特許第6082788号(P6082788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6082788-複合弁及びそれを用いた双方向流制御弁 図000002
  • 特許6082788-複合弁及びそれを用いた双方向流制御弁 図000003
  • 特許6082788-複合弁及びそれを用いた双方向流制御弁 図000004
  • 特許6082788-複合弁及びそれを用いた双方向流制御弁 図000005
  • 特許6082788-複合弁及びそれを用いた双方向流制御弁 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082788
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】複合弁及びそれを用いた双方向流制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/10 20060101AFI20170206BHJP
   F16K 17/04 20060101ALI20170206BHJP
   F16K 31/06 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   F16K11/10 Z
   F16K17/04 D
   F16K31/06 305L
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-152406(P2015-152406)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-32066(P2017-32066A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年12月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100193194
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】竹内 亨
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−55619(JP,A)
【文献】 実開昭48−16422(JP,U)
【文献】 特開2002−106743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/10
F16K 31/06
F16K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の第1ポートと下流側の第2ポートとを有する第1流路と、
前記第1流路から分岐して形成され、第3ポートを有する第2流路と、
前記第1流路に設けられ、前記第1ポートから前記第3ポートへの作動流体の流通のみを許容する第1弁体と、
前記第1弁体に設けられ、前記第1流路の一部を形成する貫通孔と、
前記第1流路に設けられ、前記貫通孔を通じて前記第1ポートから前記第2ポートへ流れる作動流体の流通のみを許容する第2弁体と、を備え、
前記第1弁体は、前記第2弁体よりも上流に配置されることを特徴とする複合弁。
【請求項2】
前記第1ポートの圧力が前記第3ポートの圧力よりも所定値以上の差をもって大きくなった場合に、前記第1弁体は前記第1ポートから前記第3ポートへの作動流体の流通を許容し、
前記第1ポートの圧力が前記第2ポートの圧力よりも所定値以上の差をもって大きくなった場合に、前記第2弁体は前記第1ポートから前記第2ポートへの作動流体の流通を許容することを特徴とする請求項1に記載の複合弁。
【請求項3】
前記第1流路内に設けられる支持部材をさらに備え、
前記支持部材は、前記第1流路内に固定される本体部と、前記本体部から前記第1ポートに向かって突出し前記第1弁体を摺動自在に支持する支持部と、前記本体部内に形成され前記第2弁体が摺動自在に挿入される収容孔と、軸方向に貫通して形成される流通孔と、を有し、
前記第1弁体の前記貫通孔を通過した作動流体は、前記流通孔を通じて前記第2弁体へ導かれることを特徴とする請求項1または2に記載の複合弁。
【請求項4】
前記第1弁体と前記支持部との間に介装され、前記第1弁体を閉弁方向へ付勢する第1付勢部材と、前記収容孔内に配置され、前記第2弁体を閉弁方向へ付勢する第2付勢部材と、をさらに備え、
前記第1付勢部材の付勢方向と前記第2付勢部材の付勢方向とは、ともに前記第1流路に沿った方向であることを特徴とする請求項3に記載の複合弁。
【請求項5】
前記第1弁体は、前記第1流路に沿って設けられ前記支持部が挿入される中空円筒部と、前記貫通孔が形成されるとともに前記第1流路に形成されたシート部に着座する弁部が形成される頂部と、を有し、
前記第1弁体内には、前記支持部材の前記支持部によって、前記貫通孔を通じて前記第1ポートの圧力が導かれる第1圧力室が区画され、
前記弁部が前記シート部に着座した状態において、前記第1弁体を開弁する方向に作用する前記第1ポートの圧力を受ける前記頂部の第1受圧面の面積は、前記第1圧力室の圧力を受ける前記頂部の第2受圧面の面積よりも大きく設定されることを特徴とする請求項3または4に記載の複合弁。
【請求項6】
前記第1弁体は、前記第1流路に沿って設けられ前記支持部が挿入される中空円筒部と、前記貫通孔が形成されるとともに前記第1流路に形成されたシート部に着座する弁部が形成される頂部と、を有し、
前記第1弁体と前記支持部材の前記本体部との間には、前記第3ポートの圧力が連通路を通じて導かれ、前記第1弁体を閉弁方向へ付勢する第2圧力室が形成され、
前記連通路は、前記第1弁体または前記第1流路に形成されることを特徴とする請求項3または4に記載の複合弁。
【請求項7】
前記第1流路は、直線状に形成されることを特徴とする請求項1から6の何れか1つに記載の複合弁。
【請求項8】
前記第1弁体及び第2弁体は、前記第1流路に沿って変位することを特徴とする請求項1から7の何れか1つに記載の複合弁。
【請求項9】
メインポートからサブポートへ流れる作動流体の流量と前記サブポートから前記メインポートへ流れる作動流体の流量とを制御する双方向流制御弁であって、
請求項1から8の何れか1つに記載の複合弁が内蔵され、前記メインポートと前記サブポートとの連通開度を変化させる主弁と、
前記メインポートまたは前記サブポートから作動流体が導かれ、前記主弁を閉弁方向に付勢する制御圧室と、
前記制御圧室の圧力を制御するソレノイド部と、を備え、
前記複合弁は、前記第1ポートが前記ソレノイド部を介して前記制御圧室に接続され、前記第2ポートが前記メインポートに連通し、前記第3ポートが前記サブポートに連通するように前記主弁内に配置されることを特徴とする双方向流制御弁。
【請求項10】
前記複合弁の前記第1流路は、その中心軸が前記主弁の中心軸に一致するように前記主弁に形成されることを特徴とする請求項9に記載の双方向流制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合弁及びそれを用いた双方向流制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧によって作動する建設機械や産業機械では、2つのポート間を双方向に流れる作動油の流量を電磁力に応じて制御する双方向流制御弁が用いられる。
【0003】
特許文献1には、二つの弁体が内蔵される主弁と、主弁を閉弁方向に付勢する制御圧室と、を備える双方向流制御弁が記載されている。2つのポート間を流れる作動油の流量は、主弁に内蔵される二つの弁体のうちの一方を通じて制御圧室と低圧側のポートとが連通されて主弁が変位することによって制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−106743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される双方向流制御弁では、主弁に内蔵される二つの弁体は、主弁の軸方向に延びる流路と主弁の径方向に延びる流路とにそれぞれ別々に配置される。このため、特許文献1に開示される双方向流制御弁では、主弁の外径が大きくなり、双方向流制御弁自体が大型化してしまう。この結果、双方向流制御弁の取付け性が悪化するおそれがある。
【0006】
また、双方向流制御弁の大型化を防ぐために、径方向に延びる流路に配置される弁体を小型化することも考えられる。しかし、弁体を小型化した場合、摩耗に対する許容限度が低下するため、弁体と弁座とのシール性を長期間にわたって維持することが困難になるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであり、二つの弁体を有する複合弁及びそれを用いた双方向流制御弁をコンパクト化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、複合弁は、第1ポートと第2ポートとを有する第1流路と、
第1流路から分岐して形成され、第3ポートを有する第2流路と、第1流路に設けられ、第1ポートから第3ポートへの作動流体の流通のみを許容する第1弁体と、第1流路に設けられ、第1ポートから第2ポートへの作動流体の流通のみを許容する第2弁体と、を備え、第1弁体は、第2弁体よりも上流に配置されることを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、第2流路を流通する作動流体の流れ方向を規制する第1弁体は、第2流路ではなく、第2弁体とともに第1流路に配置される。
【0010】
第2の発明は、第1ポートの圧力が第3ポートの圧力よりも高いときには、第1弁体は作動流体の流通を許容し、第1ポートの圧力が第2ポートの圧力よりも高いときには、第2弁体は作動流体の流通を許容することを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1ポートの圧力と第2ポートの圧力とが略同圧であり、第3ポートの圧力がこれらの圧力よりも低いときと、第1ポートの圧力と第3ポートの圧力とが略同圧であり、第2ポートの圧力がこれらの圧力よりも低いときとで第1弁体及び第2弁体が作動流体の流通を許容するか遮断するかがそれぞれ変更される。このように、この複合弁では、各ポートの圧力に応じて、作動流体の流通状態を変更することができる。
【0012】
第3の発明は、第1弁体を摺動自在に支持する支持部と、第2弁体が摺動自在に挿入される収容孔と、を有する支持部材が第1流路内に設けられることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、第1弁体と第2弁体とが、第1流路内に設けられる1つの支持部材によって支持される。このように、単一の支持部材によって、二つの弁体を第1流路内に容易に配置することができる。
【0014】
第4の発明は、第1弁体を閉弁方向へ付勢する第1付勢部材の付勢方向と、第2弁体を閉弁方向へ付勢する第2付勢部材の付勢方向とは、ともに第1流路に沿った方向であることを特徴とする。
【0015】
第4の発明では、第1弁体の付勢方向と第2弁体の付勢方向とがともに第1流路に沿った方向となる。二つの弁体の付勢方向が同じであるため、複合弁をコンパクト化することができる。
【0016】
第5の発明は、第1弁体がシート部に着座した状態において、第1弁体を開弁する方向に作用する第1ポートの圧力を受ける第1受圧面の面積は、第1圧力室の圧力を受ける第2受圧面の面積よりも大きく設定されることを特徴とする。
【0017】
第1受圧面と第2受圧面とには、ともに第1ポートの圧力が作用するため、第2受圧面の面積が第1受圧面の面積よりも大きいと第1弁体が開弁できなくなる。しかし、第5の発明では、第1受圧面の面積が、第2受圧面の面積よりも大きく設定されるため、第1ポートの圧力が第3ポートの圧力よりも所定値以上の差をもって大きくなった場合には、第1弁体を開弁させることができる。
【0018】
第6の発明は、第1弁体と支持部材の本体部との間に、第3ポートの圧力が導かれ、第1弁体を閉弁方向へと付勢する第2圧力室が形成されることを特徴とする。
【0019】
第6の発明では、第3ポートの圧力が導かれる第2圧力室が第1弁体と支持部材の本体部との間に設けられる。このため、第3ポートの圧力が第1ポートの圧力と略同圧となったときには、第1弁体を閉弁方向へと付勢する力が大きくなり、第1弁体を閉弁させることができる。
【0020】
第7の発明は、第1流路が直線状に形成されることを特徴とする。
【0021】
第7の発明では、第1弁体と第2弁体とが直列配置される第1流路が直線状に形成される。二つの弁体が一直線上に配置されることになるため、複合弁をコンパクト化することができる。
【0022】
第8の発明は、第1弁体及び第2弁体が第1流路に沿って変位することを特徴とする。
【0023】
第8の発明では、第1弁体の変位方向と第2弁体の変位方向とがともに第1流路に沿った方向となる。二つの弁体の変位方向が同じであるため、複合弁をコンパクト化することができる。
【0024】
第9の発明は、第1ポートが制御圧室に接続され、第2ポートがメインポートに連通し、第3ポートがサブポートに連通するように複合弁が主弁内に配置されることを特徴とする。
【0025】
第9の発明では、コンパクト化された複合弁が主弁内に配置される。このため、主弁の外径を小さくすることが可能となり、結果として、双方向流制御弁の大型化が防止され、その取付け性を向上させることができる。
【0026】
第10の発明は、第1流路の中心軸が主弁の中心軸に一致するように主弁に第1流路が形成されることを特徴とする。
【0027】
第10の発明では、第1流路の中心軸が、主弁の中心軸と一致する。このため、第1流路の加工は、主弁を加工する際に併せて行うことが可能となり、加工コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、二つの弁体が一つの流路に直列配置されるため、複合弁及びそれを用いた双方向流制御弁をコンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係るソレノイドバルブの断面図である。
図2図1の複合弁を拡大した図面である。
図3図2のIII−III線に沿う断面図である。
図4】複合弁の変形例を示す図面である。
図5】複合弁の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0031】
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る複合弁70及びそれを用いたソレノイドバルブ100について説明する。
【0032】
図1に示されるソレノイドバルブ100は、建設機械や産業機械等に設けられ、図示しない流体圧力源からアクチュエータ(負荷)に供給される作動流体の流量やアクチュエータからタンク等へ排出される作動流体の流量を制御する。このソレノイドバルブ100は、メインポート220からサブポート230へ流れる作動流体の流量とサブポート230からメインポート220へ流れる作動流体の流量との双方を制御することが可能な双方向流制御弁である。
【0033】
ソレノイドバルブ100は、バルブブロック200に設けられる非貫通の挿入孔210に挿入固定される。バルブブロック200には、一端が挿入孔210の底面に開口し、他端がバルブブロック200の外面に開口して図示しない配管等を通じて流体圧力源とタンクとの何れかに図示しない切換弁を介して選択的に接続されるメインポート220と、一端が挿入孔210の側面に開口し、他端がバルブブロック200の外面に開口して図示しない配管等を通じてアクチュエータに接続されるサブポート230と、を有する。
【0034】
ソレノイドバルブ100では、作動流体として作動油が用いられる。作動油は、メインポート220が流体圧力源に接続される場合には、メインポート220からサブポート230へと流れ、メインポート220がタンクに接続される場合には、サブポート230からメインポート220へと流れる。作動流体は、作動油に限定されず、他の非圧縮性流体または圧縮性流体であってもよい。
【0035】
ソレノイドバルブ100は、メインポート220及びサブポート230を通じてアクチュエータに供給される作動油またはアクチュエータから排出される作動油の流量を制御する主弁22と、挿入孔210内に固定され主弁22が摺動自在に挿入される中空円筒状のスリーブ12と、主弁22を軸方向に変位させるソレノイド部60と、を備える。
【0036】
スリーブ12は、主弁22の外周面を摺動自在に支持する摺動支持部12aと、主弁22が着座するシート部13と、を有する。
【0037】
シート部13の内周には、メインポート220側から順に、円孔状の第1シート部13aと、円錐台状の第2シート部13bと、の2つのシート部が形成される。第1シート部13aの中心軸と第2シート部13bの中心軸とは、スリーブ12の中心軸と一致している。
【0038】
スリーブ12には、第2シート部13bと摺動支持部12aとの間に、スリーブ12内の空間とサブポート230とを連通する連通孔12bが周方向に間隔をあけて複数形成される。
【0039】
シート部13の外周と摺動支持部12aの外周とには、連通孔12bを挟むようにして、それぞれOリング51,52が配置される。連通孔12bとサブポート230との接続部は、スリーブ12と挿入孔210との間で圧縮されるこれら二つのOリング51,52によって封止される。特にシート部13の外周に設けられるOリング51によって、スリーブ12と挿入孔210との間の隙間を通じてメインポート220とサブポート230とが連通することが防止される。
【0040】
主弁22は、円柱状部材であり、一端面22eがシート部13側に位置し、摺動部22cが摺動支持部12aに摺動支持されるようにスリーブ12内に配置される。
【0041】
主弁22の一端面22e側には、第1シート部13aに摺動自在に挿入される円柱状のスプール弁22aが形成され、スプール弁22aと摺動部22cとの間には、第2シート部13bに着座する円錐台状のポペット弁22bが形成される。また、主弁22には、ポペット弁22bと摺動部22cとの間に、主弁22の軸方向に対して垂直な面を有する段部22hが形成される。段部22hには連通孔12bを通じてサブポート230の圧力が作用する。
【0042】
主弁22の一端面22eには、メインポート220に連通する凹部22gがスプール弁22aと同軸上に形成される。スプール弁22aには、一端が第1シート部13aと摺動する面に開口し、他端が凹部22gの内周面に開口する貫通孔22dが周方向に間隔をあけて複数形成される。
【0043】
第1シート部13aにより閉塞される各貫通孔22dは、ポペット弁22bと第2シート部13bとが離れる方向にスプール弁22aが移動するのに伴って、徐々に開口する。つまり、第1シート部13aから露出する各貫通孔22dの面積は、スプール弁22aの移動量に応じて変化する。このように、各貫通孔22dの開口面積を変化させることによって、メインポート220からサブポート230へ流れる作動油の流量、または、サブポート230からメインポート220へ流れる作動油の流量を制御することができる。
【0044】
各貫通孔22dは、ポペット弁22bが第2シート部13bに当接するときであっても、第1シート部13aによって完全に閉塞されないように配置される。つまり、各貫通孔22dの開口面積は、ポペット弁22bが第2シート部13bに当接する閉弁位置において最小値となり、ポペット弁22bが開弁方向に変位するにつれて漸次増大する。
【0045】
なお、各貫通孔22dは、ポペット弁22bが第2シート部13bからある程度離れるまで第1シート部13aによって閉塞されるように配置されてもよい。この場合、主弁22がある程度変位するまで作動油の流量をほぼゼロに設定することができる。
【0046】
主弁22の他端面22fは、主弁22と、スリーブ12と、ソレノイド部60と、により画定されるパイロット圧室42に臨んでいる。
【0047】
バルブブロック200には、メインポート220とパイロット圧室42とを接続するメイン導入通路240と、サブポート230とパイロット圧室42とを接続するサブ導入通路250と、が形成される。メイン導入通路240及びサブ導入通路250は、スリーブ12とバルブブロック200との間に形成される環状空間40と、スリーブ12に形成されオリフィスとして機能する導入孔41と、を通じてパイロット圧室42に連通する。
【0048】
また、メイン導入通路240には、メインポート220からパイロット圧室42への流れのみを許容するメイン導入逆止弁241が設けられ、サブ導入通路250には、サブポート230からパイロット圧室42への流れのみを許容するサブ導入逆止弁251が設けられる。
【0049】
このため、メインポート220の圧力がサブポート230の圧力よりも高い場合には、メインポート220の作動油がメイン導入通路240、メイン導入逆止弁241、環状空間40及び導入孔41を通じてパイロット圧室42へと導かれる。このとき、パイロット圧室42からサブポート230への流れはサブ導入逆止弁251によって遮断される。一方、サブポート230の圧力がメインポート220の圧力よりも高い場合には、サブポート230の作動油がサブ導入通路250、サブ導入逆止弁251、環状空間40及び導入孔41を通じてパイロット圧室42へと導かれる。このとき、パイロット圧室42からメインポート220への流れはメイン導入逆止弁241によって遮断される。
【0050】
パイロット圧室42内には、主弁22とソレノイド部60との間に、メインリターンスプリング24が圧縮して設けられる。
【0051】
メインリターンスプリング24の付勢力は、主弁22を閉弁させる方向に作用する。また、メインポート220の圧力は、主弁22の第2シート部13bにおける断面に相当する第1開弁受圧面S1に作用し、主弁22を開弁させる方向に作用する。また、サブポート230の圧力は、主弁22の段部22hにおける断面に相当する第2開弁受圧面S2に作用し、主弁22を開弁させる方向に作用する。また、パイロット圧室42内の圧力は、筒部22cにおける断面に相当する閉弁受圧面S3に作用し、主弁22を閉弁させる方向に作用する。
【0052】
このため、主弁22は、第1開弁受圧面S1に作用するメインポート220の圧力による推力と第2開弁受圧面S2に作用するサブポート230の圧力による推力との合力が、閉弁受圧面A2に作用するパイロット圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力を上回ると開弁方向に変位し、下回ると閉弁方向に変位する。
【0053】
主弁22は、さらに、パイロット圧室42とメインポート220とを接続する第1流路としての第1連通路23aと、第1連通路23aから分岐して形成され第1連通路23aとサブポート230とを接続する第2流路としての第2連通路23bと、を有する。
【0054】
第1連通路23aは、その中心軸が主弁22の中心軸に一致するように主弁22に形成される貫通孔であり、一端が他端面22fに開口し、他端が凹部22gに開口する。このため、第1連通路23aの加工は、主弁22の凹部22g等を加工する際に併せて行われる。第2連通路23bは、主弁22の径方向に形成され、一端が第1連通路23aに連通し、他端が主弁22の外周面に開口する。第2連通路23bの他端は、主弁22が軸方向に変位する範囲において、連通孔12bと常に連通するように配置される。第1連通路23aには、後述の複合弁70が設けられる。
【0055】
主弁22には、さらに、パイロット圧室42と第1連通路23aとの連通状態を調節することによってパイロット圧室42内の圧力を制御するパイロット圧制御弁25が設けられる。
【0056】
パイロット圧制御弁25は、サブシート部26dが形成される中空円筒状の圧力補償スリーブ26と、サブシート部26dに着座するサブポペット弁27aが一端に設けられる円柱状の副弁27と、を有する。
【0057】
圧力補償スリーブ26は、第1連通路23a内に摺動自在に挿入される摺動部26aと、パイロット圧室42に臨むように配置され、摺動部26aよりも外径が大きい鍔部26bと、鍔部26bから摺動部26aにかけて軸方向に貫通して形成される貫通孔26cと、を有する。サブシート部26dは、鍔部26b側に開口する貫通孔26cの開口端に形成される。このため、第1連通路23aとパイロット圧室42とは、サブシート部26dと貫通孔26cとを通じて連通する。
【0058】
鍔部26bと主弁22の他端面22fとの間には、複数の皿バネからなる圧力補償スプリング28が介装される。圧力補償スリーブ26は、圧力補償スプリング28によって主弁22から離れる方向へと付勢される。
【0059】
サブポペット弁27aがサブシート部26dから離座し、サブポペット弁27aとサブシート部26dとの間に隙間が形成されると、パイロット圧室42内の作動油が、この隙間から、貫通孔26cを通じて第1連通路23aへ導かれ、複合弁70を通じてメインポート220またはサブポート230へと排出される。パイロット圧室42には、メイン導入通路240又はサブ導入通路250を通じて作動油が導かれるが、導入孔41によってパイロット圧室42への作動油の流入が制限されるため、結果として、パイロット圧室42内の圧力は低下する。このようにしてパイロット圧室42内の圧力は、パイロット圧制御弁25によって制御される。
【0060】
サブポペット弁27aとサブシート部26dとの間の隙間の大きさは、圧力補償スリーブ26に対する副弁27の軸方向における位置を変更することによって調節される。副弁27の軸方向の位置はソレノイド部60によって制御されるので、この隙間の大きさはソレノイド部60によって制御されることとなる。
【0061】
ソレノイド部60は、電流が供給されることにより副弁27を駆動するコイル62と、コイル62が外周に設けられる有底筒状のソレノイドチューブ14と、ソレノイドチューブ14内に摺動自在に収容され副弁27が連結されるプランジャ33と、ソレノイドチューブ14とスリーブ12とを連結する連結部材16と、を有する。
【0062】
ソレノイドチューブ14内には、軸心に副弁27が固定される円筒状のプランジャ33と、軸方向に移動自在な円柱状のリテーナ34と、プランジャ33とリテーナ34との間に圧縮して介装されるサブリターンスプリング35と、が設けられる。プランジャ33は、サブリターンスプリング35によって、副弁27の先端に形成されるサブポペット弁27aがサブシート部26dに着座する方向へと付勢される。
【0063】
プランジャ33には、軸方向に貫通する複数の貫通孔33aが形成されており、サブリターンスプリング35が配置されるスプリング室44は貫通孔33aを通じてパイロット圧室42と連通する。このため、スプリング室44内の圧力は、パイロット圧室42内の圧力と同等となり、サブリターンスプリング35の付勢力とスプリング室44内の圧力とは、サブポペット弁27aをサブシート部26dへ押圧する方向へと作用する。
【0064】
ソレノイドチューブ14の端部14dには、調節ネジ36が軸方向に貫通して螺着される。調節ネジ36の一端は、スプリング室44内のリテーナ34に当接しており、調節ネジ36が回転されるとリテーナ34の軸方向における位置が変更され、サブリターンスプリング35の付勢力が変化する。このように、調節ネジ36を回転することによって、プランジャ33に作用するサブリターンスプリング35の初期荷重を変更することができる。ソレノイドチューブ14から突出する調節ネジ36の他端は、ソレノイドチューブ14に取り付けられるカバー63によって覆われる。
【0065】
連結部材16は、バルブブロック200の挿入孔210内に挿入される挿入部16aと、ソレノイドバルブ100をバルブブロック200に対して固定するためのフランジ部16bと、を有する。連結部材16は、フランジ部16bの内周面にソレノイドチューブ14が螺合され、挿入部16aにスリーブ12が螺合されることでスリーブ12とソレノイドチューブ14とを連結する。
【0066】
挿入部16aの外周には、シール部材としてのOリング53が配置される。連結部材16と挿入孔210との間で圧縮されるOリング53によって、挿入孔210内と外部との連通は遮断される。このため、挿入孔210内の作動油が外部に漏れることが防止されるとともに、外部から水や粉塵等が挿入孔210内に侵入することが防止される。
【0067】
フランジ部16bにはボルト15が挿通する図示しないボルト孔が複数形成されており、フランジ部16bは、ボルト15を介してバルブブロック200に締結される。連結部材16がバルブブロック200に締結されることによって、ソレノイドバルブ100は、バルブブロック200に対して固定される。
【0068】
次に、図1〜3を参照して、主弁22の第1連通路23aに設けられる複合弁70について説明する。
【0069】
図2に示すように、複合弁70は、第1連通路23aの上流側に設けられパイロット圧制御弁25を介してパイロット圧室42に接続される第1ポートP1と、第1連通路23aの下流側に設けられメインポート220に連通する第2ポートP2と、第2連通路23bに設けられサブポート230に連通する第3ポートP3と、を有する。
【0070】
複合弁70は、第1ポートP1から第3ポートP3への作動油の流通のみを許容する第1弁体71と、第1ポートP1から第2ポートP2への作動油の流通のみを許容する第2弁体72と、第1弁体71を摺動自在に支持するとともに第2弁体72を摺動自在に収容する支持部材76と、を有する。図2に示されるように、第1弁体71と第2弁体72とは、直線状に形成される第1連通路23aに沿って並ぶように直列配置される。つまり、主弁22の径方向に形成される第2連通路23bを流通する作動油の流れ方向を規制する第1弁体71は、第2連通路23bではなく、第2弁体72とともに主弁22の軸方向に形成される第1連通路23aに配置される。なお、第1連通路23aは、直線状に限定されず、屈曲部を有していてもよい。この場合も第1弁体71と第2弁体72とは第1連通路23aに沿って直列配置される。
【0071】
第1弁体71は、有底円筒状のポペット弁であり、第1連通路23aの軸方向に沿って設けられる中空円筒部71aと、第1連通路23aに設けられる円錐台状のシート部23dに着座する弁部71cが形成される頂部71bと、を有する。頂部71bには、第1連通路23aの軸方向に貫通する貫通孔71dが形成される。
【0072】
シート部23dは、第1連通路23aに第2連通路23bが開口する部分よりもパイロット圧室42側に設けられる。このため、弁部71cがシート部23d着座すると、第1ポートP1と第3ポートP3との連通が遮断される。シート部23dは第1連通路23aに直接形成されてもよいし、シート部23dが形成された部材が第1連通路23a内に挿入固定されてもよい。
【0073】
支持部材76は、第1連通路23a内に固定される本体部76aと、本体部76aから第1ポートP1に向かって突出し第1弁体71の中空円筒部71aに挿入される支持部76bと、本体部76aの内部に形成され第2弁体72が収容される収容孔76cと、軸方向に貫通して形成される流通孔76dと、を有する。第1弁体71と第2弁体72とは、支持部材76によって第1連通路23aに沿って変位するように支持される。支持部材76は、本体部76aの外周が第1連通路23aに螺合されることによって第1連通路23a内に固定される。
【0074】
第1弁体71内には、支持部76bによって第1圧力室79が区画され、第1圧力室79には、貫通孔71dを通じて第1ポートP1の圧力が導かれる。第1圧力室79内には、第1弁体71を閉弁方向へ付勢する第1付勢部材としての第1スプリング73が収装される。
【0075】
ここで、第1圧力室79の径D2は、第1圧力室79内に第1スプリング73を収容し易くするために大きくすることが好ましい。しかし、第1圧力室79には、貫通孔71dを通じて第1ポートP1の圧力が導かれるので、第1圧力室79の径D2をシート部23dの径D1よりも大きくしてしまうと、第1弁体71を閉弁する方向に作用する力の方が大きくなるので、第1弁体71が開弁できなくなる。
【0076】
このため、第1圧力室79の径D2は、シート部23dの径D1よりも小さく設定される。換言すれば、第1弁体71の弁部71cがシート部23dに着座した状態において、第1弁体71を開弁する方向に作用する第1ポートP1の圧力を受ける頂部71bの第1受圧面A1の面積が、第1圧力室79の圧力を受ける頂部71bの第2受圧面A2の面積よりも大きくなるように第1圧力室79の径D2は設定される。
【0077】
また、中空円筒部71aの端面71eと軸方向に対向する支持部材76の本体部76aとの間には、第3ポートP3の圧力が導かれる円環状の第2圧力室80が形成される。第2圧力室80の内径は、図2に示されるように、第1圧力室79の径D2に等しく、シート部23dの径D1よりも小さい。このため、第2圧力室80内に導かれる作動油の圧力は、第1弁体71を閉弁させる方向に作用する。
【0078】
中空円筒部71aの外周面には、図3に示されるように、切欠き71fが周方向に間隔をあけて複数形成される。この切欠き71fと第1連通路23aとによって、第2圧力室80へ第3ポートP3の圧力を導く連通路80aが画定される。切欠き71fは上記構成に限定されず、第1連通路23aの内壁面を切り欠いて形成されてもよい。また、連通路80aの形状は、切欠きに限定されず、圧力を導くことができればどのような形状であってもよく、例えば、中空円筒部71aの内部や主弁22の内部に形成され、第2圧力室80と第3ポートP3とを連通する孔であってもよい。また、連通路80aの数は、複数に限定されず、一つだけであってもよい。また、切欠き71fを周方向に等間隔に複数形成した場合、第1連通路23aの内壁面と中空円筒部71aとの接触面積が減少するため、摺動抵抗を低減させることができる。
【0079】
また、支持部材76の支持部76bの外周には、支持部76bと中空円筒部71aとの間で圧縮されるシール部材としてのOリング81が配置される。このため、支持部76bと中空円筒部71aとの間の隙間を通じて第1圧力室79と第2圧力室80とが連通することが防止される。さらに、支持部材76の本体部76aの外周には、本体部76aと第1連通路23aとの間で圧縮されるOリング82が配置される。このため、本体部76aと第1連通路23aとの間の隙間を通じて第2圧力室80と第2ポートP2とが連通することが防止される。なお、Oリング81,82のはみ出しを抑制するために、Oリング81,82に隣接してバックアップリングを配置してもよい。連通を遮断する部材としては、Oリング81,82に限定されず、シールリングなどのように密閉可能なシール部材であればどのようなものが用いられてもよい。
【0080】
第1弁体71は、第1ポートP1の圧力が第3ポートP3の圧力よりも所定値以上の差をもって大きくなった場合に、第1スプリング73を圧縮して移動してシート部23dから離座する。具体的には、第1ポートP1の圧力と第3ポートP3の圧力との圧力差による第1弁体71を開弁させる方向に作用する力が、第1スプリング73の付勢力を上回ったときに、弁部71cはシート部23dから離座する。そして、弁部71cとシート部23dとの間の隙間を通じて第1ポートP1から第3ポートP3へ作動油が導かれる。
【0081】
一方、第3ポートP3の圧力が第1ポートP1の圧力と同じになるかそれ以上になると、第1スプリング73の付勢力とともに、第2圧力室80内の圧力が第1弁体71を閉弁させる方向へと作用するので、第1弁体71はシート部23dに着座する。このようにして、第1弁体71は第1ポートP1から第3ポートP3への作動油の流通のみを許容し、その逆流を阻止する。
【0082】
第2弁体72は、有底円筒状のポペット弁であり、収容孔76c内に摺動支持される中空円筒部72aと、収容孔76cに形成された円錐台状のシート部76eに着座する弁部72bと、中空円筒部72aと弁部72bとの間に形成され径方向に貫通する径方向連通孔72cと、を有する。
【0083】
第2弁体72を収容する支持部材76の収容孔76cの開口端側には、円環状のスプリングシート77と、スプリングシート77を収容孔76c内に固定するためのスナップリング78と、が設けられる。第2弁体72とスプリングシート77との間には第2付勢部材としての第2スプリング74が圧縮して介装され、第2弁体72は、第2スプリング74によって閉弁方向へ付勢される。
【0084】
第2弁体72は、第1ポートP1の圧力が第2ポートP2の圧力よりも所定値以上の差をもって大きくなった場合に、第2スプリング74を圧縮して移動してシート部76eから離座する。具体的には、第1ポートP1の圧力と第2ポートP2の圧力との圧力差による第2弁体72を開弁させる方向に作用する力が、第2スプリング74の付勢力を上回ったときに、弁部72bはシート部76eから離座する。そして、貫通孔71d、流通孔76d、径方向連通孔72c及び第2弁体72内の中空部72dを通じて第1ポートP1から第2ポートP2へ作動油が導かれる。
【0085】
ここで、貫通孔71dの径が流通孔76dの径よりも小さいと、貫通孔71dが絞りとなって第2弁体72に作用する圧力が低下し、第2弁体72の開閉速度が遅くなり、応答性が低下するおそれがある。このため、貫通孔71dの径は、流通孔76dの径よりも大きく設定される。
【0086】
また、貫通孔71dの径が小さいと、貫通孔71dが絞りとなって第1圧力室79の圧力が低下し、第1ポートP1と第3ポートP3との圧力差が設定値よりも小さいときに第1弁体73が開弁するおそれがある。このような開弁を防止するためには、第1スプリング73の付勢力を大きくする必要があるが、第1スプリング73の付勢力を大きくすると、第1弁体71が開弁しにくくなり応答性が低下してしまう。このため、貫通孔71dの径は可能な限り大きくすることが好ましい。貫通孔71dの径を大きくした場合、第1スプリング73の付勢力を小さくすることが可能となり、第1スプリング73の設定の自由度が高くなるとともに、第1弁体71の応答性を向上させることができる。なお、要求される各弁体71,72の応答性等が満たされれば、貫通孔71dの径は、流通孔76dの径より小さく設定されてもよい。
【0087】
一方、第2ポートP2の圧力が第1ポートP1の圧力と同じになるかそれ以上になると、第2スプリング74の付勢力とともに、第2ポートP2の圧力が第2弁体72を閉弁させる方向へと作用するので、第2弁体72はシート部76eに着座する。このようにして、第2弁体72は第1ポートP1から第2ポートP2への作動油の流通のみを許容し、その逆流を阻止する。
【0088】
次に、ソレノイドバルブ100の動作について説明する。
【0089】
まず、メインポート220が流体圧力源に接続され、メインポート220からサブポート230へ流れる作動油の流量を制御する場合について説明する。
【0090】
コイル62に電流が供給されていないときには、サブリターンスプリング35の付勢力によって、プランジャ33が押圧され、副弁27のサブポペット弁27aがサブシート部26dに着座し、パイロット圧室42は閉塞された状態となる。このため、パイロット圧室42内にはメイン導入通路240,環状空間40及び導入孔41を通じてメインポート220の作動油が導かれ、パイロット圧室42内の圧力はメインポート220の圧力と同等となる。つまり、閉弁受圧面S3には、メインポート220の圧力と同等の圧力が作用することになる。
【0091】
ここで、パイロット圧室42内の圧力が作用する閉弁受圧面S3の面積は、メインポート220の圧力が作用する第1開弁受圧面S1の面積よりも大きく、また、サブポート230の圧力は、メインポート220の圧力と比較して十分に低い。したがって、閉弁受圧面S3に作用するパイロット圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力が、第1開弁受圧面S1に作用するメインポート220の圧力による推力と第2開弁受圧面S2に作用するサブポート230の圧力による推力との合力を上回り、主弁22は、シート部13を閉塞する方向に付勢される。このように、コイル62が非通電状態にあるときには、メインポート220からサブポート230への作動油の流れが遮断される。
【0092】
一方、コイル62に電流が供給されると、ソレノイド部60が発生する推力によってプランジャ33がサブリターンスプリング35の付勢力に打ち勝ってコイル62側へと吸引される。そして、プランジャ33とともに副弁27が変位することで、サブポペット弁27aはサブシート部26dから離座し、サブポペット弁27aとサブシート部26dとの間に隙間が形成される。パイロット圧室42内の作動油は、この隙間を通じて第1連通路23a、すなわち、複合弁70の第1ポートP1へと導かれる。
【0093】
ここで、複合弁70の第2ポートP2はメインポート220に臨むように配置されているため、第2ポートP2の圧力はメインポート220の圧力と同じである。つまり、第2ポートP2の圧力は第1ポートP1の圧力と略同圧となっている。このため、上述のように、第1ポートP1から第2ポートP2への作動油の流通は第2弁体72によって遮断される。
【0094】
これに対して、複合弁70の第3ポートP3はサブポート230に臨むように配置されているため、第3ポートP3の圧力は、第1ポートP1の圧力すなわちメインポート220の圧力よりも十分に低い。このため、上述のように、第1ポートP1から第3ポートP3への作動油の流通は第1弁体71によって許容される。この結果、パイロット圧室42内の作動油は、第1連通路23a,第2連通路23b及び連通孔12bを通じてサブポート230へと排出される。
【0095】
メインポート220からパイロット圧室42への作動油の流入は、導入孔41によって制限されるため、パイロット圧室42内の圧力は、パイロット圧室42とサブポート230とが連通することによって低下する。そして、閉弁受圧面S3に作用するパイロット圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力と、第1開弁受圧面S1に作用するメインポート220の圧力による推力と第2開弁受圧面S2に作用するサブポート230の圧力による推力との合力と、がバランスするまで主弁22はシート部13を開放する方向へと変位する。この結果、作動油は、貫通孔22dと第1シート部13aとの間、ポペット弁22bと第2シート部13bとの間及び連通孔12bを通じて、メインポート220からサブポート230へと流れる。
【0096】
コイル62に供給される電流が増加されると、サブポペット弁27aはサブシート部26dからさらに離れる。この結果、パイロット圧室42からサブポート230へと排出される作動油の量が増加し、パイロット圧室42内の圧力はさらに低下する。そして、パイロット圧室42内の圧力の低下に応じて主弁22がシート部13を開放する方向へとさらに移動し、スプール弁22aの貫通孔22dが第1シート部13aから露出される面積が大きくなる。この結果、メインポート220からサブポート230へと流れる作動油の流量が増加する。
【0097】
このように、コイル62に供給される電流を増減し、主弁22の変位量を制御することによって、メインポート220からサブポート230へと流れる作動油の流量が制御される。
【0098】
そして、コイル62への通電が停止されると、プランジャ33を吸引する推力が消失するため、プランジャ33は、サブリターンスプリング35の付勢力によって押圧される。そして、副弁27のサブポペット弁27aがサブシート部26dに着座すると、パイロット圧室42内には導入孔41を通じてメインポート220の作動油が導かれ、パイロット圧室42内の圧力は、メインポート220の圧力と同等となるまで上昇する。
【0099】
パイロット圧室42内の圧力がメインポート220の圧力と同等になると、上述のように、第1開弁受圧面S1に作用するメインポート220の圧力による推力と第2開弁受圧面S2に作用するサブポート230の圧力による推力との合力が、閉弁受圧面S3に作用するパイロット圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力を下回るため、主弁22は、シート部13を閉塞する方向に付勢される。この結果、主弁22は、シート部13を閉塞する方向へと変位し、メインポート220からサブポート230への作動油の流れが遮断される。
【0100】
続いて、メインポート220がタンクに接続され、サブポート230からメインポート220へ流れる作動油の流量を制御する場合について説明する。
【0101】
コイル62に電流が供給されていないときには、サブリターンスプリング35の付勢力によって、プランジャ33が押圧され、副弁27のサブポペット弁27aがサブシート部26dに着座し、パイロット圧室42は閉塞された状態となる。このため、パイロット圧室42内にはサブ導入通路250,環状空間40及び導入孔41を通じてサブポート230の作動油が導かれ、パイロット圧室42内の圧力はサブポート230の圧力と同等となる。つまり、閉弁受圧面S3には、サブポート230の圧力と同等の圧力が作用することになる。
【0102】
ここで、パイロット圧室42内の圧力が作用する閉弁受圧面S3の面積は、サブポート230の圧力が作用する第2開弁受圧面S2の面積よりも大きく、また、メインポート220の圧力は、サブポート230の圧力と比較して十分に低い。したがって、閉弁受圧面S3に作用するパイロット圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力が、第1開弁受圧面S1に作用するメインポート220の圧力による推力と第2開弁受圧面S2に作用するサブポート230の圧力による推力との合力を上回り、主弁22は、シート部13を閉塞する方向に付勢される。このように、コイル62が非通電状態にあるときには、サブポート230からメインポート220への作動油の流れが遮断される。
【0103】
一方、コイル62に電流が供給されると、ソレノイド部60が発生する推力によってプランジャ33がサブリターンスプリング35の付勢力に打ち勝ってコイル62側へと吸引される。そして、プランジャ33とともに副弁27が変位することで、サブポペット弁27aはサブシート部26dから離座し、サブポペット弁27aとサブシート部26dとの間に隙間が形成される。パイロット圧室42内の作動油は、この隙間を通じて第1連通路23a、すなわち、複合弁70の第1ポートP1へと導かれる。
【0104】
ここで、複合弁70の第3ポートP3はサブポート230に臨むように配置されているため、第3ポートP3の圧力はサブポート230の圧力と同じである。つまり、第3ポートP3の圧力は第1ポートP1の圧力と略同圧となっている。このため、上述のように、第1ポートP1から第3ポートP3への作動油の流通は第1弁体71によって遮断される。
【0105】
これに対して、複合弁70の第2ポートP2はメインポート220に臨むように配置されているため、第2ポートP2の圧力は、第1ポートP1の圧力すなわちサブポート230の圧力よりも十分に低い。このため、上述のように、第1ポートP1から第2ポートP2への作動油の流通は第2弁体72によって許容される。この結果、パイロット圧室42内の作動油は、第1連通路23a及び凹部22gを通じてメインポート220へと排出される。
【0106】
サブポート230からパイロット圧室42への作動油の流入は、導入孔41によって制限されるため、パイロット圧室42内の圧力は、パイロット圧室42とメインポート220とが連通することによって低下する。そして、閉弁受圧面S3に作用するパイロット圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力と、第1開弁受圧面S1に作用するメインポート220の圧力による推力と第2開弁受圧面S2に作用するサブポート230の圧力による推力との合力と、がバランスするまで主弁22はシート部13を開放する方向へと変位する。この結果、作動油は、連通孔12b、ポペット弁22bと第2シート部13bとの間、及び、貫通孔22dと第1シート部13aとの間を通じて、サブポート230からメインポート220へと流れる。
【0107】
コイル62に供給される電流が増加されると、サブポペット弁27aはサブシート部26dからさらに離れる。この結果、パイロット圧室42からメインポート220へと排出される作動油の量が増加し、パイロット圧室42内の圧力はさらに低下する。そして、パイロット圧室42内の圧力の低下に応じて主弁22がシート部13を開放する方向へとさらに移動し、スプール弁22aの貫通孔22dが第1シート部13aから露出される面積が大きくなる。この結果、サブポート230からメインポート220へと流れる作動油の流量が増加する。
【0108】
このように、コイル62に供給される電流を増減し、主弁22の変位量を制御することによって、サブポート230からメインポート220へと流れる作動油の流量が制御される。
【0109】
そして、コイル62への通電が停止されると、プランジャ33を吸引する推力が消失するため、プランジャ33は、サブリターンスプリング35の付勢力によって押圧される。そして、副弁27のサブポペット弁27aがサブシート部26dに着座すると、パイロット圧室42内には導入孔41を通じてサブポート230の作動油が導かれ、パイロット圧室42内の圧力は、サブポート230の圧力と同等となるまで上昇する。
【0110】
パイロット圧室42内の圧力がサブポート230の圧力と同等になると、上述のように、第1開弁受圧面S1に作用するメインポート220の圧力による推力と第2開弁受圧面S2に作用するサブポート230の圧力による推力との合力が、閉弁受圧面S3に作用するパイロット圧室42内の圧力による推力とメインリターンスプリング24の付勢力との合力を下回るため、主弁22は、シート部13を閉塞する方向に付勢される。この結果、主弁22は、シート部13を閉塞する方向へと変位し、サブポート230からメインポート220への作動油の流れが遮断される。
【0111】
このように、メインポート220からサブポート230へと流れる作動油、または、サブポート230からメインポート220へと流れる作動油の流量は、コイル62に供給される電流を増減し、パイロット圧室42内の圧力を変化させることによって制御することができる。
【0112】
また、コイル62が非通電状態にあるときにパイロット圧室42内の圧力が上昇し、この圧力が鍔部26bに及ぼす力が圧力補償スプリング28の付勢力を上回ると圧力補償スリーブ26は主弁22側へと変位する。このとき、圧力補償スリーブ26の変位に追従して副弁27及びプランジャ33も変位し、サブリターンスプリング35が伸張することでサブリターンスプリング35の付勢力が低下する。このため、パイロット圧室42内の圧力の上昇に伴いスプリング室44内の圧力が上昇したとしても、サブリターンスプリング35の付勢力が低下するので、プランジャ33を吸引するために要する推力が上昇することを抑制し、常に同じ電流でプランジャ33を駆動させることができる。
【0113】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0114】
本実施形態では、主弁22の径方向に形成される第2連通路23bを流通する作動油の流れ方向を規制する第1弁体71は、第2連通路23bではなく、第2弁体72とともに主弁22の軸方向に形成される第1連通路23a内に配置される。このように、二つの弁体71,72が一つの第1連通路23aに直列配置されるため、複合弁70をコンパクト化することができる。そして、この複合弁70が内蔵される主弁22は、径方向に形成される第2連通路23bに弁体が配置されないので、第2連通路23bを短くすることができる。このため、主弁22の外径を小さくすることが可能となり、結果として、ソレノイドバルブ100の大型化が防止され、その取付け性を向上させることができる。
【0115】
また、第1弁体71を小型化する必要がなくなるため、第1弁体71を小型化した場合と比較し、シール性を長期間にわたって維持することが可能となり、耐久性を向上させることができる。
【0116】
また、主弁22の外径が小さくなることにより、スリーブ12の外径を小さくすることが可能となる。このため、スリーブ12を押圧固定する連結部材16も小型化することができるとともに、連結部材16を固定するボルト15の強度を低減することができる。
【0117】
次に、図4を参照して、上記実施形態に係る複合弁70の変形例について説明する。
【0118】
上記実施形態に係る複合弁70において、第1ポートP1と第2ポートP2とを有する第1連通路23aは、直線状に形成され、第1弁体71の変位方向と第2弁体72の変位方向とは同じである。これに代えて、図4に示すように、第1連通路123aに屈曲部を設け、第1弁体171の変位方向と第2弁体172の変位方向とを異ならせてもよい。
【0119】
図4に示される複合弁170は、第1ポートP1から第3ポートP3への作動油の流通のみを許容する第1弁体171と、第1ポートP1から第2ポートP2への作動油の流通のみを許容する第2弁体172と、を有する。第1弁体171には、上記実施形態に係る複合弁70の第1弁体71と同様に、貫通孔171dが形成され、この貫通孔171dを通じて第1ポートP1から第2弁体172へと作動油が導かれる。第1弁体171及び第2弁体172が開閉する条件は、上記実施形態に係る複合弁70と同様であるため、その説明を省略する。
【0120】
図4に示される変形例では、第1連通路123aに屈曲部を設けることで、第1ポートP1、第2ポートP2及び第3ポートP3を複合弁170の同一側面に開口させることができる。このように、第1連通路123aを直角や鋭角、鈍角に折れ曲がった屈曲部やクランク部を有する通路として形成することで、複合弁170をコンパクト化することができるとともに、各ポートP1〜P3を任意の位置で開口させることができる。
【0121】
上記実施形態に係る複合弁70の油圧回路と変形例の複合弁170の油圧回路とは、図5に示されるように同一である。図5において、一点鎖線で示される第1弁体71,171は、第1弁体71,171の下流側に配置され、二点鎖線で示される第2弁体72,172へ第1ポートP1から作動油を導く機能と、第1ポートP1から第3ポートP3への作動油の流通のみを許容する機能と、の二つの機能を有する。一方、第2弁体72,172は、第2ポートP2への作動油の流通のみを許容する機能を有する。つまり、第1弁体71,171と第2弁体72,172とがこれらの機能を有していれば、第1連通路23a,123aはどのように配索されてもよく、上記実施形態のように直線的であってもよいし、上記変形例のように折れ曲がっていてもよい。
【0122】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0123】
複合弁70は、上流側の第1ポートP1と下流側の第2ポートP2とを有する第1連通路23aと、第1連通路23aから分岐して形成され、第3ポートP3を有する第2連通路23bと、第1連通路23aに設けられ、第1ポートP1から第3ポートP3への作動油の流通のみを許容する第1弁体71と、第1弁体71に設けられ、第1連通路23aの一部を形成する貫通孔71dと、第1連通路23aに設けられ、貫通孔71dを通じて第1ポートP1から第2ポートP2へ流れる作動油の流通のみを許容する第2弁体72と、を備え、第1弁体71は、第2弁体72よりも上流に配置されることを特徴とする。
【0124】
この構成では、第2連通路23bを流通する作動油の流れ方向を規制する第1弁体71は、第2連通路23bではなく、第2弁体72とともに第1連通路23aに直列配置される。このように、二つの弁体71,72が一つの第1連通路23aに直列配置されるため、二つの弁体71,72をそれぞれ別々の流路に配置した場合と比較しコンパクト化することができる。
【0125】
また、第1連通路23aは、直線状に形成されることを特徴とする。
【0126】
この構成では、第1弁体71と第2弁体72とが配置される第1連通路23aが直線状に形成される。二つの弁体71,72が一直線上に配置されることになるため、二つの弁体71,72が配置される流路が直線状ではない場合と比較しコンパクト化することができるとともに、組み立て性を向上させることができる。
【0127】
また、第1弁体71及び第2弁体72は、第1連通路23aに沿って変位することを特徴とする。
【0128】
この構成では、第1弁体71の変位方向と第2弁体72の変位方向とがともに第1連通路23aに沿った方向となる。二つの弁体71,72の変位方向が同じであるため、二つの弁体71,72の変位方向が異なる場合、例えば変位方向が直交するような場合と比較しコンパクト化することができる。さらに、変位方向が二つの弁体71,72が配置される第1連通路23aに沿っているため、変位方向が第1連通路23aに対して所定の角度を有するような場合と比較しコンパクト化することができる。
【0129】
また、複合弁70では、第1ポートP1の圧力と第2ポートP2の圧力が略同圧であり、その圧力が第3ポートP3の圧力よりも所定値以上の差をもって大きくなった場合に、第1弁体71は第1ポートP1から第3ポートP3への作動油の流通を許容し、第2弁体72は第1ポートP1から第2ポートP2への作動油の流通を遮断し、第1ポートP1の圧力と第3ポートP3の圧力が略同圧であり、その圧力が第2ポートP2の圧力よりも所定値以上の差をもって大きくなった場合に、第1弁体71は第1ポートP1から第3ポートP3への作動油の流通を遮断し、第2弁体72は第1ポートP1から第2ポートP2への作動油の流通を許容することを特徴とする。
【0130】
この構成では、第1ポートP1の圧力と第2ポートP2の圧力とが略同圧であり、第3ポートP3の圧力がこれらの圧力よりも低いときと、第1ポートP1の圧力と第3ポートP3の圧力とが略同圧であり、第2ポートP2の圧力がこれらの圧力よりも低いときとで第1弁体71及び第2弁体72が作動油の流通を許容するか遮断するかがそれぞれ変更される。このように、この複合弁70では、各ポートP1,P2,P3の圧力に応じて、作動油の流通状態を変更することができる。
【0131】
また、複合弁70は、第1連通路23a内に設けられる支持部材76をさらに備え、支持部材76は、第1連通路23a内に固定される本体部76aと、本体部76aから第1ポートP1に向かって突出し第1弁体71を摺動自在に支持する支持部76bと、本体部76a内に形成され第2弁体72が摺動自在に挿入される収容孔76cと、軸方向に貫通して形成される流通孔76dと、を有し、第1弁体71の貫通孔71dを通過した作動油は、流通孔76dを通じて第2弁体72へ導かれることを特徴とする。
【0132】
この構成では、第1弁体71と第2弁体72とは、第1連通路23a内に設けられる1つの支持部材76によって支持される。このように、単一の支持部材76によって二つの弁体71,72を第1連通路23a内に容易に配置することができる。また、第1弁体71と第2弁体72とのそれぞれに支持部材やハウジングを有する構成ではないため、製造コストを抑制することができる。
【0133】
また、複合弁70は、第1弁体71と支持部76bとの間に介装され、第1弁体71を閉弁方向へ付勢する第1スプリング73と、収容孔76c内に配置され、第2弁体72を閉弁方向へ付勢する第2スプリング74と、をさらに備え、第1スプリング73の付勢方向と第2スプリング74の付勢方向とは、ともに第1連通路23aに沿った方向であることを特徴とする。
【0134】
この構成では、第1弁体71の付勢方向と第2弁体72の付勢方向とがともに第1連通路23aに沿った方向となる。二つの弁体71,72の付勢方向が同じであるため、二つの弁体71,72の付勢方向が異なる場合、例えば付勢方向が直交するような場合と比較しコンパクト化することができる。さらに、付勢方向が二つの弁体71,72が配置される第1連通路23aに沿っているため、付勢方向が第1連通路23aに対して所定の角度を有するような場合と比較しコンパクト化することができる。
【0135】
また、第1弁体71は、第1連通路23aに沿って設けられ支持部76bが挿入される中空円筒部71aと、貫通孔71dが形成されるとともに第1連通路23aに形成されたシート部23dに着座する弁部71cが形成される頂部71bと、を有し、第1弁体71内には、支持部材76の支持部76bによって、貫通孔71dを通じて第1ポートP1の圧力が導かれる第1圧力室79が区画され、弁部71cがシート部23dに着座した状態において、第1弁体71を開弁する方向に作用する第1ポートP1の圧力を受ける頂部71bの第1受圧面A1の面積は、第1圧力室79の圧力を受ける頂部71bの第2受圧面A2の面積よりも大きく設定されることを特徴とする。
【0136】
第1受圧面A1と第2受圧面A2とには、第1ポートP1の圧力が作用するため、第2受圧面A2の面積が第1受圧面A1の面積よりも大きいと第1弁体71が開弁できなくなる。この構成では、第1弁体71を開弁する方向に作用する第1ポートP1の圧力を受ける頂部71bの第1受圧面A1の面積が、第1圧力室79の圧力を受ける頂部71bの第2受圧面A2の面積よりも大きく設定されるため、第1弁体71は確実に開弁させることができる。
【0137】
また、第1弁体71は、第1連通路23aに沿って設けられ支持部76bが挿入される中空円筒部71aと、貫通孔71dが形成されるとともに第1連通路23aに形成されたシート部23dに着座する弁部71cが形成される頂部71bと、を有し、第1弁体71と支持部材76の本体部76aとの間には、第3ポートP3の圧力が連通路80aを通じて導かれ、第1弁体71を閉弁方向へ付勢する第2圧力室80が形成され、連通路80aは、第1弁体71または第1連通路23aに形成されることを特徴とする。
【0138】
この構成では、第3ポートP3の圧力が導かれる第2圧力室80が第1弁体71と支持部材76の本体部76aとの間に設けられる。このため、第3ポートP3の圧力が第1ポートP1の圧力と略同圧となったときには、第1弁体71を閉弁方向へ付勢する力が大きくなり、第1弁体71を確実に閉弁させることが可能となり、第3ポートP3から第1ポートP1への逆流を防止することができる。一方、第3ポートP3の圧力が低圧となったときには、第1弁体71を閉弁方向へ付勢する力が小さくなるので、第1弁体71を確実に開弁させることができる。
【0139】
また、第1弁体71は、第1連通路23aに沿って設けられ支持部76bが挿入される中空円筒部71aと、貫通孔71dが形成されるとともに第1連通路23aに形成されたシート部23dに着座する弁部71cが形成される頂部71bと、を有し、支持部76bの外周には、支持部76bと中空円筒部71aとの間で圧縮されるOリング81が配置されることを特徴とする。
【0140】
この構成では、支持部76bと中空円筒部71aとの間で圧縮されるOリング81が設けられる。このため、貫通孔71dを通じて第1ポートP1から中空円筒部71a内に導かれる作動油が支持部76bと中空円筒部71aとの隙間を通じて第3ポートP3へ漏れることを防止することができる。また、第3ポートP3の作動油が支持部76bと中空円筒部71aとの隙間を通じて中空円筒部71a内に浸入することを防止することができる。
【0141】
また、第1連通路23aには、円錐台状のシート部23dが設けられており、第1弁体71は、シート部23dに着座するポペット弁であることを特徴とする。
【0142】
この構成では、第1弁体71は、第1連通路23aに設けられるシート部23dに着座するポペット弁として形成される。このため、第1弁体71がシート部23dに着座することにより、第1ポートP1から第3ポートP3への作動油の流通を確実に遮断することができる。
【0143】
また、ソレノイドバルブ100は、メインポート220からサブポート230へ流れる作動流体の流量とサブポート230からメインポート220へ流れる作動流体の流量とを制御する双方向流制御弁であって、上述の複合弁70が内蔵され、メインポート220とサブポート230との連通開度を変化させる主弁22と、メインポート220またはサブポート230から作動油が導かれ、主弁22を閉弁方向に付勢するパイロット圧室42と、パイロット圧室42の圧力を制御するソレノイド部60と、を備え、複合弁70は、第1ポートP1がソレノイド部を介してパイロット圧室42に接続され、第2ポートP2がメインポート220に連通し、第3ポートP3がサブポート230に連通するように主弁22内に配置されることを特徴とする。
【0144】
この構成では、第1ポートP1がパイロット圧室42に接続され、第2ポートP2がメインポート220に連通し、第3ポートP3がサブポート230に連通するように複合弁70が主弁22内に配置される。このように、コンパクト化された複合弁70が主弁22内に配置されるため、主弁22の外径を小さくすることが可能となり、結果として、ソレノイドバルブ100の大型化が防止され、その取付け性を向上させることができる。
【0145】
また、第1連通路23aは、その中心軸が主弁22の中心軸に一致するように主弁22に形成されることを特徴とする。
【0146】
この構成では、第1連通路23aの中心軸が、主弁22の中心軸と一致する。このため、第1連通路23aの加工は、主弁22の凹部22g等を加工する際に併せて行うことが可能となる。この結果、第1連通路23aの加工精度を向上させることができるとともに加工コストを低減させることができる。また、第1連通路23aから径方向に延びる第2連通路23bには弁体が配置されていないので、第2連通路23bに弁体が配置される場合と比較し第2連通路23bを短くすることができる。このため、主弁22の外径を小さくすることができる。
【0147】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0148】
例えば、上記実施形態では、複合弁70は、ソレノイドバルブ100に適用されているが、これに限定されず、3つのポート間における作動流体の流れを制御する必要があるものであれば、どのような装置にでも適用することができる。
【0149】
また、上記実施形態では、複合弁70の第2弁体72は、チェックバルブとして記載されているが、これに限定されず、例えば、リリーフバルブなどのように、第1ポートP1から第2ポートP2への作動流体の流れを許容する構成を有していれば、どのような形式の弁体であってもよい。
【符号の説明】
【0150】
100・・・ソレノイドバルブ(双方向流制御弁)、22・・・主弁、23a・・・第1連通路(第1流路)、23b第2連通路(第2流路)、23d・・・シート部、42・・・パイロット圧室(制御圧室)、60・・・ソレノイド部、70・・・複合弁、71・・・第1弁体、71a・・・中空円筒部、71b・・・頂部、71d・・・貫通孔、72・・・第2弁体、73・・・第1スプリング(第1付勢部材)、74・・・第2スプリング(第2付勢部材)、76・・・支持部材、76a・・・本体部、76b・・・支持部、76c・・・収容孔、76d・・・流通孔、79・・・第1圧力室、80・・・第2圧力室、80a・・・連通路、81・・・Oリング(シール部材)、P1・・・第1ポート、P2・・・第2ポート、P3・・・第3ポート、D1・・・シート部23dの径、D2・・・第1圧力室79の径、A1・・・第1受圧面、A2・・・第2受圧面、200・・・バルブブロック、220・・・メインポート、230・・・サブポート、240・・・メイン導入通路、250・・・サブ導入通路
図1
図2
図3
図4
図5