(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の基礎となった知見)
背景技術で説明したように、特許文献1には、表示装置のフレキシブル回路基板上に実装された集積回路素子の放熱方法が開示されている。
【0010】
特許文献1に記載の手法では、集積回路素子は、フレキシブル回路基板上に設けられた電源配線に電気的に接続される。また、上記電源配線には幅広部が設けられ、幅広部と金属シャーシを導電性テープで接続することで、集積回路素子で発生した熱は、電源配線から導電性テープを経由し、熱容量の大きい金属シャーシへと放熱される。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の手法では、放熱用の部品として導電テープを追加することが必要である。つまり、新たな部品の追加が必要であるという課題がある。
【0012】
また、従来の液晶パネル等を用いた表示装置では、金属シャーシなどの金属部品は、コストダウンを目的として削減され、樹脂部品などに置き換えられる場合が多い。このような場合、特許文献1に記載された、金属シャーシを用いて放熱する手法が適用できない可能性がある。
【0013】
特に、表示パネルが屈曲可能なフレキシブル表示装置では、そもそも金属シャーシを用いないため、特許文献1に記載の手法が適用できず、フレキシブル回路基板に実装された集積回路素子で発生した熱を十分に放熱することが難しい。
【0014】
そこで、本発明の一態様に係る表示装置は、表示パネルと、前記表示パネルへ駆動電流を供給するための電源配線、前記表示パネルに制御信号を伝達するための信号配線、及び前記信号配線と電気的に接続された集積回路素子を有し、前記表示パネルの辺に接続された回路基板とを備え、前記回路基板は、前記電源配線と接続される金属パターンを備え、前記金属パターンは、前記集積回路素子の外表面に直接、または熱伝導体を介して接触する。
【0015】
これにより、集積回路素子で発生した熱は、集積回路素子の外表面に直接、または熱伝導体を介して接触する金属パターンへ伝わり、次に電源配線へ伝わり、さらに熱容量の大きい表示パネルへ伝わるため、十分な放熱効果を得ることができる。すなわち、表示装置へ導電テープのような部品を追加する方法や、金属シャーシのような部品を必要とする方法を用いず、回路基板上の集積回路素子を放熱することができる。
【0016】
また、本発明の一態様において、前記金属パターンは前記電源配線の一部であり、前記金属パターンを構成する材料は、前記電源配線を構成する材料と同じであってもよい。
【0017】
この場合、金属パターンを構成する材料と、電源配線を構成する材料とは同じ材料であるため、金属パターンを電源配線の一部として形成できる。つまり、金属パターンを形成するために部品を追加したり、製造工程や製造設備を追加する必要はない。
【0018】
また、集積回路素子で発生した熱は、直接電源配線へ伝わり、さらに表示パネルへ伝わる。これにより集積回路素子で発生した熱は、十分放熱される。
【0019】
また、本発明の一態様において、前記熱伝導体の熱伝導率は、前記金属パターンの熱伝導率よりも大きくてもよい。
【0020】
これにより、集積回路素子と金属パターンとが電源配線よりも熱伝導率の高い熱伝導体を介して接触することで、さらに高い放熱効果を得ることができる。
【0021】
また、本発明の一態様において、前記表示パネルは、画素がマトリクス状に配置された画素領域と、前記画素領域の周辺に設けられた配線領域とを備え、前記配線領域には前記画素領域内の電極と接続され、額縁状の電極パターンが形成されていてもよい。
【0022】
これにより、集積回路素子で発生した熱は、表示パネル内の画素領域ではなく、熱容量の大きい額縁状の電極パターンを有する配線領域に伝わるため、放熱性をさらに高めることができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する本発明の実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0024】
(実施の形態)
図1は、本発明の表示装置の構成を表す図である。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態に係る表示装置10は、有機ELパネルを用い、有機EL素子の各々に発光制御用素子であるTFT(Thin Film Transistor)を含む画素回路を備えたアクティブマトリクス型の表示装置である。
【0026】
表示装置10は、表示パネル20と、表示パネル20に接続されるフレキシブル回路基板30a及び30bと、表示パネル20の駆動回路が実装された駆動基板40a及び40bとを備える。
【0027】
表示パネル20は、有機ELパネルを用い、屈曲が可能な薄型ディスプレイである。表示パネル20は、例えば、R(赤)色、G(緑)色、及びB(青)色を発光する複数の発光画素がマトリクス状に配列される画素領域45を備える。画素領域45には、発光画素に駆動電流を供給する電源配線と、発光画素の行方向に対応する信号配線である走査線と、発光画素の列方向に対応する信号配線であるデータ線とが配線される。
【0028】
画素領域45の電源配線と、信号配線(データ線及び走査線)とは、表示パネル20の外周部まで延設され、配線領域50を構成する。配線領域50には、画素領域45内の電極と接続された電極パターンが形成されている。この電極パターンは、画素領域45の周辺を囲うような額縁状であり、熱容量が大きく、放熱効果の高い構造である。
【0029】
表示パネル20の配線領域50は、複数のフレキシブル回路基板30a及び30bにより対応する駆動基板40a及び40bと電気的に接続されている。複数のフレキシブル回路基板30a及び30bは、それぞれ表示パネル20の駆動機能を有する矩形の集積回路素子60a及び60bを備える。
【0030】
図1において、表示パネル20の2つの短辺に対応する配線領域50は、それぞれ、フレキシブル回路基板30aにより、矩形の駆動基板40aと接続される。具体的には、表示パネル20の1つの短辺に対し、1枚の駆動基板40aが、等間隔に配置された3枚のフレキシブル回路基板30aによって接続される。それぞれのフレキシブル回路基板30aの一端に配置された端子は、表示パネル20の短辺に対応する配線領域50と接続され、他端に配置された端子は、駆動基板40aの長辺の端子に接続される。
【0031】
1枚のフレキシブル回路基板30aには、1つの集積回路素子60aが実装される。集積回路素子60aは、その長辺が駆動基板40aの長辺、及び表示パネル20の短辺と平行になるようにフレキシブル回路基板30a上に実装される。フレキシブル回路基板30a、駆動基板40a、及び集積回路素子60aは、主に表示パネル20のうち、画素領域45の走査線の駆動と、配線領域50への駆動電流の供給を行う。
【0032】
また、表示パネル20の2つの長辺に対応する配線領域50は、それぞれ、フレキシブル回路基板30bにより、矩形の駆動基板40bと接続される。具体的には、表示パネル20の1つの長辺に対し、2枚の駆動基板40bが、それぞれ、等間隔に配置された7枚のフレキシブル回路基板30bによって接続される。それぞれのフレキシブル回路基板30bの一端に配置された端子は、表示パネル20の長辺に対応する配線領域50と接続され、他端に配置された端子は、駆動基板40bの長辺の端子に接続される。
【0033】
1枚のフレキシブル回路基板30bには、1つの集積回路素子60bが実装される。集積回路素子60bは、その長辺が駆動基板40bの長辺、及び表示パネル20の長辺と平行になるようにフレキシブル回路基板30b上に実装される。フレキシブル回路基板30b、集積回路素子60b、及び駆動基板40bは、主に表示パネル20のうち、画素領域45のデータ線の駆動と、配線領域50への駆動電流の供給を行う。
【0034】
以下、フレキシブル回路基板30bについて、詳細に説明する。
【0035】
図2Aは、フレキシブル回路基板30bの拡大図である。
【0036】
フレキシブル回路基板30bは、表示パネル20へ駆動電流を供給するための電源配線70a及び70bと、表示パネル20に制御信号を伝達するための複数の信号配線80aで構成される信号配線部80と、集積回路素子60bとを備える。フレキシブル回路基板30bのうち集積回路素子60bの2つの短辺の側方部分には、金属パターン130が設けられている。また、
図2A中に示されるパターン部85は、フレキシブル回路基板30bのうち配線を含まない部分である。
【0037】
フレキシブル回路基板30bは、集積回路素子60bと共にTCP(Tape Career Package)及びCOF(Chip On Film)等のフィルムパッケージを構成している。
【0038】
集積回路素子60bは、矩形であり、フレキシブル回路基板30bが接続される表示パネル20の辺と、集積回路素子60bの長辺とが平行になるようにフレキシブル回路基板30b上のほぼ中央の領域(表示パネル20の辺と平行な方向の中央の領域)に実装される。
【0039】
集積回路素子60bの2つの長辺には複数の端子で構成される端子部が設けられ、端子部と、フレキシブル回路基板30bの信号配線部80の信号配線80aとは、電気的に接続される。具体的には、集積回路素子60bの各端子は、フレキシブル回路基板30bの信号配線80aと金属共晶接合される。なお、集積回路素子の2つの短辺には端子部は設けられていない。
【0040】
本実施の形態では、さらに、集積回路素子60bとフレキシブル回路基板30bとは、補強樹脂120によって固定されている。補強樹脂120は、例えば熱硬化性のエポキシ系樹脂であるが、光硬化性の樹脂であってもよい。
【0041】
補強樹脂120は、集積回路素子60bの周縁部に沿って塗布され、集積回路素子60bがフレキシブル回路基板30bから、剥離するのを防止する役割を果たす。また、補強樹脂120は、集積回路素子60bの底面であって、集積回路素子60bの長辺に対応する部分に設けられた端子部に流入するように塗布される。これにより、補強樹脂120は、端子部を保護する役割も果たす。補強樹脂120は、端子部に直接接触するため、絶縁体である。
【0042】
金属パターン130は、電源配線70a及び70bと接続され、集積回路素子60bと直接接触する。
【0043】
電源配線70a及び70bは、それぞれ、フレキシブル回路基板30b上の、フレキシブル回路基板30bが接続される表示パネル20の辺と平行な方向の両端部分に設けられ、集積回路素子60bを挟むように配置される。電源配線70a及び70bは、それぞれ、駆動基板40bから表示パネル20の配線領域50へ駆動電流を供給するための配線であり、フレキシブル回路基板30bが接続される表示パネル20の辺と垂直方向に配線される。また、電源配線70aの線幅と、電源配線70bの線幅は、同等である。
【0044】
信号配線部80は、集積回路素子60bを挟むように設けられる。また、信号配線部80は表示パネル20の配線領域50へ制御信号を伝達するための複数の信号配線80aを有する。複数の信号配線80aは、集積回路素子60b及び配線領域50を電気的に接続し、集積回路素子60b及び駆動基板40bを電気的に接続するように配線される。
【0045】
なお、信号配線80aは、集積回路素子60bの底面であって、短辺に対応する部分に設けられてもよい。この場合、金属パターン130は、信号配線80aと接触しないように配置される。
【0046】
また、
図2Aのフレキシブル回路基板30b上の表示パネル20の辺と接続される上端部分(
図2AのY部分)と、駆動基板40bと接続される下端部分(
図2AのZ部分)には、電源配線70a及び70bの端子部と、信号配線部80の端子部とが形成される。この上端部分に形成された端子部と、表示パネル20の配線領域50との間には、導電性粒子を含む異方性導電接着剤シート(ACF)が設けられ、フレキシブル回路基板30bと、表示パネル20の配線領域50とは、圧着されることで電気的に接続される。
【0047】
同様に、フレキシブル回路基板30bの下端部分に形成された端子部と、駆動基板40bとの間にも、導電性粒子を含む異方性導電接着剤シートが設けられ、フレキシブル回路基板30bと駆動基板40bとは、圧着されることで電気的に接続される。フレキシブル回路基板30bは、表示パネル20と、駆動基板40bとの間に配置され、画素回路のデータ線に対応する駆動信号の中継を行っている。
【0048】
以下、電源配線70a及び70b並びに信号配線部80について詳細に説明する。
【0049】
図2Bは、フレキシブル回路基板30bの断面図(
図2AのA−A線の断面図)である。
【0050】
図2Bに示すようにフレキシブル回路基板30bの電源配線70a及び70bは、基材90の上面に形成され、電源配線70a及び70bの上面はカバー110で覆われている。
【0051】
同様に、フレキシブル回路基板30bの信号配線80aは、基材90の上面に形成され、信号配線80aの上面はカバー110で覆われている。
【0052】
また、配線を含まないパターン部85では、基材90の上面にカバー110が形成されている。
【0053】
基材90は、例えばポリイミドから構成され、電源配線70a及び70b並びに信号配線80aは例えば銅配線である。また、カバー110は例えばソルダーレジストから構成される。
【0054】
信号配線部80は、表示パネル20に制御信号を伝達するための例えば線幅30μm程度の信号配線80aで構成される。これに対し、表示パネル20の配線領域50へ駆動電流を供給するための電源配線70a及び70bの線幅は、例えば3mm以上である。
【0055】
これは、配線の線幅は、配線に流れる電流による配線の電圧降下量などを考慮して決定されるためである。有機ELパネルのような自発光型の表示パネル20では、大きな駆動電流が必要とされ、表示パネル20へ電流を供給する電源配線70a及び70bには、信号配線80aよりも大きな電流が流れる。したがって、電源配線70a及び70bは、信号配線80aよりも線幅が広い。つまり、電源配線70a及び70bの熱容量は、信号配線80aの熱容量よりも大きく、放熱効果は高い。
【0056】
また、電源配線70a及び70bは、表示パネル20の配線領域50へ駆動電流を供給するための配線であり、集積回路素子60bに電源を供給する配線ではない。集積回路素子60bに電源を供給する配線は、電源配線70a及び70bとは別であり、信号配線部80に含まれている。したがって、電源配線70a及び70bと集積回路素子60bとは電気的には接続されていない。
【0057】
なお、
図2Aで示されるフレキシブル回路基板30bの上端部分及び下端部分の端子部には、カバー110は形成されない。
【0058】
図2Cは、フレキシブル回路基板30bの断面図(
図2AのA´−A´線の断面図)である。
【0059】
図2Cに示すように、フレキシブル回路基板30bの下端部分には、カバー110は形成されない。これは、上述のように、下端部分の端子部は、異方性導電接着剤シートにより駆動基板40bと電気的に接続されるからである。
【0060】
同様に、フレキシブル回路基板30bの上端部分には、カバー110は形成されない。上端部分の端子部は、異方性導電接着剤シートにより配線領域50と電気的に接続されるからである。
【0061】
次に、金属パターン130について詳細に説明する。
【0062】
図2Dは、フレキシブル回路基板30bの上面図である。なお、
図2Dは、集積回路素子60bと、補強樹脂120とを取り外したフレキシブル回路基板30bを表している。
【0063】
フレキシブル回路基板30bは、フレキシブル回路基板30bの集積回路素子60bと接触する部分に金属パターン130を備え、金属パターン130は、集積回路素子60bの外表面に直接接触し、電源配線70a及び70bと接続される。金属パターン130は、フレキシブル回路基板30bが接続される表示パネル20の辺と平行であり、電源配線70a及び70bと直交する方向に配置される。
【0064】
図2Eは、フレキシブル回路基板30bの断面図(
図2DのB´−B´線の断面図)である。
【0065】
金属パターン130を構成する材料は、電源配線70a及び70bを構成する材料、及び信号配線部80の信号配線80aを構成する材料と同じであり、その材料は、例えば銅である。つまり、金属パターン130は、電源配線70a及び70bの一部として形成される。
【0066】
また、集積回路素子60bの底面は、金属パターン130と直接接触する。
【0067】
図3は、フレキシブル回路基板30bの断面図(
図2AのB−B線の断面図)である。
【0068】
集積回路素子60bの端子140は、信号配線部80を構成する信号配線80aと金属共晶接合により電気的に接続されている。また、補強樹脂120は、集積回路素子60bの周縁を囲むように塗布され、集積回路素子60bと、フレキシブル回路基板30bとを固定している。また、補強樹脂120は、端子140の周辺部分に流入し、端子140を保護する役割も果たす。
【0069】
集積回路素子60bの外表面と、金属パターン130とは圧接される。つまり、直接接触している。これにより、集積回路素子60bで発生した熱は、集積回路素子60bの外表面に直接接触し、電源配線70a及び70bの一部である金属パターン130へ伝わる。この場合、集積回路素子60bと、金属パターン130との接触面積が大きければ大きいほど放熱効果は高い。
【0070】
なお、金属パターン130は、フレキシブル回路基板30bの通常の製造方法にて形成される。
【0071】
図4は、フレキシブル回路基板30bの通常の製造方法のうち、特に金属パターン130の形成方法を表すフレキシブル回路基板30bの断面図である。
【0072】
まず、
図4の(a)で示される基材90の上面に
図4の(b)のように金属層160を形成する。本実施の形態では、金属層160は、例えば、銅で形成される。つまり基材90の上に、メタライジング法またはキャスティング法により、銅からなる金属層160を形成する。
【0073】
次に、
図4の(c)のように金属層160のうち必要な部分のみを残し、配線のパターニングを行う。具体的には、
図4の(c)では金属パターン130と信号配線部80を構成する信号配線80aに対応する部分を残し、金属層160の不要な部分をエッチング処理する。
【0074】
次に、
図4の(d)のように必要な部分にカバー110を形成する。なお、フレキシブル回路基板30bの集積回路素子60bの端子140の上方や、金属パターン130の上方には、カバー110は形成されない。カバー110の形成後、フレキシブル回路基板30bには集積回路素子60bが実装される。
【0075】
最後に、
図4の(e)のように集積回路素子60bを固定するために補強樹脂120が塗布される。
【0076】
このように、本実施の形態では、金属パターン130を構成する材料と、電源配線70a及び70bを構成する材料と、信号配線80aを構成する材料とは同じであるため、金属パターン130は、電源配線70a及び70bの一部として容易に形成される。
【0077】
また、上記の金属パターン130の形成方法は、一般的なフレキシブル回路基板の製造方法に含まれる。つまり、金属パターン130は、例えば、電源配線70a及び70bや、信号配線部80などの他の配線を形成する工程で同時に形成される。したがって、金属パターン130を形成するために製造工程や製造設備を追加する必要はない。
【0078】
なお、本実施の形態では、電源配線70a及び70bは金属パターン130によって電気的に接続されている。
【0079】
これは、電源配線70a及び70bには、同じ電圧が供給されるからである。電源配線70aに供給される電源電圧と、電源配線70bに供給される電源電圧とが異なる場合、金属パターン130に絶縁部170を設ける、または金属パターン130を分離することによって、電源配線70a及び70bを絶縁してもよい。
【0080】
図5Aは、このような電源配線70a及び70bが絶縁されたフレキシブル回路基板30bの上面図である。なお、
図5Aは、集積回路素子60bと、補強樹脂120とを取り外したフレキシブル回路基板30bを表している。
【0081】
図5Aに示すように、金属パターン130の表示パネル20の辺と平行な方向の中央部分には絶縁部170が設けられている。本実施の形態では、上記のように金属パターン130は、電源配線70a及び70bの一部として形成されている。このため、電源配線70a及び70bは、金属パターン130に設けられた絶縁部170によって絶縁される。
【0082】
図5Bは、フレキシブル回路基板30bの断面図(
図5AのC−C線の断面図)である。
【0083】
基材90の上面には、金属パターン130が形成され、金属パターン130の上にはカバー110が形成されている。金属パターン130の表示パネル20の辺と平行な方向の中央部分には、該中央部分をエッチング除去することにより形成された絶縁部170が設けられている。絶縁部170の形成は、例えば上記
図4の(c)に相当する配線パターニングを行う工程にて、エッチングすることによって実現される。
【0084】
次に、表示装置10の放熱経路について説明する。
【0085】
図6は、表示装置10の一部拡大図(
図1のX部分を拡大した図)である。
【0086】
図6中の矢印は集積回路素子60bで発生した熱の放熱経路を示す。集積回路素子60bで発生した熱は、まず、集積回路素子60bの外表面に直接接触している金属パターン130へ伝わる。
【0087】
次に、集積回路素子60bの外表面と直接接触している金属パターン130は、電源配線70a及び70bへ伝わる。
【0088】
さらに、電源配線70a及び70bは、表示パネル20内の周縁部分である配線領域50へ接続されているため、集積回路素子60bで発生した熱は、電源配線70a及び70bを介して熱容量の大きい表示パネル20の配線領域50へ伝わる。配線領域50は、内部に額縁状の電極板を有し、放熱効果の高い構造であるため、集積回路素子60bで発生した熱は、十分に放熱される。
【0089】
次に、表示装置10の温度分布のシミュレーション結果について説明する。
【0090】
図7Aは、表示装置10の温度分布のシミュレーションモデルを示す図である。
【0091】
図7Aに示されるように、表示パネル20及びフレキシブル回路基板30bに対応するシミュレーションモデル200についてシミュレーションを行った。
【0092】
シミュレーションモデル200全体のうち中心付近の領域210aは、画素領域45に対応する領域である。図中の数字「0.18」は、領域210aの熱源の熱量を表すものである。
【0093】
図7Aに示される領域210b及び領域210cは、複数のフレキシブル回路基板30bに対応する領域である。領域210b及び領域210cには、画素領域45が上記条件にて一様に発光する場合の集積回路素子60bの発熱量を想定した熱源が設定されている。図中の数字「2.8」は、領域210b及び領域210cの熱源の熱量を表すものである。
【0094】
また、シミュレーションモデル200におけるマトリクス状に区画された各領域は、表示パネル20やフレキシブル回路基板30bの材料に応じた熱容量、熱伝導率などパラメータが設定されている。
【0095】
図7Bは、以上のようなシミュレーションモデル200によって、表示装置10の温度分布をシミュレーションしたシミュレーション結果を示す図である。なお、図中の数字は温度(単位:℃)を示す。
【0096】
図7Bの(a)は、フレキシブル回路基板30bにおいて金属パターン130を設けない場合の表示装置をシミュレーションした場合の温度分布を示す図である。
図7Bの(a)に示される温度分布では、領域210b及び領域210cにおいて温度が高く、その最大温度は、75.45℃である。
【0097】
これに対し、
図7Bの(b)は、フレキシブル回路基板30bにおいて電源配線70a及び70bに接続された金属パターン130を設け、かつ、配線領域内部に額縁状の電極板を設けた表示装置10をシミュレーションした場合の温度分布を示す図である。
図7Bの(b)に示される温度分布では、領域210b及び領域210cの最大温度は、73.14℃であり、
図7Bの(a)に比べて、最大温度が2℃以上低下している。すなわち、表示装置10の放熱性の高さが伺える。
【0098】
また、
図7Bの(b)では、領域210b及び領域210cが十分に放熱されているため、
図7Bの(a)に比べ、領域210aにおける温度分布の変化量が緩和されている。
【0099】
このように、金属パターン130を電源配線70a及び70bの一部として構成することで、金属パターン130を形成するために部品を追加したり、製造工程や製造設備を追加したりせずに、フレキシブル回路基板30b上の集積回路素子60bの熱を十分に放熱できる、高い放熱性を有する表示装置10を実現することができる。
【0100】
なお、本実施の形態では、集積回路素子60bと金属パターン130とは、直接接触すると説明したが、集積回路素子60bと金属パターン130とは熱伝導体を介して接触してもよい。
【0101】
つまり、フレキシブル回路基板30bは、集積回路素子60bの外表面に熱伝導体を介して接触し、電源配線と接続される金属パターン130を備えてもよい。
【0102】
図8Aは、熱伝導体の一例として金属パターン130に銀メッキ165を施した場合の、フレキシブル回路基板30bの断面図(
図2AのB−B線の断面図)である。
【0103】
銀メッキ165の上面は、集積回路素子60bの底面と直接接触し、銀メッキ165の下面は、金属パターン130の上面と直接接触している。つまり、集積回路素子60bと金属パターン130とは銀メッキ165を介して接触している。
【0104】
一般に、銀の熱伝導率は、420W・m
−1・K
−1であり、本実施の形態で電源配線、及び金属パターン130に用いている銅の熱伝導率は、398W・m
−1・K
−1である。つまり、熱伝導体である銀メッキ165の熱伝導率は、金属パターン130、及び電源配線70a及び70bの熱伝導率よりも高い。したがって、フレキシブル回路基板30bと、集積回路素子60bとを、熱伝導体である銀メッキ165を介して接触させることにより、集積回路素子60bの放熱効果をさらに高めることができる。
【0105】
なお、銀メッキ165は、例えば
図4の(d)の工程の後に、メッキ工程を設けることで実現できる。通常のフレキシブル回路基板30bの製造工程においても、メッキ工程は設けられることが多い。例えば、フレキシブル回路基板30bの上端部分及び下端部分の端子部には、カバー110が形成されない。このため、上記端子部は、端子部の錆、腐食を防ぐ目的でメッキ処理されることが多い。フレキシブル回路基板30bの製造工程にメッキ工程が設けられる場合、銀メッキ165は、メッキ工程にて端子部のメッキと同時に形成することができる。
【0106】
また、
図8Aの例では、金属パターン130とともに信号配線80aにも銀メッキ165が施され、信号配線80aの上面と銀メッキ165の下面が接触しているが、信号配線80aには銀メッキ165が施されなくてもよい。
【0107】
また、熱伝導体は、熱伝導性接着剤であってもよい。
【0108】
図8Bは、集積回路素子60bと金属パターン130とが熱伝導性接着剤を介して接触する場合の、フレキシブル回路基板30bの断面図(
図2AのB−B線の断面図)である。
【0109】
図8Bにおいて、集積回路素子60bの底面(外表面)及び金属パターン130の上面は熱伝導性接着剤180と直接接触しており、熱伝導性接着剤180により接着されている。熱伝導性接着剤180は、接着剤中に銀粉末やカーボンが分散されている熱伝導性の高いものを用いる。
【0110】
また、熱伝導性接着剤180として、例えば、銀などを用いた導電ペースト、異方性導電ペースト(ACP)または異方性導電フィルム(ACF)を用いてもよい。
【0111】
熱伝導性接着剤180は、例えば
図4の(d)の工程の後にフレキシブル回路基板30bの金属パターン130へ塗布される。
【0112】
このように、金属パターン130を構成する材料である銅よりも熱伝導性が高い銀メッキ165や、熱伝導性接着剤180などを熱伝導体として用い、集積回路素子60bと金属パターン130とを熱伝導体を介して接触させることで、集積回路素子60bの放熱効果をさらに高めることができる。
【0113】
以上、フレキシブル回路基板30bについて詳細に説明したが、フレキシブル回路基板30aについても同様である。
【0114】
また、本実施の形態では、本発明は、基材が樹脂などで形成されたフレキシブルな回路基板において実現されたが、本発明は、基材がガラスなどで形成された回路基板において実現されてもよい。
【0115】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明では、フレキシブル回路基板上に実装された集積回路素子で発生した熱は、集積回路素子の外表面に直接、または熱伝導体を介して接触する金属パターンへ伝わり、次に電源配線へ伝わり、さらに、熱容量の大きい電極パターンを有する表示パネルの配線領域へ伝わるため、放熱性の高い表示装置を実現することができる。
【0116】
また、金属パターンを構成する材料と、電源配線を構成する材料とを同じにすることで、金属パターンを形成するために部品を追加したり、製造工程や製造設備を追加したりせずに、表示装置の放熱性を高めることができる。
【0117】
なお、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0118】
例えば、本実施の形態に係る表示装置10は、
図9に示すようなテレビに内蔵される。本実施の形態に係る表示装置10が内蔵されることにより、フレキシブル回路基板30a及び30b上の集積回路素子60a及び60bの熱を十分に放熱できる、放熱性の高いテレビが実現される。