特許第6082885号(P6082885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6082885電池用電極シートの製造方法および製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082885
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】電池用電極シートの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
   H01M4/04 Z
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-226310(P2012-226310)
(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公開番号】特開2014-78445(P2014-78445A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】507317502
【氏名又は名称】エリーパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尋史
(72)【発明者】
【氏名】早川 智康
【審査官】 ▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/132056(WO,A1)
【文献】 特開2012−061404(JP,A)
【文献】 特開2012−212619(JP,A)
【文献】 特開2000−353514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
H01G 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極シート用の金属箔を所定の搬送ラインに沿って長手方向に搬送しつつ前記金属箔の表裏両面に所定の塗工膜を塗布して電池用電極シートを製造する電池用電極シートの製造方法であって、
表面側塗工膜を形成した前記金属箔に対し、前記搬送ラインの幅方向における基準位置であるラインセンタに対する前記表面側塗工膜の幅方向に関する中央位置のズレ量を求め、このズレ量に基づき前記表面側塗工膜が形成された前記金属箔のエッジ位置を検出するセンサを移動させ、該センサが検出する前記表面側塗工膜が形成された前記金属箔のエッジ位置が所定位置となるように前記金属箔をその幅方向に移動させて、前記中央位置が前記ラインセンタに合致するように前記金属箔の位置を調整した後に、前記金属箔に裏面側塗工膜を形成することを特徴とする電池用電極シートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載する電池用電極シートの製造方法において、
前記ズレ量は下記式(1)で算出することを特徴とする電池用電極シートの製造方法。
【数1】
ただし、Wは金属箔の幅、WE1は一方側の未塗工部(金属箔のエッジ位置と表面側塗工膜エッジ位置との間の領域)の幅、WE2は他方側の未塗工部の幅、Xは搬送ラインの端部と金属箔の端部との距離、Wは搬送ラインの端部からラインセンタまでの距離である。
【請求項3】
請求項2に記載する電池用電極シートの製造方法において、
上式(1)のW−(WE1+WE2)の代わりに表面側塗工膜の幅Wを用いたことを特徴とする電池用電極シートの製造方法。
【請求項4】
シート状の電極板を基準となるラインセンタに沿って搬送する搬送ラインと、金属箔の表面側に表面側塗工膜を塗布・形成する表面側塗工部と、該表面側塗工部の下流側に配設され前記金属箔の裏面側に裏面側塗工膜を塗布・形成する裏面側塗工部とを有する電池用電極シートの製造装置であって、
前記裏面側塗工部の上流側において前記金属箔の幅方向の位置を調整する位置調整手段を有し、
前記位置調整手段は、前記ラインセンタに対する前記表面側塗工膜の幅方向の中央位置のズレ量を算出するズレ量算出部と、
前記ズレ量算出部が算出したズレ量に基づき前記表面側塗工膜が形成された前記金属箔のエッジ位置を検出するセンサを移動させるとともに、該センサが検出する前記表面側塗工膜が形成された前記金属箔のエッジ位置が所定位置となるように前記金属箔をその幅方向に移動させて、前記金属箔の中央位置が前記ラインセンタに合致するように前記金属箔の位置を調整する位置調整部と、を有するように構成したことを特徴とする電池用電極シートの製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載する電池用電極シートの製造装置において、
前記位置調整手段は、前記ズレ量に応じて前記金属箔の幅方向におけるエッジ計測位置が変更されるように前記金属箔の幅方向に移動してエッジ計測を行うエッジ計測手段と、このエッジ計測手段の計測結果に基づき前記金属箔をズレ量の分だけ幅方向に移動させる移動修正手段とを有することを特徴とする電池用電極シートの製造装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載する電池用電極シートの製造装置において、
前記ズレ量算出部は、
前記搬送ラインの左右両側における前記金属箔のエッジ位置と前記表面側塗工膜のエッジ位置との間の領域である未塗工部の幅WE1、WE2を計測する未塗工幅計測手段と、
前記搬送ラインの端部と前記金属箔の端部との間の距離Xを計測する他のエッジ位置計測手段と、
前記未塗工幅計測手段および他のエッジ位置計測手段で計測した前記幅WE1、WE2および距離Xとともに、事前に測定して記憶されている前記金属箔の幅Wおよび前記搬送ラインの端部から前記ラインセンタまでの距離Wに基づき次式(1)によりズレ量Zを算出する演算処理手段とを有することを特徴とする電池用電極シートの製造装置。
【数1】
【請求項7】
請求項6に記載する電池用電極シートの製造装置において、
前記ズレ量算出部は、前記未塗工幅計測手段の代わりに前記表面側塗工膜の幅Wを計測する塗工幅計測手段を有し、
前記演算処理手段は、上式(1)のW−(WE1+WE2)の代わりに表面側塗工膜の幅Wを用いてズレ量を算出することを特徴とする電池用電極シートの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池用電極シートの製造方法および製造装置に関し、特にシート状の金属箔の表裏両面に電極活物質等を含む所定のペースト材料を塗布して電池用電極シートを製造する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
電極活物質等を含む所定のペースト材料を金属箔の表裏に塗布して電池用電極シートを製造する場合には、ペースト材料を金属箔に塗布して形成した塗工膜の塗工端を金属箔の表裏で一致させることが肝要である。塗工端がずれている場合、このずれに起因して塗工膜が表裏で重ならない領域が形成される。金属箔の表裏面に塗工膜を形成し、乾燥させることで形成された電池用電極シートを所定のサイズに切ることにより電極板となるが、各電極板は前述したずれにより表裏で重ならない領域を有することで、この領域の分だけ電池用電極として機能させることができる面積が減ることとなる。また、このずれ幅にばらつきがあると、電池用電極として機能させることができる面積が電極板毎でばらつくので、このような電極板を用いて製造される電池の放電容量にばらつきが生ずることとなり、電池特性の安定化を図ることができなくなる。
【0003】
一般に、電池用電極シートの製造のための金属箔等、長尺搬送物を搬送しながら、その表面に塗布物を塗布する場合、前記長尺搬送物を所定の搬送ラインに沿って搬送するため、エッジ位置コントローラ(EPC)が利用されている。これは、エッジ位置計測センサで長尺搬送物の搬送方向に直交する方向(幅方向)でのエッジ位置を計測し、計測したエッジ位置がエッジ位置計測センサに設定された所定の範囲内に収まるように、エッジ位置計測センサの上流側で前記長尺搬送物の幅方向の位置を調整するものである。
【0004】
かかるEPCによれば、前記エッジ位置を適確に調整できるので、長尺搬送物を所定の搬送ラインに沿って搬送するように補正できる。したがって、例えば前記金属箔の片面だけにペースト材料を塗布する場合には、各面毎に塗工端位置を調整すればよいので、EPCを利用した上述の位置調整でも良い。
【0005】
ところが、金属箔の表裏にペースト材料を塗布し、しかも塗布した塗工膜の塗工端を表裏両面で揃えるためには、EPCを利用した従来技術では充分ではない。表裏面にそれぞれ塗工膜を形成する場合、表面側と裏面側の塗工膜の幅方向の中央が一致するように配置できればよいが、表面側に塗工膜を形成した金属箔の裏面側にペースト材料の塗布による塗工膜を形成する際、金属箔の搬送方向に関するラインセンタと表面側塗工膜の幅方向の中央位置がずれる場合がある。この場合、裏面側塗工膜の幅方向の中央が、ラインセンタと一致して塗工することができていたとしても表裏面での塗工膜の位置がずれて配置されてしまう。すなわち、図6に示すように、搬送ローラ01、02で、図中下方から上方に搬送される金属箔1は、金属箔1の幅方向片側に発生しているタルミにより、搬送ローラ01,02に対し、図中に点線で示すように傾斜してずれてしまう場合がある。これは、タルミを生起していない反対側に対する搬送ローラによるテンションがより大きいからである。したがって、このようにタルミが発生している場合には、金属箔1の搬送路の中央位置であり、搬送の際の基準位置となるラインセンタLと金属箔1のエッジとの間にズレ量Zが発生し、塗工膜(図6には図示せず)の中央位置とラインセンタLとが一致せず、塗工膜における表裏面の塗工端位置を合わせることが困難になる。
【0006】
さらに詳言すると、アルミ箔や銅箔で形成される金属箔1は、図7(a)に示すような左端側の長さLと右端側の長さLが、単位長さで見るとL=Lではなく、極端に描くと、図7(b)および図7(c)に示すように、L<L、またはL>Lとなっている。この結果、図6に示すように、ラインセンタLに対し金属箔1のエッジ位置がズレ量Zの分だけずれてしまい、従来のEPCによるエッジ位置合わせでは塗工膜の中央がラインセンタLに対してずれてしまい、金属箔1の表裏で塗工端の位置がずれてしまうということが起こる。一般に、金属箔は幅方向にタルミを持っていて、ロット毎にタルミ量が異なる。また、金属箔1をアルミ箔で形成した場合、アルミニウム箔は圧延するため、タルミを生起し易い。
【0007】
両面塗工で塗工膜の位置ずれを補正する点を開示する公知文献として特許文献1および特許文献2が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−353514号公報
【特許文献2】特開2003−142081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、単に、両面に塗工した後に、その塗工膜の塗工位置がずれているか否かを判定して、そのズレ量に基づき裏面側の塗工時に補正を行うものを開示している。つまり、特許文献1は、いったん両面に塗工された金属箔の表裏面への塗工位置のズレ量を求めるようにしたもの(表裏面での塗工膜の塗工位置にずれが生じてから補正するもの)で、表面の塗工膜の塗工端に対し、裏面の塗工膜の塗工端がずれないように裏面の塗工膜を塗布することができるように工夫したものではない。
【0010】
特許文献2は、金属箔の幅方向の各端部の位置を検出する位置検出センサをそれぞれ設けて、検出された両端部の位置に基づいて金属箔の幅方向の中央位置と塗工機の中央位置とを合わせるものである。また、箔の裏面にも塗工する場合には、表側と同様の工程で塗布する点も開示してある。
【0011】
しかしながら、特許文献2では、表面側と裏面側とで個別に端部の位置を検出し、それに基づき塗工を行うようになっており、表面側の塗工と裏面側の塗工とで位置合わせが独立して行われる。この結果、表面側の塗工膜の塗工位置がずれた場合に、そのずれを考慮して裏面側の塗工位置を合わせることについてはなんら開示されていない。すなわち、表裏面の塗工膜のエッジを揃える点に関しては何ら考慮されていない。
【0012】
本発明は、上記従来技術に鑑み、シート状の長尺物である金属箔の表裏両面に形成する塗工膜の塗工端が前記電極板の表裏で一致するように塗工することができる電池用電極シートの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、
電極シート用の金属箔を所定の搬送ラインに沿って長手方向に搬送しつつ前記金属箔の表裏両面に所定の塗工膜を塗布して電池用電極シートを製造する電池用電極シートの製造方法であって、
表面側塗工膜を形成した前記金属箔に対し、前記搬送ラインの幅方向における基準位置であるラインセンタに対する前記表面側塗工膜の幅方向に関する中央位置のズレ量を求め、このズレ量に基づき前記表面側塗工膜が形成された前記金属箔のエッジ位置を検出するセンサを移動させ、該センサが検出する前記表面側塗工膜が形成された前記金属箔のエッジ位置が所定位置となるように前記金属箔をその幅方向に移動させて、前記中央位置が前記ラインセンタに合致するように前記金属箔の位置を調整した後に、前記金属箔に裏面側塗工膜を形成することを特徴とする電池用電極シートの製造方法にある。
【0014】
本態様によれば、表面側塗工膜の中央位置を、基準となるラインセンタに合致させることができるので、ラインセンタに中央位置が合致するよう形成される裏面側塗工膜の中央位置を表面側塗工膜の中央位置に合致させることができる。この結果、表面側塗工膜および裏面側塗工膜のエッジ位置を高精度に合致させることができる。
また、金属箔のエッジの計測位置がズレ量の分だけ幅方向に移動されるので、移動された位置を基準として金属箔のエッジを計測することができる。この結果、金属箔をズレ量分だけ移動させて金属箔の中央位置をラインセンタに合致させることができる。
【0017】
本発明の第の態様は、
1の態様に記載する電池用電極シートの製造方法において、
前記ズレ量は下記式(1)で算出することを特徴とする電池用電極シートの製造方法にある。
【0018】
【数1】
【0019】
ただし、Wは金属箔の幅、WE1は一方側の未塗工部(金属箔のエッジ位置と表面側塗工膜エッジ位置との間の領域)の幅、WE2は他方側の未塗工部の幅、Xは搬送ラインの端部と金属箔の端部との距離、Wは搬送ラインの端部からラインセンタまでの距離である。
【0020】
本態様によれば、ズレ量を求めるための具体的なパラメータに基づいて具体的なズレ量を容易に算出することができる。
【0021】
本発明の第の態様は、
の態様に記載する電池用電極シートの製造方法において、
上式(1)のWE1+WE2)の代わりに表面側塗工膜の幅Wを用いたことを特徴とする電池用電極シートの製造方法にある。
【0022】
本態様によれば、表面側塗工膜の幅Wを用いて第3の実施の形態と同様にズレ量を容易に算出することができる。
【0023】
本発明の第4の態様は、
シート状の電極板を基準となるラインセンタに沿って搬送する搬送ラインと、金属箔の表面側に表面側塗工膜を塗布・形成する表面側塗工部と、該表面側塗工部の下流側に配設され前記金属箔の裏面側に裏面側塗工膜を塗布・形成する裏面側塗工部とを有する電池用電極シートの製造装置であって、
前記裏面側塗工部の上流側において前記金属箔の幅方向の位置を調整する位置調整手段を有し、
前記位置調整手段は、前記ラインセンタに対する前記表面側塗工膜の幅方向の中央位置のズレ量を算出するズレ量算出部と、
前記ズレ量算出部が算出したズレ量に基づき前記表面側塗工膜が形成された前記金属箔のエッジ位置を検出するセンサを移動させるとともに、該センサが検出する前記表面側塗工膜が形成された前記金属箔のエッジ位置が所定位置となるように前記金属箔をその幅方向に移動させて、前記金属箔の中央位置が前記ラインセンタに合致するように前記金属箔の位置を調整する位置調整部と、を有するように構成したことを特徴とする電池用電極シートの製造装置にある。
【0024】
本態様によれば、表面側塗工膜の中央位置を、基準となるラインセンタに合致させることができるので、ラインセンタに中央位置が合致するよう形成される裏面側塗工膜の中央位置を表面側塗工膜の中央位置に合致させることができる。この結果、表面側塗工膜および裏面側塗工膜のエッジ位置を高精度に合致させることができる。
【0025】
本発明の第の態様は、
の態様に記載する電池用電極シートの製造装置において、
前記位置調整手段は、前記ズレ量に応じて前記金属箔の幅方向におけるエッジ計測位置が変更されるように前記金属箔の幅方向に移動してエッジ計測を行うエッジ計測手段と、このエッジ計測手段の計測結果に基づき前記金属箔をズレ量の分だけ幅方向に移動させる移動修正手段とを有することを特徴とする電池用電極シートの製造装置にある。
【0026】
本態様によれば、金属箔のエッジの計測位置がズレ量の分だけ幅方向に移動されるので、移動された位置を基準として金属箔のエッジを計測することができる。この結果、金属箔をズレ量分だけ移動させて金属箔の中央位置をラインセンタに合致させることができる。
【0027】
本発明の第の態様は、
または第の態様に記載する電池用電極シートの製造装置において、
前記ズレ量算出手段は、
前記搬送ラインの左右両側における前記金属箔のエッジ位置と前記表面側塗工膜のエッジ位置との間の領域である未塗工部の幅WE1、WE2を計測する未塗工幅計測手段と、
前記搬送ラインの端部と前記金属箔の端部との間の距離Xを計測する他のエッジ位置計測手段と、
前記未塗工幅計測手段および他のエッジ位置計測手段で計測した前記幅WE1、WE2および距離Xとともに、事前に測定して記憶されている前記金属箔の幅Wおよび前記搬送ラインの端部から前記ラインセンタまでの距離Wに基づき次式(1)によりズレ量Zを算出する演算処理手段とを有することを特徴とする電池用電極シートの製造装置にある。
【0028】
【数1】
【0029】
本態様によれば、ズレ量を求めるための具体的なパラメータに基づいて具体的なズレ量を容易に算出することができる。
【0030】
本発明の第の態様は、
の態様に記載する電池用電極シートの製造装置において、
前記ズレ量算出は、前記未塗工幅計測手段の代わりに前記表面側塗工膜の幅Wを計測する塗工幅計測手段を有し、
前記演算処理手段は、上式(1)のWE1+WE2)の代わりに表面側塗工膜の幅Wを用いてズレ量を算出することを特徴とする電池用電極シートの製造装置にある。
【0031】
本態様によれば、表面側塗工膜の幅Wを用いて第7の態様と同様にズレ量を容易に算出することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、金属箔の裏面に塗工膜を塗布するに先立ち、表面に塗布された塗工膜の幅方向の中央位置を検出し、表面の塗工膜の中央位置と搬送ラインの中央位置とを一致させるように自動補正を行うようにした。この結果、金属箔のタルミに起因する蛇行の影響を矯正して金属箔の表裏にそれぞれ塗布される塗工膜の塗工端を正確に揃えることが可能になる。かくして、金属箔の表面側と裏面側の塗工膜の塗工端の位置が揃うことで特性が安定した電池用電極シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施の形態に係る電池用電極シートの製造装置を示す概略構成図である。
図2図1のA部分を抽出・拡大して示す拡大図である。
図3図1のB部分を抽出・拡大して示す拡大図である。
図4】本発明の実施の形態に係る所定の補正処理を行う際に用いるズレ量の演算原理を示す説明図である。
図5】本発明の実施の形態におけるズレ量の調整時の態様を時系列に示す説明図である。
図6】シート状部材である電極板等を搬送する際に発生する蛇行に伴うズレ量を説明するための説明図である。
図7】シート状部材である単位長さの電極板を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0035】
図1は本発明の実施の形態に係る電池用電極シートの製造装置を示す概略構成図である。同図に示すように、巻出部Iにおけるローラ4に巻回されているシート状部材である金属箔1は、表面側位置修正部5、表面側塗工部6,裏面側位置修正部7、裏面側塗工部8を経て巻取部IIのローラ9に巻取られる。この間、金属箔1は、表面側位置修正部5で幅方向の位置を修正した後、表面側塗工部6で表面側に電極活物質等を含む所定のペースト材料が塗布される。かかるペースト材料は、表面側塗工部6の下流側の乾燥工程IIIで乾燥されて表面側塗工膜2となる。その後、裏面側位置修正部7で再度、幅方向の位置を修正した後、裏面側塗工部8で、裏面側に表面と同様の電極活物質等を含む所定のペースト材料が塗布される。かかるペースト材料は、裏面側塗工部8の下流側の乾燥工程IVで乾燥されて裏面側塗工膜3となる。このように金属箔1の表裏両面にそれぞれ表面側塗工膜2および裏面側塗工膜3が形成されて電池用電極シートVとなり、巻取部IIのローラ9に巻取られる。かかる搬送経路の途中には、適宜搬送ローラ10〜19が配設してあり、金属箔1を搬送させるとともに、その搬送方向を適宜変更させている。また、乾燥工程III、IVでは、金属箔1に塗布された塗工膜が乾燥されるものであれば特に制限するものではない。図示していないが、例えば、それぞれ乾燥に適した温度設定がなされた乾燥装置内を表面や裏面に塗工膜を有する金属箔1が搬送されることにより金属箔1に塗工された塗工膜が乾燥されるものとすることで実現できる。
【0036】
表面側位置修正部5の下流側には、表面側エッジ位置計測センサ20が配設してあり、表面側エッジ位置計測センサ20が検出したエッジ位置信号に基づき表面側位置修正部5で金属箔1の幅方向位置を修正する。
【0037】
裏面側位置修正部7の下流側には、裏面側エッジ位置計測センサ21,22および監視カメラ23が配設してあり、裏面側エッジ位置計測センサ21,22および監視カメラ23が検出したエッジ位置信号等に基づき裏面側位置修正部7で金属箔1の幅方向位置を所定通りに修正する。
【0038】
かかる表面側位置修正部5および裏面側位置修正部7における金属箔1の幅方向位置の修正態様に関しては後に詳述するが、裏面側塗工部8で、金属箔1の裏面側に裏面側塗工膜3を形成するに先立ち、表面側塗工膜2の幅方向の中央位置を検出し、表面側塗工膜2の中央位置と搬送ラインの中央位置であるラインセンタL図5参照。以下同じ)とを一致させるように金属箔1の位置補正を行っている。
【0039】
図2は、図1のA部分を抽出・拡大して示す拡大図である。同図に示すように、当該部分は、表面側塗工部6(図1参照)に可及的に近接する位置で、その上流側に配設されて金属箔1の幅方向の位置調節を行う部分であり、その表面側位置修正部5が、金属箔1の幅方向の位置を調整する2個のローラ5A,5Bと、ローラ5Bを傾動させて金属箔1の幅方向の位置を制御する制御部5Eと、を有している。本形態では、ローラ5Bが金属箔1の幅方向の位置を修正する位置修正用ローラとして機能するように構成してある。すなわち、ローラ5Bは金属箔1の裏面に当接させた状態で、中心軸が適宜傾斜するよう制御され、このときの傾動により金属箔1の幅方向の位置を調整する。
【0040】
表面側エッジ位置計測センサ20は、所定の固定位置で、例えばレーザ、赤外線、超音波などの知られた方法により金属箔1のエッジ位置を計測し、そのエッジ位置を表わすエッジ位置信号S1を制御部5Eに送出する。制御部5Eは、エッジ位置信号S1に基づき計測した金属箔1のエッジ位置と、表面側エッジ位置計測センサ20の所定位置とが合致するようにローラ5Bを傾動させて金属箔1の幅方向の位置を調節する。
【0041】
図3は、図1のB部分を抽出・拡大して示す拡大図である。同図に示すように、当該B部分が、裏面側塗工部8の上流側において金属箔1の幅方向の位置を調整する位置調整手段となる。当該位置調整手段は、ラインセンタLに対する表面側塗工膜2の幅方向の中央位置C(図5参照:以下同じ)のズレ量Z図5参照;以下同じ)を算出するズレ量算出手段と、ズレ量算出手段が算出したズレ量Zに基づき金属箔1をその幅方向に移動させて、金属箔1の中央位置CがラインセンタLに合致するように金属箔1の位置を調整する位置調整手段とを有する。ここで、本形態は、ズレ量算出手段を、裏面側エッジ位置計測センサ22、監視カメラ23A,23Bおよびセンサ移動制御部24で構成した場合であり、位置調整手段を、裏面側位置修正部7および裏面側エッジ位置計測センサ21で構成した場合である。
【0042】
さらに詳言すると、裏面側位置修正部7は、裏面側塗工部8(図1参照)に可及的に近接する位置で、その上流側に配設されて金属箔1の幅方向の位置調節を行う部分であり、その裏面側位置修正部7が、金属箔1の幅方向の位置を調整する2個のローラ7A,7Bと、ローラ7Bを傾動させて金属箔1の幅方向の位置を制御する制御部7Eと、を有している。本形態では、ローラ7Bが金属箔1の幅方向の位置を修正する位置修正用ローラとして機能するように構成してある。すなわち、ローラ5Bは金属箔1の裏面に当接させた状態で、中心線が適宜傾斜するよう制御され、このときの傾動により金属箔1の幅方向の位置を調整する。
【0043】
裏面側エッジ位置計測センサ21は、例えばレーザ、赤外線、超音波などの知られた方法により金属箔1のエッジ位置を計測し、そのエッジ位置を表わすエッジ位置信号S2を制御部7Eに送出する。この際、裏面側エッジ位置計測センサ21は、表面側エッジ位置計測センサ20とは異なり、金属箔1の幅方向に移動可能に形成されている。裏面側エッジ位置計測センサ22は、裏面側エッジ位置計測センサ21の下流側において、所定の固定位置で、例えばレーザ、赤外線、超音波などの知られた方法により金属箔1のエッジ位置を検出し、そのエッジ位置を表わすエッジ位置信号S3をセンサ移動制御部24に送出する。
【0044】
監視カメラ23A、23Bは、金属箔1の搬送方向に関し裏面側エッジ位置計測センサ22の近傍位置で金属箔1の幅方向の左右両端部分における金属箔1の未塗工部(金属箔1のエッジ位置と表面側塗工膜2のエッジ位置との間の領域;以下同じ)の幅をそれぞれの画像信号に基づき計測して未塗工部の幅を表す未塗工幅信号S4,S5をセンサ移動制御部24に送出する。
【0045】
センサ移動制御部24は、エッジ位置信号S3および未塗工幅信号S4,S5に基づき、金属箔1の搬送方向における表面側塗工膜2の中央位置C(図5参照)のラインセンタLに対するズレ量Z図5参照;以下、同じ)を演算するとともに、ズレ量Zを表す位置制御信号S6で裏面側エッジ位置計測センサ21の金属箔1を幅方向に移動させて、その位置を調整する。なお、本形態では、ズレ量Zの算出に先立ち、裏面側エッジ位置計測センサ21で金属箔1のエッジ位置を計測し、エッジ位置信号S2を制御部7Eに送出している。この結果、制御部7Eは、エッジ位置信号S2に基づきローラ7Bを適宜傾動させて金属箔1のエッジ位置が、裏面側エッジ位置計測センサ21の所定位置(計測範囲内)に合致するように調整している。
【0046】
かかる、ズレ量Zの演算手法およびズレ量Zを用いた金属箔1の幅方向位置の調整態様を、図4および図5に基づき具体的に説明しておく。図4はズレ量Zの演算原理を示す説明図で、(a)は図3の一部を抽出して示し、(b)が(a)に対応する各部の寸法を示している。図4(a)に示すように、監視カメラ23Aで図中左側の未塗工部の幅を、また監視カメラ23Bで図中右側の未塗工部の幅を、それぞれ計測するとともに、裏面側エッジ位置計測センサ22で搬送ラインの端部と金属箔1の端部との間の距離を計測して得ることにより、予め求めておく所定のパラメータを利用して所望のズレ量Zを算出することができる。
【0047】
図4(b)はこの場合に必要なパラメータを示す図で、各符号は次のパラメータを表す。Wは、金属箔1の幅である。ローラ4から巻き出された金属箔1の幅をカメラで撮影した画像の解析により計測する等、自動的に行う方法もあるが、本実施形態では事前に測定しておき、手入力でセンサ移動制御部24内あるいはセンサ移動制御部24外に設けられ、センサ移動制御部24へデータの送信可能に接続されたメモリに記憶しておく。WE1は、未塗工部(図中左側)の幅である。これは、監視カメラ23Aで撮影した画像を解析することで計測する。WE2は、未塗工部(図中右側)の幅である。これは、監視カメラ23Bで撮影した画像を解析することで計測する。Wは、表面側塗工膜の幅である。これは、WE1+WE2)で算出する。Xは、搬送ライン端部と金属箔1の端部との距離である。これは、所定位置に固定された裏面側エッジ位置計測センサ22で計測する。Wは、搬送ライン端部からラインセンタL図4には図示せず)までの距離である。これは基本的には数値の変わらない(摩耗等があったとしても無視できる程度)のものであるため、本形態では事前に測定しておき、手入力でセンサ移動制御部24内あるいはセンサ移動制御部24外に設けられ、センサ移動制御部24へデータの送信可能に接続されたメモリに記憶しておく。
【0048】
本形態は、ラインセンタLを基準として、このラインセンタLに対する表面側塗工膜2の中央位置のズレ量Zを演算し、このズレ量Zが零となるように金属箔1の幅方向の位置を調整するものである。ここで、ラインセンタLを基準とした場合、本形態において下流側の裏面側塗工部8で形成される裏面側塗工膜3は、その幅方向の中央位置をラインセンタLに合致させてペースト材料を塗布することにより形成されるので、ラインセンタLを介して表面側塗工膜2の幅方向の中央位置と裏面側塗工膜3の幅方向の中央位置を自動的に合致させ、ひいては表面側塗工膜2の塗工端と裏面側塗工膜3の塗工端とを合致させることができる。表面側塗工部6および裏面側塗工部8では、ダイコーティング方式により所定のペースト材料を金属箔1に塗布して表面側塗工膜2および裏面側塗工膜3を形成している。本形態では、中央位置をラインセンタLに合致させて表面側と裏面側とで同一幅の塗膜を金属箔1に塗布するようになっているからである。
【0049】
上述の如きパラメータを用いれば、求めるズレ量Zは次式(1)で表される。
【0050】
【数1】
【0051】
図5は、図4に示す原理で算出したズレ量の調整時の態様を時系列に示す説明図である。先ず、図5(a)に示すように、金属箔1に形成した表面側塗工膜2の、幅方向に関する中央位置Cが基準となるラインセンタLに対しズレ量Zだけ(図5においては)左方向にずれている場合を考える。かかる状態のまま裏面側塗工部8でラインセンタLに合わせるように裏面側塗工膜3を形成すると、金属箔1の表裏両面で相対向する表面側塗工膜2の塗工端と裏面側塗工膜3の間の塗工端との間にズレ量Z分の不一致が生起される。
【0052】
かかる不一致を回避すべく本形態においては、センサ移動制御部24(図3参照)における上記式(1)の演算によりズレ量Zを求めており、このズレ量Zを表わす位置制御信号S6がセンサ移動制御部24から裏面側エッジ位置計測センサ21に送出される。この結果、裏面側エッジ位置計測センサ21がズレ量Zの分だけ金属箔1の幅方向(図5においては左方向)に移動し、移動した位置で金属箔1のエッジ位置を計測してエッジ位置信号S2を制御部7Eに送出する。かかるエッジ位置信号S2に基づき制御部7Eは、ローラ7Bを傾動させて裏面側エッジ位置計測センサ21の所定位置に金属箔1のエッジ位置が合致するように金属箔1を(図5においては右方向に)移動させる。この結果、最終的に中央位置CがLに合致する。
【0053】
かかる金属箔1の位置調整の後、所定の塗工作業を行えば裏面側塗工膜3の中央位置をラインセンタLに合致させた状態で裏面側塗工膜3を形成することができる。ここで、表面側塗工膜2の中央位置CはラインセンタLに合致しており、また裏面側塗工膜3の中央位置はラインセンタLに合致しているので、表面側塗工膜2の中央位置Cに裏面側塗工膜3の中央位置を合致させることができる。
【0054】
以上の説明に基づく金属箔1の表裏両面におけるエッジ位置合わせおよび塗工工程を時系列的にまとめると次のようになる。
1) 表面側エッジ位置計測センサ20で金属箔1のエッジ位置を計測する。
2) 計測したエッジ位置信号S1に基づき制御部5Eを介して位置修正用のローラ5Bを傾動し、金属箔1のエッジの位置と表面側エッジ位置計測センサ20の所定位置とが合うよう金属箔1の位置を修正する。その後、表面側塗工部6で金属箔1の表面に所定のペースト材料を塗布して表面側塗工膜2を形成する。
3) 裏面側エッジ位置計測センサ21で金属箔1のエッジ位置を計測する。
4) 計測したエッジ位置信号S2に基づき制御部7Eを介して位置修正用のローラ7Bを傾動し、金属箔1のエッジの位置と裏面側エッジ位置計測センサ21の所定位置とが合うよう金属箔1の位置を修正する。
5) 裏面側エッジ位置計測センサ22で金属箔1のエッジ部の位置を計測して得るエッジ位置信号S3と、監視カメラ23A,23Bで未塗工幅を計測して得る未塗工幅信号S4,S5とに基づき、センサ移動制御部24でラインセンタLに対する表面側塗工膜2の中央位置Cのズレ量Zを演算し、ズレ量Z分だけ裏面側エッジ位置計測センサ21を移動させる。
6) 裏面側エッジ位置計測センサ21の移動に伴い、移動した位置で金属箔1のエッジ位置を計測し、金属箔1のエッジの位置と裏面側エッジ位置計測センサ21の所定位置とが合うようローラ7Bを傾動することで金属箔1を移動して位置を修正する。
7) かかる位置修正の後、裏面側塗工部8で金属箔1の裏面に所定のペースト材料を塗布して表面側塗工膜2を形成する。
【0055】
この結果、本態様によれば、薄い金属箔1のタルミに起因する蛇行の影響を矯正して金属箔1の表裏にそれぞれ形成される表面側塗工膜2および裏面側塗工膜3の塗工端を正確に揃えることが可能になる。
【0056】
なお、上記実施の形態において、金属箔1における余塗工幅は左右両側にそれぞれ配設した監視カメラ23A,23Bで個別に計測情報を得るように構成したが、これに限るものではない。表面側塗工膜2の幅の情報が得られれば良いので、例えば1台の監視カメラで表面側塗工膜2の幅の全域を一度に撮像した画像情報で得るように構成しても勿論構わない。ただ、本形態の如く2台に分割した場合の方が、1台の場合に比べ監視カメラ23A,23Bの分解能を飛躍的に向上させることができ、ズレ量Zをより精度良く算出することができる。
【0057】
また、上記実施の形態では、ズレ量Zの算出のためのパラメータを、裏面側エッジ位置計測センサ22および監視カメラ23A,23Bを利用して求めるようにしたが、これに限るものではない。ズレ量Zを算出できるようなパラメータを与えることができればそれ以上の制限はない。したがって、所定のパラメータを与えるための計測方法ないし計測器を限定するものではない。
【0058】
また、ズレ量Zに基づき金属箔1を移動させる移動制御に関しても上記実施の形態の構成に限定するものではない。ズレ量Zに基づきこれを除去するように金属箔1を移動させる機構であれば、すべて本発明の技術思想の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は二次電池を製造する産業分野において有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
I 巻出部
II 巻取部
III ,IV 乾燥工程
V 電池用電極シート
1 金属箔
2 表面側塗工膜
3 裏面側塗工膜
5 表面側位置修正部
6 表面側塗工部
7 裏面側位置修正部
8 裏面側塗工部
20 表面側エッジ位置計測センサ
21,22 裏面側エッジ位置計測センサ
23,23A,23B 監視カメラ
24 センサ移動制御部
S1,S2,S3 エッジ位置信号
S4,S5 未塗工幅信号
S6 位置制御信号
図2
図4
図6
図7
図1
図3
図5