特許第6082968号(P6082968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6082968尿素ベースの還元剤の排気ガス流への投与方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6082968
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】尿素ベースの還元剤の排気ガス流への投与方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20170213BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20170213BHJP
   F01N 5/04 20060101ALI20170213BHJP
【FI】
   F01N3/08 B
   F01N3/24 N
   F01N5/04 C
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-543710(P2012-543710)
(86)(22)【出願日】2010年12月15日
(65)【公表番号】特表2013-514487(P2013-514487A)
(43)【公表日】2013年4月25日
(86)【国際出願番号】EP2010069723
(87)【国際公開番号】WO2011073240
(87)【国際公開日】20110623
【審査請求日】2013年12月13日
(31)【優先権主張番号】09179455.2
(32)【優先日】2009年12月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507304915
【氏名又は名称】エフピーティ モトーレンフォアシュンク アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】キャンプベル・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハギン・ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】パプスト・フリッヅ
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−151088(JP,A)
【文献】 特表平10−511038(JP,A)
【文献】 特開2010−163988(JP,A)
【文献】 米国特許第4880447(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0107111(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/24
F01N 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼エンジンによって発生する排気ガス流であって、後処理システム(30)に向かう排気ガス流に対する尿素ベースの還元剤の投与方法において:
−軸(X)に沿って管状に伸びる筐体(20)を有する投与モジュールを供するステップと;
−環状注入ジェット(AJ)であって、前記投与筐体(20)の前記軸(X)に対して傾いており、前記軸(X)を中心として環状であり該軸(X)に対して対称な注入ジェット(AJ)を、内側の内壁及び外側の内壁が、前記軸(X)を対称軸とする円錐台の側面の形状を有する環状注入部(9)からジェットを導入することにより発生させ、前記排気ガス流を前記投与筐体(20)に運搬するステップと;
−前記筐体(20)の内部に、尿素ベースの還元剤スプレー(UWS)を発生させることにより、前記尿素ベースの還元剤を投与するステップと、
を有し、前記尿素ベースの還元剤スプレー(UWS)が、ノズル(55)を備える注入手段によって発生し、該ノズル(55)は前記投与筐体(20)の内部に位置することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記尿素ベースの還元剤スプレー(UWS)が、前記軸(X)に対して同心となるように発生することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記尿素ベースの還元剤スプレー(UWS)が、前記環状注入ジェット(AJ)に入射する円錐部を有するように発生することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記尿素ベースの還元剤スプレー(UWS)の前記円錐の開口角(β)を前記軸(X)とともになす直線が、前記環状ジェット(AJ)の前記注入方向(Y)を示す直線と交差するように、前記尿素ベースの還元剤スプレー(UWS)が発生することを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記環状注入ジェット(AJ)が、前記投与筐体(20)の前記軸(X)に対して、30°から150°の間の角度(α)だけ傾いていることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記環状注入ジェット(AJ)が、前記投与筐体(20)の前記軸(X)に対して、30°から90°の間の角度(α)だけ傾いていることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記尿素ベースの還元剤スプレーが、5°から40°の間の半円錐の開口角(β)を有するように発生することを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記尿素ベースの還元剤が、尿素水溶液によって形成されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素ベースの還元剤(例えば、尿素の水溶液)を、燃焼エンジンから発生し、後処理システム(例えば、SCR又はSCRT装置)に向かう排気ガス流に投与する方法に関する。本発明による方法は、排気ガス流への還元剤の混合を改良し、その結果として後処理装置の触媒効率を高める。
【背景技術】
【0002】
周知のように、内燃エンジン、とりわけディーゼルエンジンの分野における問題は、ターボチャージャーが取り付けられていようがいまいが、燃焼の間、窒素酸化物が形成されることである。窒素酸化物は、エンジンの排気ガスと共に放出され、主な汚染物質の一つの典型である。窒素酸化物の放出を、約90%まで減らすために、選択触媒還元(SCR)装置が開発されてきた。微粒子排出物制限に応じて、これらのシステムには、微粒子トラップ(SCRTシステム)が備わる。
【0003】
SCR及びSCRT装置の作用は、適切な触媒ユニットによって促進される、排気ガス内の窒素酸化物と特に還元剤として導入されるアンモニアとの間の反応に基づく。アンモニアは、通常は、適切な温度状況下で、又は、特定の触媒の作用によって、アンモニアを解放することの出来る、好ましくは液体の反応剤の形状で導入される。好ましい源は、通常は尿素水溶液であって、例えば、重量%が10%から60%の間であり、そこからアンモニアが加水分解によって得られる。
【0004】
尿素は一般に、SCR−SCRTシステムの上流に位置する投与モジュールのなかで霧状にされる。図1及び図2は、投与モジュールのための従来型の配置の例である。とりわけ、図1が示すのは、SCR触媒を備える排気ガスラインの部分、投与モジュール、及び投与モジュールとSCR触媒との間に割り込む混合装置である。混合装置は、混合を促進し向上させる機能を有する。エンジンからの排気ガス流は、投与モジュールへと軸方向に導かれ、尿素溶液は、投与モジュールの筐体の中心線(軸)に位置する注入器によって、排気ガスの中に噴霧される。図2に示される周知の解決法では、尿素水溶液は、そうではなく、排気ガス流の方向に対して傾いた注入器によって投与モジュールの中に導かれている。言い変えれば、図2の解決法においては、還元剤が、投与モジュールの筐体の壁面の部分から横方向に注入されている。
【0005】
図1においては、尿素ベースの還元剤(例えば尿素水溶液)に関する化学反応も示されている。スプレーによって、前記溶液が噴霧された後、以下の反応に従って、水の蒸発が開始する:
(NHCO[含水]→(NHCO[固体]+6.9HO[気体]
水の蒸発の後、以下の反応に従って、尿素の分解が開始する:
(NHCO[固体]→NH[気体]+HNCO[気体]
HNCO[気体]+HO→NH[気体]+CO[気体]
図1及び図2の解決法で提案される注入方法には、多くの欠点が伴うことが分かった。とりわけ、前記方法は、尿素の完全な分解(図1のフェーズ3に関連する反応)及び、アンモニア(NH[気体])と排気ガス(CO[気体])との均一な混合を可能としない。不均一な混合は、不都合なことに、SCRシステムの効率を減少させる。
【0006】
図1に示す解決法において、尿素の不完全な分解は、噴霧される滴の大きさが、ノズルの特性によって固定されるという事実と、排気ガス流が投与モジュールの筐体の内部に軸方向に導入されるという事実によるものである。結果として、噴霧(フェーズ1)の後に、更なる空気力学的な滴の微細化は起こらない。その代わり、図2の解決法においては、非対称の注入器の設置によって、投与モジュールの筐体内において尿素水溶液の霧の不均一な分散が発生し、そのため、最大可能NO変換速度が減少する。
【0007】
そして、留意しなくてはならないのは、尿素水溶液の分解は、他の生産物、とりわけ、イソシアン酸の形成を起こすかもしれない、ということである。これは、排気システムの色々な部分(例えば、パイプ、デフレクタ、SCR−SCRTシステム)の上に、例えば液膜のような液体の被膜、又は、固体の被膜を形成しがちな反応性化合物である。これは、反応剤溶液が、例えば、投与モジュールの筐体の壁、又は、排気ガス管の壁のような冷たい表面に接触することにより生じる。
【0008】
図1及び図2で提案される配置、及び、他の周知技術は、不都合なスプレーと壁との強い相互作用を示す。結果として、周知の解決法は、投与モジュールの筐体の側壁における、液体の被膜の形成を避けることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の主な目的は、還元剤を、燃焼エンジンから発生し後処理システムに向かう排気ガス流に投与するための方法をもたらすことであり、それは、上記の課題/欠点を克服することを可能とする。
【0010】
この目的内において、本発明の第一の目的は、完全な尿素の分解と、アンモニアと排気ガスとの均一な混合を可能とする、排気ガス流への還元剤の投与方法をもたらすことである。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、注入部の下流において、還元剤と排気ガスシステムの冷たい壁(例えば、投与モジュールの壁、排気ガスの壁、後処理システムの壁)との間の相互作用を避ける、排気ガス流への還元剤の投与方法をもたらすことである。
【0012】
信頼性が高く、優位性のあるコストで実行することが比較的簡単な方法をもたらすことは、本発明の最後の目的というわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの、及び、更なる目的は、本記述に不可欠な部分を構成する付随する請求項に記載の方法によってなされる。とりわけ、本発明の方法によれば、前記排気ガスは、長軸方向に伸びる投与モジュールの筐体に運ばれる。とりわけ、該排気ガスは、投与筐体の軸に対して傾いた環状注入ジェットを発生させることにより運ばれる。さらに、本発明の方法によれば、尿素ベースの還元剤は、前記筐体の前記軸に対して好ましくは同心の尿素ベース還元剤のスプレーを発生させることにより投与される。
【0014】
本発明は、以下の詳細な説明から十分明確になるが、それには、単なる実例であるが非限定的な例に示される方法によるものであり、該詳細な説明は、以下に付随する図面を参照して読まれるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、投与筐体の従来型の配置図であって、該投与筐体は、尿素ベースの還元剤を排気ガス流の流れる投与モジュールに投与するために用いられる。
図2図2は、投与筐体の従来型の配置図であって、該投与筐体は、尿素ベースの還元剤を排気ガス流の流れる投与モジュールに投与するために用いられる。
図3図3は、本発明による方法を実行することが可能な投与モジュールの第一の配置を概略的に示した図である。
図4図4は、本発明による方法を実行することが可能な投与モジュールの第一の配置を概略的に示した図である。
図5図5は、本発明による方法を実行することが可能な投与モジュールの第二の配置を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、燃焼エンジン、例えばディーゼルエンジンから発生する排気ガス流に尿素ベースの還元剤を投与する方法に関する。本発明のために、「尿素ベースの還元剤」という表現により、尿素ベースの溶液、例えば、尿素水溶液が意味され、該溶液は、例えばSCR又はSCRT装置などの後処理装置に向かう排気ガス流に注入されるアンモニアを発現させることが可能である。
【0017】
本発明による方法が有するのは、軸X(長軸Xでも指示される)に沿って伸長する投与筐体20を有する投与モジュール20を供する第一ステップである。この点で図3が示すのは、燃焼エンジンの排気ガスシステムであって、該システムには、混合装置25の上流に位置する排気管4と投与モジュール20とが備わる。次に、混合装置25は、例えばSCR又はSCRT装置のような触媒装置30の上流に位置する。図示されるように、投与筐体20は、排気管4の一部であることが可能であり、好ましくは、円形の断面をもつことができる。本発明のために、「断面」という表現によって、筐体20の軸Xに垂直な部分が意味される。
【0018】
本発明の方法によれば、エンジンからの排気ガス流は前記投与筐体20に運ばれるが、それは、軸Xに対して傾いた環状注入ジェット(AJで示される)を発生させることによるものである。言い変えれば、排気ガスは投与モジュール筐体に環状に導入されるが、それは、前記軸Xに対して傾いた注入方向Yに従うものである。このようにして、注入排気ガス流は、長軸Xに対して垂直な環状要素と、長軸それ自身に平行な軸方向要素とを示す。
【0019】
本発明による方法は、前記尿素ベースの還元剤を、尿素ベースの還元剤スプレー(UWSで示される)を発生させることにより投与することを供するが、該スプレーは、投与筐体20の内部にあり、好ましくは、筐体それ自身のX軸と同心である。より詳しくは、還元剤が噴霧されるが、それは噴霧手段によるものであって、その結果、スプレーUWSの口の開いた円錐部が、排気ガスの環状注入ジェットAJの注入方向Yに入射する。図3及び図4に示されるように、尿素ベースの還元剤スプレーUWSは、スプレーの円錐の始点の角度が、前記環状ジェットAJの注入方向Yと前記筐体20の軸Xとの間の角度αの方を向くように、発生する。
【0020】
図4が詳細に示すのは、噴霧された還元剤が環状注入ジェットAJに混合される、投与筐体20の環状の範囲である。この範囲において、強い乱流が発生している。この乱流は、尿素ベースの還元剤の液滴蒸発を増加させ、その結果、それに続く尿素の粒子分解を促進する。このようにして、反応速度は、有利に増加する。
【0021】
再び図4を参照すると、環状注入ジェットAJは、スプレーの滴が、投与モジュール筐体20の側壁20Bに当たることを防ぐ。実際、側壁20Bに向かうスプレーの滴は、環状注入ジェットAJの注入方向Yによって、投与筐体20の内側に向けてそらされる。このようにして、スプレーの滴は、投与筐体20の(参照記号CSで示される)中央空間に飛ぶことが可能となり、側壁20Bに接触することはない。図4において、前記中央空間CSは、点線L1で図示されている。この中央空間CSの(D1で示される)直径の拡大は、環状ジェットAJの注入速度次第である。
【0022】
図4に示されるように、環状ジェットAJは、好ましくは環状注入部9によって運ばれ、該環状注入部9は、端部の横断壁18の近くで投与筐体20に通じる。スプレー注入手段は、好ましくは、端部壁18の中央に位置するスプレーノズル55を備える。本発明によれば、注入ジェットAJは、投与筐体モジュール20の長軸Xに対して傾いており、その角度αは、30°と150°の間を包含する。とりわけ、非常に意義深い結果が観察されたのは、前記角度αが30°と90°の間に包含され、還元剤スプレーが、始点角βが5°から40°の間に包含された半円錐を有する際である。
【0023】
図5が示すのは、投与モジュールの異なる配置であって、該配置において、環状注入ジェットAJは、投与筐体モジュール20の長軸Xに対し、90°より大きな角度αだけ傾いている。とりわけ、この配置はノズル55の近傍に被膜ができることを有利に避けることが観察された。
【0024】
本発明が、上記の目的を達成することが示された。より詳しくは、尿素ベースの還元剤の当該投与方法が、アンモニアの完全な分解とその排気ガスとの均一な混合を可能とすることが示された。更に、当該方法は、投与筐体及び排気ガス管の内側表面に液膜を形成することも避ける。
【0025】
ここで主題となっている発明の、多くの変更、修正、変形、他の使用及び利用は、その好適実施例を開示する当該明細書と付随する図面を考慮すれば、当業者にとって明白となるであろう。本発明の精神及び範囲から逸脱しない、そのような変更、修正、変形、他の使用及び利用の全ては、本発明の対象となるものと判断される。
【0026】
更なる実施の詳細は記載されないが、それは、当業者であれば、上記記載の教示から始まる発明を実行することが可能であるためである。
【符号の説明】
【0027】
4 排気管
9 環状注入部
18 横断壁
20 投与筐体
20B 側壁
25 混合装置
29 投与モジュール
30 触媒装置
55 ノズル
AJ 環状注入ジェット
CS 中央空間
UWS 尿素ベースの還元剤スプレー
図1
図2
図4
図5
図3