(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6083018
(24)【登録日】2017年2月3日
(45)【発行日】2017年2月22日
(54)【発明の名称】電流計測部材
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20170213BHJP
【FI】
G01R15/20 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-163644(P2012-163644)
(22)【出願日】2012年7月24日
(65)【公開番号】特開2014-25707(P2014-25707A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩久
【審査官】
荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−066327(JP,A)
【文献】
特開2004−108882(JP,A)
【文献】
特開2011−153861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内部に収容した電気機器への給電を行う電路、もしくは、筐体内部に収容した電気機器内部の電路に流れる電流の測定を行う電流計測部材であって、
電流の測定は、基板の一端から対をなす腕部を突出させてその内側を端部が開放された配線挿通部とするとともに、前記腕部の各々に磁気検出素子を配置した構造の電流センサを、電路に装着させて行い、
該電流センサは、基板を覆うケース内に保持され、
ケース内の電流センサへの電源供給手段として、電路と接触する接触部をケースの配線挿通部に対応する位置に形成するとともに、
電流センサの腕部間には、弾性的に変形することでその内側に電路が差し込まれるプラグ端子部を設け、このプラグ端子部を前記接触部に接触させたことを特徴とする電流計測部材。
【請求項2】
ケース内には、整流手段を内蔵した電源部を備えることを特徴とする請求項1記載の電流計測部材。
【請求項3】
電流センサを保持したケースを複数有し、
各々のケースは異なる相の電路に装着され、一方のケースに形成された電流センサの電源は、一方のケースに形成した接触部と、他方のケースに形成した接触部により供給したことを特徴とする請求項2記載の電流計測部材。
【請求項4】
一方のケースに形成した接触部、他方のケースに形成した接触部から電圧を検出する電圧検出回路を形成したことを特徴とする請求項3記載の電流計測部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分電盤やブレーカなどの配電装置における負荷へ流れる電流値を検出する手段を備えた電流計測部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
負荷への電流供給は、通常、同一の電気機器収納用箱内に配置された分電盤を介して行われる。分電盤は、主幹ブレーカの二次側に接続された3本の給電バーに多数の分岐ブレーカを接続したものであり、各分岐ブレーカの二次側はそれぞれ負荷回路に接続されている。
【0003】
負荷電流の測定を行いたい場合には各分岐ブレーカに変流器(CT)を取り付けて負荷へ流れる電流値を検出するのが一般的であり、例えば特許文献1に示されるように、従来は各分岐ブレーカの二次側にそれぞれ変流器を配置していた。
【0004】
しかし分岐ブレーカの二次側にそれぞれCTを配置するためには、客先にてCTの内部に配線を通す必要があり、1本ずつ配線を通して負荷に接続する作業に手数がかかるという問題があった。また、このようなCTを使用する場合には大型なものとなるため、分電盤のサイズ自体も大きくなってしまう。しかし、CTの場合には小型化しようとするとCT内部に形成されたコイルの巻線数を確保することができなくなるので小型化させることは非常に困難であった。
【0005】
一方、電流測定手段として、前記のCTに変えて、ホール素子を用いる技術も知られている(例えば、特許文献2)。ホール素子を用いた電流測定手段は、電流によって生じる磁場を検知するものであり、ホール素子を用いた電流測定手段を構成する基板上には、磁場を検知する磁気検出素子の他、磁気検出素子の出力データを処理して電流値を算出する集積回路が搭載されている。この集積回路は、外部からの直流電源の供給を受けて、前記の電算処理を行うものであるため、電流測定手段としてホール素子を用いる場合には、ホール素子への電源供給手段が必要になる。しかし、別途ホール素子専用の電源供給線を配線して電源供給を行う場合、その配線作業が煩雑になる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06-165320号公報
【特許文献2】実登3142092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、電気機器の電流値を検出する電流測定手段の設置に際し、煩雑な配線作業を不要とした電流計測部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の電流計測部材は、筐体内部に収容した電気機器への給電を行う電路、もしくは、筐体内部に収容した電気機器内部の電路に流れる電流の測定を行う電流計測部材であって、電流の測定は、基板の一端から対をなす腕部を突出させてその内側を端部が開放された配線挿通部とするとともに、前記腕部の各々に磁気検出素子を配置した構造の電流センサを、電路に装着させて行い、該電流センサは、基板を覆うケース内に保持され、ケース内の電流センサへの電源供給手段として、電路と接触する接触部をケースの配線挿通部に対応する位置に形成
するとともに、電流センサの腕部間には、弾性的に変形することでその内側に電路が差し込まれるプラグ端子部を設け、このプラグ端子部を前記接触部に接触させたことを特徴とするものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電流計測部材において、
ケース内には、整流手段を内蔵した電源部を備えることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求
項2記載の電流計測部材において、
電流センサを保持したケースを複数有し、 各々のケースは異なる相の電路に装着され、一方のケースに形成された電流センサの電源は、一方のケースに形成した接触部と、他方のケースに形成した接触部により供給したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求
項3記載の電流計測部材において、
一方のケースに形成した接触部、他方のケースに形成した接触部から電圧を検出する電圧検出回路を形成したことを特徴とするものである
。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電流計測部材は、筐体内部に収容した電気機器への給電を行う電路、もしくは、筐体内部に収容した電気機器内部の電路に流れる電流の測定を行う電流計測部材であって、電流の測定は、基板の一端から対をなす腕部を突出させてその内側を端部が開放された配線挿通部とするとともに、前記腕部の各々に磁気検出素子を配置した構造の電流センサを、電路に装着させて行い、該電流センサは、基板を覆うケース内に保持され、ケース内の電流センサへの電源供給手段として、電路と接触する接触部をケースの配線挿通部に対応する位置に形成した構造とすることにより、電流センサを装着された電路からケース内の電流センサへ電源を供給することが可能となり、別途電流センサ専用の電源供給線を配線して電源供給を行う必要がなくなるため、電流測定手段の設置に際し、煩雑な配線作業を不要とすることができる。
さらに、電流センサの腕部間には、弾性的に変形することでその内側に電路が差し込まれるプラグ端子部を設け、このプラグ端子部を前記接触部に接触させたことにより、電路にプラグ端子部を差し込むという簡単な作業で、電路と電流センサとの間に、電路を形成することができる。
【0013】
電流センサへの電源供給は、直流で行う必要があるが、電路を流れる電流が交流の場合には、請求項
2記載の発明のように、ケース内に、整流器などからなる電源部を内蔵しておくことにより、電路を流れる電流が交流の場合には、ケース内で交直変換を行って電流センサに電源供給を行うことができる。
【0014】
請求項
3記載の発明によれば、電流センサを保持したケースを複数有し、各々のケースは異なる相の電路に装着され、一方のケースに形成された電流センサの電源は、一方のケースに形成した接触部と、他方のケースに形成した接触部により供給したことにより、電路にプラグ端子部を弾性的に差し込むという簡単な作業のみで、電流センサに電源を供給することができ、電路の電流を測定することが可能となる。また、請求項
4記載の発明によれば、一方のケースに形成した接触部、他方のケースに形成した接触部から電圧を検出する電圧検出回路を形成したことにより、相間の電圧を測定することも可能となるため、電流センサにより測定した電流と合わせて電力計測も可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】電気機器収納用箱内に配置されたプラグイン分電盤の正面図である。
【
図2】電気機器収納用箱内に配置されたプラグイン分電盤の正面図である。
【
図4】電流センサによる電流検出の流れを説明する図である。
【
図5】電流センサを収納するケースの説明図である。
【
図10】実施形態3,4における別案の電流センサ取付構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
【0017】
本発明に係る電流計測部材は、電気機器へ流れる電流の測定を、基板の一端から一対の腕部を突出させてその内側を端部が開放された配線挿通部とするとともに、一対の腕部の各々に磁気検出素子を配置した構造の電流センサを備えるものである。
図1は、電路として母線バー1を用いた例を示し、3は主幹ブレーカ、1はその二次側にリードバー4を介して接続された3本の母線バー、5は母線バー1の両側に配置された多数の分岐ブレーカである。これらは図示を略した電気機器収納箱の内部に収納されてプラグイン分電盤を構成している。
【0018】
本実施形態では、電路となる各母線バー1から分岐ブレーカ5へ電源供給を行う電路に、電流センサ2を配置しているが、電流センサ2の配置位置は、電気機器への給電を行う電路に構成するものであれば良い。例えば、
図2に示すように、リードバー4上に配置することもできる。
【0019】
電流センサ2は、
図3に示すように、基板6の一端を開放させて一対の腕部7を形成した略U字構造を有するものであり、該一対の腕部に磁気検出素子8を搭載している。また、基板6の一端を開放させて形成された箇所を電路となる母線バー1が挿通される配線挿通部7aとするものである。
【0020】
電流センサ2に搭載された磁気検出素子8は、
図4に示すように、腕部7間の配線挿通部7aに配置された電路13に流れる電流によって生じる磁場を検知するものであり、基板6には、これらの磁気検出素子8の検知出力を処理して電路13に流れる電流値を算出する集積回路10も搭載されている。本実施形態では、磁気検出素子8を各腕部7に1個ずつ搭載しているが、複数搭載したものであっても良い。複数搭載することにより、更に正確に電路13に流れる電流を調査することが可能である。また、このような電流センサ2は電路に非接触で測定することができるので電路13からの熱の影響等を受けることなく測定することが可能である。
【0021】
このように、基板状の電流センサを使用することにより、従来型のコア状の電流センサを使用する場合と比較して、電流センサの配置スペースを大きく削減することができる。また、従来型のコア状の電流センサでは、電流センサの設置に際し、コア状の電流センサの内部に配線を通す必要があり、分電盤の設置後にCTを取り付けたい場合においては、分岐ブレーカ全ての配線を取り外し、かつ分岐ブレーカ全てを取り外して作業を行う必要があり、組み込み作業に手間がかかるという問題があったが、本発明に用いる前記の電流センサ2は、基板6の一端を開放させた構造を有するため、分電盤の設置後に各種配線がなされた状態においても、容易に組み込み作業を行うことができる。
【0022】
本発明において、電流センサ2は、
図3に示すケース9で全体を覆った状態で使用される。
【0023】
図5に示すように、ケース9は、電流センサ2と同様に、一対のケースの腕部11を有する略U字構造に形成され、ケースの腕部11間の配線挿通部7aに、
紙面上方から電路13に弾性的に差し込み可能としたプラグ端子部12を備えている。
【0024】
ここで、電路13と磁気検出素子8との位置関係にずれが生じると電流の検出誤差に影響を与えてしまうため、電流センサ2はガタツキを生じないように配置することが好ましい。本実施形態では、電路13が、電流センサ2に対し、所望の定位置(電流センサ2の中心線付近)に挿入されるように、プラグ端子部12に案内傾斜部
20を形成している。また、プラグ端子部12の内部には、電流センサ係止手段を備えることにより、電流センサ2を、ガタツキを生じることなく保持することが好ましい。
【0025】
電流センサ2に対しては、直流電源の供給を行う必要がある。本発明では、前記のケース9に、電路13の少なくとも2本と接触する接触部14を形成することにより、直接電路13からケース9内の電流センサ2へ電源を供給可能としている。当該構成によれば、別途電流センサ2専用の電源供給線を配線して電源供給を行う必要がなくなるため、電流測定手段の設置に際し、煩雑な配線作業を不要とすることができる。
【0026】
以下に実施形態1〜4として、電路13の少なくとも2本と接触する接触部14を形成したケース9について詳述する。
【0027】
(
図6に示す実施形態1)
本実施形態のケース9からは、2本のリード線15が出線され、その先端に接触部14が形成されている。この接触部14を、2本の電路13と接触させることにより、電路13からケース9内の電流センサ2へ電源を供給することができる。
【0028】
電流センサ2への電源供給は、直流で行う必要があるところ、電路13を流れる電流が交流の場合には、ケース9内に、整流器を内蔵した電源部(図示しない)を内蔵しておくことにより、装着された電路13からの電源をケース9内の電源部で交直変換を行って電源供給を行うことができる。
【0029】
(
図7に示す実施形態2)
本実施形態のケース9からは、1本のリード線15が出線され、その先端に接触部14が形成されている。もう一方の接触部14は、ケースの腕部11に形成されており、プラグ端子部12に差し込まれた電路13と接触する構造となっている。したがって、本実施形態によれば、ケースの腕部11に形成された接触部14に関しては、何ら配線作業を行うことなく、電流の測定対象となる電路13に電流センサ2を配置する作業と同時に、電流センサ2に対する電路形成を完了することができる。なお、本実施形態においてもケース9内に電源部を形成しておくことが望ましい。
【0030】
(
図8に示す実施形態3)
本実施形態は、上記実施形態2の変形であって、上記実施形態2のリード線15とその先端部に形成した接触部14に代えて、電源供給用ケース16を、電流センサ2を収容したケース9に隣接配置している。両ケース16、9は、電線17a、17bで接続されている。
【0031】
電源供給用ケース16は、電流センサ2を収容したケース9と同様に、一対のケースの腕部11を有する略U字構造に形成され、ケースの腕部11間に、電路13を弾性的に差し込み可能としたプラグ端子部12を備えている。また、ケース9と同様に、ケースの腕部11には接触部14が形成され、プラグ端子部12に差し込まれた電路13と接触する構造となっている。電源供給用ケース16の内部には、電流センサではなく、整流手段となる整流器を内蔵した電源部18を収容している。
【0032】
上記実施形態2では、リード線15の先端に形成された接触部14に関しては、電路13との配線作業が必要であったが、本実施形態によれば、2つの接触部14のうち、何れについても、電路13をプラグ端子部12に対して差し込むだけで、電流センサ2に対する電路形成を完了することができる。
【0033】
本実施形態では、電流センサ2を収容したケース9に形成した接触部14を介して取得された電源は、まず、電線17aを介して電源供給用ケース16に送られ、電源部18に入力される。一方、電源供給用ケース16に形成した接触部14を介して取得された電源も、同様に電線18aを介して電源部18に入力される。そして電源部18から電線17bを介して電流センサ2に電源が供給されるものである。また、装着された電路13が交流のものであれば、電源部18の整流器で交直変換され、直流電源は、電線17bを介して電流センサ2を収容したケース9に送られ、電流センサ2に供給される。なお、電流センサ2により測定された電流は電線17cから出力される。
【0034】
(
図9に示す実施形態4)
本実施形態は、上記実施形態2および3の変形であって、隣接するケースの双方に、電流センサ2および電源部18を収容し、相互に、相手方のケース内に収容された電流センサ2に対し、直流電源を供給可能としたものである。なお、実施形態3及び実施形態4におけるケース9と電源供給用ケース16はそれぞれ1個で説明したが、電流センサ2を収容したケース9を複数用意して、電源供給用ケース16の電源部18から複数の電流センサ2を収容したケース9に電源を供給するものであっても良い。
【0035】
(
図10に示す実施形態3、実施形態4の別案構造)
実施形態3及び実施形態4に示した構造においては分電盤の電路となる母線バー1に接続するものとして説明をしていたが、
図10に示すように分岐ブレーカ5内部に形成した電路となるより線(図示しない)に跨るように配置するものでも良い。その場合には分岐ブレーカ5に電流センサ挿入部5aを形成しておき、電流センサ2を挿入し、より線に跨るように電流センサ2を収納したケース9、または、電源供給用ケース16を挿入させるものである。
【0036】
(
図11に示す実施形態5)
実施形態5に示した構造においては、実施形態3に示した電源供給用ケース16内部に電圧出力回路19を形成している。電圧出力回路19はケース9より取得された電線17aと電源供給用ケース16の接触部14と電源部18と接続される電線18a間の電圧を検出するものである。検出した電圧は電線17dを介して出力される。なお、実施形態3に述べたように17cから検出された電流センサ2の電流と、電圧出力回路19の電圧から電力値の測定も可能となるものである。
【0037】
上記実施形態1〜4の何れの構造においても、電流センサ2を収容するケース9に直接あるいはリード線を介して形成した接触部14を利用して、電路からケース内の電流センサへの電源供給回路を形成することができるため、別途電流センサ2専用の電源供給線を配線して電源供給を行う必要がなく、電流測定手段の設置に際し、煩雑な配線作業を省略することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 母線バー
2 電流センサ
3 主幹ブレーカ
4 リードバー
5 分岐ブレーカ
5a 電流センサ挿入部
6 基板
7 腕部
8 磁気検出素子
9 ケース
10 集積回路
11 ケースの腕部
12 プラグ端子部
13 電路
14 接触部
15 リード線
16 電源供給用ケース
17 電線
18 電源部
19 電圧出力回路