(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082685
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】電気チェーンブロック
(51)【国際特許分類】
B66D 3/20 20060101AFI20170206BHJP
【FI】
B66D3/20 K
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-217985(P2013-217985)
(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公開番号】特開2015-81147(P2015-81147A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝真
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−106188(JP,A)
【文献】
特開2012−001323(JP,A)
【文献】
特開平05−278989(JP,A)
【文献】
特開2013−010634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 3/20、1/44、1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷の巻上げ下げを駆動する電動機と、
前記電動機により駆動回転するスプロケットと、
前記スプロケットに係合される第一のリンクと、前記第一のリンクと直交する第二のリンクとが交互に連結されたロードチェーンと、
前記ロードチェーンの一端に連結されたロードブロックと、
前記ロードチェーンの巻上げ下げを操作する押しボタンを具備した電気チェーンブロックであって、
前記第二のリンクの通過回数を計測する計測装置を備えたことを特徴とする電気チェーンブロック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気チェーンブロックであって、
前記計測装置は、前記第二のリンクと接触して押し込まれるレバーと、前記レバーの押し込みを検知するセンサーとを有することを特徴とする電気チェーンブロック。
【請求項3】
請求項2に記載の電気チェーンブロックであって、
前記レバーは、前記スプロケットの頂点の上部に設けられたことを特徴とする電気チェーンブロック。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電気チェーンブロックであって、
前記センサーに接続され、センサーの検知回数をカウントし、前記第二のリンクの通過回数を計測するカウンタを備えたことを特徴とする電気チェーンブロック。
【請求項5】
請求項4に記載の電気チェーンブロックであって、
制御部で、前記カウンタでの計測された前記ロードチェーンの前記第二のリンクの通過回数とチェーンのピッチとの積を、電気チェーンブロック本体の巻上げ、巻下げ速度で除すことで総動作時間を算出することを特徴とする電気チェーンブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気チェーンブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2012−111617号公報(特許文献1)がある。この公報には「既設の電気チェーンブロックや電気ホイスト等の巻上装置に電気的改造を行うことなく、後付けで容易に取り付けることができ、巻上装置の運転動作履歴等の作動状況を精度よく測定できる巻上装置の動作状況測定装置、及び該動作状況測定装置を備えた巻上装置を提供する」と記載されている。
【0003】
上記のように電気チェーンブロックの総運転時間、総動作回数の把握は、点検時の本体寿命や各構成部品の寿命を予測するためにも非常に重要なことであり様々な方法が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−111617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の技術では既設の電気チェーンブロックや電気ホイスト等の巻上装置に電気的改造を行うことなく、荷重計、3D加速度センサー、データ処理部、電源部をユニット化することで簡易的に取り付けられ、荷重別の動作回数、動作時間を測定している。一方で荷重計、3D加速度センサー等は非常に高価な部品であるため、ユーザー側からするとコスト面で問題がある。
【0006】
本発明の目的は上記問題を解決し、簡易的で安価な総運転時間測定装置を有する電気チェーンブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、荷の巻上げ下げを駆動する電動機と、前記電動機により駆動回転するスプロケットと、前記スプロケットに係合される第一のリンクと、前記第一のリンクと直交する第二のリンクとが交互に連結されたロードチェーンと、前記ロードチェーンの一端に連結されたロードブロックと、前記ロードチェーンの巻上げ下げを操作する押しボタンを具備した電気チェーンブロックであって、前記第二のリンクの通過回数を計測する計測装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
電気チェーンブロックの総運転時間を簡易的で安価に計測可能な電気チェーンブロックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施例1による電気チェーンブロックの総運転時間測定装置の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例を図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、
図1、2を参照して説明する。
図1は本実施例にかかる本発明の電気チェーンブロック全体の外観図、
図2は本発明の総運転時間測定装置を示す。
【0012】
図1に基づき電気チェーンブロック動作原理について説明する。
電気チェーンブロック100は、巻上げ下げの駆動を行う電動機1と、電動機1に取り付けられた減速部2と、電動機の駆動を制動する電磁ブレーキ3とを備え、上吊具4、ロードブロック5、ロードチェーン6、チェーンバケット7、吊金具8、押しボタン9、スプロケット10を有する。
【0013】
電気チェーンブロック100には、吊金具8によってチェーンバケット7が吊り下げられている。また、本体部50にはスプロケット10が備えられており、スプロケット10にはロードチェーン6が掛け渡されている。ロードチェーン6の一端には、ロードブロック5が取付けられており、ロードチェーン6の他端はチェーンバケット7にロードブロック5側と反対側のロードチェーン6が収納されるように備わる。
【0014】
スプロケット10には、巻上げ下げの駆動を行う電動機1が接続されており、電動機1は通電されていない状態においては、電磁ブレーキ3によりその回転が制動状態に維持されるようになっている。
【0015】
そして、本体部50には、押しボタン9が電気通信線を通じて電動機1、電磁ブレーキ3に接続されており、押しボタン9の操作ボタンの押し込むことにより、電動機1に通電されると同時に、電磁ブレーキ3にも通電されて電磁ブレーキ3が開放し、電動機1が回転を開始するようになっている。
【0016】
この電動機1の回転は、本体部50に備えられている減速部2で所定の回転速度に減速され、最終減速段と連結されたスプロケット10により回転をロードチェーン6に伝達し、ロードチェーン6を介して、ロードブロック5の巻上げ、あるいは巻下げを行い、吊荷を巻上げ、あるいは巻下げするようになっている。また、本体部50の中央部には上吊具4が備えられ、上吊具4によって電気チェーンブロック100を懸架して設置できるようになっている。
【0017】
以下に、本実施例における電気チェーンブロックの総運転時間計測装置の構成を
図2を用いて説明する。
本体部50に備えられたスプロケット10に巻き取られるロードチェーン6は横リンクと、横リンクを約90度回転させた縦リンクとが交互につなぎ合わされてできている。そして、スプロケット10は歯車形状をしており、スプロケット10の歯車部分にはロードチェーン6の横リンクが噛み合い巻き取られるようになっている。
【0018】
また、スプロケット10の周囲にはスプロケット10の曲面に沿うようにチェーンガイド11が設けられ、チェーンガイド11の頂点部分には、レバー21が設けられている。このレバー21は、本体部50のフレーム12に取り付けられたスイッチ20に連結しており、スイッチ20は本体部50のサイドカバー13に取り付けられたカウンタ22と接続されている。カウンタ22はスイッチ20の動作回数をカウントするとともに、動作回数を表示できるようになっている。また、図示していないが、カウンタ22は電気チェーンブロックの制御部と接続されている。
【0019】
以下、本実施例の測定方法を
図1、2に基づいて説明する。押しボタン9の操作ボタンの押し込みにより電動機1に通電されると同時に、電磁ブレーキ3にも通電されて電磁ブレーキ3が開放し、電動機1が回転を開始する。電動機1の回転動力は減速機2で所定の回転速度に減速され、最終減速段と連結されたスプロケット10によって巻上、巻下げられたロードチェーン6が巻き取られる。
【0020】
スプロケット10に巻き取られた縦リンクが、チェーンガイド11に取り付けられたレバー21に接触する。縦リンクがレバー21に接触することで、電気チェーンブロック100のフレーム12に具備されているスイッチ20が一回押される。
【0021】
スイッチ20が一回押されることでサイドカバー13に具備されているカウンタ22の表示回数が増加する。図示していない制御部でカウンタ22で測定した回数と使用しているロードチェーン6の縦リンク間のピッチの積を求めることで、ロードチェーン6の総移動距離を算出することができる。そして、算出した総移動距離を本体の定格速度で除すことで総運転時間を算出することができる。カウンタ22で計測したスイッチ20の動作回数を外部に出力して、外部で上記計算を行い、総運転時間を算出することとしてもよい。
【0022】
以上のことから、電気チェーンブロックの総運転時間を簡易的で安価に計測可能な電気チェーンブロックを提供することができる。
【0023】
なお、上記例ではレバー21によってロードチェーン6の動作をカウントする例を示したが、動作回数を測定するものはこれに限定されるものではなく、例えばストロークによってロードチェーン6の動作をカウントする構成としてもよい。
【0024】
また、赤外線センサーによって、縦リンクの通過回数をカウントする構成としてもよい。いずれも、ロードチェーン6の通過回数を測定できるものであり、通過回数を表示できるものであれば、他の形状、構造でもよい。
【符号の説明】
【0025】
100…電気チェーンブロック
1…電動機 2…減速部 3…電磁ブレーキ 4…上吊具 5…ロードブロック 6…ロードチェーン 7…チェーンバケット 8…吊金具 9…押しボタンスイッチ 10…スプロケット(回転体) 11…チェーンガイド 12…フレーム 13…サイドカバー 20…スイッチ 21…レバー 22…カウンタ