特許第6082761号(P6082761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082761
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】黒色ポリイミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20170206BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20170206BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   C08J5/18CFG
   C08L79/08
   C08K3/04
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-560840(P2014-560840)
(86)(22)【出願日】2012年9月7日
(65)【公表番号】特表2015-509551(P2015-509551A)
(43)【公表日】2015年3月30日
(86)【国際出願番号】KR2012007228
(87)【国際公開番号】WO2013151215
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2014年9月4日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0036253
(32)【優先日】2012年4月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514225065
【氏名又は名称】エスケイシーコーロン・ピーアイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SKCKOLON PI Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】イ・キルナム
(72)【発明者】
【氏名】キム・ソンウォン
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−080002(JP,A)
【文献】 特開2006−133591(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1045823(KR,B1)
【文献】 特開2008−138057(JP,A)
【文献】 特表2013−501130(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/017291(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/145473(WO,A1)
【文献】 特開2007−332363(JP,A)
【文献】 特開平11−349311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02;5/12−5/22
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
(a)ポリイミド樹脂;
(b)高温揮発性成分を1.5重量%以下で有し、かつ表面が酸化処理されていないカーボンブラック3.0〜7.5重量%;および
(c)遮蔽剤0.5〜1.5重量%;
を含む黒色ポリイミドフィルムであって、
前記ポリイミド樹脂が、酸二無水物およびジアミンの共重合により製造されたポリアミック酸のイミド化により製造され、
前記カーボンブラックが、2μm以下の体積平均径、10μm以下の最大径および70〜150nmの一次粒子径を有し、
前記遮蔽剤が0.2〜0.6μmの体積平均径を有し、
前記フィルムが、可視光線範囲で1.0%以下の光学透過率を有し、60%以下の光沢度、80%以上の伸び率、1015Ω以上の表面抵抗率、および1/100m以下のピンホール発生率を有するフィルム。
【請求項2】
前記遮蔽剤がTiOである請求項1に記載の黒色ポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記ジアミンが、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、またはそれらの誘導体である請求項1に記載の黒色ポリイミドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遮蔽目的に有用な黒色ポリイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は一般に高耐熱性樹脂と呼ばれ、芳香族酸二無水物および芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートの溶液重合によりポリアミック酸誘導体を製造した後、当該ポリアミック酸の高温での環化、脱水およびイミド化により製造することができる。ポリイミド樹脂の製造において通常、使用される芳香族酸二無水物の具体例としては、ポリメリット酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)などが挙げられ、芳香族ジアミンの具体例としてはオキシジアニリン(ODA)、p−フェニレンジアミン(p−PDA)、m−フェニレンジアミン(m−PDA)、メチレンジアニリン(MDA)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)などが挙げられる。
【0003】
ポリイミド樹脂は、耐熱酸化性、耐熱性、耐放射線性、低温特性、耐薬品性などの優れた機械的特性により、自動車、航空機、宇宙船などの先進耐熱性材料、ならびに絶縁性コーティング剤、絶縁フィルム、半導体、TFT−LCDの電極保護フィルムなどの電子材料などの様々な用途で使用される不溶性で、不融性かつ超高耐熱性の樹脂である。
【0004】
最近、ポリイミド樹脂は可搬式電子機器および携帯機器のカバーレイ(coverlay)として広く使用されている。このため、機械的特性に優れ、セキュリティー目的および視覚的効果のための遮光作用および絶縁作用が良好な遮蔽用ポリイミドフィルムへの関心が高まっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明は、機械的特性に優れ、遮光作用および絶縁作用が良好な遮蔽用黒色ポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様によれば、以下の成分:
(a)ポリイミド樹脂;
(b)高温揮発性成分を1.5重量%以下で有し、かつ表面が酸化処理されていないカーボンブラック3.0〜7.5重量%;および
(c)遮蔽剤0.5〜1.5重量%;
を含む黒色ポリイミドフィルムであって、
前記ポリイミド樹脂が、酸二無水物およびジアミンの共重合により製造されたポリアミック酸のイミド化により製造され、
前記フィルムが、可視光線範囲で1.0%以下の光学透過率を有し、60%以下の光沢度、80%以上の伸び率、1015Ω以上の表面抵抗率、および1/100m以下のピンホール発生率を有するフィルムが提供される。
【0007】
本発明の本実施態様に係る黒色ポリイミドフィルムに使用されるカーボンブラックは、2μm以下の体積平均径、10μm以下の最大径および70〜150nmの一次粒子径を有していてもよい。
【0008】
本発明の本実施態様に係る黒色ポリイミドフィルムに使用される遮蔽剤は、0.1〜1.0μmの体積平均径を有していてもよい。
【0009】
本発明の本実施態様に係る黒色ポリイミドフィルムに使用される遮蔽剤はTiOであってもよい。
【0010】
本発明の本実施態様に係る黒色ポリイミドフィルムに使用されるジアミンは、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、またはそれらの誘導体であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
遮光作用および絶縁作用が良好で、かつ機械的特性に優れた本発明に係る黒色ポリイミドフィルムは、遮蔽目的に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る黒色ポリイミドフィルムは、酸二無水物およびジアミンの共重合により製造されたポリアミック酸のイミド化により製造されるポリイミド樹脂から製造される。当該フィルムは、該フィルムの全重量に基づいて、カーボンブラック3.0〜7.5重量%および遮蔽剤0.5〜1.5重量%を含み、カーボンブラックは高温揮発性成分(high temperature volatile component)を1.5重量%以下で有し、かつ表面が酸化処理されていない。当該フィルムは、1.0%以下の(可視光線範囲での)光学透過率、60%以下の光沢度、80%以上の伸び率、1015Ω以上の表面抵抗率、および1/100m以下のピンホール発生率を有する。
【0013】
本発明の黒色ポリイミドフィルムは、遮光目的のために、1.0%以下、好ましくは0.1〜1.0%の(可視光線範囲での)光学透過率、および60%以下、好ましくは40〜60%の光沢度を有している。上記光学特性を有するフィルムが物品に適用されると、当該フィルムは物品の外部の美観特性を向上させることができるし、物品にセキュリティー保護を付与することができる。
【0014】
本発明の黒色ポリイミドフィルムは、カバーレイとしての電気的な絶縁目的のために、1015Ω以上の表面抵抗率を有している。表面抵抗率は高いほど好ましい。上記特性を有するフィルムがフレキシブル印刷回路を保護するカバーレイとして使用される場合、このような印刷回路を含む電子機器の電気的安定性を向上させることができる。これに関連して、本発明の黒色ポリイミドフィルムは80kV/mm以上、好ましくは90kV/mm以上の破壊電圧を有していてもよい。
【0015】
フィルムが良好な機械的特性ならびに遮光作用および絶縁作用を有するために、当該フィルムは、80%以上、好ましくは80〜110%の伸び率、および1/100m以下のピンホール発生率を有している。このような特性を満たすと、フィルムの製造および加工時の安定性を向上させることができるし、最終製品の機械的信頼性を確保することもできる。
【0016】
前記機械的特性を有するように、本発明の黒色ポリイミドフィルムは、(a)ポリイミド樹脂;(b)高温揮発性成分を1.5重量%以下で有し、かつ表面が酸化処理されていないカーボンブラック3.0〜7.5重量%、好ましくは5.0〜7.0重量%;および(c)遮蔽剤0.5〜1.5重量%、好ましくは0.7〜1.3重量%、より好ましくは0.8〜1.2重量%を含む。
【0017】
カーボンブラックはその表面上で酸化処理されていないので、熱処理時の安定性が向上する。カーボンブラックは高温揮発性成分の量が少ないことが好ましく、その量はカーボンブラックの全重量に基づいて1.5重量%以下、好ましくは0.8〜1.5重量%である。
【0018】
カーボンブラックは、ポリイミドフィルムに黒色と光沢を付与するために使用される。カーボンブラックの量はポリイミドフィルムの全重量に基づいて3.0〜7.5重量%の範囲内である。当該量が3.0重量%よりも少ないと、フィルムを黒色にすることが困難である。当該量が7.5重量%を超えると、フィルムのコロナ抵抗(corona resistance)および絶縁特性が悪化する。
【0019】
カーボンブラックは、溶媒に分散されたとき、体積平均径が2μm以下、好ましくは0.5〜2μm、より好ましくは0.6〜1.6μmであって、最大径が10μm以下であってもよい。またカーボンブラックの一次粒子径は70nm以上、好ましくは70〜150nmであってもよい。カーボンブラックの一次粒子径が70nm未満であると、光沢度が増大し、その結果、フィルムに吸光特性(extinction property)を付与することを困難にする。上述した寸法の要件を満たすカーボンブラックを含む本発明に係る黒色ポリイミドフィルムは、吸光特性および均一な色彩特性を有する。
【0020】
さらにカーボンブラックは、5以下、好ましくは3以下の径分散度(=体積平均径/数平均径)を有していてもよい。径分散度が低いカーボンブラック粒子を使用すると、当該粒子は樹脂との混合時において、樹脂中、よく均一に分散される。その結果として、製造されたフィルムは、当該フィルム全体にわたって均一な特性(例えば、最小の色の変化)を有し、しかもフィルムにおいて特性の劣化の程度が低い。特に、フィルムの伸び率を著しく高めることができる。カーボンブラックの径分散度は、カーボンブラックを微粉砕すること、または分散剤を使用することにより、向上させることもできる。カーボンブラックおよび遮蔽剤の両方を別々に微粉砕することにより、カーボンブラックの径分散度および遮蔽剤の径分散度を向上させることが好ましい。
【0021】
フィルムの加工性、熱放射特性および遮蔽特性を高めるために、遮蔽剤を使用してもよく、その使用量は黒色ポリイミドフィルムの全重量に基づいて0.5〜1.5重量%である。当該量が0.5重量%未満であると、遮蔽特性が十分ではない。一方、当該量が1.5重量%を超えると、機械的特性(特に伸び率)が悪化するとともに、ピンホール発生率が増大し、結果としてフィルムの歩留りが低下し、外観が劣る。
【0022】
遮蔽剤の具体例として、例えば、二酸化チタン(TiO)、窒化物を基材とした粒子、および他の無機粒子が挙げられる。
【0023】
本発明の一実施態様によれば、遮蔽剤は粒状であってもよい。当該遮蔽剤の体積平均径は0.1〜1.0μm、好ましくは0.15〜0.7μm、より好ましくは0.2〜0.6μmである。粒状遮蔽剤の体積平均径が0.1〜1.0μmの範囲に入ると、製造されるフィルムは遮蔽特性が良好であり、しかもフィルムの機械的特性の低下の程度が最小である。
【0024】
本発明に係る黒色ポリイミドフィルムは、酸二無水物およびジアミンを共重合してポリアミック酸溶液を製造する工程およびポリアミック酸溶液から成膜する工程を含むポリイミドフィルムの一般的な成膜法(film deposition methods)により製造されてもよい。特に、ポリアミック酸溶液は、成膜前に、カーボンブラック、遮蔽剤および触媒と均一に混合される。上記方法により製造された黒色ポリイミドフィルムは、当該フィルム全体にわたって均一な機械的特性、光学的特性および電気的特性を有する。
【0025】
均一に混合するために、ラインミキサー(line mixer)を使用してもよい。ポリアミック酸溶液、カーボンブラック、遮蔽剤および触媒を別々にラインミキサーに供給し、仮に全ての成分を同時に入口に導入した場合に発生する凝集を防止する。一方、カーボンブラックおよび遮蔽剤を共重合工程の間に添加してポリアミック酸溶液を得ると、反応器の混合能力が十分ではないために、均一な溶液を得ることが困難である。
【0026】
ポリアミック酸溶液は、有機溶媒中、酸二無水物およびジアミンを共重合させることにより得てもよい。有機溶媒は、アミドを基材とした極性非プロトン性溶媒が好ましい。アミドを基材とした極性非プロトン性溶媒の具体例としては、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドンなどが挙げられ、必要により、それらの任意の2種の混合物であってもよい。
【0027】
酸二無水物としては、ビフェニルカルボン酸二無水物またはその誘導体、およびピロメリット酸二無水物またはその誘導体が挙げられる。酸二無水物の具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、p−フェニレン−ビストリメリット酸二無水物などが挙げられ、好ましくは3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物である。特に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物またはピロメリット酸二無水物は、遮光性、光沢度および容積抵抗性(capacity resistance)の向上のために添加されるカーボンブラックおよび遮蔽剤の使用のために生じる、製造されたフィルムにおける機械的特性の低下を減少させる。
【0028】
ジアミンとしては、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、またはそれらの誘導体が挙げられる。ジアミンの具体例としては、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、2,4−ジアミノジフェニルエーテルなどが挙げられる。一般的には、p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノフェニルエーテルは製造されたフィルムの機械的特性を向上させるため好ましい。
【0029】
熱膨張率およびモジュラス(modulus)を向上させるために、p−フェニレンアミンを、全ジアミン1モルに基づいて、0.1〜0.8モルの量で使用してもよい。p−フェニレンジアミンはジアミノフェニルエーテルと比較して直線性を有するモノマーであり、製造されたフィルムの熱膨張率を低下させる。しかしながら、大量のp−フェニレンジアミンはフィルムの柔軟性および成形性を低下させる。
【0030】
カーボンブラックおよび遮蔽剤は粒状形態で使用されてもよい。しかし、各成分を別個の極性非プロトン性溶媒に分散させた後、各溶液をミキサーに供給し、より均一に混合された溶液を得ることが好ましい。
【0031】
触媒を含有するポリアミック酸溶液はスカホールド(scaffold)に適用されてもよい。触媒は無水物または第三アミンを含む脱水触媒が好ましい。無水物の具体例として、酢酸無水物が挙げられる。第三アミンの具体例として、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジンなどが挙げられる。
【0032】
以下、実施例および比較例において本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0033】
実施例1
表1に示す成分の組成に従って、黒色ポリイミドフィルムを製造した。
【0034】
ポリアミック酸溶液のための共重合工程においては、溶媒としてN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)181.2kgを窒素雰囲気下、300Lの反応器に入れた。当該溶媒を30℃に加熱し、ジアミンとして4,4’−ジアミノフェニレンエーテル(ODA)20.64kgを添加した。混合物を30分間撹拌した。モノマーが完全に溶解した後、ピロメリット酸無水物(PMDA)21.81kgをそこに添加した。温度を一定に維持しながら、混合物を1時間撹拌し、第1反応を完了した。第1反応が完了したら、反応器の温度を40℃に上昇させた後、8%PMDA0.67kgを添加した。温度を一定に維持しながら、混合物を2時間撹拌した。反応器の内部圧力を1torrに低下させて、反応中、溶液に取り込まれた泡を除去し、これによりポリアミック酸溶液を得た。
【0035】
反応後におけるポリアミック酸溶液の固形分含量は18.5重量%であった。当該溶液の粘度は2,500ポアズであった。
【0036】
ポリアミック酸溶液および触媒を混合しながら、微粉砕処理されたカーボンブラック(milling-treated carbon black)および遮蔽剤を成膜工程の間に添加した。ポリアミック酸溶液ならびにカーボンブラック、遮蔽剤および触媒の各溶液を別々にラインミキサー(line mixer)に供給し、混合を達成した。
【0037】
使用されたカーボンブラックおよびTiOの量はそれぞれ、ポリイミドフィルムの全重量に基づいて、6.0重量%および1.2重量%であった。
【0038】
カーボンブラックの体積平均径は0.89μmであり、一次粒子径は95nmであった。遮蔽剤の体積平均径は0.53μmであった。
【0039】
ポリアミック酸溶液と、カーボンブラック、遮蔽剤および触媒の溶液は2:1の重量比で混合した。このようにして得られた溶液を無端状ベルト上、100μmの厚みで流延した後、100〜200℃で乾燥させた。得られたフィルムを無端状ベルトから取り外し、高温テンターに搬送した。触媒溶液、カーボンブラック溶液、および遮蔽剤分散溶液の量は、フィルムがイソキノリン14.4重量%、無水酢酸44.8重量%、DMF37.4重量%、カーボンブラック1.09重量%および遮蔽剤0.22重量%を有するように調節されていた。
【0040】
フィルムを高温テンター中、200℃から600℃に加熱した後、冷却し、ピンから取り出し、厚み12μmの最終フィルムを製造した。
【0041】
上記の方法で製造された黒色ポリイミドフィルムを、伸び率、光学的透過率、コロナ抵抗、光沢度および破壊電圧について試験した。結果を表2に示す。
【0042】
実施例2
フィルムがカーボンブラック5.5重量%および遮蔽剤1.2重量%を有したことを除いて実施例1を繰り返し、黒色ポリイミドフィルムを製造した。
【0043】
実施例3
フィルムがカーボンブラック6.5重量%および遮蔽剤0.8重量%を有したことを除いて実施例1を繰り返し、黒色ポリイミドフィルムを製造した。
【0044】
比較例1
フィルムが遮蔽剤を有さなかったことを除いて実施例1を繰り返し、黒色ポリイミドフィルムを製造した。
【0045】
比較例2
フィルムがカーボンブラック8.0重量%を有したことを除いて実施例1を繰り返し、黒色ポリイミドフィルムを製造した。
【0046】
比較例3
カーボンブラックとしてMA220(一次粒子径55nmおよび体積平均径520nm、三菱)を使用したことを除いて実施例1を繰り返し、黒色ポリイミドフィルムを製造した。
【0047】
比較例4
フィルムが遮蔽剤4重量%を有したことを除いて実施例1を繰り返し、黒色ポリイミドフィルムを製造した。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1〜3および比較例1〜4で製造された黒色ポリイミドフィルムを以下の手順に従って試験し、結果を表2に示した。
【0050】
伸び率
インストロン(Instron)3365SER測定器を用いてASTM D−882に従い、フィルムの伸び率を測定した。
幅および高さ:15mm×50mm
クロスヘッド速度:200mm/分
【0051】
可視光線範囲での光学透過率
ハンター・ラボ(Hunter Lab)CQX3391を用い、透過モードで、フィルムの光学透過率を測定した。
【0052】
光沢度
光沢度計を用い、60°にて、フィルムの光沢度を測定した。
測定器:光沢度計
モデル:E406L
製造元:エルコメーター
【0053】
コロナ処理前後でのフィルムの引張強さおよび伸び率
実施例1〜3および比較例1〜4で製造された黒色ポリイミドフィルムを、コロナ密度250の条件下、コロナ放電ローラ(CT1234、大阪カツラ)を用いたコロナ処理に供した。コロナ処理の後、フィルムを伸び率測定について試験した。コロナ処理の前後でのフィルムの伸び率の差を以下の式Iに従って算出した。
【0054】
【数1】
【0055】
ピンホール発生率
欠陥検出器(ウィントリス)を備えた巻き取り機に0.6m幅のフィルムを1,000m走行させることにより、フィルム100mあたりのピンホール発生率を測定した。
【0056】
表面抵抗率
高抵抗計(4339B、アジレント・テクノロジーズ)を用い、500Vの下で、フィルムの表面抵抗率を測定した。
【0057】
破壊電圧
破壊電圧試験装置(6CC250−5/D149、フェニックス・テクノロジーズ)を用い、ASTM D149に従って、コロナ処理されたフィルムの破壊電圧を測定した。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示されるように、本発明の実施例1〜3に従って製造された黒色ポリイミドフィルムは、光沢度の値および光学透過率が相対的に低く、遮蔽特性が良好であった。これらのフィルムはまた、表面抵抗率および破壊電圧の値が高く、誘電特性が良好であった。さらに結果からは、実施例1〜3に従って製造されたフィルムは、伸び率、コロナ抵抗および低ピンホール発生率を含む機械的特性が良好であることが示された。
【0060】
一方、遮蔽剤を使用しなかった比較例1で製造されたフィルムは所望の光学透過率を有することができなかった。比較例2においては、遮蔽剤を使用しないで、カーボンブラックを増量した。当該フィルムは望ましい光学透過率を有していたが、誘電特性およびコロナ抵抗に劣っていた。さらに、比較例3においては、当該フィルムは、カーボンブラックの一次粒子径が小さいために、光沢度が高かった。比較例4においては、当該フィルムは、遮蔽剤の量が多いために、伸び率は低く、ピンホール発生率は高かった。