(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態)
以下、本開示の一実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程(ステップ)、工程の順序等は、一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
[有機EL表示装置]
まず、TFT基板が用いられる有機EL表示装置100の構成の一例について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、実施の形態に係る有機EL表示装置の一部切り欠き斜視図である。
図2は、実施の形態に係る有機EL表示装置のピクセルバンクの例を示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、有機EL表示装置100は、複数個の薄膜トランジスタが配置されたTFT基板(TFTアレイ基板)1と、下部電極(反射電極)である陽極131、EL層(発光層)132及び上部電極(透明電極)である陰極133からなる有機EL素子(発光部)130との積層構造により構成される。
【0015】
TFT基板1には複数の画素110がマトリクス状に配置されており、各画素110には画素回路120が設けられている。
【0016】
有機EL素子130は、複数の画素110のそれぞれに対応して形成されており、各画素110に設けられた画素回路120によって各有機EL素子130の発光の制御が行われる。有機EL素子130は、複数の薄膜トランジスタを覆うように形成された層間絶縁膜(平坦化膜)の上に形成される。
【0017】
また、有機EL素子130は、陽極131と陰極133との間にEL層132が配置された構成となっている。陽極131とEL層132との間にはさらに正孔輸送層が積層形成され、EL層132と陰極133との間にはさらに電子輸送層が積層形成されている。なお、陽極131と陰極133との間には、その他の機能層が設けられていてもよい。EL層132をはじめ陽極131と陰極133との間に形成される機能層は、有機材料によって構成された有機層である。
【0018】
各画素110は、それぞれの画素回路120によって駆動制御される。また、TFT基板1には、画素110の行方向に沿って配置される複数のゲート配線(走査線)140と、ゲート配線140と交差するように画素110の列方向に沿って配置される複数のソース配線(信号配線)150と、ソース配線150と平行に配置される複数の電源配線(
図1では省略)とが形成されている。各画素110は、例えば直交するゲート配線140とソース配線150とによって区画されている。
【0019】
ゲート配線140は、各画素回路120に含まれるスイッチング素子として動作する第1薄膜トランジスタのゲート電極と行毎に接続されている。ソース配線150は、第1薄膜トランジスタのソース電極と列毎に接続されている。電源配線は、各画素回路120に含まれる駆動素子として動作する第2薄膜トランジスタのドレイン電極と列毎に接続されている。
【0020】
図2に示すように、有機EL表示装置100の各画素110は、3色(赤色、緑色、青色)のサブ画素110R、110G、110Bによって構成されており、これらのサブ画素110R、110G、110Bは、表示面上に複数個マトリクス状に配列されるように形成されている。各サブ画素110R、110G、110Bは、バンク111によって互いに分離されている。バンク111は、ゲート配線140に平行に延びる突条と、ソース配線150に平行に延びる突条とが互いに交差するように、格子状に形成されている。そして、この突条で囲まれる部分(すなわち、バンク111の開口部)の各々とサブ画素110R、110G、110Bの各々とが一対一で対応している。なお、本実施の形態において、バンク111はピクセルバンクとしたが、ラインバンクとしても構わない。
【0021】
陽極131は、TFT基板1上の層間絶縁膜(平坦化膜)上でかつバンク111の開口部内に、サブ画素110R、110G、110B毎に形成されている。同様に、EL層132は、陽極131上でかつバンク111の開口部内に、サブ画素110R、110G、110B毎に形成されている。透明な陰極133は、複数のバンク111上で、かつ全てのEL層132(全てのサブ画素110R、110G、110B)を覆うように、連続的に形成されている。
【0022】
さらに、画素回路120は、各サブ画素110R、110G、110B毎に設けられており、各サブ画素110R、110G、110Bと、対応する画素回路120とは、コンタクトホール及び中継電極によって電気的に接続されている。なお、サブ画素110R、110G、110Bは、EL層132の発光色が異なることを除いて同一の構成である。
【0023】
ここで、画素110における画素回路120の回路構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、実施の形態に係る有機EL表示装置における画素回路の構成を示す電気回路図である。
【0024】
図3に示すように、画素回路120は、スイッチング素子として動作する第1薄膜トランジスタSwTrと、駆動素子として動作する第2薄膜トランジスタDrTrと、対応する画素110に表示するためのデータを記憶するキャパシタCとで構成される。本実施の形態において、第1薄膜トランジスタSwTrは、画素110を選択するためのスイッチングトランジスタであり、第2薄膜トランジスタDrTrは、有機EL素子130を駆動するための駆動トランジスタである。
【0025】
第1薄膜トランジスタSwTrは、ゲート配線140に接続されるゲート電極G1と、ソース配線150に接続されるソース電極S1と、キャパシタC及び第2薄膜トランジスタDrTrのゲート電極G2に接続されるドレイン電極D1と、半導体膜(図示せず)とで構成される。第1薄膜トランジスタSwTrは、接続されたゲート配線140及びソース配線150に所定の電圧が印加されると、当該ソース配線150に印加された電圧がデータ電圧としてキャパシタCに保存される。
【0026】
第2薄膜トランジスタDrTrは、第1薄膜トランジスタSwTrのドレイン電極D1及びキャパシタCに接続されるゲート電極G2と、電源配線160及びキャパシタCに接続されるドレイン電極D2と、有機EL素子130の陽極131に接続されるソース電極S2と、半導体膜(図示せず)とで構成される。第2薄膜トランジスタDrTrは、キャパシタCが保持しているデータ電圧に対応する電流を電源配線160からソース電極S2を通じて有機EL素子130の陽極131に供給する。これにより、有機EL素子130では、陽極131から陰極133へと駆動電流が流れてEL層132が発光する。
【0027】
なお、上記構成の有機EL表示装置100では、ゲート配線140とソース配線150との交点に位置する画素110毎に表示制御を行うアクティブマトリクス方式が採用されている。これにより、各画素110(各サブ画素110R、110G、110B)における第1薄膜トランジスタSwTr及び第2薄膜トランジスタDrTrによって、対応する有機EL素子130が選択的に発光し、所望の画像が表示される。
【0028】
[薄膜トランジスタ基板]
次に、実施の形態に係るTFT基板1について、
図4を用いて説明する。
図4は、実施の形態に係るTFT基板の概略断面図である。以下の実施の形態では、上記有機EL表示装置100におけるTFT基板1について説明する。
【0029】
図4に示すように、TFT基板1には、第1薄膜トランジスタSwTr、第2薄膜トランジスタDrTr、容量部(キャパシタC)及び配線部が形成されている。
【0030】
TFT基板1は、基板10上に、第1導電層20L、第1絶縁層30L、半導体層40L、第2絶縁層50L、第2導電層60L、第3絶縁層70L、第3導電層80L及び第4絶縁層90Lを備えており、各層は、第1薄膜トランジスタSwTr、第2薄膜トランジスタDrTr、容量部(キャパシタC)及び配線クロスオーバ部における、電極や配線、絶縁膜を構成している。
【0031】
第1薄膜トランジスタSwTrは、ゲート電極21(第1導電層20L)と、ゲート絶縁膜である絶縁膜30(第1絶縁層30L)と、チャネル層である酸化物半導体層41(半導体層40L)と、絶縁膜50(第2絶縁層50L)と、ソース電極61S及びドレイン電極61D(第2導電層60L)とを有する。ゲート電極21、ソース電極61S及びドレイン電極61Dは、それぞれ、
図3におけるゲート電極G1、ソース電極S1及びドレイン電極D1に対応する。
【0032】
第2薄膜トランジスタDrTrは、ゲート電極22(第1導電層20L)と、ゲート絶縁膜である絶縁膜30(第1絶縁層30L)と、チャネル層である酸化物半導体層42(半導体層40L)と、絶縁膜50(第2絶縁層50L)と、ソース電極62S及びドレイン電極62D(第2導電層60L)とを有する。ゲート電極22、ソース電極62S及びドレイン電極62Dは、それぞれ、
図3におけるゲート電極G2、ソース電極S2及びドレイン電極D2に対応する。
【0033】
本実施の形態に係る第1薄膜トランジスタSwTr及び第2薄膜トランジスタDrTrは、チャネル保護型でボトムゲート型のTFTであり、また、トップコンタクト構造が採用されている。
【0034】
なお、容量部は、第1電極23(第1導電層20L)と、第2電極63(第2導電層60L)とを有する。また、配線部は、各種配線を構成しており、例えば、第1配線24(第1導電層20L)と第2配線64(第2導電層60L)とを有する。
【0035】
以下、TFT基板1における各構成部材について詳細に説明する。
【0036】
[基板]
基板10は、例えば、ガラス基板であるが、ガラス基板に限らず、樹脂基板等であってもよい。また、基板10は、リジッド基板ではなく、フレキシブルガラス基板又はフレキシブル樹脂基板等のシート状又はフィルム状のフレキシブル基板を用いてもよい。なお、基板10の表面にアンダーコート層を形成してもよい。
【0037】
[第1導電層]
第1導電層20Lは、ゲート電極21及び22と、第1電極23と、第1配線24とを構成している。ゲート電極21及び22と、第1電極23と、第1配線24とは、基板10上に所定形状で形成される。
【0038】
第1導電層20Lとしては、例えばTi、Mo、W、Al、Au等の金属やITO(酸化インジウムスズ)等の導電性酸化物が用いられる。金属に関しては、例えばMoWのような合金を用いることもできる。また、膜の密着性を高めるために、酸化物との密着性が良い金属として例えばTi、AlやAu等を用いて、これらの金属を挟んだ積層体を第1導電層20Lとして用いることもできる。
【0039】
[第1絶縁層]
第1絶縁層30Lである絶縁膜30は、第1薄膜トランジスタSwTr及び第2薄膜トランジスタDrTrのゲート絶縁膜を構成している。つまり、絶縁膜30は、ゲート電極21と酸化物半導体層41との間、及び、ゲート電極22と酸化物半導体層42との間に形成されており、ゲート電極21及び22を覆うように基板10上に成膜される。
【0040】
絶縁膜30としては、例えばシリコン酸化膜やハフニウム酸化膜等の酸化物薄膜、窒化シリコン膜等の窒化膜もしくはシリコン酸窒化膜の単層膜、又は、これらの積層膜等が用いられる。
【0041】
なお、絶縁膜30は、容量部及び配線部の層間絶縁膜でもあり、第1電極23及び第1配線24も覆うように、基板10の面内において連続して形成される。
【0042】
[半導体層]
半導体層40Lである酸化物半導体層41及び42は、基板10の上方に所定形状で形成される。酸化物半導体層41は、第1薄膜トランジスタSwTrのチャネル層であり、ゲート電極21と対向するように形成される。また、酸化物半導体層42は、第2薄膜トランジスタDrTrのチャネル層であり、ゲート電極22と対向するように形成される。例えば、酸化物半導体層41及び42は、絶縁膜30上に島状に形成される。なお、本実施の形態において、半導体層は、容量部及び配線部にも形成されている。
【0043】
酸化物半導体層41及び42としては、In−Ga−Zn−Oを含むInGaZnO
X(IGZO)等の透明アモルファス酸化物半導体(TAOS:Transparent Amorphous Oxide Semiconductor)により構成することが望ましい。透明アモルファス酸化物半導体をチャネル層とする薄膜トランジスタは、キャリア移動度が高く、大画面及び高精細の表示装置に適している。また、透明アモルファス酸化物半導体は、低温成膜が可能であるのでフレキシブル基板上に容易に形成することができる。
【0044】
InGaZnO
Xのアモルファス酸化物半導体は、例えば、InGaO
3(ZnO)
4組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして、スパッタ法やレーザー蒸着法等の気相成膜法により成膜することができる。
【0045】
[第2絶縁層]
第2絶縁層50Lである絶縁膜50は、半導体層40Lを覆うように絶縁膜30上に成膜される。つまり、酸化物半導体層41及び42は絶縁膜50によって覆われており、絶縁膜50は酸化物半導体層41及び42を保護する保護膜(チャネル保護層)として機能する。絶縁膜50は、一例として、シリコン酸化膜(SiO
2)である。
【0046】
絶縁膜50(第2絶縁層50L)の一部は貫通するように開口されており、この開口された部分(コンタクトホール)を介して、酸化物半導体層41とソース電極61S及びドレイン電極62Dとが接続されている。また、酸化物半導体層42とソース電極62S及びドレイン電極62Dとについても絶縁膜50に形成されたコンタクトホールを介して接続されている。
【0047】
[第2導電層]
第2導電層60Lは、ソース電極61及びドレイン電極61Dと、ソース電極62及びドレイン電極62Dと、第2電極63と、第2配線64とを構成している。なお、第2導電層60Lは各種信号線や電極を接続する配線としても機能する。
【0048】
ソース電極61及びドレイン電極61Dと、ソース電極62及びドレイン電極62Dと、第2電極63と、第2配線64とゲート電極21及び22と、第1電極23と、第1配線24とは、絶縁膜50上に所定形状で形成される。
【0049】
第2導電層60Lは、CuMn(銅マンガン)合金膜又はMo(モリブデン)膜である第1導電膜60L1と、当該第1導電膜60L1上に形成されたCu(銅)膜である第2導電膜60L2と、当該第2導電膜60L2上に形成されたCuMn合金膜である第3電極膜60L3とを含む3層構造の積層膜である。
【0050】
つまり、ソース電極61及び62とドレイン電極61D及び62Dとは、CuMn合金膜とCu膜とCuMn合金膜とが下から上にこの順序で積層された積層膜、又は、Mo膜とCu膜とCuMn合金膜とが下から上にこの順序で積層された積層膜とすることができる。また、第2電極63と第2配線64とについても同様である。なお、CuMn合金膜とは、銅とマンガンとの合金膜であることを意味している。
【0051】
第2導電層60Lの最下層である第1導電膜60L1は、下地層(半導体層40L及び第2絶縁層50L)との密着層として機能するとともに、第2導電膜60L2のCu原子が拡散して半導体層40L内に入り込むことを抑制するCu拡散抑制層として機能する。
【0052】
第2導電層60Lの中間層である第2導電膜60L2は、Cuを主成分とする主電極層であって、下層である第1導電膜60L1と上層である第3導電膜60L3との間に形成される。第2導電層60LをCu膜とすることによって、第2導電層60L(配線及び電極)の低抵抗化を図ることができる。
【0053】
第2導電層60Lの最上層である第3導電膜60L3は、第2導電膜60L2を保護するキャップ層である。第3導電膜60L3としてCuMn合金膜を用いることによって、第2導電膜60L2のCu原子が酸化して第2導電膜60L2が変質することを抑制できる。これにより、Cu酸化による第2導電層60L(ソース電極、ドレイン電極及び配線等)の高抵抗化を抑制できる。
【0054】
なお、本実施の形態では、酸化物半導体層とソース電極及びドレイン電極との間に絶縁膜50が挿入された構成のトップコンタクト構造を採用しているが、酸化物半導体層の端部がソース電極及びドレイン電極に直接覆われた構成のサイドコンタクト構造を採用してもよい。
【0055】
[第3絶縁層]
第3絶縁層70Lである絶縁膜70は、第1薄膜トランジスタSwTr、第2薄膜トランジスタDrTr、容量部及び配線部を覆うように形成される。具体的には、絶縁膜70は、第2導電層60L上に形成されており、第1薄膜トランジスタSwTrにおけるソース電極61S及びドレイン電極61Dと、第2薄膜トランジスタDrTrにおけるソース電極62S及びドレイン電極62Dと、容量部における第2電極63と、配線部における第2配線64とを覆っている。
【0056】
絶縁膜70は、第2導電層60L上に形成された第1絶縁膜70L1と、第1絶縁膜70L1に形成された第2絶縁膜70L2と、第2絶縁膜70L2上に形成された第3絶縁膜70L3の3層構造の積層膜である。
【0057】
第3絶縁層70Lの最下層である第1絶縁膜70L1は、シリコン酸化膜(第1のシリコン酸化膜)であり、第2導電層60Lの最上層(CuMn合金膜)の上に形成される。第1絶縁膜70L1の膜厚は、例えば100nm以上500nm以下である。
【0058】
シリコン酸化膜はシリコン窒化膜と比べて成膜時における水素の発生が少ないので、第1絶縁膜70L1としてシリコン酸化膜を用いることによって、酸化物半導体層41及び42へのダメージを抑制できる。つまり、酸化物半導体層41及び42としてTAOS等の酸化物半導体を用いる場合に酸化物半導体層41及び42上にリコン窒化膜を成膜すると、その成膜時に発生する水素等の還元作用を有するガスによって酸化物半導体層41及び42の組成は変化し、酸化物半導体層41及び42が設計値の性能を発揮できなくなることがある。一方、シリコン酸化膜の成膜時には水素が発生しないので、シリコン酸化膜を用いた場合、酸化物半導体層41及び42は所望の性能を発揮できる。
【0059】
また、絶縁膜70の下地層がCuMn膜やCu膜の場合であって絶縁膜70の一部に酸化アルミニウム膜が用いられる場合に、下地層(CuMn膜やCu膜)と酸化アルミニウム膜との間に第1絶縁膜70L1(シリコン酸化膜)が形成されていないと、酸化アルミニウム膜のエッチング時の薬液(エッチング液)によって下地層(CuMn膜やCu膜)もエッチングされうる。つまり、第1絶縁膜70L1(シリコン酸化膜)は、酸化アルミニウム膜をエッチングするときのエッチングストッパ層として機能している。
【0060】
さらに、酸化アルミニウム膜の下層に第1絶縁膜70L1(シリコン酸化膜)を形成することによって、酸化アルミニウム膜を半導体層40Lから遠ざけることができる。これにより、半導体層40Lへの固定電荷の影響を抑制できる。
【0061】
第3絶縁層70Lの中間層である第2絶縁膜70L2は、酸化アルミニウム膜(アルミナ膜)であり、第1絶縁膜70L1であるシリコン酸化膜上に形成される。第2絶縁膜70L2の膜厚は、例えば10nm以上50nm以下であり、第1絶縁膜70L1及び第3絶縁膜70L3よりも薄くなるように構成されている。
【0062】
酸化物半導体からなる酸化物半導体層41及び42は水素や酸素によってダメージを受けて電気特性が劣化するが、酸化物半導体層41及び42の上方に酸化アルミニウム膜を形成しておくことにより、上層で発生する水素や酸素を酸化アルミニウム膜によってブロックすることができる。つまり、第2絶縁膜70L2を酸化アルミニウム膜とすることによって、酸化物半導体層41及び42への水素や酸素の拡散を抑制できるので、電気特性が安定した酸化物半導体層41及び42が得られる。
【0063】
第3絶縁層70Lの最上層である第3絶縁膜70L3は、シリコン酸化膜(第2のシリコン酸化膜)であり、第2絶縁膜70L2である酸化アルミニウム膜上に形成される。第3絶縁膜70L3の膜厚は、例えば100nm以上500nm以下である。
【0064】
このように構成される絶縁膜70には、当該絶縁膜70の一部を開口することによってコンタクトホールCHが形成されている。例えば、第1薄膜トランジスタSwTrのソース電極61Sと中継配線80とをコンタクトするために、絶縁膜70にコンタクトホールCHが形成される。このコンタクトホールCHは、第1絶縁膜70L1、第2絶縁膜70L2及び第3絶縁膜70L3の一部を除去することで形成される。
【0065】
なお、絶縁膜70(第3絶縁層70L)と同様の構造を、絶縁膜50(第2絶縁層50L)に用いることもできる。
【0066】
[第3導電層]
第3導電層80Lは、各種の中継配線80を構成している。中継配線80は、絶縁膜70に形成されたコンタクトホールCH(開口)を介して、第1薄膜トランジスタSwTr及び第2薄膜トランジスタDrTrのソース電極やドレイン電極と各種配線とを互いに接続する。例えば、
図4に示すように、中継配線80は、絶縁膜70に形成されたコンタクトホールCHを介して、第1薄膜トランジスタSwTrのソース電極61Sに接続されている。
【0067】
中継配線80は、ITO膜等の透明導電性酸化物からなる下層配線80L1と、下層配線80L1上に形成されたCu膜からなる上層配線80L2とによって構成されている。
【0068】
[第4絶縁層]
第4絶縁層90Lである絶縁膜90は、中継配線80を覆うように基板10の上方全面に形成される。具体的には、絶縁膜90は、中継配線80を覆うように第3絶縁層70L(絶縁膜70)上に形成される。
【0069】
絶縁膜90は、保護膜であり、例えば、450nm以下の波長の光を減衰させることが可能なシルセスシオキセン、アクリル及びシロキサンを含む樹脂塗布型の感光性絶縁材料が用いられる。また、絶縁膜90として、この感光性絶縁材料と無機絶縁材料との積層膜であってもよいし、無機絶縁材料の単層膜であってもよい。無機絶縁材料としては、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム又は酸化チタン等が用いられる。また、無機絶縁材料の成膜には、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタリング法又はALD(Atomic Layer Deposition)法等が用いられる。
【0070】
[薄膜トランジスタ基板の製造方法]
次に、実施の形態に係るTFT基板1の製造方法について、
図5〜
図7を用いて説明する。
図5〜
図7は、実施の形態に係るTFT基板の製造方法における各工程の断面図である。
【0071】
まず、
図5(a)に示すように、基板10を準備して、当該基板10の上方に、第1導電層20Lとして、ゲート電極21と、ゲート電極22と、第1電極23と、第1配線24とを所定形状で形成する。例えば、基板10上に金属膜をスパッタによって成膜し、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いて当該金属膜を加工することにより、所定形状にパターニングする。
【0072】
次に、
図5(b)に示すように、基板10の上方に、第1絶縁層30Lとして絶縁膜30を形成する。例えば、ゲート電極21、ゲート電極22、第1電極23及び第1配線24を覆うように、酸化シリコン膜からなる絶縁膜30をプラズマCVD等によって成膜する。
【0073】
次に、
図5(c)に示すように、基板10の上方に、半導体層40Lとして所定形状の酸化物半導体層41及び42を形成する。例えば、絶縁膜30上にInGaZnO
Xの透明アモルファス酸化物半導体をスパッタリング法等によって成膜し、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて透明アモルファス酸化物半導体を加工することにより、ゲート電極21及び22のそれぞれの上方における絶縁膜30上に所定形状の酸化物半導体層41及び42を形成する。
【0074】
なお、本実施の形態では、第1電極23及び第1配線24のそれぞれの上方における絶縁膜30上にも半導体層40Lとして酸化物半導体層を形成している。
【0075】
次に、
図5(d)に示すように、所定形状の半導体層40L(酸化物半導体層)を覆うようにして絶縁膜30上に第2絶縁層50Lとして絶縁膜50を成膜する。例えば、プラズマCVDによってシリコン酸化膜からなる絶縁膜50を成膜する。
【0076】
その後、絶縁膜50の一部をエッチング除去することによって、酸化物半導体層41とソース電極61S及びドレイン電極61Dとをコンタクトさせるためのコンタクトホールを形成するとともに、酸化物半導体層42とソース電極62S及びドレイン電極62Dとをコンタクトさせるためのコンタクトホールを形成する。例えば、酸化物半導体層41及び42の一部が露出するように、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて絶縁膜50を貫通するコンタクトホールを形成する。
【0077】
なお、本実施の形態では、これと同時に、容量部における酸化物半導体層の一部が露出するように絶縁膜50を貫通するコンタクトホールも形成している。また、ゲート電極22、第1電極23及び第1配線24の一部が露出するように絶縁膜30及び絶縁膜50を貫通するコンタクトホールも形成している。
【0078】
次に、
図5(e)に示すように、絶縁膜50のコンタクトホールを埋めるようにして絶縁膜50上に第2導電層60Lを形成する。本実施の形態では、三層構造の第2導電層60Lを形成する。
【0079】
具体的には、絶縁膜50上に第1導電膜60としてMo膜又はCuMn膜を成膜し、続いて、第1導電膜60L1上に第2導電膜60L2としてCu膜を成膜し、続いて、第2導電膜60L2上に第3導電膜60L3としてCuMn膜を成膜する。本実施の形態では、第1導電膜60L1としてCuMn合金膜をスパッタ法で成膜し、第2導電膜60L2としてCu膜をスパッタ法で成膜し、第3導電膜60L3としてCuMn合金膜をスパッタ法で成膜した。
【0080】
次に、
図6(a)に示すように、第1導電膜60L1と第2導電膜60L2と第3導電膜60L3との積層膜からなる第2導電層60Lを加工することによって、ソース電極61S及びドレイン電極61Dと、ソース電極62S及びドレイン電極62Dと、第2電極63と、第2配線64とを、それぞれ所定のパターンで形成する。第2導電層60Lの加工は、例えば、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて行う。
【0081】
次に、
図6(b)に示すように、ソース電極61S及びドレイン電極61Dとソース電極62S及びドレイン電極62Dと第2電極63と第2配線64とを覆うように第3絶縁層70Lを形成する。
【0082】
具体的には、第2導電層60Lに、第1絶縁膜70L1、第2絶縁膜70L2及び第3絶縁膜70L3を成膜する。
【0083】
次に、
図6(c)に示すように、第3絶縁層70L上に所定形状のレジストRを形成する。レジストRは、第3絶縁層70Lの一部を除去するために開口を有する。レジストRの開口は、例えば、ソース電極61S及びドレイン電極62Dの各々の上方に形成される。なお、同図に示すように、レジストRの開口は、必要に応じて容量部及び配線部にも形成されていてもよい。
【0084】
次に、
図6(d)に示すように、レジストRをマスクとして、第1絶縁膜70L1と第2絶縁膜70L2と第3絶縁膜70L3との積層膜である第3絶縁層70Lに開口を形成することにより、第2導電層60Lの一部を露出させる。
【0085】
例えば、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて、ソース電極61S及びドレイン電極62Dの上の第3絶縁層70Lの一部を除去して、第3絶縁層70Lを貫通するコンタクトホールCHを形成する。なお、第3絶縁層70LのコンタクトホールCHは、同図に示すように、容量部及び配線部にも形成されていてもよい。
【0086】
なお、
図6(b)〜
図6(d)の工程の詳細については後述する。
【0087】
次に、
図7(a)に示すように、絶縁膜70(第3絶縁層70L)上のレジストRを除去して絶縁膜70の表面全体を露出させる。
【0088】
次に、
図7(b)に示すように、絶縁膜70(第3絶縁層70L)のコンタクトホールCHを介して第2導電層60L(ソース電極61S、ドレイン電極62D等)にコンタクトするように所定形状の下層配線80L1を形成する。
【0089】
例えば、まず、露出した第2導電層60L(ソース電極61S及びドレイン電極62D等)を覆うようにしてコンタクトホールCHの表面及び絶縁膜70(第3絶縁層70L)の表面に沿って、スパッタ法によって例えばITO膜からなる導電体膜を成膜する。
【0090】
その後、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いて導電体膜(ITO膜)を加工することにより、コンタクトホールCHに対応する位置に所定のパターンの下層配線80L1を形成する。なお、この後で、熱アニールを行うことによって、下層配線80L1の低抵抗化を行ってもよい。
【0091】
次に、
図7(c)に示すように、下層配線80L1の上に上層配線80L2を形成する。これにより、第3導電層80Lとして所定形状の中継配線80を形成することができる。
【0092】
例えば、まず、下層配線80L1を覆うように第3絶縁層70L上にスパッタ法によって例えばCu膜からなる導電体膜を成膜する。
【0093】
その後、フォトリソグラフィ法及びウェットエッチング法を用いて導電体膜(Cu膜)を加工することにより、下層配線80L1上のみにCu膜を残す。これにより、所定の位置に、下層配線80L1と上層配線80L2との積層膜からなる中継配線80が形成される。
【0094】
次に、
図7(d)に示すように、中継配線80を覆うように第3絶縁層70L上に第4絶縁層90Lとして絶縁膜90を形成する。
【0095】
[第3絶縁層70Lの成膜及びエッチングの詳細]
ここで、第3絶縁層70Lの成膜と加工との詳細について、
図8〜
図10を用いて説明する。
図8は、実施の形態に係るTFT基板における第3絶縁層の成膜工程を説明するための図であり、
図6(b)における破線で囲まれる領域Xの拡大図を示している。
図9及び
図10は、実施の形態に係るTFT基板における第3絶縁層の加工工程を説明するための図であり、
図6(c)における破線で囲まれる領域Xの拡大図を示している。
【0096】
まず、基板10の上方に第2導電層60Lを形成した後、
図8(a)に示すように、第1の所定の温度で、第2導電層60L(
図8ではではソース電極61S)の最上層である第3導電膜60L3(CuMn合金膜)上に第1絶縁膜70L1を成膜する。
【0097】
本実施の形態では、第3導電膜60L3(CuMn合金膜)上に、第1絶縁膜70L1としてシリコン酸化膜(第1のシリコン酸化膜)をプラズマCVD法で成膜した。
【0098】
この場合、シリコン酸化膜の成膜には、例えば平行平板型のプラズマCVD装置が用いられ、成膜条件としては、例えば、チャンバー内の圧力が133Paであり、RF(高周波)が13kWであり、SiH
4のガス流量が1000sccmであり、N
2Oのガス流量が100000sccmである。また、本実施の形態において、第1絶縁膜70L1の成膜時の温度(第1の所定温度)は、基板10の温度であり、例えば230℃以下である。
【0099】
次に、
図8(b)に示すように、第1絶縁膜70L1上に第2絶縁膜70L2を形成する。本実施の形態では、シリコン酸化膜である第1絶縁膜70L1に、第2絶縁膜70L2として酸化アルミニウム膜をスパッタ法によって成膜した。
【0100】
この場合、酸化アルミニウム膜の成膜には、例えば反応性スパッタリング装置が用いられ、ターゲットにはアルミニウムが用いられる。このときの成膜条件としては、例えば、チャンバー内の圧力が0.65Paであり、印加電圧パワーが30kWであり、Arのガス流量が200sccmであり、O
2のガス流量が100sccm(酸素流量比42%)である。
【0101】
また、第2絶縁膜70L2(酸化アルミニウム膜)の屈折率は、波長633nmの光に対して1.55から1.65程度であるとよい。後述するように、第2絶縁膜70L2は、ウェットエッチングによって加工されるが、第2絶縁膜70L2の屈折率を1.55〜1.65程度にすると、良好な加工性が得られる。
【0102】
次に、
図8(c)に示すように、第1の温度よりも高い第2の所定の温度で、第2絶縁膜70L2上に第3絶縁膜70L3を成膜する。本実施の形態では、酸化アルミニウム膜である第2絶縁膜70L2上に、第3絶縁膜70L3としてシリコン酸化膜(第2のシリコン酸化膜)をプラズマCVD法で成膜した。
【0103】
この場合、シリコン酸化膜の成膜には、例えば平行平板型のプラズマCVD装置が用いられ、成膜条件としては、例えば、チャンバー内の圧力が133Paであり、RF(高周波)が13kWであり、SiH
4のガス流量が1000sccmであり、N
2Oのガス流量が100000sccmである。また、本実施の形態において、第3絶縁膜70L3の成膜時の温度(第2の所定温度)は、基板10の温度であり、例えば290℃以上である。
【0104】
以上により、第2導電層60L上に、3層構造の第3絶縁層70Lである絶縁膜70を成膜することができる。
【0105】
次に、
図9(a)に示すように、第3絶縁層70Lである絶縁膜70上に、開口を有する所定形状のレジスト(レジスト膜)Rのパターンを形成する。具体的には、絶縁膜70上に、所定の膜厚になるように感光性樹脂材料からなるレジストを塗布し、その後、パターンが形成されたフォトマスクを介してレジストを露光し、レジストを現像する。これにより、開口を有するレジストRのパターンが形成される。
【0106】
レジストRの開口は、第3絶縁層70L(絶縁膜70)にコンタクトホールを形成するために形成される。例えば、レジストRの開口は、ソース電極61Sと中継電極80とのコンタクト部に対応している。
【0107】
次に、
図9(b)に示すように、第3絶縁層70L(絶縁膜70)の最上層である第3絶縁膜70L3を加工する。具体的には、シリコン酸化膜である第3絶縁膜70L3をドライエッチングする。ドライエッチングによって、レジストRの開口の下における第3絶縁膜70L3が選択的に除去される。
【0108】
ドライエッチングには、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)装置が用いられる。エッチングガスとしては、例えば、六フッ化硫黄(SF
6)及びO
2が用いられる。エッチング条件の一例として、SF
6のガス流量が2000sccm、O
2のガス流量が2000sccm、圧力が13Pa、印加電力が10000Wである。また、エッチングガスとして、四フッ化炭素(CF
4)及びO
2を用いてもよい。
【0109】
なお、このときのエッチングガスによって、レジストRは、エッチング前よりも開口が広がるようにして開口端部が後退する。さらに、この場合、レジストRと第3絶縁膜70L3とのエッチングレートの違いによって、第3絶縁膜70L3の開口(開口径)がレジストRの開口(開口径)よりも広がった形状が得られる。
【0110】
次に、
図10(a)に示すように、第3絶縁層70L(絶縁膜70)の中間層である第2絶縁膜70L2を加工する。具体的には、酸化アルミニウム膜である第2絶縁膜70L2をウェットエッチングする。ウェットエッチングによって、第3絶縁膜70L3の開口の下における第2絶縁膜70L2が選択的に除去される。
【0111】
エッチング液としては、例えば水酸化カリウム(KOH)溶液等のアルカリ性溶液が用いられる。KOH溶液による酸化アルミニウム膜のエッチングは、例えばKOHの濃度が1wt%以上40wt%以下の範囲で行うことができる。
【0112】
次に、
図10(b)に示すように、第3絶縁層70L(絶縁膜70)の最下層である第1絶縁膜70L1を加工する。具体的には、酸化シリコン膜である第1絶縁膜70L1をドライエッチングする。ドライエッチングによって、第2絶縁膜70L2の開口の下における第1絶縁膜70L1が選択的に除去される。
【0113】
ドライエッチングには、例えば、RIE装置が用いられる。エッチングガスとしては、例えば、四フッ化炭素(CF
4)及びO
2が用いられる。エッチング条件の一例として、CF
4のガス流量が4000sccm、O
2のガス流量が1000sccm、圧力が13Pa、印加電力が12000Wである。また、シリコン酸化膜は、酸化アルミナ膜に対してドライエッチングによって削られる選択比(エッチングレート)が大きいので、同図に示すように、シリコン酸化膜である第1絶縁膜70L1の開口端部における断面(内周面)形状を、垂直面に近い形で形成することができる。
【0114】
その後、図示しないが、レジストRを除去する。具体的には、薬液や、O
2ラジカルによるアッシングによってレジストRを除去する。レジストRを除去することによって、第3絶縁層70L(絶縁膜70)に開口(コンタクトホール)を形成することができる。
【0115】
なお、本実施の形態では、
図6の(b)及び(c)の領域Xに示されるように、第2導電層60Lであるソース電極61Sの上方の第3絶縁層70Lについて説明したが、
図6の(b)及び(c)に示される領域Yにおいても同様である。つまり、ドレイン電極62Dの上方の第3絶縁層70Lについても同様の方法によってコンタクトホールを形成することができる。
【0116】
[作用効果等]
以下、本実施の形態に係るTFT基板の製造方法の効果について、本開示の技術に至った経緯も含めて説明する。
【0117】
TFT基板には、TFTの電極(ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極)又は各種配線(ゲート配線、ソース配線、電源配線等)等が形成されている。これらの電極や配線は、基板上に積層された複数の導電層のいずれかに形成される。
【0118】
また、導電層の層間には、層間絶縁膜として絶縁層が形成される。絶縁層には、例えばシリコン酸化膜等の酸化膜又はシリコン窒素膜等の窒化膜等の絶縁膜が用いられ、絶縁層は、単一の絶縁膜からなる単層膜又は複数の絶縁膜が積層された積層膜として構成される。
【0119】
上下の導電層における電極や配線等は、絶縁層に設けられた開口(コンタクトホール)を介して電気的に接続される。
【0120】
近年、表示装置の大画面化及び高精細化が求められており、TFTのチャネル層(半導体層)として、キャリア移動度の高いIGZO等の酸化物半導体を用いることが検討されている。
【0121】
チャネル層が酸化物半導体であるTFT(酸化物半導体TFT)を有するTFT基板では、絶縁膜として、窒化膜ではなく酸化膜が用いられる。これは、窒化膜の成膜時には、酸化物半導体にダメージを与えてしまう水素を用いるからである。さらに、酸化物半導体TFTを有するTFT基板では、酸化物半導体への水素や酸素の拡散を抑制するために、絶縁膜として酸化アルミニウム膜(アルミナ膜)を用いることが提案されている。このため、酸化物半導体TFTを有するTFT基板では、絶縁層として、酸化アルミニウム膜を上下の2つのシリコン酸化膜で挟んだ構成の3層構造の積層膜を用いることが検討されている。
【0122】
一方、表示装置の大画面化及び高精細化によって配線が長く且つ細くなる傾向にある。このため、配線抵抗が高くなり、表示画像の品質が劣化するという課題がある。特に、TFT基板では、TFTの電極と配線とを同層に形成することもあるので、TFTの電極の材料及び構造は、TFTとしての性能だけではなく、配線としての性能も要求される。そこで、低抵抗配線を実現するために、TFTの電極材料としてCuを用いることが考えられている。
【0123】
この場合、Cuを用いた電極や配線の上に絶縁層としてシリコン酸化膜等の酸化膜を形成すると、酸化膜の成膜過程に用いられる酸素によって、電極や配線のCuが酸化するという課題がある。また、CuがTFTにまで拡散すると、所望のトランジスタ特性を得られないという課題もある。
【0124】
そこで、Cuの酸化及びCuの拡散を防止するために、Cu膜の上にキャップ層としてCuMn合金膜を形成することが考えられる。
【0125】
しかしながら、CuMn合金膜上に、上記の3層構造の絶縁層を形成して当該絶縁層に開口を形成すると、開口を形成した部分の絶縁層に膜浮きが発生するということが分かった。
【0126】
例えば、
図11に示すように、ソース電極61Sのキャップ層である第3導電膜60L3(CuMn合金膜)上に、第1絶縁膜70L1としてシリコン酸化膜(下層SiO)を245℃で成膜し、第1絶縁膜70L1上に第2絶縁膜70L2として酸化アルミニウム膜を成膜した後、さらに第2絶縁膜70L2上に第3絶縁膜70L3としてシリコン酸化膜(上層SiO)を230℃で成膜することで、CuMn合金膜上に3層構造の絶縁膜70を形成した。
【0127】
その後、絶縁膜70に開口(コンタクトホール)を形成するために、上述の実施の形態と同じように、第3絶縁膜70L3(上層SiO)をドライエッチングし、次いで第2絶縁膜70L2(酸化アルミニウム)をウェットエッチングし、次いで第1絶縁膜70L1(下層SiO)をドラエッチングした。
【0128】
このとき、エッチングした部分において第1絶縁膜70L1(下層SiO)と第3導電膜60L3(CuMn合金膜)との界面に隙間が生じ、絶縁膜70の膜浮きが発生した。
【0129】
そこで、本願発明者等は、この絶縁膜の膜浮きの原因について鋭意検討した結果、第1絶縁膜70L1(下層SiO)と第3絶縁膜70L3(上層SiO)との成膜温度に起因して絶縁膜70の膜浮きが発生することを突き止めた。
【0130】
図12は、そのときの実験結果を示す図であり、第1絶縁膜70L1(下層SiO)及び第3絶縁膜70L3(上層SiO)の成膜温度と絶縁膜70の膜浮き欠陥数との関係を示している。なお、膜浮き欠陥数は、基板10上に発生した絶縁膜70の膜浮きの個数である。また、本実験において、成膜温度は、基板10の設定温度(基板温度)とした。
【0131】
図12に示すように、第1絶縁膜70L1(下層SiO)の成膜温度が第3絶縁膜70L3(上層SiO)の成膜温度以上の場合は、膜浮き欠陥数は2000個以上となる。
【0132】
一方、第1絶縁膜70L1(下層SiO)の成膜温度が第3絶縁膜70L3(上層SiO)の成膜温度未満の場合は、膜浮き欠陥数は400個以下に抑えられることが分かる。つまり、第1絶縁膜70L1(下層SiO)の成膜温度よりも高い成膜温度で第3絶縁膜70L3(上層SiO)の成膜することによって膜浮き欠陥数を400個以下に抑えることができる。
【0133】
この場合、さらに、第1絶縁膜70L1(下層SiO)を230℃以下にすることによって、膜浮き欠陥数を200個以下に抑えられることが分かる。
【0134】
さらに、第3絶縁膜70L3(上層SiO)を290℃以下にすることによって、膜浮き欠陥数を10個以下に抑えられることが分かる。
【0135】
以上、本実施の形態におけるTFT基板の製造方法によれば、基板10の上方にCuMn合金膜を形成する工程と、第1の温度でCuMn合金膜の上に第1のシリコン酸化膜を形成する工程と、第1のシリコン酸化膜の上に酸化アルミニウム膜を形成する工程と、第1の温度よりも高い第2の温度で前記酸化アルミニウム膜の上に第2のシリコン酸化膜を形成する工程とを含む。
【0136】
一般的に、複数のシリコン酸化膜を成膜する場合、上層ほど熱プロセス温度を低くしていくが、本実施の形態では、あえて上層のシリコン酸化膜(第2のシリコン酸化膜)の成膜温度を下層のシリコン酸化膜(第1のシリコン酸化膜)の成膜温度よりも高くしている。
【0137】
これにより、第1のシリコン酸化膜と酸化アルミニウム膜と第2のシリコン酸化膜との積層膜からなる絶縁膜に開口(コンタクトホール)を形成する場合に、CuMn合金膜と第1のシリコン酸化膜との界面に隙間が生じることを抑制できる。したがって、絶縁膜の膜浮きの発生を抑制できるので、所望の性能を有するTFT基板を実現できる。
【0138】
また、プラズマCVD法でシリコン酸化膜を成膜する場合、通常、成膜温度は230℃以下にはせずに、300℃以上にすることが多いが、本実施の形態では、あえて下層のシリコン酸化膜(第1のシリコン酸化膜)の成膜温度を230℃以下にしている。
【0139】
これにより、CuMn合金膜と第1のシリコン酸化膜との界面に隙間が生じることをさらに抑制できるので、絶縁膜の膜浮きの発生を一層抑制できる。
【0140】
また、上述のように、上層のシリコン酸化膜(第2のシリコン酸化膜)の成膜温度は、290℃以上にするとよい。これにより、絶縁膜の膜浮きの発生を一層抑制できる。
【0141】
(変形例等)
以上、TFT基板の製造方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0142】
例えば、上記実施の形態において、絶縁膜70の下地となるCuMn合金膜は、薄膜トランジスタのソース電極やドレイン電極としたが、これに限るものではなく、絶縁膜70の下地となるCuMn合金膜は、配線の一部であってもよい。つまり、配線の上層がCuMn合金膜である場合に当該CuMn合金膜上に上記3層構造の絶縁膜70を形成してコンタクトホールを形成する場合にも同様の効果が得られる。
【0143】
また、上記実施の形態において、薄膜トランジスタは、ボトムゲート型のTFTとしたが、トップゲート型のTFTとしても構わない。
【0144】
また、上記実施の形態において、薄膜トランジスタは、チャネルエッチングストッパ型(チャネル保護型)のTFTとしたが、チャネルエッチング型のTFTとしても構わない。つまり、上記実施の形態において、絶縁膜50は形成しなくてもよい。
【0145】
また、上記実施の形態では、TFT基板を用いた表示装置として有機EL表示装置について説明したが、上記実施の形態におけるTFT基板は、液晶表示素子装置等、アクティブマトリクス基板が用いられる他の表示装置にも適用することもできる。
【0146】
また、以上説明した有機EL表示装置等の表示装置(表示パネル)については、フラットパネルディスプレイとして利用することができ、テレビジョンセット、パーソナルコンピュータ、携帯電話等、表示パネルを有するあらゆる電子機器に適用することができる。特に、大画面及び高精細の表示装置に適している。
【0147】
その他、各実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。