(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082729
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチド、その遺伝子、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20170206BHJP
C02F 1/50 20060101ALI20170206BHJP
C07K 16/12 20060101ALI20170206BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20170206BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
C12N15/00 AZNA
C02F1/50 510D
C02F1/50 520J
C02F1/50 532Z
C07K16/12
C12N1/21
C12P21/08
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-505491(P2014-505491)
(86)(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公表番号】特表2014-513939(P2014-513939A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】CN2012073120
(87)【国際公開番号】WO2012142899
(87)【国際公開日】20121026
【審査請求日】2014年1月8日
【審判番号】不服2016-2544(P2016-2544/J1)
【審判請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】201110100775.2
(32)【優先日】2011年4月21日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201110155221.2
(32)【優先日】2011年6月10日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513264935
【氏名又は名称】畿晋▲慶▼三▲聯▼(北京)生物技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PROTEIN DESIGN LAB, LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】丘 小▲慶▼
【合議体】
【審判長】
中島 庸子
【審判官】
大宅 郁治
【審判官】
山本 匡子
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N5/00-10, 15/00-09, C12P21/00-08, C07K16/00-12, C02F1/00-50
JSTplus/JMEDplus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
DDBJ/GenBank/EMBL/PDB/UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
藍藻類を識別する能力および藍藻類と結合する能力を有し、SEQ ID No.3に示すアミノ酸配列を有することを特徴とするポリペプチド系抗体ミメティック。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチド系抗体ミメティックをエンコードすることを特徴とする遺伝子。
【請求項3】
SEQ ID No.2に示したヌクレオチド配列を有することを特徴とする請求項2に記載の遺伝子。
【請求項4】
請求項1に記載されている、藍藻類を識別する能力および藍藻類と結合する能力を有するポリペプチド系抗体ミメティックが、コリシンポリペプチドのカルボキシ末端に線状に結合することで形成され、前記コリシンがコリシンE1、Ia、Ib、A、BまたはNからなる一群から選ばれることを特徴とする藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチド。
【請求項5】
SEQ ID No.7に示すアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項4に記載の藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチド。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチドをエンコードすることを特徴とする遺伝子。
【請求項7】
SEQ ID No.6に示すヌクレオチド配列を有する請求項6に記載の遺伝子。
【請求項8】
請求項4または請求項5に記載の藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチドをエンコードする遺伝子を含むことを特徴とする発現ベクタ。
【請求項9】
請求項4または請求項5に記載の藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチドをエンコードする遺伝子を大腸菌発現系に導入し、転換した大腸菌を培養し、大腸菌から発現されたポリペプチドを分離することを特徴とする藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチドの製造方法。
【請求項10】
水の富栄養化を制御するのに用いられることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境保全に関する生物技術、特に藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチ
ド、その遺伝子、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中の過剰な栄養素が原因で藍藻類が増殖する。水が汚染されるという現象は、世界中の水生環境に最大の危害を加えるだけでなく、人類に巨大な経済損失を与え、地球生物圏に修復できない危害を加える。国内において、経済発展に伴って工業化および都会化を加速する同時に、生態環境汚染の悪化が日増しに著しくなるため、水生環境を保護および改善することは真剣に解決しなければならない重大問題である。
現有の抗菌薬は、藍藻類の増殖を抑制するのに効かない。藍藻類は系統的位置が未確定の藍色細菌と呼ばれる原核細胞である。藍藻類の増殖を抑制できる薬剤は硫酸銅などの重金属化学薬剤しかない。実際の使用状況により、その効果は限られているため、やむを得ず過量の薬剤を繰り返して使用すると、同時に水中の有用な藻類を藍藻類とともに除去され、水生植物および生態を破壊し、逆転できない永久性破壊を環境に与えるだけでなく、環境および農産物に残留した重金属化学薬剤の量が多くなる。従って、効果および安全性の高い藍藻類の増殖抑制剤を開発することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−214942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、藍藻類の増殖を抑制する新規な組み換え型ポリペプチドの遺伝子、組み換えプラスミドおよびポリペプチドを提供することを主な目的とする。上述したポリペプチドは藍藻類細胞以外の藻類細胞、植物および動物に傷害を与えることなく、藍藻類細胞を死滅させることが特徴である。本発明は上述した藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチドの製造方法を提供することをもう一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるハイブリドーマは、
寄託番号がCGMCC No.4783である。
【0006】
本発明によるモノクローナル抗体は、上述したハイブリドーマにより分泌される。
【0007】
本発明によるポリペプチド系抗体ミメティックは、藍藻類を識別する能力および藍藻類と結合する能力を有し、上述したモノクローナル抗体の抗原結合性フラグメントである、或いは、上述したモノクローナル抗体の抗原結合性フラグメントの機能区域に基づいて設計された低分子ポリペプチドである。
【0008】
上述したポリペプチド系抗体ミメティックは、SEQ ID No.3に示したアミノ酸配列を有する。
【0009】
本発明による遺伝子は、上述したポリペプチド系抗体ミメティックをエンコードする
【0010】
上述した遺伝子は、SEQ ID No.2に示したヌクレオチド配列を有する。
【0011】
本発明による藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチ
ドは、上述した藍藻類を識別する能力および藍藻類と結合する能力を有するポリペプチド系抗体ミメティックが、コリシンポリペプチドのカルボキシ末端に線状に結合することで生成される。上述したコリシンはコリシンE1、Ia、Ib、A、BまたはNから選ぶものである。
【0012】
上述した藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチ
ドは、SEQ ID No.7に示したアミノ酸配列を有する。
【0013】
本発明による遺伝子は、上述した藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチ
ドをエンコードする。
【0014】
上述した遺伝子は、SEQ ID No.6に示したヌクレオチド配列を有する。
【0015】
本発明によるベクタは、藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチ
ドをエンコードする遺伝子を含む。
【0016】
藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチドの製造方法は次の通りである。藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチ
ドをエンコードする遺伝子を大腸菌発現系に導入し、転換した大腸菌を培養し、大腸菌から発現されたポリペプチドを分離する。
【0017】
上述した藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチ
ドによって水生態の富栄養化を制御する。
【0018】
本発明による藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチ
ドは、コリシンポリペプチドと、藍藻類細胞表面抗原のポリペプチド系抗体ミメティックとを結合することによって生成される。このポリペプチド分子において、藍藻類細胞表面抗原の抗体ミメティックは、藍藻を識別する機能および藍藻と結合する機能を有する。分子中のコリシンは、藍藻を攻撃する機能を有する。抗体ミメティックは、藍藻類細胞表面抗原を識別する抗体ミメティックであるため、本発明においてのポリペプチドは、藍藻類細胞以外の水中生物に傷害を与えることなく、藍藻類細胞のみを攻撃するため、水源を汚染することはない。かつ、水を汚染する藍藻類の制御に使用される際、環境を保全し、安全を確保することができる。本発明による藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチ
ドにおいて、CGMCC No.4783のハイブリドーマにより分泌されるモノクローナル抗体の抗原結合性フラグメント(Fab)中の軽鎖および重鎖のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列によって設計された抗体ミメティック、例えば一本鎖抗体、低分子量の抗体ミメティックなどは本領域において熟知され、かつ藍藻を識別し、結合させる働きを持つ。本発明により設計された抗体ミメティックに抗原を識別する能力を持たせば本発明の目的を達成することができる。抗体ミメティックは標的生物細胞の表面まで組み換え型ポリペプチドを誘導することが主な役割であり、組み換え型ポリペプチドのうちのコリシンは標的細胞膜にイオンチャンネルを形成し、続いて標的細胞内の可溶物質を漏出させ、死滅させる。従って、上述したモノクローナル抗体に基づいて設計された抗体ミメティックが標的抗原さえ認識できれば、これらの抗体ミメティックとコリシンとを連結することによって生成される組み換え型ポリペプチドは本発明の請求範囲に属すべきである。
【0019】
本発明の好ましい実施形態において、抗体ミメティックは28個のアミノ酸からなるポリペプチドの抗体ミメティックであり、藍藻類の増殖抑制プロトプラスト表面抗原のモノクローナル抗体(CGMCC No.4783のハイブリドーマにより分泌されるモノクローナル抗体)の複数のドメインV
HCDR1、V
HFR2およびV
LCDR3を、V
HCDR1−V
HFR2−V
LCDR3の構造に基づいて連結することによって生成される。屋内外での実験結果により、この抗体ミメティックによって生成された藍藻類の増殖抑制ポリペプチドは水性媒体中で作用し、かつ藍藻類細胞表面抗原を見付ける生物学的活性を持つことができる。28個のアミノ酸からなるポリペプチドの抗体ミメティックはクローニングおよび発現が簡単で元の抗体と同じに識別に働く活性を持つため、組み換え型ポリペプチドのうちのコリシンを藍藻類細胞膜まで誘導し、藍藻類細胞膜にイオンチャンネルを形成し、藍藻類細胞を殺傷することができる。一方、組み換え型ポリペプチドは現有の水汚染処理剤(例えば硫酸銅など)に優れ、生態環境に対する安全性を有する。
【0020】
本発明において、組み換え型ポリペプチドのうちのコリシンはイオンチャンネルを自発的に生じさせるコリシンE1、Ia、Ib、A、BまたはNから選ぶことができる。これらのコリシンは細胞膜にイオンチャンネルを生成し、殺菌作用を果たすことが共通点である。本発明の実施形態はコリシンIaと、藍藻類に対する抗体ミメティックとによって生成された組み換え型ポリペプチドを対象物として実験するが、これに限らない。つまり、本発明の概念に基づいてこれらのコリシンと、藍藻類に対する抗体ミメティックとを線状に繋げることによって生成された組み換え型ポリペプチドは藍藻類を死滅させる目的を達成することができる。
【0021】
本発明による組み換え型ポリペプチドの遺伝子組み換えプラスミドの製造方法は、エンコードされた抗体ミメティックのヌクレオチド配列を、二本鎖オリゴヌクレオチドに点変異が起こる技術に基づいてコリシンのカルボキシ末端に挿入し、組み換えプラスミドを生成する。まずコリシンがコリシンIaである場合、エンコードされた抗体ミメティックのヌクレオチド配列をIa遺伝子の626目のアミノ酸の後(カルボキシ末端)に挿入し、組み換えプラスミドを生成する。組み換えプラスミドの元、即ち、Promega社製の業務用組み換えプラスミドpSELECT−1はコリシンIaとそれに対応する免疫(Immunity)タンパク質の遺伝子を搭載し、抗体ミメティックの遺伝子によって設計された数対のプライマーを有し、配列が第1実施形態に示したとおりである。続いて、二本鎖オリゴヌクレオチドに点変異が起こる技術に基づいてStrategene社の薬剤箱のマニュアルの通りに組み換えプラスミド、例えばpCHCcyanoMA1を製造する。
【0022】
本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチドの製造方法は、次の通りである。エンコードされた抗体ミメティックの遺伝子とコリシン遺伝子とを繋げ、エンコードされた藍藻類増殖を抑制する遺伝子組み換え型ポリペプチドの組み換えプラスミドを生成する。続いて、工学的大腸菌細菌にその組み換えプラスミドを染み込ませ、藍藻類の増殖を抑制する組み換え型ポリペプチドのエンジニアリング・バクテリア細胞を生成する。続いてイオン交換カラムによって分離浄化を行えば藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが完成する。
【0023】
本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチドは水汚染処理に適用できる。許容される担体又は賦形剤または別の成分を本発明のポリペプチドに添加し、環境に適用する薬物組成物を製作することができる。そのメカニズムは次の通りである。ポリペプチドのうちの藍藻類細胞表面抗原と識別できる抗体ミメティックによって藍藻類細胞膜の近くまでコリシンを誘導し、コリシンのイオンチャンネル構造の疎水性部位を藍藻類細胞膜に差し込み、続いてコリシンのイオンチャンネル構造によって藍藻類細胞膜にイオンチャンネルを生じさせ、藍藻類細胞の可溶物質を漏出させ、藍藻類細胞を死滅させれば藍藻類細胞を殺す目的を達成することができる。
【0024】
従来の藍藻類の増殖抑制薬物に対し、本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチドは、ターゲットが特定されるため、処理過程においてターゲット以外の藻類、植物および動物細胞を攻撃することがない。かつ毒性が低く、不良な反応が少ない。一方、本発明は藍藻類細胞膜にイオンチャンネルを形成し、藍藻類細胞を殺傷するため、藍藻類の増殖抑制ポリペプチドのイオンチャンネルによって藍藻類細胞を漏出および死滅させる短い時間内に、藍藻類の増殖抑制ポリペプチドのイオンチャンネルによって欠損が生じた藍藻類細胞膜を、変異遺伝子−タンパク質を発現する方式によって修復することが難しい。つまり、藍藻類細胞は本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチドに対する耐薬性が低い。従って本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチドは応用利用分野で期待されると思われる。
【0025】
ハイブリドーマ
寄託情報は次の通りである。
寄託番号は、CGMCC No.4783である。
名称は、藍藻類細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマである。
寄託日付は、2011年4月20日である。
寄託機構は、中国微生物菌種
寄託管理委員会の普通微生物中心である。
寄託機構の住所は、北京市朝陽区北辰西路1号院3号である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】抗体ミメティックとコリシンIa遺伝子を含有した組み換えプラスミドpCHCcyanoMA1の構造を示す模式図である。
【
図2】藍藻類の増殖抑制ポリペプチドの構造を示す模式図である。
【
図3】一部分の遺伝子N−C順序が逆の抗体ミメティックとコリシンIa遺伝子を含有した組み換えプラスミドpCHCcyanoMA2の構造を示す模式図である。
【
図4A】本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが液体培養基で成長する緑膿藻を抑制する実験結果において対照液を示す図である。
【
図4B】本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが液体培養基で成長する緑膿藻を抑制する実験結果において、50μg/mlのアンピシリンの抑制結果を示す図である。
【
図4C】50μg/mlの広域スペクトルフェロモニシン(Ph−NM)の抑制結果を示す図である。
【
図4D】50μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)の抑制結果を示す図である。
【
図4E】50μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(2)の抑制結果を示す図である。
【
図5】本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)が液体培地で成長する緑膿藻を抑制する実験結果を示す写真である。Aは48時間経過後の結果、Bは72時間経過後の結果、Cは96時間経過後の結果である。写真の左から順によって配列されたフラスコの列において、一つ目のフラスコは比較用である。二つ目のフラスコは0.1μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)、三つ目のフラスコは0.5μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)、四つ目のフラスコは1μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)、五つ目のフラスコは5μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)、六つ目のフラスコは10μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)である。
【
図6】本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)が液体培地で成長するイカダモを抑制する実験において、10日を経過した後の結果を示す写真である。写真の左から順によって配列されたフラスコの列において、一つ目のフラスコは比較用である。二つ目のフラスコは1μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)、三つ目のフラスコは5μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)、四つ目のフラスコは10μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)、五つ目のフラスコは15μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)、六つ目のフラスコは20μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)である。
【
図7】本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)が液体培地で成長する緑膿藻およびイカダモを抑制する実験結果を示すグラフである。上方は緑膿藻抑制実験の結果を示すグラフである。下方はイカダモ抑制実験の結果を示すグラフである。
【
図8A】本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが液体培地で成長する緑膿藻を抑制する実験結果を示す写真である。写真の左側のフラスコは比較用である。写真の右側のフラスコは35μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)を使用した結果である。
【
図8B】本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが液体培地で成長するアナベナを抑制する実験結果を示す写真である。写真の左側のフラスコは比較用である。写真の右側のフラスコは35μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)を使用した結果である。
【
図8C】本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが液体培地で成長するクロレラを抑制する実験結果を示す写真である。写真の左側のフラスコは比較用である。写真の右側のフラスコは35μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)を使用した結果である。
【
図8D】本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが液体培地で成長するイカダモを抑制する実験結果を示す写真である。写真の左側のフラスコは比較用である。写真の右側のフラスコは35μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)を使用した結果である。
【
図9】本発明による藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが藍藻類により汚染された自然水の汚染を抑制する実験を行った後の結果を示す写真である。
図9において、Aは対照液、Bは1μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)、Cは5μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)、Dは10μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)、Eは0.7μg/mlの硫酸銅である。
【
図10A】
図9に示した実験結果の一部分を示すグラフであり、水中での光学密度の変化を示すグラフである。
【
図10B】
図9に示した実験結果の一部分を示すグラフであり、水中のクロロフィルの変化を示すグラフである。
【
図10C】
図9に示した実験結果の一部分を示すグラフであり、水中のpHの変化を示すグラフである。
【
図10D-1】
図9に示した実験結果の一部分を示すグラフであり、比較前の水中の藻類グループの変化を示すグラフである。
【
図10D-2】
図9に示した実験結果の一部分を示すグラフであり、1μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)によって処理した後の結果を示すグラフである。
【
図10D-3】
図9に示した実験結果の一部分を示すグラフであり、0.7μg/mlの硫酸銅によって処理した後の結果を示すグラフである。
【
図11A】
図9に示す藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが藍藻類により汚染された自然水の汚染を抑制する実験において、顕微鏡によって400倍拡大し、一日目の変化を観察した結果を示す写真であり、処理前の状態と、1μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)よって水中のアナベナを処理した後の結果と、0.7μg/mlの硫酸銅によって水中のアナベナを処理した後の結果とを比較した写真である。
【
図11B】
図9に示す藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが藍藻類により汚染された自然水の汚染を抑制する実験において、顕微鏡によって400倍拡大し、二日目の変化を観察した結果を示す写真であり、処理前の状態と、1μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)よって水中のアナベナを処理した後の結果と、0.7μg/mlの硫酸銅によって水中のアナベナを処理した後の結果とを比較した写真である。
【
図11C】
図9に示す藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが藍藻類により汚染された自然水の汚染を抑制する実験において、顕微鏡によって400倍拡大し、三日目の変化を観察した結果を示す写真であり、処理前の状態と、1μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)よって水中のアナベナを処理した後の結果と、0.7μg/mlの硫酸銅によって水中のアナベナを処理した後の結果とを比較した写真である。
【
図11D】
図9に示す藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが藍藻類により汚染された自然水の汚染を抑制する実験において、顕微鏡によって400倍拡大し、四日目の変化を観察した結果を示す写真であり、処理前の状態と、1μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)よって水中のアナベナを処理した後の結果と、0.7μg/mlの硫酸銅によって水中のアナベナを処理した後の結果とを比較した写真である。
【
図11E】
図9に示す藍藻類の増殖抑制ポリペプチドが藍藻類により汚染された自然水の汚染を抑制する実験において、顕微鏡によって400倍拡大し、五日目の変化を観察した結果を示す写真であり、処理前の状態と、1μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)よって水中のアナベナを処理した後の結果と、0.7μg/mlの硫酸銅によって水中のアナベナを処理した後の結果とを比較した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1実施形態は、藍藻類の増殖抑制ポリペプチドのプラスミドのメカニズムを発現し、組み換え型藍藻類の増殖抑制ポリペプチドを製造する。
材料はCGMCC No.4783のハイブリドーマである。
ステップは次の通りである。
【0028】
ステップ1は、抗体ミメティックのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を明確にする。まずハイブリドーマにより分泌されるモノクローナル抗体を収集し、通常の方法に基づいてモノクローナル抗体をテストし、抗原結合性フラグメント(Fab)中の重鎖および軽鎖配列を明確にし、そののち抗原相補性決定領域のアミノ酸配列に基づいてSEQ ID NO.3の如き抗体ミメティックのアミノ酸配列を求める。抗体ミメティックをエンコードするヌクレオチド配列をSEQ ID NO.2に示す。
【0029】
ステップ2は、本実験室でコリシンIaと免疫(Immunity)タンパク質の遺伝子が搭載されたPromega社のpSELECT−1プラスミドをもとに、二本鎖オリゴヌクレオチドに点変異が起こる技術((QuickChange
TM Kit, Strategene社)に基づいてエンコードされた藍藻類に対する抗体ミメティックの遺伝子(配列表SEQ ID NO.2の如きヌクレオチド配列)を、コリシンIa遺伝子のI626位置に差し込み、組み換えプラスミドpCHCcyanoMA1(
図1参照)を生成する。続いて、E.coli B834 (DE3)エンジニア細菌に上述した組み換えプラスミドを染み込ませ、ポリペプチドを発現することによって配列表SEQ ID NO.7の如き藍藻類の増殖抑制ポリペプチドを生成する。藍藻類の増殖抑制ポリペプチド、即ち以下の藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)は、分子量が約70,000である。
【0030】
薬剤箱のマニュアルStrategene QuickChange Site−Directed Mutagenesis Kit (catalog#200518) の通りに変異を導入する。
【0031】
1、以下の点変異に反応する物質を用意する。
5μlの10xbuffer
2μl(10ng)の野生型コリシンIaプラスミド
1μl(125ng)の設計した5’−3’オリゴヌクレオチドプライマー
1μl(125ng)の設計した3’−5’オリゴヌクレオチドプライマー
1μlのdNTP
50μl再蒸留水
1μlのpfu
(プラスミド、プライマーおよび再蒸留水以外の物質は箱内の薬剤である。)
【0032】
2、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を進める。増幅条件は変性95℃35秒後、アニーリング53℃70秒後、伸長68℃17分のサイクルを20回行う。
【0033】
3、1μlのDpnIエンドヌクレアーゼを加え、母体DNA鎖を(37℃で1時間)消化させ、1μlの反応物と50μlのHMS174コンピテント細胞とを氷で30分間冷却させ、42℃の熱衝撃を45秒行い、氷の中に2分間入れて置く。
【0034】
4、0.5mlのNZY培地を加え、そののち攪拌速度220rpm、温度37℃で細菌を1時間振り、その中から50から100μlの反応物を取り出し、プレート(LB培地に1%の寒天と50μg/mlのアンピシリンを加え、37℃で一晩寝かす)に敷き並べる。
【0035】
5、18時間後、菌を選び出し、続いてQiagene,Gibco社らの業務用薬剤箱によってプラスミドを分離し、変異が成功したか否かを測定する。
【0036】
6、50ngのプラスミドと、50μlのE.coli B834 (DE3)エンジニア細菌受容性細胞とを氷で30分間冷却させ、42℃の熱衝撃を30秒行い、その中から50から100μlの反応物を取り出し、それに0.5mlのSOC培地を加え、続いて攪拌速度220rpm、温度37℃で細菌を1時間振り、そののち、プレート(LB培地に1%の寒天と50μg/mlのアンピシリンを加える)に敷き並べ、37℃で培養し、12から16時間後にコロニーを取り出す。
【0037】
7、攪拌速度250rpm、温度37℃で8から16リットルのLB培地を6から8時間振り、菌を大量増殖させる。遠心分離法によって菌を沈殿する工程(温度4℃、6000g、20分間、pHが9.0で温度が4℃の50mM Borateおよび2mM EDTA)を進む。まず50から80mlの浮遊菌に250μlの0.2 M PMSFを加え、超音波破砕処理(4℃、400W、2分間)を行い、そののち高速遠心分離処理(4℃、75000g、1.5時間)を行い、菌の組織片を沈殿させる。続いて上澄み液を取り出し、それに硫酸ストレプトマイシンを加えてDNAを沈殿させ、分子量が15,000の透析袋に入れ、温度4℃の50mM Borateおよび2mM EDTAを含有した10リットルのpH9.0緩衝液によって一晩透析する。続いて上澄み液からCMカラム(Amersham Biosciences)を取り出し、そののち50mM Borate、0.3 M のNaClおよび2mM EDTAを含有した温度4℃のpH9.0緩衝液で溶出を行えば、組み換えられた藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)(
図2参照)を求めることができる。
【0038】
pCHCcyanoMA1プラスミドの抗体ミメティックの遺伝子を製造するために具体的に設計した二本鎖オリゴヌクレオチド配列は次の通りである。
【0039】
pCHCcyanoMA1
(1)
5’−3’
gcg aat aag ttc tgg ggt att TCT TAT TGG ATG CAG TGG GTT AAG CAA taa ata aaa tat aag aca ggc
3’−5’
gcc tgt ctt ata ttt tat tta TTG CTT AAC CCA CTG CAT CCA ATA AGA aat acc cca gaa ctt att cgc
(2)
5’−3’
tat tgg atg cag tgg gtt aag caa AGA CCG GGG CAA GGG CTG GAG TGG ATT GGC taa ata aaa tat aag aca ggc
3’−5’
gcc tgt ctt ata ttt tat tta GCC AAT CCA CTC CAG CCC TTG CCC CGG TCT ttg ctt aac cca ctg cat cca ata
(3)
5’−3’
ggg caa ggg ctg gag tgg att ggc CAG CAG TAT YGG TCT ACG CCC CCG TGG ACG taa ata aaa tat aag aca ggc
3’−5’
gcc tgt ctt ata ttt tat tta CGT CCA CGG GGG CGT AGA CCA ATA CTG CTG gcc aat cca ctc cag ccc ttg ccc
【0040】
第2実施形態は、藍藻類の増殖抑制ポリペプチドの対照的なプラスミドのメカニズムを発現し、対照的な組み換え型藍藻類の増殖抑制ポリペプチドを製造する。
本実験室でコリシンIaと免疫(Immunity)タンパク質の遺伝子が搭載されたPromega社のpSELECT−1プラスミドをもとに、二本鎖オリゴヌクレオチドに点変異が起こる技術((QuickChange
TM Kit, Strategene社)に基づいてエンコードされた藍藻類に対する抗体ミメティックの遺伝子(配列表SEQ ID NO.4の如きヌクレオチド配列)を、コリシンIa遺伝子のI626位置に差し込み、組み換えプラスミドpCHCcyanoMA2(
図3参照)を生成する。続いて、E.coli B834 (DE3)エンジニア細菌に上述した組み換えプラスミドを染み込ませ、ポリペプチドを発現することによって配列表SEQ ID NO.9の如き藍藻類の増殖抑制ポリペプチドを生成する。藍藻類の増殖抑制ポリペプチド、即ち以下の藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(2)は、分子量が約70,000である。
【0041】
pCHCcyanoMA2プラスミドの抗体ミメティックの遺伝子を製造する際、二本鎖オリゴヌクレオチド配列は第1実施形態の方法によって設計される。その製造方法は第2実施形態と同じである。
【0042】
第3実施形態は、藍藻類の増殖抑制ポリペプチドによって緑膿藻に抑制実験を行う。
実験(1)
ステップ1は、供試藍藻を用意する。藍藻は中国科学院水生生物研究所から購入したFACHB−978緑膿藻(Microcustis aeruginosa)である。
【0043】
供試藻類を培養する方法は、250mlのBG11培地が入れてある500mlフラスコの中に藻類株を接種する。接種前の藻類株の細胞密度は5 × 10
4 個/mLである。汚染を防止するためにフラスコの開口部を通気性のあるラップで封じる。培養温度は25℃、日照強度は(2500±10%)Lux、明暗比は12h/12hである。日照を均等にするために、2から3時間ごとに実験群のフラスコを振り、位置を変える。接種から五つ目の日になると、24時間ごとにサンプルを取り、測定する。細胞密度が10
6 個/mL前後に達すると、次のステップに進む。
【0044】
ステップ2は、試験管A、B、C、D、Eに予め製作した藍藻含有液体を1mlずつ加え、そののち抑制剤を加える。試験管Aは対照液である。試験管Bは50μg/mlのアンピシリンである。試験管Cは50μg/mlの広域スペクトルフェロモニシン(200910092128.4号 の特許明細書に記載されたPh−AM1)である。試験管Dは50μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)である。試験管Eは50μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(2)である。試験管A、B、C、D、Eをインキュベーターに入れ、中低速度で振り、12時間培養し、そののちアクリジンオレンジ(50nM)およびヨウ化プロピジウム(600nM)を加え、30分間保温する。続いて数マイクロリットルの量を吸い上げ、ガラスに置き、蛍光顕微鏡(型番がNikon 90i、DM505 および DM565のフィルター)によって染色された藍藻の状態を観察する。
【0045】
結果は
図4に示したとおりである。結果により、藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)は培養した緑膿藻を殺傷でき、藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(2)、アンピシリンおよびPh−NMは培養した緑膿藻に全然作用しないことが判明した。
【0046】
実験(2)
ステップ1は実験(1)のステップ1と同じである。
ステップ2は、供試藻類を接種した六つの500mlフラスコに藍藻類の増殖抑制ポリペプチドを濃度勾配によって加える。一方、それぞれ緑膿藻に加えた藍藻類の増殖抑制ポリペプチドの量は0、0.1、0.5、1、5、10 μg/mlである。藍藻を抑制する状況は毎日観察する。
【0047】
結果は
図5に示したとおりである。実験群に使った藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)の濃度は異なり、フラスコ内の緑膿藻を含有した液体が緑色から浅黄色に変わる時間の長さはポリペプチドの濃度に正比例する。肉眼で観察した結果により、実験群は72時間以内に供試緑膿藻を効果的に死滅させることができることが判明した。
上述した結果により、藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)は藍藻類を狙って殺傷する有効性を有することに対し、藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(2)は藍藻に殆ど作用しないことが判明した。
【0048】
実験(3)
材料は、中科院水生生物研究所から購入したFACHB−417イカダモ(Scenedesmus obliqnus)である。実験(1)のステップ1の方法に基づいて供試藻類を培養する。
【0049】
ステップ2は、六つの供試藻類を接種した六つの500mlフラスコに藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)を濃度勾配によって加える。加えた量は0、1、5、10、15、20μg/mlである。イカダモ増殖を抑制する状況は毎日観察する。
【0050】
結果は
図6に示したとおりである。加えた藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)の量は緑膿藻の処理に使用した量の10倍であるが、実験時間中(190時間)に肉眼で観察した結果により、藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)はイカダモに殺傷作用が何も起こらないことが判明した。
【0051】
実験(4)
実験(1)から実験(3)のフラスコから0.1mlの培養液を取り出し、血球計算盤に置き、続いて顕微鏡下で観察および計算を行う。
図7は藻類細胞を計算した結果および比較対照した結果である。
図7に示すように、1μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)は72時間内に供試緑膿藻を死滅させることができるが、供試イカダモには何も作用しない。
【0052】
第4実施形態は、藍藻類の増殖抑制ポリペプチドによって緑膿藻、アナベナ、クロレラおよびイカダモの液体培養地に実験を行う。
【0053】
緑膿藻、アナベナ、クロレラおよびイカダモ、即ち供試藻類は中科院水生生物研究所から購入したものである。藻類を培養する方法および処理剤を添加する方法は第3実施形態の実験(1)のステップ(1)と同じである。
【0054】
藻類の細胞密度が10
6 個/mLに達する40mlの培養液をそれぞれの300mlフラスコに分けて入れる。続いて、A即ち同量の対照液およびB即ち35μg/mlの藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)を別々に加え、4日間培養し、増殖状況を観察する。
【0055】
結果は
図8に示したとおりである。緑膿藻含有培養液およびアナベナ含有培養液は24時間後から色が薄く変わり始まり、四日目になると澄明になる。クロレラ含有培養液およびイカダモ含有培養液は色および濁りが全然変化しない。この結果により、藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)は緑膿藻およびアナベナの増殖を抑制できるが、クロレラおよびイカダモの増殖を抑制できない。
以上の実験結果により、藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)は藍藻類を狙って殺傷する有効性を有することが判明した。
【0056】
第5実施形態は、藍藻類の増殖抑制ポリペプチドによって自然水中の藍藻類を死滅させる実験を行う。
【0057】
自然水は、藍藻類から深刻に汚染されたエビ養殖池(蘇州の陽澄湖)から収集したものである。60*40*30cmのプラスチック製容器に25から35リットルの自然水を分けて投入し、20分ごとにポンプで空気を10分間送り込む。続いて、自動加熱器の温度を27℃に調整し、日照強度を(2500±10%)luxに設定し、明暗比を12h/12hに設定し、毎日サンプルを取り、供試液のpH値、650nmの吸光度およびクロロフィルa吸収値(
図9参照)を測定する。
【0058】
分光光度計の中にサンプルを入れ、650nmの吸光度を測定する。(
図10参照)
熱エタノール−凍結融解の繰り返し−分光光度法の方式によってクロロフィルa量を測定する。(
図10参照)
【0059】
分光光度計によって665nmの吸光度および700nmの吸光度を測定し、クロロフィルaの濃度を計算する。数式は下記の通りである。
[Chla]=[12.12 (D664−D750)−1.58(D647−D750)−0.08(D630 − D750)]VE/VS・d。
【0060】
対照グループは、水中のpH値、650nmの吸光度およびクロロフィルa吸収値が実験期間中に全然下がらない。それに対し、藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)実験群および硫酸銅実験群は、水中のpH値、650nmの吸光度およびクロロフィルa吸収値が二日目から明らかに下がる。
【0061】
毎日30mlのサンプルを取り、ホルマリンで固定し、そののち遠心分離法によって10倍に濃縮し、その中から0.1mlの量を取り出し、血球計算盤に入れて顕微鏡下で観察および計算を行う(
図11参照)。経過観察で一日目に対照グループ、藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)実験群および硫酸銅実験群にはアナベナが大量増殖し、二日目から藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)実験群および硫酸銅実験群にはアナベナが大幅に減少し、破片になる。五日目になると、藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)実験群および硫酸銅実験群にはアナベナが消えてしまう。対照グループには依然としてアナベナが繁茂する。
【0062】
藻類の状況および変化を顕微鏡で観察すると、同時に各種の藻類を計算することによって供試液中の優越性がある浮遊植物の動態および変化(
図10参照)を確認する。対照グループの水中にはアナベナおよび緑膿藻が優越性を有する。藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)実験群の水中にはアナベナおよび緑膿藻が徐々に減少するのに対し、クロレラが優越性を有する。硫酸銅実験群の水中にはアナベナおよび緑膿藻が徐々に減少するのに対し、別の藍藻およびユレモが優越性を有する。
【0064】
結果は
図9から
図11および表1に示したとおりである。結果により、0.7ppmの硫酸銅は選択せずあらゆる藻類を死滅させてしまうのに対し、藍藻類の増殖抑制ポリペプチド(1)は供試液中の藍藻類(アナベナおよび緑膿藻)を狙って増殖を抑制できるだけでなく、それ以外の浮遊植物の増殖に影響を与えることがない。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]