特許第6082861号(P6082861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082861
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/14 20060101AFI20170213BHJP
   H01H 50/44 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   H01H50/14 Q
   H01H50/44 M
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-277587(P2012-277587)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-123432(P2014-123432A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2014年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】516323046
【氏名又は名称】池谷 みゆき
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】池谷 弘
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−185933(JP,A)
【文献】 実開昭61−124941(JP,U)
【文献】 特開2010−034223(JP,A)
【文献】 特開平05−274981(JP,A)
【文献】 実開平02−003631(JP,U)
【文献】 実開昭55−68248(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/14
H01H 50/44
H01F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材からなるベースと、前記ベースに搭載され、スプール及び電磁コイルを有する電磁石ブロックと、前記ベースに固定されたコイル端子片と、を具備する電磁継電器において、
前記スプールから前記ベースに向けてそれぞれ突設されたコイル接続部及び端子接続部を一体に備えた中継端子片を設け、前記コイル接続部が前記電磁コイルに電気的に接続されるとともに、
前記コイル端子片の内端部には前記端子接続部の突出方向と交差する方向に突出した内側接続部が形成され、前記端子接続部と前記内側接続部が交差する部分で電気的に接続されていることを特徴とする電磁継電器。
【請求項2】
前記中継端子片は前記スプールの鍔部内に収容された挿入基部を備え、前記コイル接続部及び前記端子接続部は、前記挿入基部にそれぞれ突設されるとともに、前記鍔部の端面上から別々に突出することを特徴とする請求項1に記載の電磁継電器。
【請求項3】
前記内側接続部は突出方向の途中に屈折部分を備えた形状を有し、前記端子接続部の表面が前記内側接続部の前記屈折部分の両側にわたる表面領域に共に対向した状態で電気的に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁継電器に係り、特に、電磁コイルとコイル端子とを接続するための電気的接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電磁継電器としては、例えば、電磁コイルの両端にそれぞれ電気的に接続された一対のコイル端子片と、電磁コイルによって動作する可動端子片に電気的に接続された共通端子と、可動端子片に設けられた可動接点と接離可能に構成された固定端子に電気的に接続された固定接点端子片とを備えたものが知られている。このような電磁継電器では、以下の特許文献1〜3に示すように、電磁コイルのコイル線の両端に上記コイル端子片を電気的に接続するために、電磁コイルのスプール(ボビン)に取り付けられた中継端子片と、コイル端子片の内部端とを接続した導電接続構造を備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61−124941号公報
【特許文献2】特開平5−274981号公報
【特許文献3】特開平9−190754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の特許文献1及び2に記載の電磁継電器では、上記の中継端子片に相当するコイル端子6やコイル端子片7が上記のコイル端子片に相当する端子ピン2や外部端子片8と直交する方向に突出した状態で相互に半田や嵌合により電気的に接続されるため、電磁コイルの外側に張り出す構造部分が大きくなり、小型化を図ることが難しいという問題点がある。
【0005】
一方、特許文献3に記載の電磁継電器では、中継端子35のからげ部35aに対して下端縁部35dを直交する方向に突出させ、この方向にコイル端子22の接続部24を重ねてカシメ固定しているため、小型化を図ることができる。しかし、確実な電気的接続を得るためにはピンと穴の嵌合構造を設ける必要があることなどにより、中継端子35やコイル端子22の接続部24を複雑な形状に加工する必要があるため、コストが増大するとともに、中継端子と接続部24を電気的に接続する作業が煩雑になるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、電磁継電器の小型化を妨げないとともに電気的接続構造の信頼性の確保と低コスト化を図ることのできる電気的接続構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような実情に鑑み、本発明の電磁継電器は、絶縁材からなるベースと、前記ベースに搭載され、スプール及び電磁コイルを有する電磁石ブロックと、前記ベースに固定されたコイル端子片と、を具備する電磁継電器において、前記スプールから前記ベースに向けてそれぞれ突設されたコイル接続部及び端子接続部を一体に備えた中継端子片を設け、前記コイル接続部が前記電磁コイルに電気的に接続されるとともに、前記コイル端子片の内端部には前記端子接続部の突出方向と交差する方向に突出した内側接続部が形成され、前記端子接続部と前記内側接続部が交差する部分で電気的に接続されていることを特徴とする。ここで、前記中継端子片は前記スプールの鍔部内に収容された挿入基部を備え、前記コイル接続部及び前記端子接続部は、前記挿入基部にそれぞれ突設されるとともに、前記鍔部の端面上から別々に突出することが好ましい。
【0008】
本発明によれば、電磁石ブロックのスプールに設けられたコイル接続部及び端子接続部がベースに向けて突出し、中継端子片の端子接続部とコイル端子片の内側接続部が電磁石ブロックとベースの間において電気的に接続されることにより、電磁コイルの周囲の張り出し部分を低減できるためコンパクトに構成することが可能になる。また、コイル端子片の内側接続部は中継端子片の端子接続部と交差する方向に突出し、端子接続部と内側接続部が交差する部分で電気的に接続されていることにより、電気的接続構造の信頼性を確保しつつ構造を簡易に構成できるために低コスト化を図ることができ、電気的接続作業も容易化できる。また、中継端子片を用いることで、スプールへのコイル線の巻回による電磁コイルの形成とともにコイル接続部へのコイル線の巻付けを行う自動巻線機を用いることが可能になるため、さらに製造コストを低減することができる。さらに、端子接続部と内側接続部が交差する部分で電気的に接続するように構成されることにより、製造工程において、端子接続部と内側接続部がベースに対する電磁石ブロックの組立方向(装着方向)に突き当たることがないため、両者間の位置精度による電気的接続構造のばらつきに起因する実質的な影響を回避できるから、電気的接続部の構造的な再現性を高めることができ、結果として電気的信頼性を高めることができる。また、両者間の位置精度に影響されずに電気的接続作業を行うことができるため、作業自体も容易になる。ここで、本発明において、端子接続部と内側接続部が交差する場合には、両者が直接に接触している場合に限らず、両者が相互に離反していても、例えば、半田などの導電性の素材を介して接続されている場合が含まれる。
【0009】
本発明において、前記内側接続部は突出方向の途中に屈折部分を備えた形状を有し、前記端子接続部の表面が前記内側接続部の前記屈折部分の両側にわたる表面領域に対向した状態で電気的に接続されていることが好ましい。これによれば、端子接続部と内側接続部が交差する部分において、端子接続部の表面が内側接続部の屈折部分の両側にわたる表面領域に対向した状態で電気的に接続されることにより、電気的接続部分の接続面積を増大させることができるため、電気的信頼性をさらに高めることができ、電気的な接続作業もさらに容易になる。この場合に、前記端子接続部は突出方向に軸線を有する四角柱形状を有し、前記内側接続部は前記屈折部分の内面側表面が平坦に構成され、前記屈折部分の両側にわたる前記内面側表面の領域が前記端子接続部の前記軸線の周りに隣接する少なくとも二つの平坦表面部に対向することが望ましい。これによれば、平坦な内面側表面の領域を端子接続部の軸線周りの二つ以上の平坦表面部に対して電気的に接続させることが可能になるため、電気的信頼性のさらなる向上と電気的な接続作業のさらなる容易化を図ることができる。また、このような端子接続部及び内側接続部は、平板形状の導電材をプレス加工等の塑性加工により中継端子片とコイル端子片を成形することで容易かつ安価に製造できる。
【0010】
本発明において、前記中継端子片は、前記スプールの鍔部に設けられた凹所内に挿入された平板状の基部と、前記基部の平板面に沿って離隔した位置から前記コイル接続部と前記端子接続部がそれぞれ突出する形状を有することが好ましい。これによれば、コイル接続部と端子接続部の間隔を容易に確保することができるとともに中継端子片を容易に成形できる。この場合において、前記基部は、前記スプールの鍔部の延在方向に沿った平板面を有する姿勢で前記スプールに装着されていることが望ましい。さらには、前記コイル接続部と前記端子接続部の少なくとも一方を前記基部に対して平板の厚み方向に屈折させて前記平板面からずれた位置において突出するように構成することが望ましい。これによれば、前記コイル接続部が前記端子接続部よりも前記電磁石ブロックの外端側に配置されるときには、両者が基部の厚み方向にずれて配置されるため、コイル端子片の内側接続部と端子接続部の間の電気的接続作業をコイル接続部に邪魔されずに容易に行うことができる。また、前記端子接続部が前記コイル接続部よりも前記電磁石ブロックの外端側に配置されるときには、コイル接続部に対するコイル線の電気的接続(からげや半田付けなど)を容易に行うことができる。
【0011】
本発明において、前記ベースには、前記電磁石ブロックが搭載されるとともに前記コイル端子片が貫通する領域を外周側から取り巻くように構成された外縁枠部が設けられ、前記外縁枠部は、前記端子接続部と前記内側接続部が交差して電気的に接続された部分の外周側に開口部を有することが好ましい。これによれば、外縁枠部によって電磁石ブロックや外装ケースとの嵌合構造を構成できるとともに、外縁枠部に開口部を設けることによって端子接続部と内側接続部の電気的接続作業や製品検査作業を容易に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電磁継電器の小型化を妨げないとともに電気的接続構造の信頼性の確保と低コスト化を図ることのできる電気的接続構造を実現できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る実施形態の電磁継電器の全体を第1の方位から見た様子を示す斜視図である。
図2】同実施形態を第1の方位から見た様子を、ベース及び外装ケースを省略して示す斜視図である。
図3】同実施形態の第1の方位から見た分解斜視図である。
図4】同実施形態の全体を第2の方位から見た様子を示す斜視図である。
図5】同実施形態を第2の方位から見た様子を、べース及び外装ケースを省略して示す斜視図である。
図6】同実施形態の第2の方位から見た分解斜視図である。
図7】同実施形態の中継端子片とコイル端子片の位置関係を第1の方位から見た様子を示す斜視図(a)及び中継端子片とコイル端子片の交差部分を拡大して示す拡大部分斜視図(b)である。
図8】同実施形態の中継端子片とコイル端子片の位置関係を第2の方位から見た様子を示す斜視図(a)及び中継端子片とコイル端子片の交差部分を拡大して示す拡大部分斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1乃至図6を参照して本実施形態の電磁継電器の全体構成について説明する。
【0015】
本実施形態の電磁継電器は、合成樹脂等の絶縁体からなるベース1と、このベース1に搭載される電磁石ブロック2と、ベース1に設けられた貫通孔(図示せず)にそれぞれ挿通され、いずれも金属等の導体からなる一対のコイル端子片3,3、共通端子片4、及び、固定接点端子片5とを備えている。ベース1は、板状基部1aと、この板状基部1aの外周部から内部側(電磁石ブロック2の側)に張り出した外縁枠部1bと、板状基部1aの外周部から外部側(電磁石ブロック2とは反対側)に張り出した外部端子枠部1cとを備えている。外縁枠部1bは図1及び図4に二点鎖線で示す箱状の外装ケース6に嵌合する形状を備えている。また、外縁枠部1bには、電磁石ブロック2の後述する中継端子25の突出部分を外部から臨むことができる位置(図示例では二箇所)に開口部1dが形成されている。一方、外部端子枠部1cは図示しないソケット装着部に対応する適宜の装着構造を備えている。
【0016】
電磁石ブロック2は、合成樹脂等の絶縁体よりなるスプール21の軸部にコイル線を巻回して電磁コイル22とし、上記軸部内に磁極23aとなる頭部を備えた鉄芯23を挿入するとともに、上記軸部の両側に設けられたスプール21の鍔部21aと21bの間及び鍔部21bの外面上にL字状のヨーク24を装着してなる。一方の鍔部21bの下部端縁には幅方向両側に一対のスリットが形成され、これらのスリットには、それぞれ中継端子片25が相互に対称な姿勢で圧入固定されている。ヨーク24の下端に設けられた脚部24aはベース1の板状基部1aに挿通され、カシメ等により固定される。
【0017】
ヨーク24の側部には上記共通端子片4の上端部がカシメ固定される。また、ヨーク24の外面にはヒンジばね部と可動接触片部が一体化された可動端子片7がカシメ等により固定される。この可動端子片7の先端には可動接点7aが形成される。また、可動端子片7の内面側には可動鉄片8がカシメ等により固定される。この可動鉄片8は、可動端子片7を介してヨーク24に対してヒンジ接続されるとともに、電磁石ブロック2の磁極23aに対向配置される。可動接点7aは固定接点端子片5の内端に設けられた固定接点5aに対向配置されるとともに、その背後にはベース1に装着された対向端子片9が配置される。
【0018】
次に、本実施形態のコイル端子片3と中継端子片25の関係、並びに、これらに関係する各部の構造について説明する。図7及び図8に示すように、コイル端子片3,3には、ベース1の板状基部1aを貫通して外部側へ突出する端子部3aと、ベース1の板状基部1aから内部側へ突出する内端部3bとが設けられ、ベース1の板状基部1aの内部側から端子部3aを図示しない貫通孔に挿入すると、端子部3aの幅方向の側縁が貫通孔に嵌合し、幅方向に形成された内端部3bの段部が板状基部1aの内面に当接することによって保持固定される。
【0019】
コイル端子片3の内端部3bには、内端部3bの平板面に沿った幅方向W3に見てスプール21の鍔部21bとは反対側にある内側縁にスリット3cが形成されている。一対のコイル端子片3,3のスリット3c,3cは相互に対向配置され、これらのスリット3cと3cには必要に応じてダイオード等の電気素子の二本のリード部が挿入され、電気的に接続される。当該電気素子は、例えば、コイル22から発生するサージ電圧によるユーザ側回路への影響を低減するためのものとされる。内端部3bの幅方向W3の外側(鍔部21bの側)には帯状の端縁部3dが形成され、この帯状の端縁部3dの下方には幅方向W3の外側に向けて突出するピン形状の内側接続部3eが形成されている。この内側接続部3eは、基部において内端部3bの平板面からその厚み方向T3の外側に屈折し、同平板面から厚み方向T3の外側に向けて適宜の距離(図示例では内端部3bの厚みとほぼ等しい距離)だけずれた位置で幅方向W3の外側へ向けて平板面と平行に突出している。なお、このずれた方向(シフト方向)を図7(b)及び図8(b)では矢印S1で示してある。また、内側接続部3eの先端側にはさらにほぼ直角に屈折した屈折部3f(図7(b)及び図8(b)参照)が設けられる。さらに、内側接続部3eは突出方向に軸線を備えた四角柱状に構成される。特に、図示例では、内側接続部3eは、幅方向W3に沿った幅と厚み方向T3に沿った厚みとがほぼ等しい正四角柱状とされている。
【0020】
中継端子片25には、上記スリット内に挿入された平板状の挿入基部25a(図示点線)と、スプール21の鍔部21bの下部端縁から下方(ベース1の板状基部1a側)へ向けて突出するコイル接続部25b及び端子接続部25cとを有する。また、コイル接続部25bと端子接続部25cは、挿入基部25aの平板面に沿った幅方向W25に離間し、相互にほぼ平行になるように設けられている。コイル接続部25bは、上記挿入基部25aから鍔部21bの端面21cと直交する方向である板状基部1aに向かう方向に直線状に突出する。一方、端子接続部25cは、根元部分が屈折し、挿入基部25aの平板面から僅かに挿入基部25aの厚み方向T25の内側へずれた位置でコイル接続部25bと同じ方向に直線状に突出する。なお、このずれた方向(シフト方向)を図7(b)及び図8(b)においては矢印S2で示してある。また、端子接続部25cの先端部はテーパ状に構成される。特に、端子接続部25cの先端部において、厚み方向T25の外側の先端側表面部分に、先端寄りの部分ほど厚み方向T25の内側に向かうように傾斜した傾斜面25dが形成される。さらに、幅方向W25の内側の先端側表面部分にも同様の傾斜面25dが形成される。
【0021】
中継端子片25のコイル接続部25bには電磁コイル22のコイル線の端部が巻き付けられ、半田付けによって電気的に接続されている。一方、中継端子片25の端子接続部25cはコイル端子片3の内側接続部3eと交差し、内側接続部3eと端子接続部25cはその交差部分で半田付け等によって電気的に接続されている。図示例では内側接続部3eと端子接続部25cは突出方向を相互に直交する方向とした姿勢で交差している。なお、図面では半田の図示を省略してある。このとき、内側接続部3eの屈折部3fの両側にわたる平坦な内面側表面の領域は、端子接続部25cの四角柱形状の軸線周りに隣接する二つの平坦表面部に対向し、相互に対向する表面同士が半田付けによって導電接続された状態とされている。これによって、両者間の導電接続面積を大きく確保することができるとともに、両者は相互に直交する二方向において確実に位置決めされるため、電気的信頼性と電気的接続作業の容易化とを図ることができる。
【0022】
鍔部21bの板状基部1aの側の端面21cには、鍔部21bに沿った延在方向(上記幅方向W25と一致する方向)に広幅とされた凹所が形成され、この凹所に上記挿入基部25aが鍔部21bの延在方向を平板面に沿った方向(幅方向W25)とする姿勢で圧入固定されている。なお、鍔部21bには上記延在方向の外縁側に端面21cよりも一段低く形成された段差面21dが形成され、上記凹所は一部が段差面21dに開口し、残部が端面21cに開口している。これによって、中継端子片25のコイル接続部25bは段差面21d上の位置から突出し、端子接続部25cは端面21cから突出する。なお、挿入基部25aからコイル接続部25bが突出する根元部分の位置は、端子接続部25bが突出する根元部分の位置と同様に端面21cにほぼ一致している。
【0023】
以上のように構成された本実施形態は、以下のようにして製造される。まず、スプール21に中継端子片25の挿入基部25aを上記凹所に圧入固定することによって取り付ける。そして、スプール21の軸部に対してコイル線を自動巻線機などにより巻回し、電磁コイル22を形成する。このとき、電磁コイル22のコイル線の両端は上記コイル接続部25bに巻き付け(からげ)られる。その後、コイル接続部25bに巻き付けられたコイル線の端部を半田付けなどによって電気的に接続する。このとき、コイル接続部25bが端子接続部25cよりも上記延在方向の外側に突設されていることで、また、端子接続部25cがシフト方向S2にずれていることで、コイル接続部25bへのコイル線の巻き付け(からげ)や半田付けなどの電気的接続作業が容易になる。
【0024】
次に、スプール21に対して鉄芯23やヨーク24を取り付け、必要に応じてカシメ等により固定する。これによって電磁石ブロック2が完成する。一方、ベース1の板状基部1aにコイル端子片3,3、共通端子片4及び固定接点端子片5を挿入し、固定する。そして、ベース1上に上記電磁石ブロック2を搭載する。このとき、スプール21を上記外縁枠部1b内に嵌合させ、ヨーク24の脚部24aを板状基部1aの挿通孔に挿通させてからカシメ等により固定する。
【0025】
上記のようにしてベース1上に電磁石ブロック2が搭載される段階では、図7(a)及び図8(a)に示すように、コイル端子片3が電磁石ブロック2に対して矢印INの方向(以下、単に「装着方向IN」という。)に接近する。このとき、当該装着方向INは、中継端子片25の端子接続部25cの突出方向と一致している。また、コイル端子片3の内側接続部3eは端子接続部25cの突出方向と直交する方向に突出している。そして、最終的に電磁石ブロック2がベース1上に搭載された状態になると、内側接続部3eは端子接続部25cと交差し、上述のように、内側接続部3eの屈折部3fの両側にわたる内側表面の領域が、端子接続部25cの軸線周りに隣接する二つの平坦表面部に対向した状態となる。
【0026】
このとき、内側接続部3eの内側表面と端子接続部25cの平坦表面部は相互に離間した状態で対向配置されていてもよい。しかし、内側接続部3eと端子接続部25cが相互に接触した状態になるように相互の位置関係が設定されていれば、組み立てた時点で既に両者が導電接続された状態となっているので、その後の半田付けなどの電気的接続作業が容易になるとともに、電気的信頼性をさらに高めることができる。特に、内側接続部3eと端子接続部25cが交差した部分で相互に弾性変形した状態で圧接されるように構成すれば、半田付け等の電気的接続作業は極めて容易になるとともに導電接続不良の発生も防止できる。
【0027】
上記のような位置関係に設定されていると、組立時における上記のベース1への電磁石ブロック2の搭載時において内側接続部3eと端子接続部25cが衝突する虞もあるが、本実施形態では端子接続部25cの先端部がテーパ状に構成されているので、仮に両者が接近過程で衝突してもスムーズに弾性変形して図示の交差した状態になることができる。特に、内側接続部3eの屈折部3fの両側にわたる部分が接触する可能性のある内側接続部3eの先端部には上記傾斜面25d,25dが形成されるため、当該傾斜面25dがガイドとなって内側接続部3eと端子接続部25cを交差した状態に導くことができる。この場合に、さらに確実に交差した状態に移行するように構成するには、内側接続部3eの屈折部3fの両側にわたる平坦な内面側表面の電磁石ブロック2の側の縁部(隣接する面との間の角部)に面取りや丸めを施すことが望ましい。なお、図示例では内側接続部3eを四角柱形状としたが、円柱形状としてもよい。内側接続部3eを円柱形状とすれば、端子接続部25cとの衝突時において交差した状態へのさらにスムーズな移行が実現される。
【0028】
本実施形態では、ベース1の板状基部1a上には、前述のように電磁石ブロック2が内嵌されるとともに外装ケース6が外嵌される外縁枠部1bが形成されている。この外縁枠部1bには上述のように開口部1dが設けられているので、ベース1に電磁石ブロック2が搭載された状態でも、図7(b)及び図8(b)に示すように、当該開口部1dを通して、外部から内側接続部3eと端子接続部25cとの交差した部分に対して電気的接続作業を施すことが可能になる。
【0029】
上記のように組み立てられた状態では、内側接続部3eと鍔部21bの端面21cとの間には帯状の端縁部3dが配置されているので、内側接続部3eと端子接続部25cを半田付け等で電気的に接続する場合には、上記端縁部3dは半田等の導電材を背後から保持する機能を有する。ここで、端縁部3dは端面21cに当接していることが好ましい。また、図示例では端縁部3dを内側接続部3eと端面21cとの間に設けているが、内側接続部3eから見て端面21cとは反対側に内端部3bの一部が配置されるように構成してもよい。この場合でも内側接続部3eの装着方向INに隣接して内端部3bの一部が背後に存在することとなるため、同様の効果が得られる。実際に、充分な量の半田等の導電材が上記交差した部分に供給されると、当該交差した部分を中心として導電材の塊が周囲の端縁部3dとその反対側の内端部3b上にも付着し、当該交差した部分が導電材を介して内端部3bの表面と一体化された状態となる。これによって、電気的な信頼性や耐久性を大幅に向上することができる。
【0030】
この電気的接続作業に際しては、内側接続部3eが内端部3bの平板面に対してシフト方向S1にずれた位置で突出しているため、上記平板面よりも開口部1d側に位置することとなるから、半田付けなどの作業を容易に行うことができる。また、端子接続部25cは、開口部1dの内側において手前に配置されるコイル接続部25bに対してシフト方向S2にずれた位置で突出しているため、コイル接続部25bに邪魔されにくくなり、半田付けなどの作業を容易に行うことができる。さらに、この作業は開口部1dを通して行うことになるため、通常は、外側から開口部1dの開口面と直交する図示の方向Aに向けて行うことになるが、手前にコイル接続部25bが配置されるため、実際にはコイル接続部25bを避けるように図示の方向Bから斜めに行われる。このとき、斜めの方向Bに見ると、手前に配置される端子接続部25cが奥側に配置される内側接続部3eの屈折部3fによって方向Bの背後から保持される態様で交差しているため、作業中に端子接続部25cが内側接続部3eに対して位置ずれを起こすことがなくなるから、より安定した状態で電気的接続作業を確実に施すことができる。また、半田等の導電材を交差した部分に塗布する際には、奥側にある内側接続部3eがその屈折部3fによって手前にある端子接続部25cを背後から取り囲むように交差していることにより、交差した部分に半田等の導電材が保持されやすくなるため、よりいっそう作業が容易になり、しかも確実に電気的な接続状態を得ることができる。
【0031】
上記のようにベース1上に電磁石ブロック2を搭載した後には、ヨーク24に対して可動端子片7及び可動鉄片8が取り付けられ、さらにその外周側に配置されるように対向端子片9がベース1に装着されることによって接点構造部分が完成する。また、共通端子片4の先端部はヨーク24の側縁に対してカシメ等により固定される。最後に、外装ケース6が電磁石ブロック2及び接点構造部分を覆うようにベース1に装着される。
【0032】
以上述べたように、本実施形態では、スプール21の鍔部21bの端面21cから中継端子25のコイル接続部25bと端子接続部25cが装着方向INに向けて突出するように設けられ、ベース1と電磁石ブロック2との間において端子接続部25cがコイル端子片3の内側接続部3eと交差した状態で電気的に接続されることにより、電磁石ブロックの周囲へ張り出す部分を小さくすることができるため、電磁継電器の小型化が容易になる。
【0033】
また、本実施形態では、相互に電気的に接続される内側接続部3eと端子接続部25cが装着方向INに見て突き当たることがなく、交差した状態とされるため、部品の精度や組み立て精度によって位置関係がまちまちとなることが防止されるから、再現性の高い確実な電気的接続構造を実現することができるとともに、電気的接続作業も容易化される。
【0034】
さらに、本実施形態では、コイル端子片3や中継端子片25を簡易な形状で構成できるため、部品コストが低減されるとともに、複雑な組み立て作業も不要となるため、組立コストも抑制できる。したがって、製造コストを従来よりも大幅に低減できる。
【0035】
その上、本実施形態では、スプール21の鍔部21bに端面21c上に突設されたコイル接続部25bを備えた中継端子片25を用いているため、自動巻線機を用いることが可能になり、電磁コイル22の製造コストも大幅に抑制できる。ここで、中継端子片25の端子接続部25cはコイル接続部25bへのコイル線の巻き付け(からげ)にも支障がないように構成されるため、この作業も自動化できる。特に、コイル接続部25bが端子接続部25cに対して鍔部21bの延在方向の外側に配置されることでコイル線の巻き付け(からげ)がさらに容易になる。なお、この効果には、端子接続部25cがシフト方向S2へずれた位置に突設している構成も大きく寄与する。
【0036】
本実施形態では、上述のように、内側接続部3eと端子接続部25cが交差した状態で電気的に接続されることで、電気的接続作業が容易になるとともに電気的接続構造の信頼性も向上する。特に、内側接続部3eに屈折部3fが設けられ、当該屈折部3fの両側にわたる表面領域が端子接続部25cの広範な表面部分に対向配置されることで、作業性や信頼性はさらに向上する。また、開口部1dを介した電気的接続作業に対する両接続部3eと25cの形状・構造(屈折形状)と相互の位置関係(上記の交差態様、シフト方向S1、S2、開口部1dに対する手前と奥側の関係など)によっても、作業性や信頼性はさらに向上している。
【0037】
以上のように、本実施形態の電磁継電器は、上述の構成によって、小型化、電気的接続構造の信頼性、電気的接続作業の容易化、製造コストの低減の各点において、実際の製造現場や製品において多大な効果を奏するものである。
【0038】
尚、本発明の電磁継電器は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態は、ベース1の形状や構造、電磁石ブロック2の形式や構造、接点端子構造の形状や構造についての一例を示すものに過ぎず、上記の中継端子片やコイル端子片を有するものであれば、種々の態様を有するベース、電磁石ブロック、接点端子構造を採用することができる。また、上記実施形態の中継端子片25は、挿入基部25aの平板面に対して端子接続部25cを厚み方向T25にずれた位置で突出するように構成されているが、上述の効果を奏するにはコイル接続部25bと端子接続部25cが相互に厚み方向T25にずれた位置に配置されるように構成されていればよいので、例えば、コイル接続部25bが挿入基部25aの平板面から厚み方向T25の内側へずれた位置に屈折してから突出するように構成してもよく、また、コイル接続部25bと端子接続部25cが挿入基部25aの平板面から相互に厚み方向T25の逆側へずれた位置に配置されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…ベース、1a…板状基部、1b…外縁枠部、1c…外部端子枠部、1d…開口部、2…電磁石ブロック、3…コイル端子片、3a…端子部、3b…内端部、3c…スリット、3d…端縁部、3e…内側接続部、3f…屈折部、4…共通端子片、5…固定接点端子片、6…外装ケース、7…可動端子片、8…可動鉄片、9…対向端子片、21…スプール、21a、21b…鍔部、21c…端面、21d…段差面、22…電磁コイル、23…鉄芯、24…ヨーク、25…中継端子片、25a…基部、25b…コイル接続部、25c…端子接続部、W3…(コイル端子片の内端部の平板面に沿った)幅方向、T3…(コイル端子片の内端部の)厚み方向、W25…(中継端子片の基部の平板面に沿った)幅方向、T25…(中継端子片の基部の)厚み方向、S1…(コイル端子片の内側接続部の)シフト方向、S2…(中継端子片の端子接続部の)シフト方向、A…開口部1dの開口面と直交する方向、B…方向Aに対して手前のコイル接続部を回避した斜めの作業方向
図1
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図6
図7
図8