制御回路部への入力が停止されたとき、目標回転数の指令情報の制御回路部への入力が停止されたことを示す入力停止情報と、回転数検出情報に基づいたモータの駆動停止の検知結果とに基づいて、モータの駆動停止を検知した時から所定時間の経過後に駆動停止指令情報を出力可能である駆動停止制御回路と、駆動停止制御回路から駆動停止指令情報が出力されたとき、駆動停止指令情報と速度制御回路から出力された速度指令情報とに基づいて、駆動制御信号を生成する駆動信号生成回路とを有する。
【0013】
好ましくは、駆動停止制御回路は、回転数検出情報に基づいてモータの駆動停止を検知し、駆動停止検知情報を出力する駆動停止検知回路と、駆動停止検知回路により出力された駆動停止検知情報に基づいて、モータの駆動停止が検知されたタイミングに所定時間を加算して遅延情報を出力する遅延回路とを有する。
【0014】
好ましくは、駆動停止制御回路は、駆動停止指令情報の出力に関する設定情報に基づいて、入力停止情報と遅延回路から出力された遅延情報とに基づいて、駆動停止指令情報を駆動信号生成回路に出力する選択回路をさらに有する。
【0015】
好ましくは、制御回路部は、設定情報を記憶する記憶手段をさらに有し、選択回路は、記憶手段に記憶された設定情報に基づいて、駆動停止指令情報の出力を行うか否かを選択する。
【0016】
好ましくは、モータ駆動制御装置は、その全部又は一部が集積回路装置としてパッケージ化されている。
【0017】
この発明の他の局面に従うと、入力された目標回転数の指令情報とモータの回転数検出情報とに基づいて、モータを駆動制御するための駆動制御信号を出力する制御回路部と、制御回路部から出力された駆動制御信号に基づいて、モータに駆動信号を出力してモータを駆動させるモータ駆動部とを備えるモータ駆動制御装置の制御方法は、目標回転数の指令情報と回転数検出情報とに基づき、モータの回転数に関する速度指令情報を出力する速度制御ステップと、目標回転数の指令情報の制御回路部への入力が停止されたとき、目標回転数の指令情報の制御回路部への入力が停止されたことを示す入力停止情報と、回転数検出情報に基づいたモータの駆動停止の検知結果とに基づいて、モータの駆動停止を検知した時から所定時間の経過後に駆動停止指令情報を出力する駆動停止指令ステップと、速度制御ステップで出力された速度指令情報と駆動停止指令ステップで出力された駆動停止指令情報とに基づいて、駆動制御信号を生成する駆動信号生成ステップとを有する。
【発明の効果】
【0018】
これらの発明に従うと、駆動停止制御回路が、指令情報の制御回路部への入力が停止されたとき、そのことを示す入力停止情報とモータの駆動停止の検知結果とに基づいて、モータの駆動停止を検知した時から所定時間の経過後に駆動停止指令情報を出力可能である。したがって、確実にモータの回転を静かに停止させることができるモータ駆動制御装置及びモータ駆動制御装置の制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態におけるモータ駆動制御装置について説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおけるモータ駆動制御装置の回路構成を示すブロック図である。
【0023】
図1に示されるように、モータ駆動制御装置1は、モータ20を例えば正弦波駆動により駆動させるように構成されている。本実施の形態において、モータ20は、例えば3相のブラシレスモータである。モータ駆動制御装置1は、ロータの回転位置信号に基づいて、モータ20の電機子コイルLu,Lv,Lwに正弦波状の駆動電流を流すことで、モータ20を回転させる。本実施の形態において、ロータの回転位置信号は、ホール(HALL)素子の出力信号から、ロータの回転位置を推定した信号である(不図示)。
【0024】
モータ駆動制御装置1は、インバータ回路2a及びプリドライブ回路2bを有するモータ駆動部2と、制御回路部4とを有している。なお、
図1に示されているモータ駆動制御装置1の構成要素は、全体の一部であり、モータ駆動制御装置1は、
図1に示されたものに加えて、他の構成要素を有していてもよい。
【0025】
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1は、その全部がパッケージ化された集積回路装置(IC)である。なお、モータ駆動制御装置1の一部が1つの集積回路装置としてパッケージ化されていてもよいし、他の装置と一緒にモータ駆動制御装置1の全部又は一部がパッケージ化されて1つの集積回路装置が構成されていてもよい。
【0026】
インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bとともに、モータ駆動部2を構成する。インバータ回路2aは、プリドライブ回路2bから出力された出力信号に基づいてモータ20に駆動信号を出力し、モータ20が備える電機子コイルLu,Lv,Lwに通電する。インバータ回路2aは、例えば、直流電源Vccの両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対(スイッチ素子Q1,Q2の対、スイッチ素子Q3,Q4の対、及びスイッチ素子Q5,Q6の対)が、電機子コイルLu,Lv,Lwの各相(U相、V相、W相)に対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点に、モータ20の各相の端子が接続されている。具体的には、スイッチ素子Q1,Q2同士の接続点に、U相の端子が接続されている。スイッチ素子Q3,Q4同士の接続点に、V相の端子が接続されている。スイッチ素子Q5,Q6同士の接続点に、W相の端子が接続されている。
【0027】
プリドライブ回路2bは、制御回路部4による制御に基づいて、インバータ回路2aを駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路2aに出力する。出力信号としては、例えば、インバータ回路2aのスイッチ素子Q1〜Q6のそれぞれに対応するVuu,Vul,Vvu,Vvl,Vwu,Vwlの6種類が出力される。すなわち、スイッチ素子Q1には、出力信号Vuuが出力される。スイッチ素子Q2には、出力信号Vulが出力される。スイッチ素子Q3には、出力信号Vvuが出力される。スイッチ素子Q4には、出力信号Vvlが出力される。スイッチ素子Q5には、出力信号Vwuが出力される。スイッチ素子Q6には、出力信号Vwlが出力される。これらの出力信号が出力されることで、それぞれの出力信号に対応するスイッチ素子Q1〜Q6がオン、オフ動作を行い、モータ20に駆動信号が出力されてモータ20の各相に電力が供給される。全相の駆動をオフとする場合には、スイッチ素子Q1〜Q6はいずれもオフにされる。
【0028】
本実施の形態において、制御回路部4には、回転数信号(回転数検出情報の一例)Srと、クロック信号(目標回転数の指令情報の一例)Scと、スタート信号Ssとが入力される。
【0029】
回転数信号Srは、モータ20から制御回路部4に入力される。回転数信号Srは、例えば、モータ20のロータの回転に対応するFG信号である。すなわち、回転数信号Srは、モータ20の回転数の検出結果を示す回転数情報である。FG信号は、ロータの側にある基板に設けたコイルパターンを用いて生成される信号(パターンFG)であってもよいし、モータ20に配置されたホール(HALL)素子の出力を用いて生成される信号(ホールFG)であってもよい。なお、モータ20の各相(U,V,W相)に誘起する逆起電圧を検出する回転位置検出回路を設け、検出された逆起電圧に基づき、モータ20のロータの回転位置と回転数とを検出するようにしてもよいし、モータの回転数や回転位置を検出するエンコーダなどのセンサ信号を用いてもよい。
【0030】
クロック信号Scは、例えば、制御回路部4の外部から入力される。クロック信号Scは、モータ20の回転数に関する信号であって、例えば、モータ20の目標回転速度に対応する周波数の信号である。換言すると、クロック信号Scは、モータ20の目標回転速度を指定する指令情報である。なお、目標回転数の指令情報は、クロック信号に限定されず、PWM(パルス幅変調)信号であってもよい。
【0031】
スタート信号Ssは、例えば、制御回路部4の外部から入力される。スタート信号Ssは、モータ20の駆動制御を行うか、駆動制御を行わないスタンバイ状態となるかを設定するための信号である。
【0032】
制御回路部4は、例えば、マイクロコンピュータやデジタル回路等で構成されている。制御回路部4は、回転数信号Srと、クロック信号Scと、スタート信号Ssと、回転位置信号とに基づいて、駆動制御信号Sdをプリドライブ回路2bに出力する。制御回路部4は、駆動制御信号Sdを出力することで、モータ20がクロック信号Scに対応する回転数で回転するようにモータ20の回転制御を行う。すなわち、制御回路部4は、モータ20を駆動させるための駆動制御信号Sdをモータ駆動部2に出力し、モータ20の回転制御を行う。モータ駆動部2は、駆動制御信号Sdに基づいて、モータ20に駆動信号を出力してモータ20を駆動させる。
【0034】
図2は、制御回路部4の構成を示すブロック図である。
【0035】
図2に示されるように、制御回路部4は、速度制御回路33と、正弦波駆動回路(駆動信号生成回路の一例)35と、メモリ(記憶手段の一例)37と、駆動停止制御回路41とを含む。各回路は、デジタル回路である。なお、
図2において、各回路間での信号や情報等の送受は、駆動制御信号Sdの生成に関する説明に係るものが示されている。
【0036】
速度制御回路33には、クロック信号Scと回転数信号Srとが入力される。速度制御回路33は、クロック信号Scと回転数信号Srとに基づいて、モータの回転数に関するトルク指令信号(速度指令情報の一例)S1を出力する。また、速度制御回路33は、クロック信号Scの入力が停止されたときに、クロック停止信号(入力停止情報の一例)S2を出力する。
【0037】
正弦波駆動回路35には、速度制御回路33から出力されたトルク指令信号S1が入力される。正弦波駆動回路35は、入力されたトルク指令信号S1に応じた駆動制御信号Sdを出力する。また、正弦波駆動回路35は、後述のように駆動停止制御回路41から駆動停止指令信号(駆動停止指令情報の一例)S5が入力されたときは、駆動停止指令信号S5とトルク指令信号S1とに基づいて、停止制御モードに基づく駆動制御信号Sdを出力する。このように正弦波駆動回路35から駆動制御信号Sdが出力されることで、モータ駆動部2の動作が制御される。
【0038】
駆動停止制御回路41には、回転数信号Srと、速度制御回路33から出力されたクロック停止信号S2とが入力される。駆動停止制御回路41は、クロック信号Scの制御回路部4への入力が停止されたとき(制御回路部4へクロック信号Scが入力されないとき及び制御回路部4へ入力されるクロック信号Scがモータ20の停止に対応するLow信号になったときを含む。)、そのことを示すクロック停止信号S2と、回転数信号Srに基づいたモータ20の駆動停止の検知結果とに基づいて、駆動停止指令信号S5を出力することで、停止制御モードで制御回路部4を動作させる機能を有している。駆動停止指令信号S5は、モータ20の駆動停止の検知タイミングから所定時間の経過後に出力される。
【0039】
駆動停止制御回路41は、駆動停止検知回路42と、遅延回路43と、セレクタ(選択回路の一例)44とを有している。
【0040】
駆動停止検知回路42には、回転数信号Srが入力される。駆動停止検知回路42は、回転数信号Srに基づき、モータ20の駆動停止を検知する。駆動停止検知回路42は、モータ20の駆動停止を検知した時、駆動停止検知信号(駆動停止検知情報の一例)S3を出力する。
【0041】
遅延回路43は、例えば、カウンタなどで構成されている。遅延回路43は、駆動停止検知回路42により出力された駆動停止検知信号S3に基づいて、モータ20の駆動停止が検知されたタイミングに所定時間を加算して、遅延信号(遅延情報の一例)S4を生成する。遅延信号S4は、セレクタ44に入力される。
【0042】
セレクタ44には、クロック停止信号S2と遅延信号S4とが入力される。セレクタ44は、クロック停止信号S2と遅延信号S4とに基づいて駆動停止指令信号S5を生成し、生成した駆動停止指令信号S5を正弦波駆動回路35に出力する。
【0043】
ここで、駆動停止制御回路41は、メモリ37に記憶された設定情報37b(設定情報SEL)に応じて、停止制御モードを設定するかどうかすなわち駆動停止指令信号S5の出力を行うか否かを選択するように構成されている。設定情報SELはセレクタ44に入力され、セレクタ44が設定情報SELに応じて動作することで、このような選択動作が実現される。
【0044】
メモリ37は、制御回路部4の動作に用いられる種々の設定値などを記憶する。メモリ37は、停止制御モードに関する設定情報SELを含む各種の設定情報37bを記憶する。
【0045】
図3は、設定情報SELと停止制御モードとの関係を示す図である。
【0046】
設定情報SELと、停止制御モードを有効とするか無効とするかすなわち駆動停止指令信号S5の出力を行うか否かとの関係は、例えば、
図3に示されるように設定されている。すなわち、設定情報SELが「0」であれば停止制御モードを無効とし、「1」であれば有効とする制御が行われるように、設定されている。
【0047】
設定情報SELの設定は、例えば、電源オンと同時にメモリ37が立ち上がり、予め書き込まれた設定情報SEL(「1」or「0」)がセレクタ44に出力されることで行われる。
【0048】
設定情報SELが駆動停止指令信号S5の出力を指示するものであるとき(例えば「1」であるとき)、セレクタ44は、停止制御モードを有効とするように動作する。このとき、セレクタ44は、駆動停止指令信号S5を正弦波駆動回路35に出力する。
【0049】
他方、設定情報SELが駆動停止指令信号S5の出力を指示するものではないとき(例えば「0」であるとき)、セレクタ44は、停止制御モードを無効とするように動作する。このとき、セレクタ44は、駆動停止指令信号S5の出力を行わない。
【0050】
[停止制御モードに基づく制御の説明]
【0051】
上述のように、本実施の形態においては、停止制御モードが有効であるときには、モータ20の停止時に駆動停止制御回路41から駆動停止指令信号S5が出力され、その結果、制御回路部4から、停止制御モードに対応する駆動制御信号Sdが出力される。
【0052】
図4は、本実施の形態の停止制御モードに基づくモータ駆動制御装置1の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0053】
図4においては、上方から順に、クロック信号Scと、回転数信号Srと、モータ駆動制御装置1の動作状態とのそれぞれの推移が示されている。
【0054】
まず、時刻t1までの期間では、駆動モードで動作し、クロック信号Scが500Hzであり、回転数信号Srも500Hzである。
【0055】
時刻t1から時刻t2までの間、クロック信号Scが1000Hzになると、時刻t1からモータ20の回転数が上昇(モータ20が加速)し、回転数信号Srが1000Hzになる。回転数信号Srが1000Hzになると、回転数信号Srは安定する。
【0056】
時刻t2においてクロック信号Scが停止されると、動作モードが、駆動モードから減速モードに移り、モータ20の減速が開始される。
【0057】
時刻t3において、回転数信号SrがLow信号となる。これは、モータ20の回転数がゼロになることを意味する(ただし、実際にモータ20が停止状態であるかどうかは不明である)。このとき、駆動停止検知回路42が回転数信号Srに基づいて駆動停止を検知し、駆動停止検知信号S3を出力する。
【0058】
時刻t3から時刻t4までの間、所定時間が加算される(遅延時間が設けられる)。そして、遅延時間が過ぎた時刻t4になると、モータ駆動部2のインバータ回路2aのすべてのスイッチ素子がオフにされ(全相オフ)、モータ駆動制御装置1の動作モードが停止モードとなる。
【0059】
なお、所定の遅延時間は、例えば、実機を用いて実験を行うことで予め算出した時間を設定するようにすればよい。具体的には、回転数信号SrのLow信号に基づいて駆動停止検知信号S3が出力されてから、モータ20が完全に停止するまでの時間を測定し、モータ20が完全に停止するまでに十分な時間を遅延時間として設定すればよい。例えば、実験によりLow信号になってから1秒以内のモータ20が完全停止することが確認されたとき、遅延時間はそれより長い時間(例えば3秒など)に設定すればよい。
【0060】
図5は、本実施の形態におけるモータ20の停止時の制御を示すフローチャートである。
【0061】
図5に示されるように、モータ駆動制御装置1が、クロック信号Scの停止を検知してからモータ20の回転停止を行うまでの手順は、以下のようである。
【0062】
すなわち、制御回路部4は、ステップS11において、クロック信号Scが停止したことを検知する。
【0063】
ステップS12において、駆動停止制御回路41は、停止制御モードを有効にするかどうか(停止制御モードに基づく制御を行うかどうか)を判定する。有効にするとき(行うとき)は(YESの場合)、駆動停止制御回路41がステップS13の処理を行う。有効にしないとき(行わないとき)は(NOの場合)、制御回路部4は、ステップS15の処理を行う。
【0064】
なお、停止制御モードを有効にしないときには、例えば駆動停止制御回路41から正弦波駆動回路35に、停止指令信号がクロック停止信号S2に対応するタイミングで送信され(図示せず)、正弦波駆動回路35がそれに応じて駆動制御信号Sdを出力するようにすればよい。
【0065】
停止制御モードが有効であるとき、ステップS13において、駆動停止検知回路42で駆動停止が検知される。これにより、駆動停止検知回路42から駆動停止検知信号S3が出力される。
【0066】
ステップS14において、遅延回路43は、駆動停止検知タイミングに所定時間を加算する。これにより、モータ20が確実に完全停止するまで、駆動をオフにする時刻が遅延される。遅延時間が経過すると、駆動停止指令信号S5が正弦波駆動回路35に出力され、ステップS15の処理が行われる。
【0067】
ステップS15において、制御回路部4は、全相の駆動をオフにする(スイッチ素子Q1〜Q6のすべてをオフにする)制御を行う。これにより、停止時の処理が終了する。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態では、停止制御モードに基づく制御が行われると、駆動停止制御回路41から駆動停止指令信号S5が出力され、制御回路部4から停止制御モードに対応する駆動制御信号Sdが出力され、モータ駆動部2が駆動制御信号Sdに基づいて動作する。これにより、モータ20の回転数信号SrがLow信号になってからインバータ回路2aが全相オフにされるまで、所定の遅延時間が設けられる。
【0070】
駆動停止検知信号S3の生成タイミングがモータ20の回転の停止タイミングと一致していれば、このような遅延時間を加算することは不要である。しかしながら、実際には、完全停止のとき以外であっても、非常に遅い回転状態のときなどには回転数信号SrがLow信号となって駆動停止検知信号S3が出力されることがある。これに対して、本実施の形態においては、停止制御モードでの制御に基づいて、回転数信号SrがLow信号になってから少なくとも遅延時間が経過した後に、インバータ回路2aが全相オフにされる。したがって、確実にモータ20の回転が停止した状態で、モータ20に出力される駆動信号がオフにされるので、モータ20の回転停止時の惰性回転中に回線電流が流れることを防止できる。その結果、モータ20の回転停止時の惰性回転中に異音が発生しないようにすることができ、モータ20の回転を静かに停止させることができる。
【0071】
また、本実施の形態では、メモリ37に記憶される設定情報37bを設定することにより、上述のような停止制御モードを有効にして停止制御モードに基づく制御を実行させるか、このような制御を行わずに従来のフリーラン停止が行われるようにするかを適宜選択することができる。したがって、モータ駆動制御装置1を広い用途に利用することができる。
【0072】
なお、モータ20の停止時に必ず停止制御モードを行うようにする場合には、メモリ37に、駆動停止指令信号S5の出力に関する設定情報37bを記憶させなくてもよい。すなわち、駆動停止時に、駆動停止制御回路41から必ず駆動停止指令信号S5を出力するようにすればよい。
【0074】
制御回路部は、
図2に示されるような回路構成に限定されない。本発明の目的にあうように構成された、様々な回路構成が適用できる。
【0075】
速度制御回路からのクロック停止信号ではなく、クロック信号が駆動停止制御回路に直接入力されるようにしてもよい。このとき、クロック停止信号の入力に代えて、クロック信号の入力の停止を意味するLow信号の入力を考慮するようにすればよい。
【0076】
モータ停止時に停止制御モードでの制御を要するモータを駆動させる場合などに、設定情報の入力は行われないようにしてもよい。このような場合、クロック停止信号又はクロック信号が遅延回路に直接入力されるようにし、遅延回路から正弦波駆動回路に対して直接に駆動停止指令信号が出力されるようにしてもよい。このような構成を採用することで、セレクタを省き、モータ駆動制御装置の回路構成を簡略化することも可能である。
【0077】
設定情報は、メモリに記憶されているものに限られない。制御回路部の外部から取得された情報に基づいて、駆動停止指令情報の出力に関する選択が行われるようにしてもよい。
【0078】
モータ駆動制御装置の各構成要素は、少なくともその一部がハードウェアによる処理ではなく、ソフトウェアによる処理であってもよい。
【0079】
上述のタイミングチャートの動作例(回転数など)やフローチャートの動作例は具体例であって、このような動作例に限定されない。フローチャートの各処理の間には、他の処理が行われるようにしてもよい。
【0080】
本実施の形態のモータ駆動制御装置により駆動されるモータは、3相のブラシレスモータに限られない。ホール素子の数は、3個に限られない。モータの駆動方式は、正弦波駆動方式に限定されず、例えば、矩形波駆動方式であってもよい。
【0081】
上述の実施の形態における処理の一部又は全部が、ソフトウェアによって行われるようにしても、ハードウェア回路を用いて行われるようにしてもよい。
【0082】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。