(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
<硬化性エポキシ樹脂組成物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)と、下記式(1)
【化4】
[式中、R
1、R
2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す]
で表されるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、硬化剤(C)とを必須成分として含む樹脂組成物である。
【0022】
[脂環式エポキシ化合物(A)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における脂環式エポキシ化合物(A)は、分子内(一分子中)に脂環(脂肪族環)構造とエポキシ基とを少なくとも有する化合物である。上記脂環式エポキシ化合物(A)としては、具体的には、(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物、(ii)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物などが挙げられる。但し、脂環式エポキシ化合物(A)には、後述の分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体は含まれないものとする。
【0023】
上述の(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有する化合物としては、公知乃至慣用のものの中から任意に選択して使用することができる。中でも、上記脂環エポキシ基としては、シクロヘキセンオキシド基が好ましい。
【0024】
上述の(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有する化合物としては、透明性、耐熱性の観点で、シクロヘキセンオキシド基を有する化合物が好ましく、特に、下記式(I)で表される化合物(脂環式エポキシ化合物)が好ましい。
【化5】
【0025】
上記式(I)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する2価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、これらが複数個連結した基などが挙げられる。
【0026】
上記式(I)中のXが単結合であるエポキシ化合物(A)としては、3,4,3',4'−ジエポキシビシクロヘキサンが挙げられる。
【0027】
上記2価の炭化水素基としては、炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基などが挙げられる。炭素数が1〜18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基などが挙げられる。上記2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基などの2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)などが挙げられる。
【0028】
上記連結基Xとしては、特に、酸素原子を含有する連結基が好ましく、具体的には、−CO−、−O−CO−O−、−COO−、−O−、−CONH−;これらの基が複数個連結した基;これらの基の1又は2以上と2価の炭化水素基の1又は2以上とが連結した基などが挙げられる。2価の炭化水素基としては上記で例示したものが挙げられる。
【0029】
上記式(I)で表される脂環式エポキシ化合物の代表的な例としては、下記式(I−1)〜(I−10)で表される化合物などが挙げられる。なお、下記式(I−5)、(I−7)中のl、mは、それぞれ1〜30の整数を表す。下記式(I−5)中のRは炭素数1〜8のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。これらの中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(I−9)、(I−10)中のn1〜n6は、それぞれ1〜30の整数を示す。
【化6】
【化7】
【0030】
上述の(ii)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物としては、例えば、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【化8】
【0031】
式(II)中、R′はp価のアルコールからp個の−OHを除した基であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R′−(OH)
p]としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール等の多価アルコールなど(炭素数1〜15のアルコール等)が挙げられる。pは1〜6が好ましく、nは1〜30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの( )内(丸括弧内)の基におけるnは同一でもよいし、異なっていてもよい。上記化合物としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)などが挙げられる。
【0032】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において、脂環式エポキシ化合物(A)は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、上記脂環式エポキシ化合物(A)としては、例えば、商品名「セロキサイド2021P」、「セロキサイド2081」(以上、(株)ダイセル製)などの市販品を使用することもできる。
【0033】
上記脂環式エポキシ化合物(A)としては、上記式(I−1)で表される3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、商品名「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)が特に好ましい。
【0034】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における脂環式エポキシ化合物(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物(100重量%)に対して、5〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜60重量%、さらに好ましくは15〜50重量%である。脂環式エポキシ化合物(A)の含有量が5重量%未満では、硬化物の耐熱性、耐光性、耐熱衝撃性、耐吸湿リフロー性が低下する場合がある。
【0035】
硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(全エポキシ化合物)(100重量%)に対する脂環式エポキシ化合物(A)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは20〜92重量%、さらに好ましくは30〜90重量%である。脂環式エポキシ化合物(A)の含有量が10重量%未満では、硬化物の耐熱性、耐光性、耐熱衝撃性、耐吸湿リフロー性が低下する場合がある。
【0036】
[モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物におけるモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)は、下記式(1)で表される化合物である。モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)は、特に、硬化物の靭性を向上させ、耐熱衝撃性や耐吸湿リフロー性(特に、吸湿後のリフロー工程での加熱処理における耐クラック性(クラックを生じにくい特性))を向上させる役割を担う。
【化9】
【0037】
上記式(1)中、R
1、R
2は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。上記式(1)中のR
1及びR
2は、水素原子であることが特に好ましい。
【0038】
上記モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の代表的な例としては、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、1−アリル−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ジグリシジルイソシアヌレート、1−(2−メチルプロペニル)−3,5−ビス(2−メチルエポキシプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。なお、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0039】
なお、上記モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)は、アルコールや酸無水物などのエポキシ基と反応する化合物を加えてあらかじめ変性して用いてもよい。
【0040】
上記モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量%)に対して、5〜60重量%が好ましく、より好ましくは8〜55重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の含有量が60重量%を超えると、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の硬化性エポキシ樹脂組成物における溶解性が低下し、硬化物の物性に悪影響が及ぶ場合がある。一方、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の含有量が5重量%未満であると、硬化物の耐熱衝撃性や耐吸湿リフロー性が低下する場合がある。
【0041】
また、脂環式エポキシ化合物(A)とモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の合計量(100重量%)に対するモノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、5〜60重量%が好ましく、より好ましくは8〜55重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の含有量が60重量%を超えると、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の硬化性エポキシ樹脂組成物における溶解性が低下し、硬化物の物性に悪影響が及ぶ場合がある。一方、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)の含有量が5重量%未満であると、硬化物の耐熱衝撃性や耐吸湿リフロー性が低下する場合がある。
【0042】
[硬化剤(C)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における硬化剤(C)は、エポキシ基を有する化合物を硬化させる働きを有する化合物である。
【0043】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化剤(C)としてメチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物を必須成分として含む。これにより、特に、硬化物の耐吸湿リフロー性及び耐熱衝撃性が向上する。なお、本明細書における「メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物」は、ノルボルナン環上のメチル基の結合位置が異なる各異性体の総称である。メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の代表的な例としては、5−メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0044】
メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物には、エキソ体とエンド体の立体異性体が存在する。メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物のエキソ体の存在比率が増加すると室温で液状となりやすいため、硬化剤(C)としての取り扱いが容易となる。従って、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物は、エキソ体を必須成分とすることが好ましい。より詳しくは、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物中のエキソ体の存在比率[エキソ体/(エキソ体+エンド体)]は、40重量%以上が好ましく、より好ましくは50重量%以上である。エキソ体の存在比率が40重量%未満であると、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物が室温で固体となりやすく、取り扱いが困難となる場合がある。
【0045】
メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物は、メチルノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を水素化することにより得られる。特に、エキソ体の存在比率を増加させて室温で液状とする観点からは、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の製造過程においてエンド体の少なくとも一部をエキソ体に異性化することが好ましい。より詳しくは、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物は、メチルノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物の一部又は全部を酸触媒の存在下でメチレンノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物へと異性化し、次いで水素化することによって製造することが好ましい(例えば、特開平6−25207号公報参照)。
【0046】
硬化剤(C)(硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤(C)の全量:100重量%)中のメチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の含有量(割合)は、特に限定されないが、5〜80重量%が好ましく、より好ましくは10〜70重量%、さらに好ましくは20〜60重量%である。メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の含有量が5重量%未満であると、硬化物の耐吸湿リフロー性及び耐熱衝撃性が低下する場合がある。一方、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の含有量が80重量%を超えると、相対的に下記式(2)で表される化合物の含有量が少なくなり、硬化物の耐熱衝撃性が低下する場合がある。
【0047】
また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化剤(C)として下記式(2)で表される化合物(グルタル酸無水物又はその誘導体)を必須成分として含む。これにより、特に、硬化物の耐吸湿リフロー性及び耐熱衝撃性が向上する。
【化10】
【0048】
上記式(2)中、R
11〜R
16は、水素原子又はアルキル基を示す。R
11〜R
16としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基などの直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。中でも、R
11〜R
16としては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。なお、式(2)におけるR
11〜R
16は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
上記式(2)で表される化合物としては、具体的には、例えば、グルタル酸無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物、2,4−ジメチルグルタル酸無水物、3−メチルグルタル酸無水物、3−エチルグルタル酸無水物、2,2−ジメチルグルタル酸無水物、2,2−ジエチルグルタル酸無水物、3,3−ジメチルグルタル酸無水物、3,3−ジエチルグルタル酸無水物、2−エチル−4−メチルグルタル酸無水物などが挙げられる。上記式(2)で表される化合物としては、例えば、商品名「jERキュア YH1120」(三菱化学(株)製)などの市販品を使用することもできる。なお、上記式(2)で表される化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0050】
なお、上記2,4−ジエチルグルタル酸無水物は、下記式で表される。
【化11】
【0051】
硬化剤(C)(硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤(C)の全量:100重量%)中の上記式(2)で表される化合物の含有量(割合;2種以上を含む場合にはこれらの合計量)は、特に限定されないが、1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは10〜40重量%である。上記式(2)で表される化合物の含有量が1重量%未満であると、硬化物の耐吸湿リフロー性及び耐熱衝撃性が低下する場合がある。一方、上記式(2)で表される化合物の含有量が60重量%を超えると、硬化物の耐熱性が低下する場合がある。
【0052】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化剤(C)として、さらにノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物を含んでいてもよい。ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物には、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物と同様に、エキソ体とエンド体の立体異性体が存在する。ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物のエキソ体の存在比率が増加すると室温で液状となりやすいため、硬化剤(C)としての取り扱いが容易となる。従って、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物は、エキソ体を必須成分とすることが好ましい。より詳しくは、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物中のエキソ体の存在比率[エキソ体/(エキソ体+エンド体)]は、30重量%以上が好ましく、より好ましくは40重量%以上である。エキソ体の存在比率が30重量%未満であると、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物が室温で固体となりやすく、取り扱いが困難となる場合がある。
【0053】
ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物は、シクロペンタジエンと無水マレイン酸のディールスアルダー反応により得られるノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を水素化することによって得られる。但し、通常、シクロペンタジエンと無水マレイン酸のディールスアルダー反応により得られるノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物は、エンド体の存在比率が95重量%以上であるため、150℃以上に加熱してエキソ体に異性化(熱異性化)させた後に水素化反応を行うことで、エキソ体の存在比率が多いノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物(例えば、エキソ体の存在比率が30重量%以上のノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物)を生成させることができる。
【0054】
なお、硬化剤(C)として、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物及びノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物を含む場合、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物とノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の混合物を用いることができる。上記混合物は、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物とノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物とを混合することによって調製することもできるし、メチルノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物とノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を混合して得られた混合物を、異性化及び水素化することによって製造することもできる。
【0055】
硬化剤(C)(硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤(C)の全量:100重量%)中のノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の含有量(割合)は、特に限定されないが、0〜30重量%が好ましく、より好ましくは0〜25重量%、さらに好ましくは0〜20重量%である。ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の含有量が30重量%を超えると、硬化物の耐吸湿リフロー性が低下する場合がある。特に、硬化剤(C)としてノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物を含む場合、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物とノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の含有量の合計(合計含有量)は、特に限定されないが、硬化剤(C)の全量(100重量%)に対して、50〜99重量%が好ましく、より好ましくは60〜90重量%である。合計含有量が50重量%未満であると、硬化物の耐吸湿リフロー性及び耐熱衝撃性が低下する場合がある。一方、合計含有量が99重量%を超えると、相対的に上記式(2)で表される化合物の含有量が少なくなり、硬化物の耐熱衝撃性が低下する場合がある。
【0056】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化剤(C)としてメチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、上記式(2)で表される化合物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物以外の硬化剤(「その他の硬化剤」と称する場合がある)を含んでいてもよい。上記その他の硬化剤としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸などの25℃で液状の酸無水物;無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物などの常温(約25℃)で固体状の酸無水物などが挙げられる。中でも、上記その他の硬化剤としては、硬化物の耐熱性、耐光性、耐クラック性の観点で、飽和単環炭化水素ジカルボン酸の無水物(環にアルキル基等の置換基が結合したものも含む)が好ましい。上記その他の硬化剤の含有量は、硬化剤(C)(100重量%)中、20重量%以下(例えば、0〜20重量%)が好ましく、より好ましくは10重量%以下(さらに好ましくは5重量%以下)である。
【0057】
上記その他の硬化剤としては、例えば、商品名「リカシッド MH−700」(新日本理化(株)製)、「リカシッド MH−700F」(新日本理化(株)製)、商品名「HN−5500」(日立化成工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。また、例えば、上記その他の硬化剤と後述の脂環式ポリエステル樹脂との混合物である商品名「HN−7200」(日立化成工業(株)製)、商品名「HN−5700」(日立化成工業(株)製)などの市販品を用いることもできる。
【0058】
また、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物においては、硬化剤(C)全量中のコハク酸無水物の含有量(割合)が0.4重量%以下であり、好ましくは0.2重量%以下である。コハク酸無水物の含有量は、0重量%であってもよい。コハク酸無水物の含有量が0.4重量%を超えると、硬化剤(C)や硬化性エポキシ樹脂組成物においてコハク酸無水物が析出して作業性が低下したり、硬化促進剤(D)の種類によっては硬化物が着色する等の問題が生じる場合がある。
【0059】
なお、硬化剤(C)中のコハク酸無水物は、メチルノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、又はこれらの混合物を異性化及び水素化してメチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、又はこれらの混合物を生成させる際に副生成物として生じる。より詳しくは、上記異性化を酸触媒の存在下、180℃前後の高温で実施するため、メチルノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物のマレイン酸無水物とメチルシクロペンタジエンへの解離、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物のマレイン酸無水物とシクロペンタジエンへの解離が進行し、さらに、このようにして生成したマレイン酸無水物が水素化されてコハク酸無水物が生じる。硬化剤(C)全量中のコハク酸無水物の含有量を0.4重量%以下に制御する方法としては、例えば、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、又はこれらの混合物を減圧蒸留する方法が挙げられる。より詳しくは、例えば、138℃、0.27kPaの条件で初留を5〜10%カットし、さらに173℃、0.27kPaの条件で残りを蒸留する方法などが挙げられる。
【0060】
硬化剤(C)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、50〜200重量部が好ましく、より好ましくは80〜180重量部、さらに好ましくは100〜170重量部である。より具体的には、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ基を有する化合物におけるエポキシ基1当量当たり、0.5〜1.7当量(より好ましくは、1.2〜1.6当量)となる割合で使用することが好ましい。硬化剤(C)の含有量が50重量部未満であると、硬化が不十分となり、硬化物の強靱性が低下する傾向がある。一方、硬化剤(C)の含有量が200重量部を上回ると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。なお、上記「硬化剤(C)の含有量」とは、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤(C)の総量を意味する。
【0061】
[硬化促進剤(D)]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤(D)を含んでいてもよい。硬化促進剤(D)は、エポキシ基を有する化合物が硬化剤(C)により硬化する際に、硬化速度を促進する機能を有する化合物である。硬化促進剤(D)としては、公知乃至慣用の硬化促進剤を使用することができ、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩など);1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)又はその塩(例えば、フェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、テトラフェニルボレート塩など);ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンなどの3級アミン;2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール;リン酸エステル、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラ(p−トリル)ボレートなどのホスホニウム化合物;オクチル酸亜鉛やオクチル酸スズなどの有機金属塩;金属キレートなどが挙げられる。硬化促進剤(D)は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0062】
また、本発明においては、硬化促進剤(D)として、商品名「U−CAT SA 506」、「U−CAT SA 102」、「U−CAT 5003」、「U−CAT 18X」、「12XD」(開発品)、「U−CAT 410」(以上、サンアプロ(株)製)、商品名「TPP−K」、「TPP−MK」(以上、北興化学工業(株)製)、商品名「PX−4ET」(日本化学工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
【0063】
上記硬化促進剤(D)の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.05〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.2〜3重量部、特に好ましくは0.25〜2.5重量部である。硬化促進剤(D)の含有量が0.05重量部未満であると、硬化促進効果が不十分となる場合がある。一方、硬化促進剤(D)の含有量が5重量部を超えると、硬化物が着色して色相が悪化する場合がある。
【0064】
[脂環式ポリエステル樹脂]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに、脂環式ポリエステル樹脂を含んでいてもよい。上記脂環式ポリエステル樹脂を含有することにより、特に、硬化物の耐熱性、耐光性が向上し、光半導体装置の光度低下がいっそう抑制される傾向がある。上記脂環式ポリエステル樹脂は、脂環構造(脂肪族環構造)を少なくとも有するポリエステル樹脂である。特に、硬化物の耐熱性、耐光性向上の観点で、上記脂環式ポリエステル樹脂は、主鎖に脂環(脂環構造)を有する脂環式ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0065】
脂環式ポリエステル樹脂における脂環構造としては、特に限定されないが、例えば、単環炭化水素構造や橋かけ環炭化水素構造(例えば、二環系炭化水素等)などが挙げられる。中でも、特に、脂環骨格が全て炭素−炭素単結合により構成された、飽和単環炭化水素構造や飽和橋かけ環炭化水素構造が好ましい。また、上記脂環式ポリエステル樹脂における脂環構造は、ジカルボン酸由来の構成単位とジオール由来の構成単位のいずれか一方のみに導入されていてもよいし、両方共に導入されていてもよく、特に限定されない。
【0066】
上記脂環式ポリエステル樹脂は、脂環構造を有するモノマー成分由来の構成単位を有している。上記脂環構造を有するモノマーとしては、公知乃至慣用の脂環構造を有するジオールやジカルボン酸が挙げられ、特に限定されないが、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ハイミック酸、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,7−デカヒドロナフタレンジカルボン酸などの脂環構造を有するジカルボン酸(酸無水物等の誘導体も含む)等;1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン等の5員環ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の6員環ジオール、水素添加ビスフェノールAなどの脂環構造を有するジオール(これらの誘導体も含む)等が挙げられる。
【0067】
上記脂環式ポリエステル樹脂は、脂環構造を有しないモノマー成分に由来する構成単位を有していてもよい。上記脂環構造を有しないモノマーとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸(酸無水物等の誘導体も含む);アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸(酸無水物等の誘導体も含む);エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、キシリレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などのジオール(これらの誘導体も含む)等が挙げられる。なお、上記の脂環構造を有しないジカルボン酸やジオールに適宜な置換基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等)が結合したものも、脂環構造を有しないモノマーに含まれる。
【0068】
上記脂環式ポリエステル樹脂を構成する全モノマー単位(全モノマー成分)(100モル%)に対する脂環を有するモノマー単位の割合は、特に限定されないが、10モル%以上(例えば、10〜80モル%)が好ましく、より好ましくは25〜70モル%、さらに好ましくは40〜60モル%である。脂環を有するモノマー単位の割合が10モル%未満であると、硬化物の耐熱性、耐光性、耐熱衝撃性、耐吸湿リフロー性が低下する場合がある。
【0069】
上記脂環式ポリエステル樹脂としては、特に、下記式(3)〜(5)で表される構成単位を少なくとも1種以上含む脂環式ポリエステル樹脂が好ましい。
【0070】
【化12】
[式中、R
3は直鎖、分岐鎖、又は環状の炭素数2〜15のアルキレン基を表す。また、R
4〜R
7は、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、R
4〜R
7から選ばれる二つが結合して環を形成していてもよい。]
【0071】
【化13】
[式中、R
3は直鎖、分岐鎖、又は環状の炭素数2〜15のアルキレン基を表す。また、R
4〜R
7は、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、R
4〜R
7から選ばれる二つが結合して環を形成していてもよい。]
【0072】
【化14】
[式中、R
3は直鎖、分岐鎖、又は環状の炭素数2〜15のアルキレン基を表す。また、R
4〜R
7は、それぞれ独立に、水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基を表し、R
4〜R
7から選ばれる二つが結合して環を形成していてもよい。]
【0073】
上記式(3)〜(5)で表される構成単位の好ましい具体例としては、例えば、下記式(6)で表される4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及びエチレングリコール由来の構成単位が挙げられる。当該構成単位を有する脂環式ポリエステル樹脂は、例えば、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とエチレングリコールとを重縮合することにより得られる。
【化15】
【0074】
また、上記式(3)〜(5)で表される構成単位の他の好ましい具体例としては、例えば、下記式(7)で表される1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びネオペンチルグリコール由来の構成単位が挙げられる。当該構成単位を有する脂環式ポリエステル樹脂は、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とネオペンチルグリコールとを重縮合することにより得られる。
【化16】
【0075】
上記脂環式ポリエステル樹脂が上記式(3)〜(5)で表される構成単位を有する場合、該構成単位の含有量の合計量(合計含有量;該構成単位を構成する全モノマー単位)は、特に限定されないが、脂環式ポリエステル樹脂の全構成単位(100モル%;脂環式ポリエステル樹脂を構成する全モノマー単位)に対し、20モル%以上(例えば、20〜100モル%)が好ましく、より好ましくは50〜100モル%、さらに好ましくは80〜100モル%である。上記式(3)〜(5)で表される構成単位の含有量が20モル%未満であると、硬化物の耐熱性、耐光性、耐熱衝撃性、耐吸湿リフロー性が低下する場合がある。
【0076】
上記脂環式ポリエステル樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、300〜100000が好ましく、より好ましくは300〜30000である。脂環式ポリエステル樹脂の数平均分子量が300未満であると、硬化物の強靭性が十分でなく、耐熱衝撃性や耐吸湿リフロー性が低下する場合がある。一方、脂環式ポリエステル樹脂の数平均分子量が100000を超えると、硬化剤(C)との相溶性が低下し、硬化物の透明性が低下する場合がある。なお、脂環式ポリエステル樹脂の数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0077】
なお、上記脂環式ポリエステル樹脂は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0078】
上記脂環式ポリエステル樹脂は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法により製造することができる。より詳しくは、例えば、上記脂環式ポリエステル樹脂を、上述のジカルボン酸とジオールとを常法により重縮合させることにより得てもよいし、上述のジカルボン酸の誘導体(酸無水物、エステル、酸ハロゲン化物等)とジオールとを常法により重縮合させることにより得てもよい。
【0079】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物において、上記脂環式ポリエステル樹脂の含有量(配合量)は、特に限定されないが、上記脂環式ポリエステル樹脂と硬化剤(C)の合計量(100重量%)に対して、1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜30重量%である。脂環式ポリエステル樹脂の含有量が1重量%未満であると、硬化物の耐熱衝撃性や耐吸湿リフロー性が不足する場合がある。一方、脂環式ポリエステル樹脂の含有量が60重量%を超えると、硬化物の透明性や耐熱性が低下する場合がある。
【0080】
また、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対する上記脂環式ポリエステル樹脂の含有量(配合量)は、特に限定されないが、5〜60重量部が好ましく、より好ましくは10〜50重量部、さらに好ましくは15〜50重量部である。脂環式ポリエステル樹脂の含有量が5重量部未満であると、硬化物の耐熱性、耐光性、耐熱衝撃性、耐吸湿リフロー性が不十分となる場合がある。一方、脂環式ポリエステル樹脂の含有量が60重量部を超えると、硬化物の耐熱衝撃性、耐吸湿リフロー性が低下する場合がある。
【0081】
[分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに、分子内(一分子中)に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体を含んでいてもよい。上記分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体を含有させることにより、特に、硬化物の耐熱性、耐光性をより高いレベルにまで向上させることができる。
【0082】
上記分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体におけるシロキサン骨格(Si−O−Si骨格)としては、特に限定されないが、例えば、環状シロキサン骨格;直鎖状のシリコーンや、かご型やラダー型のポリシルセスキオキサンなどのポリシロキサン骨格などが挙げられる。中でも、上記シロキサン骨格としては、硬化物の耐熱性、耐光性を向上させて光度低下を抑制する観点で、環状シロキサン骨格、直鎖状シリコーン骨格が好ましい。即ち、分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体としては、分子内に2以上のエポキシ基を有する環状シロキサン、分子内に2以上のエポキシ基を有する直鎖状シリコーンが好ましい。なお、分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0083】
上記分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体が、2以上のエポキシ基を有する環状シロキサンである場合、シロキサン環を形成するSi−O単位の数(シロキサン環を形成するケイ素原子の数に等しい)は、特に限定されないが、硬化物の耐熱性、耐光性を向上させる観点で、2〜12が好ましく、より好ましくは4〜8である。
【0084】
上記分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体の重量平均分子量は、特に限定されないが、硬化物の耐熱性、耐光性を向上させる観点で、100〜3000が好ましく、より好ましくは180〜2000である。
【0085】
上記分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体の一分子中のエポキシ基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、硬化物の耐熱性、耐光性を向上させる観点で、2〜4個(2個、3個、又は4個)が好ましい。
【0086】
上記分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体のエポキシ当量(JIS K7236に準拠)は、特に限定されないが、硬化物の耐熱性、耐光性を向上させる観点で、180〜400が好ましく、より好ましくは240〜400、さらに好ましくは240〜350である。
【0087】
上記分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体におけるエポキシ基は、特に限定されないが、硬化物の耐熱性、耐光性を向上させる観点で、脂肪族環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)であることが好ましく、中でも、シクロヘキセンオキシド基であることが特に好ましい。
【0088】
上記分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体としては、具体的には、例えば、2,4−ジ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−2,4,6,6,8,8−ヘキサメチル−シクロテトラシロキサン、4,8−ジ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−2,2,4,6,6,8−ヘキサメチル−シクロテトラシロキサン、2,4−ジ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−6,8−ジプロピル−2,4,6,8−テトラメチル−シクロテトラシロキサン、4,8−ジ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−2,6−ジプロピル−2,4,6,8−テトラメチル−シクロテトラシロキサン、2,4,8−トリ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−2,4,6,6,8−ペンタメチル−シクロテトラシロキサン、2,4,8−トリ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−6−プロピル−2,4,6,8−テトラメチル−シクロテトラシロキサン、2,4,6,8−テトラ[2−(3−{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]−2,4,6,8−テトラメチル−シクロテトラシロキサン、分子内に2以上のエポキシ基を有するシルセスキオキサン等が挙げられる。より具体的には、例えば、下記式で表される分子内に2以上のエポキシ基を有する環状シロキサン等が挙げられる。
【化17】
【0089】
また、上記分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体としては、例えば、特開2008−248169号公報に記載の脂環エポキシ基含有シリコーン樹脂や、特開2008−19422号公報に記載の一分子中に少なくとも2個のエポキシ官能性基を有するオルガノポリシルセスキオキサン樹脂などを用いることもできる。
【0090】
上記分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体としては、例えば、分子内に2以上のエポキシ基を有する環状シロキサンである商品名「X−40−2678」(信越化学工業(株)製)、商品名「X−40−2670」(信越化学工業(株)製)、商品名「X−40−2720」(信越化学工業(株)製)などの市販品を用いることもできる。
【0091】
上記分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量%)に対して、5〜60重量%が好ましく、より好ましくは8〜55重量%、さらに好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%である。分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体の含有量が5重量%未満であると、硬化物の耐熱性、耐光性が不十分となる場合がある。一方、分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体の含有量が60重量%を超えると、硬化物の耐熱衝撃性、耐吸湿リフロー性が低下する場合がある。
【0092】
また、脂環式エポキシ化合物(A)100重量部に対する上記分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体の含有量(配合量)は、特に限定されないが、10〜200重量部が好ましく、より好ましくは20〜180重量部、さらに好ましくは30〜150重量部、特に好ましくは35〜145重量部である。分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体の含有量が10重量部未満であると、硬化物の耐熱性、耐光性が不十分となる場合がある。一方、分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン誘導体の含有量が200重量部を超えると、硬化物の耐熱衝撃性、耐吸湿リフロー性が低下する場合がある。
【0093】
[ゴム粒子]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、さらに、ゴム粒子を含んでいてもよい。上記ゴム粒子としては、例えば、粒子状NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、反応性末端カルボキシル基NBR(CTBN)、メタルフリーNBR、粒子状SBR(スチレン−ブタジエンゴム)などのゴム粒子が挙げられる。上記ゴム粒子としては、ゴム弾性を有するコア部分と、該コア部分を被覆する少なくとも1層のシェル層とからなる多層構造(コアシェル構造)を有するゴム粒子が好ましい。上記ゴム粒子は、特に、(メタ)アクリル酸エステルを必須モノマー成分とするポリマー(重合体)で構成されており、表面に脂環式エポキシ化合物(A)などのエポキシ基を有する化合物と反応し得る官能基としてヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基(ヒドロキシル基及びカルボキシル基のいずれか一方又は両方)を有するゴム粒子が好ましい。上記ゴム粒子の表面にヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基が存在しない場合、冷熱サイクル等の熱衝撃により硬化物が白濁して透明性が低下するため好ましくない。
【0094】
上記ゴム粒子におけるゴム弾性を有するコア部分を構成するポリマーは、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステルを必須のモノマー成分とすることが好ましい。上記ゴム弾性を有するコア部分を構成するポリマーは、その他、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン、エチレン、プロピレン、イソブテンなどをモノマー成分として含んでいてもよい。
【0095】
中でも、上記ゴム弾性を有するコア部分を構成するポリマーは、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルと共に、芳香族ビニル、ニトリル、及び共役ジエンからなる群より選択された1種又は2種以上を組み合わせて含むことが好ましい。即ち、上記コア部分を構成するポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸エステル/共役ジエン等の二元共重合体;(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル/共役ジエン等の三元共重合体などが挙げられる。なお、上記コア部分を構成するポリマーには、ポリジメチルシロキサンやポリフェニルメチルシロキサンなどのシリコーンやポリウレタン等が含まれていてもよい。
【0096】
上記コア部分を構成するポリマーは、その他のモノマー成分として、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ブチレングリコールジアクリレートなどの1モノマー(1分子)中に2以上の反応性官能基を有する反応性架橋モノマーを含有していてもよい。
【0097】
上記ゴム粒子のコア部分は、中でも、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニルの二元共重合体(特に、アクリル酸ブチル/スチレン)より構成されたコア部分であることが、ゴム粒子の屈折率を容易に調整できる点で好ましい。
【0098】
上記ゴム粒子のコア部分は、通常用いられる方法で製造することができ、例えば、上記モノマーを乳化重合法により重合する方法などにより製造することができる。乳化重合法においては、上記モノマーの全量を一括して仕込んで重合してもよく、上記モノマーの一部を重合した後、残りを連続的に又は断続的に添加して重合してもよく、さらに、シード粒子を使用する重合方法を使用してもよい。
【0099】
上記ゴム粒子のシェル層を構成するポリマーは、上記コア部分を構成するポリマーとは異種のポリマーであることが好ましい。また、上述のように、上記シェル層は、脂環式エポキシ化合物(A)などのエポキシ基を有する化合物と反応し得る官能基としてヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を有することが好ましい。これにより、特に、脂環式エポキシ化合物(A)との界面で接着性を向上させることができ、該シェル層を有するゴム粒子を含む硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させた硬化物に対して、優れた耐クラック性を発揮させることができる。また、硬化物のガラス転移温度の低下を防止することもできる。
【0100】
上記シェル層を構成するポリマーは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステルを必須のモノマー成分として含むことが好ましい。例えば、上記コア部分における(メタ)アクリル酸エステルとしてアクリル酸ブチルを用いた場合、シェル層を構成するポリマーのモノマー成分として、アクリル酸ブチル以外の(メタ)アクリル酸エステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなど)を使用することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル以外に含んでいてもよいモノマー成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリルなどが挙げられる。上記ゴム粒子においては、シェル層を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルと共に、上記モノマーを単独で、又は2種以上を組み合わせて含むことが好ましく、特に、少なくとも芳香族ビニルを含むことが、上記ゴム粒子の屈折率を容易に調整できる点で好ましい。
【0101】
さらに、上記シェル層を構成するポリマーは、モノマー成分として、脂環式エポキシ化合物(A)などのエポキシ基を有する化合物と反応し得る官能基としてのヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基を形成するために、ヒドロキシル基含有モノマー(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど)や、カルボキシル基含有モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸などのα,β−不飽和酸、マレイン酸無水物などのα,β−不飽和酸無水物など)を含有することが好ましい。
【0102】
上記ゴム粒子におけるシェル層を構成するポリマーは、モノマー成分として、(メタ)アクリル酸エステルと共に、上記モノマーから選択された1種又は2種以上を組み合わせて含むことが好ましい。即ち、上記シェル層は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル/ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸エステル/芳香族ビニル/α,β−不飽和酸等の三元共重合体などから構成されたシェル層であることが好ましい。
【0103】
また、上記シェル層を構成するポリマーは、その他のモノマー成分として、コア部分と同様に、上記モノマーの他にジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ブチレングリコールジアクリレートなどの1モノマー(1分子)中に2以上の反応性官能基を有する反応性架橋モノマーを含有していてもよい。
【0104】
上記ゴム粒子(コアシェル構造を有するゴム粒子)は、上記コア部分をシェル層により被覆することで得られる。上記コア部分をシェル層で被覆する方法としては、例えば、上記方法により得られたゴム弾性を有するコア部分の表面に、シェル層を構成する共重合体を塗布することにより被覆する方法、上記方法により得られたゴム弾性を有するコア部分を幹成分とし、シェル層を構成する各成分を枝成分としてグラフト重合する方法などを挙げることができる。
【0105】
上記ゴム粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、10〜500nmが好ましく、より好ましくは20〜400nmである。また、上記ゴム粒子の最大粒子径は、特に限定されないが、50〜1000nmが好ましく、より好ましくは100〜800nmである。平均粒子径が500nmを上回ると、又は、最大粒子径が1000nmを上回ると、硬化物におけるゴム粒子の分散性が低下し、耐クラック性が低下する場合がある。一方、平均粒子径が10nmを下回ると、又は、最大粒子径が50nmを下回ると、硬化物の耐クラック性向上の効果が得られにくくなる場合がある。
【0106】
上記ゴム粒子の屈折率は、特に限定されないが、1.40〜1.60が好ましく、より好ましくは1.42〜1.58である。また、ゴム粒子の屈折率と、該ゴム粒子を含む硬化性エポキシ樹脂組成物(本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物)を硬化して得られる硬化物の屈折率との差は±0.03以内であることが好ましい。屈折率の差が±0.03を上回ると、硬化物の透明性が低下し、時には白濁して、光半導体装置の光度が低下する傾向があり、光半導体装置の機能を消失させてしまう場合がある。
【0107】
ゴム粒子の屈折率は、例えば、ゴム粒子1gを型に注型して210℃、4MPaで圧縮成形し、厚さ1mmの平板を得、得られた平板から、縦20mm×横6mmの試験片を切り出し、中間液としてモノブロモナフタレンを使用してプリズムと該試験片とを密着させた状態で、多波長アッベ屈折計(商品名「DR−M2」、(株)アタゴ製)を使用し、20℃、ナトリウムD線での屈折率を測定することにより求めることができる。
【0108】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物の屈折率は、例えば、下記硬化物の項に記載の加熱硬化方法により得られた硬化物から、縦20mm×横6mm×厚さ1mmの試験片を切り出し、中間液としてモノブロモナフタレンを使用してプリズムと該試験片とを密着させた状態で、多波長アッベ屈折計(商品名「DR−M2」、(株)アタゴ製)を使用し、20℃、ナトリウムD線での屈折率を測定することにより求めることができる。
【0109】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物における上記ゴム粒子の含有量(配合量)は、特に限定されないが、硬化性エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ基を有する化合物の全量(100重量部)に対して、0.5〜30重量部が好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。ゴム粒子の含有量が0.5重量部を下回ると、硬化物の耐クラック性が不十分となる場合がある。一方、ゴム粒子の含有量が30重量部を上回ると、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。
【0110】
[添加剤]
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上記以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内で各種添加剤を含有していてもよい。上記添加剤として、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの水酸基を有する化合物を含有させると、反応を緩やかに進行させることができる。その他にも、粘度や透明性を損なわない範囲内で、シリコーン系やフッ素系消泡剤、レベリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、界面活性剤、シリカ、アルミナなどの無機充填剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、顔料、蛍光体、離型剤などの慣用の添加剤を使用することができる。
【0111】
<硬化性エポキシ樹脂組成物の製造方法>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上述の脂環式エポキシ化合物(A)と、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)と、硬化剤(C)とを少なくとも含んでいればよく、その製造方法(調製方法)は特に限定されない。具体的には、例えば、各成分を所定の割合で攪拌・混合して、必要に応じて真空下で脱泡することにより調製することもできるし、脂環式エポキシ化合物(A)、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート化合物(B)等のエポキシ基を有する化合物を必須成分として含む組成物(「エポキシ樹脂」と称する場合がある)と、硬化剤(C)を必須成分として含む組成物(「エポキシ硬化剤」と称する場合がある)とを別々に調製し、当該エポキシ樹脂とエポキシ硬化剤とを所定の割合で攪拌・混合し、必要に応じて真空下で脱泡することにより調製することもできる。
【0112】
上記エポキシ樹脂を調製する際の攪拌・混合時の温度は、特に限定されないが、30〜150℃が好ましく、より好ましくは35〜130℃である。また、上記エポキシ硬化剤を調製する際の攪拌・混合時の温度は、特に限定されないが、30〜100℃が好ましく、より好ましくは35〜80℃である。攪拌・混合には公知の装置、例えば、自転公転型ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、ディゾルバーなどを使用できる。
【0113】
特に、硬化性エポキシ樹脂組成物の構成成分として上記脂環式ポリエステル樹脂を用いる場合には、均一な組成物を得る観点で、上記脂環式ポリエステル樹脂と硬化剤(C)とをあらかじめ混合してこれらの混合物(脂環式ポリエステル樹脂と硬化剤(C)の混合物)を得た後、該混合物に硬化促進剤(D)、その他の添加剤を配合してエポキシ硬化剤を調製し、引き続き、該エポキシ硬化剤と別途調製したエポキシ樹脂とを混合することにより調製することが好ましい。上記脂環式ポリエステル樹脂と硬化剤(C)を混合する際の温度は、特に限定されないが、60〜130℃が好ましく、より好ましくは90〜120℃である。混合時間は、特に限定されないが、30〜100分間が好ましく、より好ましくは45〜80分間である。混合は、特に限定されないが、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、混合には、上述の公知の装置を使用できる。
【0114】
上記脂環式ポリエステル樹脂と硬化剤(C)を混合した後には、特に限定されないが、さらに適宜な化学処理(例えば、水素添加や脂環式ポリエステル樹脂の末端変性など)等を施してもよい。なお、上記脂環式ポリエステル樹脂と硬化剤(C)の混合物においては、硬化剤(C)の一部が上記脂環式ポリエステル樹脂(例えば、脂環式ポリエステル樹脂の水酸基など)と反応していてもよい。
【0115】
<硬化物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより、耐熱性、耐光性、及び耐熱衝撃性に優れ、特に、耐吸湿リフロー性に優れた硬化物を得ることができる。硬化の際の加熱温度(硬化温度)は、特に限定されないが、45〜200℃が好ましく、より好ましくは100〜190℃、さらに好ましくは100〜180℃である。また、硬化の際に加熱する時間(硬化時間)は、特に限定されないが、30〜600分が好ましく、より好ましくは45〜540分、さらに好ましくは60〜480分である。硬化温度と硬化時間が上記範囲の下限値より低い場合は硬化が不十分となり、逆に上記範囲の上限値より高い場合は樹脂成分の分解が起きる場合があるので、いずれも好ましくない。硬化条件は種々の条件に依存するが、例えば、硬化温度を高くした場合は硬化時間を短く、硬化温度を低くした場合は硬化時間を長くする等により、適宜調整することができる。
【0116】
<光半導体封止用樹脂組成物>
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、光半導体封止用樹脂組成物として好ましく使用できる。光半導体封止用樹脂組成物として用いることにより、耐熱性、耐光性、及び耐吸湿リフロー性に優れ、特に耐熱衝撃性に優れた硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置が得られる。上記光半導体装置は、高出力、高輝度の光半導体素子を備える場合であっても、経時で光度が低下しにくく、特に、高湿条件下で保管された後にリフロー工程にて加熱された場合や冷熱サイクルなどの熱衝撃が加えられた場合であっても光度低下等の劣化が生じにくい。
【0117】
<光半導体装置>
本発明の光半導体装置は、本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物(光半導体封止用樹脂組成物)の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置である。光半導体素子の封止は、上述の方法で調製した硬化性エポキシ樹脂組成物を所定の成形型内に注入し、所定の条件で加熱硬化して行う。これにより、硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置が得られる。硬化温度と硬化時間は、硬化物の調製時と同様の範囲で設定することができる。
【0118】
本発明の硬化性エポキシ樹脂組成物は、上述の光半導体素子の封止用途に限定されず、例えば、接着剤、電気絶縁材、積層板、コーティング、インク、塗料、シーラント、レジスト、複合材料、透明基材、透明シート、透明フィルム、光学素子、光学レンズ、光学部材、光造形、電子ペーパー、タッチパネル、太陽電池基板、光導波路、導光板、ホログラフィックメモリなどの用途にも使用することができる。
【実施例】
【0119】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0120】
製造例1
(ゴム粒子の製造)
還流冷却器付きの1L重合容器に、イオン交換水500g、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.68gを仕込み、窒素気流下に撹拌しながら、80℃に昇温した。ここに、コア部分を形成するために必要とする量の約5重量%分に該当するアクリル酸ブチル9.5g、スチレン2.57g、及びジビニルベンゼン0.39gからなる単量体混合物を一括添加し、20分間撹拌して乳化させた後、ペルオキソ二硫酸カリウム9.5mgを添加し、1時間撹拌して最初のシード重合を行った。続いて、ペルオキソ二硫酸カリウム180.5mgを添加し、5分間撹拌した。ここに、コア部分を形成するために必要とする量の残り(約95重量%分)のアクリル酸ブチル180.5g、スチレン48.89g、ジビニルベンゼン7.33gにジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.95gを溶解させてなる単量体混合物を2時間かけて連続的に添加し、2度目のシード重合を行い、その後、1時間熟成してコア部分を得た。
次いで、ペルオキソ二硫酸カリウム60mgを添加して5分間撹拌し、ここに、メタクリル酸メチル60g、アクリル酸1.5g、及びアリルメタクリレート0.3gにジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.3gを溶解させてなる単量体混合物を30分かけて連続的に添加し、シード重合を行った。その後、1時間熟成し、コア部分を被覆するシェル層を形成した。
次いで、室温(25℃)まで冷却し、目開き120μmのプラスチック製網で濾過することにより、コアシェル構造を有するゴム粒子を含むラテックスを得た。得られたラテックスをマイナス30℃で凍結し、吸引濾過器で脱水洗浄した後、60℃で一昼夜送風乾燥してゴム粒子を得た。得られたゴム粒子の平均粒子径は254nm、最大粒子径は486nmであった。
【0121】
なお、ゴム粒子の平均粒子径、最大粒子径は、動的光散乱法を測定原理とした「Nanotrac
TM」形式のナノトラック粒度分布測定装置(商品名「UPA−EX150」、日機装(株)製)を使用して試料を測定し、得られた粒度分布曲線において、累積カーブが50%となる時点の粒子径である累積平均径を平均粒子径、粒度分布測定結果の頻度(%)が0.00%を超えた時点の最大の粒子径を最大粒子径とした。なお、上記試料としては、下記製造例2で得られたゴム粒子分散エポキシ化合物1重量部をテトラヒドロフラン20重量部に分散させたものを用いた。
【0122】
製造例2
(ゴム粒子分散エポキシ化合物の製造)
製造例1で得られたゴム粒子5重量部を、窒素気流下、60℃に加温した状態でディゾルバー(1000rpm、60分間)を使用して、商品名「セロキサイド2021P」(脂環式エポキシ化合物、(株)ダイセル製)56重量部に分散させ、真空脱泡して、ゴム粒子分散エポキシ化合物を得た。
【0123】
製造例3
(エポキシ樹脂の製造)
表1に示す配合割合(単位:重量部)で、商品名「セロキサイド2021P」(脂環式エポキシ化合物、(株)ダイセル製)、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(MA−DGIC、四国化成工業(株))、商品名「X−40−2678」(分子内に2個のエポキシ基を有するシロキサン誘導体、信越化学工業(株)製)、製造例2で得られたゴム粒子分散エポキシ化合物を、自公転式攪拌装置((株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎AR−250」)を使用して均一に混合し、脱泡してエポキシ樹脂(組成物)(実施例及び比較例2におけるエポキシ樹脂)を得た。なお、上記混合は、80℃で1時間攪拌することでMA−DGICを溶解させることによって実施した。表1における「−」は、当該成分の配合を行わなかったことを意味し、以下も同様である。
【0124】
製造例4
(エポキシ硬化剤の製造)
表1に示す配合割合(単位:重量部)で、商品名「リカシッド MH−700」(硬化剤、新日本理化(株)製)、商品名「リカシッド HNA−100」(硬化剤、新日本理化(株)製)、商品名「jERキュア YH1120」(硬化剤、三菱化学(株)製)、商品名「U−CAT 18X」(硬化促進剤、サンアプロ(株)製)、エチレングリコール(添加剤、和光純薬工業(株)製)を、自公転式攪拌装置((株)シンキー製、商品名「あわとり練太郎AR−250」)を使用して均一に混合し、脱泡してエポキシ硬化剤(組成物)を得た。
【0125】
実施例1
表1に示す配合割合(単位:重量部)となるように、製造例3で得られたエポキシ樹脂と製造例4で得られたエポキシ硬化剤とを自公転式攪拌装置(商品名「あわとり練太郎AR−250」、(株)シンキー製)を使用して均一に混合し、脱泡して、硬化性エポキシ樹脂組成物を得た。
さらに、上記で得た硬化性エポキシ樹脂組成物を
図1に示す光半導体のリードフレーム(InGaN素子、3.5mm×2.8mm)に注型した後、120℃のオーブン(樹脂硬化オーブン)で5時間加熱することで、上記硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置を得た。なお、
図1において、100はリフレクター(光反射用樹脂組成物)、101は金属配線、102は光半導体素子、103はボンディングワイヤ、104は硬化物(封止材)を示す。
【0126】
実施例2、3、比較例1〜3
硬化性エポキシ樹脂組成物の組成を表1に示す組成に変更したこと以外は実施例1と同様にして、硬化性エポキシ樹脂組成物を調製した。また、実施例1と同様に光半導体装置を作製した。
【0127】
<評価>
実施例及び比較例で得られた光半導体装置について、下記の評価試験を実施した。
【0128】
[通電試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置の全光束を全光束測定機を用いて測定し、これを「0時間の全光束」とした。さらに、85℃の恒温槽内で100時間、光半導体装置に30mAの電流を流した後の全光束を測定し、これを「100時間後の全光束」とした。そして、次式から光度維持率を算出した。結果を表1の「光度維持率[%]」の欄に示す。
{光度維持率(%)}
={100時間後の全光束(lm)}/{0時間の全光束(lm)}×100
【0129】
[はんだ耐熱性試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置(各硬化性エポキシ樹脂組成物につき2個ずつ用いた)を、30℃、70%RHの条件下で192時間静置して吸湿処理した。次いで、上記光半導体装置をリフロー炉に入れ、下記加熱条件にて加熱処理した。その後、上記光半導体装置を室温環境下に取り出して放冷した後、再度リフロー炉に入れて同条件で加熱処理した。即ち、当該はんだ耐熱性試験においては、光半導体装置に対して下記加熱条件による熱履歴を二度与えた。
〔加熱条件(光半導体装置の表面温度基準)〕
(1)予備加熱:150〜190℃で60〜120秒
(2)予備加熱後の本加熱:217℃以上で60〜150秒、最高温度260℃
但し、予備加熱から本加熱に移行する際の昇温速度は最大で3℃/秒に制御した。
図2には、リフロー炉による加熱の際の光半導体装置の表面温度プロファイル(二度の加熱処理のうち一方の加熱処理における温度プロファイル)の一例を示す。
その後、デジタルマイクロスコープ(商品名「VHX−900」、(株)キーエンス製)を使用して光半導体装置を観察し、硬化物に長さが90μm以上のクラックが発生したか否か、及び、電極剥離(電極表面からの硬化物の剥離)が発生したか否かを評価した。光半導体装置2個のうち、硬化物に長さが90μm以上のクラックが発生した光半導体装置の個数を表1の「はんだ耐熱性試験[クラック数]」の欄に示し、電極剥離が発生した光半導体装置の個数を表1の「はんだ耐熱性試験[電極剥離数]」の欄に示した。
【0130】
[熱衝撃試験]
実施例及び比較例で得られた光半導体装置(各硬化性エポキシ樹脂組成物につき2個ずつ用いた)に対し、−40℃の雰囲気下に30分曝露し、続いて、120℃の雰囲気下に30分曝露することを1サイクルとした熱衝撃を、熱衝撃試験機を用いて200サイクル分与えた。その後、光半導体装置における硬化物に生じたクラックの長さを、デジタルマイクロスコープ(商品名「VHX−900」、(株)キーエンス製)を使用して観察し、光半導体装置2個のうち硬化物に長さが90μm以上のクラックが発生した光半導体装置の個数を計測した。結果を表1の「熱衝撃試験[クラック数]」の欄に示す。
【0131】
[総合判定]
各試験の結果、下記(1)〜(4)をいずれも満たすものを○(良好)と判定した。一方、下記(1)〜(4)のいずれかを満たさない場合には×(不良)と判定した。
(1)通電試験:光度維持率が90%以上
(2)はんだ耐熱性試験:硬化物に長さが90μm以上のクラックが発生した光半導体装置の個数が0個
(3)はんだ耐熱性試験:電極剥離が発生した光半導体装置の個数が0個
(4)熱衝撃試験:硬化物に長さが90μm以上のクラックが発生した光半導体装置の個数が0個
結果を表1の「総合判定」の欄に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
なお、実施例、比較例で使用した成分は、以下の通りである。
(エポキシ樹脂)
セロキサイド2021P:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、(株)ダイセル製
MA−DGIC:モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、四国化成工業(株)製
X−40−2678:分子内に2個のエポキシ基を有するシロキサン誘導体、信越化学工業(株)製
(K剤)
MH−700(リカシッド MH−700):4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理化(株)製
HNA−100(リカシッド HNA−100):メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物とノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物の混合物(無水コハク酸の含有量:0.4重量%以下)、新日本理化(株)製
YH1120(jERキュア YH1120):2,4−ジエチルグルタル酸無水物、三菱化学(株)製
U−CAT 18X:硬化促進剤、サンアプロ(株)製
エチレングリコール:和光純薬工業(株)製
【0134】
試験機器
・樹脂硬化オーブン
エスペック(株)製 GPHH−201
・恒温槽
エスペック(株)製 小型高温チャンバー ST−120B1
・全光束測定機
オプトロニックラボラトリーズ社製 マルチ分光放射測定システム OL771
・熱衝撃試験機
エスペック(株)製 小型冷熱衝撃装置 TSE−11−A
・リフロー炉
日本アントム(株)製、UNI−5016F