特許第6082821号(P6082821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6082821カルバゾールケトオキシムエステル系高い感光度の光開始剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082821
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】カルバゾールケトオキシムエステル系高い感光度の光開始剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20170206BHJP
   C07D 409/06 20060101ALI20170206BHJP
   C07D 405/06 20060101ALI20170206BHJP
   C07D 209/86 20060101ALI20170206BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20170206BHJP
【FI】
   C08F2/50
   C07D409/06CSP
   C07D405/06
   C07D209/86
   C09K3/00 U
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-553001(P2015-553001)
(86)(22)【出願日】2014年1月26日
(65)【公表番号】特表2016-509099(P2016-509099A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】CN2014071445
(87)【国際公開番号】WO2014121701
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年7月17日
(31)【優先権主張番号】201310050577.9
(32)【優先日】2013年2月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515197226
【氏名又は名称】チャンチョウ トロンリー アドバンスト エレクトロニック マテリアルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】チャン、 シャオチュン
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−113104(JP,A)
【文献】 特表2012−526185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 − 2/60
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される構造を有するカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤。
【化1】

但し、
R1は、
【化2】

n=1又は2,m=4;或いはn=1,m=3
であり、
R2は、C1〜C5の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、
R3は、C1〜C3直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、
Arは、0〜2個のメチル基又はエチル基を置換基としてするフリル基又はチエニル基或いは置換基にO、S、N原子が含まれる置換アリール基である。該置換アリール基においてO、S、N原子が含まれる置換基は、アルキルチオ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ピペラジニル基、又はモルホリニル基である。
【請求項2】
R2は、メチル、エチル、n-プロピル、又はn-ブチルであることを特徴とする請求項に記載のカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤。
【請求項3】
R3はメチルであることを特徴とする請求項に記載のカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤。
【請求項4】
Arは、下記の構造から選ばれるものであることを特徴とする請求項1に記載のカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】
【請求項5】
カルバゾールを出発原料とし、以下のステップを含む請求項1〜のいずれか一項に記載のカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤の製造方法。
(1) 置換反応:カルバゾールを有機溶剤に溶解し、臭化炭化水素であるR2‐Brと置換反応を行って、中間体a(即ち、9‐R2基カルバゾール)を得る。その反応過程は以下の通りである。
【化7】

(2) アシル化反応:中間体aを有機溶剤に溶解し、塩化アルミニウムの触媒作用下で、アシル化反応を行って、中間体b(即ち、3‐R1基アセチル‐6‐Ar基アシル‐9‐R2基カルバゾール)を得る。その反応過程は以下の通りである。
【化8】

(3) 酸化反応:得られた中間体bから、酸化反応を経て、中間体c(即ち、1‐(6‐Ar基アシル‐9‐R2基カルバゾイル‐3‐イル)‐2‐R1‐1,2‐ジオン‐2‐オキシム)を得る。その反応過程は以下の通りである。
【化9】

(4) エステル化反応:得られた中間体cと、R3基ギ酸無水物又はR3基ホルミルクロライドとのエステル化反応により、目標生成物(即ち、式(I)で表されるカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤)を得る。その反応過程は以下の通りである。
【化10】
【請求項6】
下記の構造を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤を調製するための中間体化合物。
【化11】

但し、R1、R2及びArの定義は引用された請求項における定義と同じである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光開始剤技術分野に関し、特にカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化は単量体、オリゴマー又は重合体基質の光誘導下での硬化過程を指す。該技術は現代のマイクロエレクトロニクス技術、例えば、光硬化インク、液晶パネルの密封、感光性印刷プレート、フィルター及びフォトレジスト等に広く応用されている。光硬化技術の核心は、光硬化可能な重合単量体及び適切の光開始剤にある。一定波長の光源の照射で、光開始剤が活性基を生み出し、重合可能な単量体における不飽和基を励起して重合反応を開始させ、材料の硬化を引き起こす。
【0003】
光開始剤は光硬化組成物(感光性組成物)の感光性能に影響する最も主要な要因である。現段階では、光開始剤に関する研究や報道が多くなされているが、これらの光開始剤の感光活性が一般的に低く、かつ適用する光源の種類の面には大きな制限が存在し、ほとんどは紫外励起のみに適用できる。例えば、現有のオキシムエステル系光開始剤、例えばCN101508744Aに開示されるカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤、購入できるオキシムエステル系光開始剤OXE-02、CN101565472Aに開示されている一種のケトンオキシムエステル光開始剤、及び購入できるケトンオキシムエステル光開始剤OXE-01などは、いずれも水銀ランプ(高圧、中圧、低圧水銀ランプを含む)を露光源とする応用要求しか満たさない。
【0004】
人々が環境、安全意識に対する要求の高まり、及び光重合技術の発展に伴って、LED、LDIなどの低エネルギー、高安全性かつ省エネで環境にやさしい露光灯源は本領域の技術応用と発展の傾向になっている。この状況では、LED、LDIなどの低エネルギー、長波長出力の露光源に適合できる光開始剤を研究と開発することは、重要な現実的と経済的な意味がある。現在では、現有の光開始剤はいずれもうまくLED、LDIなどの露光源と適合できず、その顕著な表現は感光度(即ち感光活性)が低いことである。
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、非常に優れた感光性能を有し、特にLED、LDIなどの露光灯源で非常に高い感光度を示す新規のカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤を提供することにある。
【0006】
上記技術效果を達成するために、本発明は以下の技術案を採用した。
式(I)で表される構造を有するカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤。
【0007】
【化1】
【0008】
[但し、
R1は、
【0009】
【化2】

であり、
【0010】
R2は、C1〜C20の直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、
R3は、C1〜C10のアルキル基、又はC3〜C8のシクロアルキル基、又はC1〜C4のアルキル基とC3〜C8のシクロアルキル基とを組み合わせたシクロアルキルアルキル基、又は任意でアルキル基で置換された(即ち、置換基を有してもよい)フェニル基であり、
Arは、任意で置換基を有する(即ち、置換基を有してもよい)S又はO含有複素環基、又は置換基にO、S、N原子が含まれる置換アリール基である。]
【0011】
さらに、式(I)で表されるカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤化合物において、R1はn=1又は2、m=3又は4であることが好ましい。
R2は、C1〜C5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチルがより好ましく、エチルが特に好ましい。
R3は、C1〜C3の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、メチルがより好ましい。
【0012】
Arにおいて、前記置換基を有してもよいS又はO含有複素環基は、0〜2個の置換基、特に0〜2個のメチル又はエチルを有することが好ましい。前記S又はO含有複素環基は、好ましくはフリル基又はチエニル基である。前記置換アリール基においてO、S、N原子が含まれる置換基は、好ましくはアルキルチオ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ピペラジニル基、又はモルホリニル基などである。
【0013】
またさらに、上記の式(I)で表されるカルバゾールケトオキシムエステル系化合物において、Ar基は、好ましくは下記の構造から選ばれるものである。
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
本願発明の目的は、さらに上記の式(I)で表されるカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤の製造方法を提供することにある。該方法はカルバゾールを出発原料とし、以下のステップを含む。
【0019】
(1) 置換反応:カルバゾールを有機溶剤に溶解し、臭化炭化水素であるR2‐Brと置換反応を行って、中間体a(即ち、9‐R2基カルバゾール)を得る。その反応過程は、以下の通りである。
【0020】
【化7】
【0021】
(2) アシル化反応:中間体a(9‐R2基カルバゾール)を有機溶剤に溶解し、塩化アルミニウムの触媒作用下で、アシル化反応を行って、中間体b(即ち、3‐R1基アセチル‐6‐Ar基アシル‐9‐R2基カルバゾール)を得る。その反応過程は以下の通りである。
【0022】
【化8】
【0023】
(3) 酸化反応:得られた中間体b(3‐R1基アセチル‐6‐Ar基アシル‐9‐R2基カルバゾール)から酸化反応を経て、中間体c(即ち、1‐(6‐Ar基アシル‐9‐R2基カルバゾイル‐3‐イル)‐2‐R1‐1,2‐ジケトン‐2‐オキシム)を得る。その反応過程は以下の通りである。
【0024】
【化9】
【0025】
(4) エステル化反応:得られた中間体c(1‐(6‐Ar基アシル‐9‐R2基カルバゾイル‐3‐イル)‐2‐R1‐1,2‐ジケトン‐2‐オキシム)とR3基ギ酸無水物又はR3基ホルミルクロライドとのエステル化反応により、目標生成物(即ち、式(I)で表されるカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤)を得る。その反応過程は以下の通りである。
【0026】
【化10】
【0027】
本発明の製造方法に使用される全ての原料は従来技術における既知の化合物であり、市販から入手又は既知の合成方法により製造してなり、かつ各ステップの反応原理も当業者にとって理解しやすいものである。
【0028】
また、本発明の目的はさらに、下記の構造を有する、上記の式(I)で表されるカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤を調製するための中間体化合物(即ち、上記の中間体c)を提供することにある。
【0029】
【化11】
【0030】
但し、R1、R2及びArの定義は前述した通りであり、式(I)に記載している定義と同じである。
【0031】
本発明の式(I)で表されるカルバゾールケトオキシムエステル系化合物は感光性(光硬化)組成物において光開始剤として使用でき、非常に優れた感光性能を有する。ここで、感光性組成物におけるその他の成分は特に限定されないが、本分野の公知や汎用な成分(例えばCN101059655Aに開示される内容に参照し、その全文を参考としてここに援引する)、例えば、光重合可能なアクリル系樹脂であってもよい。
【0032】
本発明の有益の技術效果は以下の通りである。即ち、本発明に記載されているカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤は、応用性能が優れており、格段に高い感光性能を有し、特にLED、LDIなどの露光灯源の元で非常に高い感光活性を示し、現段階で市販のIrgacure369、OXE-01等の光開始剤より明らかに優れ、且つCN101565472Aに開示のカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤よりも優れている。同時に、本発明の生産方法は簡単であり、生産過程において汚染廃棄物が生じることなく、生成物の純度が高く、工業化生産に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、具体的な実施例をもって本発明をさらに説明するが、それを本発明の保護範囲に対する制限として理解すべきではない。
【0034】
調製実施例
実施例 1:
下式で表される1-[6-(2-チエニルホルミル)-9-エチルカルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチル-プロパン-1,2-ジオン-2-オキシムアセテートの調製
【0035】
【化12】
【0036】
ステップ1: 9-エチルカルバゾールの調製
【0037】
【化13】
【0038】
500mL四つ口フラスコにカルバゾール40g、テトラエチルアンモニウム臭化物1.5g、トルエン200mLを仕込み、撹拌しながら140gの配合したばかりの50% NaOH水溶液を加え、約30minをかけてブロモエタン31.2gを滴下した後、加熱還流して6h反応させた。室温まで冷却し、水層を分離し、産物液層を水で3回洗浄し、無水MgSO4で乾燥してから、吸引ろ過した。溶剤を減圧濃縮で除去し、残留物を無水アルコールで再結晶させ、白色針状結晶体70gを得た。収率が75%であり、相対純度が99%である。
【0039】
ステップ2: 3-(3-シクロペンチルプロパノイル)-6-(2-チエニルホルミル)-9-エチルカルバゾールの調製
【0040】
【化14】
【0041】
500mL四つ口フラスコに9-エチルカルバゾール30g、AlCl3(細かく粉砕)21.6g、ジクロロメタン150mLを仕込み、撹拌しながら保護するようにアルゴンガスを導入し、氷浴で冷却した。温度が0℃に下がった時点で、2-チエニルホルミルクロライド23.2gとジクロロメタン21gとの混合液の滴下を開始し、温度を10℃以下に制御した。約1.5hで全部加え、引き続き2h撹拌した。その後、フラスコにAlCl3(細かく粉砕)21.6gを加え、シクロペンチルプロピオニルクロライド27.2gとジクロロメタン20gとの混合液を滴下し、温度を10℃以下に制御して、約1.5hで全部滴下した。その後、温度を15℃まで昇温し、引き続き2h撹拌し、反応を止めた。反応液を400gの氷と65mLの濃塩酸とを配合した希塩酸に注ぎ、分液ロートで下層産物液を取出し、上層を50mLのジクロロメタンで抽出した。抽出液と産物液を合わせ、NaHCO3 10gと水200gを配合したNaHCO3溶液で洗浄し、さらに、pH値が中性になるまでに200mLの水で3回洗浄した。30gの無水MgSO4で乾燥して、水を除去してから、ジクロロメタンを回転蒸発させた。蒸発した後、回転蒸発瓶中の粗生成物が固体粉末状であり、200mLの常圧で蒸留された石油エーテルに入れ、吸引ろ過し、浅い黄色の粉末状固体を得た。70℃のオーブンで2h乾燥して、生成物を46.2g得た。収率が70%であり、純度が95.2%である。
【0042】
ステップ3: 1-[6-(2-チエニルホルミル)-9-エチルカルバゾール-3-イル]-(3-シクロペンチル-プロパン-1,2-ジオン-2-オキシムの調製
【0043】
【化15】
【0044】
250mL四つ口フラスコに上記のステップ2の生成物19.1g、テトラヒドロフラン100mL、濃塩酸19g、亜硝酸イソアミル8gを仕込み、常温で5h撹拌し、反応を止めた。2000 mLビーカーに反応液を入れ、1000 mLの水を加えて撹拌し、200gのジクロロメタンで抽出し、抽出液に50g無水MgSO4を入れて乾燥してから、吸引ろ過した。ろ液を減圧回転蒸発で除去し、回転蒸発瓶中で油状粘稠物が得られた。粘稠物を150mLの石油エーテルに入れ、撹拌しながら析出させた。吸引ろ過し、黄色粉末状の固体を得た。70℃で5h乾燥し、生成物を14.8g得た。収率が74%であり、純度が95%である。
【0045】
生成物の構造は核磁気共鳴水素スペクトルで確認され、具体的な表徴結果が以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3, 500MHz):1.468〜1.497(3H, t, -CH3), 1.537〜1.893(9H, m, シクロペンタン),2.706〜2.722(2H, d, -CH2-), 4.401〜4.444(2H, q, -CH2-), 7.285--8.542(9H, m,芳香族環)。
【0046】
ステップ4: 1-[6-(2-チエニルホルミル)-9-エチルカルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチル-プロパン-1,2-ジオン-2-オキシムアセテートの調製
【0047】
250mL四つ口フラスコにステップ3の生成物14.8g、ジクロロメタン100gを仕込み、室温下で5min撹拌した後、酢酸無水物を滴下した。約30minで全部滴下してから、引き続き2h撹拌した後、5%のNaHCO3水溶液を加え、pH値が中性になるまでに調整した。分液ロートで分層してから、200mLの水で2回洗浄した。50gの無水MgSO4で乾燥し、溶剤を回転蒸発させ、粘稠状の液体を得た。メタノール再結晶によりベージュ色の固体粉末が得られた。ろ過して、70℃で2h乾燥し、生成物を11g得た。純度が98%である。
【0048】
生成物の構造は核磁気共鳴水素スペクトルで確認され、具体的な表徴結果が以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3, 500MHz):1.468〜1.497(3H, t, -CH3), 1.537〜1.893(9H, m, シクロペンタン),2.281(3H, s, -CH3), 2.706〜2.722(2H, d, -CH2-), 4.401〜4.444(2H, q, -CH2-), 7.285--8.542(9H, m,芳香族環)。
マススペクトルMS:m/Z : 523(M+Na)+
【0049】
実施例2〜9、11:
実施例 1で示される方法に参照し、対応する薬剤から実施例2〜9、11の化合物を調製した。目標化合物及びその1H-NMRのデータを表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
性能の測定
上述した実施例における生成物を例として、本発明に係る光開始剤の性能に対して測定を行い、かつそれを市販の光開始剤Irgacure369(2-フェニル-2-ジメチルアミノ-1-(-4-ホルマリン)-ブタノン-1)、OXE-01(1-(4-フェニルチオフェニル) -オクタン-1,2-ジオン-2-安息香酸オキシムエステル)、及び物質A(CN101565472Aに開示されているケトンオキシムエステル光開始剤1-(4-フェニルチオフェニル)-(3-シクロペンチル) -プロパン-1,2-ジオン-2-安息香酸オキシムエステル)と対比した。
【0054】
1.紫外吸収波長の測定
測定方法:光開始剤製品0.001gを正確に秤量し、100mLの容量フラスコに入れ、そして容量フラスコにアセトニトリルを100mLの目盛りまで加え、濃度が10−5g/mLの溶液に調合し、分光光度計で紫外吸収測定を行い、測定結果を表2に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
上記の表からわかるように、本発明に係るカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤は伝統的な光開始剤及び現有のケトンオキシムエステル系光開始剤に比べてより長波長の紫外吸収を有し、長波長の光源とより適合しやすい。
【0057】
2.感光度の測定
測定方法:
単一のトリプロピレングリコールジアクリレートをモノマーとして、単一の光開始剤と均一に混合した後に露光し、トリプロピレングリコールジアクリレート:光開始剤=50g:2g;塗布厚さ24μm;クローラ式露光で、灯源がLED灯であり、出力波長390nm、パワー2W/cm2、塗膜が完全に硬化するに要するクローラを通る回数で感光の大きさを判断し、測定結果を表3に示す。
【0058】
【表5】
【0059】
表3における測定結果より明らかのように、本発明に係る式(I)で表される光開示剤は、長波長出力のLED灯の照射で、Irgacure369、OXE-01、及び物質Aよりも高い感光度を示す。つまり、本発明のカルバゾールケトオキシムエステル系化合物は光開始剤として、その感光(光硬化)性能がより優れている。
【0060】
上記により、本発明に係るカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤は、応用性能が優れ、非常に高い感光性能を有し、特に低エネルギー、長波長出力のLED、LDIなどの露光灯源の元でとても高い感光度を示し、現段階で市販のIrgacure369、OXE-01などの光開始剤より明らかに優れており、CN101565472Aに開示のカルバゾールケトオキシムエステル系光開始剤よりも優れる。