(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082840
(24)【登録日】2017年1月27日
(45)【発行日】2017年2月15日
(54)【発明の名称】低温急速焼成による軽質セラミック保温板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 38/02 20060101AFI20170206BHJP
C04B 35/622 20060101ALI20170206BHJP
F16L 59/02 20060101ALN20170206BHJP
【FI】
C04B38/02 Z
C04B35/622 040
!F16L59/02
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-504442(P2016-504442)
(86)(22)【出願日】2013年4月28日
(65)【公表番号】特表2016-514665(P2016-514665A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】CN2013074926
(87)【国際公開番号】WO2014166132
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年9月24日
(31)【優先権主張番号】201310123877.5
(32)【優先日】2013年4月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515266393
【氏名又は名称】蒙娜麗莎集団股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】汪 慶剛
(72)【発明者】
【氏名】劉 一軍
(72)【発明者】
【氏名】潘 利敏
(72)【発明者】
【氏名】潘 炳宇
(72)【発明者】
【氏名】趙 勇
【審査官】
宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第101186519(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102643111(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101565312(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B35/622,
38/00−38/10
F16L59/00−59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡可能なセラミック廃棄物を含有する原料をボールミーリング、粉末噴射を行って発泡可能な粉体に製造し、その内、前記原料における発泡可能なセラミック廃棄物の重量百分率は80〜100wt%であり、
100重量部の発泡可能な粉体と3〜15重量部の低溶融点有機物の顆粒状粉体を均一に混合させて混合粉材を得て、前記発泡可能な粉体の粒径は0.18〜0.98mmであり、前記低溶融点有機物の顆粒状粉体の粒径は0.15〜0.25mmであり、
前記混合粉材を10〜20MPaで加圧してセラミック素地に成形させ、
前記セラミック素地を1100〜1170℃で焼成させて軽質セラミック保温板が製造されることを含み、前記焼成の工程における条件は20〜35分間の間に1100〜1170℃まで昇温させ、5〜10分間保温させ、
前記低溶融点有機物はポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、鉱物ワックスを含む、ことを特徴とする低温急速焼成による軽質セラミック保温板の製造方法。
【請求項2】
前記発泡可能なセラミック廃棄物は、セラミック研磨廃材及びセラミック研削物を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記原料は、0〜20wt%、しかしながら0wt%ではない焼結助剤をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記焼結助剤は廃棄ガラス粉末、廃棄クリンカ粉末及び/又は滑石を含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記原料は0〜0.8wt%、しかしながら0wt%ではない発泡剤をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記原料における発泡セラミック廃棄物の重量百分率は90〜100wt%である、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無機材料技術分野に関し、具体的には低温急速焼成による軽質セラミック保温板の製造方法に関し、特に緩い加圧の方法を用いて発泡可能なセラミック廃棄物で単位容量あたりの重量が低いセラミック保温板を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、壁体の保温材料は大きく発展しており、材料を節約するとともに、壁体の保温性能の向上、省エネルギー、環境汚染の低減を図ることもできる。軽質セラミック保温板は、焼成温度が低く、多くの均一な気孔を備え、単位容量あたりの重量が0.6〜1.0g/cm
3である特殊なセラミック保温板である。軽質セラミック保温板は、従来のセラミックに比べて耐久性や耐火性の利点がある以外に、軽質で、遮熱や遮音などの優れた性能も備えている。
【0003】
従来の発泡セラミック(多孔セラミック)を製造する主な方法としては粉末素地発泡法及びスラリー発泡法があり、一般的には発泡剤及び大量の原石原料を用いており、工程が複雑で、焼成温度が高く、コストも高くなっており、大寸法の発泡セラミック(多孔セラミック)板を連続に製造することが難しく、用途が制限されている。
【0004】
なお、近年、中国ではセラミック産業が急速に発展しており、それに伴いセラミック廃材もますます多くなる一方であって、それを積み上げることにより土地が占有され、現地の空気中の粉塵含有量に影響を与え、且つそれを埋め立てることは労力とコストがかかり、地下水の水質も汚染されている。これらは、都市環境に巨大な影響を与えるとともに、都市経済の発展及びセラミック産業の持続的な発展を制限しており、如何に廃棄物を宝にするかはセラミックメーカーと社会とが共に注目している課題となっている。よって、セラミック廃棄物を利用して低コストの軽質セラミック保温板を研究することは建物の総合的な省エネルギーと鉱産物資源の総合的な利用率、およびセラミック等の産業の持続的な発展に重大な意義がある。
【0005】
中国特許出願第101186519B号には多孔セラミック材料の製造方法が開示されており、セラミック廃材及び研磨タイル(polished tile)の廃材を原料として、粘土、高温砂、低温砂を入れ、加水して湿式ボールミーリングを行い、乾燥した後8Mpaで加圧することによりセラミックタイル素地に成形させ、その後、セラミックローラーハースキルン内で1140℃で100分間焼成することで、多孔セラミック材料を得ている。しかしながら、該方法は乾式プレス成形急速焼成(例えば焼成周期が60分以内である)の排気問題を解決できない。
【0006】
中国特許出願第102399090A号には軽質結晶化発泡セラミックが開示されており、それはセラミック壁やタイルの研磨屑、及び白土等を原料として採用している。中国特許出願第102887721A号には発泡セラミック保温板が開示されており、それはセラミックタイルの研磨屑、廃棄ガラス粉末、廃棄クリンカ粉末、滑石、ラテライト等を原料として採用している。該方法も同様に乾式プレス成形急速焼成の排気問題を解決できない。
【0007】
以上をまとめると、従来の加圧成形された単位容量あたりの重量の低いセラミック保温タイルの配合としては粘土を入れる必要があり、乾式プレス成形急速焼成の排気問題を解決できないため、実際の作業では配合として発泡廃棄物を入れる量が50%を超えてはいけない。発泡廃棄物の入れる量が80%を越えると、敷板を用いて堆焼(heap roasting)しなければならず、生産量が低く且つ敷板の損失が大きく、コストが高くなる。
【0008】
実は、セラミック廃棄物において大部分は1200℃以上で焼成されたセラミッククリンカにより構成されており、それ自体が既に完全にガラス化されており、構造が緊密で均一であり、研磨工程で持ち込んだ有機物等の不純物の酸化分解がもたらした排気不良による黒い芯、局部隆起等の問題さえ解決できれば、ローラーハースキルン低温急速焼成は完全に実現可能である。
【発明の概要】
【0009】
先行技術に存在する課題に直面して、簡単で実行可能であり且つ一般的な加圧機とローラーハースキルンだけで製造可能である、単位容量あたりの重量の低い軽質セラミック保温板の製造方法を提供しており、具体的に、本発明は配合として大量の発泡可能なセラミック廃棄物を入れて、接着剤および細孔形成剤として顆粒状の粉体有機物を混合することで、素地の強度を確保したことの条件下、低圧力で緩い加圧を行う方法を採用し、即ち、粉末原料の間の空隙を増大させるように通常圧力の1/3〜2/3の圧力で加圧し、最後に一般的なローラーハースキルンで焼成すればよい。このようにして、保温板は中低温段階での焼成される過程において有機物が分解されることによって生じる大量の気体が適時に排除され、且つ高温段階において多孔構造が形成される。
【0010】
まず、本発明は低温急速焼成による軽質セラミック保温板の製造方法を提供しており、発泡可能なセラミック廃棄物を含有する原料をボールミーリング、粉末噴射を行って発泡可能な粉体に製造し、その内、前記原料における発泡可能なセラミック廃棄物の重量百分率は80〜100wt%であり、100重量部の発泡可能な粉体と3〜15重量部の低溶融点有機物の顆粒状粉体を均一に混合させて混合粉材を得て、前記混合粉材を10〜20MPaで加圧してセラミック素地に成形させ、前記セラミック素地を1100〜1170℃で焼成させて前記軽質省エネルギーセラミック保温板が製造される、ことを含む。
【0011】
本発明の配合として、発泡セラミック廃棄物の割合は80〜100wt%であり、泥が配合されず、焼成過程において酸化が必要であることや排気不良等の問題を減少する。本発明は低溶融点の低溶融点有機物も利用し、それは成形助剤の潤滑作用を奏して、タイル素地の成形に有利になるとともに、バインダーの作用も奏し、成形後のタイル素地が例えば130℃で乾燥される時、低溶融点有機物が液体に溶融され、粉材の表面を浸入して包み、冷却する時再び凝固され、三次元ネットワークを形成し、粉材を一体となるように粘結して、タイル素地の乾燥強度を向上させる。また、細孔形成剤の作用も奏し、それが焼失されてから残された空隙は製品の単位容量あたりの重量を低減させる。10〜20MPaの低圧力(同一仕様のセラミック製品における定常加圧力の1/3〜2/3)で加圧して成形した場合、発泡セラミック廃棄物は不純物が多く、低温で急速に焼成するためには急速に排気することが必要であり、圧力が小さいほど、素地の密度が低くなり、粉材同士の空隙率が高くなり、気体の排出経路が形成される。一方、緩い加圧は単位容量あたりの重量を低下させ、高温段階で素地が速く且つ過度に膨張して製品に局部変形が生じてしまうことを減少させる。
【0012】
前記低溶融点有機物はポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、鉱物ワックスを含むことが好ましい。これらの低溶融点有機物は溶融点が低く、素地が乾燥する時スムーズに液体に溶融され、粉材の表面を浸入して包み、冷却する時再び凝固され、三次元ネットワークを形成し、粉材を一体となるように粘結する。
【0013】
前記発泡可能なセラミック廃棄物は、セラミック研磨廃材及びセラミック研削物を含むことが好ましい。本発明はセラミック研磨廃材及び/又はセラミック研削物を主要原料として、製品の原料のコストを大幅に低下させるとともに、廃棄物を宝にして、セラミック廃材の再利用を実現し、セラミック廃材による環境汚染を減少する。
【0014】
前記原料は0〜20wt%の焼結助剤をさらに含むことが好ましい。前記焼結助剤は廃棄ガラス粉末、廃棄クリンカ粉末及び/又は滑石を含んでもよい。配合として廃棄ガラス粉末、廃棄クリンカ粉末及び/又は滑石等の焼結助剤を加えると、製品の焼結温度を低減させ、省エネルギーを図ることができる。
【0015】
前記原料は0〜0.8wt%の発泡剤をさらに含んでもよい。本発明は発泡可能なセラミック廃棄物を原料として用いており、発泡剤を別途に加えなくてもよく、発泡剤を入れて発泡を補助してもよい。
【0016】
前記焼成の工程における条件は20〜35分間の間に1100〜1170℃まで昇温させ、5〜10分間保温させることが好ましい。本発明の焼成工程は簡単で制御可能であり、焼成を一回行うことで高質量の軽質省エネルギーのセラミック保温板を製造することができる。
【0017】
前記原料における発泡セラミック廃棄物の重量百分率は90〜100wt%であることが好ましい。
【0018】
一方、本発明は上記方法で製造された軽質セラミック保温板をさらに提供し、その内、前記軽質セラミック保温板の単位容量あたりの重量は0.6〜1.0g/cm
3である。前記軽質省エネルギーのセラミック保温板の熱伝導率は0.15〜1.25W/m・kであることが好ましい。
【0019】
本発明の軽質セラミック保温板は、原料コストを低下させるとともに、資源を節約し、環境保護、大寸法、防火、吸音、遮熱、防湿、防浸透、耐冷凍、難燃性等の特徴を備え、高質量の軽質セラミック保温板であり、現代建築省エネルギー基準の壁体保温材料又は他の分野の遮熱型保温材料に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
下記の実施形態を参照しながら本発明をさらに説明する。ここで分かるように、下記の実施形態は本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0021】
本発明は簡単で実行可能であり且つセラミック廃棄物を原料として一般的な加圧機とローラーハースキルンだけで製造可能な単位容量あたりの重量の低い軽質セラミック保温板の製造方法を提供している。採用した技術は以下の通りである。配合として大量の発泡可能な廃棄物を入れて、素地の強度を確保した条件下、低圧力で緩い加圧を行う方法を採用して、粉末原料の間の空隙を増大させ、保温板が中低温段階で焼成される過程において有機物が分解されることによって生じる大量の気体が適時に排除されることが保証され、且つ高温段階において多孔構造が形成される。
【0022】
本発明の方法の具体的な手順は以下のようである。
【0023】
まず、配合として80〜100wt%の発泡セラミック廃棄物を入れて、ボールミーリングや粉末噴射等の工程を経て発泡可能な粉体を製造する。発泡可能なセラミック廃棄物はセラミック製造において生じる発泡可能な廃材であり、例えば高温分解発泡化合物を含むセラミック研磨廃材、セラミックの切断やエッジ研磨の過程で生じるセラミック研削物及び他のセラミック製造の過程でに生じる廃材がある。セラミックの研磨廃材は、セラミックタイルの表面を研磨することによって生じる廃水と廃棄物の混合物が沈殿、加圧濾過及びエイジング等の処理を介して得られた廃材である。セラミック研削物はセラミックの切断やエッジ研磨の過程で生じる廃材を含み、その寸法及び含水量に応じて予め破砕、乾燥処理することができる。研削物を選択すれば、粉砕して微細化するコストを低下させることができる。配合として、一種類のセラミック廃材を用いても良く、複数種類のセラミック廃材を用いてもよく、例えば、セラミック研磨廃材とセラミック研削物の混合物を用いることができる。なお、ここで分かるように、本発明が軽質セラミック保温板を製造する際に生じる廃材、例えば切断により生じる余材などは、新たなセラミック保温板の原料として再利用することもできる。発泡可能な廃棄物、例えば上記セラミック研磨廃材及びセラミック研削物に対して、5〜10%を本発明が軽質セラミック保温板を製造する際に生じる廃材に取り替えてもよい。
【0024】
本発明はセラミック研磨廃材及び/又はセラミック研削物を充分に利用することができ、製品の原料コストを大きく低下させ、廃棄物を宝にし、セラミック廃材の循環再利用を実現し、セラミック廃材による環境汚染を減少する。本発明は発泡可能な廃棄物自体の発泡機構も充分に利用し、発泡剤を採用せず、又は発泡剤の使用量を低減することができ、コストを低減させる。
【0025】
上記発泡セラミック廃棄物に加えて、原料粉体の配合としては0〜20wt%の焼結助剤をさらに添加してもよい。焼結助剤は廃棄ガラス粉末、廃棄クリンカ粉末及び/又は滑石を用いてもよく、例えば、ナトリウムカルシウム型廃棄ガラス粉末、高カルシウム廃棄クリンカ粉末、黒滑石等を用いてもよい。一種類または二種類以上の焼結助剤を用いてもよい。配合として廃棄ガラス粉末、廃棄クリンカ粉末及び/又は滑石等の焼結助剤を加えると、製品の焼結温度を低減させ、省エネルギーを図ることができる。
【0026】
以上のように、本発明が用いる発泡可能なセラミック廃棄物は発泡剤を用いることなくそれ自体の発泡機構で発泡することができ、例えばセラミック研磨廃材は高温分解発泡化合物を含み、自発泡が可能であり、セラミック研削物では、例えば炭化珪素の砥石車で縁を研磨する時、研削工程で持ち込んだ炭化珪素微粉は内在の発泡剤として用いることができる。しかしながら、場合によって、少量の発泡剤を補助的に用いることができ、例えば、研削で非炭化珪素の砥石車を用いる場合、セラミック研削物を原料とする時は0.8wt%以下の発泡剤を入れてもよい。発泡剤はよく用いられる炭化珪素等を採用することができる。
【0027】
上記配合の原料粉体はボールミーリングや粉末噴射等の工程を経て発泡可能な粉体に製造されており、発泡可能な粉体の粒径は0.18〜0.98mmである。ここで、ボールミーリングは湿式ボールミーリングを採用し、ボール媒体はミドルアルミニウムボール(Medium Alumina Ball)を用いてもよく、ボールミーリングの粉末度は250メッシュースクリーンで0.8〜1.0%の余りとなるように制御する。粉材の水分は5.0〜6.0%となるように制御する。
【0028】
100重量部の上記発泡可能な廃棄物と3〜15重量部の低溶融点有機物を攪拌して混合することで混合粉材を得る。攪拌は攪拌機を用いて行っても良い。低溶融点有機物は溶融点が低いながらも、常温では固体形態である有機物であり、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、鉱物ワックス等を含むものの、一種類の低溶融点有機物を用いてもよく、いずれかの二種類の低溶融点有機物の混合物を用いてもよい。低溶融点有機物は粉体を用いることが好ましく、その粒径は0.15〜0.25mmであってもよい。低溶融点有機物は、その粒径が要求を満たすように予め破砕及びスクリーニング等の処理を行っても良い。
【0029】
粉材に5%〜15%のポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、鉱物ワックス等の低溶融点の顆粒状の粉体を混合することで、ワックス有機物は成形助剤の潤滑作用を奏して、タイル素地の成形に有利になるとともに、バインダーの作用も奏し、成形後のタイル素地は例えば130℃で乾燥された後、有機物が液体に溶融され、粉材の表面を浸入して包み、冷却する時再び凝固され、三次元ネットワークを形成し、粉材を一体となるように粘結して、タイル素地の乾燥強度を向上させる。また、細孔形成剤の作用も奏し、それが焼失されてから残された空隙は製品の単位容量あたりの重量を低減させる。
【0030】
上記混合粉材を加圧機に置き、同一仕様のセラミック板を用いて定常加圧力の1/3〜2/3(例えば10〜20MPa)の圧力で加圧して成形させる。セラミック素地の厚さは12〜20mmであってもよい。加圧過程において異なる金型で異なる寸法のセラミック板を製造することができ、本発明で用いる金型の寸法(長辺)は660〜2060mmであってもよい。
【0031】
本発明の方法において、配合として、セラミック廃棄物の割合は80〜100wt%であり、その他のものは廃棄ガラス粉末、廃棄クリンカ粉末及び滑石であり、この配合には粘土が含まれておらず、焼成過程で生じる酸化不充分、排気不良等の問題を減少する。粘土を含まないと、加圧機による加圧成形に不利となるので、低溶融点有機物を混合して低圧力で加圧し、発泡廃棄物は不純物が多いので、低温で急速に焼成するためには急速に排気することが必要であり、圧力が小さいほど、素地の密度が低くなり、粉材同士の空隙率が高くなり、気体の排出経路が形成される。一方、緩い加圧は単位容量あたりの重量を低下させ、高温段階で素地が速く且つ過度に膨張して製品に局部変形が生じてしまうことを減少させる。
【0032】
乾燥は乾燥窯内で行い、乾燥温度は120〜150℃であってもよく、乾燥時間は15〜25分間であってもよく、乾燥後のセラミック素地の含水量は0.2〜0.5%である。
【0033】
乾燥処理されたセラミック素地をローラーハースキルン内に送入して高温焼成を一回行わせた後冷却すれば、単位容量あたりの重量の低い軽質セラミック保温板を製造することができる。その厚さは16〜22mmであってもよく、切断処理により適当な寸法にして、現代建築省エネルギー基準の壁体保温材料又は他の分野の遮熱型保温材料に用いることができる。
【0034】
焼成の工程における条件は、25〜30分間に1100〜1300℃まで昇温させ、5〜10分間保温させる。
【0035】
GB/T3810.3-2006『セラミックタイル試験方法、第3部分:吸水率、見かけ気孔率、見かけの相対密度及び単位容量あたりの重量の測定』及びGB/T10294-2008『断熱材料の定常状態熱抵抗及び関連特性の測定、保護熱板法』に沿って、本方法により製造された軽質セラミック保温板の性能を測定し、測定された単位重量は0.6〜1.0g/cm
3であり、熱伝導率は0.15〜0.25W/m・kである。このように、本発明の軽質セラミック保温板は、単位容量あたりの重量が小さく、熱伝導率が低く、環境保護、防火、吸音、遮熱、防湿、防浸透、耐冷凍、難燃性等の特徴を備え、親環境型建築材料であり、現代建築省エネルギー基準の壁体保温材料又は他の分野の遮熱型保温材料に適用することができる。
【0036】
本発明は先行技術に対して以下のメリットがある。
【0037】
1)配合において大部分の原料はセラミックの製造時生じる廃材であり、製品の原料のコストを大幅に低減させる。同時に、用いる原料は共に細かいものであり、破砕して細かくするコストを低減させ、ボールミーリング時間を大きく短縮する。
【0038】
2)発泡可能なセラミック廃棄物の自体発泡原理を充分に利用することで、発泡剤を使用しなくてもよく、又は発泡剤の使用量を低下させてもよく、さらにコストを減少させる。
【0039】
3)粘土の代わりに低溶融点有機物を用いて、材料が豊富にあるながら、成形助剤、バインダー及び細孔形成材の作用を奏し、貴重なカオリン資源を節約する。
【0040】
4)緩い加圧方法を用いると、素地の酸化と排気に有利であり、単位容量あたりの重量をさらに低下させ、高温段階で素地が速く且つ過度に膨張することにより製品の局部が変形してしまうことを減少させる。同時に、緩い加圧された粉体は含水量が低く、乾燥時間を節約し、生産量を向上させる。
【0041】
5)配合において大部分は高温焼成された後のセラミッククリンカであり、低温急速焼成された後の製品が優れた性能を有することを保証する。
【0042】
以下、さらに例示となる実施例を挙げて本発明をよりよく説明する。本発明で詳細に説明した上記の実施形態及び以下の実施例は本発明を説明するものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。当業者が本発明の上記内容に基づいて行う実質的でない改良及び調整は何れも本発明の保護範囲に属する。例えば、実施例1は廃棄ガラス粉末と黒滑石を焼結助剤として用いているものの、ただし、焼結助剤を使用せず、100wt%の発泡可能なセラミック廃棄物を原料としてもよい。なお、廃棄ガラス粉末、廃棄クリンカ粉末及び黒滑石の総用量及びその割合もこれらに限定されない。また、下記の配合においては発泡剤を含まないものの、実際の場合においては適切な発泡剤を用いてもよい。以下の例は、ワックス系有機物を低溶融点有機物として用いるものの、その他の適切な低溶融点有機物を用いてもよい。同時に、該技術はセラミック板の製造に限られるものではなく、小さい仕様のセラミックタイルにも適用可能である。なお、下記の工程の条件における具体的な温度、時間等も例示に過ぎず、当業者は上記限定の範囲内に適切な値を選ぶことができる。
【0043】
[実施例1]
セラミック保温板の配合は、重量比で発泡セラミック廃棄物(粒径0.045〜0.25mm)90%、廃棄ガラス粉末(粒径0.10〜0.25mm)8%、黒滑石(粒径0.10〜0.25mm)2%を入れて、ボールミーリングしてスラリー化させ、粉末噴射を行うことで粉体(粒径0.18〜0.98mm)に製造する。そして、攪拌機を用いて、粉体の重量の5%を占めるポリエチレンワックスと均一に混合させてから、加圧機に送入させ、寸法が1050mm×2060mmである金型に入れて定常加圧力の2/3の圧力(20MPa)で加圧して成形させ、乾燥窯で乾燥した後、釉掛けラインで焼成ローラーハースキルンに輸送させ、1121℃の高温で6分間保温することで、単位容量あたりの重量が0.95g/cm
3である単位容量あたりの重量が低いセラミック保温板を製造し、その熱伝導率は0.24W/m・kである。
【0044】
[実施例2]
セラミック保温板の配合としては、重量比で発泡セラミック廃棄物(粒径0.045〜0.25mm)95%、黒滑石(粒径0.10〜0.25mm)5%を入れて、ボールミーリングしてスラリー化させ、粉末噴射を行うことで粉体(粒径0.18〜0.98mm)に製造する。そして、攪拌機を用いて、粉体の重量の14%を占める鉱物ワックスと均一に混合させてから、加圧機に送入させ、寸法が660mm×1320mmである金型に入れて定常加圧力の1/3の圧力(10MPa)で加圧して成形させ、乾燥窯で乾燥した後、釉掛けラインで焼成ローラーハースキルンに輸送させ、1163℃の高温で9分間保温することで、単位容量あたりの重量が0.65g/cm
3である単位容量あたりの重量が低いセラミック保温板を製造し、その熱伝導率は0.16W/m・kである。
【0045】
[実施例3]
セラミック保温板の配合としては、重量比で発泡セラミック廃棄物(粒径0.045〜0.25mm)85%、廃棄クリンカ粉末(粒径0.15〜0.35mm)7%、黒滑石(粒径0.10〜0.25mm)3%を入れて、ボールミーリングしてスラリー化させ、粉末噴射を行うことで粉体(粒径0.18〜0.98mm)に製造する。そして、攪拌機を用いて、粉体の重量の10%を占めるポリプロピレンワックスと均一に混合させてから、加圧機に送入させ、寸法が880mm×880mmである金型に入れて定常加圧力の1/2の圧力(15MPa)で加圧して成形させ、乾燥窯で乾燥した後、釉掛けラインで焼成ローラーハースキルンに輸送させ、1145℃の高温で8分間保温することで、単位重量が0.77g/cm
3である単位容量あたりの重量が低いセラミック保温板を製造し、その熱伝導率は0.19W/m・kである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は工程が簡単で、コストが低く、資源節約型且つ親環境型建築材料に属し、大量生産に適用し、製造される製品は軽質省エネルギーのセラミック保温板であり、保温、遮熱、遮音、防火等の機能を備え、現代建築省エネルギー基準の壁体保温材料又は他の分野の遮熱型保温材料に適用することができる。