【実施例】
【0029】
ここで、ほんの一例である実施例を添えて、本発明をより具体的に説明する。実施例1は、本発明の方法を用いた、UF乳清透過物からの3’−シアリルラクトースの直接単離について説明する。実施例2は、UF乳清透過物がナノ濾過を使用して最初に濃縮される本発明の方法を使用した、濃縮されたUF乳清透過物からの3’−シアリルラクトースの単離について説明する。実施例3〜7は、ナノ濾過とそれに続くイオン浸透クロマトグラフィーを使用してUF乳清透過物が最初に濃縮される本発明の方法を使用する、濃縮されたUF乳清透過物からのシアリルラクトースの単離について説明する。また添付の図面に関しては:
図1は、実施例1の方法にかかる工程を示すフローチャートであり;
図2は、実施例2の方法にかかる工程を示すフローチャートであり;そして、
図3は、実施例3の方法にかかる工程を示すフローチャートである。
【0030】
<実施例1>
全ての実施例について、本発明における第一の工程は、チーズ乳清中のタンパク質の大部分を取り除く限外濾過(UF)工程である。
UF工程は、乳清タンパク質濃縮物(WPC)35、60、80及び85の製造を含むことができる。この工程の副産物は、固形分が約4〜7%の乳清透過物であり、約90〜95%のラクトース、1〜5%のタンパク質(NPNと純タンパク質)、4〜7%の灰分、及び0.05〜0.25%の3’−シアリルラクトース(3−SL)で構成される。年間のある時期には、3−SLの割合がかなり高く、固形分が最大0.5重量%程度までとなることがある。
【0031】
実施例ではUF透過物を一組の樹脂と直接接触させ、そして、3−SLは陰イオン樹脂に最終的に取り込まれた。この工程は添付図面の
図1に要約される。
【0032】
固形分約5%、3’−SL約60ppmのUF乳清透過物ストリーム1,035リットルをポンプで送り、直径200mmのカラム内の一組の樹脂に通すことによって、連続的に以下の樹脂と直接、接触させた。
・15リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン);
・22リットルのFPA55(アクリル系の弱塩基性陰イオン);
・23リットルのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・23リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン);
・17リットルのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・17リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)。
【0033】
3−SLは、最後の陰イオン樹脂に取り込まれ、4.4%の水酸化アンモニウム28リットルと、それに続く脱塩水50リットルによって溶出された。溶出した物質は、約6〜15重量%の3’−シアリルラクトースを含んでいた。そして、これを30リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン)、及びそれに続くFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)と接触させ、過剰のアンモニアを取り除き、最終生成物のpHを7〜9.5に調整した。
【0034】
得られた生成物は、固形分重量あたりで12〜50重量%の非常に高純度な3’−シアリルラクトースを含んでいた。最終生成物中における灰分含量は、10%未満であり、残りはタンパク質であった。タンパク質の値の約20〜50%はNPNであった。このようにして、本実施例では、一定の流速で3−SLをポンプで送ることによって、以下の一組の樹脂に通し、透過物を直接接触させた: 陽イオン−陰イオン−陽イオン−陰イオン−陽イオン−陰イオン。
これは、不要かつ干渉する分子を取り除くことを可能とし、また、特に最後の陰イオン樹脂カラムに3−SLが取り込まれるようにする。具体的には、以下の系列は、3−SLを最大に回収することについて最高の結果を示した:
・強酸性陽イオン(WAC)−弱塩基性陰イオン(WBA)−強酸性陽イオン(SAC)−弱塩基性陰イオン(WBA)−強酸性陽イオン(SAC)−弱塩基性陰イオン(WBA)。
3−SLは、少量のタンパク質(純タンパク質+NPN)といくらかの陰イオンと共に、最後の陰イオンカラムに取り込まれる。次に、3−SLは、水酸化アンモニウムを使用して溶出される。(アンモニア、カリウム、ナトリウム、マグネシウム若しくはカルシウムの塩化物、又はそれらの組み合せをうまく使用することもできる。)
【0035】
層を通した圧力の低下が大きくなり過ぎるので、処理された透過物を回収するために、適切な位置で中断タンク(break tank)を使用してもよい。このタンクから、処理された透過物はさらにポンプで送られ、残りのカラムを通過する。
【0036】
次に、溶出した3−SLは、塩を取り除くために、陽イオン樹脂とそれに続く陰イオン樹脂で浄化された。その代案として、透析濾過、NF、電気透析、透析又は他の手法によって塩を取り除くことができる。樹脂技術の使用による他の利点は、特定の不要のNPNを同様に取り除くことである。
【0037】
得られた物質は、NF及び/又は蒸発による濃縮のために7〜42重量%の3−SL含有量を有しており、非常に高い3−SL濃度を有する白い生成物を得るために最後に乾燥される。
【0038】
最後の弱塩基性陰イオン樹脂における透過物からの3’−SLの取り込みはほぼ100%であり、溶出されたのは、吸着された3’−SLの総量のうちの85〜100%であった。上記の製造過程において、イオン交換樹脂技術における当業者にとっては、水酸化アンモニウムの濃度、体積、又はそれら両方の変更を検討し、溶出を最適化して、その結果、収量について妥協するか否かに関わらず、最も高い純度を得ることが可能である。また、3−SLの最も高い純度と収量を得るために、予備的な工程として、より低い濃度の水酸化アンモニウムを用い、次に最適濃度の水酸化アンモニウムで溶出することによって、陰イオン樹脂中の不要の物質の溶出を選択することができる。
【0039】
<実施例2>
上記の実施例1のように、乳清透過物を再び限外濾過(UF)工程にかけた。次に、ナノ濾過(NF)により、UF透過物を固形分30%まで濃縮して、濃縮された原料を本発明による一組の樹脂と接触させることで、最終的に3−SLを陰イオン樹脂に取り込んだ。該工程を添付図面の
図2に要約する。
【0040】
UF透過物は、ナノ濾過によって濃縮され、固形分が約15〜25%、186〜208ppmの3’−シアリルラクトースを含むNF残余分(NF retentate)が得られた。2,500mlの上記NF残余分は、直径25mmのカラム内で樹脂の中にポンプで送られることによって、以下の一組の樹脂の中に通された/送り込まれた:
・120mlのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン);
・180mlのFPA55(アクリル系の弱塩基性陰イオン);
・180mlのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・180mlのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン);
・100mlのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン);
・150mlのFPA55(アクリル系の弱塩基性陰イオン);
・150mlのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・150mlのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)。
【0041】
この場合も先と同様に、圧力低下の問題を回避するために、第4カラムの後に中断タンクを首尾よく用いた。
【0042】
3−SLは、最後の陰イオン樹脂に取り込まれ、180mlの4.4%水酸化アンモニウムと、その後に続く300mlの脱塩水を用いて溶出された。溶出した物質は、約6〜18重量%の3’−シアリルラクトースを含んでいた。そして溶出した物質を、250mlのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン)と、その後に続く120mlのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)とに接触させて、過剰のアンモニアを除去し、最終生成物のpHを7〜9.5に調整した。得られた生成物は、固形分で20〜50重量%にあたる、非常に高い純度の3’−シアリルラクトースを含んでいた。最終生成物の灰分含量は、10%未満であり、残りはタンパク質であった。タンパク質の値の約20〜50%はNPNであった。
【0043】
<実施例3>
乳清透過物は、実施例1と2に関して説明したものと同様に、限外濾過工程にかけられた。次に、UF透過物は、ナノ濾過を使用して固形分20〜30%(好ましくは25%)に濃縮され、そして、透過物は、50〜80℃の高温でイオン浸透クロマトグラフィー(さもなければ、大抵はイオン排除クロマトグラフィーと称される)にかけられた。溶出した物質は、2つの画分に分けられた。−最初の画分は、大部分のタンパク質(NPNを含む)、無機物及び3−SLを含む帯電分子を含み、それに続く画分は、ラクトースなどの非帯電分子を含む。次に、3−SLを含む最初の画分を、実施例1で示す一組の樹脂と接触させた。そして、3−SLは最終的に陰イオン樹脂に取り込まれた。該工程は、添付図面の
図3に要約される。
【0044】
より詳細には、イオン浸透の工程は、650リットルのCR1310Kを含むクロマトグラフカラムを使用し、プロセス水で較正された3メートルの高さの層を与えた。+4〜75℃の運転温度で評価を行い、高い温度で最も良い結果が得られた。UF透過物は、ナノ濾過によって濃縮され、固形分が約22〜25%、118〜304ppm(平均220ppm)の3’−シアリルラクトースを含むNF残余分が得られた。そして、イオン排除工程として、この原料をイオン排除樹脂層と、それに続く水の中を通し、ナノ濾過した原料をポンプで送った。最適な結果として、樹脂の対NF残余分の1サイクルあたりのロード率は1:0.1で維持され、水の0.9bvがそれに続いた(1bv=全樹脂量、viz.=650リットル)。0.3〜0.86bv/時間の一定の流速が評価された。流速の変化は、得られたクロマトグラムの本質に、大きな影響を与えることはなかった。溶出した物質は、2つの画分に分けられた。−最初の画分は、無機物及びタンパク質(NPNを含む)とともに3’−シアリルラクトースを含み、それに続く第二の画分は、ほとんど純粋な状態のラクトースを含む。1サイクルによって得られた3’−シアリルラクトースを多く含む画分の実容量は、135リットルであった。固形分は0.5〜1%の間で異なり、3’−シアリルラクトースのレベルは、固形分で0.5〜1.3重量%であった。95サイクル以上の操作における3’−シアリルラクトースの再生は、80〜100%の範囲にあり、再生の平均は85%であった。
【0045】
次に、950リットルの3−SLを豊富に含む画分を、以下の樹脂に、順に通過させた。
・15リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン);
・22リットルのFPA55(アクリル系の弱塩基性陰イオン);
・17リットルのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・17リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)。
【0046】
3−SLは、最後の陰イオン樹脂に取り込まれ、28リットルの4.4%アンモニウムと、その後に続く50リットルの脱塩水を用いて溶出された。溶出した物質は、約6〜15重量%の3’−シアリルラクトースを含んでいた。そして、これを、30リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン)と、その後に続く23リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)とに接触させて、過剰のアンモニアを取り除き、最終生成物のpHを7〜9.5に調整した。固形分0.3〜1%の得られた生成物は、固形分あたりで0.5〜3重量%の3’−シアリルラクトースを含んでいた。最終生成物の灰分含量は10%未満であり、ラクトース含量は30〜50%、残りがタンパク質であった。タンパク質の値の約20〜50%はNPNであった。
【0047】
<実施例4>
別の製造方法では、実施例3に記載のナノ濾過とイオン浸透工程によって製造された1,600リットルの3−SLを豊富に含む画分をポンプで送り、直径200mmのカラム内を通すことによって、以下の一組の樹脂と接触させた:
・15リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン);
・22リットルのFPA55(アクリル系の弱塩基性陰イオン);
・17リットルのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・17リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン);
・17リットルHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・17リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)。
【0048】
3−SLは、最後の陰イオン樹脂に取り込まれ、28リットルの4.4%水酸化アンモニウムと、その後に続く50リットルの脱塩水を用いて溶出された。溶出した物質は、約6〜15重量%の3’−シアリルラクトースを含んでいた。そして、これを、30リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン)と、その後に続く23リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)に接触させて、過剰のアンモニアを取り除き、最終生成物のpHを7〜9.5に調整した。得られた生成物は、固形分で20〜70重量%にあたる非常に高い濃度の、精製された3’−シアリルラクトースを含んでいた。最終生成物の灰分含量は、10%未満であり、残りがタンパク質であった。タンパク質の値の約15〜30%はNPNであった。
【0049】
<実施例5>
乳清透過物は、実施例1と2に関して説明したのと同様に、限外濾過工程にかけられた。UF透過物を本発明による二相の一組の樹脂と接触させ、最終的に3−SLは陰イオン樹脂に取り込まれた。該工程は、添付図面の
図1に要約したものの変形である。
【0050】
30〜80ppmの3’−シアリルラクトースを含む固形分2〜6%のUF透過物を使用した。
本実施例の第1相において、多量の上記UF残余分をポンプで送り、直径200mmのカラム内を通すことによって、以下の一組の樹脂の中を通された/送り込まれた:
・15リットルのIMAC HP336(ポリアクリル酸の弱酸性陽イオン);
・22リットルのFPA55(アクリル系の弱塩基性陰イオン);
・17リットルのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン);
・17リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)。
UF残余分のロードのカットオフポイントは、排出水伝導率が約300〜400マイクロジーメンスに達したときのポイントに決定した。上記手順を3回連続して繰り返すことによって、残余分のロードは、各々610リットル、650リットル及び600リットルとなった。上記の4つの樹脂カラムを通過して脱塩された3’−SLを有する対象の生成物(残余分)は、100リットルのプロセス水、上記の684リットル、724リットル及び674リットルの連続3回の繰り返しによって、第1相で得られた生成物と置き換えられた。
【0051】
そして、本実施例の第2相では、800リットルの第1相で溶出した物質を、17リットルのHP1110(スチレン−DVBの強酸性陽イオン)と、それに続く17リットルのFPA51(スチレン−DVBの弱塩基性陰イオン)とに接触させた。精製された3’−SLを含む対象の生成物は、最後の樹脂に取り込まれ、そして20リットルの1%塩化カリウムと、それに続く45リットルのプロセス水を用いて溶出された。
【0052】
第2相の2度の繰り返しにおいて、合計120リットルの溶出した生成物を得た。次に、これをナノ濾過、それに続く透析濾過にかけ、7.3リットルの残余分を製造した。この生成物は、固形分27重量%の3’−シアリルラクトースを含む。
【0053】
凍結乾燥の後、ナノ濾過とダイアフィルター(商標)にかけられた生成物2.96リットルから、固体の3’−SL重量で30重量%含む420gの乾燥生成物を製造した。最終物質の灰分含量は16%であり、たんぱく質は30%で、2%のNPNを含んでいた。
【0054】
<実施例6>
別の製造方法において、実施例3に記載されたイオン排除工程による3−SLを多く含む画分は、ナノ濾過によって固形分約12%にまで濃縮された。この物質15mlを150mlのセファデックス(Sephadex)G25でクロマトグラフし、固形分で4〜6重量%の3−SLを含む最終生成物を得た。回収率は約98%であった。市販されているトヨパール(Toyopearl)(商標)HW40、バイオゲル(Bio−Gel)(商標)P−4、バイオゲル(商標)P−6又はその他バルク脱塩樹脂のような、セファデックスG10を含む任意の脱塩樹脂を使用することができる。
【0055】
上記実施例で示すように、本発明の単離の工程は、本質的に、透過物原料(実施例1の場合は未処理のUF透過物、実施例2の場合はナノ濾過された透過物、又は、実施例3〜6の場合はイオン排除された原料)を以下の樹脂に通すことを含む:
・弱酸性陽イオン樹脂(例えば、Imac HP336又はWK40)
・弱又は強陰イオン樹脂(例えば、FPA55又はFPA42)
・強酸性陽イオン樹脂(例えば、Imac HP1110又はFPC23)
・弱又は強陰イオン樹脂(例えば、FPA51、FPA55又はFPA42)
【0056】
これは透過物原料の浄化をもたらす。浄化に続いて、適切な陰イオン交換樹脂に3−SLを吸収することができる(好適な実施例は、FPA51であり、最も良い溶出をもたらした)。原料は陰イオン樹脂の前に陽イオン樹脂を通過でき、全ての3’−SLが陰イオン樹脂に取り込まれる。先の陽イオンの有無に関わらず、強塩基性陰イオンを使用することは、3’−SLが樹脂に取り込まれることにつながるが、また溶出媒体のより大きな溶出力をも必要とする。樹脂からの溶出は、水酸化アンモニウム、塩化カルシウム、NaCl及びKCl又はこれらの組み合せを使用することで達成された。
【0057】
<実施例7>
実施例5と同じ方針に沿って実施された別の系の実験において、3’−シアリルラクトースの溶出画分は様々な画分に分けられ、100%純粋な3’−シアリルラクトースの画分は、収率が19〜20%に減少して得られた。
【0058】
画分は、直接凍結乾燥すること、又は、適切な方法による固形分の濃縮に続いて、スプレー乾燥することができる。
【0059】
負に帯電した分子は不要であり、及び/又は、3−SLが陰イオン樹脂(FPA51)に選択的に付着する妨げとなるが、本発明の方法についての周辺の原理は、この負に帯電した分子を除くことから成る。3−SLが陰イオン樹脂に捕えられる前に、3−SLを負に帯電させるため、陽イオン樹脂は不可欠である。
【0060】
任意の強陽イオン樹脂を使用した正に帯電した分子の除去に続いて、3−SLが任意の陰イオン樹脂に捕えられることが予期される。しかし、驚くべきことに、そのようにはならず、3’−SLと樹脂との間の結合が非常に弱く、任意の競合する陰イオン種の存在によって容易に分離することが示唆される。上記のように、一組である4つの樹脂全てを有することは不可欠である。このような場合、ナノ濾過された透過物が出発物質として使用されると(実施例2参照)、弱陰イオン樹脂を含む最後のカラムで3−SLを捕えるためには、前記の4つの樹脂の存在に加えて、再度これら4つの樹脂をこの順番で有することが非常に望ましい。
【0061】
純粋な天然状態の3−SLは非常に弱い負電荷を帯びた分子として存在している。H
+イオンを除くほとんどすべてのカチオン種を除去し、多くの競合する陰イオンを除去した場合に、陰イオン樹脂は3−SLのみを捕えることができる。本発明の方法は、固形分で3〜60重量%の異なった濃度範囲である場合に、精製された3−SLを得ることを目的とする。この目的を達成することは容易ではない。第一の弱酸性陽イオンは、CaやMgなど、多くの二価の陽イオンや、それほどではないにせよ、乳清の中に存在するNa、Kや、特定のアミノ酸やタンパク質をも取り除く。第二の樹脂である弱塩基性陰イオンは、塩化物、リン酸塩及び硫酸塩などの負電荷を帯びた一部の分子や、ある程度のクエン酸塩、乳酸塩、並びに負電荷のアミノ酸やタンパク質を捕える。次に、第三の樹脂は、残存する陽イオンのほとんど全てを捕える強い陽イオン樹脂である。第四の樹脂は、選択的に、3−SL上に残存する陰イオンをどれでも捕える弱塩基性陰イオンである。最小限の3−SLがこのカラムに捕えられることを確実にするために、第四の樹脂によって取り込まれた3−SLのどれもが、競合する陰イオンによって選択的にたたき出されることが、工程の上で好ましい。一度、原料が浄化されると(又は90%以上が脱塩されると)、事実上、すべての残存する陽イオンを取り除くために、強酸性陽イオンを放出することができ、その結果、3−SLを天然の又は自由な状態(“H−3−SL”の可能性が最も高い)で存在することができる。次に、−OH型の弱い陰イオンは、容易に“H−3−SL”と反応し(HはOHと反応して水になる)、負に帯電した3−SLは弱陰イオン樹脂によって容易に捕えられる。
【0062】
上記より明らかなように、3’−SLを含む原料を樹脂と接触させる前に、透析、電気透析、透析濾過などの群から選択される手順/技術によって、樹脂上のイオンによる負荷を軽減させる手法を選択できる。これは、樹脂の耐荷性を高める一方で、対象のオリゴ糖を単離する基本的な原則を変更しない。
【0063】
すべての場合において、3−SLをとらえる際に技術的に等しくうまく作用するのは強塩基性陰イオンであるが、最後の樹脂は弱塩基性陰イオンである。一方、強塩基性陰イオンからの溶出は弱塩基性陰イオンと比較してより困難である。KCl、NaCl、CaCl
2などの塩化物、又はこれらの組み合せが好ましい。他の揮発性塩としては、水酸化アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、ギ酸、酢酸などが含まれる。
【0064】
陰イオンカラムからの溶出に続き、アンモニア及び/又はCaCl
2が使用されたときはCaを、KClが使用されたときはKを取り除くために、原料を弱酸性陽イオンと接触させ、それに続いてFPA51などの弱い陰イオンに接触させることで、中性のポイントまで戻してpHを調整する。そしてKCl又はCaCl
2が使用された場合、過剰の塩化物を取り除く。または、原料をナノ濾過及び/又はダイアフィルターにかけ、生成物中の所望の目標とする規格を達成することができる。
【0065】
また、当業者は、3’−シアリルラクトースを含む溶出画分の部分を得る技術を使用した場合、たとえ収量に妥協したとしても、純度は100%である所望の生成物を得ることができる。
【0066】
実施例は、製造方法を3’−SLに限定して説明しているが、透過物中には、タンパク質、アミノ酸類及び他のオリゴ糖類など、対象となる様々な成分が存在し、本明細書中に記載された同様の操作原理を使用することで、分離が成功する。さらに、溶出溶液の濃度を変えることによって、樹脂技術のいずれの当業者であっても、吸着された原料を選択的に樹脂から分画することで、純度を上げることができる。